147-参-労働・社会政策委員会-2号 平成12年03月14日

平成十二年三月十四日(火曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 三月十三日
    辞任         補欠選任
     直嶋 正行君     佐藤 泰介君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         吉岡 吉典君
    理 事
                大島 慶久君
                大野つや子君
                小山 孝雄君
                川橋 幸子君
                長谷川 清君
    委 員
                上杉 光弘君
                斉藤 滋宣君
                常田 享詳君
                佐藤 泰介君
                笹野 貞子君
                高嶋 良充君
                但馬 久美君
                浜四津敏子君
                八田ひろ子君
                大脇 雅子君
                鶴保 庸介君
                高橋紀世子君
   国務大臣
       労働大臣     牧野 隆守君
   政務次官
       労働政務次官   長勢 甚遠君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山岸 完治君
   政府参考人
       法務省入国管理
       局長       町田 幸雄君
       国税庁課税部長  河上 信彦君
       文部省高等教育
       局長       佐々木正峰君
       中小企業庁長官  岩田 満泰君
       労働大臣官房政
       策調査部長    松崎  朗君
       労働省労働基準
       局長       野寺 康幸君
       労働省労働基準
       局安全衛生部長  下田 智久君
       労働省女性局長  藤井 龍子君
       労働省職業安定
       局長       渡邊  信君
       労働省職業能力
       開発局長     日比  徹君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○労働問題及び社会政策に関する調査
 (労働行政の基本施策に関する件)

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○浜四津敏子君 公明党の浜四津敏子でございます。
 初めに、中小企業対策及び雇用対策についてお伺いいたします。
 私たち公明党は、大胆な政策を実行して我が国の深刻な経済危機を乗り越えるためには政治の安定と改革のリーダーシップが必要と、こういう思いから昨年十月に連立政権に加わりました。今、与党三党結束して総力を挙げて経済新生と景気回復に取り組んでいるところであります。
 昨年十一月の第二次補正予算における大胆な経済新生対策を初め、十二年度予算案などの財政による積極的な景気下支えなどを進めることによりまして、景気は着実に回復基調に向かっていると確信しております。少なくとも一昨年来、日本の金融破綻及び経済破綻が世界恐慌の引き金を引くと深刻に危惧されていた事態はともかく回避し、また克服して、緩やかな改善への流れをつくってまいりました。
 昨日、堺屋経済企画庁長官も、景気は全体として回復基調で〇・六%は達成される可能性が高い、こう発言されております。景気回復にはあらゆる施策を総合的に進めねばなりませんが、中でも中小企業対策というのは、そこで働く多くの方々の雇用の確保という視点からも大変に大事であります。公明党が不況にあえぐ中小零細企業への金融機関の貸し渋り対策に重点的に取り組んできたのもそのためであります。
 それによりまして、信用保証協会が債務保証する中小企業安定化特別保証制度の保証枠を十兆円追加し、三十兆に拡大されました。また、取扱期間も一年間延長ということになりました。この特別保証制度の実現による効果を先般日本商工会議所が報告いたしました。それによりますと、七千件の倒産が未然に防止され、六万人の雇用の維持に役立った、大変大きな効果があったということであります。つまり、この政策は中小企業支援策及び雇用対策として大きな結果を出した、こういう報告でございます。
 この特別保証枠十兆円の追加について、ばらまきだという批判がありますが、この保証枠十兆円の追加措置の政策効果について、また日本商工会議所の先ほどの報告について、どうお考えになり、またどう評価されるでしょうか。
 中小企業庁長官及び労働省としての評価をお伺いしたいと思います。

○政府参考人(岩田満泰君) 特別保証制度でございますが、一昨年来の未曾有の信用収縮に対する臨時異例の措置といたしまして創設された制度でございます。
 制度発足から三月十日までの段階で、保証承諾の実績が百十九万件、二十兆二千億円という大変多くの中小企業の方々に御利用をいただいております。日本商工会議所が発表いたしました調査にもございますように、これによりまして倒産の回避、あるいはその結果として雇用の維持というような役割を果たしたと存じております。
 加えまして、本制度は、中小企業の資金需要に対しまして財政資金を効率的に活用して多額の信用創造を図るという政策にもなっております。その意味で、政策の実効性あるいは効率性という意味におきまして、セーフティーネットとしての役割を十全に果たしてきたのではないかと思います。
 また、今お触れになりましたように、平成十二年度末までこの制度を一年間延長いたしたわけでございますが、さきの臨時国会におきまして補正予算が通過をし、その財政的な措置もされました結果、これは現実に動き出しております。既に、ただいま申し上げましたように、二月末をもちまして前段階の二十兆円の枠を消化いたしましたので、現在は新たに追加をいたしました十兆円の枠が順次中小企業者によって活用されている、こういう状態であると存じております。

○政務次官(長勢甚遠君) 中小企業金融安定化特別保証制度の趣旨、また中小企業対策としての位置づけは、今中小企業庁の方から御答弁のあったとおりでございます。
 今、中小零細企業には大変未曾有の危機にあるわけでございまして、その経営が安定をするというか倒産を免れるということは当然雇用の安定に役立つわけでございまして、そういう意味で、私どもとしても極めて必要な政策であると考えております。特に中小零細企業、今、産業構造が変わる、企業組織も変わる中で、運転資金等の不足等から大変な事情にあるわけで、そのことがそこにお勤めの方々の不安につながっておるわけでございます。ぜひ、この制度が活用されて雇用の下支え効果を十分に発揮するように期待をするものでございます。

○浜四津敏子君 次に、新卒者の就職の見通しと男女雇用機会均等法についてお伺いいたします。
 男女雇用機会均等法第四条に基づく男女雇用機会均等対策基本方針がことし六月を目途に策定されることになっております。
 一九八六年に男女雇用機会均等法が施行されて以来、女性の職場進出は確実に進んでまいりました。数字を見る限りではそれなりの成果を上げておりますが、しかし、必ずしも実態は順調ではないと私は思います。全国を回りましてさまざまな方からお話を聞く機会がありますが、その実情は大変厳しいものがあります。
 また、先日はテレビである企業の新卒予定者の就職説明会の様子が放映されておりました。担当の方が、当社では短大生は採用対象にしていませんと、こうアナウンスいたしまして、該当する女子短大生が退席する様子が映されておりました。短大卒というだけでこの若い女性たちが門前払いにされていた、それを見まして本当にかわいそうな思いがいたしました。近年の不況の影響もありまして、特に女性は男性よりも厳しい状況にあります。
 大臣も、これら新卒者の大変に厳しい就職状況につきましては御苦労されておられることとは思いますけれども、この年度末における最終的な就職決定の見通し、どのように見ておられるのか、これは政務次官にお伺いいたします。

○政務次官(長勢甚遠君) 今年三月卒業予定の方々の就職内定状況は大変厳しいということは我々も極めて深刻なものとして受けとめてまいりました。
 年末からことしにかけまして、我々も最大限の努力を払わなければならないということで、例年以上に、この一、二月は急ピッチで内定が進んだというふうに成果があったと思っておりますけれども、それでもなお、二月一日現在では大学新卒者については八割程度、短大新卒者については六割程度、高校新卒者については八割ということでございまして、年末に比べまして昨年との格差は相当縮まった段階ではございますが、まだ大変厳しい状況でございます。最終的に例年どおり九割以上の内定率の達成を目指してさらに努力をしたいと思っております。
 このために、従来、求人開拓なり面接会の開催等々、例年にも増して何倍もの数をこなしてまいりましたし、また高校生に対するパソコン講習等の就職がしやすいような援助も行ってまいったところでございます。
 この後、大車輪をかけて頑張ってまいりますが、なお未就職の方が四月を越えて出るということも想定されますが、その場合には、その方々が職業能力を身につけて早く就職に結びつくように講習等の枠も予算上確保いたしまして努力をしてまいりたい、このように思っております。

○浜四津敏子君 ところで、ある方の御意見によりますと、二十一世紀に活力ある社会となるために雇用の場で必要な条件が三つあると、こういうお話をしてくださいました。
 その三つというのは、一つ目がジェンダーフリー、採用や配置、昇進などで性による差別をなくすことである。二つ目がエージフリー、年齢による差別をなくすことである。また、三つ目が学歴フリー、例えば大学卒のみ採用とか、あるいは大卒は昇進できるけれども高校卒は昇進できないとか、こういう学歴で差をつけない。この三つの条件をクリアできるところが最終的には生き残れる、こういう御意見を伺わせていただきました。
 大変興味ある御意見だなというふうに拝聴いたしましたが、ひとつ大臣のこの御意見についての御感想をお聞かせいただければと思います。

○国務大臣(牧野隆守君) 今、先生がおっしゃるとおり、ジェンダーフリー、エージフリー、学歴フリー、本当にすばらしいことでございまして、こういう目的に向かって私どもとしては全力を挙げなければならないと思います。
 働く人がその能力を本当に十分に発揮できる、このような状態が一番すばらしいわけでございまして、性や年齢、学歴でなくて個人の能力に着目した雇用管理、これが行われるようにあらゆる施策を総動員させていただきたい、こう考えております。

○浜四津敏子君 また、現実には、女性が企業に採用されても、配置や昇進などでは男女格差は開いたままのところが大半が現状でございます。実際に九八年度の場合、役職全体に占める女性比率は、部長相当職一・二%、課長二・四%、係長七・八%であります。ILOの統計では、全管理職中の女性比率は、アメリカの場合は四三・八%、ドイツの場合は二七・〇%。これに比べまして日本の企業における女性登用が大幅におくれているのは明らかでございます。
 幹部候補の総合職か、あるいは事務を担う一般職か、職種区分を設けて採用するコース別雇用管理制度というのは均等法の目玉として導入され、女性登用のきっかけになる、こういうふうに言われてまいりました。しかし、その後、制度の運用で男女異なる取り扱いがなされている事例が依然として見受けられておりまして、その見直しが迫られております。
 このような現状をどう理解され、またどう対処されるのか、これも政務次官にお伺いいたします。

○政務次官(長勢甚遠君) コース別雇用管理制度は、今御指摘のように、労働者を意欲、能力、適性等によって評価をし、処遇するシステムの一形態として導入してきたものでありますが、これがお話しのように女性登用の契機となることが期待され、またそういう効果もあったと思いますけれども、一方でその運用においては男女異なる取り扱いがなされたり、例えば総合職のほとんどを男性が占めてしまうというようなことがあったり、事実上の男女別の雇用管理としてしか機能していないということも残念ながら見られるというのが実態であろうと思っております。
 このため、本年二月に取りまとめられました雇用均等政策研究会報告におきましても、「真の均等法の趣旨の実現という観点から、望ましいあり方についての指針等を示すことは必要」であるという指摘もされたところでございまして、これを受けまして、従来の「コース別雇用管理の望ましいあり方」という通達につきまして必要な見直しを行い、男女均等な雇用管理の実現に向けて企業への周知徹底を図っていくということに努力してまいる、こういう所存でおります。

○浜四津敏子君 次に、女性起業家及び高齢者起業家支援対策と雇用確保についてお伺いいたします。
 我が国経済の活性化のためには、女性や高齢者などを含む多様な事業者による活発な開業が行われることも大変大事なことであります。女性が生活者としての視点や発想で新たな事業やサービスを提供することが社会のニーズと合致し、ベンチャービジネスとして成功する事例も数多く見受けられております。
 アメリカでは、女性が経営者であったり所有している企業は数年前の約一・四倍、全米企業の四割近くに達しております。しかし、我が国では、女性の起業への意欲は高いものの、肝心の資金調達やあるいはマネジメント専門技術の不足、また情報データ不足などで困難に直面しているケースが多いのが現状でございます。
 そこで、まず最初に女性局長に、このような現状についてどのような御見解を持っておられるのかお伺いいたします。

○政府参考人(藤井龍子君) 起業、業を起こすということでございますが、これは女性がその能力を発揮しやすい働き方の一つであると私どもは評価をしておるところございますし、また同時に雇用増加という点でも効果のあるものと考えているわけでございます。
 したがいまして、私ども女性局といたしましても、この女性の起業家を支援するということは大変重要な課題であると考えております。そのため、私どもは既にそういう女性の方のための起業マニュアルを作成して配付いたしましたり、あるいは女性起業家支援コンサルティングといったような事業を実施しておるところでございます。
 さらに、大変重要な課題でございますので、一月に芝に開館をいたしまして、働く女性の拠点施設という位置づけにさせていただいております女性と仕事の未来館、ここにおきまして女性起業家支援セミナーあるいは女性起業家の交流会というところで情報交換、意見交換をしていただく。さらには、今先生御指摘のような資金調達の方法とか起業のノウハウ、どういう分野で起業が有望であるかといったような情報提供、あるいは税とかマネジメント等についての相談事業というものも実施しているところでございます。
 今後とも、女性起業というのは米国の例に見るまでもなく大変重要なことだと考えておりますので、この事業の推進には一層力を注いでまいりたいと考えているところでございます。

○浜四津敏子君 今、局長のお話にありました女性起業家に対する公的資金による貸付制度についてお伺いいたします。
 私たち公明党はこれらの整備を一貫して主張してまいりましたが、幸いなことに昨年の四月一日からその趣旨の女性起業家支援のための貸付制度もスタートいたしました。女性の起業家がさまざまな分野に進出すれば、それに伴いまして雇用の創出にも連動してまいります。
 しかし、この貸付制度がつくられてはおりますけれども、この制度のPR不足のためかどうかわかりませんが、利用者がまだ少ないように聞いております。貸付実績を見ますと、昨年の四月からことしの一月までの十カ月間で国民金融公庫からの貸付件数は千十六件、総額五十八億四千百万円であります。アメリカの事例から考えますと、日本でも今後もっと起業を目指す女性もふえてくることが十分予測されます。
 この女性起業家の増加は、先ほども申し上げましたが、雇用の増加にもなると考えます。雇用対策という視点からもこれは非常に重要な制度であると思っておりますが、現在どう支援し、また今後どういう取り組みをされるのか。特に、知られていないためになかなか利用の件数が少ないといった事態も踏まえまして、どう取り組まれるのかをお伺いいたします。

○政府参考人(岩田満泰君) 御指摘の、女性、高齢者の起業を進めていただくということは極めて重要な課題でございまして、ただいま先生御指摘いただきましたような特別貸付制度を国民金融公庫と中小企業金融公庫に設けて実施してきております。
 この運用の中で一つ問題点が指摘をされておりまして、女性が起業のためにお金を借りる場合に、その担保の徴求がなかなか一つのネックになっているという点がございまして、実はさきの臨時国会で予算手当てをいただきまして、その結果として、現在は担保徴求を五割まで免除ができるという仕組みにいたしました。そのような形で、担保徴求を免除する形で利用しやすくしていただくということを考えております。
 とりわけ、私どもこれまで見ておりますと、女性起業家に関連して言えば、若いといいましょうか子育てを終えられたお母さんが、例えば企業組合のようなものをつくって若いお母さんの支援をするとか、あるいは介護のお仕事をされる。
 もう一つは、私どもが特に今後のお話として注目しておりますのは、いろいろと空洞化の進む商店街の再活性化という面で、女性の目と申しますか能力というのが実は大変即戦力になっているという実態がございます。
 これは、もうかねてから女性のパート労働者というのが実は常用の労働者よりも店づくりにむしろ貢献をしているケースがあるというのが従来から見られた一つの傾向であったわけでありますが、現実問題として商店街の再活性化に女性が大変活躍をされ、それによって商店街が、まさに消費者と申しましょうか消費者の目で店づくりが進められるということが大変よくなっている。そのような形で空き店舗と言われるようなものが埋められていくというような、あるいは消費者の、生活者のニーズにマッチしたような町づくりが行われるというような意味で、女性の持たれる能力というのは大変期待がされる部分が多いというふうに私ども見ております。
 その意味で、中小企業庁の施策としてはとりあえずは金融面でございますが、ただ金融面はかなり実態をお聞きいたしておりますと、まだまだ残念ながら女性であるというために不利な立場に置かれているケースが多いようでございまして、今申されました制度、普及、PRに努めたいと存じますし、今回制度の改善も図らせていただきましたので、ぜひ幅広く御活用を願いたい、こう考えております。

○浜四津敏子君 同じく高齢者の起業家への貸付実績でございますが、これは昨年の四月からことし一月までの十カ月間で、これも国民金融公庫からの貸付件数わずか三百四十九件と伺っております。総額は二十億三千万円。この制度のPR、またさらには通産省、労働省の連携によるバックアップ体制を整備して対応すべきだと考えますが、これについてもどう取り組まれるか、御見解をお伺いいたします。

○政府参考人(岩田満泰君) 高齢者の関係も、実は私どもの金融制度、特別貸付制度としては一つの枠の中におさめられておりまして、ただいま御説明申し上げましたように、担保徴求の面とそれから金利の面で改善をするというようなこととをさせていただいております。
 そのような形でまたPRにも引き続き努めまして、私ども中小企業政策としていろいろな形で全国的に創業対策、起業対策と申しましょうか、そういうものもあわせて展開を始めておるところでございまして、そういう施策とあわせまして、そうした女性、高齢者による起業の促進というものにも努めていきたいと考えております。

○政府参考人(渡邊信君) ただいま御質問のありました高齢者の起業の支援ですが、労働省では中小企業庁と共管の法律であります中小企業労働力確保法に基づいて事業の立ち上げの支援をしておりますけれども、現在、日本では事業を起こす方の平均年齢がまだかなり高くて、大体四十歳ぐらいではないかと思います。ということで、高齢者の方もかなり新しく事業を起こして活躍しておられるわけでありまして、十分この制度を利用していただきたいと思っております。
 なお、第二次補正予算におきましては、高齢者の方が、六十歳以上の方が三人以上共同で出資をして事業を起こすというときにその初期投資に対しまして助成をする制度を認めていただいておりまして、三分の二で上限を五百万というふうにしております。来年度の予算にも、十八億、三百件ぐらいの予算を計上しているところでありまして、よろしく御審議を賜りたいと考えております。

○浜四津敏子君 次に、ミレニアムプロジェクトと高齢者雇用についてお伺いいたします。
 連立政権のミレニアムプロジェクトとして三つのテーマ、情報化と高齢化と環境対応の研究開発に取り組むことになっております。労働省としては、高齢者が年齢にかかわりなく働き続けることのできる職場の創造に関する調査研究のための予算を五億円確保されております。
 高齢化が進むにつれて、五十歳から六十四歳の高齢生産年齢人口が増加し続けております。また、六十五歳以上の高齢者の中にも社会参加を希望する方がたくさんおられます。働くことは高齢者の生きがいや健康の維持、また社会の活性化という視点からも大変に重要であります。
 事実、ある国民健康保険団体連合会の調査によりますと、シルバー人材センター会員になって働く高齢者の医療費は、同一市町村の同年齢の高齢者の平均医療費の五八・二%という結果が出ております。要するに、元気に働く高齢者は平均的な高齢者よりも医療費負担がおよそ四〇%も少ないということであります。
 また、高齢者の雇用は、ひとり高齢者のためだけでなく、社会保険料を負担する側の人口を増大させて、保険給付を受ける側の人口を抑制することにもなります。
 私たちは六十歳代現役社会を目指すべきだというふうに基本的に考えておりますが、そのような観点からも高齢者の雇用拡大のための具体的で効果的な対策を講じることが急務であります。
 しかし、現実には企業側が必要としているのは一般的には若い労働者で、高齢労働者との間に必然的にミスマッチが生じることになります。そのため、どうしても国の的確な誘導政策が必要となってまいります。
 労働大臣、どのような具体的な誘導策をとられ、そして高齢者の雇用確保をされるのか、お伺いいたします。

○国務大臣(牧野隆守君) 今、先生は、高齢化に対する対処方針、また中年の皆さんのミスマッチの問題、また若年労働者と、幅広くお触れになったわけですが、大体三つに分けて考えています。
 まず、若年労働者の方々は、結構会社へお勤めになってもすぐおやめになるというような傾向もあるわけですが、いずれにしましても、ミスマッチをなくするためには、研修システムを抜本的に拡大して、若年の方々がやはり中年のときにはもうしっかり落ちついた職業についていなきゃならないと、不安感を持っておるわけですから、こういう形のところへ、例えば具体的に申し上げますと職業学校をさらに利用させていただくと。研修コース、よく実情を聞いて、今大体八千五百コースぐらいあるわけですが、一万以上に伸ばして、例えばソフトエンジニアになりたい、あるいは語学をきちっとしなきゃいけない、若い人の要求するそういうコースの拡大と申しますか、技能習得の拡大に最重点を置かせていただきたい。
 それから中高年者につきましては、いろんな形で会社をやめさせる場合もありますし、勧奨退職というものもありますし、やはり引き続き継続して雇用していただくというためには、既に御承知かと思いますが、これらに対する助成金をきちっと制度的に確立いたしております。
 さらに一つの形態として、四十五歳以上のまだ本当に働き盛りの方々にも継続して雇用していただくために、企業主に対する助成金と、特に高年齢層の方は、先ほど申しましたとおり、女性の社会進出と同じように、高年者の方が生きがいを感じて働いていただく、これが大きな目標でございまして、そういう形でそれぞれの層に応じて対策を講じていきたいと、こう思っております。

○浜四津敏子君 また一方で、六十歳で定年になれば仕事から離れたいという人もおられます。そして、その後地域のボランティアやあるいはNPOで活動したいという方々も現実にはおられます。また他方で、働きなれた職場で働き続けたいという方々もたくさんおられます。
 こういう高齢者の方々、多様な就業ニーズがあるわけでございますけれども、その多様なニーズに的確に対応できるために労働省としてはどのような具体的な施策を考えておられるのか。これは政務次官にお伺いいたします。

○政務次官(長勢甚遠君) 高齢化に伴う就業機会の拡大ということがこれからの高齢化社会において大変大事な問題でございます。
 労働省としては、今高齢法の改正案も提案をさせていただいておりますが、定年延長、継続雇用を含めて六十五歳までの継続雇用達成に重点を置くとともに、今先生お話しのとおり、六十歳代前半層以降、必ずしも雇用という形ではなくていろんな形で社会に参加をしたいという方がおられるわけでございます。
 そういう中で、特に就業を通じて社会参加をしたい、生きがいを求めたいという方々のために、シルバー人材センターの制度の普及発展に今まで努力してまいりました。今日、平成十一年度において八百六団体に助成を行っておりますし、会員数も五十万を超えるという状況でございます。
 今後ともその機能の強化を図っていくことが極めて大事でありますし、また大変好評でもありますので、今回の改正におきましても、シルバー人材センターの取り扱う就業の範囲について、ニーズの多様化に的確に対応できるように、一日当たりの就業時間が相当程度短ければ継続して就業できるようにすることとして、多様なニーズに応じた就業機会を確保するように努めることといたしたい、このように思っております。

○浜四津敏子君 次に、産業構造改革転換への対応についてお伺いいたします。
 先般、日本経済新聞社が集計した上場企業の二〇〇〇年三月期の業績予想では、期間のもうけを示す経常利益は前期に比べ一〇・七%ふえる見通しとのことであります。大変明るい見通しで喜ばしいことではあります。また、円高や製品価格の下落などで売上高は減少しておりますが、コストの削減、またIT投資の拡大、そしてアジア市場の復調などがプラスに働いて三年ぶりの増益だということでございます。消費の低迷が足かせになってはおりますが、このまま推移すれば、IT投資の盛り上がりなどで来年、二〇〇一年三月期も増益になる見通しとも言われております。
 ただ、一方で気になる点もございまして、ジョブレスリカバリーと言われるように、二十一世紀を展望したときに、IT投資はさらに加速度的に拡大していくものと思われますし、またアジア経済も着実に回復し、またさらに拡大していくことと思われます。また、グローバル化が進むこうした世界に対応していくために必然的に雇用の流動化も起こってくる。これが現実でございます。IT革命を含めましてこうした産業構造転換への対応をどうされるのか、政務次官にお伺いいたします。

○政務次官(長勢甚遠君) 情報通信産業を中心にして今後景気が回復をし、また雇用が増加をしていくということを我々は大いに期待しておるわけでございますし、労働政策としてはその分野に円滑に労働移動が進むように努めていかなければならない、このように思っております。
 そういうことでございますので、情報通信分野を初めとする新規・成長分野、つまり今後雇用の拡大が期待される分野につきまして、緊急雇用対策に基づいて、昨年八月に新規・成長分野雇用創出特別奨励金制度を創設して、当該分野の事業主が前倒し雇用を行った場合には奨励措置を講ずるなど、積極的な雇用の創出に努めておるところでございます。
 また、こうした取り組みに加えまして、平成十二年度からは、新規・成長分野の雇用機会の創出と円滑な労働移動を図るため、新たに新規・成長分野雇用創出トータルプロジェクトを実施することといたしておるわけであります。
 具体的には、新規・成長分野での人材の確保や円滑な労働移動を促進するための創業や事業展開等に係る雇用管理相談や、求人求職情報の提供、職業紹介の実施などのサービスを行う新規・成長分野人材サービスセンターを設置するとか、また、そういう分野への円滑な労働移動を促進するために、新規・成長分野の事業主が新たに労働者を雇い入れるに際して、そのための移転や教育訓練にかかる費用を事業主が負担した場合には、その費用の一部を負担する新規・成長分野就職促進給付金制度を創設する。また、新規・成長分野に係る職業訓練の重点的実施を図る等のトータルプロジェクトをこれから実施しよう、このように思っております。
 こういうことを通じて、円滑に雇用機会が創出され、労働移動が行われるようにしていきたいと思っております。

○浜四津敏子君 ところで、アメリカではこの九年間、好景気の記録更新を続けております。これは九年前の経済政策の正しい選択によると、先般クリントン大統領がそのように発言しておられましたが、アメリカの好景気の要因を分析した調査リポートを日銀が先般まとめました。
 その調査リポートによりますと、一九九〇年代後半にアメリカの経済成長が高まった要因の約半分はIT投資だったという、その可能性があるということであります。九五年から九八年の平均成長率三・八%のうち、IT投資など技術進歩による押し上げ要因は一・八%もあったと試算しております。このIT投資をめぐる日本の課題につきましては、大胆な構造改革など、資本と労働力の有効活用を進めて、生産性向上につながる環境整備が必要だと指摘しております。
 IT革命ではアメリカに五、六年も日本はおくれているというふうに言われておりますが、このIT投資を主軸にした総合的な施策が欠かせないものと思っております。中でも、その技術、ノウハウをマスターした人材の育成が急がれる。これには産官学の連携も非常に大事だと考えます。
 そこで、政務次官にこの調査リポートについての御見解、そして今後の取り組みについてお伺いいたします。

○政務次官(長勢甚遠君) 恐縮ですが、調査リポート自体は余り今十分承知をいたしておりませんけれども、ITに関する人材の確保というか養成ということが重大な課題であるということは先生御指摘のとおりでありますし、我々もそういう考え方で、能力開発等について情報通信分野に重点を置いた施策を進めておるところでございます。
 具体的には、在職者に対する職業訓練九万二千人、離職者に対する職業訓練一万三千人を大体この情報通信分野の面で養成をしようということで計画をしておるわけでございます。また、高度な知識、技能の向上を図るために、通産省とも連携をいたしまして、地域ソフトウエアセンターを設けておりますとともに、コンピューターカレッジにおきまして情報処理技能者の養成を行っております。また、労働者が自発的にこういう分野で能力開発ができますように、職業訓練給付の指定をこういう分野に重点的に講座指定を行って、自主的な能力開発が行われるようにその施策も進めておるわけでございます。
 今後とも情報関連分野の人材養成に重点を置いた能力開発に取り組んでまいりたい、このように考えております。

○浜四津敏子君 ところで、いよいよ来月一日から介護保険制度がスタートいたします。ここ数年間、全国各地を回りまして、介護関連の施設の視察、あるいは関連の業者、あるいは全国自治体、準備状況などを見てまいりました。また、御意見も伺ってまいりました。各分野、さまざまな課題を抱えて、大変御苦労をされてこられました。この介護保険制度は、ならし運転をしながら、これからも一つずつ改善を続けていかなくてはいけないと思っております。
 先週、実は東京都内で、社団法人シルバーサービス振興会、こういうところが主催いたしましたシルバーサービス展、これが開かれておりまして、見てまいりました。そこでは創意工夫を生かした民間業者の多くの、またより質の高いシルバーサービスあるいは商品、これが展示してありました。これは日本最大規模の展示会だと言われております。大変民間活力というのは本当にすばらしいものだなということを実感いたしました。福祉分野が新産業分野として多くの雇用を創出しつつある、その現状の一端を見る思いがいたしました。
 また、この展示会場の一角では、こうしたシルバーサービス企業への就職、それから転職情報コーナー及び就職セミナーが行われておりました。実際に幾つかの資料をいただいてまいりましたが、例えばある福祉サービス会社の求人票を見ますと、ケアマネジャー求人数四十名、看護婦三十名、介護福祉士三十名、ホームヘルパー五百名、この求人をしておりました。
 これから本格的な高齢社会に十分に対応するためには、こうした新産業の発展、そしてまたこれに関連するマンパワーが相当数必要になってまいります。
 労働大臣、最後に、この新規雇用の開拓に具体的にどのように取り組まれるのか、お伺いいたします。

○国務大臣(牧野隆守君) 先生今御指摘のとおり、介護を中心とする福祉分野、先ほど御議論のありましたIT関係の分野、この二つが雇用関係から見ましても一番大きい分野でございまして、現実にお隣のアメリカの景気発展と雇用の関係を見ますと、ここが非常に大きい分野でございまして、私どもも横に実例を見ておるわけですから、その方向に進んで何ら間違いはないと。
 そういうことから、我が省としても、介護に関して積極的に雇用が確保されるように、そういう見地から、単に普通の営利法人といいますか、株式組織の法人でなくても、NPO等を含めてあらゆる組織がこの分野に入ってきてよろしゅうございますよ、逆に入ってきてくださいと。こういう場合に六人まで、何十人とは申し上げられませんが、六人までお雇いいただいたときには一年間賃金の二分の一を補助させていただいて、スタートダッシュをつけてその活動の基礎を確立してほしい。それからもう一つは、ホームヘルパー二級、三級等の養成講習を広げて、能力開発の推進をさせていただきたい。
 差し当たりこの二つの制度で私どもとしては雇用促進という立場から介護に取り組んでいきたい、こう考えています。