154-参-内閣委員会-5号 平成14年03月26日

平成十四年三月二十六日(火曜日)
   午前十時開会
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  出席者は左のとおり。
    委員長         佐藤 泰介君
    理 事
                斉藤 滋宣君
                松村 龍二君
                森田 次夫君
                長谷川 清君
                吉川 春子君
    委 員
                上野 公成君
                亀井 郁夫君
                竹山  裕君
                西銘順志郎君
                山崎 正昭君
                岡崎トミ子君
                川橋 幸子君
                山根 隆治君
                白浜 一良君
                森本 晃司君
                筆坂 秀世君
                島袋 宗康君
                田嶋 陽子君
   国務大臣
       国務大臣
       (国家公安委員
       会委員長)    村井  仁君
       国務大臣
       (経済財政政策
       担当大臣)    竹中 平蔵君
       国務大臣
       (規制改革担当
       大臣)      石原 伸晃君
   内閣官房副長官
       内閣官房副長官  安倍 晋三君
       内閣官房副長官  上野 公成君
   副大臣
       内閣府副大臣   村田 吉隆君
       内閣府副大臣   熊代 昭彦君
       外務副大臣    植竹 繁雄君
   大臣政務官
       内閣府大臣政務
       官        奥山 茂彦君
       内閣府大臣政務
       官        亀井 郁夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        舘野 忠男君
   政府参考人
       人事官      小澤 治文君
       人事院事務総局
       総務局長     平山 英三君
       内閣府政策統括
       官        江崎 芳雄君
       警察庁長官官房
       長        石川 重明君
       警察庁生活安全
       局長       黒澤 正和君
       警察庁刑事局長  吉村 博人君
       警察庁交通局長  属  憲夫君
       警察庁警備局長  漆間  巌君
       総務省人事・恩
       給局長      久山 慎一君
       総務省行政評価
       局長       塚本 壽雄君
       法務省刑事局長  古田 佑紀君
       外務大臣官房領
       事移住部長    小野 正昭君
       外務省アジア大
       洋州局長     田中  均君
       国土交通省自動
       車交通局技術安
       全部長      宮嵜 拓郎君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○内閣の重要政策及び警察等に関する調査
 (警察行政の基本方針に関する件)
 (経済財政政策及び情報通信技術政策の基本方
 針に関する件)
 (規制改革及び行政改革の基本方針に関する件
 )

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○島袋宗康君 時間です。終わります。

○田嶋陽子君 村井大臣は所信表明で、女性や子供を被害者とする犯罪が多発しているとおっしゃっています。
 昨年、横浜で第二回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議が開かれました。日本はスウェーデンで開かれた第一回の世界会議で世界最大の児童ポルノ発信国との汚名をもらいました。その汚名返上のために、児童買春、児童ポルノ禁止法が成立したわけです。その後、日本国内の事件に関する対応はかなり進んだと思いますが、まだ海外で児童買春した日本人が日本国内で裁かれるケースが少ないように思います。
 今年はその児童買春、児童ポルノ禁止法が改正される時期ですので、現行の法律の見直しをも視野に入れてお伺いします。
 児童買春や児童ポルノを販売して捕まった人は、二〇〇一年一月から十二月、去年です、一年間で検挙された人は千二十六人、検挙された件数は千五百六十二件、それは前年に比べて三五・二%増加しています。
 村井大臣は、第二回世界会議を受けて、また今年は法改正の時期を迎えますけれども、この問題にどのように取り組んでいかれるおつもりなのか、所感をお聞かせください。

○国務大臣(村井仁君) 私も、昨年の十二月に横浜で開催されました会議にも、懇親の席でございましたけれども、参加をさせていただき、諸外国から参加された方とも懇談をさせていただきましたが、児童買春でございますとか児童ポルノに代表されるような児童の性的搾取というのは、その防止、根絶、これを図りますのは国際的にも重要な課題でございますし、文明国としての日本のもう本当に恥ずかしい問題だと思っておりますので、全力を尽くさなければならない問題だと思っております。
 今後とも、国外犯を含めまして、この種の事犯の取締りの強化を進めますとともに、一つ重要な問題は、ダメージを受けた児童被害の精神的負担を軽減するためのカウンセリングの継続的な支援でございますとか、あるいは児童買春、児童ポルノを根絶するための広報啓発活動でございますとか、こういったことを一層推進して、警察として児童の権利擁護にできるだけのことをしてまいる、これが大切なことではないか、こんな認識を持っております。

○田嶋陽子君 黒澤生活安全局長にお伺いします。
 前年に比べて検挙者数が三五・二%も増加したのにはどのような要因があるとお考えでしょうか。

○政府参考人(黒澤正和君) 警察といたしまして、児童買春、児童ポルノ禁止法に基づきまして積極的な取締りを行っております結果だと存じますが、殊に、児童買春事件のうちテレクラあるいは出会い系サイトを利用したものが、前年対比で十三年見てみますと、件数で三百六十六件、二百五十四人、人員で増加をいたしておりまして、これらテレクラ又は出会い系サイトを利用した児童買春事件の増加が要因の一つとも考えておるところでございます。

○田嶋陽子君 先ほど申し上げた千二十六人という検挙者数のうちで、児童買春で捕まった人は八七・五%、出会い系サイト、テレクラで捕まった人は六六・一%で、とても多いんですね、出会い系サイト、テレクラ。
 例えば、皆さんも御存じのように、高等裁判所裁判官四十三歳は、携帯電話の伝言サービスで知り合った児童を介して紹介された女子中学生二年生十四歳に対して対象供与、お金を上げるとか何か欲しいものを買ってあげるとか、そういう約束を交わして性交をしたとか、そういう似たような例が幾つかありますが、みんなテレホンクラブとか、最近はやり出した競りクラ、店外デートをする料金を競りで決める新手の営業方法なんというのも出てきています。すごいです。
 それで、第二回世界会議では衆議院議員の谷垣禎一さんもこう言っていらっしゃいます。携帯電話、私の携帯電話にも多くのメールが来ると。このように、出会い系サイトは言わば無店舗タイプの買春あっせんの一形態になっていると思います。しかも、多くの子供たちが持っている携帯電話からたやすくアクセスできて、お手軽に会う約束ができるのは大変危険だと思います。私は、すべてを取り締まればいいとは思いませんが、野放しにしてはおけないと思います。
 私は、このテレクラというのをどういうのか分からなかったものですから、今日は質疑ですから、昨日、うちの事務所でみんなでテレクラに電話をしました。実態は、いきなり電話に出た人が、四月一日から風俗営業法規則が変わって、電話を掛ける側も受ける側も十八歳以上だということを仲介業者に確認しなければいけないということを向こうから言ってきました。私の声で言ったんじゃないです、若い女性が電話をしました、秘書。
 最初に出た取次ぎの人から、まず生年月日とえとを聞かれたんですね。そして、取り次いでもらった後で、電話に出た相手側の男の客はそんな法律のことは全く知らないと話していました。仲介業者は知っているけれども、客は知らないんですね。たまたまそのとき、本当に偶然なんですけれども、私の秘書の携帯電話にも出会い系サイトのコマーシャルが入りました。これは先ほども申し上げた谷垣議員のところに入ってくるものと同じものだと思います。
 この出会い系サイトについてですけれども、岩下久美子さんという方が「ヴァーチャルLOVE」という本の中で、どういう書き込み内容があるかというと、まず友達になってください、ドライブに一緒に行けるといいなとか、海を見に行きたいとか、そういう言い方がベストスリーなんだそうです。
 昨日、電話をしていまして、私は、秘書が電話しているのを隣で聞いていますと、非常に会話が弾むんですね。私はどきどきしてしまって、秘書はもしかしたら付いていってしまうんではないかしらとか心配したほど会話が弾むんですね。非常にそれが軽やかな調子で進んでいって、楽しげに進んでいって、こういう調子だとハードルを越えるのは非常に簡単だという思いがしました。
 すなわち、本当に日常生活のレベルで一歩向こうはがけっ縁という、そういう危険が待ち受けている、うっかりそこに行ってしまうという、本当に何か際どいものを感じました。でも、一方でこういう出会いを渇望している人が多いということも事実だと思います。
 そこで、黒澤生活安全局長にお伺いします。
 出会い系サイトが児童買春の温床の一つになっているということ、このことに関して警察庁ではどのような対策を考えておいででしょうか。

○政府参考人(黒澤正和君) 委員御指摘のとおり、出会い系サイト、大変大きな問題になっておるわけでございますけれども、この児童買春に限らず、出会い系サイトにおきましては、やはり出会いがあるわけでございますので、児童買春が多いわけでございますけれども、それ以外に、例えば殺人事件でありますとか強盗でありますとか強制わいせつ、恐喝、傷害、こういった事件の被害者にもなる状況が出ておりまして、しかも、これは十八歳未満じゃなくて未成年者でございますけれども、平成十三年中には出会い系サイトに関係した事件の検挙件数が八百八十八件となっておりまして、大変増えておるわけですが、その約八割が未成年者、被害者が未成年者八割という状況にございます。
 出会い系サイト利用に係る児童買春事件につきましては、これは十八歳未満ということでございますけれども、平成十二年中が四十件であったものが、昨年は十倍の三百七十九件に増加をいたしておるわけでございます。
 警察では、こういった現状にかんがみまして、事件に少年が巻き込まれることのないように、広報啓発に努めているところであります。また、今申し上げました事件の検挙にも努めておるところでございまして、更に今後とも出会い系サイトの実態の把握と、それを踏まえました諸対策を講じてまいる所存でございます。

○田嶋陽子君 広報啓発だけですか、今のところは。対策は。

○政府参考人(黒澤正和君) 広報啓発以外に、今申し上げましたが、紹介をいたしましたが、各種事犯の取締り、検挙、更にはもろもろの対策の中には制度面を含めた検討というのも行っておるところでございます。

○田嶋陽子君 もう一度黒澤生活安全局長にお伺いします。
 ちょっと角度を変えます。児童買春事件や児童ポルノ事件で検挙された人の性別、年齢層、職業を教えてください。

○政府参考人(黒澤正和君) 昨年の数字でございますが、先ほど来出ておりますが、児童買春、児童ポルノ禁止法違反で千二十六人検挙いたしておりますが、男女別で見ますと、男性が九百九十五人、女性が三十一人でございます。
 年齢別では、三十歳代が最も多くなっておりまして、三百九十八人、次いで二十歳代が三百十六人、十四歳から十九歳までの少年が四十人、六十歳代が二十一人、七十歳代が五人とそれぞれなっておるところでございます。
 職業別でございますけれども、自営業者が百五十人と最も多くなっております。次いで販売従事者が百三十六人、無職が百三十人の順となっております。それから、これは被用者、勤め人の中に入るんですが、会社役員等の管理的な職業あるいは教員でありますとかそういった職業、これは、その他医療でありますとか保健従事者なども含めた統計の取り方をいたしておりますが、専門技術職というような統計の取り方でございますけれども、大きなくくりでは被用者、勤め人でございますが、そういった会社役員等の管理的職業、専門的技術職に従事する者の検挙人員が百十二人となっておりまして、この全体に占める割合が約一一%でございまして、この種職業に従事する者、同じ数字、比較ができるんですが、全刑法犯に比べると極めて高いというようなことが特徴として挙げられるかと存じます。
 以上でございます。

○田嶋陽子君 私たち一般に偏見だったと思いますけれども、こういうことをする人はある種の職業の人とか学歴が低い人とか、そういうふうに思っていましたが、近ごろそうでないということがだんだん分かってきまして、今お話にあったような、管理職だとか専門技術的な職業だとか、会社の社長だとかあるいは学校の先生だとか、いろいろそういうことが出てきました。例えば、先ほど申し上げたように、高等裁判所裁判官のような方でもこういうことをなさったわけですね。
 もしかしたら、これはちょっとお伺いしたいんですけれども、いわゆる買春者らしくないという偏見、例えば私がかつて持っていたような、そういう偏見で捜査が遅れるというようなことはないでしょうか。

○政府参考人(黒澤正和君) そのような御指摘はないと考えております。
 私どもはこの種事犯につきましていろんな端緒を得まして捜査をいたしておるところでございまして、さらにまた、児童ポルノ等についてはサイバーパトロールでありますとか、あるいは当然のことながら、外国との連携でありますとかもろもろの活動を行う中でこの種事犯に対応いたしておりますので、そういったことはないと考えておるところでございます。

○田嶋陽子君 児童買春をする人が必ずしも小児性愛者だとは限らないと思いますが、例えばここで、ロン・オグレディという人が「アジアの子どもと買春」という本を書いていて、その中で、典型的な小児性愛者、いわゆるペドファイル、ペドファイル像は専門的職業を持つ中年男性である、医者なら小児科医であることが多かったり、教師とかソーシャルワーカーとか宗教関係といった職に就いている人も多いと。それから、困ったことは、ボーイスカウトとか少年聖歌隊やYMCAなど、子供に関連した地域活動に参加している人も多いということです。
 私は、子供の性的虐待常習者だったり秘密結社のように仲間内で情報交換する真性ペドファイルタイプと、それから子供を買春したことで結果的にペドファイルになってしまう仮性タイプの両方の方がいると思うんですね。
 真性ペドファイルの人は治療しなければ治らないんです。あるいは釈放されなければ治りませんが、この人たちは釈放された後に次々と治さないと犠牲者を増やすということが予想されると思います。また、児童ポルノのホームページを見たり、海外に行って買春をする際、エイズの心配もなくて済むなどの理由でより若い子を求めた結果が買春、売春につながり、眠っていたペドファイル度が増して仮性ペドファイルが常習者に転じる可能性もあると思います。
 児童買春や児童ポルノの需要を喚起しないようにすることが必要だと思うんですが、その点について何かお考えになっていらっしゃることはありますでしょうか。

○政府参考人(黒澤正和君) いわゆるペドファイルでございますけれども、今お話ございましたように、大変正確に実態をつかむということは難しいと考えておるわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、児童買春、児童ポルノ事犯の検挙等を通じまして実態把握に努めてまいりたい、また外国の事例なども含めて今後検討してまいりたい、かように考えておるところでございます。

○田嶋陽子君 すると、真性ペドファイルと仮性ペドファイルの区分けといいますか、その見分け方に関する研究はまだ付いていないということですね。

○政府参考人(黒澤正和君) 御指摘のように、この分野につきまして私ども専門的知見の蓄積等はございませんと言っていいかと思いますので、今後の課題というようなことで検討してまいりたいと存じます。

○田嶋陽子君 私たちはやっぱり結果が欲しいわけでして、子供が一人でも二人でも傷付けられない状況が欲しいと思います。
 例えばほかの国を参考にしますと、アメリカやイギリスですが、アメリカは大変はっきりした対策を打ち立てているわけですね。イギリスでも一九九七年にアメリカを模倣してそこを修正しながら性犯罪法が制定されました。一定の犯罪者は自分の住所などを警察に届けなければならないという制度が設けられたわけですね。ここで、性犯罪者の情報というものを警察で記録するだけじゃなくて、必要な場合には関係機関や個人に教えてほしい。
 例えば公園があって、学校があって、子供たちがよく遊んだり通ったりするところの校長先生だとか保護者だとかに、その近所にそういう人がいるかもしれないということは、もしかしたら教える義務があるんではないのか、そんなふうに思います。その点に関してはどうでしょうか。

○国務大臣(村井仁君) 立法の問題ということになりますと、やはり衆参両院のいろいろな御議論が必要なことかと存じますので、私の立場から特段のことを今の段階で申し上げる用意がございませんが、やはり犯罪、どういう形態の犯罪でもあれ、それを犯す可能性があるという人につきまして、どの程度の情報を開示していいかという問題というのは、これはもう申し上げるまでもなく人権の問題と非常に密接にかかわる問題でございまして、田嶋委員の御懸念、問題意識は分かりますけれども、なかなか各国法制の違いもございましたり、直ちにその方向でいくべきだというふうなことを申し上げる用意がないというのが私の今の心境でございましょうか。
 ついでながら、例えば犯罪の捜査あるいは逮捕等々における手続につきましても、英米法の国と日本の場合は随分違うわけでございまして、日本の場合は非常に厳密な手続を要求しているということはもう委員十分御案内で御発言になっていらっしゃると思います。

○田嶋陽子君 国情の違いもありますし、いろいろあると思いますけれども、毎日のように子供か女性が殺されているという事実は重く見て、是非、村井大臣ならではの方法があるならば、是非考え付いて、即座にでも私はこういう人たちを守ってほしいと思います。
 それから次に、外国との関連でお伺いします。日本国内では法律や人の目があってできないことを海外でする日本人がいます。旅の恥はかき捨てとか昔よく言ったものですけれども、それが性的なことでも行われています。法律ができてから、日本人が海外で児童買春を行った場合にも処罰されることになりました、することができることになりました。
 児童買春についてですけれども、例えばその日本人がフィリピンで行った子供買春についてですが、いろんな例があるんですけれども、例えば弁護士の坪井節子さんが、明石書店から出した「アジアの蝕まれる子ども」という本の中で、例えばこんな例があります。日本の男性が行ったことですが、実業家の息子で会社員で四十代で、マニラ市内に住む自宅に十三歳から十七歳までの三人の子供を軟禁し、暴行、脅迫をしてレイプしたほか、少女らとのセックスの様子を自らビデオや写真に撮影していたこと。それから、逮捕時には六本のビデオと五百枚以上の写真が押収されているということ。この男性が自宅に軟禁してレイプした少女の数は三十人に上ると報道されています。また、次の例は、自称小児科医、三十九歳の男性ですが、宿泊先のホテルに五歳から六歳、十歳前後の少年少女を部屋に連れ込んで、子供たち同士に性行為をさせたり、自分のペニスを吸わせたり、縄で縛ったりして写真に撮影したと。
 このほかに、もっとひどい例は、加害者は日本ではありませんけれども、フィリピンでは子供を物扱いしている人たちもいます。児童買春に関して、大変悲惨な事件ですけれども、ロザリオちゃんという人が、十一歳の女の子ですけれども、ストリートチルドレンです。外国人から膣にバイブレーターを入れられて、それが取れなくなってしまったまま、生活のために体を売らなければならず、体内に残ったバイブレーターが腐食して亡くなったという、これは一冊の本にもなっている事実です。
 やはり、子供が大人の性の道具として物扱いされてはいけないと思います。この法が施行された後、何人の日本人が国外犯として児童買春、児童ポルノ禁止法によって逮捕されておりますでしょうか。

○政府参考人(黒澤正和君) これまでに三件の事件、児童買春、児童ポルノ、国外犯、検挙をいたしております。法施行以後、平成十二年十一月にタイ王国における児童ポルノ製造事件、平成十三年一月、カンボジア王国における児童ポルノ製造事件、そして平成十三年十二月、カンボジア王国における児童買春事件、三事件計九人を検挙いたしておるところでございます。

○田嶋陽子君 今おっしゃられたカンボジア王国での事件ですね。この男性は三十歳です。土木作業員で、そして販売目的で子供の裸体を撮影し児童ポルノを製造した罪で、二〇〇一年一月、大阪で立件されました。この男性は、日本に帰国して大阪府警察が必要な調査を行って、二〇〇一年一月九日に大阪地方検察庁に書類送致されたわけですけれども、まだ現在も裁判が続行していると聞きました。
 この事件は、当初、個人的趣味の範囲では立件が難しいと言われていたものだそうです。なぜなら、児童買春、児童ポルノ禁止法で、頒布、販売、貸与、公然陳列目的での児童ポルノ製造と定められているからで、それ以外では取り締まれないということ、要するに個人的趣味の範囲ではということですよね。しかし、頒布、販売を目的にしていなくても、その写真やビデオテープには紛れもなく性的虐待があった事実が残されているわけですね。ですから、販売目的であろうとなかろうと処罰の対象にしなければいけないのではないかと思います。
 法律を作るときの議論では、児童ポルノの単純所持、ただ持っているだけでも罪になるという、このことを含めるかどうかで議論になったわけですが、頒布・販売目的になったんですが、頒布・販売目的に限定したのだと聞いています。もし、この規定があるために個人的趣味の範囲で販売目的ではないというケースを立件できないようなら、法律を変えることが必要だと思います。
 この男性は、何年間も児童買春目的で東南アジアに旅行に訪れていたようですが、その間、何回くらい児童買春を繰り返していたのか分からないわけで、考えただけでも身の毛がよだつ気がします。
 この土木作業員のように、児童買春、児童ポルノ禁止法で捕まった人が、再度海外旅行をしようとするときに、パスポートを返納させて国外に出さないようにすることはできるものでしょうか。

○政府参考人(小野正昭君) 御質問の買春の国外犯についてでございますが、旅券法に基づく旅券の返納命令の適用ということは可能と考えております。実際の法令の運用につきましては、法務省等の関係機関から通報を受けまして、外務省として個々のケースについて検討をしていくということとなると思います。

○田嶋陽子君 この件に関しての質疑はこれで終わりますが、ちなみに最近、女性議員たちで会った女性にニコル・カスティオーネさんというスイスの代議士がいらっしゃいます。この女性の代議士の方は代議士になったパリの娼婦という、この方は元娼婦だったわけですね。その人が言うには、欧米の調査では売春している人の八五%が少年期、少女期に体と心に傷を受けている。この娼婦から代議士になった女性も、実は五年間、知っているおじさんに小さいときから性的虐待を受けていたと。この人が言うには、このために自信がなくなって、世の中の事柄で何に価値があるのか分からなくなってしまったと言っています。すなわち、性的虐待を受けた人は、すべて売春をするわけではありませんが、幼児期の虐待によって女性の自己評価が低くなる、その後、自分の人生を全うできなくなる可能性が多いということです。
 そして、もう一つ言いたいことは、これはもう日本でも皆さんだんだん分かるようになってきましたけれども、被害を受けた人が、必ずと言ってはいけませんが、数字が出ていますね、何十%かは将来加害者になる可能性があるということです。
 ですから、たかが子供のこと、たかが女のことという発想は毛頭持ち合わせていらっしゃらないと思いますけれども、やっぱり子供を今傷付けるということは、将来の日本に不安要因を残すということです。将来の日本が幸せになるためには、今の子供たちを傷付けるようなことは、限りなく傷付けてはいけないということだけ、そのための協力をしていただきたいということをお願いしておきます。
 あと三分あります。
 次は、警察の、警察官の増員についてお伺いします。
 先ほど山根議員が村井国家公安委員長に質疑をなさいましたが、そのときに村井大臣は警察官にふさわしい人材をそろえたいということをおっしゃいましたが、警察官にふさわしい人材とはどういう人材ですか。

○国務大臣(村井仁君) 大変難しい御指摘でございますけれども、基本的にはまず、健全な常識を持った社会人であるということが私はまず第一に大事なことだろうと思っておりますし、そういう意味で、いろいろな不祥事案などを見ておりますと、やっぱりいささか適性を欠くのではないかというようなケースがないわけではない。そういう意味で、そういう適性のある人を選びたいという意味を申し上げたつもりでございます。

○田嶋陽子君 この健全な常識を持った人というのが一番危ないような気がします。
 私は元大学で教えておりましたが、私の学生たちが電車の中で痴漢に遭ったり、教師にセクハラに遭ったり、いろんな人にセクハラに遭った場合、警察に訴えていた場合、そこでもう一度セクハラを受けます。どういうセクハラかというと、あんた、遅く帰るのが悪いんだよとか、そんな服装をしているから悪いんだよ、女のくせにその口の利き方は生意気だ。すなわち、その警察官たちは、男らしさ、女らしさでがんじがらめになっていて、人を見る視点がないんですね。女だろう、男だろう、そこが常識なんです、その警察官たちの。そこで、みんながそこでもう一度セクハラに遭ったり、セカンドレイプを受けたりするケースが多いんですね。
 ですから、私は、ふさわしい人材というあいまいな言い方ではなくて、警察官にきちんとジェンダーフリーの教育を、トレーニングをする必要があると思うんですね。そのことを私は前にもお願いしたと思うんですが、私は具体的にそのことをきちんと、計画を見せてほしいと思います。
 私も警察官の人と時々お話ししますが、とてもいい人たちです、いい人たちなんですが、ちょっと話を進めていくと、先生、独りだろう、寂しいんだろうとか、結婚していようとしていまいとこっちの勝手だいと、そう思うんですけれども、そういうことをちょっと親しくなると、でも、それは親切心なんですね。先生、もうちょっと口の利き方気を付けたらいい人見付かるよとか、余計なお世話だ。でも、そういうことを平気で言う。それが健全な常識人の警官なんです。それが一般人なんですね。
 それって、もうこの時代では時代遅れで、健全でも常識人でもなければ、非常識人なんですね。そこを私は、警察の中はマッチョだから、もう少し村井大臣に、そこのところの教育をきちんと先生を呼んでしていただきたいと思うんですね。
 なぜなら、これから、実はちょっと調べたんですが、警察増員するに当たって、山口県と長崎県には警察の増員がありません。ゼロです。ところが、調べてみましたら、これは婦人相談所の統計ですけれども、何と長崎県はドメスティック・バイオレンスの相談が、県のうちで十一位です。三千九百四十四件もあるということは、その背後にどれだけドメスティック・バイオレンスに遭う人がいるかということ。ということは、それだけ警察の用事が増えるということですよね。そして、山口県でも二十六位。これは日本全国の半数以下ですが、私としては、もう具体的に警察官の人がどういう作業をしてくださるのか、仕事をしてくださるのか、女の人の命を救ってくださるのかどうか、そこがうんと大事なんですね。
 だから、警察官を増員なさるときにも、もう時間が来たからお願いです、ちゃんとカウンセリング能力のある人と、もし署内でできないならばそういう人を募集してください。それから、ちゃんとジェンダーフリー教育を受けるという、受けた人を採る、それがふさわしい人です。そういう人を採っていただきたいと思います。もし、そうでない人を採ったんなら、署内で教育してほしいと思います。
 それともう一つ。なぜ警察官の女性はスカートをはいているのですか。あれでは銃は撃てないでしょう、あれでは走れないでしょう、おかしいと思うんですね。そのこともできたらお伺いしたいと思います。
 終わりなんですけれども。

○委員長(佐藤泰介君) 最後のところだけ、じゃ村井大臣。

○国務大臣(村井仁君) 御意見はよく承りまして、また勉強させていただきますが、ちなみに女性の警察官はスカートだけじゃございませんで、もちろんいわゆるパンツも使っております。そのことは申し上げておいた方がよろしいかと存じます。
 それから、今、委員いろいろ仰せになられました中で、私がイメージする良識のある、何といいましょうか、警察官というイメージの人物は、多分、田嶋委員に対して、あるいは田嶋さんに対してそのようなことを多分言わないんじゃないかと理解している次第でございます。

○委員長(佐藤泰介君) 時間です。また続きは後日お願いします。