154-参-文教科学委員会-12号 平成14年06月04日

平成十四年六月四日(火曜日)
   午前十時二分開会
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   委員の異動
 六月四日
    辞任         補欠選任
     扇  千景君     泉  信也君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         橋本 聖子君
    理 事
                阿南 一成君
                仲道 俊哉君
                小林  元君
                風間  昶君
                林  紀子君
    委 員
                有馬 朗人君
                有村 治子君
                泉  信也君
                大仁田 厚君
                加納 時男君
                後藤 博子君
                中曽根弘文君
                岩本  司君
                神本美恵子君
                輿石  東君
                鈴木  寛君
                山本 香苗君
                畑野 君枝君
                西岡 武夫君
                山本 正和君
   国務大臣
       文部科学大臣   遠山 敦子君
   副大臣
       文部科学副大臣  岸田 文雄君
   大臣政務官
       文部科学大臣政
       務官       池坊 保子君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        巻端 俊兒君
   政府参考人
       文部科学省生涯
       学習政策局長   近藤 信司君
       文部科学省初等
       中等教育局長   矢野 重典君
       文部科学省高等
       教育局長     工藤 智規君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)

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○委員長(橋本聖子君) 教育公務員特例法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案につきましては既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○後藤博子君 おはようございます。自民党の後藤博子でございます。
 いよいよ今日はワールドカップが開かれます、日本対ベルギー。我が大分県も中津江村のカメルーンで一躍有名になりまして、今日は大分県出身の仲道先生、阿南一成先生がいらっしゃいますのでちょっと宣伝をさせていただきました。(発言する者あり)ありがとうございます。そのワールドカップも、私たちに夢や希望を与えてくれるということでは非常に意義あるものだと考えております。
 それでは、今日は教育公務員特例法に関連しての質問をさせていただきます。
 今もお話ししましたように、ワールドカップが夢を与えてくれるという半面、先日、産経の五月二十九日のこれは新聞なんですけれども、これは日本とアメリカ、中国、三か国の意識調査をした結果なんですが、「どうなる日本の高校生」と、もうやる気や自信は、夢はなし、そして自分は駄目人間だということで七三%が断トツだったんですね。
 自分は駄目人間と思っている半面、自己否定的でありながら、また自分を変えようとする意欲は見られないということが書いてあります。そして、無気力な姿勢が浮き彫りになったということ、そしてまた、先生に親しみを感じると答えた割合は日本が最低だったということ。それから、この調査は五十五年にも同様の調査をしたらしいんですけれども、「日本の高校生の無気力、無意欲、無関心ぶりが、一層激しくなっている。このままでは将来が心配だ。高校生に自信と意欲を持たせるような教育が必要ではないか」と、こういう新聞記事がありまして、本当に今の社会を物語っているなと思います。
 国の将来を担う子供たちが、この国を担うことに大きな夢や希望を抱くことができて、生き生きと成長できる制度を是非一緒に作っていきたいと思っております。そんな祈りや願いを込めまして質問させていただきます。
 新たに十年経験者研修を義務化する理由についてのお尋ねなんですけれども、教育公務員特例法の一部を改正する法律案の概要に、改正趣旨として、新学習指導要領の下、基礎・基本を確実に身に付けさせ、自ら学び自ら考える力などの生きる力を育成し、心の教育の充実と確かな学力の向上を実現するためには、実際に指導に当たる教員に従来以上の指導力、力量の向上が必要とされるとして、教諭等の任命権者は、教諭等の在職期間が十年に達した後相当の期間内に、個々の能力、適性に応じて、教諭等としての資質の向上を図るために必要な事項に関する研修を実施しなければならないこととすると書かれておりました。
 法律案の概要には、教諭等の資質の向上のためと、その理由の一端が書かれておりますが、この十年経験者研修制度の義務化が第一線の先生方の意欲を大いに喚起して、研修を受けることがむしろ楽しみになって、受ける側のやる気や元気が出てきて、その研修後には先生方が明るく生き生きとした顔になって、その先生方に子供たちが接することで子供たちがまたやる気や自信や夢が持てるようになる、そういう研修を、そしてその研修を本当に受けて良かったと思えるような研修であるべきだと、そういうふうにしていただきたいと思います。
 ちょっと前置きが長くなりまして申し訳ありません。
 そこで、文部科学省に、新たに十年経験者研修を義務化された具体的な理由は何なのか、教えていただけませんでしょうか。そしてあわせて、十年経験者を特に重要な立場にあるとした認識の根拠は何か、お伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○副大臣(岸田文雄君) 言うまでもなく、学校教育の成否は直接の担い手であります教員の資質に負うこと、大変大きいわけであります。そういった中にあって、新しい学習指導要領、この中で、基礎・基本を身に付けさせた上で自ら考える力を育成する、おっしゃるとおり、確かな学力の重要性が指摘されております。また加えて、心の教育の充実も盛り込まれているわけでありますが、新しい学習指導要領の中でより一層教員の指導力の向上が今求められているというのが現在の状況だと認識しております。
 そうした状況の中で、平成十四年二月、中教審において、教職十年を経過した教員に対する新たな研修が提言されたということであります。今回の法改正、こうした提言等を踏まえまして、教諭等としての在職期間が十年に達した教諭に対して、個々の能力あるいは適性等に応じた研修を実施する、このことを任命権者に義務付けるということとした次第であります。
 そして、十年経験者が特に重要な理由は何かという御質問でありますが、この部分につきましては、十年に達することによって複数の学校における勤務経験を経ておるということによって、どのような指導力や力量を持っておられるか、この辺り、今後の在り方等も含めて見込みを得ることができる、更にはどのような適性を持っているか、こういったことについても明らかになってくる、これがその十年という時期だと認識しております。
 この時期に研修を実施すること、指導力や力量を確保する上からも、また得意分野あるいは個性を伸長する上からも、大変時宜を得たものだというふうに考えております。
 こういった考え方から、十年経験者研修ということの重要性を感じているところであります。

○後藤博子君 ありがとうございます。
 そういう目的、いろんな先生が今おっしゃったような理由がありますが、それについては内容がどのようなものなのか、そういう内容についての今度お伺いをいたします。
 十年経験者研修において、研修の内容が最も重要と考えますけれども、具体的な研修の内容が、私はちょっと資料を読ませていただきましたけれども、ちょっと具体的な内容が分かりづらかったのでどう質問していいか戸惑うところもありましたけれども、考え付いたことを質問させていただきます。
 まず最初に、教育職員養成審議会が平成十一年十二月に出した第三次答申の中で、これまでの教職経験者研修内容について、一つは研修形態が講義形式による一斉研修が中心で受講者が受け身になりやすい、二つ目には内容、方法が画一化され、教員自身のニーズに応じた研修が少ないなどなど、研修内容についての問題点が指摘されております。
 また、今年二月の中教審の答申の中に、新たな教職経験十年を経過した教員に対する研修について、従来型の教職経験研修とは内容を異にするとして、研修プログラムはその内容において相当程度多様なものになり得るとの提言がなされております。
 この提言を踏まえ、今度の十年経験者研修は、法律案要綱に、教員の任命権者が研修を受ける者の能力、適性について評価を行い、その結果に基づいて当該者ごとに研修計画を作成するとありますが、これまでの研修と内容においてどのような工夫と改善をするよう任命権者に指導を行うつもりなのかをお伺いいたします。
 今までいろんなたくさんの研修が、初任者研修に始まり、五年、十年、十五年といろんな研修がありますが、この十年研修に関しては特に工夫と改善をということが求められていると思いますので、その工夫と改善が、任命権者にどのような指導をするかということでお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○国務大臣(遠山敦子君) 今、後藤委員の方からお話がございましたように、今回の十年経験者研修におきましては、これまでの各任命権者が行っておられました研修とは違いまして、その内容、実施方法においてより効果のあるものにしようとしているわけでございます。
 お話にも出ましたように、従来の教職経験者研修では一斉研修あるいは受け身的な研修が多かったわけですね。これに対しまして、新たに今法改正をお願いしております十年経験者研修におきましては、教員の一人一人の能力、適性あるいは経験、実績などに応じたものであるということを必要といたしておりまして、教員一人一人に応じてその内容等が相当程度多様なものになっていくということをねらいとしているわけでございます。
 そのために、研修の実施に当たりましては、それぞれの教員等の能力、適性等について評価を行って、評価といいます意味が指導力についての評価ですね、をきちっと行った上で一人一人の教員にふさわしい研修計画を作成していく。この点では従来型の研修の在り方と非常に違ってまいると思っております。
 では、その具体的な研修の実施方法はどうかということでございますが、これはそれぞれの任命権者が判断するものでございますけれども、私どもといたしましては、例えば教科指導に関する研修といたしましては、授業実践といいます、授業実践を相互に評価し合う授業研究でありますとか、あるいは少人数形式による模擬授業でありますとか、あるいは教材研究を通じた研修などを主に想定しているところでございます。
 それぞれの教員にふさわしい、かつまたその研修目的が十分達成されるような研修プログラムというものをそれぞれきちんと立てていただいて、実りある研修にしてもらうというのが今回の十年経験者研修の目的とするものでございます。

○後藤博子君 ありがとうございます。
 本当に一人一人のニーズ、適応に合わせた研修であるということをお聞きいたしまして、それもなかなか難しいのかなと思うところもございますけれども、その十年研修の今度内容を作成されるメンバーの方々も重要になってくると思います。
 この内容作成メンバーの中には現職の教員やまた教員の経験者は入っているのでしょうか。この内容を作成されるメンバーはどのような方々なのか、またどのような経験をお持ちの方々なのか、お伺いいたします。

○副大臣(岸田文雄君) まず、研修内容あるいは実施方法につきましては、研修の実施主体であります各任命権者がその権限と責任において各地域の事情等も踏まえつつ創意工夫を凝らして決定すべきものだというふうに考えております。
 その中で経験者等がかかわるのかどうかという点につきましては、各任命権者において、研修を実施するに当たりまして、各地域の教育センター等において教職経験豊富な指導主事等が中心となって研修内容の決定等、十年経験者研修の実施に向けた準備が進められるというふうに考えております。そうしたプロセスの中で様々な教職経験者、現職教員等、関係者がかかわっていくということが考えられるというふうに思っております。

○後藤博子君 ありがとうございます。
 私もいろんな場面に出させていただき、いろんな方々とお話しすることがございまして、もう本当に子供に夢や喜びを感じさせる教師を育てるにはどのようにすればいいのかということを一生懸命考えている先生方もいらっしゃいます。教師の資質向上を具体的に取り組んでいる方、あるいはそういうことを一生懸命やっている方々をそのメンバーの中に入れていただくということで、是非、任命権者の方に御指導をよろしくお願いしたいと思います。
 では、次に行きます。
 教育職員養成審議会の第三次答申は、企業などでの長期社会体験研修の機会を充実させるように求めております。この長期社会体験研修は平成元年に千葉県の試みから始まりまして、平成十三年にはすべての都道府県と二十五の市で実施されていると聞いております。なぜ急速に増えてきたのか、教師にとって有効な研修足り得たからだと思っております。
 体験重視の姿勢が重要と考えますが、学校と全く異なる環境での経験は教員に新たな息吹を吹き込む可能性が多く今回の趣旨に合致すると思いますが、このような、このようなといいますと、長期社会体験研修をということではないんですけれども、こういう社会的な経験を積めるような研修をこの十年経験者研修の内容に組み込むよう任命権者の側に指導するお考えはありますでしょうか、お尋ねいたします。

○国務大臣(遠山敦子君) 今、後藤委員が御指摘になりましたように、教員にとりましても社会における体験というのは大変いろんな意味で有効であろうと思います。そのようなことから、それぞれの任命権者におきまして、研修の一環としてそういう長期の社会体験研修のようなものを取り入れているところもかなり出てまいったところでございます。したがいまして、今回の十年経験者研修の具体的な研修内容、実施方法などはそれぞれ実施主体である任命権者が企画をし、その権限と責任において工夫を凝らしてやるべきものだと思いますけれども、そういった観点も必要かと思います。
 ただ、これを一律にそれぞれの県でこの十年経験者研修の中に取り入れるようにというのは、やはりこれはまた実情によって違うものでございますから、そのことを一律にこちらから指導内容に入れ込むというのはどうかとは思いますけれども、そういう社会体験研修の重要性については一般論として非常に大事だと思っておりまして、研修の中で、全体的な研修の中でそういうものを取り組むことの重要性については、私どもも繰り返しこれからも指導、助言させていただきたいなと考えているところでございます。

○後藤博子君 ありがとうございます。
 学校の先生というのはどうしても、狭くなると言うことは大変先生に対して失礼なんですけれども、どうしても学校の中だけで過ごしておりますとマンネリ化もできてきますし、親の願いとか親の考え方とか、親がだんだんだんだん若くなっていったり、世代が代わることによって親の考え方も変わってまいりますし、また社会と先生とのずれといいますかミスマッチも生じてくると思いますので、是非、先生方には、先生方自分自身がまたリフレッシュするためにも外に出ていって社会体験を積まれるということで、一言御指導の中に入れていただければ、任命権者の方々も、文部大臣が言われると、ああ、そうか、それはやっぱり取り入れなきゃといって前向きに検討するのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
 このごろは本当に児童による悲惨な事件が起こっておりまして、もう毎日毎日新聞をにぎわしております。それを読むたびに大変つらくてやるせない思いに駆られることがあります。社会全体にもっと規範といいますか、道徳力というような力が社会全体に満ち満ちていればと思うことが、私だけではない、皆さんも感じていらっしゃることだと思います。
 前回、私が三月二十日の質問のときに、私の道徳教育に対する質問に対しまして遠山文部大臣は、「私は、道徳といいますか、少なくとも人間として生きる基本的なルールというものはしっかり教え込んでいく必要があろうと思います。」と御答弁をいただきました。でありますなれば、この十年経験者研修の中に道徳教育について組み込むようまた任命権者側に指導するお考えはおありになるでしょうか。すべてが任命権者にお任せというのは、そういうことがありますので、この道徳教育についてまた指導をするお考えがあるかどうかをお伺いいたします。

○国務大臣(遠山敦子君) もちろん基本的には十年経験者研修のプログラムにつきましては任命権者がそれぞれの工夫において決定するものでございますけれども、今、後藤委員御指摘の道徳教育の重要性というのはもう言うまでもないわけでございます。これは、何も十年経験者のみならず、すべての教員がこのことの重要性についてはしっかりと認識をしていただき、また実際のカリキュラムの中でこれを実現してもらいたいと思うわけでございます。
 そういう道徳教育について適切に指導できる力量を持つということは大変すべての教員について求められているところでございますので、十年経験者研修の内容の一つの例としては、これは十分に取り上げてもらうこともお願いできるのではないかと思います。ただ、基本は、それぞれのところでそれぞれの任命権者が考えながらという基本は崩さないまでも、この点の重要性については申すまでもないと思うわけでございます。

○後藤博子君 ありがとうございます。
 また、もう一つ、遠山文部科学大臣は「学びのすすめ」において、心の教育の充実と確かな学力の向上を強調されております。この二つの課題を実現するために、十年経験者研修の内容にどう具体的に反映させるよう任命権者側に御指導をするのでしょうか。そのお考えがありましたら、また併せてよろしくお願いいたします。

○副大臣(岸田文雄君) 十年研修の内容ですとか実施方法につきましては各任命権者が決定すべきものでありますが、文部科学省としましては、各任命権者において本制度の趣旨に沿った適切な研修が実施されるよう、通知ですとかあるいは各種会議を通じまして文部科学省として想定しているものを示してまいりたいというふうに考えております。
 そして、想定している研修としては、例えば長期休業期間中に、教科指導、生徒指導等に関する研修として、指導主事やベテラン教諭を講師として、その指導の下、少人数形式による模擬授業ですとか、教材研究等を通じた研修、さらにはケーススタディー等を通じた研修、こうしたものも想定しておりますし、また、個々の教諭等の得意分野づくりを進めるための研修として、選択制によりまして、環境教育とか情報教育とかカウンセリング等の特定教科や分野に関する研修、あるいは先ほども出ておりましたが民間企業における社会体験研修、こうしたことが想定されると考えております。
 こうしたものを通じまして、御指摘の心の教育、そして確かな学力、こうした大きなねらいを実現するために成果を出してまいりたいと考えております。

○後藤博子君 ありがとうございます。
 殊に、心の教育の充実につきましては、心のノート、せっかくいいものが、非常にすばらしいものが出ておりますが、心のノートの有効利用が大変重要になってくると考えます。しかしながら、これは現場からちょっと声を聞いただけなので、すべてとは申しませんけれども、教育現場からは、心のノートは職員室に山積みになっているとか全然使っていないとか声がちょっと聞こえてまいりました。それで、費用といたしましては七億六千万の費用も国費をつぎ込んでいらっしゃいますし、心の教育の実践の切り札として投入されたものだけに、何とか有効な活用ができないものかと私も望んでおります。
 三月二十日に心のノートを質問しました折に、心のノートの使い方についての一律の研修は行わない旨の回答があったと記憶しております。子供たちに対する押し付けではなく、気付かせることはとっても重要なことであり、中堅教員たる十年経験者の指導や研修は必要なのではないのでしょうかと思いますが、それについてお伺いいたします。

○政府参考人(矢野重典君) 心のノートにつきましては、それぞれの学校が工夫をして学校の教育活動全体を通じて活用されること、そしてまた様々な研修等の機会を通じてその活用の仕方について研究がなされることを期待をいたしているところでございます。
 そこで、十年経験者研修において心のノートの活用の仕方について取り上げるかどうかということについてでございますが、我が省といたしましては、このようなたぐいの資料としては初めてのものということもございまして、取り上げていただきたいという希望を私どもとしては持っているわけでございますが、このような十年経験者研修の具体的な内容等に係る事項につきましては、基本的にはこれはそれぞれの任命権者の判断にゆだねるべきものであるというふうに考えるものでございます。

○後藤博子君 ありがとうございます。
 今回、質問を作成するに当たりまして多少なりとも勉強させていただきました。既存の研修の実体系を見れば、国のレベルや都道府県や市町村、学校、教員レベルまで、様々なレベルや経験年数、専門にかかわる研修が非常にたくさん用意されております。そして今、初任者研修に加え、十年経験者研修が義務化されようとしております。
 これら様々なレベルの研修と種類はその必要があって組み立てられてきたものであると思いますけれども、教育現場からは、先生方の声は、忙しい忙しいとの先生方の声が聞こえてまいります。そうであれば、研修の方法や種類を工夫し、研修体系をもう少しスリムな体系に見直すことはできないのか御検討をいただければと思っております。特に質問ではございませんが、もしコメントがありましたら、よろしくお願いいたします。

○副大臣(岸田文雄君) 研修体系のスリム化につきましては、平成十一年の教育職員養成審議会第三次答申におきまして、その課題に適切に対処し、あるいは必要な教員の資質能力の向上を図る内容に精選することが必要であるという答申を受けております。
 文部科学省としましても、十二年二月に通知を発して指導を行ったところでありますが、この辺りの答申、通知を踏まえまして、例えば研修事業を教育センターに一元化するなど、精選、見直しが行われていると認識しております。この辺り、現状につきましてはしっかりと把握に努めるとともに、今後も指導をしていきたいというふうに考えております。

○後藤博子君 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。
 次に、じゃ簡単で結構ですので、お答えくださいますようにお願いいたします。十年経験者研修の期間についてなんですけれども、研修の期間としてはどのくらいを想定していらっしゃいますでしょうか。さきの中教審の答申には、その期間において「相当程度多様なものになり得る」と記されております。期間が研修を受ける教員のニーズに応じて決められるとしたならば、研修期間の幅の許容範囲はどのくらいまでを考えていらっしゃるのでしょうか。簡単で結構です。お願いいたします。

○副大臣(岸田文雄君) 期間につきましても各任命権者の判断にはなりますが、一応その目安としまして、校外研修、校内研修それぞれ二十日程度を文部科学省としては想定しております。ただ、これは上回ること、下回ることは可能でありますし、その研修の趣旨自体が、個々の能力や適性に応じた研修というのが研修の趣旨でありますので、これは弾力的に決せられるものだというふうに考えております。

○後藤博子君 ありがとうございました。
 次に、研修の評価についてのお尋ねでございます。
 研修の評価に関しまして、本年二月の中教審の答申は、これまで行われてきた各種の研修についての評価について、「研修やその成果についての評価が十分になされてきたとは言えない。」とちょっと厳しい評価を下しております。私立学校は、経営環境もありまして、総体として一人一人の先生方に対する評価が大変厳しく、配置転換はもちろんのこと、ケースによっては罷免される場合もあると聞いております。それに比べまして、教育公務員の場合、辞めさせられないとの前提があるためか、評価に対してさきのような中教審の答申になるのではないかと思います。時代は変わってきておりまして、教育公務員といえどもその成果に対し公正に評価を受けることが必要と考えております。
 そのような観点から、今回の十年経験者研修、十年経験者の研修後の評価はどのようにされようとしていらっしゃいますでしょうか。また、その基準も併せてお尋ねを申し上げます。

○政府参考人(矢野重典君) 十年経験者研修の研修後の評価は、事前に実施する研修とは異なりまして、法律上の定めはなく、各任命権者の判断にゆだねられているところでございます。
 ただ、我が省といたしましては、十年経験者研修終了後も引き続き受講した教諭等の資質能力の向上を図っていくためには、研修終了後に再度評価を行って、その結果をその者に対する今後の指導や研修に活用していくことが望ましいと考えているところでございます。このため、私どもといたしましては、こうした考え方につきまして、法律案が成立した後、通知等によりまして任命権者に、それぞれの任命権者にその旨を周知してまいりたいと考えているところでございます。
 また、研修終了後における評価の基準についてのお尋ねでございますが、これはそれぞれの任命権者が判断するものでございますけれども、それが事前に行う評価とおおむね同じものになるという場合につきましては、我が省といたしましては、事前の評価の基準等について一つの参考を、参考となるものをお示しをしたいと考えておりますことから、その事前の評価の基準の参考になるものが事後の評価の際にも一つの参考になるものではないかというふうに考えているところでございます。

○後藤博子君 ありがとうございました。
 任命権者、任命権者という言葉が盛んに言われておりまして、ああやはり任命権者がすべてを、責任も、その実行もされるのかなと、今ちょっと思っております。後で少しそれに関連して質問させていただきますので、次に行きます。
 研修を受けて学校現場に戻っても余り改善の見られない教員について、様々な対応をしても結果的に改善が見られない場合はどのような対策を考えておられるのでしょうか。また、どのランクの研修であれ、研修を受ける本人の主体的な取組があって初めて成果は上がるのではないでしょうか。今回の十年経験者研修に当たって、改善の見られない教員の減少が求められると思います。
 法律案要綱に、教員の任命権者が研修を受ける者の能力、適性等について評価を行い、その結果に基づいて当該者ごとに研修計画を作成すると書かれてありますが、研修を受ける前に任命権者と当該教員が十分に話し合い、その教員の自己啓発も勘案されて研修計画は作成すべきと考えますが、いかがでしょうか。受け身の研修が積極的な研修へと変わり、改善の見られない教員の減少につながるのではないでしょうか。よろしくお願いいたします。

○政府参考人(矢野重典君) 二点お尋ねがございました。
 一点は、いわゆる指導力不足教員についてのお尋ねでございますけれども、この指導力不足教員につきましては、これは、今回の教職経験者研修が十年に達した者について行うわけでございますけれども、これは十年に達するか否かにかかわりなく迅速にそうした教員について実態を把握して直ちに指導力の改善に向けた指導でございますとか研修等に取り組むことが必要であるわけでございまして、今回の十年経験者研修とは別途そうした教員についての対応はなされるべきものというふうに考えております。
 我が省では、現在、すべての都道府県教育委員会等に対しまして、指導力不足教員に対応するための人事管理システムの構築が促進されるような研究事業を委嘱しているところでございまして、こうした事業等を通じまして、指導力不足教員への適切かつ迅速な対応がなされるよう、今後とも引き続き指導してまいりたいと考えております。
 それからもう一点のお尋ねは、研修計画を策定するに当たって本人の希望等を聴くことについてのお尋ねでございます。
 御指摘のように、十年経験者研修は、その者の能力、適性等について評価を行って、それに基づいて実施することとされているわけでございますが、正に御指摘のとおりでございますが、教諭等の研修意欲を喚起いたしますとともに、研修の内容をより良く、適切なものとするためには、十年経験者研修の実施前に行います評価あるいはその評価に基づく研修計画書の作成に当たりまして、教諭等の自己評価でございますとか希望等を聴取することは望ましいことというふうに考えているものでございます。

○後藤博子君 ありがとうございました。
 いろんないい制度ができます。文部科学省もたくさんの、「学びのすすめ」もそうですし、先ほどの心の教育に対しての心のノートもそうです。たくさんいろんないいものを各都道府県に示し、またその任命権者にも御指導がなされているということを今までお伺いいたしました。
 今回は、この十年研修ということなんで十年研修ということで言わせていただきますが、十年研修が効果的に今度は実施されているかどうか、文部省はチェックといいますか、私ども会社、企業の中ではプラン・ドゥー・チェックというふうなサイクルがありまして、プランを起こし、行動し、それをチェックしてまたフィードバックするというそういうサイクルで行っておりますので、文部科学省も、いい研修を出した、そしてそれを行ってもらい、そしてそれをチェックして、実際有効に使われているのか、実際それがきちんと文部科学省が示したような思いの中で取り上げられて十分に活用されているかどうかという、そのチェックはあるのでしょうか、それとも、それも任命権者にやはりお任せということでなるんでしょうか、その辺を少し具体的にお伺いしたいと思います。

○政府参考人(矢野重典君) 今度の国会でこの法案がお認めいただいて来年度からこの新しい十年経験者研修が実施されますれば、私どもとしては、それに合わせて、この事業を応援するようなそういう補助事業等も併せて考えたいと思うわけでございますが、同時に、この事業が各都道府県教育委員会において実施されますならば、その実施の状況をフォローいたしまして、効果的に行われているか、あるいは改善すべきことはないかといったような観点からフォローをいたしたいと思っております。そうしたフォローをして、必要な指導等については継続して対応をしてまいりたいと、かように考えているところでございます。

○後藤博子君 フォローするということですが、じゃ、ちゃんと任命権者との話合いがあったり、任命権者の方々との懇談があったり、いろんなその現場でのことが十分把握できると、されているということでよろしいでしょうか。

○政府参考人(矢野重典君) 私どものフォローの内容といたしましては、研修の具体的な状況、あるいはその実態も含めてフォローをいたしたいと思っております。

○後藤博子君 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 先ほどもう既に言われましたんですけれども、指導力不足教員についてということで、五月二十四日の日経の新聞の夕刊に指導力不足教員についての記事が掲載されておりまして、何か定義にばらつきがあるというふうなことを書かれておりました。各県の実態が積み重なってくる中でのことと思いますが、各県に対応の差が出ないように調整を図る必要があるのではないでしょうか。
 だから、定義というものをある程度国が示すことをしないと、各県の任命権者がやるんでしょうけれども、ある程度の基準があって、それで各県に合わせた自分たち独自のまた基準づくりといいますか、そういうものができ上がるのではないかと思いますが、その点についてよろしくお願いいたします。

○政府参考人(矢野重典君) 指導力不足教員の定義でございますけれども、それは一般的な定義としてあるものではございません。指導力不足の教員の定義というのは、これは任命権者でございます都道府県の教育委員会が、それぞれの地域の実情を踏まえて、今後どのような指導や研修あるいは人事上の措置を講じるべきかという観点から、そのような対応を要する教員の対象をそれぞれの教育委員会、それぞれの任命権者が定めまして、それについて具体の対応を行うものでございまして、そういう意味で、国として一律にいわゆる指導力不足教員の定義というものを定めることはなじまないし、またその必要性もないものというふうに考えているわけでございます。
 ただ、一点、この指導力不足教員のことだと誤解があってはいけませんのは、昨年の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正によりまして、指導が不適切な教員、これは法律上の用語でございますが、指導が不適切な教員を都道府県の教員以外の職に転職させる、そういう制度が作られたわけでございますが、この法律の対象となる指導が不適切な教員につきましては、これは各県余りばらつきがあるようなことでは困るわけでございます、国の制度でございますから。そういう意味で、私どもといたしましては、指導が不適切な教員の具体的な類型等につきましては、既に施行通知や各種の会議等で各都道府県についてお知らせを申し上げて、周知を図っているところでございます。

○後藤博子君 分かりました。ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
 学校の先生方もそうなんですけれども、学校の今度事務職員のちょっと研修の制度についてお尋ねいたします。
 教育職員養成審議会の第三次答申には、学校事務職員に関して、その専門性を高めるための研修や、学校の機能的運営に一層役割を果たす意識及びそれに必要な知識を高めるための研修の充実を図るとの提言がなされておりますが、事務職員もまた教員同様、新しい時代にふさわしい力を身に付けるために研修の充実を行うべきだと考えます。
 そのために、事務職員研修の充実、制度化促進のため、文部科学省より各都道府県教育委員会あてに通知を出すお考えはないでしょうか。その際、各都道府県教育委員会、政令市教育委員会、中核市教育委員会がそれぞれの責任において、学校事務職員等々教員以外の職種の研修充実について具体的に取り組むよう通知をしていただければ有り難いと思いますが、その辺をお考えをお伺いいたします。特にリーダー研修という意味ではありません。全般的な職員に対する研修ということでとらえていただきたいと思います。

○政府参考人(矢野重典君) 学校におきましては、校長のリーダーシップの下で専門性を異にする教職員、その中にはもちろん事務職員も含むわけでございますが、教職員一人一人がそれぞれの専門性を最大限に発揮しながら、一致協力して学校運営に当たることが必要であるわけでございます。また、近年、学校裁量権限の拡大等に対応するために、学校事務職員等の教職員がその専門性を向上させることが強く求められているというような状況にあるわけでございます。
 このため、我が省といたしましては、一つは、それぞれの教育委員会に対しまして、これらの教職員の専門性を高め、学校運営への積極的な参画を促す観点から、研修内容の充実に努めるよう指導をいたしておりますとともに、独立行政法人教員研修センターにおきまして指導的役割を果たす教職員に対する研修を実施いたしているところでございます。
 そこで、各都道府県教育委員会における学校事務職員に対する研修につきましては、任命権者によって適切に実施されるべきものでございますけれども、その重要性にかんがみ、御指摘のとおり、その重要性にかんがみまして、十年経験者研修を実施いたします際に通知を予定しているわけでございますが、その通知におきましても、学校事務職員等の教員以外の職種の研修充実につきまして、それぞれの教育委員会等に対して積極的に取り組むことを促してまいりたいと考えているところでございます。

○後藤博子君 ありがとうございます。
 学校の現場の職員の方にも知り合いがいるんですけれども、やっぱり自分たちも学びたい、一緒に勉強したい、そういう声がありましたので、通知するかどうかをお伺いいたしました。ありがとうございました。
 後は、時間が少しありますので、この十年研修にかかわる質問と少し違ってくるかと思いますが、今いろんな、学校の現場もそうですし、家庭科のノートもそうですし、いろんなところで問題といいますか、どうなのかなと首をかしげることがあります。
 その中に、「新子育て支援―未来を育てる基本のき」という、これはお読みになっていらっしゃると思いますけれども、これは財団法人の日本女子社会教育会が文部科学省の委託事業として発行した「新子育て支援―未来を育てる基本のき」ですが、それについてのお伺いでございます。この冊子については、四月十四日に産経新聞が一面トップ記事として取り上げましたので読んでいらっしゃる方も多いと思います。
 まず最初に、文部大臣にお尋ねいたしますが、大臣はこの冊子をお読みになられましたでしょうか。また、読まれておりましたら、率直な御感想をお聞かせ願いたいと思います。よろしくお願いいたします。

○国務大臣(遠山敦子君) 私、それほど詳しく見ているわけでございませんけれども、いろいろ話題になりましたので散見をしているという状況でございます。

○後藤博子君 ありがとうございます。
 お時間も、お忙しいと思いますが、ゆっくり目を通していただきたいと思います。
 この冊子は、子育てはジェンダーフリーでという思想が軸として強調されており、その観点から様々な提言がなされております。
 その一つとして、三歳児神話に縛られていませんかとの表現も見られますが、三歳児神話に対しては定説がまだ定まっておらない段階での、定説でない学説の一部の主張が肯定的に取り上げられるのはいかがなものでしょうか。省として、民間の出版物だからとお考えかもしれませんけれども、文部省の委託事業として補助金を得て刊行されたものだけに、文部省の見解と一般にはみなされますが、省としての見解はどうなのでしょうか。
 この裏側に文部科学省委託事業ということで印刷されているものですから、これ見る方は、これは文部省が出した参考書なんだ、参考になる本なのだということで多分取り上げていくと思います。それにまたかかわる費用も掛かっているわけでございますから、文部省のこれに対する見解はどのような見解をされているのか、お尋ねいたします。

○国務大臣(遠山敦子君) これは、先ほど御紹介ありましたように、文部科学省の委嘱事業としてお願いしたものでございます。
 物の見方によっていろいろとらえ方もあると思いますし、子育てについては多様な考え方があると思います。その中で、ここで取り上げていることがもし押し付け的になるのであれば、それはもう少し配慮がそれぞれの指導の場合に要るのではないかなと思いますが、この本が出てきた背景といたしましては、私は、日本の社会はまだまだ男性優位の社会であると、そんな中で女の子たちが自信を持って生きていけるようにというベースがあるのではないかと思います。
 それで、三歳児神話のことでございますけれども、平成十年版の厚生白書におきまして、母親と子供の関係を分析する中で、三歳児神話には少なくとも合理的な根拠は認められない旨の記述がありました。
 もちろん、子育てにおきます母親の役割というのは大変重要であることは申すまでもなく、接する時間の多い少ないは別として、母親は十分に愛情を注いで子供に対処すべきであると思いますが、ただ、それを母親だけに子育てを任せるというのでいいのかというような考え方はもちろんあるわけでございます。父親と母親とともに責任を持って親としての役割を果たすべきであろうかと思いますし、また、保育所を始め地域のいろんな施設あるいは関係者も子供の健やかな成長に向けて協力をしていく必要があるのではないかと思います。
 その意味で、私は、子供がしっかりとした愛情の下に、しつけられるべきことはしっかりしつけられて、そして自らの生き方について、正しいこと、そうでないことを判断する力も持ってしっかりと生きていく、そういうことが大事でございまして、そのために、いろんな資料を作ったり、あるいは学校での教育をしっかり行ったり、そういう形で、文部科学省としてはいろんな方法を用いまして健やかな子供の成長に向けて支援をしてまいりたいと思っております。
 その際には、男の子、女の子ということも大事でございますけれども、私は、まず基本に、人間としてしっかりと立派な人間に育つようにということのベースが大変大事ではないかなというのは、これは私の個人の感想でございますが、そんなようなことをベースにしながら、私どもとしてもできるだけその方向に向けての努力を今後とも続けてまいりたいと考えております。

○後藤博子君 ありがとうございます。
 幅広い考え方もおありになる大臣のおっしゃることも私も十分分かりますが、余りに一方的に、これ、今日は資料をお配りしていると思いますけれども、先ほど男らしさ、女らしさと、人間らしくということを言われました。その人間らしさという中に、やはりそれは男であったり女であったり、その自分の性というものをきちんと認識した上で、そして人間らしく生きるということが大事なのではなかろうかと思います。
 そういう点では、いい意味での男らしさや女らしさとしての男らしい、女らしい、子供の、この本の中なんですけれども、名前の付け方も、男だからといって男らしい名前を付けるのもおかしいとか、女だからといって女らしい女の子の名前を付けるのもおかしいとか、そういうことまでここの中に書かれているわけですね。
 そして片方で、もう一つは、そういうこともちょっとおかしいかなと思うのと、こいのぼりやひな祭りのおひな様まで否定しているんです。日本人としての伝統文化や美意識まで否定することにつながる危険性がないのかなということと、この冊子は、四月一日付けの送り状が添付されて配付されまして、同じ十七日に、さきに送付した冊子につき誤解しないようにとの説明書がわざわざ送られてきました。このことは、いかにこの冊子への批判が多かったかを物語るものだと思います。
 この事実を省として調査しておられますでしょうか。このことに対し、文部科学省はどのように考えているのでしょうか。また、委託事業費交付の基準はどうなっているのでしょうか。非常にこの「基本のき」を見たときに、中身を読んだときに、えっ、これでいいのかということを非常に思いましたので取り上げさせていただきました。よろしくお願いいたします。

○政府参考人(近藤信司君) まず、委託事業費交付の基準でございますが、この委嘱事業につきましては、地域的な女性団体、グループから成ります実行委員会でありますとか、あるいは全国的規模の女性教育関係団体に対しまして、男女共同参画の視点から、地域社会づくり等に参画する学習活動やその成果の普及を図る事業を委嘱をすると、これが趣旨でございまして、その委嘱に当たりましては、団体等から提出されました事業計画書の内容を勘案し、例えば、実行委員会に男性の参画があることでありますとか、そのテーマが選ばれている男女共同参画基本計画との関連が明確であることとか、いろんな観点から選考することといたしておりまして、さらに、私ども文部科学省におきます企画運営委員会、これは学識経験者等で構成をされておるわけでありますけれども、その選考を経て決めておるわけでございまして、予算の範囲内で事業に要する経費を支出すると、こういう手続を経て実施をしておるわけでございます。
 御質問のこの冊子につきましては、私どももその財団からもお話を聞いたわけでありますけれども、趣旨としては、一般的に女の子、男の子に対してなされている多様な働き掛けの事例を掲げることで読者が性別について考えるきっかけとすると、こういう意図であるということでございまして、今、委員御指摘になりました四月十七日付けで、更にこの資料作成の趣旨、内容を改めて資料配付先に説明をしたということでございます。
 また、私どもは、ちょうど四月の下旬に都道府県・指定都市教育委員会の生涯学習・社会教育担当課長との会議がございました。その会議の場におきまして、この一連の経緯でありますとか、この資料の趣旨の説明を十分にいたしました。また、各都道府県におきますこの当該資料に対するいろんな反応等についてもお伺いをしたわけでございますし、また、この五月の下旬でございますが、全国社会教育主事の研究協議会がございまして、そこで実際に男女共同参画に関する事業を担当しております教育委員会の職員等と、この資料につきまして、この内容についてもいろいろ意見交換をしたわけでございます。
 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、今後とも、教育委員会関係者等の意見も踏まえながら、いろんな機会をとらまえまして男女共同参画社会の実現に向けた学習の進め方について適切な対応について周知徹底を図ってまいりたいと、このように考えております。

○後藤博子君 ありがとうございます。
 いろいろ、既にこうやって出てしまうんですね。いろいろ検討をされているでしょう。また、男女共同参画社会、私も大事なことだと思います。しかし、そういう中で、お話合いの中で、その方々は十分に理解してこの冊子を出されたと思いますけれども、一般的に、一般の方々がとらえたときには非常に危険性があると思います。もうこれ以上言いませんけれども、是非その辺は十分に検討されて、本当に国民に対して身近なところにいる物の考え方といいますか、そういうことを是非考えの中に入れていただきたいと思います。
 そして、もう一つは、これは「基本のき」なんですけれども、来春の高校で使用予定の一橋出版の家庭科教科書「家庭基礎」には、男らしさ、女らしさについて、自分が受けたしつけについて点検させる研究課題を生徒に与えています。ちょっと読んでみます。「子どものころ、自分が親からどんなしつけを受けたかということについて話し合おう。「女の子らしくしなさい」「男の子のくせに」と言われたのは、どのような場面で、何をしたときだったか比較してみよう。」、そういうふうに親のしつけを高校生に点検させるという、そういう教科書があるわけです。親のしつけを子供に点検させるというのはいかがなものかと思いますが、こういうことも教科書の中で来年既に使われようとしております。
 今言った、親のしつけを高校生に点検させるということについて、じゃお伺いをいたします。大臣のお考えをお伺いいたします。

○国務大臣(遠山敦子君) 検定済みの教科書の記述につきましては、いずれも学習指導要領、それから検定基準などに基づいて教科用図書検定調査審議会の専門的な審査を経て、検定で許容されているものでございます。
 御指摘のその教科書の記述は、男女が協力して家庭を築くことの意義などについて考えさせるという学習指導要領の内容を踏まえて、家庭での男女平等の意義などについて学習させる中での記述であると承知しております。これは、性別による固定的な役割分業意識や習慣を見直すことなどを記述した本文との関連で、研究課題として生徒に自分が受けたしつけについて話し合わせるというものでございます。
 先生のおっしゃる意図も私もよく分かるところでございますけれども、この記述は、親のしつけを点検することを目的とするということではなくて、性別による固定的な役割分業意識などを見直すという観点から、性別によって差別されることなく男女が平等に生きることができる社会を実現する意義について理解を深めさせようとするものであるというふうに受け取っているところでございます。

○後藤博子君 ありがとうございます。
 そのような考え方で指導するんだということを先生方が十分に、お一人お一人の先生方、学校にはたくさんの先生方がいらっしゃいます。十人十色と申しまして、いろんな性格の先生方もいらっしゃいますし、考えもいろんな考え方を持つ先生方もいらっしゃいますが、そういう先生方に、これは私が心配したようなことは絶対ないということがお約束といいますかできますでしょうか。
 その辺が、非常に出てしまって、教科書が出回ってしまって、そして後になって、これはちょっとおかしいと、これはちょっと行き過ぎたとか、これはちょっと考え方が余りに一方的過ぎるということを後になって反省したりいろいろ改良しても、そのときに教えられる生徒、そのときに携わる子供たちというのはそれを教えられるわけですから、それが非常に心配です。今の子供たちのこの現状を見る中で、本当に周知徹底しているのだろうか。
 国はいろんな制度を作って任命権者に投げ掛け、任命権者の方々がそれをまた受けてやるという、それはそれですばらしいことでもあります。そういうシステムであればそのシステムを尊重したいと思いますが、そのときに国が、この制度はすばらしい制度ですよ、心の教育、ゆとり教育はすばらしい制度ですよ、だから一緒にやりましょうということで、何ですか、国の文部省そのもの、大臣そのものが、これ大変失礼な言い方ですけれども、私はもっと強調されて、もっと強力な指導がそこでなされてもいいのではないかと。任命権者に任せるということで任命権者の方々、都道府県の方々を尊重されておりますが、どうもそこに一抹の不安を感じ、国としてぴしっとした態度が足らないかなと、大変失礼な言い方なんですけれども思います。
 私は、大臣始め皆様を尊敬しておりまして、私自身も一緒になって子供たちの未来のためにはどうすればいいかということを日々微力ながら考えております。だから、幼稚園、小学校、中学校、高校、そして文部科学、そして私たち国会議員、それが、今私たちが変わらないと変わらないと思っています。だから、変われ変われ、変えます変えますと言っても、私たち自身、携わる私たちがまず変わらないと国の教育も日本も変わらないと思っておりますので、是非その点を考えながら、これからも私自身一生懸命取り組んでまいりますので、どうぞこれからも御指導くださいますようによろしくお願いいたします。
 今日は本当にありがとうございました。