155-参-厚生労働委員会-6号 平成14年11月19日

平成十四年十一月十九日(火曜日)
   午前十時五分開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月十四日
    辞任         補欠選任
     山本  保君     風間  昶君
 十一月十八日
    辞任         補欠選任
     浅尾慶一郎君     円 より子君
     朝日 俊弘君     福山 哲郎君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         金田 勝年君
    理 事
                武見 敬三君
                中島 眞人君
                山本 孝史君
                沢 たまき君
    委 員
                狩野  安君
                斎藤 十朗君
                伊達 忠一君
                中原  爽君
                南野知惠子君
                藤井 基之君
                宮崎 秀樹君
                森田 次夫君
                今泉  昭君
                谷  博之君
                福山 哲郎君
                堀  利和君
                円 より子君
                風間  昶君
                井上 美代君
                小池  晃君
                西川きよし君
                森 ゆうこ君
                大脇 雅子君
   国務大臣
       厚生労働大臣   坂口  力君
   副大臣
       厚生労働副大臣  鴨下 一郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        川邊  新君
   政府参考人
       法務大臣官房審
       議官       原田 晃治君
       法務省民事局長  房村 精一君
       厚生労働省職業
       安定局長     戸苅 利和君
       厚生労働省雇用
       均等・児童家庭
       局長       岩田喜美枝君
       厚生労働省社会
       ・援護局長    河村 博江君
       国土交通省住宅
       局長       松野  仁君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○政府参考人の出席要求に関する件
○母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案
 (第百五十四回国会内閣提出、第百五十五回国
 会衆議院送付)

    ─────────────

○委員長(金田勝年君) 次に、母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案につきましては既に趣旨説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○円より子君 おはようございます。民主党・新緑風会の円より子でございます。
 本来は財政金融委員会に属しておりますが、今日は、かなり重要な法案として、私、質問させていただきたくこの委員会に参らせていただきました。
 御存じのように、今日審議されます母子寡婦福祉法ですが、これは衆議院を通ってこちらに参りましたけれども、この法案がもし通らなくても、もう既に厚労省は、今年度の予算措置といたしまして、今年の十二月分から児童扶養手当が減額されることになっております。もう既にこれは国会審議と関係、関係なくではありませんが、三月の時点の予算が通った時点でもう減額が決まってしまっているわけですね。減額が決まっておりますが、残念ながら、これは私たち、もう一年半以上前から民主党でもワーキングチームを作りましてこの削減に反対してきたわけでございますけれども、既に決まってしまったと。今、これについてはもう手の施しようがない。
 そしてさらに、今回の法案に関しましては大きな、受給後五年で全額切られてしまうというようなこともあって、これも反対運動の中からようやく全額なくなるということは阻止できたわけですが、ほかにも多々問題点がございまして、私、今日は質問させていただきたいと参ったわけでございます。
 御存じのように、児童扶養手当と申しますのは、一九五九年の十一月に発足いたしました国民年金法によります母子年金、母子福祉年金、これは死別母子家庭にだけ対象として出るものでございますが、当時、同じように生別母子家庭も大変困窮した状況にありましたので、生別の母子家庭にも死別母子と同じような母子福祉年金や母子年金を出したらどうかということが議論されたわけでございますが、当時、離婚というのは保険事故になじまないという議論がございました。つまり、当事者の意思でいかようにも調節できるものを事故に入れると逆選択が起きる、これが主流だったわけですが、私は長い間離婚を、だれもが離婚などというものはしたいと思う人はいないわけで、人生の中で縁あって一緒になった人と、そして子供までなした人とずっと一緒に添い遂げられればいいと思っている方が大部分だと思うんですが、暴力ですとか浮気ですとか、様々な苦痛によって離婚せざるを得ない方たちがいるわけで、それが当事者の意思でいかようにも調節できるものかということに対してはもう一度考えることが必要なのではないかと思いますが、そのことがありまして、一九六一年に生別母子家庭を対象として、それも児童を対象として児童扶養手当法ができたわけでございます。
 当時は十五歳まででございました。それを長い間、母子世帯のお母さんたちが本当に日給月給の厳しい生活状況の中で、広島等から皆さん上京なさって、厚生労働省、その当時は厚生省ですが、陳情なさって、そしてようやく一九七六年に十八歳まで引き上げられた。そして、一九九三年の細川内閣のときに、十八歳では高校卒業できない人が出てくるということで高校卒業までというふうに、少しずつですが金額も上がり、そして年齢も引き上げられてきたというようなことがございます。
 そうした中で、一九八五年でしたでしょうか、このころ、七年で打ち切りという案が既にやはり出ました。また、児童扶養手当法の目的を変えて、児童に対して渡すのではなくて家庭に対してというふうに目的まで変えられたということがございましたが、そうした中で、ずっと私ども、まだ私、国会議員ではございませんでしたが、運動を重ねてきて、その成果を、成果といっても七年打切りをやめさせたりとか、父親の所得を入れるとか、その辺りのとても現実に即さないものを反対して、それを取り下げた経緯をこの「世紀をひらく児童の権利保障」というような本にまとめた経緯もございます。
 さて、こうした中で、十八歳という児童の年齢についてお聞きしたいと思っているんですが、一九八二年に世界の第十回世界労働組合大会というものがございまして、そのときに新しい社会保障憲章というのができました。そこの中で、法律が保障する家族手当制度は家族扶養の責任が一人の肩に掛かっている片親世帯に特に有利でなければならないという、そしてその必要性は死別以上に生別は高いというようなことがきちんと世界で、各国で保障されております、憲章として採択されております。
 そして、私が先ほどからるる児童扶養手当法ができた状況、母子福祉年金、これはもう今一九八五年の改正で遺族基礎年金として再編成されて裁定替えされておりますけれども、その母子福祉年金の補完制として児童手当の一種としてできたものでございますけれども、この児童扶養手当法において児童とは何歳を指すものか、ちょっとお答えいただきたいんですが。

○政府参考人(岩田喜美枝君) 子供が十八歳に達した年の年度末まででございます。

○円より子君 児童福祉法においても十八歳未満を児童としておりますし、私が国会で議員立法で作りました児童買春・児童ポルノ禁止法とか、そういった子供の権利保障、様々なものを見ましても、条約や法律を見ましても十八歳、大体なっております。
 それは、十八歳までといいますのは、親が生活保持義務責任を負うからこそ、その責任を果たせるように保障せよというのが社会保障でございまして、家族給付に対するそれは権利要求だと思うんですけれども。
 そうしますと、今回、五年後に切るとかそういうことは、そもそも最初全額切ることになっておりましたが、例えば三歳までの子供がいるとか、大変、母親が例えば病気とか障害を持っていて貧困であるとかというときには考慮するというふうになっておりましたが、もし三歳の子を持つ母が離婚して、そして五年後に受給が切られるということになりますと、八歳ですよね。そうすると児童じゃなくなるというふうになるんでしょうか。そういったことを考えてこの最初の案をお作りになったんでしょうか。

○政府参考人(岩田喜美枝君) 母子家庭の生活の安定と向上のために児童扶養手当制度は大変重要な役割を担っておりますけれども、これだけで生活の安定、向上が図られるということでもございませんで、広い意味の母子家庭対策ということでは、子供が十八歳、そしてその十八歳に到達した年の年度末まで念頭に置いた対策が重要であるという考え方の下で従来からやってきております。

○円より子君 もちろんこれだけで生活できるものではありません、金額的にも。ですが、後からお話しいたしますけれども、ほとんど常用雇用ができない。御存じのように、岩田さんもお分かりだと思いますけれども、女性は人生を細切れにされがちなところがあります。労働力を見ても、M字型になっておりますのは、結婚した後、子供が生まれる、育児等、またその後介護等様々な、夫の転勤もあります。どうしても仕事を続けたくても続けられない状況がありました。最近はようやく保育の現場も良くなってまいりましたけれども、私たちの先輩たちは本当に仕事を続けたくても続けられない、そういった方たちが多かったと思います。よほど親が面倒を見てくれるとか家の収入が、夫の収入が良くてベビーシッターやそういった人たちを雇えるとかという人以外はできなかったわけですね。やむを得ずお辞めになった方たちもたくさんいまして、そして例えば、まさか自分が離婚するなんて思っていないときに離婚ということになりますと、それはもう家を探さなきゃいけない、また仕事を探さなきゃいけない。そのときに採用上限年齢というのがありまして、試験すら年齢制限によって受けられない。日本では男女雇用機会均等法ができましたけれども、なかなか間接差別の年齢制限を撤廃するところまでは行っていなかったと思います。今も行っておりません。
 私も昨日、おとといと「とらばーゆ」や新聞の求人情報を全部見ましたが、もう私なんか五十を過ぎておりますとうんざりするぐらい、全部三十五まで、四十歳まで。そういったことばかりで、もう見るのが嫌になってしまいますよね。ハローワークに行っても、四十歳までという形で、仕事がございません。そうしますと、どうしてもパートですと景気の調整弁で使われますから、百万とか百三十万ぐらいの年収しかフルタイム働いたって取れないわけですね。そういったときに、この児童扶養手当というのは本当にどうしようもない、こんなのもらわなくたってやっていけるならやっていきたいというお母さんたちがほとんどなんですが、できないわけです。
 そうした中で、質問に移りますが、この五年で切るということは、今おっしゃったように、八歳とか十歳とかという子供たち、そしてこれが全額を切らなくなりました、ようやく。私も坂口厚生労働大臣にもいろいろ陳情いたしまして、これ五年で切ることはどうなのかということで最初の案は何とか撤回され全額切ることはなくなりましたけれども、もしこれが五年後施行されると私は裁判が起きるのではないかと思っております。
 それは、御存じのように、非婚の母が、認知されなかった子供がようやく父親に子供が認知されて、そのときに児童扶養手当の支給停止というものがございまして、そのときに憲法十四条違背として複数の訴訟が出たことは御存じだと思います。このとき、今年の一月三十一日ですけれども、最高裁が、法の委任の範囲を逸脱し違法であるとして無効としております。もちろん、このとき憲法判断はしておりませんが。
 憲法十四条というのはよく御存じだと思いますが、国会議員の方々に申し上げるのは恐縮でございますが、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」ということがしっかりとうたわれておりますが、これは例えば同じ十歳、先ほど申しました八歳でもいいんですが、の子供が、母親が五年前に離婚した子と最近離婚したばかりの子がいるときに、五年後の施行後のことですけれども、母親の収入が同じですのに五年前に離婚した子の方が受給額が少ないというようなことが起こり得るわけで、子供同士を比較すると不平等だと、こういったことは幾ら政府側が理屈があっても訴訟を防ぐことは私はできないだろうと思いますし、もしこれは、先ほど認知で支給停止ので最高裁が無効としましたように、五年後減額が児童扶養手当の目的に反するという形で法の委任の範囲の逸脱に当たるのではないかということで、この場合、国は勝てないのではないかと思います。
 こういったことがあることを一応意見として申し上げて、五年で切ることをもう一度これは削除なさったらどうか、御意見を伺いたいと思います。

○政府参考人(岩田喜美枝君) 今回の改正案では、児童扶養手当制度につきまして、離婚後の生活の激変の期間、一定の期間、これを五年程度と見ているわけですけれども、この間に自立促進のための様々な施策を集中的に講じて自立を促進するということと併せて総合的に母子家庭の自立の促進、生活の安定を図っていこうというふうに考えているものでございます。特に、今、大変母子家庭が増えている、今後もその傾向は変わらないというふうに思いますが、その中で、やはり児童扶養手当制度自体を安定的なものとして将来に向けて維持していくということが大変大事かというふうに思いますので、そういう観点からの今回の見直しでございます。
 この五年間が経過した後でございますけれども、今、委員が御指摘なさいましたように、私ども政府部内の検討の過程では一時五年間で支給を打ち切るということがございましたけれども、様々な関係者の御意見も踏まえまして、一律に打ち切るということではなく、その後も今後講じることとしている子育てあるいは生活の支援策、別れた夫からの養育費の確保策、そして就労などによる経済的な自立支援策、こういったようなものの状況も踏まえながら、いきなり五年で打ち切るということではなくて、一定額を率で削減するという方式を取りたいというふうに思っているわけでございます。

○円より子君 五年でという期間なんですけれども、確かに、私も何万件の離婚件数見ておりますけれども、離婚直後、それからその前の別居の期間、その間が大変生活が厳しいことはよく分かっておりまして、その間に手厚くするということは大事だと思うんですね。そうしますと、逆に五年で切るということよりも、その間に手厚くする、増額すべきぐらいのことなんですよね。それを反対だということに対して大変遺憾だと思いますけれども、とにかくその五年の根拠について諸外国の例を参考になさったように思うんです。
 やはり岩田さんの答弁で、諸外国は離死別直後の激変の時期の緩和の措置として、米国は五年、フランスは一年、ドイツは六年と短期間の間に自立の努力をしてもらっていると答弁なさっています。私も、短期間で自立の努力をし、そして自立できればもう一番いいともちろん思っております。ただ、努力していないわけではないので、そこを皆さんの努力に政府なり私たちが後押しをするという、そういった形になっていかなきゃいけないんですが。
 実は米国の社会福祉改革法が一九九六年に改正されまして、AFDCの受給期間をこのときに五年間に制限したんですね。このことを局長はおっしゃっているんだと思いますが、それはなぜそのときアメリカができたか、五年に制限できたか、この背景を御存じなくておやりになったらそれはおかしいと思います。それは、アメリカの経済がそれまでずっと十年間、右肩上がりで大変な好景気だったために改正が可能だったんです。日本でもバブルのころは、母子家庭のお母さん、三歳の子供がいても、どういう状況であってもほとんど仕事が見付かりました。今、でも全然見付かっておりません。
 例えば、これ厚生労働省から昨日いただいた各年七―九の母子世帯の完全失業率の推移ですが、今年七月八・九%、八月一〇・三%、これが九月に七・三%と減りまして私ほっといたしました、これを見ますと。でも、今失業率、一般の平均五・四%ですよね。随分高いです。この九月で七・三%ということは、今御存じだと思いますけれども、竹中さんが不良債権処理の加速をおっしゃって、それ以来、銀行の信用収縮、資産圧縮はもうどんどん進んでおります。この十二月、それから来年の三月までにどれだけの企業がつぶれるか。もう日本は本当にどうも回復不可能なぐらいの経済状態になっているんじゃないか。何もそれを国民を脅して不安を募らせることはないわけですが、現実に大変な状況になっております。
 そして、こういった不況が一番早く現れるのが、弱者と言うとおかしいですけれども、やはり仕事がパートですとか臨時ですとか派遣ですとか、不安定な方たちに一番現れるんですね。私は離婚した女性たちのネットワーク、全国に持っておりますが、この三年前ぐらいから、忘年会を開いても子供たちとの合宿開いても、いつも出てくる話は、せっかくパートから頑張って正社員になれたのに、その会社が倒産したとかリストラに遭ったとか、もう本当にそんな話ばかりです。三年前からございました。
 それはどうしてかといいますと、先ほども申し上げましたように、中途就職ができるのは、大企業だとパートしかなく、正社員は中小零細企業、日本の場合は中小企業が九八%もありますし、七〇%以上が中小の従業員ですから、中小にも本当に種類がございますが、母子家庭のお母さんたちが就職するのは本当に小さなところなんですね。そういったところが一番まじめに働いても被害を受けているというのが現状でございまして、私は一生懸命五年の間に自立するための就労支援をしたいというお気持ちはよく分かるんですけれども、私もその方向で今後やっていくべきだというか、以前から本来はそうやるべきだったとは思いますが、先ほど申し上げたように、経済がいいときにこそおやりになるべきで、不良債権処理の加速も今は一番よくないし、こういった手当を受けるのも一番タイミングとしては最悪のときだと思います。
 五年後にちゃんと就労の実が上がるとお思いになっているんでしょうか。

○政府参考人(岩田喜美枝君) 委員がおっしゃいましたように、確かに母子家庭の母親の経済的な自立支援に景気の動向、雇用失業情勢の動向というのは大変大きく影響するものであるというふうに思います。
 しかしながら、少し長いタームで見ていただければ、初めて我が国で母子家庭対策が導入されました昭和三十年代、このころは働く女性は未婚の若い女性でございまして、結婚なさった女性が働くというような実態がほとんどございませんでした。それが四十年代になり、少しパートタイマーで就労される既婚女性が現れ、そして五十年度以降、大卒の女性も含めて正社員として就業の機会がどんどん広がっていき、そして昭和六十一年の均等法の施行以降、育児休業法その他の関係の施策もございまして、ようやくここに来て女性も男性と同じ機会を得て働くことができるようになったということがあるように思います。
 そういった女性労働の歴史を踏まえて、従来は既婚女性が働くということが前提でなかった社会ででき上がった母子家庭対策の枠組みを、経済的な現金の給付という支援だけではなくて、経済的に活動していただいて自立を支援するための対策、そこを十分拡充をするということで今回対策の枠組みを決めさせていただきたいわけでございます。
 景気動向が御案内のように大変厳しゅうございますから、その中でいかに産業界の御理解をいただくか、そして国や地方公共団体自らもできることであれば事業をアウトソースするときに母子団体を使うとかといったような、あるいは直接雇用というようなこともあるかもしれませんが、産業界そして公共のセクション、そういうところが全力を挙げてどれだけ雇用の機会を確保することができるかということが大変大きな課題であるというふうに思っております。

○円より子君 五年後のことですが、景気が回復して女性たちがしっかり就労できるようになっていることを私も願うものでございますけれども、その五年後の状況を見て減額率を定めるということになっておりますけれども、五年ごとに行われております全国母子世帯等実態調査は次が平成十五年なんですね。これを見ないで今回の改正になったわけですけれども、一応労研か何かに調査はさせていらっしゃいますけれども、今度はそうしますと平成二十年なんですね。その調査結果が出るのはこの五年後の削減率を決める後になってしまうんです。これ、前倒しにしてしっかりと調査なさるつもりはございませんか。大臣、いかがですか。

○国務大臣(坂口力君) 円先生の様々な御主張を聞かせていただいておりまして、その御主張につきましては私も十分に理解できるところでございます。
 今回も、平成十五年の調査に間に合わなかったわけでございますが、しかし一定の調査をさせていただきました。この次の、五年後でございますから、少なくともその前年には一度調査をしなければならないというふうに思っております。それは前倒しをするのか、それとも別途この調査にふさわしい調査を行うのかということは決めておりませんけれども、少なくとも一年前には調査をしなければならない。現状をよく認識をしなければなりませんし、様々な団体の皆さん方にも現状につきましてよくお話を伺わなければならないと思っている次第でございます。

○円より子君 就労支援の具体案についてお聞きしたいと思いますけれども、今回、自立支援教育給付と母子家庭高等技能訓練促進費、それから常用雇用転換奨励金の給付ということがありますが、それぞれ何名ぐらいを対象と考えていらっしゃいますか。

○政府参考人(岩田喜美枝君) 今おっしゃいました三つの給付金につきましては、来年度の概算要求に盛り込んでおりますので年末の予算編成過程でこれから査定がされるわけでございますが、概算要求の時点では、自立支援教育訓練給付金につきましては約六千人、母子家庭高等技能訓練促進費につきましては約二千人、常用雇用転換奨励金については約二千人ということで、合計約一万人を対象としたいというふうに厚生労働省としては財務省に要求をいたしております。

○円より子君 今回の、もう既に減額になった、この法案が通らなくても減額になる人たちが三十三万人いるわけですけれども、そして今、全体に三七・五%のお母さんたちが、母子家庭の場合、パートや臨時雇用なんですね。そうしますと、その人たちの収入が大体百三十万ぐらいと。その人たちにこの支援策がしっかり実のある形で効果が出て、そして正社員になれるとか、また収入が上がるとかという形にしなきゃいけないわけですが、最初の自立支援教育訓練給付金の創設、これは受講料の八割相当額、上限三十万円、下限八千円という形で、受講料の一部を職業能力開発のための講座を受講した場合に講座終了後に支給するとなっているんですね。そういった金額がお母さんたちが出せるかどうかというような問題があります。
 それからもう一つ、パートをしながら何とか増収したい、子供を高校に行かせたい、そういったお母さんたちがパートを辞めてこの訓練を受けるなんということはできないわけです。この二番目の母子家庭高等技能訓練促進費もそうですが、これも二年又は三年掛かるような、資格を取れるようなものに対して、例えば三年掛かるとしたら、最初の二年は自分でお金を出して自活しながらやってくれれば後の一年分ぐらいは出しますよという、後からなんですね。
 そうすると、仕事を辞めて、その間だれが食べさせてくれるか。世帯主なんですね。そうすると、夜とかそれから土日とか、そういうときに仕事ができるのか。また、そういったときにちゃんと保育所があるのか。保育所があっても、子供とは、じゃ、もう四六時中接触もできないような状況になっていいのか。
 そういったことを考えますと、保育のことや、それから土日の相談業務、就労の訓練、夜間、それだけじゃなくて在宅でできる通信教育のようなものですね、そういったものをきめ細かく配慮しなければ、この二つの支援策は私は絵にかいたもちになると思いますが、いかがですか。

○政府参考人(岩田喜美枝君) 委員がおっしゃるとおりであると思います。
 パートタイム就労に就きながら職業能力を更に高めて、そして安定的な常用雇用に移っていくというためには、お子さんを育てながら、そしてパートの就労をしながら教育訓練が受けられるということが必要であるというふうに思います。ですから、職業に関する相談や教育訓練の機関は、ウイークデーの昼間だけではなくて、夜あるいは週末にもやられる必要があるというふうに思います。公共的な講習を受講する場合の講習の設定の問題でもあろうかと思いますし、また民間の様々な教育訓練機会がございますから、それらの中から夜間や休日やっているものを活用する、あるいは通信教育を活用するということもあろうと思います。
 また、お子さんを見ていただかないといけないわけですから、教育訓練中の子育ての体制もしっかりしないといけないというふうには考えております。そのために今後やりたいというふうに思っているわけですが、講習会の会場に併せて保育のための事業を実施する、あるいは、これまでは介護人派遣事業と申しまして母子家庭にヘルパーさんを派遣する事業がございましたけれども、この派遣先が母子家庭の自宅に限られておりましたけれども、例えばお母さんが教育訓練を受ける場所にも派遣してもらえるなど、様々な工夫をしながら、この教育訓練が実際の能力アップに結び付き、そして正社員に転換するということに結び付きますように工夫を重ねてまいりたいと思います。

○円より子君 今、全国には休日保育をやっているところは十三年度実績では二百七十一か所しかございません。これはたった一・二%なんですね、公立の保育所の中の。それから、延長保育も九千四百三十一か所、これは二分の一弱ですけれども、ほとんどが七時までの一時間の延長だけなんですね。
 ですから、こういったことを考えますと、母子家庭のお母さんだけに限らず、是非、保育というものが仕事をしながらのお母さんたちに対して十分配慮できるようなものであってほしいと思いますし、それから、今おっしゃったように、母子家庭のお母さんが職業訓練を受けるときにそういった保育ができるような状況、また先ほど申し上げた通信教育のときにもちゃんとこの教育給付金が出るような、そういったきめ細かい対策をしっかり打っていただきたいと思いますが。
 札幌にこの間行きましたときに、母子福祉会の札幌母連というところがあるんですが、そこは日曜日に講習会をお母さんのために開いていらっしゃいまして、ちゃんと日曜日の休日の保育をそこでやっていらっしゃるんですが、やはり市からの補助金がどんどん削られてまいりまして大変運営が厳しいというふうにおっしゃっていましたが、そこを利用していらっしゃるお母さんたちにとってはこんな有り難いものはないとやはりおっしゃっておりました。
 是非、そういう本当に自立したいというお母さんたちの声を吸い上げて、きめ細かい対策を打っていただきたいと思います。
 もう一つ、常用雇用の転換奨励金のことについてなんですが、先ほどから何度もパートから正社員に、常用雇用になっていただきたいとおっしゃっておりますけれども、今、現実にこの不況下で、正社員を派遣やパートに切り替えているのが現実なんですよ。とてもパートからこの五年間で私は常用に切り替わるなんてことはあり得ないと思っているんです。そうしますと、この四億五百万ですか、これがもしかしたら何も利用されないということもあり得るんじゃないかと思います。
 その懸念をまるで表すように、今年十月六日の読売新聞に出ていた記事でございますけれども、リストラされる社員の再就職を促す再就職支援給付金制度が昨年十二月にスタートして、今年の七月までの八か月間にわずか八人の再就職にしか利用されておりません。これはちょっと新聞記事ですから、数字、もしかしたら違うかもしれませんけれども、なぜ利用されていないかということは、離職から一週間以内に再就職しなければならないという条件が付いているからで、四千人見込んでいるんですよ。
 先ほど、私は一万人でも、三十三万人が減額されている中でたった一万人かという思いがありますが、でもこの一万人だけでもきちんと自立して常用雇用に移れれば、随分本当に助かると思います。一万人の雇用をするためには、民間会社だったら百億のお金が要ると言われています。それだけのちゃんと収益を上げていかないとできないんですね。一万人雇用するというのは大変なことです。でも、見込んだだけで、四千人見込んだらたった八人だというような形では、利用者がいないということは支援策がないに等しいんです。
 それだったら、今回二億しかもちろん削減していないとおっしゃっていますが、去年二十九万件の離婚があって大変な数の多分母子家庭が出てきて、そして児童扶養手当の対象者も出てきていますから、そのまま今までどおり支給すれば百何十億、百二十億ぐらいですか、必要になるわけですから、現実には百二十億ぐらい削減したのと同じわけで、その削減したことを取り繕うびほう策にしかすぎないと言われてもしようがないと。そういうふうにならないようにしなきゃいけませんが、私はこの三番目のものはほとんど今のような状況下では使える企業がないと思います。

○政府参考人(岩田喜美枝君) 十三年に実施しました日本労働研究機構の調査によりますと、これは同じ会社でパートから正社員に替わったということだけではなくて、別の会社の正社員に替わったという場合も含まれるというふうに思いますが、母子世帯になる直前にパートであった方が母子世帯になった直後に、そのうちの約二割、二割弱は正規職員に替わっておりますし、また調査時点、それからしばらくたってからでございますが、調査時点では三割ぐらいの方が正規社員になっております。皆さんやっぱり正規社員になりたいということでいろいろ努力をされているんだと思います。
 しかしながら、今、委員も言われましたように、正規社員の雇用機会がだんだんスリム化されているということがございますし、それからそもそもやはり企業がパートタイマーに期待する能力、資質と正規社員に期待する能力、資質というのは違うということで、正規社員のハードルというのは大変高いものがあるというふうに思いますので、最初からいきなり正社員として入れないケースであっても、まずパートタイマーとして入ってもらってその能力や働きぶりを見ていただく、また数か月間のOJTで能力アップしていただくということでしっかり正規雇用に結び付けたいというふうに思っております。
 これも給付金を支給するだけでは本当に、給付金を準備するだけでは使い切っていただけるかどうかというのがございますので、各都道府県あるいは市単位で総合的な自立のための相談支援活動を実施することにいたしておりますので、その過程で理解のある企業をどういう形で探し出すか、人が歩いてやはり求人開拓をしたいというふうに思っておりますが、そういう形で母子家庭の活用について理解のある企業を把握して、その中からこういう奨励金を使って雇用に踏み切っていただくところが出てくるという、そういうことになるのかなというふうに思います。努力したいと思います。

○円より子君 次に、児童扶養手当法の二条と十四条について質問します。
 この児童扶養手当法の第二条には、「児童扶養手当の支給を受けた母は、自ら進んでその自立を図り、家庭の生活の安定と向上に努めなければならない。」と明記されておりまして、これに呼応させるように今度は十四条に、正当な理由がなくて求職活動その他自立を図るための活動をしなかったとき等に手当を停止する旨加えられました。この活動しなかったということをどのように調査し判断するのか、大変私は懸念を持つわけです。
 まず、この条文は不要だと思いますけれども。例えば、皆様のお手元に資料をお配りしております。資料の四の「養育費等に関する申告書」というのを見ていただきたいんですが、それに付随して、ちょっと順番が違いますが、資料三、対象となる養育費等の範囲というようなことがいろいろ書いてあるんですが、これは先ほど申しましたように、この法案が通る以前に、もう審議される以前に児童扶養手当が削減されまして、そしてこの十二月の支給から減額されるものですから、減額されることを知らないお母さんたちたくさんいるんですね。
 この減額されること、去年から私たち運動しておりますが、離婚したときには新聞を取らない方もたくさんいらっしゃいます。厚生労働省は日経新聞に児童扶養手当の削減の広告といいますかPRを、パブリシティーを出していらっしゃいましたが、新聞も取れない人が日経新聞のような高い新聞がまず取れるかという、何という場違いなところに出すんだろうと思いましたけれども。そういった状況で、まず、そうですね、お母さんたち減額されるの知らなかった、この十二月に初めて、えっ、こんな減額になるのということを知るわけで、運動しようにも日給月給ですから陳情に来るような時間もなかったし、知らなかった方が大部分です。児童扶養手当一一〇番というのもやりましたけれども、みんな知りませんでしたと。朝のNHKで私のところが児童扶養手当一一〇番するというのを知って初めて知ったという人たちが多かったんですが。
 その十二月から減額するために八月に現況届というのを児童扶養手当をもらっている人は出さなきゃいけないんです。そのときの、これ最初の各自治体に送られた用紙なんですね、今皆様のお手元にあるのは。ここに家計の収入・支出状況について書けという欄があります。毎月の食費、光熱費、家賃、医療費、教育費まで書け。なぜ、離婚して大変な人たちが、離婚したということだけで児童扶養手当をもらうためにこんなことまで書かなきゃいけないのか。みんな現況届の窓口で何でこんな差別的な扱いを受けるんですか、人権無視だという声がたくさん私のところに掛かってきまして、そして即座に厚生省の方にマスコミと当事者とそして私たち民主党の議員で抗議をいたしました。それでやっとこれは撤回されたわけですが、でも既に自治体に行っておりましたので窓口では撤回せずにそのままやったところもあるとか、もっとひどいことを書かれているというのもございました。
 今度の、今私が申しました十四条で、自ら努力して、その正当な理由がなくて求職活動その他自立を図るための活動をしなかったときというのをどうやって調査し判断するのかというのが、このようなお米や野菜までもらっていたらそれも書けというような、こんなことを出す厚生労働省がちゃんとした、人権侵害ではない、プライバシー侵害ではない調査をするとは、窓口で、思えないというふうに、とても信頼できないと思っている人たちがたくさんいるんですね。このことが一つ。
 それからもう一つは、私のところでもたくさんの人たちが就労のために努力して、もう何十通履歴書を書いて求職のための手紙を送ったか分かりませんという人がいます。面接まで行かないで、残念ですがという手紙をもらう、電話をもらう、やっと面接に行っても、ああ子供さんがいるんですかと言って断られる、そういうケースがたくさんある中で、一回でも二回でも人間というものは落ち込むのが人情ではないでしょうか。それを二十通も三十通も書いても断られたときに、これは後で求職活動した保証のために取っておかなきゃいけないと思わなきゃいけないのか。大体嫌でびりっと破り捨てるのが常じゃないでしょうか。そして、また電話で、例えば先ほど言いましたような求人情報誌を読んで電話した、そこで断られた、その電話まで全部記録しておかなきゃいけないのか。
 一体どのように調査なさるのか、お聞きしたいと思います。

○政府参考人(岩田喜美枝君) 児童扶養手当の趣旨は、そもそも法律の二条に、家庭の生活の安定と向上のために母子家庭の母親は自ら進んで自立を図らなければならないという規定が従来あったわけでございますので、その考え方に基づいて、今回、十四条に自立を図るための活動をしなかった者については手当の全部又は一部を支給しないことができるものということにさせていただいているわけでございます。
 この規定が想定しておりますのは非常にまれなケースでございまして、例えば、児童扶養手当というのは資産調査をしておりませんので、あるいはもう裕福な資産をお持ちで一生懸命就職活動をする必要がないという方もいらっしゃるというふうに思いますし、これもまたまれなケースだと思いますが、養育費を別れた夫から十分もらっているためにそんなに就職活動を急がないという方もあるかもしれません。そういう例外的なケースを想定しているわけですけれども、本人に働く能力があり、そしてそのために様々な就職活動の機会や能力開発の機会があるにもかかわらず全くそういう意欲を見せないようなケースが仮にあるとすればこの規定に該当するということになろうかというふうに思います。
 この求職活動の状況については、個々の母子家庭の個別の事情にかかわるものでございますので、原則としては毎年一回実施いたします現況調査のタイミングなどでお話をお聞かせいただくということになろうかと思いますが、プライバシーの侵害にならないようにどういう形で把握するのか、慎重に検討して自治体に指導してまいりたいというふうに思っております。

○円より子君 今の、人権侵害にならないように、プライバシー侵害にならないようにということについて、大臣、どう思われますか。

○国務大臣(坂口力君) 今、局長から答弁があったとおりでございますけれども、いろいろの調査はやらなければなりませんが、しかしその調査、行き過ぎてしまいますと今御指摘になりましたようなことになってしまうわけでありまして、調査の必要なことは御了解をいただきたいと思うわけでございますけれども、しかしそれが行き過ぎないようにどうするかということだろうというふうに思います。ここのところは少し詳細に都道府県なり市町村なりにやはり周知徹底をするようにして、そして適正に行われるようにしなければいけないだろうというふうに思っております。

○円より子君 今、岩田局長が養育費についてもお話しになりましたが、今度のあれは養育費の所得への八割算入がございますが、私も父親が養育費を払うのは当然のことだと思っております。離婚しても養育責任があるわけですし、そして子供たちは、よほど自分に暴力を振るわれたり母親に暴力を振るっているのを見て父親を恐怖の目で見ていない限り、どんなことがあっても父親をやはり愛しておりまして、好きで会いたいと思っているんですね。
 私はずっと、養育費だけを要求するのではなくて、離婚しても例えば授業参観に父親を呼んでいる人もいますし運動会に呼んでいる人もいます、そういった形で父と子が面接交渉といいますか、行き来ができることが当然だと思って今まで活動してきたんですが、調査を何度か、十五年前、十年前、そして最近としましたが、やはり父と子の行き来があるケースの方が養育費を取り決めていなくても養育費を支払っているという現実が調査結果からちゃんと見えているんですね。できるだけ養育費をやはり支払ってもらうような方向で行政の支援をしていかなきゃいけないんじゃないかと思うんですが。
 一つは、養育費を母親に取立て義務を明記しているんですね、これは母子寡婦福祉法第五条二項なんですけれども。母親は、離婚したときに、夫は名前も変わりませんし判こも変わりませんし保険証も変わりませんし、母親というのは就職探し以外に家探し、子供のそれこそ文房具の百点ぐらいのところに名前まで変えなきゃいけないというような、もう本当に様々な作業がございます。そういったときに、別れた父親が養育費払ってくれないことで怒り狂っているかもしれないときに、その父親に会って養育費早く払いなさいというのは、母親に取立て義務を書くというのは私は本末転倒ではないか。
 父親に払わせるためにはどうすればいいかということこそ法務省と厚生省は考えるべきで、法務省の方は、余り時間がありませんのでかいつまんで、強制執行受諾文言等を私は付けた方がいいということを考えて、それは来年から通常国会でお変えになるということも分かっていますが、例えば共同監護に、親権ではなくて、しますとか、それから面接交渉をセットで養育費と、もっと調停で利用してもらうとか、また、調停に来ない人が圧倒的に多いわけですから、協議離婚で、その場合には、子供がいる場合は、離婚のことは協議離婚で決めてもいいけれども、そのことと、養育費のことと面接交渉は調停に来るようにするとか、何かそういったことは考えていらっしゃらないんでしょうか。短くお願いします。

○政府参考人(房村精一君) ただいま御指摘のように、離婚はもちろん協議離婚で、夫婦双方の合意のみで成立いたします。そのときに併せて子供の養育費の負担であるとか面接交渉の件も当事者間の合意が成立すれば全く問題はない。場合によれば公正証書で執行受諾文言付きで作れば執行までできるということになります。
 ただ、相手方がそれに任意に応じてくれないときにどうするかということですが、これは、家庭裁判所に調停の申立てをする、あるいは審判の申立てをするということで、比較的利用しやすい形で解決が図られるような制度の仕組みにはしてございますので、これをより一層利用していただきたいと、こう思っております。

○円より子君 厚生省にもお伺いしたいんですが、例えば育児をしない男を父親とは呼ばないとか、たしか安室さんのパートナーだったSAMさんのすてきなポスターがありましたけれども、あの後あの御夫婦は離婚なさったんですけれども。私は、安室のパートナーの離婚なさったSAMさんに、例えばもう一回あのポスターを作って、養育費を払わない男は父親とは呼ばないぐらいのポスターをお作りになったらどうかと。
 どうしてかと申しますと、やっぱりアメリカと、裁判離婚と日本の協議離婚と制度が違うことはよく分かるんですが、社会的に企業のサラリーマンが今圧倒的に多い中で、離婚しても、君、ちゃんと子供に養育費払っているかというような、そういう状況ではないんですね。社会全体が、離婚した、さっき言いましたように、お母さんにその養育費の取立て義務を負わせるのではなくて、社会全体が、離婚しても親子であることには変わらないんだから養育費払ったらどうかというふうなことを、別に非難するんじゃなくて、言えるような状況を是非厚生省にも作っていただきたいと思うんですね。
 どうですか、養育費について、もっと払ってもらう施策を考えてほしいんです。

○政府参考人(岩田喜美枝君) 我が国では離婚の九割が協議離婚でございまして、養育費の取決めをするのは離婚したカップルの三五%という統計もございます。現にもらっている方は二割ということでございますので、これを、離婚しても、離婚した父親は子供の養育費を払うという責任があるということを社会的なもう常識にするためには何をすればいいかということだというふうに思います。
 まずは、どういうポスターを作るかということも含めて啓発活動をさせていただきたいというふうに思っておりますし、また養育費のガイドラインも策定いたしまして、養育費の例えば相場というのはこういうものじゃないでしょうかということも提示をして参考にしてもらいたいというふうに思います。また、母子家庭の母親がよく行く場所など、例えば離婚の届出の窓口ですとか、児童扶養手当の申請窓口ですとか、母子寡婦団体の窓口ですとか、そういうところに養育費の取決めがいかに重要か、そしてそれを決めるためにはどういう手続があるかといったようなことの情報を提供し、そして相談に乗れるような体制を作ってまいりたいと思います。

○円より子君 私たちのネットワークのアンケートでは、やはり養育費はスウェーデンのように国が立替払をしてくれるのが一番だというような声もありまして、例えば児童扶養手当で国が先にそれを渡して、父親から、父親に国が請求をして返してもらうというふうな、そういった方法も是非考えていっていただきたい。母親にその取立て義務を押し付けるのは酷だということをもう一度申し上げておきます。
 それから、先ほどの、「「養育費」とは、」というふうに書かれているんですが、来年からは子供あての通帳に入る養育費ももちろん所得の範囲に入るわけですけれども、一つは、住宅ローン等も養育費に含むと書かれているんです。別のところには財産分与や慰謝料は養育費には含まれないと。これは大変混乱すると思います。
 といいますのは、離婚時に財産分与や慰謝料として一括してお金を払える人なんてほとんどいないんですね。日本の離婚は性格の不一致なんて言われていますが、あれはうそで、実際に離婚する人はほとんど経済的理由です。そうしますと、夫の側がお金払えない。だから、養育費取り立てようとしても払えない人も大部分いるわけで、税制措置で養育費を払っていると控除ができるというのも既に財務省であるんですけれども、それをすると、今リストラのちょうどいい時期だから、そんな面倒くさいことやるなら辞めさせろというような形で実際に退職になった人もいるとか、男の人にとっても大変厳しい状況に今なっております。
 そういう中で、財産分与、慰謝料をもらっている人は離婚をした人の半数にしかすぎない、みんなお母さんたちは子供を抱えてゼロで別れているわけですね。でも、そのときに、何とか財産分与として今住んでいる家を子供と母親がそのまま住めるようにして、でも、ローンが大部分で、もらったからといって別に価値はないというようなときに、じゃ、ローンも含めて財産分与とするというケースが圧倒的に多いんですね。そのときに、その家のローンまで養育費に含めるということの是非をもう一度考えていただきたい。これは御答弁要りません。一応そのことを申し上げて次に移りたいと思いますが。
 住宅のことなんですが、生別、離別の母子家庭の場合は、持家率が一七・三%です、直近の厚生労働省の資料によりますと。死別ですと、持家率は六六・七%なんですね、これ、皆様のお手元の資料1でございますけれども。いかに生別の場合は家がないか。
 大臣もお医者様ですし、今まで厚生労働大臣も長くやっていらして、子供の健やかな成長のためには母親の精神安定、もちろんその経済安定がいかに大事かということをよく御存じだと思うんですが、住居というのはやっぱり、高齢者にとってもそうですが、母子家庭にとっても生活の基盤なんですね。それが民間住宅を借りるとき、賃貸を借りるときに保証人になってもらえないということで借りられないとか、国土交通省に聞きましたら、公営住宅も枠を作っていると言っていらっしゃいますが、優先枠随分あるんですよと御答弁なさっているんですが、高齢者の場合は生活保護とか年金等で働きに行かなくてもいいんですが、母子家庭のお母さんというのは働きに行くことと例えば保育園の送り迎え、そういうのがありますと、家と職場とが近くないと難しいんですね、保育所も。みんなそういうところは倍率が余りにも高くて大体当たらないということになっていまして、当たるのは遠くてとても通えるところじゃないということが多いので、この辺のことは国土交通省にしっかりやっていただきたいと思うんですが、もう時間もなくなりましたので、もう一つ、生活保護についてお話ししたいと思います。
 母子家庭の収入からいきますと、生活保護基準以下というのは何%ぐらいになるんでしょうか。──もし、昨日質疑通告しておりましたけれども、御存じなければ、約半分が生活保護基準以下で暮らしているんですね。実際に生活保護を受けておりますのが八・五%なんです。
 今年の九月に、皆さん新聞記事で御存じだと思いますが、倉敷市で母親が十一歳の娘を餓死させたという事件で、十一月六日に起訴された事件がございました。これは、神奈川県茅ケ崎市の母子寮を出て転々として、今年の六月に路上で会った男性の世話をする条件で同居を始めたということなんですが、この男性が入院して、生活に窮乏してこういった事件が起きたと。詳しい事件は分かりませんけれども、なぜこういう母子が生活保護を受けられなかったのか。
 そういうこともございまして、実は世界恐慌が起きました一九二七年から三一年のころ、その少し後に母子保護法というものが成立しましたけれども、当時は農村から都市へ不況のせいで流れ込んだ核家族がたくさんいました。地域社会と大家族制の中のセーフティーネットというものがなくて、ですから無産階級の人が多かったんですが、そのころ、もう母子心中事件がまれに見る多さで多発いたしました。
 私は、こういった母親だけを責めるのではなくて、母親がもっと窓口に行って生活保護を受けたり、子供だけでも児童の施設に入れるとか、何とかできなかったのかという思いはもちろんございますけれども、それを地域なり行政なりが生活保護が受けられるような、そういった状況になぜできなかったのかというのが残念でならず、今後もこういった問題が起きるかもしれず、それを何とか防いでいきたいと思うんですね。
 大臣、これから就労支援、本当にしっかりやっていかなきゃいけないと思うんですが、実は私、十年前から、「女性のための政治スクール」という形で、超党派で女性の議員を増やしたいと思ってずっと活動をして、全国から生徒さんが来ていらっしゃるんですが、もう随分たくさんの地方の議員さんを誕生させましたが、その一つのあれは、私どもは余り資金がございませんが、アメリカでもそういう運動があって、エミリーズ・リストというのがあるんです。
 それは、最初の、初期のお金はイーストのように大きく膨らむということで、これは女性たちがお金がないから、そういう形で初期に応援すればどんどん女性が増えるだろうという趣旨なんですが、何もこれは政治家のことだけではなくて、新しく起業をする人も、母子世帯がこれから自立するときも、すべて最初のお金というのがとても大事だと思うんですね、それから最初の手厚い支援ということが。そうすると、みんな元気になって仕事をしていけるようになり、それが子供たちにもいい影響を与えるということがあると思うんですが、こういった温かい最初に元気の出る、こういった元気のない時代だからこそ元気の出る施策として就労支援を是非具体化していただきたいこと。
 それからもう一つ、これは離婚の問題だけじゃないんですね。ずっと二十年間、離婚講座とか、いろんな離婚した人たちのネットワークで多くの女性たちの意見を聞いてまいりましたけれども、離婚は何も離婚した人たちだけの問題ではなくて、女性が働きながら子育てができるような環境整備がしっかりできていれば、たとえ残念ながら自分の意じゃなくても離婚したとしても子供と母親はうまく育っていける、生活していける、そういうジェンダーフリーの社会、男女共同参画の社会を片方で作るということが大事だと思うんです。
 この二つについて、大臣、最後に御答弁いただけませんでしょうか。

○国務大臣(坂口力君) 私の知っております地方の女性議員も円先生のその会に出席をさせていただいているということをよく言っておりまして、御活躍のことはよく存じ上げているわけでございます。
 先ほどからお話しをいただきましたとおり、これから先、この母子家庭のお母さん方の就職をどうお世話をしていくかということが最大の課題になるだろうというふうに思っております。これは是非、厚生労働省の中にもチームを作りまして、母子家庭のお母さん方の支援をするチームを作って、そして更に具体化を進めていきたいというふうに思っておりますし、また様々な、特養を始め、福祉施設が多くできてきておりますが、福祉施設のいわゆる雇用につきましては是非とも母子家庭のお母さん方を優先をして考慮をしてほしいといったこともお願いをしたいと考えているところでございます。
 そうしたことを含めて、より具体的に、より積極的に進めさせていただきたいと思っているところでございます。

○円より子君 終わります。