154-衆-決算行政監視委員会-13号 平成14年07月10日

平成十四年七月十日(水曜日)
    午後五時十五分開議
 出席委員
   委員長 渡海紀三朗君
   理事 岩屋  毅君 理事 桜田 義孝君
   理事 御法川英文君 理事 持永 和見君
   理事 木下  厚君 理事 松崎 公昭君
   理事 山名 靖英君 理事 塩田  晋君
      相沢 英之君    逢沢 一郎君
      石田 真敏君    江藤 隆美君
      上川 陽子君    小西  理君
      橘 康太郎君    谷  洋一君
      土屋 品子君    中川 秀直君
      額賀福志郎君    武藤 嘉文君
      村上誠一郎君    森岡 正宏君
      森田  一君    井上 和雄君
      金子善次郎君    今野  東君
      手塚 仁雄君    永田 寿康君
      楢崎 欣弥君    葉山  峻君
      山田 敏雅君    神崎 武法君
      大森  猛君    穀田 恵二君
      山口わか子君    中村喜四郎君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       武部  勤君
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   国務大臣
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣         石原 伸晃君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   政府特別補佐人
   (人事院総裁)      中島 忠能君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   会計検査院事務総局第四局
   長            重松 博之君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君
   政府参考人
   (内閣府男女共同参画局長
   )            坂東眞理子君
   政府参考人
   (総務省自治行政局長)  芳山 達郎君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 佐藤 重和君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           鶴田 康則君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省老健局長)  堤  修三君
   政府参考人
   (林野庁長官)      加藤 鐵夫君
   決算行政監視委員会専門員 川城 正彰君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月十日
 辞任         補欠選任
  岩永 峯一君     上川 陽子君
  手塚 仁雄君     永田 寿康君
同日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     岩永 峯一君
  永田 寿康君     手塚 仁雄君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 分科会設置に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 分科会における政府参考人出頭要求に関する件
 分科会における参考人出頭要求に関する件
 平成十二年度一般会計歳入歳出決算
 平成十二年度特別会計歳入歳出決算
 平成十二年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十二年度政府関係機関決算書
 平成十二年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十二年度国有財産無償貸付状況総計算書

     ――――◇―――――

○岩屋委員長代理 次に、松崎公昭君。

○松崎委員 総務大臣にまずお尋ねいたしますけれども、郵政では随分いろいろやりましたが、今度は住基ネットの問題を少しさせていただきます。民主党の松崎でございます。
 住基ネットは、もうかなり話題にはなっております。私も、実は三年前の、地行にずっとおりましたから、この経過は十分知っております。
 そこで、あのとき、たしか審議を始めたころは公明党さんはまだ野党だったと思います。途中から与党になられたのかなと思っておりますけれども、そのとき、特に公明党さんの、極めて熱心でありました富田議員も先頭になって、この住民基本台帳ネットワークシステムはかなり問題があるんだということで、極めて熱心な審議をしておりました。
 最終的に与党に入られて、たしか与党との中での話し合いの中で、例の個人情報保護、これをしっかりと担保するよということで、十一年の六月十日に小渕総理みずからお出ましをいただいて、そこで、整備をするんだ、これは前提であるということを申したわけでありますね。そういう経過から、しかもいろいろ世間の、各自治体も含めて反対がある。
 それから、我々も審議中に、極めて危険性のある、世界でまれになる、しかもICチップをつけて、個人四情報とはいいながら、さまざまな情報が自治体を中心にして、また中央政府も、中央の各省庁もそういったものを生かしていく。極めてそれは便利だけれども危ない。そういうことで相当の議論があって、我々は最終的に反対しました。
 さて、これが八月五日にスタートだということでありますけれども、私は、この個人情報保護法案、これは、この前、福田官房長官は、既に提出したんだから政府は責任は果たしている、だからこの住基ネットシステムは動かしていいんだ、多分そういう御答弁だったとは思いますけれども、私はそうは認識しておりません。個人情報保護法案は、いろいろな意味で欠陥法案と言われております。ですから、これをつくり直しをして、そして国会で通した後にこの住基ネットは動かすべきである、そのように思いますが、やはりそれでも八月五日にスタートさせるんですか。

○片山国務大臣 松崎委員は、私より経緯はあるいはお詳しいと思いますけれども、十一年の八月にこの法案が通りまして、三年以内に政令で定める日から施行、それが八月五日でございまして、その八月五日を目指して全国の地方団体、ずっと準備してまいりまして、もう目睫の間に迫っておりまして、これは法律で決めたことですから、やらないと法律違反になる。
 そこで、今の個人情報保護法との関係ですが、私は、個人情報保護法が通るのがベストだと思います。しかし、まだこの国会は会期が残っておりますし、今後どういう展開をするかわかりませんけれども、個人情報保護法成立のためには全力を挙げますが、仮にそれがそうはならなくても、法律としては別建てでございますし、政府としては最善の努力をしたということだと私は考えておりますから、これはこれでやらせていただきたい、こういうふうに思っている次第でございます。

○松崎委員 今さら申し上げるわけでもありませんけれども、防衛庁の個人情報の保護が、まずいことをしてしまった、そういうことがこの前あったわけですね、漏えい問題といいましょうか。そういうことがあって、皆さん国民がやはり非常に心配している。
 しかも、たしか本文じゃありませんよ。附則の第一条第二項かもしれませんけれども、あのとき野田自治大臣も委員会でちゃんと言っているわけですね、法整備を含めたシステムを速やかに整えるんだと。もちろん、これはなかなか難しいですね。法律ではない、大臣なりあるいは総理大臣が来て答弁、国会でよくやる手ですけれども。どちらが重みがあるとかそういうことを言いますと、法制局が出てきて、それは法律ですと言うことに決まっていますから聞きませんけれども。
 私は、それだけ厳しい、危ないよということで、時の総理大臣が個人情報を保護しようという意思をはっきり示した、それはやはり守るべきであろう。これは国民のためなんですからね。であれば、幾ら法律がこうだからといっても、私は、そのくらいの、国民に対する安心感を与えるという意味では、最低限個人情報保護法案ができ上がるまで待つべきだろう、延ばすべきだろうと。
 ですから、御党の前政調会長亀井静香さんも、この前、超党派の議員連盟で、七月四日でしょうか、決起集会がありました。中川昭一元農相、塩崎さん、その他自民党七議員まで、反対するほかの議員さんと一緒に三年間凍結する議員立法に署名した。自民党の中だってそういう、危ないんじゃないかということをしっかり認識している議員がいらっしゃるんですね。また、日弁連も前々から反対しておりますよ。まして、アンケート調査も日弁連はやっています。これも非常に、四分の三が否定的であり懐疑的だと。地方議会も、延期を求めている採択をしているところが二県五十七市町村、まだそう多くはありませんけれども。そういう心配をしているわけでありますので、私はぜひここはしっかりと考えなきゃいけないと思います。
 さて、たまたま、坂口大臣がお見えでございますので、たしかこのとき大臣は政策調査会長でございましたね。ですから、三党合意、これはあったはずです。そのときには当然、政策の責任者として、個人情報保護法案をしっかりつくるんだということを三党合意されたと思うんですが、つい最近は、与党国対委員長会議で、七月八日ですか、通そうということになったそうでありますけれども、私は、責任ある、そして誠実な坂口大臣でありますので、その当時のことを思い浮かべながら、このまま通してよろしいんですかと個人的にお聞きしたい、そう思います。

○坂口国務大臣 松崎議員には、いろいろとお世話をかけております。
 この住民基本台帳ネットワーク、そして個人情報保護法の問題が起こりましたときに、私、ちょうど政調会長をやらせてもらっておりまして、それで、そのときに私の方の党内も正直言って意見が分かれたわけでございます。それで、それをまとめるという意味からも、この住民基本台帳ネットワークをつくるに当たりましては、やはり個人情報保護法というのを成立させよう、同時にひとつ決着をしてもらおうということで提案をさせていただいたわけでございます。そうした中で、昨年でございますか、この個人情報保護法も国会に提出をされまして、そういう意味では信義を守っていただいたというふうに考えている次第でございます。
 それで、うまくそれが通過をするのかなというふうに思っておりましたら、いろいろな御議論があって現在に及んでいるということでございまして、願わくばこの法律が一緒に通っていただくことを私も念じております一人でございます。そういたしますれば所期の目的が達するのではないかというふうに思っている次第でございます。
    〔岩屋委員長代理退席、委員長着席〕

○松崎委員 なかなかお答えしにくい問題かもしれませんけれども、私は、再々言いますように、与党の中にもやはり非常に心配をされている方々もたくさんいるんだと。そして、国民自身が、まず自治体自身が余りまだ準備されておりませんよね。
 ですから、そういう意味でも、法律ができたんだからもう当然なんだ、しかし、条件をつけたものができていなくて、それでいくということは、私は、やはり国会の場できちっとしたことをやったわけですから、ぜひやっていただきたい。我々はまた、これはまだ八月五日まで時間がございますので、超党派で頑張っていきたい、そんなふうに思っております。
 次に、きょうは、男女共同参画社会という極めて当然、ノーマルな社会を目指している、そういう基本法を踏まえながら今進んでいるということで、それはそれで、私は今までの、非常に日本の、男尊女卑であったとか女性の職場進出がしにくいとか、そういう中で、この男女共同参画社会というのは私も歓迎をする。
 ただ、私は、どうも最近は男女共同参画社会という概念の中に、ジェンダーフリーでありますとかフェミニストの方々、フェミニズムの考え方が少し入り過ぎてきているのかな、強調され過ぎているところが非常にある。
 これから幾つか例を申し上げるわけでありますけれども、結局、大人の社会であれば、いろいろなことで意見があって、ぶつかり合いながらいきますけれども、子供の社会、教育の面にこれがもし行き過ぎたりしますと、いろいろ影響を与える。そういう意味で、男女共同参画社会の、ある意味では、行き過ぎたということもないんですが、その中に入り込んでいるジェンダーあるいはジェンダーフリーの考え方、少し我々はチェックをしなきゃいけないんじゃないか、そういうふうに私は感じております。
 例えば、各自治体で、この男女共同参画社会を普及させよう、考え方を伝えようということでいろいろやっておりますね。この前、「正論」の八月号に「団地妻ユキの闘い」ということで、ある女性が、各地区でやっている共同参画のシンポジウム、これが非常に行き過ぎていると女性が感じると。例えば、日本では非婚母子はやっと一・五%になったばかりだとか、何かいかにも非婚母子を奨励するような内容があったり、それから、いい妻、いい母となるよりも、まず自分が一人の女性として意識することから始めようとか、非常に行き過ぎていると。
 そこで、官房長官でしょうか、各自治体での男女共同参画社会の普及のためのさまざまな行動に対して、少しジェンダーフリーの過度の考え方が入り込み過ぎていないか、そういう心配をしているんですけれども、そういうことは把握されていらっしゃいますか。

○坂東政府参考人 地方公共団体におきまして、男女共同参画ということでいろいろな活動を、地方分権の時代ですから、それぞれ工夫しながらやっておられるというふうに私どもは考えております。

○松崎委員 何ですか、それ。要するに、そちらでは管理というかチェックもしていないということね。分権だからもう任せっきりということですね。

○坂東政府参考人 私どもでは、基本法の精神が十分に理解され実施されるように、いろいろな情報提供ですとか努力はしておりますが、直接事業をするとか、直接の広報活動のための補助金を出すとかということはしておりません。

○松崎委員 分権時代ですから、それはそれでよろしいと思いますけれども、後ほどまた、中央省庁も関与しているということでお話しします。
 教育の場所もそうですけれども、男女共同参画のいろいろな書物の中でも、男らしさ、女らしさ、性差を象徴的に扱っています。私は学者じゃありませんけれども、最近の時代は逆に個性を尊重する時代だ、逆に言えば性差を認める時代でもあるんだと。昔の時代に戻すという意味じゃないんですよ。ある意味では余りにも男女平等、平等は結構なんですけれども、それが行き過ぎますと、差別と区別が一緒になっちゃったり、非常にその辺が今行き過ぎているというふうに考えております。
 私は、これからは個性を尊重する時代なんだ、性差を逆に認める時代ではないか、そんなふうに考えて、そういう視点からやはりこれからジェンダーフリーのことも考えていかなければいけない、そんなふうに思っておるんですが、大元締めの官房長官はどうなんでしょうか。ジェンダーフリーを含めて、この男女の性差というものを強く出していく、そういう動きに対して、私は、そうじゃない、これからは逆なんだということを言っておるんですけれども、何かお考えがあれば。

○福田国務大臣 そもそもジェンダーフリーという言葉ですけれども、この言葉はくせ者でもあるんだろうというふうに思うのです。この理解の仕方、これは主張する方々により、またそれを使う人、いろいろな場合にその意味が違ってとられることもあり得るんだろうというふうに思っております。
 先ほど地方分権という話がございましたけれども、やはり地方も、地方によってこの考え方が違うかもしれぬということはありますね。私の県だと、かかあ天下なんという言葉、もう最近はそういう言葉は使いませんけれども、そういう言葉もあった。それで、そういう言葉を使わない県もあったわけでございまして、それは女性の立場というか、そういうものについての認識が地方でも違うんだということの一つの証左ではなかろうかな、こんなふうに思っております。
 ただ、このジェンダーフリーということでもって、おっしゃるようにすべてフリーだということで考えるべきかどうかということについては、これはおのずから限度がある分野があるのではなかろうかというように思っております。例えば民族の伝統とか文化とか、そういうものを侵す、もしくは破壊するとかいったような、そういう部分でジェンダーフリーというふうなことで何もかも一緒くたに考えていくということは、これはできないんじゃなかろうかなというふうに思っております。

○松崎委員 なかなかこの分野は男性は難しい、発言を気をつけながらやらないといけないとは思っておりますけれども、見ていますと、若干フェミニズムの行き過ぎといいましょうか、今の傾向、女性が社会進出する、それは産業社会からいっても当然なことであります。そして、女性が自立して仕事を持っていく、これも正しいことでしょう。
 ただ、少し行き過ぎているのは、どうも青い鳥コンプレックスなんてあるんですね。母親が日常生活に幸せがないんじゃないかと思ったり、それから、自己実現ができないとどうも阻害されているんじゃないかとか、それで女性はどうしても母を捨てたり妻を捨てて外へ外へというような面も若干あるというふうにも聞いております。
 要するに私が言いたいのは、その影響が、子供の世界、特に母性あるいは、父性はこれから家庭生活、子育てに参加していくんですけれども、そういう母性の問題とか、特に三歳児神話と言われている、神話と言うこと自体が本来おかしいのでありますけれども、そういう部分に非常に強く出過ぎて、そしてそれがいろいろ子供に影響して、今、現代社会のさまざまな子供に対する、子供の上に押しかかっている、キレる問題でありますとかそういう問題に全部影響が出ている、私はそういうふうに思っているんですね。
 それで、実はここにありますように、この前四月に、うちの山谷議員が二回にわたりまして使いましたが、質問しましたね。「未来を育てる基本のき」という、これは文部科学省の委嘱事業でございます。これは社会教育指導者向きのものでありますけれども、この中にはっきり、子育ての、三歳までは母の手でということが神話なんだ、合理的な根拠が乏しい、そういう言い方をしているわけですね。
 こういうのを見ますと、どうも政府が関与しているところで、男女共同参画から始まった話には違いないんですが、このジェンダーフリーという視点から強くその辺を出し過ぎている。本来私どもは、三つ子の魂を言い出すわけではありませんけれども、三歳ぐらいまではしっかりと子供を育てろ、しっかり母親を中心として育てるべきだというふうに教えてもらってきているんですよね。だからそういう意味で、私は三歳児神話というのは神話ではないんだ、そう思っておりますけれども、これは多分、平成十年の厚生白書を中心とした表現を根拠に書かれたのかと思いますが、これは文科省の方でバックアップしたものであります。これに関して、文科省の方の三歳児神話に対してどのように、本当に神話だと思っていらっしゃるのか、お聞きをいたします。

○遠山国務大臣 平成十年版の厚生白書におきまして、今お話しのように、「三歳児神話には、少なくとも合理的な根拠は認められない。」という旨の記述はございます。子育てにおきまして母親の役割が重要であることは申すまでもないわけでございます。一方で、母親と子供の過度な密着といいますものは、それはそれで母親のストレスになりましたり、育児不安や子供に対する虐待などの問題をはらんでいるという指摘もございます。
 私は、三歳になるまでは子供たちに四六時中母親が密着をしてという説は本当にいいのかなと思わないでもないわけですが、私も子育ての経験もございますが、短い時間であっても十分に愛情をかけて母親が子供と接触することによって、子供は、自分を本当に愛情を持って見てくれている人がいる、そのことが非常に大事であるわけでございます。
 そのために、母親だけに子育てを任せるのではなくて、父親の子育てへの積極的な参加、あるいは地域の子育て支援者等による支援など、母親の重要性は前提としながらも、社会で子育てをしていくことが重要であると私は考えております。

○松崎委員 全体的にいきますと、三歳児神話的なものは余りどうかという答えなんでしょう。しかし、愛情のかけ方は大事なんだということなんですね。
 私は、別にべたべたしてというんじゃない。私も四人子供がおりまして、女房が育てているのを見ていますから、もちろん今の女性は四六時中べたべたすることはないんですけれども、やはり子供に対する見詰め方、対峙の仕方という点では、何せ女性というのは、人類始まって以来、哺乳動物の一種でありますけれども、へその緒でつながって、特に母親とのつながりというのはおなかにいたときからちゃんと伝わっているんですね。
 だから、その延長線上でいきますと、やはり母親の存在というのは物すごく大きい。ですから、その辺は、私は、極力子育て、特に幼児期の大事なときはやらなきゃいかぬという立場で今聞いているわけです。
 もう一つ、「はじめの一歩を家庭から」という、やはり男女共同参画の問題で、平成十一年、文部省の委嘱事業で、国立婦人教育会館、これも出していらっしゃいますけれども、この中の表現も、もちろん頭から否定はしておりませんけれども、もう少しこれは、母性だとか人を育てる喜びだとか、そういうことも表現すべきだと思うんですよね。
 どうしても、三歳児神話をベースにしながら、余り女性を縛りつけちゃいけないみたいな、共同参画のレベルでありますから、この内容もそういう書き方をしております。三歳児神話からの解放、三歳児神話からの解放は男女共同参画社会実現のかぎであると。非常にトーンが、もちろんこれは男女共同参画をテーマにしたものでありますからしようがないにいたしましても、非常に誤解を招くというか、ここがオーバーに書かれ過ぎている。
 それから、財務省の印刷局が編集したというのがおもしろいんですね。印刷局が印刷したのかなと思ったら、印刷局が、印刷じゃないんです、編集して、「男社会の常識・非常識」という、これは男女共同参画会議の岩男壽美子さんの監修です。
 これなんかも、これはたしか財務省から資金が出ているのかどうか、後で答えていただきますけれども、先ほどの「はじめの一歩を家庭から」も多分、これは後で言ってください。文科省の委嘱事業ですから、お金が出ているのかどうかですね。「未来のき」は二百四十六万出ていますね。「はじめの一歩」の方は出ているかどうか。
 それから、この漫画の育児と仕事というところ、これなんかも三歳児神話というか、三歳児の、母親が育てた方がいいよというんだけれども、いや、何の根拠もないというようなことを奥さんが書いている漫画なんですね。
 それから、男らしさ女らしさ、これも確かに、男はたくましくなきゃだめだなんということを私は言いませんけれども、女の子もおしとやかで優しくないとだめだというのは普通の常識なんですけれども、これも否定するような、これも含めて、私は、男は男らしくなくちゃだめだというんじゃなくて、男らしさの原点はやはり本来的なものでありますから、そしてそれはかなり多くの人が持っているわけでありますから、これは素直に認めればいいわけであって、それをいかにも否定するような書き方をしています。
 それから、夫婦の別姓の問題、これなんかは、まだ法律が通っていないのにもう別姓がいいというようなことを書いてあるんですね。
 こんなことで、私は、政府がお金を出したり関与しているところで、少しどうも我々の常識では行き過ぎている、そういうところがあるんじゃないかと思うんですけれども、これは、たまたま財務大臣いらっしゃいますので、どうでしょう、こういう考え方。個人としても、どう思われますか。それから、どのくらいお金が出ていますか。

○塩川国務大臣 私は、今、これは秘書から預かって、松崎先生の質問があるだろうと三枚ちょっとあったんですが、この程度のことだったら常識的な表現じゃないかなと思うたりいたしております。
 なお、この本につきましては、印刷局へ問い合わせましたら、印刷局の事業としてこれを発行したので、政府としては補助金は一切出ておりません。五千部刷ったそうでございますが、順調に売れたそうでございまして、人気がよかったのかなと思うておりますが、それほど偏向しておるようには思っておりません。

○松崎委員 受けとめ方の違いでありますから、それはそれで結構でございますけれども。
 それで、厚生労働省さん、先ほどの十年、ちょっと古い話で申しわけないんですが、三歳児神話、これは母子の問題をしっかりと扱ったなかなかよくできている白書ですよね。ですから、ここの部分だけ取り上げてどうかと言われるんですけれども、やはりその反対側にはちゃんとデータが、既婚女性の八八%は、子供が小さいうちは母親は仕事を持たずに家にいる方が望ましい、有識者でも、四五%が、三歳までは母親は育児に専念すべきだ、反対は三三%、そういうデータを同じページのすぐそばに出しているんですよね。だから、この辺、私はどうも納得のできない書きぶりだなと思うのですが、いかがでしょうか。

○坂口国務大臣 確かに、平成十年の厚生白書におきましては、「三歳児神話には、少なくとも合理的な根拠は認められない。」こういうふうに書いているわけでございます。
 これはかなり年齢によって受けとめ方は違うと思うんですが、先生はまだお若いですけれども、私のような年齢になりますと、私たち、自分の若いころを振り返ってみますと、やはり母親と一緒にいたものですから、何となくそれに引かれるわけでございますけれども、しかし最近は違うということでございましょう。
 一九六〇年代に広まりました三歳児神話というのは、これを後でずっと見てみますと、明確にそれを肯定する根拠も否定する根拠も見当たらないというのが事実でございます。母親と子供の関係というのは、お互いに密着しているところに新しい人間性が育つということもあれば、密着し過ぎて弊害を生むということもございますし、そこはなかなか一概に言いにくいことだというふうに、率直に私はそう思っております。
 でありますから、この三歳児神話というのは、合理的な根拠ということになりますと、なかなかそこは明確に言えないというのが現実ではないかというふうに思っております。

○松崎委員 ここに「幼児教育と脳」という、沢口さんという北海道大学の教授が、これは認知脳科学の専門家でございますね。ほかにもいろいろ三歳、幼児期の母親のあり方、そしてまた母親が特に幼児育成に与える影響というのはいろいろ学問的にあるんでしょうけれども、これは非常によく分析されておりまして、これは、まだ若い方なんですけれども、結局、結論的に言いますと、成長の、さまざまな知性とか判断力だとか自我だとか、そういったことを頭の前頭部分のところで全部やっていくらしい、そして、それが正常に発達するには非常に普通の環境が必要なんだと。
 その普通の環境というのは、まさにいろいろ、例えば集団の場合でありますと、いじめがあったりけんかがあったりいざこざがあったり、一見ネガティブな関係と思われるけれども、例えば餓鬼大将がいたり、家庭の中では兄弟がある程度いればそういうぶつかりがある。と同時に、協力し合ったり助け合ったりというポジティブな関係もある。要するに、この人は動物園の猿山と言っていますけれども、逆に、ぶつかったりしながら、また協力し合いながら、そういう普通の環境がないと、非常に子供たちに悪影響を与える、そういうことを、まあここは時間がありませんから、非常に学問的に脳科学の分野から分析をしております。
 これは、ここでこの先生の言っているのは、ゼロ歳から八歳までの間のそういうところに普通の環境、もちろんこれは普通の環境ですから、父性でありますとか母性だとか、そういうものもしっかりと入っているわけですね。ですから、絶対八歳までは、特に母親の母性の大切さというところからいったら常にうちにいてほしいというような、まあ皆さんから見たらきっとそれは偏っているというふうに思うかもしれませんけれども、こういう極めて科学的な分析をしている、そういうものもあるんですね。ですから、そういうことを考えますと、やはり三歳児あるいは幼児教育の母性の大切さ、そして母親がしっかりと育てていくということは、私は決して神話ではない、そんなふうに思うのです。
 これはいつまでも論争してもいたし方ありません。ですから、特に公的なさまざまな文章の中で、少し、共同参画社会のゆがみといいましょうか、ジェンダーとかそういう考え方が強く出過ぎますと非常に弊害が出るんじゃないか、そういうことを御注意申し上げたいということであります。
 そして次に、やはり山谷さんがこの前質問しておりましたが、「ラブ&ボディ」というのはこれまた大変問題がある。百三十万部配られたという、財団法人母子衛生研究会、これは厚生労働省の所管でありますけれども。これは実は、ちょっと読み違えますとピルを奨励しているみたいな、思春期の子供たちにピルはほとんどよくないということでいろいろな今データが出ていますね。特にイギリスあたりでは十年間で百人ぐらいピルの影響で死んでいる、そういうデータも出ております。ですから、このピルの問題は、しっかりと研究した上でやらないと、非常に思春期の子供たちに間違った情報を与えるんではないか、そういうことで山谷さんもずっと指摘をしております。
 そこで、私は、このピルの問題を、副作用、危険性、そういったものは、解禁して以来何年かたっておりますけれども、しっかりと検討されているかどうか。また、イギリスあたりでの先進国で非常に今いろいろ問題になっています。結果としては、合成の女性ホルモンですから、今、川に入って魚に影響が出ている、環境ホルモンの一つ、そこまで言われております。そしてまた、乳がんですとかそういうものの原因にも非常になりやすいというデータも出ております。その辺は厚生労働省は検討されておりますか、検証は。

○坂口国務大臣 ピルが承認をされます前にもかなりこれは問題になったわけでありまして、そして、ピルを服用することによります副作用というものにつきましても、かなり審査をされたというふうに思っております。かなりな時間、歳月を要しているというふうに思います。
 それで、いろいろの調査をいたしましたその結果、これは使ってもいいということで承認をされたものでございます。しかし、使っておりまして、そしてそれに対する副作用等がありました場合には、製造業者に対しまして報告があり、そこからまた厚生省に報告をするということにしているわけでございます。
 御指摘になりますように、ピルを使用することによりまして、中には血栓が生じますとかそうした副作用があるということは、初めからというかこれを承認するときからいろいろ指摘をされていたわけでございますが、しかし、現在は大丈夫ということで承認になっている。しかし、薬でありますから、非常にこれは効果があるものでありますだけに、やはりどの薬にもありますように若干の副作用というものも考えなきゃならない。そのことは十分に注意をしていかなければならないと考えている次第でございます。

○松崎委員 時間ですけれども、最後に、大臣は、この問題、かつて山谷さんからの質問でも、余り好ましくないんじゃないかというような答弁をしていますね。ここに書いてある、一%失敗。これはアメリカなんかでは失敗率五%となっていますね。ですから、どうも厚生労働と文科省が余り連絡はとっていないのかなと。こういうものを一番思春期に使っちゃいけないんですよ、ピルは。そこに、中学生が幾ら今、性が乱れているからといって、知らせることは結構ですけれども、もう少し正しく知らせないと大変なことになるんですよね、逆になるんです。だから、その辺は、どうも文科省は余りこれのことは知らなかったと言っていらっしゃるようですけれども、両省がやはりこの辺はよく連絡し合って、子供に影響を与えるんですからしっかりやるべきだと思うんですけれども、これ、最後、いかがでしょうか。

○渡海委員長 時間が過ぎておりますから。

○遠山国務大臣 今後、厚生労働省ともこういう問題について事前に話し合いというのを十分した方がいいなと私も思います。

○松崎委員 終わります。ありがとうございました。