154-衆-決算行政監視委員会第一…-3号 平成14年07月22日

(注:この議事情報は、「決算行政監視委員会第一分科会議録第1号」のデータです。)
本分科会は平成十四年七月十日(水曜日)委員会において、設置することに決した。
七月十九日
 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
      岩永 峯一君    小西  理君
      渡海紀三朗君    宮路 和明君
      持永 和見君    井上 和雄君
      石井 紘基君    木下  厚君
      大森  猛君    鈴木 宗男君
七月十九日
 持永和見君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成十四年七月二十二日(月曜日)
    午前十時開議
 出席分科員
   主査 持永 和見君
      岩永 峯一君    小西  理君
      渡海紀三朗君    宮路 和明君
      石井 紘基君    上田 清司君
      木下  厚君    山谷えり子君
      山村  健君    大森  猛君
    …………………………………
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (防災担当大臣)     村井  仁君
   内閣府副大臣       松下 忠洋君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   農林水産副大臣      遠藤 武彦君
   衆議院事務総長      谷  福丸君
   裁判官弾劾裁判所事務局長 天野英太郎君
   裁判官訴追委員会事務局長 片岡  博君
   国立国会図書館長     黒澤 隆雄君
   政府特別補佐人
   (人事院総裁)      中島 忠能君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房総括審議官     友寄 隆信君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房審議官       千坂 正志君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   会計検査院事務総局第四局
   長            重松 博之君
   会計検査院事務総局第五局
   長            円谷 智彦君
   最高裁判所事務総長    堀籠 幸男君
   政府参考人
   (人事院事務総局勤務条件
   局長)          大村 厚至君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   高橋 健文君
   政府参考人
   (内閣府男女共同参画局長
   )            坂東眞理子君
   政府参考人
   (宮内庁次長)      羽毛田信吾君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房長) 田原 文夫君
   政府参考人
   (国土交通省土地・水資源
   局次長)         加藤  孝君
   政府参考人
   (気象庁長官)      山本 孝二君
   政府参考人
   (沖縄振興開発金融公庫理
   事長)          八木橋惇夫君
   決算行政監視委員会専門員 川城 正彰君
    ―――――――――――――
分科員の異動
七月二十二日
 辞任         補欠選任
  井上 和雄君     山谷えり子君
  石井 紘基君     上田 清司君
  大森  猛君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  上田 清司君     山村  健君
  山谷えり子君     井上 和雄君
  中林よし子君     春名 直章君
同日
 辞任         補欠選任
  山村  健君     石井 紘基君
  春名 直章君     大森  猛君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十二年度一般会計歳入歳出決算
 平成十二年度特別会計歳入歳出決算
 平成十二年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十二年度政府関係機関決算書
 平成十二年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十二年度国有財産無償貸付状況総計算書
 〔皇室費、国会、裁判所、内閣、内閣府(本府)所管及び沖縄振興開発金融公庫〕

     ――――◇―――――

○持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。山谷えり子君。

○山谷分科員 よろしくお願いいたします。
 福田内閣官房長官、男女共同参画担当大臣、そして男女共同参画推進会議でリーダーシップをとってのお仕事、御苦労さまでございます。
 職場で、また生活慣習の中で女性に抑圧的な面が多い日本にあって、男女共同参画社会の実現は二十一世紀の我が国の社会を決定する最重要課題と位置づけられ、関係予算も九兆円と大きな額に上っております。国会議員として、日本のあしたのために有効にお金が使われ、国と一人一人のために実りある成果があるよう見ていかなければならないと考えております。そうした視点で幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 四月十一日、衆議院青少年問題に関する特別委員会で、「新子育て支援 未来を育てる基本のき」について、例えば女の子だったらおひな様、男の子だったらこいのぼり、「押しつけるような子育てをしていませんか?」というチェックリストに、私は日本人の文化や美意識まで否定するかのようで違和感を覚えると申しました。これはジェンダーフリーな視点に立った子育てを進めようという文科省の委嘱で作成された子育て支援パンフレットでございまして、こちらにも資料として添えさせていただいておりますが、福田官房長官からは正直言って賛成しないという御答弁をいただきました。
 そこで、さらに関連した問題を質問したいと思います。
 六月、先月のことでございますが、山口県宇部市議会が、次の資料を見ていただきたいというふうに思いますけれども、男女共同参画推進条例を可決いたしました。そこには、「男らしさ女らしさを一方的に否定することなく男女の特性を認め合い、」とか「家庭尊重の精神に基づいた」とか「専業主婦を否定することなく、」というような文言が盛り込まれておりますけれども、なぜこのような文言が盛り込まれたか、その理由あるいは経緯を、官房長官、御存じでございましょうか。

○坂東政府参考人 お答えいたします。
 宇部市の条例が、宇部市におきまして、その地域の特性に応じて、または住民の意向等を踏まえて、民主的な手続を経て議会において制定されたというふうに私どもは聞いております。

○山谷分科員 次の資料を見ていただきたいと思うんですけれども、「男女共同参画社会 With You」、宇部市の男女共同参画課がつくったものでございます。その中に、「結婚のかたち」といたしまして、「婚姻届を出しました」「婚姻届は出しません」「形にしばられたくないな」「別々に暮らしています」「夫婦別姓にします」「独身で生活しています」とあります。これは、「婚姻届は出しません」というのは民法第七百三十九条違反、「別々に暮らしています」というのは同七百五十二条違反、「夫婦別姓にします」は同七百五十条違反なんでございますが、「結婚のかたち」ではなく、多様な生き方というふうにしてくくるならわかるんですけれども、「結婚のかたち」というふうにしている。
 これに対して市民たちが非常に問題意識を持ちまして、回収してくれないか、日本は法律婚主義だと思っていたのがいつから事実婚主義になったのかとか、結婚を軽く見ているのではないか、家族解体ではないか、男女共同参画社会というのが文化の破壊、家庭の破壊、男女同質化を目指すものならばそれは私たちが望むことではないというような、多くの市民、主婦たちも声を上げまして、市議会で大変に問題になりました。
 今、男女共同参画推進条例というのは、三十六都道府県、六十二市町村でつくられております。このようなマニュアル本ができておりまして、大体このようなマニュアル本を見て皆さんおつくりになっていらっしゃいます。こういうマニュアル本が何冊かあります。それで、宇部市の場合も、審議会の答申案の中には、このような形の、マニュアル本のとおりにあったんですね。すなわち、男らしさ女らしさを一方的に否定することなくとか、家庭尊重とか、そういうものは入っておりませんでした。
 ところが、この小冊子を見て、市民たちがおかしいと言って、市議会の議員たちが問題意識を持ってくださって、あえてこの文言を入れたんですね。このことについて、七月十二日、兵庫県宝塚市で開かれた全国男女共同参画宣言都市サミットで宇部市の藤田市長がこのようなことを発表して、非常に大きな反響を呼んでいるわけでございます。
 この宇部市のパンフレットというのは、国の共同参画基本法とか政府の意図を曲解したものだというふうに思うんですが、この曲解がいろいろなところで、地方で起きている。政府は、男女共同参画基本法をもとにして、家庭を解体したり、あるいは現行婚姻制度を根本的に改めようというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。官房長官、よろしくお願いします。

○福田国務大臣 男女共同参画社会基本法で今の家庭制度とか家族制度、そんなようなものを破壊するかどうかというのであれば、それはそういうことじゃないと思います。日本には日本古来の伝統もあるわけでございます。そして、今現在、その伝統にのっとった家族、家庭も存在しているわけでありまして、それは今後も、守るべきものは守っていくということなんだろうと思います。
 行き過ぎた考え方というものは、私どもはとりたくない。しかし、別面、世の中も随分変わってきております。その中でも、例えば少子高齢化だとか、国際化とか、いろいろなライフスタイルと申しますか、そういうものも存在してきているということも事実でございますので、そういう個々の方々の生き方とか考え方を否定するものであってもいけない。むしろ、新しい生き方とかそういうものを積極的に認めるということも、これまた大事なことではないだろうか、そのことの方が、社会をより活性化するものになるんではなかろうか、こんなふうに考えているところでございます。

○山谷分科員 私自身は、仕事をしていた関係上、旧姓を通称使用として使っているものでございます。ですから、旧姓を通称使用として使いたいという女性の気持ちも大変わかるのでございますけれども、夫婦別姓というのはまた別の議論があっていいのではないかというふうに考えているわけでございます。夫婦別姓も導入しようというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。

○福田国務大臣 今、私が申し上げたことの中にも入る考え方であるということであります。仕事の関係とか、また個々の人の考え方というものもございます。基本は今までの家族関係ということだと思いますけれども、しかし、新しい生き方、考え方、これを尊重する立場というものもやはり必要なのではなかろうかというように考えております。
 いずれにしましても、この夫婦別姓の問題につきましては、今、与党の方でも野党の方でも、いろいろな議論がされているところでございます。そういう議論の推移を踏まえまして、今後、政府としても対応していく問題だと思っております。

○山谷分科員 ことし検定に合格いたしまして来年から使われる教科書の中に、夫婦別姓を暗に推奨した書き方があったり、また、家族の形もこのように紹介されているんですね。
 資料を見ていただきたいんですけれども、「家族・家庭をみつめよう」という中で、「近年では、ディンクス、事実婚、養親と養子、婚姻関係や血縁関係はないが生計をともにしている関係、職業や学業の関係で住居を別にしている家族や別居結婚などのように、家族としての結びつきかたも、住まいかたも多様になっている。」「どのような家族をつくっていくかはさまざまである。一人ひとりが考え、選び、つくっていくものといえるだろう。」ということで、事実婚なんて、「婚姻届を出すという法律上の手続きはしていないが、事実上夫婦として生活している関係。」
 これは高校の教科書なんですけれども、事実婚を進めているとか、そのように読めるような、検定の基準には、青少年の健全な情操の育成とか誤解を招かないような表現をというような検定基準があるんですけれども、これは検定に合格してしまったんです。まず家族愛とか、そのようなことを教えるべきことを、いろいろな、事実婚、それぞれあって、どんな家族をつくっていくかはさまざまと。これを高校生に教えるというのは適当なものかなというふうに考えております。
 さらに、次に、結婚について教科書から抜き出したものをちょっと書かせていただいているんですが、これは本当にトップシェアだったと思います。資料がありますが、家庭一般21というところから、結婚について「専業主婦として、日中家で子どもと過ごす母親は、生きがいは子どもだけになり、いっぽうで孤独感やいらだちを募らせる。子どもは友だちとの関係がきずけなくなる。」「日本は欧米先進国と比較しても、離婚率はあまり高くはない。では日本の夫婦関係は良好かといえば、そうともいえない。離婚後の経済事情を考えれば、結婚生活をつづけざるをえないケースなどもあるからである。」というふうに書いてあります。
 ブレアは両親そろった健全な家庭づくりというものを訴えておりますし、ブッシュもファミリーバリュー、結婚生活を維持するための教育を中高校生に義務づけている州さえございます。やはり、男女共同参画社会という名のもとに結婚を軽く考えさせようとして、家族解体促進運動になるんじゃないか、宇部市の市民なんかはそう思って声を上げたわけですね。それは誤解だとは思うんですが、実際に、このような誤解を招くような小冊子、そして教科書もこのようになっているんですね。こういう実態、どういうふうに御感想をお思いでしょうか。

○福田国務大臣 教科書の内容のことにつきましては、日本には検定制度というのがあります。御指摘のとおりでございまして、その検定で合格されたものであると、それは適切なものだ、こういうようなことになるわけであります。
 しかし、これは、今、部分部分の例を御紹介いただきましたけれども、部分の説明でございますので、全体がどうなっているのか、これ以外に日本の家族制度のよさとか大事さとかいったようなことが記述されているんであれば、それはバランスがとれているというように思いますので、その辺のことも勘案して見るべきだろうというふうに思っております。

○山谷分科員 続きまして、男女共同参画基本計画、この中にも書いてあるわけでございますが、性と生殖に関する権利というのがあります。女性の健康支援がうたわれております。私も大変大事なことだとは思います。そしてまた、推進条例のつくり方などのマニュアル本にも入って、自治体の推進条例にも入っているところがあります。ところが、宇部市は、審議会の答申の中には入っていたんですが、これは実際の推進条例のときには抜いたんですね。これも、やはり議論があったわけです。
 現場でこれがどういうことになっているかといいますと、フリーセックス教育や、性的自立という名のもとに学校などで早い段階からの性器教育、避妊技術教育になっている、そういうことがあるわけでございます。
 例えば、宇部市のこの小冊子の中では、「子どもたちに男女がお互いを尊重し、自分を大切にできるような性教育をしよう」とか「産まない人の選択を尊重しよう」、何か見逃してしまう部分なんですけれども、実際にこれがどういうふうになっているかというと、例えば性教育の部分では、また教科書の抜き書きを見ていただきたいんですが、「男女のコミュニケーションとして愛情を育て、確かめあい、互いに充足感を求めようとする行動」、これは今使われている教科書です。来年使われる、検定を受けた教科書の中に、「とりかえばや女と男 女子生徒は男性、男子生徒は女性の役になって、次の場面を演じてみよう。 デートで性関係を求める場面」これはさすがに検定削除になりましたけれども、こういうものを書いてくるんですね。
 それから、これは先生たちが使う指導資料なんですけれども、ここに「ふれあいの性」というふうにありまして、「愛がなければ性交してはいけないんだよという考えの押しつけであってはならない。」という、フリーセックスの勧めのようなことを書いているわけでございます。
 次に、ちょっと、「ラブ&ボディBOOK」というのをごらんになっていただきたいんですが、これは、先日私が文部科学委員会で問題にさせていただいたものなんですが、全国の中学生全員、百三十万人に、教育委員会、保健所等々を通じて配られようとしていたものです。既に配られたところもございます。これは、製薬会社からお金をもらって厚生労働省の所管の財団法人日本母子衛生研究会がつくったものなんでございますけれども、次のページをめくっていただきますと、ピルについて、失敗率一%、女の子が自分で避妊できるのが最大のメリット、世界じゅうで広く使われているよと。
 これは毎日飲むものでございます。それで、今、ピルの失敗率一%というのは直ってきておりまして、アメリカでは一〇%を超えているんじゃないかということで、製薬会社といろいろなやりとりがあって、五%に直されているんですね。このデータは、十数年前のデータを厚生労働省があえて使っているんです。毎日飲むもので、環境ホルモンだというのも最近わかってまいりました。不妊症になるとか、胎児の染色体異常などもあるということがわかってまいりまして、欧米各国では訴訟も起きておりますし、いろいろな副作用のところを書きかえております。
 ところが、厚生労働省は、エイズとBSEの問題に共通するところがあるんですが、知らぬ顔をして、書きかえておりません。まして、中学生たちに対して、副作用を教えずに副効用のみを教えるような、こういうものをことし平気で配ったわけでございます。これも、厚生労働省の平成十二年、女性健康手帳検討委員会の報告書に基づいてつくられたと。これは、男女共同参画社会の基本計画の中の性と生殖に関する権利に基づいてこのような検討会がつくられ、このような小冊子になって、中学生全員に配られているというものでございます。
 中絶についても、「日本では中絶することが許されている。」「もちろん日本のお医者さんの中絶手術の技術は信頼できるけど、」と。最後に、望まない妊娠は避けないとねと書いてあるんですけれども、今の中学生というのは自分の都合のいいように都合のよいところを読みますから、非常にセックスを安易にとらえる記述が目立ちまして、ラブ能力テストとか何かそういうのもありまして、中学生もセックスしていいんだよというメッセージ、誤解を与えるのではないかというふうに思います。
 それから、ピルについては、最近、受精卵が着床しても流す作用があるということで、これは刑法二百十五条、不同意堕胎に問われる可能性もあるわけでございまして、非常に問題が多くて、私がこのようなことを言いましたら、文部科学大臣も中学生に不適切だと言いまして、今三十数県、都道府県でお母さんたちが抗議の声を教育委員会に向かって上げまして、配付中止を決めたところ、あるいは中止を検討し始めているところというのが出てきております。このような実態を把握していらっしゃいましたでしょうか。
 それから、性と生殖に関する権利、女性の健康支援、全くもっともなことだと思っていたのが、このような現場の小冊子になっているということを御存じでございましたでしょうか。

○坂東政府参考人 お答えいたします。
 男女共同参画基本計画にリプロダクティブヘルス・ライツの記述がございまして、今、議員から御指摘がありましたような研究会、懇談会等でいろいろ御検討をいただいておりますけれども、その意見に基づいて、この「ラブ&ボディ」を直接おつくりになったというよりは、母子保健衛生会ですか、その厚生労働省の認可団体の方でおつくりになったというふうに私どもは聞いております。
 また、その財団に対する指導は厚生労働省の方で十分行われていると思いますし、ピルにつきましても、その認可に当たっていろいろな議論が大変、三十年にわたって行われてきたということもございまして、その担当の部署で十分な議論が行われているというふうに承知しております。

○山谷分科員 母子衛生研究会の方は、国の方針に従って編集したのにどうして批判されるのかわからないというふうに言っております。三十年間いろいろ研究されておりましたが、最近の研究成果を厚生労働省はあえて隠しているというふうにしか私には思われないということを述べさせていただきたいと思います。
 私は、性教育というのは、生命尊重、喜びと責任、非常に普遍的な価値、モラルを基本とするものでなければならないというふうに思います。
 アメリカでも、早期性教育、避妊技術教育をした方がいいんじゃないかという議論がございまして、やったんですが、実際は、初交年齢の低年齢化、それから妊娠中絶、性感染症の増大という非常にとんでもない結果になったわけですね。それで、欲望コントロールプログラム、家族や人間の価値を教えるプログラムへと急速に見直しを始めました。アメリカでは、プログラムをやったら、そのデータで政策評価をしますから、それをした方が十代の妊娠、性感染症の減少に確かに効果があったということが出て、ここ五年間、毎年六十億円ほどのプログラム予算がついております。
 性と生殖に関する権利として、子供を産むか産まないかを選ぶ自由もある、女性の基本的人権であると、教科書でも、この宇部の小冊子でも教えているわけですが、しかし、宗教上の問題などから世界的一致を見るに至っていない。日本の場合は、それがあたかも基本的人権であると言い切って、誤解を招くようなインフォメーションをしているわけでございます。
 相手の男性の思い並びに胎児の生命という視点から見て、これは問題はないのでございましょうか。性教育の実態、それから胎児の生命ということから見て、女性の基本的人権と言い切ってしまうこの言い方というのは問題がないのか、福田官房長官にお伺いしたいと思います。

○福田国務大臣 男女共同参画基本法においても、これは児童生徒の発達段階に応じということが書いてございます。発達段階に応じて、性に関する科学的知識とか生命尊重、人間尊重、男女平等の精神に基づいて、みずから考え、判断をする、そういう意思決定の能力を身につけるように、そしてまた望ましい行動がとれるようにすることが重要であるということを述べているわけでありますけれども、まさにそういうことであります。
 これは基本法でございますが、現場においては、さまざまな実態と、それからまた状況と申しますか、その時々の条件があろうかと思いますので、その現場の指導というのは極めて大事な部分だろうと思います。そのところを、この基本法とどのように結びつけていくかということなんだろうと思います。
 その点については、私も具体的なことを存じているわけじゃございません。しかし、そのことに今後やはり相当注意をしていかなければいけない、委員の御指摘のとおりだと思っております。

○山谷分科員 児童の権利条約も児童の権利宣言も胎児の生命権を認めておりますけれども、このような書き方だと、政府は胎児の生命権、子供の人権を否定しているように思われるわけですが、その辺は官房長官、いかがでございましょうか。

○福田国務大臣 児童の権利条約の趣旨も全く同じことだと思います。

○山谷分科員 そうすると、胎児の生命権を政府は認めているということでございますね。

○坂東政府参考人 男女共同参画基本法が制定される前の男女共同参画審議会の答申におきましても、リプロダクティブヘルスについては、生涯を通じた女性の健康ということで、大事だという合意はされているんですけれども、ライツについては、いろいろな意見があるというふうな記述になっております。
 国際的な場でもリプロダクティブライツについてはいろいろな議論が行われていることは、今御指摘のとおりでございます。

○山谷分科員 胎児の生命権はあるんですね。小冊子並びに教科書にはそれの視点がないので、やはりこの辺は書き方にもう少し慎重であってほしいというふうに思います。
 そもそも男女共同参画基本法においては、改善の対象にされていたのは、不平等をもたらす制度または慣行だったというふうに思っておるんですが、今のような現状を見ると、それが国民の意識を改造することだというふうに感じざるを得ません。
 日本国憲法十九条には、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」と規定されております。この規定について、公権力が特定の思想等を組織的、継続的に宣伝することによって国民の自由な思想形成を阻害する行為は許されないと説明する憲法学者もいるわけでございますけれども、こういう現状を見ると、曲解だとは思うんですが、国、県、市という公共機関が、家庭、個人の思想、良心に入り込んでいると言わざるを得ないんじゃないでしょうか。官房長官、いかがでございましょうか。

○坂東政府参考人 私どもは、今、委員から御指摘がございましたとおり、男女共同参画社会というのは、女性たちがいろいろな差別、あるいは特に不利益をこうむることなく、自分の適性と能力を十分社会で発揮できるような環境を整えていくというふうに考えております。
 基本法の精神あるいは基本計画の精神、ただいま官房長官の方からもいろいろ御答弁ありましたけれども、そうした趣旨が十分に現場に到達しているかどうか、そういった情報提供の部分について、今後ともさらに努力を重ねていかなければならないと思っております。

○山谷分科員 趣旨が徹底ではなくて、何か別の趣旨があってこの男女共同参画社会基本法をつくったのではないかと思うぐらい現場が非常に混乱しているということを、やはり率直にいろいろ調査して、対策をとっていかなければ、これはまずいんじゃないかなというふうに考えております。
 政策に、女性参画、雇用面での機会均等、待遇改善、農村、漁村の男女共同参画、高齢者支援、本当に大切なことがいっぱいこの基本計画の中に入っておりまして、これは大切に育てていかなければいけないことだというふうに思っているんですが、今まで申したような、家族に関して、生命に関して、性教育に関して、性と生殖の権利というのを非常に上積み、横出しする形で、役所のかかわる小冊子、プログラム、教科書などでゆがみ、曲解が進められている現状、これをやはり把握していただきたい。九兆円というお金が使われている、本当に二十一世紀の我が国の最重要課題でございます。
 福田官房長官は男女共同参画会議の議長でいらっしゃいます。十二名の大臣、そして十二名の学識経験者、専門調査会などもございます。今私が提供させていただいた材料、あるいはまた問題意識から、これを専門調査会にかけるなり会議の議題として取り上げていただけますでしょうか。いかがでしょうか、福田官房長官。

○福田国務大臣 委員の御指摘の諸懸念につきましては、これは、男女共同参画基本法の趣旨が現場に至るまで徹底するかどうか、また、しているかどうかといったような問題も含まれているというように思います。
 私は、先ほども申しましたように、行き過ぎた解釈というものはすべきではないし、また、我が国の伝統的な家族とか男女関係も含めまして、そういうものはそういうもので価値のあることであるし、今後もそのことに重きを置いていく考え方というものは厳然としてあるんだろうというふうに思います。
 ただ、繰り返して申し上げますけれども、しかし、新しい時代に新しい価値観を生み出そう、そういう人たちもいるわけでありますから、そういう方たちが窮屈な思いをするとか不便な立場に置かれてしまうとかいったようなことになっていいのかどうか、その点についても考えていかなければいけないというように思っておるわけであります。
 そういうように多様な価値観の中でこれから生きていく我が国の国民が、皆さんがそれぞれに協力し合えるような、そしてまた、その結果が明るい社会、活力のある社会、そういうものになるようなということを考えているわけでございまして、そういうことにならないような考え方、趣旨の解釈というのであれば、これは問題があるというように思っております。現場までやはりよく見て、どういうようなことが現実に起こっているかということを見きわめていくことも私は大事だろうというふうに思っております。

○山谷分科員 いろいろな専門家は、男女には脳に違いがあったり、あるいは、男女の区別というのは人間のアイデンティティーの形成に深くかかわっているなどと言う方もいらっしゃるわけでございます。また、今、官房長官がおっしゃった多様な価値、私は多様な価値は大事だというふうに思うんですけれども、多様な価値とか自己決定権の拡大、そういうスローガンのもとに普遍的な価値が否定されていっているという、その辺はやはり区別して考えないと非常に危険なのではないか、子供、女性の人権が守られずに、日本社会のよきものが壊されていく危険があるのではないかというふうに思いますので、やはりこの辺で具体的な事例を集めて整理し直す、チェックし直すということが大事ではないかというふうに思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。

○持永主査 これにて山谷えり子君の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――