146-参-国民生活・経済に関する…-1号 平成11年11月19日

平成十一年十一月十九日(金曜日)
   午後一時一分開会
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   委員氏名
    会 長         久保  亘君
    理 事         畑野 君枝君
    理 事        日下部禧代子君
    理 事         阿曽田 清君
    理 事         松岡滿壽男君
                金田 勝年君
                岸  宏一君
                国井 正幸君
                斉藤 滋宣君
                田中 直紀君
                中原  爽君
                長峯  基君
                成瀬 守重君
                日出 英輔君
                松村 龍二君
                海野  徹君
                勝木 健司君
                谷林 正昭君
                堀  利和君
                簗瀬  進君
                沢 たまき君
                但馬 久美君
                山本  保君
                西山登紀子君
                清水 澄子君
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   委員の異動
 十月二十九日
    辞任         補欠選任
     金田 勝年君     吉村剛太郎君
     国井 正幸君     真鍋 賢二君
     長峯  基君     服部三男雄君
     成瀬 守重君     長谷川道郎君
 十一月十八日
    辞任         補欠選任
      谷林 正昭君    円 より子君
 十一月十九日
    辞任         補欠選任
      円 より子君    谷林 正昭君
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  出席者は左のとおり。
    会 長         久保  亘君
    理 事
                中原  爽君
                服部三男雄君
                海野  徹君
                沢 たまき君
                畑野 君枝君
               日下部禧代子君
                阿曽田 清君
                松岡滿壽男君
    委 員
                岸  宏一君
                田中 直紀君
                長谷川道郎君
                真鍋 賢二君
                松村 龍二君
                吉村剛太郎君
                勝木 健司君
                谷林 正昭君
                堀  利和君
                円 より子君
                簗瀬  進君
                但馬 久美君
                西山登紀子君
                清水 澄子君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        白石 勝美君
   参考人
       國學院大學経済
       学部教授     上村 政彦君
       早稲田大学社会
       科学部教授    岡沢 憲芙君
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  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○参考人の出席要求に関する件
○国民生活・経済に関する調査
 (海外派遣議員の報告)
 (「少子化への対応と生涯能力発揮社会の形成
 に関する件」のうち、諸外国における少子化問
 題への取組について)

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○会長(久保亘君) ありがとうございました。
 次に、岡沢参考人にお願いいたします。

○参考人(岡沢憲芙君) 早稲田大学の岡沢でございます。
 本日は、意見表明の機会をお与えくださいまして、心から感謝いたします。非常に時間が限られておりますので、早速話の内容に入らせていただきたいと思います。
 レジュメの一ページでございますけれども、上の四行に「少子化の挑戦にどう政策対応するか」という基本的な視点を書いておきました。
 平均寿命が延び、男女間平均寿命差が拡大し、それにつれて女性のライフスタイル、意識が変化しているのに社会システムが政策対応できないでいるということ。こうした問題を解決するためには、つまり人口構造や有権者構造の変容にどう政策対応するかという視点で考えるときには、労働空間、居住空間、通勤移動空間、余暇空間、社交空間、医療福祉空間、こうした側面の中でそれぞれの環境をどう整備していくかということが非常に重要な政策対応の視点ではないかと考えます。
 そのときに、多くの国々の中で最初に少子高齢化を経験したスウェーデンがある意味でヒントを提供してくれるかもしれない、そういう判断から恐らくきょう私にこういう意見表明の場が与えられたんだろうと理解しております。
 お手元の六ページに「北欧のカルチャー・ショック」という項目をつくってみました。北欧の家族というのと日本の家族というのはかなり違います。それを「北欧のカルチャー・ショック」という表現で並べてみました。北欧を旅する日本の人たちが経験した伝統的な北欧ショックというのは、こういうものがありました。
 一九六〇年代に初めて北欧を訪問した人たちは、次の人のためにドアをあけてくれる北欧人の姿に感動したものであります。フォー・ザ・ネクスト・パーソンという考え方が非常に圧倒的でございまして、六〇年代に初めて北欧に渡った私も最初にこれに感動いたしました。ドアをあけようとすると、必ず次の人のために来るまでドアをあけていてくれる。そして次の人が、スウェーデン語でタックと言うんですが、ありがとうと言って次の人のためにドアをあけていくというこういうのに感動したものであります。
 そして、八〇年代後半に北欧を旅した人は、恐らく公共のバスがおじぎをする姿に感動したと思います。バスや地下鉄がほぼバリアフリーの状態になって、停留所に高齢者がいたりベビーカーを引いている人がいると、バスの前の三分の一がおじぎをして乗りやすくしてくれるという姿に感動したものだろうと思います。
 そして、八〇年代から九〇年代の初頭にかけて初めて北欧を旅行した人は、男性がベビーカーを引いて職場や町の中を濶歩している姿に随分アジアとは違うなというふうに感動されたはずであります。
 そうした現象と並行しまして、アジアから来た長期定住者の経験する北欧ショックというのがございます。そこに書いておきましたけれども、大家族主義的な伝統を持つアジアの諸国から来た長期定住者は、住めば住むほどアジア的な意味でここには家族がないという表現をよくしたものであります。これは、日本から来た長期定住者もほぼ同じような経験を持っております。それほど伝統的な大家族主義的家族観で育った人にとっては相当大きなカルチャーショックであったと思います。
 そうした現象を並べてみますと、「スウェーデンの家族の特徴」として次の十一があると思います。一、高い離婚率。二、事実婚の通常化。この事実婚が定常化したために、今では同棲法、スウェーデン語で言うとサンボーラーゲンというのがあるんですが、同棲法をつくっております。そして、三番目が婚外子の一般化。四番目が養子縁組の簡素化。五番目がマルチハビテーションという、ワンファミリーが複数の住宅を持っていて、そしてそこを行き来する。御承知のとおり、モバイルテレホンが一番発達しているのは実は北欧諸国でございますから、そのマルチハビテーションの中で非常に新しい形の親密な家族間関係が構築されている、家庭内コミュニケーションが濃密な状態で維持されているということであります。
 そして、六番目が出生率が低い。少子化が進み、家族規模が縮小した。そして、伝統的な家族機能がどのような形で社会化されるべきなのかという議論が起こった。そこで出てきたのが高齢者介護の社会化ということと育児の社会化。具体的に言うと、子持ち家族への経済支援、児童手当と住宅手当に要約されるのではないかと思います。
 そして、スウェーデンの家族の第七の特徴は、海外に親類がいるファミリーが多いということであります。これは後でお話ししますけれども、スウェーデンはもともと非常に貧しい農業国家でございまして、ヨーロッパで一番貧しい農業国家、それが今世紀の初頭までスウェーデンの代名詞でございました。どの程度の貧しさかといいますと、当時、約百万人のスウェーデン人が海外に移住をいたしました。当時の人口が四百万から四百五十万の時代でしたから、全国民の四人に一人が海外に移民せざるを得なかった、それほど貧しかった農業国家であります。
 逆に言うと、多くのファミリーが海外に親戚を持つという新しい家族の形態が生まれた。それが家族構成の国際化という点で非常にユニークな役割を演じてきた。例えば、在外選挙権の問題であるとか在住外国人の地方参政権の問題なんというのはスウェーデンはいち早く導入した国の一つになるんですが、やはりその背景には今述べたように二十世紀の初頭、膨大な国民が海外に移民せざるを得なかったという歴史的な背景があるというふうに考えたらいいと思います。
 そして八番目の特徴は、男性の家事・育児分担が進んでいるということであります。これは大体六〇年代以後の現象でございまして、炊事、洗濯は大体男性がよく参加しております。
 そして九番目、これは先ほどの繰り返しになりますが、少子高齢化現象を先導した。そして、その過程で介護の社会化と育児の社会化が進んだということ。
 そして、スウェーデンの家族の十番目の特徴なんですが、これは独立時期が早いということ。比較的若い段階から自立教育が徹底しておりまして、個性重視の旺盛な自立精神、もしくは経済的自立を促進する教育、職業教育が早い段階から進められております。この自立というコンセプトに包含されるのは、自己決定、自己選択、自己責任、自己投資という考え方が非常に濃密でございまして、国や地方自治体が何かをやってくれると考える前に、まず自分は何ができるのかということを最初に考えてほしい。一般的なイメージとしての福祉国家というと、何となく人に優しい社会を考えそうでありますが、実際には逆でございまして、自分が労働可能なときに働いて納めた税金をいざというときに回収しているだけでして、ある意味では非常にきつい社会だというふうに言えるかと思います。
 いずれにしましても、自立精神が非常に旺盛でございまして、それが早い家離れ、早い親離れ、早い子離れ、早い夫離れ、早い妻離れというような現象で起こっておりまして、新しいスウェーデンの家族の特徴になっているというふうに言えるかと思います。
 そして十一番目の特徴は、経済的依存、扶養、丸抱え関係を超えた家族間の濃度の高い精神的きずなというのが北欧のファミリーシステムの非常に大きな特徴になっているということであります。例えば、高齢者センターに家族の者が入っていると、家族の者がそこに訪問する頻度は非常に高うございます。これは日本の高齢者センターとは全く逆でございまして、日本の場合はどうしても預けっ放しという傾向があるんですが、北欧は非常に濃密に家族とのつき合いがある。これは大きな特徴で、指摘できることではないかと思います。
 こうした現在のスウェーデンのファミリーが抱えている特徴の幾つかが、恐らくこれから日本が少子化問題に対して政策対応するときの考え方のヒントの幾つかにつながっていくんだろうというふうに漠然と考えていただければと思います。
 そして、その次に指摘しておかねばならないのは、スウェーデンが少子化の問題をどの時期からということですが、レジュメの五ページに書いておきました。
 スウェーデンは一九三〇年代にやはり少子化の問題に直撃されます。そして、ノーベル平和賞をもらいましたアルバ・ミュルダールという学者が「人口問題の危機」を書いたのが一九三〇年代でございまして、このころから実はスウェーデンでは少子化問題そして女性の社会参画の問題ということをワンセットで考えるようになった。つまり、女性が育児、家事、炊事という家庭内の労働と社会的労働という二つの荷重を強いられるようなシステムを続けている限り人口減という現象は避けられないかもしれないということを問題提起いたしまして、それ以来、スウェーデンの政党、労働組合というのはこの問題に取り組んできたというふうに言えるかと思います。
 そして、一九三〇年代から徐々に回復しまして、ずっと進んでいたんですけれども、一九六〇年代末、七〇年代の初頭からもう一度下降ぎみを描きまして、そして一九八〇年代の末に逆転、再上昇するまでしばらくの間、合計特殊出生率が低下していました。そして、一九九〇年代中庸になるとまた再び下がり始めまして、一九九八年、昨年記録的な低さ、一・五二になっておりますが、そのときの新聞は非常に衝撃的でございますけれども、しかしこれが大体底を見て、これからは傾向としては反転していくんではないかという予想が成り立っております。その背景にあるのは、非常に経済が今好調にあるということであります。
 レジュメの一ページに戻りますけれども、少子化問題というのはどういう視点から分析する必要があるのだろうかということをスウェーデンの経験から考えますと、こういう視点があると思います。
 一つは、少子化が労働市場に対してどういう影響を与えていくのか。第二の視点は、少子化というものが企業や経済構造にどういう衝撃を与えていくのか。第三の視点は、少子化が社会福祉体制に対してどういう衝撃を与えていくのか。第四は、家や家族、家制度に対してどういうような影響を与えていくのか。第五は、少子化が地域社会にどういう衝撃を与えるのか。第六は、少子化が教育環境にどのような影響を与えるのか。そして第七は、少子化が個人生活や市民哲学にどのような影響を与えていくか。こうした七つの包括的な視点で少子化の問題を語っていかないと問題は解決しない。ある一つの法律をつくってそれが解決をするという問題ではなさそうだということはスウェーデンの経験からも簡単に類推することができると思います。
 そうしますと、レジュメでいう二ページの一番下にアンダーラインの下から書いておきましたけれども、少子化問題に対する政策問題を考えるときには、まずスタートラインは、少子社会というのは望ましいのか、望ましくないのか。そして、それがだれにとって望ましい、もしくは望ましくないのかということに関する基本的合意がどのような形で形成されるんだろうか。地球社会全体としては人口が爆発して天然資源が枯渇し、また地球環境が汚染される、環境が破壊されるために、余りの極端な人口膨張は望ましくないといって人口抑制政策をとっているときに、一つの国が少子化は望ましくないという形で政策対応しようとするときに、それは国際的なコンセンサスをどのような形でとれるのかどうかということもやはり議論としてやっておく必要はあるんではないか。地球社会全体と日本の人口問題の相対的バランスはどうなのか、地域社会と企業社会にとってそれは何を意味するのか、男性と女性にとって少子化は望ましいのか望ましくないのか、そういうさまざまな視点からこの問題を考えておく必要があろうかと思います。
 そしてもしくは、その議論の結果、少子化そのものが望ましくないとしたら、出生率を高める政策をどう構築するかという次のステージに進むはずであります。そうすれば、構造や制度をどうさわっていくのか、また意識をどのように変えようとしていくのかという議論になっていくかと思います。そして、そのときの制度であるとか構造の改革の視点というのは、上に述べました一番から七番までのさまざまな領域でどう制度をさわっていくのか、変えていくのかという発想が必要ではないかと思います。
 一つの結論として、恐らく多くの先進工業国家がたどった結論だろうと思いますが、職場、家庭、地域社会で男女が役割と責任を分かち合い、共生する男女共同参画型への社会の構築が望ましいという結論になるんでしょうけれども、そうするとそのためにどういう政策が可能なのか。これは、やはり七つの政策領域でもう一度構築していく必要があるんだろうと私は思います。
 そして、政策対応の視点は三ページの頭に矢印の下に書いておきました二つだと思います。どう政策対応するかとすると、一つは産みたいのに産めない状態があるとしたらそれをどう克服するか、最終的に子供を産む、産まないというのは個人の自由の問題でありますから、余り公的な権力が介入できる問題ではありません。ただ、政治や行政が対応できる問題としては、産みたいんだけれども産めない事情があるとしたら、それを産むことが可能な状態にすることは政治や行政が大いにやらねばならない政策領域だろうと私は思います。そうすると、産みたいのに産めない状態があるとしたらそれをどういう形で克服するか、産むことへの不安を解消、縮小するという策をどう構築するかだろうと思います。そして、もう一つ踏み込んだ政策です。産んだ方が得と思える制度を充実してより合計特殊出生率を引き上げるということも可能かもしれないという視点は二つあると思います。
 この二つの視点でさまざまな政策を展開しても、にもかかわらず当初予定したほどの合計特殊出生率が引き上がらないとしたら、少子化が回避できないとしたら、少子社会にどう政策対応するかという問題を構築していく必要がある。これがやっぱり第三のステージの政策問題として考えていく必要がある。だから、ファーストステージ、セカンドステージ、サードステージ、それぞれ段階的な政策対応をしていく必要があるんではないかと思います。
 きょうは限られた時間でお話しするわけですので、当面の政策目標、産みたいのに産めない状態の克服というところに論点を絞ってお話をさせていただきたいと思います。
 産むことへの不安を解消、縮小するという作業であります。これにつきましては、七ページに厚生省人口問題研究所の出生動向基本調査第十回の調査結果、おなじみの調査がございます。「妻が理想の数の子どもをもとうとしない理由」であります。これについて順番に、もしかスウェーデンだったらこういう政策対応をしたでしょうねという視点を並べてみたいと思います。
 まず最初に、「子どもが生めないから」、一四・一%という現象がありますが、これについては、スウェーデンは養子縁組の簡素化と各種手当、補助金の養子、実子間格差を解消するという形で政策対応してまいりました。片方で予期しないときに子供が産まれた、それで困っている夫婦がいる一方で、本当は産みたいのに子供が産めないという夫婦がいる。その間にどのような形で養子縁組が可能なのかというようなことを考えると、その養子と実子の間のさまざまな格差を是正するという形で政策対応するというやり方が一つあります。
 そして、その次です。「高年齢で生むのはいやだから」、二九・六%と出ておりますが、嫌な女性に強制はできない。ただ問題は、若いときに産みたかったのに産めなかった理由を分析して政策対応することは可能だろうという姿勢をとるでしょうねということは推測できます。
 そして、いよいよその次からパーセントが多い項目なんですが、「子どもの教育にお金がかかるから」、二八・三%です。一人当たりGDPが二万五千ドルを超え、世界のGDPの一五%を生産する堂々たる経済大国で、次の世代の子供を産むということに対してこれだけ大きな経済的理由が出るというのは、やっぱり何か政策対応が妥当ではないなと私は思います。子供の教育にお金がかかるからという問題については、教育環境の整備、それは生涯教育制度の充実であるとか、奨学金制度の充実という形で対応できると思います。ちなみに、スウェーデンは、幼稚園から大学院まで授業料はただになっております。
 その次です。「一般的に子どもを育てるのにお金がかかるから」、これがやっぱり最頻度で三〇・一%であります。やはり、経済大国なのになぜお金がかかるから子供が産めないという状態になっているのか。とすると、今世界に約二百九デモクラシーと称する国があるんですけれども、これほどの経済力を持っている国の親がこういう悩みを持っているわけですから、ほかの国においてをやということを考えると、もう少し積極的な一歩踏み出した形の政策対応を実際にやっていく必要があるんではないかと思います。そのためには、保育所の整備、児童手当の充実、出産・育児休暇制度の充実や児童看護休暇制度の充実という形で政策対応が十分可能ではないかと思います。
 そして、その次のパーセント、二〇・六%が「育児の心理的・肉体的負担に耐えられないから」という理由がありますけれども、これについては保育所の充実という側面が一つと、あと一つは、子供を産むときのもう一人のパートナーである男性が育児過程に参加してくれないということが非常に大きな精神的負担になっているとするならば、育児・家事過程に男性が参加することによって、労働環境と家庭環境、そして都市環境を整備しながら、男性も女性も育児過程に参加する、家事過程に参加するという環境を整備することによって、女性の育児に対する精神的心理的な負担がかなりの程度解消されるのではないかというふうにスウェーデンなら解釈するでしょうね、もしくは政策対応するでしょうねということは言えるかと思います。そのためにやることは労働時間の短縮だろうと思います。そして、二番目が年休の延長と完全消化、そして三番目が幼児を持つ親の労働時間選択制度、五番が児童看護休暇制度、バリアフリーの都市計画、そしてジェンダーフリーの住宅という形で、男性も女性も育児過程に参加できるような環境を整備していくだろう。実際問題として、後でまとめながらお話しさせていただきたいと思うんですが、やっぱり一番大きな突破口は私は労働時間の短縮ということだろうと思います。
 そして、その次が「家が狭いから」が一二・四%なんですが、これは住宅政策の充実で十分対応できるわけであります。住宅補助金の充実。スウェーデンがやっていることは、家族数に応じた優先的住宅提供と補助金の提供というのをやっていますね。つまり、子供が何人のファミリーなら何平米までの住宅にできるだけ住んでください、一人一人の子供を余り狭い部屋に住まわせないでくださいという形で、ファミリーの大きさによって適正な住宅の規模というものを決めていまして、そしてそれに対して補助金を出していくという形をしております。
 最後が「自分の仕事に差し支えるから」、これが九・二%ですが、これは労働環境、女性環境の整備でありまして、所得保障の少ない出産・育児休暇がバリアになっているんだとしたら、出産・育児休暇の所得保障をスウェーデン並みに八〇ないしは八五%に引き上げるなんという政策も必要でしょう。日本の場合にはこれがあるんです、出産・育児休暇を一回目とるときには何となく職場の雰囲気もいいよねと言うんですが、それが二度三度になると何となく速やかにとらせてもらえない、嫌みの一つも言われる可能性があると。そのときにやっぱり出産・育児休暇、今所得保障がわずか二五%しか出ていないんですから、できれば二度三度でもどうぞどうぞという歓迎するムードがあれば随分精神的な悩みは解消できるんだなという気がいたします。そして、その次ですが、男性が出産・育児休暇を気安くとれない職場のムードというのもあろうかと思います。これをどのような形で解消していくかだろうと思います。
 そのようなことをずっと進めていって、結局はきょうのスウェーデンの少子化対策はどうなったのかということなんですが、それを子供を産む性である女性の環境というところでまとめてみたのが十二ページであります。そして、そうしたスウェーデンの女性環境をつくり上げた背景、理由が十三ページであります。
 十二ページについて御説明いたしますと、結局言おうとしていることは、結婚ハードル、出産ハードル、育児ハードル、高齢者介護ハードルを縮小もしくは除去しようとした。男性と女性が同じ機会を得るという形をとった方がフェアではないだろうかという発想をした。
 そして、その四つのハードルを取るために具体的にどう政策対応したかというと、そこに述べました一から十九。一、妊娠中の部署移動申告制度。二、四百五十日間の出産・育児休暇。この所得保障は景気の変動によって大きな差があります。七五%から九〇%ぐらいの差であります。今大体八〇から八五です。日本のマックスが二五%というのと比べると、やっぱり圧倒的な量だろうと思います。最初の三百六十日が八〇から八五%提供されます。三、児童看護休暇制度。四、保育所の整備。五、幼児を持つ親の労働時間選択制度。六、姓の選択・継続制度。七、同棲法。八、離婚自己決定権。九、出産・中絶自己決定権。十、男女機会均等オンブズマン制度。十一、長期の有給休暇と完全消化。十二、短い労働時間。十三、教育休暇制度。十四、学生ローン制度。十五、労働経験大学入学制度。十六、近しい人の最期をみとる介護休暇。十七、ホームヘルパー制度の充実。十八、グループホームの普及。十九、バリアフリーの都市計画。この一番から十九番の環境の中でいわゆる男女共同参画型社会をつくり上げたというふうに言えるかと思います。
 北欧の政治学者、私がお話しするのはほとんどが政治学者なんですが、政治学者と話をするとき、どれが一番大きな突破口になったでしょうかと言うと、ほとんどの人がやっぱり二番と四番を挙げます。四百五十日間の出産・育児休暇、そして手厚い所得保障が、安心して出産、育児と労働が両立可能な環境に自分たちはいるんだという安心感を与えているということ。それと手近に非常に多様な保育所が準備されている。そのために安心して育児と労働が両立できるというふうに答える人が多いと思います。
 あと教育環境からいうと、十三、十四、十五というのは非常に重要な意味を持っております。これは平均寿命が延びたにもかかわらず、女性は労働の場を出産、育児のたびごとに一度一時的に退出するわけですから、若いときに学んだ学問がもう一度再就職するときに使い物にならないときに、その精神的な不安を解消するために生涯学習環境を整備して、職場と家庭と大学というもの、教育機関を何度も往復できるような環境につくった、これはこれからの日本の教育制度を考えるときの一つの重要な視点の一つになるんだろうと思いますが、十三、十四、十五があります。
 そして、十三ページにはそうした環境を生み出した背景、理由について書いておきました。
 この中で一番重要な問題は何かというと、理由の六、労働環境の整備、とりわけ短時間労働、長期の有給休暇と完全消化、雇用安定法、そして出産・育児休暇制度、そして幼児を持つ親の労働時間選択制度、そして最後に組織内情報共有化と書いておきましたが、この組織内の情報共有化ということをやらないとなかなか勤労者が年休をとれない。自分がいないと会社が困るというためになかなか休暇をとれないために、北欧諸国は組織内情報共有というのを非常に進めておりまして、会社を休んでも周りがファイルナンバーを見れば十分ピンチヒッターになれるという状況を持っています。
 これはもともと情報公開が非常に激しく展開された国で、世界で最初に出版の自由法が制定されたのが実に一七六六年、日本の江戸時代の中期にはもう既に出版の自由法を世界で最初に法文化した珍しい国なんですが、その伝統があるために情報公開が非常に進んでいる国なんです。社会も情報公開が進んでいるように組織内情報公開も非常に進んでおりまして、情報を共有化することによって勤労者が比較的簡単に年休をとれる、私がいなくてもだれかが対応できるという状態をつくっていった。これは非常に重要なことだろうと思います。
 そして、私自身は少し自分なりにこういう対応があるというのがあるんですが、ちょうど時間でございますので、一段落ここでさせていただきたいと思います。
 以上です。

○会長(久保亘君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑は午後四時ごろをめどとさせていただきます。質疑を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って質疑を行うようお願いいたします。
 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。