156-衆-内閣委員会-13号 平成15年05月28日

平成十五年五月二十八日(水曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 佐々木秀典君
   理事 逢沢 一郎君 理事 小野 晋也君
   理事 星野 行男君 理事 渡辺 博道君
   理事 中沢 健次君 理事 山内  功君
   理事 遠藤 和良君 理事 西村 眞悟君
      大村 秀章君    奥山 茂彦君
      嘉数 知賢君    金子 恭之君
      木村 隆秀君    河野 太郎君
      菅  義偉君    高橋 一郎君
      谷川 和穗君    谷本 龍哉君
      近岡理一郎君    林 省之介君
      石毛えい子君    大畠 章宏君
      小宮山洋子君    平野 博文君
      水島 広子君    横路 孝弘君
      太田 昭宏君    塩田  晋君
      瀬古由起子君    吉井 英勝君
      北川れん子君    江崎洋一郎君
      山谷えり子君
    …………………………………
   議員           中山 太郎君
   議員           西川 京子君
   議員           近藤 基彦君
   議員           荒井 広幸君
   議員           五島 正規君
   議員           肥田美代子君
   議員           福島  豊君
   議員           井上 喜一君
   内閣府副大臣       米田 建三君
   内閣府大臣政務官     大村 秀章君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   厚生労働大臣政務官    森田 次夫君
   衆議院法制局第五部長   鈴木 正典君
   政府参考人
   (内閣府男女共同参画局長
   )            坂東眞理子君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           有本 建男君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           金森 越哉君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           青木  豊君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君
   政府参考人
   (厚生労働省政策統括官) 水田 邦雄君
   内閣委員会専門員     小菅 修一君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十八日
 辞任         補欠選任
  亀井 久興君     河野 太郎君
  石毛えい子君     水島 広子君
  横路 孝弘君     小宮山洋子君
  西村 眞悟君     塩田  晋君
  吉井 英勝君     瀬古由起子君
  江崎洋一郎君     山谷えり子君
同日
 辞任         補欠選任
  河野 太郎君     亀井 久興君
  小宮山洋子君     横路 孝弘君
  水島 広子君     石毛えい子君
  塩田  晋君     西村 眞悟君
  瀬古由起子君     吉井 英勝君
  山谷えり子君     江崎洋一郎君
同日
 理事西村眞悟君同日委員辞任につき、その補欠として西村眞悟君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
五月二十六日
 国民のための民主的な公務員制度改革に関する請願(中林よし子君紹介)(第二三七四号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 少子化社会対策基本法案(中山太郎君外八名提出、第百五十一回国会衆法第五三号)

     ――――◇―――――

○佐々木委員長 以上で北川れん子君の質疑は終了いたしました。
 次に、山谷えり子君。

○山谷委員 保守新党、山谷えり子でございます。
 この少子化対策基本法が成立することによって温かな未来が築かれていくようなことであるように願って質問をさせていただきます。
 前文の方に「家庭や子育てに夢を持ち、」「子どもを生み育てる者が真に誇りと喜びを感じることのできる社会を実現し、」あるいはまた「生命を尊び、豊かで安心して暮らすことのできる社会の実現に向け、」というような文言がございまして、その趣旨やよしと思いますけれども、幾つかの点で疑問や矛盾を感じることがございますので、質問させていただきたいと思います。
 まず、「施策の基本理念」の中の、第二条、「男女共同参画社会の形成とあいまって、」という文言がございます。私は、文脈的に非常に唐突でおかしい感じがいたしますけれども、それはそれといたしまして、今、男女共同参画社会、職場でのいろいろな待遇改善とかあるいは生活の中での新しい男女のハーモニー、これは進めていかなければいけないというふうに思いますけれども、いささか逸脱というか、首をかしげるところがないわけではございません。
 例えば、ジェンダーフリー教育といって、ひな祭りを押しつけてはいけないとか、あるいは、体育などの授業も共学化して着がえも一緒にやるというような、区別は差別であるというような、そのような何かおかしな考えが教育の中に入り込んできております。
 また、質問の中にたびたび出てまいりましたけれども、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツに関する意識の浸透」というのが男女共同参画基本計画の中に書かれているわけでございますけれども、きょう、ちょっと資料を持ってこさせていただきましたので、ごらんいただきたいと思うんですが、「家庭一般21」という、これは高校で採択率がトップの教科書でございます。その中で、マーカーがしてありますが、「やむをえずうめない場合には母体保護法において、人工妊娠中絶という方法を選択することもあるだろう。こうした選択肢は、女性の基本的人権の一つとしてとらえることができる。」そしてまた、「母体保護法」のところを注として云々かんぬんいろいろな条件が書いてありまして、最後に、「しかし、「女性の自己決定権」という考えにもとづく法律にはいたっていない。」というふうになっております。
 私は、この五月七日に青少年問題特別委員会で米田副大臣に、この書き方というのは誤解を招くのではないかというように申しましたところ、手元にないので詳細あるいはその文脈の趣旨はわかりません、教科書にそういうふうに述べられているとしたらば、それは大変な問題だろうと思います、ぜひ精査、精読をしてみたいと思っておりますというふうに発言なさいましたけれども、この教科書をごらんになられまして、これは、リプロダクティブヘルスの方は世界的に割合認識が進んでいるんですけれども、ライツの方は非常にこれはもう各国で議論になっておりまして、例えば、性的権利、妊娠中絶、性教育、家族の多様化、性的指向性の多様化などの分野では合意文書をつくることができない。去年ももめたばかりでございます。カイロ会議で普遍化されたとか、二〇〇〇年の女性会議で合意があったというような質問がございましたけれども、それは正しくございません。むしろ、去年、リプロの削除を要求したというような会議もございまして、概念は全く普遍化されていないわけでございます。これを、中絶の自由などを含むこのような書き方、基本的人権というような書き方、それから女性の自己決定権という考え方、どのようにお考えでいらっしゃいますか。

○米田副大臣 お答えをいたします。
 リプロダクティブヘルス・ライツにつきましては、先般の委員会でも御質問が出ましたけれども、これにつきましては、カイロで一九九四年に開催された国際人口・開発会議において提唱された概念であって、我が国としてのとらえ方は、その中心課題は、いつ、何人子供を産むか産まないかを選ぶ自由、安全で満足のいく性生活、安全な妊娠、出産、子供が健康に生まれ育つこと等、これらが含まれておる。そしてまた、女性の生涯を通じての健康、性と生殖に関する課題が幅広く議論されているものである、そのようにとらえている、認識をしているというお答えをさきの委員会でもさせてもらいました。
 御指摘のような、いやしくも誤解を招くような、中絶の自由を意味するような、そういうことではないし、また教育関係の面でも、山谷委員がしばしば御指摘でありますが、男女の区別まで否定をして、みんな一緒にというような話でもない。これらの政府の基本的な考え方は、これまでしばしば申し上げてまいったところであります。
 さてそこで、教科書の問題でありますが、私も読ませていただきましたけれども、この注でまさに触れているとおり、現在の我が国の法律におきましては、母体の生命、健康を保護することを目的としまして、妊娠中絶に関しましては厳しくはっきりと限定をされた条件、要件が課されているわけでありまして、しからば、このマーカーの引いてあります部分がどういう意図でこういう記述になっておるのか。「しかし、「女性の自己決定権」という考えにもとづく法律にはいたっていない。」というこの表現が、現在の我が国の国家の法律を否定しておる、そういう意図を含んでおるならば、それが教科書として存在することは、やはりこれはおかしな話になるだろうと思いますが、そういう意図を含んだ記述であったのかどうかは、これはまだ著者や出版元に確認をするに至っておりません。

○山谷委員 私はそのような意味に、少なくとも読んでしまったものですから、検定基準の中には、誤解を招くような表現をしてはならないというのがありまして、こういうのは次の検定のときにぜひチェックしていただきたいと思います。
 そしてもう一つ、「ラブ&ボディBOOK」という資料がございます。これは全国の中学生百三十万人に配る予定で印刷されたものでございます。「(厚生省児童家庭局母子保健課)の内容をもとに作成されました。」と書いてありますが、ここでは、中絶について、またマーカーしてありますが、「日本では中絶することが許されている。」とか、「もちろん日本のお医者さんの中絶手術の技術は信頼できるけど、」と書いてあります。そして、隣のページには、ピルの失敗率一%、これは十余年前の間違ったデータを載せているんですが、「「ピル」は、男の子に頼らず、女の子が自分で避妊できるのが最大のメリット。世界中で、広く使われている薬だよ。」下の方で、「月経で困っている女の子は治療のために使うこともできるんだ。」と、ピルのゲット方法も書いているわけですね。これは、WHOでは、思春期にピルは飲んではいけないというふうになっているわけです。しかも、これはピルの副作用が書いてございません。非常に問題だと思います。
 教科書の指導資料という、先生が読む指導資料を読みましたら、触れ合いの性、愛がなければ性交、セックスしてはいけないという考えの押しつけではあってはならない、つまり、愛がなくてもセックスしていいというふうに指導資料に書いてあるわけです。そして、先生の実践報告書に、中高校生、確実な避妊方法で快楽の性、セックスが追求できることに気づかせると、ピルを勧めようというふうに実践報告書に書いてあるわけでございます。
 ことしの一月の警察の発表調査では、セックスで小遣いをもらうことを、中学生、高校生の四四・八%が、本人の自由と言っています。こんな国、世界じゅうにどこにあるでしょうか。これが男女共同参画基本計画の中の性の自己決定権という中に入っているんですね、教育現場の中に。どう思われますか。

○米田副大臣 御指摘の「ラブ&ボディBOOK」でありますが、既に厚生労働省にもお願いをして、所管団体が回収作業を行ったというふうに認識をしております。(発言する者あり)いや、回収を行うという報告を既に受けました。回収を完了したかどうかは、また確認をしたいというふうに思います。
 なお、性の自己決定権について政府はどう考えておるのかということでありますが、言うまでもありませんが、リプロダクティブヘルスについての、カイロでの会議についての、基本的に提示されたところの幾つか、先ほども申し上げたわけでありますが、そのごく当たり前の常識的な、女性の人間としての権利やあるいは健康のためという考え方、まさにそれに尽きるわけでありまして、フリーの中絶を推奨するものであっていいわけがありませんし、あるいは子供にいたずらな性衝動を促すようなものであってもいいとは思いません。
 御指摘の、日本では中絶ということが許されているという表現でありますが、我が国は、中絶につきましては厳しい要件を定めておりまして、別に無原則に許されておるわけではありません。この前後を詳しく精読をしておるわけではありませんが、このページだけを見る限り、我が国が中絶に関しては厳しく要件を定めておるということがございませんので、この表現の仕方は問題があるというふうに私は一つは思います。
 また、いずれにしましても、政府の考え方としましては、女性も男性も、各人がそれぞれの体の特徴を十分に理解し合い、思いやりを持っていく、このことが男女共同参画社会形成の前提であるというふうに考えているわけでありまして、学校教育におきましても、あくまでも児童生徒の発達段階に応じた性に関する科学的知識や生命尊重、人間尊重、あるいは男女平等の精神に基づく異性観、そして何よりも、みずから考え、判断する意思決定の能力を身につけ、望ましい行動をとれるようにすることが必要だ、こういう基本的な考え方であります。

○山谷委員 この「ラブ&ボディBOOK」回収をお願いしたのが、私、去年の春、五月ぐらいだったと思います。それで、文部大臣が不適切とおっしゃったにもかかわらず厚生省は回収をせず、そして米田副大臣がおっしゃってくださった。しかしながら、ことしになっても、卒業式が終わったら配るというような学校もあったりとか、かなり非常に混乱しているというのが現状でございますので、引き続き、性教育の実態把握と、各県教育委員会に調べさせて、やはり公表していく、保護者に知らせていくということが大事ではないかと思います。
 男女共同参画基本法に基づいて男女共同参画条例がつくられておりますが、ここにも、中絶に一定の制約を設けた母体保護法や堕胎罪と矛盾が指摘されるようなリプロダクティブヘルス・ライツ規定の自治体が四十を超えております。
 そのほか、また資料を持ってまいりましたが、岡山県の新見市の男女共同参画まちづくり条例というのがございます。ここの三枚目にマーカーがしてございますが、「ウ」というところに「家事、育児、介護等、従来女性が担ってきた無償労働に対し、必要に応じて経済的評価を与える家庭づくり」というのがございます。これは、同様のものが水戸市にもございますし、いろいろなところでできつつあります。
 これは努力目標ではございますけれども、やはりこういうのはおかしいのではないかというので、私は以前、市長の参考人招致を求めました。福田官房長官は、自治体の意見を聞くのはいいことだ、男女共同参画が逸脱していないか観察したいと実態調査をお約束してくださいましたが、その後、何ら音さたもございませんし、参考人招致も実現しておりません。
 もちろん、地方分権の問題ではございますけれども、この条例の中には明らかに表現の自由とか報道の自由にかかわることも出ておりまして、どういうおつもりでこういうまちづくり条例をおつくりになったのか、やはり聞きたいと思いますので、参考人招致を改めて求めたいというふうに思いますが、それはそれとしまして、育児を労働だとする、じゃ、育てられる子供は商品なのか、この辺はいかがでございますか。

○米田副大臣 私は、親子の愛も男女の愛も、愛の原点は、無償の愛が愛の極致だと思っておる人間でありますが、問題は、要するに、人間の思いというのは十人おれば十人の思想と十人の宇宙があるわけでありまして、人間の関係のあり方もさまざま、多種多様であります。したがって、逆に、御指摘のように、家族間にもかかわらず労働を必ずすべての家庭が有償に置きかえて評価せねばならないというような方針を、もしそんな法律でもできたら、恐らく、余計なお世話だという御家庭もたくさん出てくるでしょうし、私は家族と一体だから、愛でやっているんだからいいんだというお宅もあるだろうし、あるいは、同じ、類似のケースであっても、そうでない、ありがたいという御家庭も多分あるんだろうというふうに私は実際、思います。
 つまり、問題は、権力が人の生き方に関して介入して、強制的にあるいは強制に準ずるような形で指導をするという形は、これは私は問題なんだろうというふうに思いますが、しかしまた一方で、だれが見ても、家族であるということを理由に、あるいは女性であるということを理由に、あるいは妻であるということを理由に、配偶者や他の家族やあるいは周囲の社会等も含めて、本人の本来の思いを抑圧する形で無償労働が当然であるというようなことがあり、また現実にそういう社会慣行が残っているんだという御指摘もあるわけでありますから、それらのケースというものを念頭に置きながら、正しいあり方としてやはり必要な経済的な評価はすべきだ、そういう考え方に基づいている、これまで家族契約等の考え方も政策の中で出ておりますが、また、そうであるべきだ、それ以上のものであってはならないというふうに私は思います。

○山谷委員 米田副大臣の見解はわかりました。
 改めて、参考人、新見市と水戸市の招致を求めたいと思いますが、いかがでございましょうか。

○佐々木委員長 じゃ、この件は理事会で協議させてもらいます。

○山谷委員 よろしくお願いします。
 次に、この法案には、胎児の生命保護あるいは相談制度、胎児と妊婦をサポートする社会システムや教育の確立といったような考え方が入っておりませんで、私はぜひこれは修正として入れていただきたいというふうに思います。
 日本は数え年で年齢を数えている。つまり、おなかの中の赤ちゃんから、授かったおなかの赤ちゃんに対して温かいまなざしを持っている国でございました。また、児童の権利条約の中でも、児童は「その出生の前後において、適当な法的保護を含む特別な保護及び世話を必要とする。」というふうにございます。
 ドイツでは、妊娠葛藤相談というのがございまして、例えば二〇〇〇年のベルリン、これは、相談によって二千百三十九人の赤ちゃんが中絶を避けて生まれたということでございます。
 マザー・テレサが、日本は豊かな国と聞いていたけれども、たくさんの胎児を殺すような貧しい国、とても残念というふうに言われました。
 日本は今、統計では年間三十四万人強が、胎児の命が奪われているということでございます。戦後、七千万人、もしかしたら一億人くらいの中絶で、胎児、赤ちゃんが流れたのではないかというような数も言われておりまして、中絶率は世界でトップクラスなんですね。十代の中絶も四・四万人。これも、この「ラブ&ボディBOOK」みたいな考え方の先生に教わったら、そういうふうにもなると思いますよ、本当に若い子ですから。余りにも胎児の生命保護というような観念、考え方が、感性がなさ過ぎるというふうに思います。
 日本では、エンブリオ、これは胎児なんですが、円ブリオ基金というのがボランティアでございまして、遠藤周作さんの奥様の遠藤順子さんがリーダーシップをとっていらっしゃって、ホットラインで、助産婦さんとか産婦人科の先生とかカウンセラーとかいろいろな方たちの励ましによって、そしてカンパのお金によって七十二人の赤ちゃんが生まれております。
 いろいろなお手紙が来ていますね。「今回出産費用を支援していただいて本当にありがとうございました。無事に出産を終える事ができました。円ブリオの事を知ったおかげで子供を堕さずに産めた事をすごくありがたい事だと思います。」とか、「あの時浅はかに、彼女の生命を奪わず皆様に助けて頂きながら出産できた事は、何も変えがたい喜びです。」「本当に、ありがとうございました。」「このご恩は忘れません。今は無力ですがきっと何かのお役に立ちたいといつも念頭におきつつ生活してまいります。」というような手紙もいただいております。
 そこで、例えば第二条の三項のところに、「少子化に対処するための施策を講ずるに当たっては、」という後に、出産前後における母子に対して適切な法的保護を講じ、特に出産を望みながらもそれを阻害する条件の中で悩みを抱く妊産婦や出産後の子育てに悩む親に対しては、精神的、経済的に適切な支援を行うなどというようなものを入れてはいかがかというふうに思います。それから、「雇用環境の整備」、第十条のところに、「育児休業制度等子どもを生み育てる者の雇用の継続を図るための制度の充実、」の前に、産前産後はもとより低年齢児に対するというような、もう少し幅の広い年齢層を対象にしてはいかがかというふうに思いますけれども、その辺、胎児の命、それから相談制度、サポートシステムについての視点がない、ぜひ入れてほしいという考えに対しては、いかがお考えでございましょうか。

○井上(喜)議員 いずれも大変大切な点の御指摘だと思います。きょうの午前中も、この基本法の修正につきましての意見がございました。案外簡単なところもあるんじゃないかとか、あるいは繰り返し規定をしているところもあるじゃないかというような御意見だったんですね。
 この少子化対策基本法といいますのは、たくさん基本法がありますけれども、私は、大変これは難しい基本法だと思うんですよね。一つの理屈だけでずっと通すような基本法じゃないものですから、規定しております事項もこれはたくさんあります。ただ、方向として、少子化対策に役立つようなものということで、方向は一致をしているのでありますけれども、その対策というのは本当に多方面にわたっているわけですね。しかも、それぞれの事項につきまして、各議員の考え方が若干違うようなこともございまして、できるだけ多くの意見を包摂する、取り上げるというようなことで、これはかなり詳しく取り上げた基本法だと私は思います。
 そういう意味で、ほかの基本法とは非常に中身が違うと考えておりますけれども、せっかくの御発言ですから、どういう表現になるかは別にいたしまして、そういう御意見につきまして、多くの賛同者がございましたら、ぜひとも中に入れていくような検討をしないといけない、こんなふうに思います。

○山谷委員 前向きな御答弁、ありがとうございました。
 続きまして、時間も参りましたので、例えば、保育サービスの充実をうたっておりますけれども、今、乳児ですと、東京都のB区では月に五十六万円、A市では五十三万円、非常にお金がかかることと、それから、二〇〇一年世界子供白書では、三歳になるまでに脳の発達はほぼ完了する、非常に温かく頻繁なコミットが必要だ、コミュニケーションとタッチが必要だというふうに言っています。平成十年版厚生白書では、三歳児神話の否定をうたいましたけれども、これも、三歳児までの発達の重要性と、三歳まで専ら母親だけで育てろと、これの概念の混乱があったわけでございまして、三歳までとにかく温かく頻繁にコミュニケーションとタッチというのは、これは否定できないことだろうというふうに思います。
 今、年間、ゼロ歳児保育、五万人ずつふやしていくということなんですけれども、必要だからわっとふやすということではなくて、EUなどは、家族責任というようなことで、新しい理念のもとに新しい流れができております。ですから、ぜひ、労働者としての親を支援する、需要に応じるというような考え方だけに流れるのではなくて、保育する者、教育する者としての親をサポートするというような、二つの考え方の中でバランスをとって保育政策というのを進めていただきたいと思います。
 それからまた、今税制上も配偶者特別控除の廃止など、家族単位から個人単位になっていく。しかしながら、それはそれとして、児童のいる家庭へのサポートというようなことももっと積極的に考えていくべきではないかというふうに思っております。
 そんなわけで、外注化するのではなくて、家族そして家庭、そして子供の視点、親の父性、母性を育てる視点、そのようなことはどのようにお考えか、お聞かせください。

○西川(京)議員 先ほどから山谷委員の御意見を伺っておりまして、大変賛同する部分があります。私も、第一義的に子供は家庭で育てるべきものだと思っております。ただ、現実問題として、多くの働く母親がふえた中で、その子供たちをいかに安全に保育するかという現実に対する対応として今さまざまな育児支援ができているわけですが、確かにその整備が進めば進むほど母親が子供と距離が離れる、そういう問題も、私も個人的に心の葛藤を持っている一人でございます。
 そういう中で、先ほどの配偶者特別控除の控除の問題につきましても、この問題は、その出た税源はあくまでも子育て支援にそれを利用しなきゃいけないということで、この児童手当の問題、二千五百億使うようになりました。そういう意味での税制面での、特に次世代支援、今回の新しくできます法案につきましては、働く、職業を持ったお母さんだけの整備になりがちなこの措置を、専業主婦、家の中で子育てで頑張っている悩み多きお母さんたちも一緒に、同じように、相談窓口、その他保育園も一時預かりとかそういうことを考えていこうということで、あくまでも働く主婦あるいは専業主婦、それはあくまで個人的な選択の問題だというその意識をきちんと持っていこうという方向も取り入れたつもりでございます。

○山谷委員 内閣府、平成十四年十二月の調査で、子育てのつらさのトップが教育費がかかることでございます。ですから、手厚い児童手当とか、あるいはまた奨学事業の推進などを進めていくことも大事ではないかと思いますが、教育については、第十四条に「ゆとりのある教育の推進等」と規定されておりますけれども、これは数年前にできて、そのころは多分ゆとり路線だったんだと思うんですよ。去年は、学びのすすめと文科大臣がおっしゃるぐらい、学力は低下する、学習意欲は、先進国、OECD最低のレベルになりました。それから、価値観を教えられておりませんので、モラルがなくて、いかに生くべきかというようなその判断材料を子供が育てられる、自分の中で持つことができないということで、これはゆとり教育によってむしろ親も子も苦しんでいる、塾に行かせなきゃいけないということもあるでしょうし。
 そういうわけで、これはもうちょっと文言を工夫したらいいんじゃないかと思いますけれども、その辺いかがでございましょうか。

○井上(喜)議員 このゆとり教育というのは、ここのゆとりある教育と若干違うと思うのでありますけれども、そもそもこのゆとり教育というのは、がちがちの受験のための勉強あるいはそういった教育、そういったことが背景にありまして、もう少し社会性を持った教育ということを考えていいんじゃないかというところから出発したんじゃないかと私は思うのでありますけれども、今の御指摘のように、いささか行き過ぎた面もありまして、余り勉強しないとか、あるいはそのことで保護者の方が心配をする、また塾にも行かさないといけないというような、こういうようなことが出てきているのではないかと思うんでありまして、教育は教育としてこれは検討しないといけないと思うんですよね。だから、今、中教審なんかでいろいろな議論が行われておりますけれども、そういうのを土台にして変えるべきは変えていかないといけない、こんなふうに思うんです。
 ここに言っております「ゆとりのある教育の推進」は、まさに子供を、日本は何といってもまだまだ学歴社会なんですね。学歴社会が多少崩れてはきておりますけれども、まだ牢固としたそれがありまして、子供の教育をどうしていくか、ちゃんとした大学に入れないといけないというような、そういう教育に関する心理的な負担を軽減するためにいろいろなことを考えないといけない、こういう趣旨の教育なんですね。これがゆとりのある教育でありまして、これは今後よく検討していくべき課題だと思うのであります。
 最終的には、やはり日本の学歴社会についての考え方が変わりませんと、私はこういった心理的な負担というのはずっとあると思うので、これは長い期間かかりますけれども、しかし、今一つの御提案もありましたから、そういったことで何か対応ができるのであれば、またそういったことも検討をしてまいりたい、こんなふうに思います。

○山谷委員 チルドレンファースト、それから父性、母性、それから家族の意義を大切にしながら、子育てのすばらしさをみんなが共有していくということが大切だと思いますけれども、きょうの議論で大分哲学とかバランス、それから現状認識というものがはっきりしてきたというふうに思います。
 まだ混乱している部分もあるし、幸せな生き方とは何かということを考えてのこの基本法だと思いますので、さらなる議論の深まりを期待いたします。
 ありがとうございました。

○佐々木委員長 以上で山谷えり子君の質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――