155-衆-青少年問題に関する特別…-2号 平成14年11月21日

平成十四年十一月二十一日(木曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 青山 二三君
   理事 馳   浩君 理事 林田  彪君
   理事 松宮  勲君 理事 森田 健作君
   理事 肥田美代子君 理事 山口  壯君
   理事 丸谷 佳織君 理事 達増 拓也君
      小野 晋也君    小渕 優子君
      太田 誠一君    岡下 信子君
      上川 陽子君    河野 太郎君
      阪上 善秀君    石毛えい子君
      武正 公一君    水島 広子君
      山谷えり子君    石井 郁子君
      原  陽子君
    …………………………………
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   内閣府副大臣       米田 建三君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   政府参考人
   (内閣法制局第一部長)  宮崎 礼壹君
   政府参考人
   (内閣府大臣官房審議官) 石川  正君
   政府参考人
   (内閣府男女共同参画局長
   )            坂東眞理子君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  瀬川 勝久君
   政府参考人
   (総務省総合通信基盤局電
   気通信事業部長)     鈴木 康雄君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部人権人道課長
   )            泉  裕泰君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局長)        遠藤純一郎君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           青木  豊君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局次
   長)           三沢  孝君
   政府参考人
   (厚生労働省職業能力開発
   局長)          坂本由紀子君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房審議
   官)           松井 英生君
   衆議院調査局青少年問題に
   関する特別調査室長    石田 俊彦君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 青少年問題に関する件

     ――――◇―――――

○青山委員長 次に、山谷えり子さん。

○山谷委員 民主党の山谷えり子でございます。
 今、武正議員も、男女共同参画社会とはというやりとりがございましたけれども、男女共同参画社会というのは、性別にかかわりなく、個性や能力を十分に発揮できる社会をつくることであり、職場での差別の是正とか、生活慣習面での抑圧的な部分というのは見直していきたいというふうに思っております。
 しかしながら、保育や教育の場で、行き過ぎも現在あるように感じております。男性と女性の区別をなくす、違いを排除していくという画一的、機械的な場面が見られる。今の高校の男女共学問題もそうかもしれません。
 私も、公立、私立、それから男女共学校、女子校、それぞれで育ちまして、それぞれのよさというものを身をもって体験しております。アメリカなどでも女子大のよさというのが今急速に見直されておりますし、今、国立の女子大も男女共学化というような検討もされているようでございますけれども、ぜひともこれは、歴史や伝統、文化、それぞれの多様性という視点で考えていくことがこれから大事なのではないかというふうに思います。
 さて、この委員会で、四月十一日、「未来を育てる基本のき」というような小冊子の中では、押しつけるような子育てをしていませんか、女の子だったらおひな様、男の子だったらこいのぼりなどというようなこと、これについての感想を福田官房長官に求めましたところ、「例示を見ましたら、正直言って、私も余りこれに賛成しません。」というふうにお答えになられました。
 この冊子の中に、「子育てはジェンダー・フリーで」と書かれております。「ジェンダー・フリーに育ってほしいものです。」と書かれております。
 ここで、「ふりーせる保育」という記述がございます。フリーダム、リリーフ、セルフコンフィデンス、もうわけのわからない単語を並べて「ふりーせる保育」ということを言っておりまして、子供の人権、ジェンダーフリーの視点をベースにした保育プログラムで、松戸市で今三カ所で実践中ということで、私もちょっと保護者に取材をさせていただきました。
 そうしましたら、「ふりーせる保育」をする、急に説明会があるというふうに言われた。保護者が、欠席の保護者のためにビデオを撮っていいですかと言ったら、肖像権の侵害になるからやめてくれと保育所側から言われた。そこで、行きましたところ、いきなり、松戸市男女共同参画プランの資料を配布されて、かなり厚いものですが、児童の権利の尊重、男女共同参画社会づくり、性の差別意識、ジェンダーフリーの説明があった。保護者は、ぽかんとしてしまった。一体何の説明だろうとぽかんとしてしまった。
 実際、始まった保育が、食事やおやつの時間も自由ということで、遊びに夢中の子は食べ忘れてしまう。それから、言葉遣いとかしつけが悪くなっていく。担任制も廃止されたので、子供と先生の関係が薄まっていく。お別れ会に何か発表させましょうよと親が言ったらば、それは子供の意思を尊重しなければいけないから、子供が決めることだ、幼児でも判断基準があるというふうに言われて寂しい気持ちになった。
 それから、お母さんたちが、運動会で「慎吾ママのおはロック」のCDをかけて一緒にダンスをしたいと言ったらば、お母さんが朝御飯をつくるというフレーズがジェンダーフリーに反するからだめだと言われて、歌詞をなくしてカラオケだけでやった。
 それから、「桃太郎」の本を読もうとしたら、おじいさんがしば刈りに、おばあさんが川に洗濯に、これがジェンダーフリーにかかわるからだめだというふうに言われたということでございます。
 実際、公民館では、「桃太郎」というのは暴力的で、とにかくジェンダーバイアスを押しつけるお話だから、「桃子の鬼退治」なんというふうに変えたりして読もうなんという運動がありまして、来年の高校の教科書では、「ある生徒は、このようなジェンダーにとらわれない幼児に育ってほしいと、だれもが知っている「桃太郎」のお話を「ももからうまれたももこちゃん」と改題してジェンダーフリーな絵本を創り、保育所の子どもたちに読んでもらった」。これはもう検定で合格しております、来年の春から使われる高校の教科書でございます。
 このようないろいろな動きがあるわけでございますね。これは、この「ふりーせる保育」だけではなくて、このような伝統行事を否定したり、このような絵本を書きかえたりという動きは、全国に保育の場で広がっております。とにかく保育所職員に研修、保護者には情報提供という形で、何か言おうものなら、それは間違っているというようなことで否定されてしまうというような苦情が今上がってきております。
 十一月十五日、衆議院の内閣委員会で、米田副大臣は、男女共同参画社会について、画一的、機械的に男女の違いを認めないというものではない、今、混乱がある、政府の立場をはっきりさせるために、十一月十二日の参議院の内閣委員会での福田大臣と米田副大臣の発言議事録、質疑応答を刷り物にして、全国の都道府県に配布いたしますというふうなお話でございました。
 内閣府に問い合わせたところ、配布してどうするんですかと言ったら、男女共同参画課に配布して、問い合わせがあったら答えるというようなお答えでございました。
 私は、今、保育現場、教育現場のこのような現状を見るにつけ、それだけでは不十分だというふうに思っております。一体、現場がどうなっているのか、調査していただきたいですし、それから、保育、教育等の現場までこのやりとりが伝わるような、さらに進んだ方策をぜひとも考えていただきたいというふうに思います。
 十一月十二日の参議院の内閣委員会で、内閣府の坂東眞理子男女共同参画局長は、ジェンダーイクオリティーとかジェンダーフェアネスという言葉はあるけれども、ジェンダーフリーという言葉はないではないかという質問に対して、そのとおりだ、ジェンダーフリーという用語はアメリカでもない、北京宣言でも国連婦人の地位委員会でもない、日本の男女共同参画社会基本法でも計画でも使用していない、画一的に男性と女性の違いを一切排除しようという人がいるが、そのような意味での社会づくりを目指してはいないというふうにお答えになりました。
 これは青少年健全育成の団体のグッズなんですけれども、これにも、ジェンダーフリーな社会を目指して、図書館でジェンダーフリーの絵本が待っているよ、こう書かれているんですね。相当なものなんでございます。官房長官、どういたしましょう。御所見をお伺いしたいと思います。

○福田国務大臣 今、お話を聞いていて、正直言って、よくわからないことが多かったです。どうも私の現実感覚からは遠く離れたところのお話が大分多くございます。
 そういうことでありますが、まあ、余り行き過ぎちゃいかぬということは率直に思いますね。ほどほどにしてほしいという感じがいたします。

○山谷委員 米田副大臣、いかがでございますか。

○米田副大臣 十二日の参議院の内閣委員会の質疑応答を都道府県に配布するというお答えを申し上げたわけでありますが、今伺いまして、都道府県の担当課にとどめ置いて問い合わせがあったら答える、それでは消極的ではないかというお尋ねでありました。
 私もそれでは消極的だと思いますので、担当者に、もうちょっと迅速に政府の基本的な立場は伝えるべく手段を講ずるように、この後、指示するつもりでおります。
 また、御指摘のさまざまな現象、今、官房長官も、びっくりしているというふうにおっしゃいましたが、私もやはり、伺って、大変ゆゆしき事態だと思います。
 差別をなくすことは人類の共通の、また恒久的な課題でありますが、おのずからある区別というものもまたあるわけでありまして、画一的また機械的に男女の違いを否定するものではないということは政府の基本的な考え方であります。
 お話を伺っておりまして、ロシア革命直後のボルシェビキ政権におけるソビエト社会の混乱、あるいはポル・ポト支配下のカンボジアのさまざまな社会的混乱、あるいは中国の文化大革命下における混乱、それらを想起いたしました。
 よほど注意してきちんと施策を進めないと誤った方向にいく危険性がございますので、政府としては、これからも、この間の参議院の内閣委員会におきまして官房長官そして私が答弁を申し上げた基本姿勢にのっとって施策を推進してまいりたいというふうに思います。