155-衆-内閣委員会-2号 平成14年10月30日

平成十四年十月三十日(水曜日)
    午前八時五十分開議
 出席委員
   委員長 佐々木秀典君
   理事 逢沢 一郎君 理事 青山  丘君
   理事 小野 晋也君 理事 渡辺 博道君
   理事 伊藤 忠治君 理事 細野 豪志君
   理事 河合 正智君 理事 西村 眞悟君
      浅野 勝人君    大村 秀章君
      奥山 茂彦君    嘉数 知賢君
      金子 恭之君    木村 隆秀君
      菅  義偉君    谷川 和穗君
      谷本 龍哉君    近岡理一郎君
      林 省之介君    福井  照君
      石毛えい子君    鈴木 康友君
      山内  功君    山花 郁夫君
      山元  勉君    横路 孝弘君
      太田 昭宏君    吉井 英勝君
      北川れん子君
    …………………………………
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長) 谷垣 禎一君
   国務大臣
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   国務大臣
   (科学技術政策担当大臣) 細田 博之君
   国務大臣         鴻池 祥肇君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   内閣官房副長官      上野 公成君
   内閣府副大臣       根本  匠君
   内閣府副大臣       米田 建三君
   内閣府大臣政務官     大村 秀章君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   内閣府大臣政務官     阿南 一成君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  藤井 昭夫君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  春田  謙君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  貞岡 義幸君
   政府参考人
   (人事院事務総局勤務条件
   局長)          大村 厚至君
   政府参考人
   (人事院事務総局公平審査
   局長)          潮  明夫君
   政府参考人
   (内閣府大臣官房審議官) 岩谷 滋雄君
   政府参考人
   (内閣府男女共同参画局長
   )            坂東眞理子君
   政府参考人
   (警察庁長官官房長)   吉村 博人君
   政府参考人
   (警察庁刑事局長)    栗本 英雄君
   政府参考人
   (警察庁交通局長)    属  憲夫君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    奥村萬壽雄君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局長
   )            西田 恒夫君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (文部科学省研究開発局長
   )            白川 哲久君
   政府参考人
   (厚生労働省政策統括官) 水田 邦雄君
   政府参考人
   (経済産業省貿易経済協力
   局貿易管理部長)     細川 昌彦君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁電力・
   ガス事業部長)      迎  陽一君
   参考人
   (原子力安全委員会委員長
   )            松浦祥次郎君
   内閣委員会専門員     小菅 修一君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月三十日
 辞任         補欠選任
  亀井 久興君     浅野 勝人君
  高橋 一郎君     福井  照君
  大畠 章宏君     山内  功君
同日
 辞任         補欠選任
  浅野 勝人君     亀井 久興君
  福井  照君     高橋 一郎君
  山内  功君     鈴木 康友君
同日
 辞任         補欠選任
  鈴木 康友君     大畠 章宏君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 警備業法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十四回国会閣法第三五号)
 内閣の重要政策に関する件
 栄典及び公式制度に関する件
 男女共同参画社会の形成の促進に関する件
 国民生活の安定及び向上に関する件
 警察に関する件

     ――――◇―――――

○佐々木委員長 以上で山内功君の質疑は終了いたしました。
 次に、奥山茂彦君。

○奥山委員 奥山でございます。
 私は、先ほど論議になっておりました石井紘基議員の刺殺事件に関する問題、並びにテロ対策、それから遺棄化学兵器、今中国で残されておりますが、この問題につきまして主に質問をさせていただきたいと思っております。
 先ほどの山内議員に対する答弁の中でずっと出てくる話は、捜査上答えられない、こういう話がたびたび出てきておるわけであります。我々も、警察の捜査というものは、確かにいろいろと捜査の過程というものはなかなか表へ出しにくいとは思いますが、政治絡みの問題になって、特に、我々国会議員が国会でいろいろと発言をする、その発言が暴力によってゆがめられるということ、これは絶対にあってはならないということは、もう改めて言うまでもないわけであります。そういう中におきまして、国会議員が正常な国会での発言ができる環境をつくる、確保していくということは、これはもう警察としてもやはり考えていただかなければならない課題ではないかと思います。
 そういう中におきまして、この石井議員に対して、お亡くなりになられましたので、我々も心からお悔やみを申し上げたいと思います。
 そして、この何日か後に、これは同じ民主党の前田雄吉議員が、何か街頭演説のときに少年に殴られたというようなニュースも出ておりました。
 我々も、いろいろなところで、地元へ帰ると街頭演説をしたりしますと、時には、消費税のときには石を投げられたり罵声を浴びせられたりということもあったわけであります。これはしかし、外での話なのである程度は仕方がないかなと思いますが、国会のいろいろな発言の中でやはり巨悪を正していくということは、国会議員としての務めでなければならないわけであります。その言論が正常な形で守られなければならない。この点につきまして、谷垣大臣に、警察の立場として、ひとつどのようにこれから取り組んでいただけるかということで、冒頭にお尋ねをしたいと思います。
    〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕

○谷垣国務大臣 今奥山委員からお尋ねの点は、私ども、国会で自分の思うところをしっかりと述べ合って、そしてよい結論を出していく、そして民主社会を支えていくという、我々の活動の一番根底を脅かすような行動、これは断じて許すわけにはいかない、こういうことだろうと思います。
 そして、石井議員の件も、あるいは前田議員の件も、現在捜査中でございますけれども、徹底的に捜査をして、その背後関係等も明らかにしていかなければいけないと思っております。
 そこで、先ほど、これは山内議員の御質疑のときにあるいは御答弁すべきだったのかもしれませんが、警備局長の答弁と山内先生の御議論を私も聞いておりまして、なかなかここは、率直に申し上げて悩みも深いところでございます。先ほど申し上げましたような民主主義社会の根底に関することでございますから、警察としても全力を挙げなければならないという面は当然ございます。それから、より多く言えば、未然防止ということが一番これは考えなければならないことでございますが、現在のいろいろな人権体系等を見ますと、公権力が出ていくのは、事前にできる場合というのは、かなり限定的にいろいろなことが考えられている面がございます。事後であれば、もちろん強制捜査、何でもできるわけですけれども、そのあたりの兼ね合いをどうとりながらやっていくかということは、現場においても悩みがあるところだろうと思います。
 これは、簡単に両断して、こうだからこう、ああだからああ、こういうふうには簡単に言えない面がありまして、その事前抑止と人権保護の観点から、事後には強制権が発動できる、このバランスをどうとっていくかということに悩みながら最善を目指していきたい、こう思っております。

○奥山委員 今回の石井議員のケースの場合は、どちらかというとやや政治絡みの少ないケースではないかと思いますが、国会の発言をめぐって例えば右翼が車で押しかけてくるというようなケースはこれまでたびたびあったわけであります。もちろん、公然とやってくるところは、これは事前からわかるわけでありますが、突然襲われるというようなことになってまいりますと、これは警備は事前の十分な対応ができないということもあり得るわけでありますから、そういう場合に、特に右翼に関連する、過去において政治絡みで問題を起こしておったような右翼の情報というものは、これはやはりある程度国会議員にも耳に入るようにしてもらいたいと思います。
 それともう一つは、右翼とか、あるいはえせ同和とか、あるいは総会屋とか、今、いわゆる暴力団とかやくざが、最近は暴対法が非常に厳しくなった関係もあって、二枚看板、二足わらじをはいておるというようなケースが非常に多いわけであります。この伊藤白水というのも、右翼と名乗っておりますけれども、実際は思想的な面が余り裏づけがないように我々は感じてきたわけでありますけれども、これなんかも、一人右翼というか、あるいはたまたま本人の都合で右翼と名乗っておるのかよくわかりませんが、そういうケースではないかと思います。
 本当は全然横のつながりのない思想右翼というのが一番怖いということが昔から言われておったわけでありますから、そういう対応が、もちろん我々も気をつけなければならぬけれども、それによって国会議員としての言動を変えるということはできないわけでありますから、そのあたりは、本人がある程度自主的に申し出ることによって警察の警備を受けるとか、そういう体制を私はやはりつくっておく必要があるんじゃないかと思うんですが、その点についていかがでしょうか。
    〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕

○谷垣国務大臣 実は、私も国家公安委員会委員長になりましてから、同僚の議員の方々から、実はこういうことがあったんだけれども少し配慮してもらえないかというようなお申し出を、まだそんなたくさんはいただいておりませんが、いただいたケースがございます。それで私も、警察当局の方にその話をしまして、ある程度事情もよく伺って配慮をするようにというようなことを申した例もございますので、それは、何かいろいろな問題をお感じになりましたら、遠慮なくおっしゃっていただいたらいいのではないかと思っております。

○奥山委員 これは、谷垣国家公安委員長が一つ一つ相談を受けていただいたらありがたいんですけれども、体制としてはなかなかそうはならないと思いますので、警察の特に警備が、特に非常に問題が起こりそうだ、我々が仮に過激なというか、いろいろな問題を追及するときには、場合によってはいろいろな団体から反発とか嫌がらせの電話とか、そういうものがどうしても出てくるわけでありますから、そういう場合の国会議員の方からの申し出が十分受けられるという体制をやはりふだんからつくっておいてもらいたいと思います。
 それともう一つは、やはり過去いろいろな問題を起こしたような人物に関する情報とかいうのは、これはある程度公開してもいいんじゃないかと思うんですが、警備上の問題があろうかと思いますが、その点、いかがでしょうか。

○奥村政府参考人 ただいまの初めの方の点でございますね。御相談、お申し出の点につきましては、これは私どもも、現にそういうお話があったときはお話を伺った上で対応しておりますし、また、国会で質問された事柄につきまして、一部の、これは右翼、左翼と申し上げませんけれども、団体、組織が反発をいたしておるということで、現に警戒措置をとったようなこともございます。
 それから、右翼の情報でございますけれども、右翼が何らかの行動を起こそうとしているということでターゲットになっているというようなことがあります場合には、私どもはその情報を提供いたしたいというふうに思っております。

○奥山委員 今うわさの右翼のことばかり申し上げましたが、実はこれは左翼にも同じようなことがありまして、過去は左翼の活動の方がはるかに活発でありましたから、ひとつその点もよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 それから二点目は、テロ対策の問題であります。先日からモスクワのオペラ劇場で占拠事件が起こって、これは大変な方が亡くなられたわけであります。同じような問題がインドネシアのバリ島でも起こっておりますし、これは死傷者は出ておりませんが、イエメンの紅海の沖でフランスのタンカーが爆破されたりというような一連の事件というものは、これはもちろんその真相は明らかになってはおりませんが、いわゆるアフガンのアルカイダが今向こうの方を追放されたというか逃げ出して、これが世界じゅうに広がっておるということもいろいろ言われているわけであります。
 それで、そのアルカイダの一つのテロの標的というものは大体アメリカに向いているわけで、しかし、アメリカの警備が非常にかたいと、これはその周辺の同盟国に向いていくということは十分考えられるわけであります。
 そしてまた、改めて言うまでもないんですが、テロというものはなかなか見えない相手でありまして、予想されたところにテロが起こるということにはならないわけであります。まさに突発的に起こるわけでありますから、これに対する警戒をするというのは、これはもう大変な労力と人員がかかわっていかなければならないことは、改めて言うまでもないと思います。
 日本はアメリカとの同盟国であります。そういう意味では日本もその標的になりかねないわけでありますが、そういったアルカイダ等の情報というものは日本はどの程度把握しておるのかどうか、これは警察の段階ではどの程度把握されておるのかどうかということ。
 それから、あのオペラ劇場と同じような施設、日本は非常にたくさんの人が集まる施設というのはたくさんありまして、いろいろな劇場とか駅のターミナルとかデパートとか、そういうさまざまなところに人が常に集まるわけでありますが、そういうところがややもすると標的に、ターゲットになりやすいということが十分考えられる。今警察庁で、たしか五百八十カ所、最重要警備対象施設とされているということを聞いておりますが、どのような場所がその警備対象にされておるのか。あるいは、日本の警備体制そのものが今どういう体制をとられようとしているのか。長官。

○奥村政府参考人 まず初めのアルカイダの情報でございますけれども、御案内のとおり、昨年米国で同時多発テロが起きまして、先般バリで起きる、またフィリピンで起きる、それからモスクワでああいうテロ事件が起きております。私どもは、やはりテロ関連情報を収集するというのが一番大きな課題であるということで、国内外の機関と情報交換をしておりますし、また、私どもも独自でも情報を収集しております。
 アルカイダの情報でございますけれども、アルカイダはアフガンから追われましてアジアそれから中東等に大分散らばっておるようでございます。日本に入ってきている可能性がないかどうかということにつきまして、私どももいろいろ情報収集をしておりますけれども、はっきりと、アルカイダのメンバーが日本に入ってきたというような情報にはまだ接しておりません。
 それから、警戒の問題でございますけれども、私ども、去年の九・一一以来、各重要な施設につきまして警戒警備を実施をしてきております。具体的には、アメリカ大使館、米軍基地等の米国の関連施設、それからアメリカを支援する英国等の関連施設、あるいは総理大臣官邸等の政府の関連施設、それから原発等の原子力の関連施設、そして空港等その他の我が国の重要施設に対する警戒警備を強化してきておるところでございます。
 モスクワでは、今回オペラ劇場が占拠されたわけでありますけれども、こういう劇場とかスポーツ施設といった大勢の人の集まるところにつきましては、通常は施設の管理者等による自主警備を原則としております。私ども警察といたしましては、この施設管理者等の関係者と連絡を密にいたしまして、警戒上の留意事項、注意点等をきめ細かく指導しておるところでございますし、また、必要に応じまして所要の警戒を私どもでも行っておるところでございます。

○奥山委員 今警察庁で、一万人の職員をこれから三年間かかって増員をしたい。これはテロ対策に特に重点を置いて考えられているんじゃないかと思うんですが、仮に、今のような劇場とか人の集まる場所、今五百八十カ所の中にそういうものは入っていないですね。だから、そういうものも警備の対象として十分頭に置いて警備をしてもらわなければならないわけであります。本来常時警備されておるところは避けて、逆に言うと、インドネシアのバリ島の歓楽施設が攻撃されたということでありますから、本当にテロほど厄介なものはないわけですね。弱いところ弱いところを突いていくということになりますから、その辺の体制が大丈夫ですかということをもう一遍聞かせていただきます。

○谷垣国務大臣 奥山先生、いろいろ御心配いただいてありがとうございます。
 それで、先ほど警備局長が申し上げましたこういうところを重点的に警備しているというのは、だれが考えても、そういうところを重点的に警備するというのは当然のことだろうと思います。しかし、そのほか、やはりこういうのは、ここをやっておりますというのを明らかにしますとそこは避けるというようなことになりますので、こういう議論をしますとき、いつも一番難しいのはその辺でございまして、確かに我々としては、一万人ふやしていただきたいということでやっておりますのは、もう少し人員も必要だ、これはもちろんテロ関係だけじゃありません、一般の治安もございますけれども、できるだけそういうあたりはいろいろ考えながら重点的に配備をしていきたい、こういうことでございます。

○奥山委員 それから、警備局長が先ほどおっしゃいましたけれども、いわゆるいろいろな情報は、昨年の九月十一日の同時多発テロに関しては、警察かどこかが一部事前に聞いておったにもかかわらずそれが共有されておらなかったというような問題がとかく論議されたわけでありました。これは、特に外国のいろいろな情報というものは、やはり常に政府が共有をしておるということでないといけないのではないかと思いますし、そしてその情報というものは数限りなく入ってくるわけですね。もう何万、何百万と入ってくるんですね。実際にその中で本当に正確なというか的確な情報というのは本当に数えるほどしかないわけでありますから、その辺の分析がきちっとできて、しかも必要な体制がとれるように、日本の情報収集体制がとれておるかどうかということであろうと思います。
 これは、警察だけではなくして、外務省、自衛隊、それから経済産業省とか、いろいろなところがその情報をやはり収集してくるわけでありますし、また、いろいろな外国からの情報というものもいろいろな形で伝えられるわけであります。これが本当に政府に共有されるような体制に今十分なっておるかどうか。特に、内閣情報室というものがその後つくられたわけでありますが、その後の体制はどうなっておるのか、お尋ねしたい。

○貞岡政府参考人 御説明申し上げます。
 テロに関する情報については、内閣情報調査室を初め、情報を担当する機関が内閣のもとで相互に緊密な関係を保ちつつ、平素から収集しているところであり、諸外国の関係機関との間においても迅速かつ緊密な情報交換を行っているところであります。
 このようにして収集した情報の内閣における集約、分析については、その任に当たる内閣情報官のもとにそれらの機関の上級幹部が定期及び随時に参集して情報の評価、分析を機動的に行っているところであり、その結果については直ちに官邸に報告しているところであります。
 また、報道等の公開情報については、平成八年に内閣情報調査室に内閣情報集約センターを設置して、二十四時間の情報収集、集約体制を構築しているところであります。
 今後とも、情報の集約、分析機能の充実強化に一層努めてまいりたいと考えております。

○奥山委員 情報をいかにして的確に収集してテロを起こさせないようにするということが、これはもうもちろん一番の防衛体制でありますから、特にそのあたりは十分力を入れてもらいたいと思いますし、我が国の場合は、アメリカやヨーロッパ諸国と比べまして、軍事面で情報管理をするということが非常におくれておったということが言われているだけに、その情報の収集管理体制というものをひとつ十分体制をつくっていただきたいと思います。
 それから、さっき、山内委員と同じような内容で重なって申しわけないんですが、例えば、この前のモスクワのような事件が仮に起こったとしたならば、瞬間に判断するのは、もちろん警察と自衛隊、両方が体制をすぐ整えるということになると思うんですが、なかなかその判断のつきにくいケースがあるんですよね。実際にテロリストが、工作員が日本の国内に入った、しかしどこへ行ったかわからない、どの程度が入ったかわからないという段階では、大体警察が当初対応してもらうと思うんですが、実際に、どうも後の情報が上がってくると、非常に強力な武器を持っておるというようなケースが出てきた場合に、その判断は、大体、第一義的に警察が先に出て情報収集をして、その情報によって内閣総理大臣が判断するということになると思います。その場合に、内閣総理大臣は治安出動をかけるということにはすぐにはならないんじゃないかと思いますね。そういう場合の警察とそれから自衛隊、そして官邸との体制はどういう体制で進めていかれるのか、少しその辺をお尋ねしたい。何か協定がありますね。

○奥村政府参考人 実際に事案が起こりました場合にどうか、こういうことでございますけれども、これはやはり第一義的に治安維持に責任を持っております警察がまず出るということでございます。まず警察が出まして情報収集をし、また対応するということでございますけれども、片や、そういう事案が発生している可能性があるというときには、自衛隊の方でも情報収集のための出動というのが自衛隊法で一定の要件のもとに認められております。自衛隊がそういう情報収集に出る場合もございます。
 お互いに連携をとりまして活動するわけでございますけれども、先ほど申し上げましたような防衛庁と国家公安委員会との間で治安出動に関する協定というものを結んでおります。これに基づきまして私どもお互いに連絡をとるわけでございますけれども、治安出動の必要性があるという場合は、防衛庁長官あるいは国家公安委員会がそれぞれに他方に連絡をした上で、相手方の意見を付しまして内閣総理大臣に意見具申をする、そして総理大臣が自衛隊法七十八条に基づきまして自衛隊に治安出動を命ずる、こういう仕組みになっております。

○奥山委員 わかりました。
 拉致問題で一言だけ、警察が今どのような対応をされているかということをお尋ねしたいと思います。
 現在、十五名が拉致と認定されているわけでありますが、それ以外に、今国民の各層から、いろいろな拉致でないかという問題を警察に捜査してもらいたいということで挙げられていると思います。何か、聞くところによりますと、三十件あるとか五十件あるとか、いろいろな話があるわけでありますが、警察庁として今、まだこれ以上に拉致の疑いがあると言われるものがどのくらいあると見ておられますか。

○谷垣国務大臣 今奥山委員おっしゃいましたように、我々がこれは北朝鮮の関与している拉致事件容疑だと考えているのは十件十五名なんですね。それ以外にも関与が否定できないものが、これは幾つということは申し上げていないんでありますが、北朝鮮関与なしと否定できないものがやはりございます。
 これは今いろいろなところで事情を聞いたり洗い直しをしていただいておりまして、私どもとして、ある程度これは蓋然性があるということになりますれば、当然のことながら、外交ルートあるいは赤十字、いろいろなものがあると思いますが、さらに解明を北朝鮮側にも迫っていくということであろうかと思っております。
 何件ぐらいあるということについては、御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

○奥山委員 まだほかにも警察庁にお尋ねしたいことがたくさんあるんですけれども、時間がありませんので、中国の遺棄化学兵器についてお尋ねをいたします。
 中国は早い時期から日本側にたびたび遺棄化学兵器を早く処置してもらいたいという要求をしてきたわけでありまして、そして、一九九〇年代の初めごろから本格的に交渉をして、九七年に日本が化学兵器禁止条約に批准をいたしまして、十年間でその兵器をすべて処理する、製造もやめるということを世界に言ってきたわけであります。
 そして、遺棄化学兵器のほとんどは全部、日中戦争のころの中国の本土内に残されているわけでありますから、これについて日中覚書が一九九九年に交わされまして、その後、北安市それから孫呉県に行かれて化学兵器の発掘をされて、今、一時保管をされているわけであります。そして、その兵器のほとんどが中国の延辺朝鮮族自治区のハルバ嶺というところに今埋設されて、日本側の調査で約六十七万発埋められているということであります。この兵器を処理するということで、日中覚書に基づいて、来年の三月までに両国で話し合いをして、処理プラントの方法、それからインフラを含めた資金計画をこれからまとめるということになっておるわけであります。
 このハルバ嶺地区というところは、敦化市とか延吉市とか、こういう周辺の町の水道の水源地になっております。しかも、もし遺棄化学兵器が腐食してガスが漏れる、毒液が漏れるということになると一帯が汚染をされるということで、非常に中国政府は心配をして早く処理をしてもらいたいということで、今話し合いを進めてきて、いよいよ本格的に来年度からプラントの計画に入っていかなければならないわけでありますが、一九九七年に条約を結んで、十年間で一応中国側と処理をするという話し合いをしてきたわけであります。
 それでまいりますともう余り年月がないわけでありますが、その点について、中国側に日本は誠実に約束を履行していかなければならないということであります。その進捗ぐあい、それから話し合いの経過、少しその点をお示しいただきたいと思うんです。

○岩谷政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま先生御説明のとおりの状況でございまして、中国側との話し合いを鋭意進めておるところでございます。
 先生御説明のとおり、来年の三月末をターゲットにいたしまして主たるプラントの処理技術及び立地場所を決定するということで、今、実験等を鋭意行っておるところでございます。
 また、環境基準の問題がございまして、これにつきましては、中国の環境基準を採用するということで、環境基準策定のあり方等についても中国側と協議を進めております。これにつきましても、本年度中、来年の三月末までに策定するということで進めておるところでございます。
 今後でございますけれども、二〇〇七年、平成十九年までに化学兵器をすべて処理するという義務を負っておりまして、現在、着実に事業を推進しております。
 こういったような大量の古い化学兵器を処理するという事業は、世界を見ましても前例のないことでありまして、いろいろ複雑な問題がございます。引き続き中国側の協力を得つつ、一日も早く処理をするということで、鋭意努力を行ってまいりたいと思っております。

○奥山委員 これは日中間の過去の歴史の負の遺産と言えるわけでありまして、靖国問題もあるし、そして教科書問題も中国には責められておりますけれども、やはりこれは、中国側に対してただ謝罪するということではなくして、ことしは日中友好三十周年の年でありますから、日中友好の共同事業として、これから両国でお互いに協力してこの化学兵器を処置していこうということになって、中国側もその点は十分理解をしてくれておると私は思います。
 だから、そういう意味で、ことしは日中友好三十周年の年になりますから、なおさら共同の事業というものをより速やかに進めていく必要があるのではないかと思います。この事業が今のところでは、進めていくのにもう時間がないわけでありますけれども、誠実に我々はできる限り約束を履行していくということが日中友好の非常に大きなポイントになってくるんじゃないかと思いますので、ひとつその点は十分に進めてまいりたいと思います。私もまた現地へ寄せてもらいましたので、現地の状況というものは十分承知をしておりますから、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 それから最後に、男女共同参画についてお尋ねを申し上げたいと思います。
 まだまだ男女共同参画というものは、日本人の意識というものはおくれている面が多々あるんじゃないかと思います。
 いまだやはり農村へ行きますと、お嫁さんはやるものや、お嫁さんはもらうもんやというようなことをよくおっしゃるわけであります。大体、日本は男の子が生まれると親戚じゅうが寄ってたかってお祝いをしますが、女の子が生まれたときは内輪でそっとやるというようなところもなきにしもあらずであります。また、日本はまだまだ私生子とかそういうものには非常に冷たい目がありますし、ましてシングルマザーなんかは、やはり特に冷たい目で世間から見られがちであります。こういったもろもろの問題を含めて、やはり男女共同参画というものは進めていかなければならないと私も思っております。
 ところが、これは厚生労働省ですか、文部科学省ですかな、「ラブ&ボディ」というパンフが出されまして、中学生の性教育というパンフになっておるんですが、これが何かピルの勧めのような文面があったり、それからジェンダーフリーというものの何か履き違えと違うかというようなパンフも政府の出先の公的な機関から出ておったりしているわけでありますが、この辺は、よほど男女共同参画の本当のねらいというものが何かということを私はきちっとやはり知ってもらわなければならないんじゃないかと思います。
 私は、基本的には、男の子は男らしく、女の子はやはり女らしく育てるというのは、いつの時代でも変わりはないんじゃないかと思います。こういった点で、ひとつ御見解をお尋ねしたいと思います。

○坂東政府参考人 今御指摘ございましたように、男女共同参画というのは、二十一世紀の最重要課題ということで、国も一生懸命やっているわけですけれども、地方がどういうふうに取り組んでいただけるかということは大変重要で、条例づくり等を通じて、その意識、人々の意識が、理解が深まるようにいろいろ努力をしていただいているところでございます。
 最後に御指摘ございました男女共同参画関係の関係省庁の外郭団体から出されております資料等についてでございますが、学校教育における性教育の充実、あるいは男女平等を推進する教育、学習などについては、基本法あるいは男女共同参画基本計画の趣旨を踏まえて、関係各府省の判断と責任において行われるということになっております。ちなみに、基本計画では、性の問題につきましては、児童生徒の発達段階に応じ、生命尊重、人間尊重、男女平等の精神に基づき、みずから考え判断する意思決定の能力を身につける教育をするというふうに言っております。
 今後とも、男女共同参画社会の形成の促進に係る施策が適切に行われるよう、男女共同参画会議あるいは男女共同参画推進本部などにおいて、関係省庁と十分そういった意思の疎通を図るということに努めてまいりたいと思っております。

○奥山委員 ありがとうございました。
 最後ですけれども、今、地方の市町村、自治体で男女共同参画の基本法もまだ制定されておらない地方がまだかなりあるようであります。なかなか地方の足並みが十分そろわない面もありますので、ひとつその辺はこれからも十分指導をしてもらいたいと思います。
 それから、我々も、離婚した場合は、男性の世間が見る評価よりもやはり女性の方に冷たい目が行きがちであります。これが今の社会の姿でないかと思いますので、やはりその辺に意識の問題がまだまだ残っているんじゃないかと思います。ひとつその点も十分考えながら一応男女共同参画というものを進めてもらいたい、それをお願いさせていただいて、終わらせていただきます。

○佐々木委員長 以上で奥山茂彦君の質疑は終了いたしました。
 次に、石毛えい子さん。