155-参-内閣委員会-3号 平成14年11月12日

平成十四年十一月十二日(火曜日)
   午前十時三分開会
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  出席者は左のとおり。
    委員長         小川 敏夫君
    理 事
                阿部 正俊君
                亀井 郁夫君
                森下 博之君
                長谷川 清君
                吉川 春子君
    委 員
                阿南 一成君
                上野 公成君
                竹山  裕君
                野沢 太三君
                岡崎トミ子君
                川橋 幸子君
                松井 孝治君
                白浜 一良君
                山口那津男君
                島袋 宗康君
                黒岩 宇洋君
                田嶋 陽子君
   国務大臣
       国務大臣
       (内閣官房長官)
       (男女共同参画
       担当大臣)    福田 康夫君
       国務大臣
       (国家公安委員
       会委員長)    谷垣 禎一君
       国務大臣
       (科学技術政策
       担当大臣)    細田 博之君
       国務大臣     鴻池 祥肇君
   副大臣
       内閣府副大臣   米田 建三君
       総務副大臣    加藤 紀文君
   大臣政務官
       内閣府大臣政務
       官        木村 隆秀君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        鴫谷  潤君
   政府参考人
       内閣官房内閣参
       事官       小熊  博君
       内閣府大臣官房
       審議官      大前  茂君
       内閣府政策統括
       官        安達 俊雄君
       内閣府男女共同
       参画局長     坂東眞理子君
       内閣府国民生活
       局長       永谷 安賢君
       警察庁長官官房
       長        吉村 博人君
       防衛施設庁施設
       部長       大古 和雄君
       防衛施設庁業務
       部長       冨永  洋君
       公正取引委員会
       事務総局経済取
       引局取引部長   楢崎 憲安君
       法務省矯正局長  中井 憲治君
       法務省人権擁護
       局長       吉戒 修一君
       外務大臣官房審
       議官       渥美 千尋君
       外務大臣官房参
       事官       齋木 昭隆君
       外務省総合外交
       政策局国際社会
       協力部長     石川  薫君
       外務省条約局長  林  景一君
       文部科学省スポ
       ーツ・青少年局
       長        遠藤純一郎君
       厚生労働省雇用
       均等・児童家庭
       局長       岩田喜美枝君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○内閣の重要政策及び警察等に関する調査
 (食品安全行政に関する件)
 (男女共同参画社会の形成に関する件)
 (北朝鮮による拉致問題に関する件)
 (警察行政に関する件)
 (構造改革特区制度に関する件)
 (いわゆる従軍慰安婦問題に関する件)
○警備業法の一部を改正する法律案(第百五十四
 回国会内閣提出、第百五十五回国会衆議院送付
 )

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○委員長(小川敏夫君) 内閣の重要政策及び警察等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○亀井郁夫君 自民党・保守党を代表して、質問させていただきたいと思います。私もつい先日まで内閣府におりましたんですけれども、そういう経験を踏まえながら、是非こういうことをやってほしいという思いも込めながら質問をしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 最初にお尋ねしたいのは、企業の自主行動基準の問題でございますけれども、近年、企業の倫理観が問われるような事件が随分起こっておるわけでございます。今年に入りましても、一月の雪印食品を始めといたしまして、全農チキンフーズ、協和香料化学、ダスキン、日本ハム、最後は東京電力という形で事件が次々と発生したわけでございます。私自身も長く産業界に身を置いておった者といたしまして大変残念に思うわけでございます。企業の経営倫理は今はどこに行ったんだろうかという思いもするわけでございます。
 こうした倫理観を失った事件が続発する背景に、私は戦後五十年の教育の結果だと思うわけでありまして、戦後の教育が全く倫理教育を無視してきたということの結果がこういうことになったと思うわけでございますけれども、今、ここでやはり企業に対してそういった倫理観を求めていく必要があろうかと私は思います。
 まず、そういう意味で、自主的に企業の倫理の確立に取り組んでいる企業もございまして、国民生活局の調査によりますと、回答企業の六〇%ぐらいは倫理規定を作ってそういう対応をしようと努力しているというふうに聞いておりますけれども、政府や経済界においてこうした問題に対する取組をもっとしっかりやってほしいと思いますが、これに対する考え方、状況等についてお尋ねしたいと思います。木村政務官、お願いしたいと思います。

○大臣政務官(木村隆秀君) 亀井先生には前政務官として国民生活、とりわけ消費者行政のことに対して大変熱心にお取り組みをいただいたと伺っております。是非今後ともいろいろと御指導をちょうだいをいたしますように、まずお願いをしたいと思います。
 今、先生が御指摘をいただきましたように、近年、消費者の信頼を損ねる企業の不祥事が続発していることは大変残念なことでございます。
 そんな状況の中で、今、先生の御質問にもございますように、経団連では十月の十五日に企業の行動憲章というものを改定をいたしました。その中で、新たに消費者・ユーザーの信頼を獲得をするんだ、また、社内外の声を常時把握をして企業倫理の徹底を図る、また、経営トップ自らが問題解決に当たる姿勢を内外に表明をして説明責任を遂行するんだ、そんな新たな項目を設けたところでございます。また、各企業におきましても独自の倫理規定の策定や体制整備の動きが見られるところでございまして、内閣府のアンケート等によりますと、社内規定の策定状況、もう既に今お話がありましたように上場企業の六割は策定をしておるわけでございますけれども、三割の企業が新たに策定へ向かっての今検討を進めているということを伺っています。
 政府としては、企業が企業倫理を確立していくためのいろんな環境整備を進めていきたいというふうに考えております。全力で取り組んでまいりますので、よろしくお願いをしたいと存じます。

○亀井郁夫君 是非ともそういう立場から指導していただきたいと思います。
 次に、これに絡みますけれども、公益通報者の保護の問題についてお尋ねしたいと思います。
 これまでの多くの企業の不祥事件というのは、多くが企業内からの通報という形で社会的問題になったケースが多いわけでございます。そういう意味では、組織内におけるこうした通報者というのは、ある意味では密告者という暗い影もあるわけでございまして、同時にまた社内での処分という問題もございまして、非常に問題になるわけでございまして、こういう方たちをどのような形で保護していくかというのが大きな課題になるわけでございます。
 そういう意味では、内部告発ということよりも、表現的にも公益通報者という表現において今政府でも取り組んでおられますけれども、企業内の組織の風通しをよくするというふうな考え方から企業も取り組んでいく必要があると思います。そういう意味では、いわゆるそうしたヘルプラインというものを充実していこうということでアプローチしている企業もたくさんあるわけでございますが、しかしまだ回答企業の中には四〇%ぐらいにとどまっているというふうな話も聞いておるわけであります。
 こうした通報者の保護の法制化につきましては、やはり企業の方も作ってほしいというのが多いわけでございまして、必要というのが四〇%、場合によっては必要というのが五二ということですから、合わせて九二%、九割以上の企業もこういうものを作ってほしいということを言っておるわけでございますから、是非とも取り組んでいただきたいと思います。
 既に先進国では、アメリカやイギリスやニュージーランド等でもこういう制度が作られておりますけれども、やはりアメリカのようなドライな格好じゃなしに、イギリスのようなヘルプラインを中心にした形での法制にした方がいいと私は思うわけでございますけれども、こうした公益通報者保護の制度についてどのように政府は考えているのか、永谷局長にお尋ねしたいと思います。

○政府参考人(永谷安賢君) 先生御指摘のとおりでございまして、企業の内部からの通報というのが最近端緒になっていろんな不祥事が明るみに出るという状況が生じております。そういう中で、通報者が通報した事実をもって例えば解雇をされるとかそういうような不利益を受けない、そういうふうに保護するという公益通報者保護制度の構築というのは、正に企業がある種の緊張感を持ってコンプライアンス経営に取り組むためのツールとして非常に緊急なテーマ、課題ではないかなというふうに認識しております。
 今、先生御指摘になりましたように、公益通報者の保護を制度化しているところというのは既に諸外国でもあります。御指摘のように、イギリスなどでは、第一義的には企業内部に通報して、そこでらちが明かなかった場合に外部に通報するというような制度化が図られております。
 今御指摘ございましたように、私どもの国民生活審議会の消費者政策部会で現在この問題について審議をしているところであります。今御指摘になりましたようなイギリスでの導入状況とか、あるいはこういう制度を日本の文化的風土の中になじませていくためにどういう工夫が必要かとか、そういうふうなことを併せて考えながら、なるべく速やかに、法制化ということも含めて公益通報者保護制度の具体化について早急に検討していきたいというふうに思っております。

○亀井郁夫君 次に、消費者問題について、特に消費者の保護の問題についてお尋ねしたいと思います。
 最近の牛肉のBSE事件、それからいろいろと食品関係問題になりましたけれども、やはり生産流通の分野における行政というのが、どうしても生産者サイドあるいはサービスを提供するサイドという形で、消費者のサイドにシフトされていない行政が多いわけでございますけれども、これから是非とも、政府の施策も消費者サイドに軸足を置いてやっていただきたいというふうに思うわけでございます。
 そういう意味では、現在の消費者保護基本法というのがございますけれども、これも成立してからもう既に三十年以上たっているわけでございまして、そういう意味では、社会の取引状況も大きく変わっておりますので抜本的に改正する必要があると思いますけれども、政府としてはどのようにお考えか、木村大臣政務官、お願いしたいと思います。

○大臣政務官(木村隆秀君) 先生御指摘のように、法制定から三十年経過をしております。消費者を取り巻く環境はこの間大きく変化をしておりまして、例えば電子商取引なんというような法制定のときには全く想像もしなかった取引が起きております。また、そういうような状況の中で、新しいトラブルといいますか、想定をしなかった問題等々がいろいろ起きているわけでございまして、これらを踏まえて当然法改正を進めていかなければならないというふうに思っております。
 国民生活審議会におきましても、法改正を含めましてただいま議論を進めていただいておるところでございますけれども、その中間取りまとめが十二月に、そして五月には最終報告を取りまとめをいただく予定で今審議をしていただいておりますので、それを受けまして直ちに改正へ向かった手続を進めていきたいというふうに考えております。

○亀井郁夫君 是非とも前に進めていただきたいと思いますが、その際に是非お願いしたいと思いますのは、消費者が弱者としてこれを単に保護するんだ、保護の対象として消費者を考えるということではなしに、より十分な情報に基づいて主体的に消費者そのものが動いていく、関与していくという形で消費者の権利と義務というものをはっきり基本法に明確化していく必要があろうかと私は思いますけれども、こういう点について木村政務官のお話を聞きたいと思います。

○大臣政務官(木村隆秀君) 御指摘のとおり、今回の法改正に当たりましては、しっかり消費者の権利と義務というところを明確にしていきたいというふうに思っております。
 これまでの消費者行政というのは保護をするという観点が非常に強かったわけでありますけれども、これからは消費者の自立に向けた体制固めをしていかなきゃならないのではないかというふうに思っております。
 世界の消費者行政の基本になっておりますのが、アメリカのケネディ大統領の消費者の利益の保護に関する特別教書というものがその基本になっているわけでありますけれども、その中に、安全、知る、選ぶ、意見反映、この四項目が大切であるというようなことがうたわれているわけでございまして、消費者が十分な情報を得ること、そして自由な選択ができること、それによって安心、安全な消費生活を営むことができる、そのための消費者政策を展開をしていくことが大切であると。また、その観点に立った、法改正の中でもしっかりと明記をしていきたいというふうに考えております。

○亀井郁夫君 もう、是非とも頑張っていただきたいと思います。
 次に、取引の関係でお願いしたいのは、不当表示や強引な勧誘等、非常に消費者に甚大な影響を及ぼすような実態があるわけでありますけれども、公正取引委員会に対して是非お願いしたいのは、単に市場の公正競争の確保ということだけではなしに、消費者を欺くようなそうした勧誘行為等については積極的に取り締まってほしい、ある意味では公正取引委員会しかないと私は思いますので、そういう形で頑張っていただきたい、消費者の方に、立場に軸足を置いた行政をやっていただきたいと思いますけれども、これについて公正取引委員会の気持ち、思いを是非聞かせていただきたいと思います。

○政府参考人(楢崎憲安君) 先生御指摘のように、不当表示等が相次いで発生しているわけでございますけれども、公正取引委員会といたしましても、食肉の不当表示事件あるいは健康食品や健康器具の不当表示、あるいは当選商法と称して高額な商品を買わせる等、様々な消費者の適正な判断をゆがめる行為につきまして全力を挙げて排除に取り組んでいるところでございます。
 一方、先生御指摘のように、公正取引委員会は、事業者間の競争、市場における競争を維持促進するという競争政策を担当しているところでございますけれども、事業者間の競争だけじゃなくて、需要者である消費者が適正な商品選択ができる意思決定環境が整備されるといったことが必要でございまして、正に競争政策と消費者政策が一体のものとして取り組む必要があると、こんな観点から、有識者等から成る研究会を開いて検討しているところでございまして、そういった御議論等を踏まえまして、今後とも消費者政策について積極的に取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

○亀井郁夫君 次に、食品の安全確保の問題についてお尋ねしたいと思います。
 昨年九月の牛肉のBSE問題を契機といたしまして、食品関係についていろんな問題が起こったわけでございます。品質保持期限の一方的な変更だとか原産地の変更だとか、不許可の添加物を使用する等、そういう意味では、何か食品会社というのは腹痛さえ起こさなきゃ何でもいいんだというような感じでやっているんじゃないかというふうな腹立たしさも感じたわけでございますけれども、それは私だけではないと思います。
 特に、従来、食品については、ブランドを守るという感じで、品質を守るという感覚がある意味では薄かったのではないかと思いますし、これに対する担当が厚生労働省と農林水産省という二つにわたっているということにも大きな原因があろうかと思いますけれども、特に、食品に付いている賞味期限という表現と、それから品質保持期限というのと消費期限という三つの言葉がございますけれども、これ、JAS法と食品衛生法との関係でこんな形になっておるわけでありますけれども、一般消費者には全然分からないわけでございますね。そういう意味では、こういうことについてしっかり国民に分かるようにしながら、表現も統一していく必要があるんじゃないかと思うんですね。
 そういう意味では、今度できます食品安全委員会、できましたから、食品安全委員会辺りで相当リーダーシップを持って食品の安全問題について対応していただきたいと、こう思うわけでございますけれども、こういう問題についてどう考えておられるのかと。
 さらに、食品安全委員会を設けられたということで新聞には出ておるんですけれども、まだまだ準備委員会だけであって具体的に動いていない。聞くところによると来年の予算ということですから、来年の春以降だというふうな話を聞くわけでございますけれども、それではなかなか効果は出てこないということで、是非とも早い時期にこの食品安全委員会がチェック機関として十分機能して、国民に食品に対する安全を、食品に対する安全というものをみんなが実感できるような仕組みを作っていただきたいと思うんですけれども、担当大臣に是非ともこの辺についての考え方をお尋ねしたいと思います。

○国務大臣(谷垣禎一君) 先ほど来、消費者の権利とも関連させて亀井委員がおっしゃっておりますように、食品の安全性を国民の間に信頼を取り戻していくためには、消費者の健康保護を最優先とする食品安全行政というものを確立していかなければならないと、こう考えております。
 そして、従来は食品のリスクを評価する立場と、それからそれを管理する立場というものは一緒でありましたので、そこにいろんな混同が起こったことがあったのではないか。したがって、リスクの評価というものは、これは一元的にあくまで科学的、客観的に行わなければならない。
 そういう意味で、今度、私が今作業をしております食品安全委員会は、厚生労働省あるいは農水省という所管を超えて、食品の安全性を確保するために必要があれば科学的、客観的なリスク評価を実施して勧告を両省にも行っていく、関係省庁に対してもそれぞれ的確な対応を促すということを役割としておりまして、いずれにせよ、この食品安全委員会と関係の各省庁との適切な緊張関係を持ちながら食品の安全を確立していきたいと、こう思っているわけであります。
 それから、表示の問題で縦割り行政の弊が見えるじゃないかという御指摘でございました。消費期限、賞味期限あるいは品質保持期限、これは一体どう違うんだ、大変分かりにくい話でございますから、これにつきましては、厚生労働省と農林水産省が共同会議を年内、大体十一月下旬ごろをめどにしているようでありますが、立ち上げまして、この用語の統一とかそういう問題を速やかに協議していくと、こういうふうに聞いております。
 それから、まだそういう食品安全委員会ができていないじゃないかと、こういう御批判、六月十一日の閣僚会議でこういうものを作れという御指示を、取りまとめをいただいて今検討作業を進めているわけですが、食品安全基本法を作り、そしてこの食品安全委員会を作るということで、今、委員がおっしゃいましたように、来年の通常国会を目標に今法案を提出する準備をしているところでございまして、これはもっと早くせよという御趣旨かと思いますが、予算そのほかも関連いたしますので、予算やいろんなことを念頭に置きながら必ず来年の通常国会には出すと、こういうことで今作業を進めておりますので、御理解をいただきますようにお願いをいたします。

○亀井郁夫君 是非とも縦割り行政の壁を破ってすばらしい委員会を作ってほしいと思います。
 それから、もう一つお願いしたいのは、委員の選任について、やはり技術的な専門家というものを是非十分入れてもらって、チェックに粗相がないようにお願いしたいと思います。
 それから、大臣にもう一つ聞きたいのは、青少年の健全育成という問題でございますけれども、非常に最近青少年の凶悪犯罪が多いわけでございまして、そういう意味では、各県とも青少年の健全育成条例というのを作っておるわけでありますけれども、しかし、各県の条例は一つだけマスコミ関係が全部落ちておるわけでございまして、そういう関係で非常に困っているというのが実態であります。
 特に、コンビニなんかに行きましてたくさん出ておる雑誌を読みますと、これがという内容のものがたくさんあるわけでありまして、これを孫たちが読んだら大ごとだなということがたくさんあるわけでございますけれども、それはなかなか今は規制されないというのが実態であり、各県からは、やはり青少年健全育成条例というものを全国的な立場から中央で作ってほしいという要請が非常に強いわけでございますけれども。
 これの担当は内閣府でございますけれども、総務庁以前は青少年問題審議会があって、去年の行革でなくなりましたけれども、ここでも青少年育成基本法を作りなさいとか、青少年プランを作りなさいというふうなことも最後の答申で出ておるわけでございますけれども、参議院でも三年前からこの基本法を作ろうという動きをしてきておるわけでありますが、まだ実を結んでいないのが実態でございます。特にマスコミ関係の反対というのは大変なものがあるわけでございまして、これを乗り越えてやっぱりやっていかなきゃいけない問題でもございます。
 そういう意味では、青少年の問題というのは国の将来にとって大変大事な問題でございますので、これについての取組を是非やっていただきたい、私は思うわけでございますが、大臣のこれについての御所感、方針をお聞かせ願いたいと思います。谷垣大臣。

○国務大臣(谷垣禎一君) 今、亀井委員がおっしゃったコンビニ等のポルノの問題、これは青少年のもの、児童を対象にしたものに関しましては、今、数年前に議員立法で児童ポルノ、児童買春の法律を作っていただきましたので、今、議員立法としてどう改正をしていくか御検討をいただいていると聞いておりますので、我々も十分にそれを関心を持って今見ているところでございます。
 それから、私の所感からいたしますと、少年の非行情勢ということでちょっと今考えていることを申し上げますと、凶悪犯、特に強盗が増加するというような大変深刻な状況にあるというふうに見ておりまして、治安回復のかぎも少年問題にあるというふうに思っております。
 そこで、少年事件捜査力の強化や、あるいは少年相談や街頭補導を通じての問題行動での、問題行動のまだ段階で、要するに事前ということですが、段階で指導、助言していくと。それから、少年サポートセンターというものを作りまして、ここを中核として関係の機関や団体、ボランティアと連携を強化するというようなことをやっております。ボランティアも、率直に申しますとかなり高齢化をしたりしておりますので、やっぱり若い方に、青少年犯罪という、対応していくということになると、若いボランティアをどうして参加していただくかというようなことを今いろいろ工夫しながら取り組んでいるところでございます。

○亀井郁夫君 ありがとうございました。
 谷垣大臣、もうよろしゅうございますから。ありがとうございました。
 次に、男女共同参画の問題についてお尋ねしたいと思います。
 二十一世紀の我が国社会にとって女性の参画というのが大事なことは今更言うまでもないことでございまして、そういう意味では、平成十一年に男女共同参画社会基本法というのもできたわけでございまして、そういう形でこれから進んでいかなきゃならない、当然のことだと思うわけでございますけれども。しかし、男女共同参画というのは、男女がお互いにお互いの違いを認め合いながら、生かし合いながらともに手を携えて頑張っていくというのが私は基本的な考え方だろうと思うわけでございますけれども、しかしこの男らしさ、女らしさということについていろいろと世の中に誤解もあるようでございますので、是非確認しておきたいということで御質問するわけでございます。
 最近、千葉県の千葉市に男女共同参画ハーモニー条例案というのが出ました。これは、男女共同参画基本法に基づいて各県が条例を作るということになっておりますので市や県が作っておるわけでありますが、その一つで作られたんですが、そこの中には、女らしさ、男らしさという言葉を一方的に否定するのは行き過ぎではないかと、簡単に言ったらそういうふうな表現が入っておりましたが、これに対して大変一部の批判がありまして、結果としてはそれが落とされるということになったわけでございます。
 そういう意味では、男女共同参画社会の基本法に、これが男らしさ、女らしさを認めることが違反しているんだというふうな主張が行われたわけでございますけれども、私はおかしいのではないかと。お互いに違いを、男らしさ、女らしさを認め合いながらやっていく、これが男女共同参画基本法の基本的な考え方ではないかと思うわけでございますけれども、これについて、この法案の所管の官房長官にお聞かせ願いたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) 男らしさとか女らしさ、これはやっぱり男女という性別がある限りあるのではないかと思います。ただ、時代が変わり、社会の情勢が変わって、その考え方に多少の違いがあるということがあったとしても、男女の性別というところから出てくるものは、これは否定することはできないと思っております。
 そもそも、男女共同参画社会というのは、この法律の前文に書いてありますとおり、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる社会であると、こういうことでございまして、これは、このことは男らしさとか女らしさ、これを否定しているものではありません。しかし、男らしさとか女らしさ、こういうことでもってパターン化してしまうということは、これは一人一人の個性と能力を十分に発揮することは時としてはできなくなるというような環境を作ってしまうというおそれがございますので、これを強調し過ぎるということについては問題があるのではなかろうかと。しかし、これも時代及びそれぞれの属する社会とかオケージョン、いろんな場合がございまして、一概に言えないところだと思っております。

○亀井郁夫君 お話しのように、男らしさ、女らしさという言葉も時代によって変わってくるでしょうし、男以上に男らしい女性もおりますし、そういう意味ではいろいろとあろうかと私は思います。
 ただ、この基本法において、結果平等を求めているんだという考え方が多いわけでありますが、私は、これは条件の平等を求めているんだ、機会の平等を求めているんだと私は思うわけでございますけれども、そういう意味で、結果の平等なのか条件の平等なのか、これについては官房長官、どのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(福田康夫君) この男女共同参画社会基本法であります、ここには、男女が均等に政治的、経済的、文化的、また社会的な利益を享受することができ、そして男女ともに責任を担うべき社会を形成する、これがこの基本法に書いてある目標だというように思います。
 その目標を達成するために、いろいろな条件とおっしゃいましたが、これはいろいろな機会を与えるということと理解をすべきだと思います。いろいろな機会を確保することによって男女が参画しやすい環境を整備する、そういうことでその目標を達成する、そういう機会を提供するということが大事だと思いますので、条件とかそういったようなことでない、機会を選択することもできるわけですから、そういうことで我々は理解いたしているところでございます。

○亀井郁夫君 よく分かりました。
 次に、これに絡んで、はやっている言葉でジェンダーフリーという言葉があるわけでありますけれども、ジェンダーというのは社会的、文化的に形成された性別というふうに定義されておるようでございますけれども、こうした考え方で、これを乗り越えるということで、これを否定するということでジェンダーフリーという言葉が日本では随分使われておるわけでございますけれども、私が調べたのでは、アメリカではジェンダーイクオリティーだとかジェンダーフェアネスという言葉はあるけれども、ジェンダーフリーという言葉はないようでありますけれども、余り使われていないようでございますけれども、この辺についての考え方を是非聞きたいと思うんですが、特に、こうしたジェンダーフリーの思想が男女共同参画基本法の基本になっているんだというふうな話が多いんですけれども、これについてそうなのかどうなのか、そういう意味では局長にお尋ねしたいと思います。

○政府参考人(坂東眞理子君) 御指摘のとおり、ジェンダーという言葉は、社会的、文化的に形成された性別という意味で男女共同参画基本計画においても使用しておりますけれども、ジェンダーフリーという用語はアメリカでも使われておりませんし、北京宣言及び行動綱領や最近の国連婦人の地位委員会の年次会合の報告書などでも使われておりません。もちろん、日本の男女共同参画社会基本法、男女共同参画基本計画等の法令においても使用しておりません。
 したがって、我が局、男女共同参画局としては、ジェンダーフリーの公式的な概念はこれこれでございますということをお示しできる立場にはございませんけれども、現在、一部に、男性と女性の区別をなくするんだ、男性と女性を画一的に扱うんだ、画一的に男性と女性の違いを一切排除しようという意味でジェンダーフリーという言葉を使っている方がいらっしゃる、そういうことは大変一部に誤解を持たれているんだなと思いますが、男女共同参画社会はこのような意味でのジェンダーフリーを目指しているのではなくて、男女共同参画社会基本法で求められているとおり、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる社会、男女が差別を受けることなく、対等なパートナーとして様々な分野に参画し、利益も責任も分かち合っていけるような社会を目指しているというふうに思っております。

○亀井郁夫君 分かりました。そういう意味では、ジェンダーフリーという言葉は日本でよく使われていますけれども、世界的に通用している言葉ではないということがよく分かったわけでありますが。
 しかし、このジェンダーフリーという考え方から、いろんな政策面においてもいろんな影響を及ぼしておるわけでございまして、特に、文部科学省から出しております「未来を育てる基本のき」というパンフレットがありましたけれども、それを見ますと、男の子はたくましく、女の子は優しくとか、あるいは男の子は黒のランドセル、女は赤のランドセル、こういうのはいけないんだと、こういうのをジェンダーバイアスというんだそうですけれども、そういうことでこれをもう否定しなきゃならないというふうなことが書いてあるので驚いたようなわけでございます。
 そしてまた、厚生労働省の出している「思春期のためのラブ&ボディBOOK」というのがありますけれども、中学生向けの性教育の雑誌でございますけれども、これについても本当にいかがなものかということがたくさん書いてあるわけでございますが、ここで特に、産むか産まないかということを決めるのは女性なんだ、女性本人なんだというふうなことが書いてあり、自分で決めなさいということを中学生に教えているというふうな実態でありますけれども、しかし、こんなことをやることは、そういう意味では堕胎を勧めているようなことにもなりますし、あるいはまた妊娠中絶については配偶者の同意が必要だという母性保護法にも反するというふうなことが堂々と、役所が見ているはずの、作ったはずのものに書いてあるということで、非常に問題だと私は思うんですね。
 特に、最近問題になったのは、千葉県で、千葉知事の方から出た条例の中に、入札参加資格を見るときに、審査する場合に、これは共同参画推進の取組を見るんだということが出てきたわけでございまして、これに対しては千葉県の県議会の自民党が反対して今ペンディングになっておるわけでありますけれども、そこまでやはり見ていかなきゃいけないのかと。これは結果平等を求めていると思いますけれども、それじゃやっぱりおかしいんではないかというふうな気もするわけであります。
 さらには、農林水産省が進めております家族経営協定、これも基本法の精神にのっとってやるんだということになっておりますけれども、確かに、農家に奥さんが給料をもらってやるという家庭もあってもいいかもしれませんけれども、しかし、夫婦で力を合わせながらやっている農家にそういった契約思想を入れて、この思想を持ち込んでいって、そして家族経営協定を結びなさいというふうなことを推奨するということは、それでなくても家族が崩壊しているわけでございますけれども、そういうのを進めることが果たしていいのかどうなのかというふうに思いますけれども、こういうことがちゃんと、農水省のことなんですけれども、これにちゃんと書いてあるんですよね。この内閣府の男女共同参画のパンフレットに書いてあり、そしてこの共同参画の雑誌もちゃんと書いてあるわけですね。だから、そういうことを進めることがいいのかどうなのか、私は行き過ぎじゃないかなというふうに思うわけでありますけれども、米田副大臣にお考えを聞きたいと思います。

○副大臣(米田建三君) 大変盛りだくさんな御質問で、一言ではお答えしにくいんですが、まず教育の問題に関して何点か御指摘がございました。
 男女共同参画社会に関する教育につきまして正確に申し上げるならば、男の子らしさ、女の子らしさを強調し過ぎる余り、子供たちの本来持っている固有な個性や才能、これを狭めてはならぬというところに本来の趣旨があるわけでありまして、したがって先ほど官房長官もお答えを申し上げたとおり、決して画一的に機械的に男女の違いを認めないと、こういうことではないということであります。したがって、そういう誤解を生まないような施策の進め方というものが大事だろうと思います。
 なお、文部科学省の委託事業として発行されている、「未来を育てる基本のき」という冊子がありますが、ここにつきまして、男らしさ、女らしさを押し付けることの問題をこれは指摘したものでありますが、列挙した個々の慣例等について、それを否定的にとらえた上でその見解を逆に押し付けようとしているのではないかと、こういうふうに受け取られる向きもあったということは承知をしております。したがいまして、誤解の生じないように今後とも適切な対応がなされるように、関係省庁とも緊密な連絡を図ってまいらねばならないというふうに考えております。
 また、「思春期のためのラブ&ボディBOOK」という、この厚生労働省の所管団体の発行した冊子につきましても先生今言及されましたけれども、基本的には現実に中学生の、中学生向けのこれは冊子でありますが、中学生においても性体験を経験する児童が大変増えておるという、こういう現実があります。性教育というものはこれはやはり必要であろうと。
 しかし一方で、先生が御指摘されたような産まない自由、産む自由云々というふうな、産むか産まないかというふうな記述、ここに今手元にありますが、結婚するかしないかとか、いろいろなことを書いてございますが、元々子供が子供を作っちゃいけないわけで、子供が結婚していいということにはなっていませんので、冊子のこの表現の問題なんでしょうが、性教育は当然これはもう必要になっている、現実の問題として。しかしながら、一方でやっぱり一定年齢までの子供のあるべき姿というものをきちんと社会が教えていくという、このことも忘れてはならぬことだろうというふうに考えております。
 また、千葉県の条例の問題がありました。
 御指摘の入札参加資格に対する考慮につきましては、これは条例案から削除されたわけであります。本来、入札制度の趣旨というものは、納税者の納めていただいた税金によって公共的な事業を行う際に、公明かつ透明なルールによって、しかも廉価で高い技術によって仕事をしていただくということに趣旨の力点があるわけであります。その辺のところが恐らく議論の中心になって、少し趣旨が違うのではないかというふうな反対意見もあって削除という流れになったんだろうと思いますが、いずれにしましても、条例というものは各地方公共団体においてその地域の特性に応じ、また住民の意向を踏まえて作成できるということにもなっております。
 男女共同参画の考え方の本来の趣旨をしっかり御認識をいただいた上で、今後それぞれの地方公共団体の判断の下で、男女共同参画推進の正しい取組が推進されることを期待をしておるところであります。
 また、農水省の家族経営協定についての御言及もございました。
 一般に自由な民主的な社会においては、個人の暮らし方あるいは家庭の在り方にまで公権力が口を挟むのはいかがなものかというそういう御意見、一般的な原則論としては私は正しいと思っております。農家の家族経営協定の次は商店の家族経営協定だ、次は零細中小企業工場主の家庭の家族経営協定だというふうに拡大しかねないではないかという御批判があることも承知をしております。
 ただし、この今回の趣旨につきましては、あくまでも男女を問わず意欲や能力が十分に発揮されるそういう社会が必要なんだという、そういう前提の下に進められている施策でございまして、やはり画一的なルールを強制的に押し付けるものであるというこういう誤解を生まないような努力が必要である、そういう考え方を基本にしながら男女共同参画の推進を図る必要があると、この問題につきましてもそのように考えております。
 以上です。

○亀井郁夫君 ありがとうございました。
 是非誤解がないように十分指導していただきたいと思います。