156-衆-文部科学委員会-2号 平成15年02月26日

平成十五年二月二十六日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 古屋 圭司君
   理事 奥山 茂彦君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 馳   浩君 理事 森田 健作君
   理事 鎌田さゆり君 理事 山元  勉君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 佐藤 公治君
      青山  丘君    伊藤信太郎君
      小渕 優子君    大野 松茂君
      岡下 信子君    岸田 文雄君
      近藤 基彦君    佐藤 静雄君
      谷田 武彦君    中谷  元君
      林田  彪君    松野 博一君
      森岡 正宏君    柳澤 伯夫君
      大石 尚子君    木下  厚君
      肥田美代子君    平野 博文君
      藤村  修君    牧野 聖修君
      松沢 成文君    松原  仁君
      山口  壯君    池坊 保子君
      東  順治君    石井 郁子君
      児玉 健次君    中西 績介君
      山内 惠子君    松浪健四郎君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   文部科学副大臣      渡海紀三朗君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   文部科学大臣政務官    大野 松茂君
   政府参考人
   (内閣府男女共同参画局長
   )            坂東眞理子君
   政府参考人
   (警察庁長官官房審議官) 堀内 文隆君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            遠藤純一郎君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局長)        田中壮一郎君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房審議
   官)           山本 晶三君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房審議
   官)           松井 英生君
   文部科学委員会専門員   柴田 寛治君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十六日
 辞任         補欠選任
  鳩山由紀夫君     木下  厚君
同日
 辞任         補欠選任
  木下  厚君     鳩山由紀夫君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 文部科学行政の基本施策に関する件

     ――――◇―――――

○古屋委員長 山内惠子君。

○山内(惠)委員 社民党の山内惠子です。遠山大臣に質問いたします。
 所信表明をなされました八ページに、男女共同参画社会の形成について述べていらっしゃいますが、実は、きのうの質疑の際に配付されました資料の「自己決定から子供救え」という記事とその発言に私は驚きました。また、性と生殖に関する権利が男女共同参画社会基本法の趣旨から逸脱しているという報道も一方にありました。
 その意味で、大臣にお聞きしたいと思いますが、自己決定から子供を救えという、この自己決定に私はこだわるんですけれども、すべての教育は、自己決定できる子供を育てるということが基本にあるのではないかと私は思います。その意味を込めて、性の自己決定権についてどう考えられるか、まず最初にそのことをお聞きしたいと思います。

○遠山国務大臣 昨日山谷委員の方から提出されました、これは新聞に載った論説でございますね、「自己決定から子供救え」、私は、この主張というのはよく理解できますね。
 性の自己決定権なんていうのがよくわからないんでございますけれども、私は、子供たちにとって大事なのは、人間としての尊厳をしっかり守れるかどうか、そして、みずからの将来にとってマイナスになるような行動をしないようにするかどうか、そういったことをきちんと学校教育においても支え、指導していくということが大事だと思っております。

○山内(惠)委員 今回の、性と生殖に関する権利が男女共同参画社会基本法の趣旨に逸脱しているという報道ともあわせてお聞きするともっとよかったかと思うんですけれども、先日、福田康夫官房長官が、十七日でしたかの記者会見で、性の自己決定の規定を盛り込んだ条例について、男女共同参画社会基本法や同基本計画の趣旨に照らして問題はないと述べていますが、その意味でいうと、この逸脱しているという文言は間違いですね。その念押しだけさせてください。

○古屋委員長 田中局長。(山内(惠)委員「違います。大臣に質問です」と呼ぶ)
 まず田中局長が答弁してください。その上で大臣に答弁をいただきます。

○田中政府参考人 委員御指摘の性の自己決定権については、その概念が明確でないと考えております。ただ、男女共同参画基本計画におきましては、リプロダクティブヘルス・ライツの視点から、女性の生涯を通じた健康を支援するための総合的な対策の推進を図ることが必要であるとされておるところでございまして、文部科学省におきましては、この計画に基づきまして学校における性教育の充実に努めているところでございます。

○山内(惠)委員 ただいまのお答えは大臣のおっしゃられたことの趣旨とニュアンスが違うと私は思います。
 私がきょう、たくさんの方に来ていただいているところに丸をつけているのは、具体的にどうなっているかということをお聞きするときにどうしても呼びたいとおっしゃったことを、それではというふうに善意でお答えをして来ていただいているのですけれども、今回は大臣所信ですから、大臣のお答えが聞きたいというのが主ですから、そのことをぜひ重く見て、私はよりすぐってお願いをしようと思っていましたので、ここはやはり大臣にお答えをいただきたいと思います。
 男女共同参画社会基本法の趣旨から、この性と生殖の権利に関してですけれども、逸脱していないですね。

○遠山国務大臣 冒頭の御質問は、自己決定権はどうだという御議論でございましたから、私の考えを述べたわけでございます。
 そのことと男女共同参画基本法の趣旨との関係ということでは、これは先ほど局長もお答えいたしましたように、男女共同参画社会基本法の趣旨というのは、男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮できる社会の実現を目指すことにあるということでございまして、これはそのとおりでございますし、昨日の山谷委員の配付資料におきましては、性教育の場面での性の自己決定ということについての取り扱いについて触れられていたと理解いたしております。
 学校におきます性教育というのは、人間尊重を基盤として、児童生徒の発達段階に応じて性に関する科学的知識を理解させる、これに基づき、みずから考え判断する能力を身につけて望ましい行動をとれるようにするということをねらいとしているわけでございまして、その行動自体が望ましくないような場合には、これは十分指導することは当然学校の責務でございますし、そのことは、保健体育科、それから特別活動、道徳等を中心に、学校教育全体を通じて指導すべきものと考えております。
 各学校におきましては、こうした指導要領の趣旨を踏まえて、児童生徒の発達状況あるいは受容能力というものを十分に考慮し、かつ保護者の理解も得ながら、適切に実施していただくべきものと考えております。

○山内(惠)委員 最初から大臣お一人にお聞きするというふうに絞った方がよかったのかということを今あえて思いました。
 私が質問したのは、きのうの議員の見解についてどうなのかなんということを一つも聞いておりません。そのことと全く別に、私は、この基本法と照らして大臣がどう考えるかをお聞きしたんです。
 確認をさせていただきます。福田康夫官房長官が十七日の午後の記者会見で、性の自己決定権の規定を盛り込んだ条例について、男女共同参画社会基本法や同基本計画の趣旨に照らして問題はないと述べていますが、そのことは間違いありませんねという念押しをさせていただいたんです。間違いありませんね。

○遠山国務大臣 官房長官のお話でございます。そういうことでございましょう。

○山内(惠)委員 性の自己決定権というのを盛り込んだ規定がこれに逸脱していないということを大臣が今おっしゃってくださったということで確認をしたいと思います。
 それで、内閣府の男女共同参画局長に質問いたします。
 文科省としては今のようなお答えだったんですけれども、これらの報道や地方議会での解釈に対し男女共同参画局として、男女共同参画社会基本法の理念を定着させるために、先ほど言ったようなさまざまな論が社説などで書かれるような今日、各地域でこれを条例化するのに大変苦労しているという状況がございますので、男女共同参画局としては、どのような啓発、教育を推進する立場から対策を行っているのかということをお聞きしたいと思います。各地での条例づくりが難航している状況に対して、内閣府からの支援ということでお聞きしたいと思います。

○坂東政府参考人 お答えいたします。
 平成十一年、衆参両院で全会一致で男女共同参画社会基本法が成立しておりますが、その基本法の中では、男女の人権の尊重、政策等の立案及び決定への共同参画、家庭生活における活動と他の活動の両立など、五つの基本理念に基づき施策を実施するということによりまして、男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会を形成することを目的としております。
 この目的や理念を広く、誤解なく国民に理解していただくため、内閣府では、基本法が成立した日でございますけれども、六月二十三日から二十九日まで実施される男女共同参画週間に合わせまして全国会議を開催する、また標語あるいはポスター等を作成する、また、日常的に広報誌あるいはホームページによる情報提供など、いろいろな機会をとらえて広報啓発活動に努めております。
 また、地方公共団体に対しましては、特に、一般的な広報誌、ホームページ以上に情報の交換が必要だというふうに考えておりまして、男女共同参画主管課等課長会議、あるいは政策研修といったような研修の場等で直接職員と質疑や意見の交換を行っております。また、昨年は国会におきまして男女共同参画に関する質疑がございましたので、政府としてはこういうふうに答弁をしているんだという資料を都道府県の担当課に送付するなど情報提供に努めまして、政府の考えていることと都道府県の方で考えておられることができるだけそごがないようにしたいというふうに努めております。
 地方公共団体における条例の策定は、あくまで地方自治、地方議会で住民の方たちの意見を聞きながら進めていかれますが、例えば基本法の考え方等についての問い合わせ等があります場合には、誠実に対応をしております。今後とも、基本法の目的や理念があらゆる場で誤解なく理解されるように努めてまいりたいと思っております。

○山内(惠)委員 ただいまのお答えのとおり、やはり各地で相当苦労していらっしゃいますので、ぜひ支援をしていただきたい。基本法はこの精神でいくんだという先ほどの確認を、全国の皆さんに知っていただきたいというふうに思います。
 昨日の議員の発言の中で、出会い系サイト関連事件が相当ふえている、その部分については私も大変胸を痛めます。また記事のことにちょっと入りますけれども、この記事は、子供を守るために法律で規範を示して犯罪を防止し、失敗したら教育的配慮ある指導で生き直すチャンスをというふうな順序で書かれていたと思いますが、文科省としては最初に法律ありではないと考えます。子供を守るために何が有効だとお考えになりますか。

○田中政府参考人 出会い系サイトに関する御質問でございますけれども、インターネット上の出会い系サイトの利用を通じて子供が児童買春等の被害を受ける事例が急増していることは極めて憂慮すべき状況でございまして、その対策につきましては、社会全体で幅広い取り組みを推進していく必要があると考えておるところでございます。このため、昨年十月には、出会い系サイトに係る児童買春の被害から年少者を守るために、関係省庁におきまして、広報啓発活動等の推進、事業者等に対する協力要請、取り締まりの強化、法整備の検討を内容とする当面講ずべき措置を申し合わせたところでございます。
 これに基づきまして、我が省といたしましては、子供や保護者などに対して出会い系サイトの問題性や注意すべき事項などについて指導や啓発を行っていくこと、二つ目には、性的な関係を持つことによって金銭を得ることは法律で禁じられている売春にほかならない人間として恥ずべき行為であることを子供にしっかりと認識させるなど、規範意識の向上に向けた指導の一層の充実を図ること、三つ目には、子供が情報社会の中で必要な情報を選択し、性の問題も含め望ましい行動をとることができるようにするため、情報活用能力の育成を図ること、こういった教育の充実に努めておるところでございます。

○山内(惠)委員 ただいまの言葉の中に何回も買春という言葉を使われていますが、実は今回の、出会い系サイトというのは十八歳未満の子供が随分対象になっているということを憂慮している、私もそのことは憂慮しているわけです。
 そのことで、国会では、子供買春・子供ポルノ禁止法というのを、これは皆さん、児童と多く法律で使われていますが、子どもの権利条約と同じように、児童の範囲は小学生にのみ使う言葉ですから、子供と使う方が幅広くいきますので、私はそのように使わせていただきますが、子供買春・子供ポルノ禁止法というのは、子供を罰する法律ではありません。このことをする大人に対しての罰則規定が書かれています。その意味で、この法律ができたということを、地域の皆さんや父母の皆さん、保護者の皆さん、そして子供自身に、文科省としてはどうPR、宣伝なさったのか、お聞かせください。

○田中政府参考人 御指摘の、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律が平成十一年五月に成立し公布されたわけでございますけれども、これを受けまして、文部科学省といたしましては、教育関係者等に対しまして、本法律の趣旨、内容等を周知するとともに、関係施策に取り組んできておるところでございます。
 児童買春問題の背景の一つとして、先ほども申し上げましたけれども、子供たちの側にも性を売買することを安易に考える傾向が見られることも踏まえまして、子供たちに性に対する正しい知識を付与するとともに、自分自身を大切にする心、みずからの人権はみずから守るという態度をはぐくむ教育の推進に努力するとともに、さらに、保護者に対しましても、家庭教育ノートの中で援助交際について取り上げまして、その防止のため子供たちに家庭が積極的に働きかけるよう呼びかけるなど、家庭教育の支援を通じまして、児童買春の防止あるいは児童の保護者等への啓発に努めてきているところでございます。

○山内(惠)委員 何回も申し上げますけれども、過去、現在も売春防止法という法律がありますが、売る春と書く言葉とはあえて変えて、買う春と書いてカイシュンと読むんだという造語をこの国会で決めたんです。そのことをお間違えになられること自体に私は大変問題があると思いますので、今後、お間違えにならないようにしていただきたいと思います。
 今おっしゃられた、性に対する正しい知識、性の教育、このことが大変重要であって、文科省としては最初に罰則ありきではないということが今のお話にもあったかと思いますが、その意味でいえば、前国会に、「ラブ&ボディBOOK」を回収されてしまいましたが、私は、子供たちにとって、これは大変有効であったというふうに思います。かけがえのない自分の人生の主人公になるためにと最初に書かれています。かけがえのない自分、自分を大切にする、その自分の体を知る、名称のことなども新聞で取り上げられていますけれども、自分の体であって、名前も知らないというのが、多くの子供たちもそうですし、もしかしたら大人の中にもそういう状況があると思います。
 それをいつ教えるかということはそれぞれの担任が考えることであって、それは学校状況によります。例えば、高学年で初めて性の教育をやられたら聞くのを恥ずかしがってできないけれども、小さなときから男女共学で、例えば男の先生のクラスに保健の女の先生が入ってきてと、本当に学校ではよく努力をしてやっています。その意味でいえば、性の教育をするに当たって、援助交際はこんなふうにと。家庭ノートは全く、ほんの一行か二行、または一ページありましたでしょうか。しかし、自分の体をしっかり知ろうという言葉でいえば、大変有効だったと思います。
 国連の合同エイズプログラムの文書というのがございます。大変厚いものなんですけれども、訳しました一部の説明をいたしますと、さまざまな国で性に対する教育、エイズの関係も含めて教育をなさっているんですが、性の教育をしっかりすることによって、「性教育は性交開始時期を遅らせたり、セックス・パートナーの数を減らしたり、望まない妊娠や性感染症の割合を減らす傾向があり、性教育は若者の性行動を活発化させる要因とはならない」と報告をされています。
 そのことでいえば、前回の国会で、寝た子を起こすなという声がありましたが、一方で、出会い系サイトの問題を考えれば、世の中には性情報が相当あふれてあります。でも、何が自分にとって大事なのかという情報をしっかりと教育されていない状況があるわけで、そのことをしっかり学校教育が取り上げてやることによって今のような報告につながる状況にありますので、これをしっかりと御検討いただいて、見直しをして、もう一度配付するというようなことを考えているのかどうか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

○田中政府参考人 御指摘の「ラブ&ボディBOOK」につきましては、例えば、ピルのメリットについて説明している一方、デメリットについて説明がない等、避妊法の選択のための基本的な説明が十分になされておらず、この本を読むだけでは適切に理解できない部分があったと考えておるところでございまして、文部科学省といたしましては、各学校において生徒の実態と教育上の必要性を勘案して当該冊子については慎重に取り扱うよう、各都道府県教育委員会の指導主事に対して、各学校への指導を要請したところでございます。

○山内(惠)委員 子供がどれだけの情報を持っているか、子供たちが何を望んでいるかということを考えると、慎重にということはよくわかりますけれども、回収をするような問題ではなかったというふうに思います。
 それで、買春防止ということは、大人の意識を変えなければ、こういう情報を出会い系サイトで出せば買う大人があふれているのが日本の社会であるということは、本当に恥ずべきことだと思います。出会い系サイトが三千五百もあるという情報のことを考えても、子供を罰する前にすることがあるということを訴えまして、次の質問に行きます。
 男女共同参画社会基本法についてなんですが、ジェンダーフリーという言葉の定義について、基本法の中に、性別に基づく固定的な役割分業意識にとらわれずという趣旨で書かれていますから、この趣旨であれば、地方自治体の条例が使うことを国としては歓迎すべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○坂東政府参考人 お答えいたします。
 ジェンダー、中でもジェンダーフリーという言葉につきましては、公的な文書、例えば基本法ですとか基本計画の中で使っておりませんので、私どもとしては、それについて責任を持ってこれはこういう定義でありますということをお答えする立場にございません。
 前の国会で私どもが申しましたのは、ジェンダーフリーの定義が使われる方によりましていろいろ違っておりまして、ある方たちはジェンダーフリーを性による抑圧からの解放とか差別をなくすことだというふうな意味で使っていらっしゃいますし、ある方たちは男性と女性の区別をなくして全く同じにしてしまうんだという意味で使っておられる。そういうふうにして定義が大変多様な中で、我々国としては使っていないというふうに申し述べております。

○山内(惠)委員 ジェンダーフリーということは、ジェンダーということを世界的に人口会議などで規定して、一、二、三と書いているわけですけれども、今申し上げました、性別に基づく固定的な役割分業意識にとらわれずという趣旨で使っていくということであれば理解できますねという質問をしたわけです。それで、国としてはそのことを否定していないというお答えを本当はいただきたかったんです。
 せっかくですからここでもう一つ言いますと、ジェンダーというのは、男と女のすべて何もかもなくせということのために言ったのではなくて、第一次性差、第二次性差、第三次性差というふうに性差もしっかり分析しておりまして、生まれたときの男の子、女の子の違いを第一次性差と申します。そしてその後、第二次性差、第三次性差というのは、社会的、文化的につくられた性差です。
 こういうふうな質問ではありませんでしたけれども、昨年十一月二十七日に、女性差別撤廃条約について差別と平等のことをお聞きしたときに、遠山大臣が、男らしさ、女らしさということを強調する余り、特定の形にはめ込んで、本来持っている可能性を狭めることがないようになさるとおっしゃった。その男らしさ、女らしさと言われるものと男と女の違いが違うので、らしさがついたときは第二次性差、第三次性差にかかわりがあります。
 そして、社会的につくられるとはどういうことかというと、ちょっと実例に使わせていただいて恐縮ですけれども、河村副大臣、先ほど父兄という言葉を何げなく使われました。実は、父兄、父と兄と書いてなんですけれども、これは、今の保護者会に父、兄がかわって来ることは本当にまれなことでして、なぜ父兄という言葉が使われた時代があったかというと、母に親権のない時代に使われた用語である。
 その意味で、私たちは父母という言葉を使おうとしましたら、クラスにはさまざまな子供がいて、お父さんのいない、お母さんのいない、それは、使えないという禁止用語なのではなくて配慮しようということですから、保護者という言い方をしたりします。事実、私のクラスに、お父さん、お母さんどころかおじいちゃんもいらっしゃらなくて、おばあちゃんだけが保護者としていられたうちもありました。
 そのことで言えば、ジェンダーに敏感な視点ということが大変重要になってくると思います。その意味で、女性差別撤廃条約が中教審にしっかりと押さえていられたか、子どもの権利条約はどうだったかと、先日の憲法調査会の中で発言をしたんです。鳥居会長は子育ては母の役割ということを力説されましたが、女性差別撤廃条約は、子の養育は男女と社会の責務と書いています。そのことを、この社会は一生懸命、保育所だ、幼稚園だとやっている時代じゃありませんか。そのことを考えると、言葉だけではなく、私たちが批准した条約ぐらいは文科省が具体的に子供たちに説明できるようなことをしていただきたいと私は思っています。
 それと、次の問題も、ほとんど時間がなくなりましたが、北鮮という言葉を使われたことについておわびをするというふうに文科大臣、この間言われた記事がありました。読みましたら、オリンピックのところで朝鮮民主主義人民共和国の方が来られることを歓迎するという趣旨で言われていましたので、ああ、そうだろうなというふうに思いましたが、差別して使ったのではなくて使われたとしたら、これもまた刷り込まれた用語だったのかな、しかし、それはおわびという形で解決しておりますので、そのことは結構です。
 しかし、それであれば、なぜ民族学校の卒業生にほかのインターナショナルの卒業生と同じように受験資格を与えるということをなさらなかったのか、お聞かせいただきたいと思います。

○遠山国務大臣 今のもよくわからない御質問なんでございますけれども、昨年三月に閣議決定されました規制改革推進三カ年計画におきまして、「インターナショナルスクールにおいて一定水準の教育を受けて卒業した生徒が希望する場合には、我が国の大学や高等学校に入学する機会を拡大する。」こととされているところでございます。具体的措置の内容につきましては、平成十三年度中の措置を目指して現在省内で検討しているところでございます。したがって、まだ具体的な内容をお示しする段階ではございません。
 なお、御存じと思いますけれども、大学入学資格につきましては、平成十三年に大学入学資格検定規程を改定いたしまして、外国人学校等の卒業生も含めて、満十六歳以上の人は広く大学入学資格検定を受験できるようになっているところでございます。その意味では、すべての十六歳以上の方々には機会が開かれているということでございます。

○山内(惠)委員 すべてということは、民族学校の卒業生も年齢が来れば認めているということを今おっしゃったんですか。(発言する者あり)失礼しました。大検は開かれているとおっしゃったんですね。わかりました。
 それで、インターナショナルスクールの卒業生に対しては大検を受けなくても大学資格を与えることを検討中、まだ最終結論は出ていらっしゃらないとおっしゃいましたので、では、なぜそこから民族学校を外す方向が検討されているのか、まだ検討中であるから認めることも含めて検討中か、お聞かせください。

○遠山国務大臣 今のお答えは別途いたしますけれども、先ほど、ちょっと私も読み間違えまして、平成十四年度中の措置を目指していると言うべきところを十三年度と言ったようでございます。それから大学入学資格につきましても、平成十一年に規程を改正いたしました。おわびいたします。

○山内(惠)委員 今のお答えは、検討中ということでよろしいんですね。
 朝日新聞の二月二十二日の社説だったんですけれども、朝鮮学校や韓国学校など民族学校には従来どおり受験資格を認めない方向でと書かれていたことを私は大変心配していますので、ぜひこの方たちにも同様の措置を与える方向で検討していただきたいと思います。
 現在、朝鮮学校に通っている生徒や児童は約一万一千人ぐらいで、ほとんどの卒業生が日本に永住するという状況じゃありませんか。日本社会の一員として普通に暮らしている。そういう状況の中で、先日は、日朝の平壌宣言、この文章の中にも、あらゆる努力をすることが書かれていますよね。過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受けとめ、痛切な反省と心からおわびをし、そして最後のところで、双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくというふうに確認されたと。
 国会だけじゃなくて世論の中にも、今回の拉致の方たちの問題があるだけに、やはり風はそこのところに大変厳しいかもしれません。であれば、では、北朝鮮はだめだ、朝鮮民主主義人民共和国はだめだという理由がそこにあるのですか。それから、韓国や中国に対してはどうなのですか。日韓首脳会談における総理のお言葉も、あえて今回は靖国問題には触れずとありますけれども、北東アジアの平和と共同の繁栄という視点からアプローチしたいとおっしゃっている。せっかくこういう状況にある中で、民族学校は排除するというこの論については問題があると思いますので、含めて検討されるのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。

○遠藤政府参考人 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、昨年三月の閣議決定でこうすべしと言われておりますのは、インターナショナルスクールにおいて一定水準の教育を受けて卒業した生徒が希望する場合には、大学や高等学校に入学する機会を拡大すること、こういうことでございますので、その内容について今具体的に検討しているということでございます。

○山内(惠)委員 どういう人を入学させて教育するかというのは、本来大学が判断することだと思います。その意味では、最初から窓口を制限してハードルを高くしてということのないように、ぜひと思います。
 新聞報道によれば、こんなことも書いてありますよね、「学生の人生を左右する教育上の判断を、時の政治情勢で決めるべきではない」。私も、ぜひそのことを受けとめていただきたいと思います。今、北東アジアの平和ということを考えたときに、あえてここでハードルを高くすることをしてはいけないということで、私は、検討の中に民族学校の問題もぜひ入れていただきたいというふうに思います。
 あと時間が五分しかなくなりましたので、心のノートの問題は次のときにやりたいと思います。
 教育基本法の問題について質問いたします。簡単に申し上げます。
 憲法調査会に鳥居会長が来られたときに会長に直接お聞きをしたんですけれども、鳥居会長がおっしゃっていたんですが、文科省でも認められたのが、今回の部会の出席者が、大変悪かった。しかも、中間報告のまとめの案を出されるというときにそれが成立していなかった、それで懇談会に切りかえたということがございまして、前にも申し上げましたが、最後のそれを決める二回のところは両方とも懇談会であった。その懇談会で十分ではなかったまま中間報告を総会に出すというやり方は本当に間違いじゃないか。一九四七年から、教育基本法が制定されてからたっているこの五十数年間の期間を見直していくに当たって、正式の会議でもない懇談会で話されたことで結論を持っていくというのは間違いではないかと思いますので、そのことについてお聞かせください。

○近藤政府参考人 お答えいたします。
 中央教育審議会の中間報告につきましては、平成十三年十一月の諮問以来、総会で十一回、基本問題部会で十六回、これは今委員が御指摘の懇談会を含むわけでありますけれども、大変に精力的な審議を経て、昨年の十一月に中間報告が出されたわけでございます。
 御指摘の第十五回と十六回の基本問題部会は、確かに出席委員が定足数に満たなかった。これは大変残念なことでございますが、基本問題部会は、そもそもそれ自体で案を議決して総会に送る、こういう任務を負っているものではないわけでございますから、手続上の問題はなかったと考えております。
 その後もまた中教審は、大変精力的な御審議をいただいているわけでございまして、国民の皆様方の幅広い御意見を参考としながら、今、答申に向けて精力的な御審議をいただいている、こういうふうに理解をいたしております。

○山内(惠)委員 鳥居会長がこの二回のことについて、二度とこのようなことのないようにしたい、指摘のとおりだとおっしゃったんです。こういう出席すべき人が過半数に満たなかったという状況で論議をしたものが中間報告にいくということ自体、国民に顔向けのできないふまじめさであった、私はそのように思っていることをお伝えしておきたいと思います。
 ところで、この中間報告をまとめるに当たって、ほとんどが教育改革国民会議の、私的諮問機関の考え方をそのまま中教審という公的なルールに乗せられていってしまったんではないかということを私は何度も指摘しているんです。
 私は、鳥居会長にこのように言ったんですね、鳥居会長の先輩であられる高村象平先生は、中教審のあり方について、時の政権の言うようにふらふらすることは私は残念なことなのでしないと。時の権力の中でふらふらするというのは、私の最も嫌いなやり方でございまして、したがって、私自身、時の権力のもとでふらふらしたくないと常に自戒している。そして、その中でもう一つ言っています。中教審などあらゆる審議会の隠れみの論があるけれども、隠れみのにしてはいけないというふうに言っています。
 そのことでいえば、遠山大臣が諮問した諮問文自体がもう本当に隠れみのにしているんじゃないでしょうか。それの証拠に、今回の教育基本法の改正がなぜ必要かということを市川委員が質問されましたけれども、このことについてきちっと、教育基本法のどこが問題だというお答えは、担当の方からも委員の中からも全くなかったというふうに言われています。このようなあり方で今既に最終報告をまとめていらっしゃるだけに、大臣、そのことについて一言お聞かせいただきたいと思います。審議会を隠れみのにしないでいただきたい、このことについてどうお考えでしょうか。

○遠山国務大臣 中央教育審議会は、大変大事な審議会でございまして、各般にわたる教育政策の基本を御議論いただいております。しかも、それは常にオープンでございまして、毎回毎回その内容というものは、皆さんもフォローできるわけでございます。これらは、決して、私どもは隠れみのにしたりあるいは行政が何かというようなことではございません。そのことは毎回毎回の議論でおわかりと思います。

○古屋委員長 質疑時間が終了いたしております。

○山内(惠)委員 オープンであることについては、オープンではありません。私たち議員が傍聴することはできていません。最終報告の前に、しっかりと参考人として呼んでいただくという石井議員の発言に私は賛成ですので、集中審議を御検討ください。
 ありがとうございました。

○古屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十五分散会