145-衆-内閣委員会-5号 平成11年06月08日

平成十一年六月八日(火曜日)
    午前十時一分開議
  出席委員
   委員長 二田 孝治君
   理事 植竹 繁雄君 理事 小此木八郎君
   理事 小林 興起君 理事 萩野 浩基君
   理事 佐々木秀典君 理事 河合 正智君
      大石 秀政君    佐藤 信二君
      田中 和徳君    谷川 和穗君
      虎島 和夫君    能勢 和子君
      桧田  仁君    平沢 勝栄君
      矢上 雅義君    石毛えい子君
      河村たかし君    松本 惟子君
      山元  勉君    倉田 栄喜君
      山中あき子君    松浪健四郎君
      瀬古由起子君    中路 雅弘君
      辻元 清美君    笹木 竜三君
 出席国務大臣
        国務大臣
        (内閣官房長官
        )       野中 広務君
 出席政府委員
        内閣総理大臣官
        房審議官    佐藤 正紀君
        総務庁人事局長 中川 良一君
        外務省経済協力
        局長      大島 賢三君
        大蔵大臣官房審
        議官      福田  進君
        厚生大臣官房総
        務審議官    真野  章君
        厚生省健康政策
        局長      小林 秀資君
        中小企業庁長官 鴇田 勝彦君
        自治省行政局選
        挙部長     片木  淳君
 委員外の出席者
        参議院議員   江田 五月君
        参議院議員   海老原義彦君
        参議院議員   入澤  肇君
        内閣総理大臣官
        房男女共同参画
        室長      名取はにわ君
        警察庁刑事局捜
        査第一課長   深草 雅利君
        防衛庁人事教育
        局人事第二課長 枡田 一彦君
        法務省人権擁護
        局総務課長   幕田 英雄君
        文部省高等教育
        局大学課長   清水  潔君
        文部省体育局競
        技スポーツ課長 高杉 重夫君
        厚生大臣官房審
        議官      辻  哲夫君
        厚生省児童家庭
        局企画課長   星野  順君
        厚生省児童家庭
        局母子保健課長 小田 清一君
        労働省労働基準
        局賃金時間部長 鈴木 直和君
        内閣委員会専門
        員       新倉 紀一君
委員の異動
六月八日
 辞任         補欠選任
  越智 伊平君     大石 秀政君
  亀井 静香君     能勢 和子君
  武藤 嘉文君     田中 和徳君
  鹿野 道彦君     石毛えい子君
  北村 哲男君     松本 惟子君
  石田幸四郎君     山中あき子君
  鰐淵 俊之君     松浪健四郎君
  深田  肇君     辻元 清美君
同日
 辞任         補欠選任
  大石 秀政君     越智 伊平君
  田中 和徳君     武藤 嘉文君
  能勢 和子君     亀井 静香君
  石毛えい子君     鹿野 道彦君
  松本 惟子君     北村 哲男君
  山中あき子君     石田幸四郎君
  松浪健四郎君     鰐淵 俊之君
  辻元 清美君     深田  肇君
六月七日
 戦争被害等に関する真相究明調査会設置法の早期制定に関する請願(古堅実吉君紹介)(第四二一九号)
 元日赤救護看護婦に対する慰労給付金に関する請願(児玉健次君紹介)(第四二二〇号)
は本委員会に付託された。
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 男女共同参画社会基本法案(内閣提出第五二号)(参議院送付)
    午前十時一分開議
     ――――◇―――――

○二田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、男女共同参画社会基本法案を議題といたします。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本案審査のため、来る十日木曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○二田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――

○二田委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。能勢和子君。

○能勢委員 おはようございます。本日は、内閣委員会におきまして男女共同参画社会基本法についての質疑の場を与えていただきまして、まことにありがとうございました。私は、自由民主党の能勢和子でございます。
 平成十年、昨年の二月十六日、第百四十二回通常国会の場におきまして、当時の総理大臣でありました橋本総理より、施政方針演説の中でこのように述べられていました。
  個人の幸福と社会の活力をともにかなえるためには、個人が相互に支え合い、助け合う社会の連帯を大切にし、人権が守られ、差別のない公正な社会の実現に努力しなければなりません。
  中でも、男は仕事、家事と育児は女性といった男女の固定的な役割意識を改め、女性と男性がともに参画し、喜びも責任も分かち合える社会を実現することは極めて重要であり、そのための基本となる法律案を来年の通常国会に提出いたします。労使の方々にも、働く女性が性により差別されることなくその能力を十分に発揮することができるよう、御理解と御協力をいただきたいと思います。
というふうに大変感動を与えていただいた施政方針を今思い出すわけでありますが、改めて、男女共同参画社会とは、女性のためだけのものでなく、まさしく男女にとって大変重要なテーマだと思っております。そして今、このことが、まさに本年度、この委員会において、この土俵に上がって審議をされるということを、私も感銘を持って受けとめておるところでございます。
 さて、この男女共同参画社会とは、法律によりますと、男女が、社会の対等な構成員として、みずからの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができる、そして、かつ、ともに責任を負うべき社会を形成するというふうに規定されています。
 大変もっともなことだと思いますが、この男女共同参画社会とは、一体、ソフトにといいますか、やわらかく、わかりやすい言葉で申すならば、どんな社会をイメージされるのか、官房長官のお考えをお聞きしたいと思います。

○野中国務大臣 男女共同参画社会の実現ということは、少子高齢化など社会経済情勢がとみに急速に変化をしております今日にありまして、男女の人権が尊重をされ、豊かで活力ある社会を実現していきます上で、二十一世紀を決定する大きなかぎを有するものと考えておるところでございます。
 能勢委員お尋ねの男女共同参画社会のイメージといたしましては、女性と男性が対等なパートナーとして、性別にかかわらず、おのおのの個性を生かしながら、さまざまな分野に参画し、喜びも責任も分かち合える社会であると私は考えておるところでございます。

○能勢委員 ありがとうございました。
 今、担当大臣からもお話がありましたように、男女共同参画社会というのは女性のためだけではないと思います。まさに男性にとっても男女共同参画社会の形成は重要ではないか、私はそのところを強調したいのでありますが、官房長官、それについて、ぜひ強力なお答えをいただきたいと思っています。

○野中国務大臣 お説のとおりでございまして、男女共同参画社会とは、男女が社会の対等な構成員といたしまして、みずからの意思によって社会のあらゆる分野におきます活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、ともに責任を担うべき社会であろうと思うわけでございます。
 これまでは、男性は仕事に追われ、家庭を振り返る余裕がなかったのではないかと考えるわけでございます。そういたしました生活のあり方は、真に豊かな生活とは申すことができないのでございます。男女共同参画社会の形成は、男女を問わず、家庭や地域とのつながりも大切にしながら、個人がその能力と個性を十分に発揮することができる社会を形成していくことでございます。能勢議員御指摘のように、男性にとっても重要な問題であると考えておるところでございます。

○能勢委員 ありがとうございました。
 その認識を官房長官が大変強く持ってくださっておりますのを私ども心強く思うわけでありますが、国会のみならず社会、今、この男女共同参画社会というのが話題になる中で、女性がいかに男性に追いついていくか、確かにその側面もあるわけでありますが、そういう認識ではなくて、まさに男女ともにこの社会を形成していくんだということを改めて今お聞きして、大変力強く思うところでございます。
 そして、この男女共同参画社会の形成は、大変、その人権という側面もあるというふうに強くあちこちにも出ておりますが、単にそれだけでなくて、私は、この男女共同参画社会の形成というのは、少子化問題、今大変大きな問題になっている少子化社会ですね、少子化問題に対応していく上でも重要なことではないか。どうしようもない少子の問題、これから対策を練るとしても、実際に出てきます少子化社会というのが、二十一世紀、私たち日本で起こってくるわけですが、それについてもこの参画事業というのは大変大きいというふうに考えていますが、そのところ、いかがでしょうか。政府委員の方に。

○佐藤(正)政府委員 お答え申し上げます。
 男女共同参画社会の形成、これは、先生おっしゃるとおり、人権という側面が非常に強いわけでございますが、単にそれだけにとどまりませんで、いろいろな効果があるものと考えております。
 一つ、先生のおっしゃられました少子化への対応でございますが、少子化への対応方針といたしまして、例えば人口問題審議会、あるいは総理の私的懇談会でございます少子化への対応を考える有識者会議におきましても、職場や家庭における男女共同参画の必要性が指摘されておりまして、少子高齢社会に対応する上でも、男女共同参画社会の形成は、二十一世紀の我が国社会を決定する大きなかぎとなる意義を有するものであると考えておるところでございます。

○能勢委員 ありがとうございました。
 その認識をぜひ一緒に持ちながらこの問題にかかわっていかなければいけないというふうに思います。
 さらに、男女共同参画社会の形成は、経済の成熟化への対応という側面でも大変意義があるのではないか、意義が大きいというふうに考えますけれども、それについてどのようにお考えでありましょうか。

○佐藤(正)政府委員 この点に関しましても先生の御指摘のとおりでございまして、女性と男性が対等なパートナーといたしましてさまざまな分野に参画し、その個性と能力を十分に発揮できます男女共同参画社会の形成は、少子高齢化が進みまして生産年齢人口の減少が見込まれるとともに、経済活動の成熟化によりまして新たな発想が求められるような世の中にありましては、大変大きなかぎとなる意義を有すると考えております。
 このため、政府といたしましては、この男女共同参画社会の形成を政府の重要課題の一つとして取り組んでまいりたい、こう考えておるところでございます。

○能勢委員 今でき上がった、提案されました法案を見ましても、また皆様方の御答弁を聞く中で、男女共同参画社会は、まことにその意義は大きいわけであります。男女共同参画社会の基本となります法案を成立させながら、新しい二十一世紀に向かって立ち向かっていかなければいけませんが、しかし、この法律をいかに実効あるものにしていくかというのは今後の取り組みにかかってくると思います。現実に、今の社会を見ますときに、大変厳しいということを感じるのであります。
 そこで、少しお尋ねしたいのですが、このたび、この四月に行われました統一地方選挙の結果を教えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。特に、その中で、女性が男性の中で占める割合を中心にお願いします。

○片木政府委員 お答えをいたします。
 今回の統一地方選挙でございますが、立候補者の数、これは全体で、道府県、市町村合わせましてでございますが、四万一千六百七十三人の方が立候補されておられます。そのうち、女性の立候補の数は三千八十八人ということで、四万一千六百七十三人のうちの三千八十八人ということで、比率は七・四%となっております。当選者でございますが、全体では三万四千七百二十九人、うち女性の方が二千三百八十四人ということで、その比率は六・九%でございます。
 さらに、ちょっと詳しく申し上げますが、内訳を見てみますと、道府県議会議員の選挙における女性の立候補者は三百二十三人でございまして、八・〇%、当選者が百三十六人で五・一%となっております。
 都道府県知事選挙における女性の立候補者、四人の方が立たれておられまして、全体では六・九%という数字になりますが、御案内のとおり、女性の当選者はありませんでした。
 また、市区町村議会議員の選挙における女性の立候補者総数は二千七百四十二人で、全体の七・六%でございます。女性の当選人数はそのうち二千二百四十五人の方で、七・二%となっております。
 また、市区町村長選挙におきます女性の立候補者数は十九人の方で、全体の一・四%となるわけでございますが、女性の市区町村長さんの当選人数は三名でございまして、〇・四%となっております。
 以上でございます。

○能勢委員 新聞では女性の進出が大変大きく取りざたされましたが、きちっと数を見ますと、県、市町村におきましても、女性が立候補する土壌がやはり十分でない。立候補者の数も、わずか一割に満たない七・四%。さらに、その土壌の中でも女性がなかなかそこまでいかなくて、当選者も六・九%と本当にわずかであります。
 ちなみに、この四月に総理府が出しました男女共同参画の現状と施策という報告書を読ませていただきまして、「政策・方針決定過程への女性の参画が後れている日本」という見出しで出ておるわけでありますが、いかに厳しいかということであります。政策、方針の決定過程への女性の参画が一つ大きな女性の進出の目安になると思います。
 皆様御案内のとおり、人間開発に関する指標のうち、女性が積極的に経済界や政治生活に参加し、意思決定に参加できるかどうかをはかる指標でありますGEM、GEMというのは国会議員に占める女性の割合、行政職及び管理職に占める女性の割合、専門職及び技術職に占める女性の割合、女性の稼得所得の割合という四つの要素から算出された数値でありますが、これが先進国において大変寂しいと思いました。
 この中で、一九九八年に出されました報告書によりますと、一位がスウェーデン、次いでノルウェー、そしてデンマークとなっております。翻って、一九九五年、日本はどうであったかと申しますと、一九九五年は、日本は二十七位ということです。ところが、一九九八年、三年後には、日本は三十八位ということになっているわけであります。
 このようにいわゆる順位を落としているという状態を見ますと、政策決定あるいは方針決定に女性の参画が大変おくれているというふうに見るわけでありますが、この状況をどう読み、どう打破していかなければならないかということについてお尋ねしたいと思います。

○名取説明員 お答えします。
 今先生から御指摘されましたGEMにつきましては、お話がございましたように、一九九八年、ことしの白書に出しましたものにつきましては、百二カ国中第三十八位となっておりまして、先ほどのお話から見ますと、随分順位は落ちております。伸びはしておるのですが、ほかの国の方が伸び率が高いということで、相対的に下がってきております。
 特に、平成十一年度の男女共同参画の現状と施策、いわゆる男女共同参画白書におきましては、我が国はGEM順位の高い国々に比べますと、特に国会議員に占める女性の割合、そして行政職、管理職に占める女性の割合が低いということを指摘してございます。

○能勢委員 そのような結果を受けて、それを打破するためには具体的にどうしなければいけないかということが今後の課題でありましょうし、国会議員につきましては、各政党における努力ということになろうかと思いますので、これはさておきまして、政策等の立案、方針決定過程の男女共同参画ということが大変重要と私は考えております。
 本法案の第五条を受けますと、これは、政府は女性国家公務員の採用とか、あるいは登用にどのように取り組むお考えなのか。現在、本省における女性の課長級クラス以上の管理職は一・一%というふうに私は認識しているのですけれども、この取り組みについて、官房長官、お願いしたいと思います。

○野中国務大臣 男女共同参画二〇〇〇年プランにおきましては、女性国家公務員の採用、登用、職域拡大及び能力開発を一層推進することとされまして、その際、現状におきまして、定期的にこれを把握し、分析しながら、計画的に取り組むことが効果的であるとの観点から、採用、昇進等の状況を定期的に調査、公表いたしまして、改善が必要とされる課題への取り組みを示した計画を策定することを検討するというように掲げられておるところでございます。
 また、ことしの三月十六日の国家公務員制度調査会におきまして、公務員制度改革の基本方向に関する答申が出されたわけでございます。公務部門におきまして、「国家公務員法の定める平等取扱と成績主義の原則に基づき、男女共同参画の推進に向けて各種のポジティブアクションを推進し、性別によらない開放的な人事運用の一層の促進を図っていくことが必要である。」ことなどが提言をされておるわけでございます。
 委員がおっしゃいましたように、女性国家公務員の採用あるいは政策参加というのはまだまだ道遠しでございまして、政府といたしまして、かかる提案等を受けまして、引き続き、女性国家公務員の採用、登用等の促進について着実に、かつ積極的に努力をいたしてまいりたいと考えておるところでございます。

○能勢委員 ありがとうございました。
 大変心強い御回答をいただきましたので、必ずや二十一世紀に向けて、そうした中に能力のある、力のある女性の管理職が生まれること、育つことを期待申し上げます。
 今述べましたように、このような現状を踏まえますときに、二十一世紀の大きな、また大変今の日本の土壌から、重い扉をあけるかぎとなりますこの男女共同参画社会基本法案でありますが、このことを思いますと、今後どのように運用していくか、これが私は一番のかぎだと思います。この法案がいかに実効あらしめるためにということを思うわけであります。
 その中で、幸いにいたしまして、男女共同参画社会基本法は、いわゆる先ほど申されましたポジティブアクションを明確に規定しているところを私は大変評価しているところであります。この法案を実効あらしめるために、国はどのようにポジティブアクションを起こし取り組む所存かをお尋ねしたい。

○野中国務大臣 お尋ねのいわゆるポジティブアクションにつきましては、この法案におきまして積極的改善措置というように規定をされておるわけでございまして、活動に参加する「機会に係る男女間の格差を改善するため必要な範囲内において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供することをいう。」とされておるところでございます。この積極的改善措置につきましては、個々のケースごとに適宜適切に実施されることが期待をされるところでございます。
 国における積極的改善措置の具体例といたしましては、例えば国の審議会等委員への女性の参加の促進が挙げられると考えるわけでございます。

○能勢委員 私もこの法案の定義の中の二の積極的改善措置のところに大変意味があるなと思って読んだわけでありますが、男女のいずれか一方に対して、必ずしも女性ばかりでなく、将来どちらか差別を受ける片方、弱い片方について、積極的にその機会を提供するということが書かれております。今官房長官がお答えいただきましたように、そうした審議会、さまざまな場面に、国のレベルでも女性が登用できる、そうした能力のある女性が出るというふうなことを期待申し上げるわけであります。
 そしてもう一つは、国だけで果たして男女共同参画社会が打ち出せるかというと、なかなか難しい。このポジティブアクションは男女共同参画社会の形成にとって重要な課題であり、国だけでなくて地方公共団体にも積極的に取り組んでいただかなければいけない。その中で、この法案に地方の責務を規定してありますが、いわゆるポジティブアクションはその責務に含まれているのでありましょうか。

○佐藤(正)政府委員 この法案の中で、「国は、」「男女共同参画社会の形成の促進に関する施策(積極的改善措置を含む。以下同じ。)を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。」と規定をされております。第九条におきまして、「地方公共団体は、」「国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。」こういう規定がございます。
 この九条の地方公共団体の責務におきます国の施策に準じた施策とは、国が講じている施策とおおむね同様ないし類似の施策を講ずることでございまして、第八条、国の責務におきまして積極的改善措置を規定しておりますので、これは当然ながら、地方公共団体の施策の中に含まれると解しております。

○能勢委員 ありがとうございました。
 今、国から地方へときちっと男女共同参画社会の基本法が流れていくということでありますが、地方自治体の自主性を尊重しながら、その意識をどう高めていくかということは大変大事な問題と思います。
 その中で、男女共同参画宣言都市というのをあちこちで見るわけですが、現在この男女共同参画宣言都市というのはどのような状況でありましょうか。そして、その宣言をした都市にはどんな役割とか機能があるのか。あるいは、今後この男女共同参画宣言都市をどのように広めていきながら、地方の意識改革といいますか、高めていくということに取り組むのか、お尋ねしたい思います。

○佐藤(正)政府委員 国におきましては、市区町村を挙げまして男女共同参画社会づくりに取り組むことを奨励いたします男女共同参画宣言都市奨励事業を行っておりますが、今までに宣言をされましたのが二十四自治体ございます。
 これらの宣言都市間の連帯、交流を深めるための全国男女共同参画宣言都市サミット、また各ブロックにおきまして男女共同参画社会の形成のための諸活動が一層促進されるよう機運を醸成するための男女共同参画推進地域会議等を実施しておるところでございますが、今後とも、これらの事業等を通じまして、地方公共団体における男女共同参画社会の実現に向けての意識が自主的に高まってまいりますように努めてまいりたいと考えております。

○能勢委員 ありがとうございました。
 これは本当に真剣に取り組まなきゃなかなか意識改革はできにくい、そして土壌もそういう土壌にならない。そこには国民一人一人の考えもあるかと思いますが、地方公共団体とやっていかなきゃいけないと思っています。
 そして、男女共同参画社会というのは、大変魅力のある言葉の中に、私自身も子育てをしながら仕事と両立をやってきたわけでありますが、これはなかなか大変厳しいものがあります。法案の第六条では、家庭と他の活動の両立が基本理念として規定されていますが、他の活動というのは何であり、そして本条でなぜ他の活動とまで規定しております理由についてお尋ねしたいと思います。

○佐藤(正)政府委員 男女共同参画社会を形成いたすためには、男女が家庭生活だけで拘束されていてはいけないということで、他の活動と両立しなきゃいかぬということが非常に重要でございます。そういうことから、この旨を基本理念として明記したということでございます。
 現実に見ますと、子の養育でございますとか、家族の介護等の家事の多くにつきましては、女性が担っている現状にございます。男女がともに社会に参画していくためには、家族を構成する男女が相互に協力するということがまず大事でございますが、また社会の支援を受けながら家族の一員としての役割を円滑に果たし、それと同時に家庭生活と他の活動の両立を図っていくということが男女共同参画社会の形成を促進するための重要な課題だと思っております。
 ここで他の活動と書いてございますが、これは家庭生活における活動以外のものをすべて含むわけでございますが、職域でございますとか、学校、地域その他のあらゆる分野における活動を指しております。具体的に申しますと、働くこと、それからまた通学をしたり、地域活動を行ったり、あるいはボランティアとして活動されることなど、こういう広範囲なものを指していると考えております。

○能勢委員 そういう意味で、かつての男は外で働き女は家庭という認識から、家庭と他の活動、だから大変広範なことがここできちっと規定されているわけでありますので、私たちは本当にそのような社会の実現に向けてやらなきゃいけないというふうに思いました。
 そしてまた、角度を変えて見たときに、男女共同参画社会というのは、性の差別を受けることなく、平等で能力のある者がともに参画できる社会を築いていこうといいますけれども、実際には、そこに男と女の体力の違い、生物体としての違いというのがあるわけでありまして、暴力に関しては、大変女性が暴力を受けるという問題、女性が男性に暴力というよりも、女性が男性から暴力を受けるという重要な問題があります。
 この法案にもそのような意味は含まれなきゃいけないということで、私はこの法案の中の男女の人権尊重という部分でこれを意味しているだろうというふうに解釈しておるわけでありますが、基本法ではそのことをどのように言おうとしているのか、いかがでありましょうか。よろしくお願いします。

○佐藤(正)政府委員 女性に対します暴力の問題、一九九五年の第四回世界女性会議におきまして、行動綱領の十二の重大問題領域の一つとして取り上げられるなど、近年特に重大な問題として国際的に認識されるようになってきております。
 我が国におきましても、重要な問題として取り組んできたところでございます。具体的に、家庭内の暴力、これが刑事事件になったりした場合などの被害者の比率を見ますと、圧倒的に女性が多いということがございまして、これは大変な重大問題だろうと思います。
 本法案におきましては、基本理念といたしまして第三条におきまして、男女の個人としての尊厳が重んじられることなど男女の人権の尊重を盛り込んでおるところでございますが、この基本理念に照らせば、女性の基本的人権の享受を妨げ自由を制約する女性に対する暴力というものは決して許されるべきものではない、このように考えております。

○能勢委員 私も、この男女共同参画社会法案の中に、言葉として暴力という言葉が出る必要は、法案でありますからないと思うわけですが、男女共同参画社会の精神の根底には、そうしたことも含めたいわゆる人間としての尊重、いわゆる男女ともに基本的人権は尊重されるということをもって暴力に対する分もサポートできるというふうに思っているところであります。
 さて、私は、この法案に目を通す中で、男女共同参画社会の形成に当たってあらゆる施策に目を向けていくことが重要であるわけでありますけれども、「施策の策定等に当たっての配慮」という第十五条でありますが、これは、あらゆる施策に目を向けていく、男女共同参画社会が内閣にあって、すべての省庁にまたがって効果を出さなければ、国としての男女共同参画社会というのはできないというふうに思うわけであります。
 例えば建設省における地域の開発、あるいは通産省におけるさまざまな新しい仕組みにしても、その施策の中に必ず男女共同参画社会の理念が生かされているかどうかということにおいて、その配慮という中に多分この意味を持っていると思うのですが、私は、今後具体的にこの法案が生きるためにはこの十五条の役割は大変大きいであろうと思います。そのことについて、どのようにこの趣旨を持っていらっしゃるか、強い御支援の声が、御支援といいますか、その政策について考えていることを聞かせていただきたいと思うわけでありますが、いかがでしょうか。

○佐藤(正)政府委員 男女共同参画社会を形成していく上では、当然のことながら、男女共同参画を推進するための施策を総合的、計画的に進めていくことが大事でございますが、そのほかに、国及び地方公共団体の施策は社会経済活動全般を対象に展開されまして、当該施策に伴って生ずる影響も広範多岐にわたります。直接的に男女共同参画社会の形成の促進に関係する施策でございませんといっても、結果的に男女共同参画社会の形成に影響を及ぼすこともあり得るわけでございます。そのような影響に対しまして適切に配慮していく必要がある、こう考えておるわけでございまして、本条はこのような考え方に立ちまして、男女共同参画社会の形成に影響を及ぼすと認められる施策の策定、実施に当たりましては、男女共同参画社会の形成についての配慮を行うべきことを定めたものでございます。
 この観点によりまして、この法案の基本理念にのっとりまして、各分野の施策につきましていろいろ御検討をいただきたいと考えておるところでございます。

○能勢委員 そういたしますと、男女共同参画社会の形成に当たっての配慮があるということになれば、さまざまな関係する法律といいますか法案については十分関与できる組織になっているということでしょうか。組織的にもそういうことが関与、意見を述べることができるということでありましょうか。

○佐藤(正)政府委員 総理府の組織につきましては各省の事務の連絡調整をするということになっておりますが、さらに省庁再編が行われますと、男女共同参画会議におきまして、各省庁の施策についての調査及び評価、監視といいますか、そういう機能を持つような形に相なりますので、先生のおっしゃったようなこともでき得ると考えております。

○能勢委員 ありがとうございました。
 新しい省庁についてもまたお尋ねいたしますけれども、そのような形になっていくことを大変期待申し上げます。
 そして今、国、地方と、男女共同参画社会、この基本法ができますことによって強く打ち出していくこともできますけれども、その形成に当たりまして、今度は民間を巻き込んだ幅広い活動が必要であろうと思います。
 私自身も古い人間でありまして、かつて育ちました環境から、少なくとも、母は家にいて子供を守り、父は仕事をして稼いでくるというようなイメージを大半が持っているこの社会において、その意識改革をいかにさせていくか。官房長官は私より年齢が先輩、年齢というかすべて先輩でありますが、大変新しいこの男女共同参画社会に対して強い御意思と、そしてそうした哲学を持っていらっしゃるのに私も感動を覚えるわけであります。
 国民の大半の中に意識改革を起こしていかなきゃいけない、民間を巻き込んだ幅広い活動が必要であるわけでありまして、この活動は、国においてどう活動を起こしていく取り組みをしていくか、このあたりが一番キーワードじゃないかと思うわけでありますが、そのあたりについてどのようにお考えになっていらっしゃるか、お尋ねしたいと思います。

○佐藤(正)政府委員 先生御指摘のとおり、男女共同参画社会の形成を促進するに当たりましては、国等公共部門だけが頑張ってもなかなか動くものではございませんで、広く民間を巻き込んで活動していくことが重要であると考えております。
 そのために、平成八年の八月に内閣官房長官の決定をもちまして男女共同参画推進連携会議というものを置いてございます。これは、男女共同参画社会づくりに関し、広く各界各層との情報及び意見の交換並びにその他の必要な連携を図り、もって男女共同参画社会づくりに向けての国民的な取り組みを推進するため、男女共同参画推進連携会議を開催するということになっております。内閣官房長官が依頼する各界各層の有識者をもって構成をいたしておりますが、このような会議を開催するとともに、広範な国民を対象にいたしまして情報提供と意見交換の会を随時開催いたしております。
 また、地域におきましては、実践的な取り組みを行っているグループ等の体験交流を行います男女共同参画社会実現に向けての活動支援会議等各種の取り組みを行っているところでございまして、今後とも引き続き民間の方々を取り込んだ活動をしていきたいと考えております。

○能勢委員 今、国においてですら、現在までは管理職の一・一%という女性の登用でありますから、民間においても、女性の進出、女性が例えば企業のトップに立ってのそうした位置をいただくというのは大変厳しいわけでありまして、この状況を調べてみると多分、本当に一%あるかないかじゃないかと思うわけであります。
 この民間の意識改革をしていくためには、もちろん女性もそうした機会均等の中で能力を発揮していく努力をしなきゃなりませんが、何といっても、私たちに長く根づいた男女の性差、性の差別といいますか性の違いといいますか、この意識は大変根強いものがあると思いますね。これを変えていくためには、本当に相当な力強い努力をしなければなかなか改善することは困難だろうと思います。
 そういう意味で私は、国、地方まではうまくいったとしても、多くを抱えます民間の意識改革にぜひとも政府も、国においてもそうした取り組みをしていただきながら、いろいろなアピールをさまざまな場所を通してやっていただきたいし、私どももともにやっていかなきゃならないというふうに考えます。
 そして、このたびできました推進体制でありますが、男女共同参画社会基本法に基づく施策を推進していくためには、今申し上げました強力な推進体制が必要だと考えております。今国会におきましては、中央省庁等の改革関連法案も提出されておりますが、その中で、日本の推進体制の位置と、あるいは諸外国ではどのような形でやっており、日本の推進体制はどのように評価される位置にあるのか、御説明をお願いしたいと思います。

○名取説明員 ただいまの御質問にお答えさせていただきます。
 男女共同参画を国内で推進する体制につきましては、国際婦人年以来、累次の世界女性会議等においてその重要性が指摘されているところでございます。
 一九九六年に、ESCAP、これは国連アジア・太平洋経済社会委員会でございますが、ESCAPの主宰によりまして開催されました女性の地位向上のための国内本部機構強化に関する地域会議における地域状況の概観報告におきましては、推進体制につきまして、幾つか分類をしております。一つ目といたしましては中心的担当機関を女性団体に置くもの、二つ目としまして首相府に置くもの、三つ目としまして女性省に置くもの、四つ目といたしまして省庁の中の女性局や女性課に置くものという四つの類型に分類をいたしました。
 総理府は、平成八年度に、諸外国の国内本部機構の組織と機能に関する調査研究について委託調査を行いました。
 これによりますと、例えばカナダにつきましては、中心的担当機関を女性省に置くタイプであるが、女性の地位省が中心的担当機関として女性の地位に関する政策の省庁横断的な調整を行っているとされています。カナダについては、先ほどの分類でいえば、女性省タイプということです。
 そして、オーストラリアは首相府タイプでございまして、中心的な担当機関を首相府に置くタイプでありまして、女性政策全般にわたる調整機能を持つ女性の地位局を設けて、一方で各主要省庁にも女性政策部門を設置しており、省庁の横断的な連携システムがつくられているとされております。女性政策全般に目配りができるということから、このようなタイプは、女性政策を主流化する上で効果があるとされております。
 なお、日本もこの首相府タイプになろうかと思います。

○能勢委員 今の報告を聞きますと大変心強いというのは、必ずしも男女共同参画のこの問題が、女性省とかいう形だけでは決してバランスがよくないのではないか、やはり日本が今中央に置いているということは今後この推進体制を進めていく上で大変いいのではないかというふうに受けとめましたけれども、それでよろしいでしょうか。男女共同参画社会を大変進めやすいという形、日本はいいところに置いているということで。

○名取説明員 はい、そのように理解しております。

○能勢委員 大変厳しい出発点、その大きな扉をあけていくときに、単なる一つの女性省とか男性省だけでなくて、一番国の中心となる場所に男女共同参画社会というこのことが置かれたということは、大変心強く思うわけであります。
 今般の中央省庁等の改革において、男女共同参画についてはどのように措置されているのか、私ども気になるわけであります。その中で、男女共同参画社会の形成のために局を創設すると理解しておりますけれども、それはそれでよろしいのであろうかということ。
 そして、今命がけでやります男女共同参画の社会への浸透でありますが、男女共同参画室は、定員がわずか六人から今現在十人になったというふうに、ふえたということは大変評価いたしますが、余りにも少ないのではないでしょうか。
 この局の創設は小渕内閣の中央省庁改革の大きな目玉でもあり、全国の女性が期待しているところでもあります。来年の女性二〇〇〇年会議でも、これは今報告を聞きますと、世界に誇れるのではないかというふうにも思うわけであります。
 しかし、この局を積極的に進めなければこの効果は出ない、局はできたが効果は出ないということになります。その局が本当に日本において男女共同参画社会を進めていくんだということにおいての果たす役割は大きいわけであります。しかし、人材が六人から十人、ふえたことは大変うれしいですが、たったの十人で果たしてこの仕事ができるのかというふうな心配を持つものでもあります。
 局の創設、そして政府挙げての大きな取り組み、これらに対して、官房長官の御意見、お話を聞かせていただきたいと思います。

○野中国務大臣 御指摘ございましたように、中央省庁の改革におきましては、男女共同参画社会の形成の促進を図っていくために、基本的な政策に関する事項等につきまして、内閣の重要政策に関して行政各部に対する内閣の統括機能を助ける内閣府の所掌事務として、一段高い位置づけを与えたところでございます。
 また、重要政策に関する会議の一つといたしまして、内閣官房長官を議長といたします男女共同参画会議を内閣府に置きまして、男女共同参画審議会の機能を発展的に継承することといたしまして、新たに政府の施策の実施状況の監視、政府の施策の影響の調査等の事務を行うこととしておるわけでございます。
 なお、御指摘ございました局の設置につきましては、昨年の十一月二十日に、男女共同参画の重要性にかんがみまして、内閣府に男女共同参画を担当する局を置くことが中央省庁等改革推進本部長であります小渕総理の決断によりまして決定をされたところでございます。
 この本部におきまして、先ほど来申し上げました男女共同参画社会をつくり上げていくための大きな柱となるべき仕事を、ある意味においては、委員が御指摘になりましたように、六人から十人、これではとてもできないじゃないかという御指摘がございますけれども、新たに加わった仕事等を踏まえましてこれから局の内容充実に私どもも努めてまいりたいと存じますし、議員の皆さん方の御協力をいただき、各省庁間の連携をいたしながら、局を、小さく産んで大きく育てて、施策とともに充実をしていかなくてはならないと思っておるところでございます。

○能勢委員 官房長官、大変ありがとうございます。
 今力強い、男女共同参画社会の実現に向けての政府として、内閣府においてのこの取り組み、私どもも、本当に我々もともに頑張っていかなきゃいけないと実感したわけであります。今も、六人から十人と数は決して、ふやしたことの意味は大きいが、少ない、なお皆さんの協力を得ながら小さく産んで大きく育てていくということについて、御期待申し上げるわけであります。
 何しろ、日本の歴史を振り返りますときに、こんな社会というのは考えてもみなかった過去があるわけじゃありませんか。この白書を読ませていただきましても、農業に従事する女性労働も随分あるけれども、収入を得るのは、やはりすべて男性が持っている、女はただひたすら農業に従事するというような報告も出ております。そうした地域の女性たちが、男女共同参画社会というのはどんな社会なんだろうか、実感してみたいと思っている人もいるでしょうし、また、幾ら能力があっても、地域で、民間でその力を発揮できる位置にそのいすをもらっていない女性も多いと思います。そしてまた、家庭にあっては、そうした意識の中で、本当に男女が参画する社会というのを肌で感じていない男女がいるわけであります。
 そこで、国がその強いリーダーシップをとって、まず国の官僚の皆様、官僚といいますか、中央省庁における皆様から始まって、女性の登用、能力のある女性は登用していこう、性差はなくて上げていくというこんな世界、こんな社会というのは、私どもがまさに待っていたといいますか、望んでいたことが、このたびは中央から下におろしていくという大きな政策というのは、地域の皆さんにとってみても本当に夢を描ける社会であります。
 当たり前といえば当たり前でありますが、当たり前である当たり前のことが、今数値を示された中にも出ておりますように、国会議員の数の少なさ、これは各政党においても検討しなきゃならないことでありましょうし、また、地方議員だって出られるような土壌がなかったということもあるでしょうし、また、女性自身の意識改革も大変大事だろう。本当に、今回のこの法案は重要な法案でありますにもかかわらず、まだまだ国会議員のすべての方たちも、この法案にどのくらい関心を持っていただいているかということも思ったこともありました。
 今この法案は、日本が近代国家になるための大きな法案であろうというふうに認識しておりますし、女性が生き生きと輝けて、社会の中で活躍できる、こんなことを夢見ながら、非常に感動を持つこの法案の成立に夢をかけているところでありますし、そして、この法案ができた後の浸透に、私も、一女性としてでも、全力をかけてこのことの意識改革に頑張っていきたいと思っています。決して女性がそのために甘えるということではなくて、女性みずからもその能力を発揮できる意識を高めていくということも、ともにやっていきたいと思います。
 この新しい推進体制と、そしてこの基本法が車の両輪となって、男女共同参画社会の形成が推進されていくことを期待するわけであります。
 内閣のかなめであります官房長官が男女共同参画担当大臣になるということは、大変意義が大きい。女性大臣とかというのでなくて、本当に、男女共同参画担当大臣である、内閣の官房長官がその大臣であるということに、当時私たちも本当に喜んだことであります。
 現在、男女共同参画担当大臣をされています官房長官に、今後の新しい体制においても、ぜひ担当大臣として頑張っていただきたい。これは、一つは全国の女性の大きな願いでもあるわけであります。
 官房長官の決意のほどを改めてこの中で、この間本会議におきます女性の御意見もありましたが、きょうも大変女性が質問に立つということは、一つは、女性が待っていた、男女ともにこれをやる、男性にとっても大変重要であるが、女性からもここでひとつ声を上げたいということがあって、今官房長官の方に伝わっていったと思っています。ぜひ、その決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。

○野中国務大臣 男女共同参画担当大臣につきましては、男女共同参画社会の形成の促進が内閣として取り組んでいくべき国政上の重要な課題でございますことから、従来より、基本的に内閣官房長官が指名をされてきたところでございます。現在、私が不肖ながらその重責を担わせていただいておるところでございます。
 このたびの中央省庁改革におきましては、内閣府に置かれる男女共同参画会議の議長をも内閣官房長官が兼ねることになるわけでございます。内閣官房長官のもと、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を強力に推進することにされておるところでございます。
 私は今日まで、政治家として、この席にいらっしゃいます佐藤信二先生が積極的に推進されました女性問題を、そのもとにおいて勉強させていただくことができました。たまたま光栄にも内閣官房長官を拝命いたしまして、このたび男女共同参画の社会を構成するための法案の御審議をお願いする責めを負うことになり、また、中央省庁の設置に関連して、従来の男女共同参画室を男女共同参画局に設置する総理の決断をいただくための機会にあったことを大変幸せに存じておるわけでございます。
 今後とも、私どもの後、内閣官房長官をそれぞれ拝命される皆さん方がこの男女共同参画社会の実現を強力に推進していただけるよう、私どももより決意を新たにし、また、そういう皆さん方にもお願いをしてまいりまして、きょう御審議をいただくこの意味が、男女共同参画社会のさらなる発展に大きく寄与することを期待しておる次第であります。

○能勢委員 どうもありがとうございました。
 大変力強い決意をいただきまして、私たちも、このことに協力しながら、日本の隅々までこの思想が、あるいは制度がきちっといきますことを願うものであります。
 そういう意味で、今回上がります男女共同参画社会基本法のこの法案が一日も早く成立し、そして、このことが、内閣府にできました男女共同参画室から大きく発信し、推進本部と、そしてこの法案がうまくかみ合いながら浸透していくことを、私もその中で頑張らせていただくことをお誓い申し上げて、質問を終わらせていただきます。
 官房長官、ありがとうございました。

○二田委員長 次に、松本惟子君。

○松本(惟)委員 私は、民主党の松本惟子と申します。
 御質問に先立ちまして少し発言をさせていただきたいのですが、国連が一九七五年を国際婦人年と定めまして差別撤廃条約を採択したときのことを思い出します。その冒頭に、女性に対する差別は人間の尊厳に対する犯罪である、人権に対する侵害であるということを高らかにうたい上げました。
 その差別撤廃条約の文章を見まして、私は、日本の大変根深い性による差別の中にあって、実は、職場で働いていたわけですけれども、いろいろな壁に私自身もぶち当たって苦悩をしておりました。そのときに、この差別撤廃条約の採択、そして日本が批准をするということは、私たちにとって平等への展望が開けた、そんな思いでございました。同時に、国内においても、歴代の総理を中心にいたしまして本部を置かれまして、国内行動計画を策定し、努力をされてまいりました。
 そして今回、男女共同参画ビジョン、これは審議会の答申でございますけれども、総理により諮問をされましたこの答申を受けて二〇〇〇年プランを策定されました。その間に、国連による北京会議が持たれまして、北京行動綱領というものが採択をされ、そのことも傍らに置きながら、参画ビジョンの答申をしたことを思い出します。
 そこで書かれていた一つの目玉が、法制上の平等から実質的な平等に歩を進めていかなければならない。先ほど能勢委員の御発言の中にも、日本は大変女性の政策決定の参加が世界におくれをとっている、大きく見劣りをするという実態が述べられましたけれども、そういったことをなくしていくためにも、総合的にこれを進めていくために、差別を取り除いていくために、基本法というものをつくって促進をしていかなければならないということがうたわれて、そして、この審議に至っているということを大変感慨深く思います。
 そこで、私は、基本法の性格から見まして、つまり、我が国には、法のもとの平等ということで憲法の規定がございます。にもかかわらず、五十数年たっても、変化はしているものの、なかなか実態が思うように進んでいないということで、憲法と個別法、あるいは憲法と現実の慣行の見直しも含めて、これをつないでいくために間に立つ基本法というものが必要であるということで今回提案されているわけでございますから、せっかく成立をされるこの歴史的な基本法をよりよいものとして機能させていくために、中身をしっかり議論をし、そして採択へと向かってほしいと願っております。
 そこで、まず最初に、法律の目的、理念についてお伺いをしたいのであります。
 本法案につきましては、男女共同参画社会の実現を目指すものでございますけれども、その基本的な考え方に示されていますのが、社会的、文化的に形成された性別、いわゆるジェンダーに縛られない社会の実現ということであります。
 言うまでもなく、この考え方は、男女共同参画審議会がまとめた男女共同参画ビジョンにおいて初めて示されたものでありまして、本会議でも私は申し上げましたけれども、国際的に流れを見ても、画期的な意義を持つ中身であるというふうに、このジェンダーということをうたい上げたという意味で評価をしているものでございます。
 すなわち、生まれたときからのいわゆる性差、セックスというものではなく、後につくられた、男性はこうなければいけない、女性はこうあるべきだ、そういったものを取り除いていくということであります。
 再度お伺いをしたいのですが、このジェンダーフリーの視点というのが本法案ではどのように規定をされているのでしょうか。お伺いをしたいと思います。

○佐藤(正)政府委員 先生お尋ねのジェンダーフリーということでございますが、ジェンダーという言葉、社会的、文化的に形成された性別ということでございますが、男女共同参画審議会におきます審議の過程、あるいは昨年六月に公表されました男女共同参画社会基本法(仮称)の論点整理に対する御意見の中で、この社会的、文化的に形成された性別という言葉が一般には理解されにくいというような御意見が出されておりました。これを踏まえまして、本基本法案においては社会的、文化的に形成された性別という言葉は用いていないところでございますが、この法案自体はジェンダーの観点を貫いておると考えておるところでございます。
 具体的にどういうところに表現されておるかということでございますが、第一条の目的の中に、男女の人権が尊重されることの緊要性を規定するとともに、第三条で男女の人権の尊重を定めておりますが、その基本理念の中に、個人としての能力を発揮する機会が確保されることを規定しているところでございます。
 それから、第三条の男女が個人としての能力を発揮する機会が確保されることとの規定につきましては、個人として、性別にかかわらず、その人そのものの能力が発揮できるようにという意味でございまして、これはジェンダーの問題意識を含んでおると考えております。
 それから、第四条につきましては、男女を明示で区別していなくとも、「性別による固定的な役割分担等を反映して、男女の社会における活動の選択に対して中立でない影響を及ぼすこと」があるということでこのような規定を設けておりますもので、この規定全体にジェンダーの問題意識が込められていると考えております。
 また、第五条の規定につきましても、「男女が、社会の対等な構成員として、国若しくは地方公共団体における政策又は民間の団体における方針の立案及び決定に共同して参画する機会が確保される」とございますが、従来、女性が物事の決定過程になかなか参画できなかったことを踏まえたものでございまして、ここもジェンダーの問題意識を込めたものと考えております。
 さらに、六条につきましても、固定的な役割分担のために女性に家事の負担が重く課せられているという現状を踏まえまして、男女の相互の協力と社会の支援のもとに、家庭生活と他の活動の両立を基本理念に込めたものでございまして、ここもジェンダーの問題意識を反映していると考えておるところでございます。

○松本(惟)委員 今、逐条ごとに御説明をいただきましたけれども、申されましたように、ジェンダーの視点というのは貫かれているというふうに理解をしてよろしいかというふうに思います。
 次にお尋ねをしたいのですが、四条のところに、ただいま御説明を受けましたジェンダーを受けてということとして理解をすれば、性別による固定的な役割分担等を前提とした制度、慣行を見直すという趣旨であろうと思います。
 この四条の性別による固定的役割分担等というのは、そういう意味であろうと思いますけれども、そういったことは具体的にどのような政策措置をイメージされているのか、お聞かせを願いたいと思います。うたい上げただけではなくて、具体的にはどのようなことを通じて見直しをなさろうとしているのか。
 例えば、選択的夫婦別姓の問題があります。これはもう申し上げるまでもなく、何回もの国会を重ねている中で、女性たちはこのことについて、一日も早く選択的夫婦別姓、民法の改正を実現してほしいという声も上がっているわけであります。
 それから、配偶者に係る税制の問題。昨日の新聞あたりにも、かなり大きく社会保障と税制の問題、つまり年金の問題、健康保険の問題等を通じまして現状を見直していかなければならない、これは負担と給付の問題はもちろんのことですけれども、働く、働かないというようなこと、一方に大変インセンティブを与えるような、そういったものであってはならないのではないかと私は思っているわけでございます。
 したがって、こういった社会保障制度なども当然見直されるべきものと考えてよろしいのかどうか、その具体的な政策のイメージをお聞かせいただきたいと思います。

○佐藤(正)政府委員 先生の御指摘の第四条につきましては、直接的に男女共同参画社会の形成とは関係がないような制度、慣行でありましても、男女の社会における活動の選択に対しまして中立でない影響を及ぼすことがあるということから、男女共同参画社会の形成の観点からも配慮されなければならない旨を規定したところでございます。
 先生ただいま御指摘になりました、例えば税制でありますとか年金でありますとか保険でありますとか、いろいろ御指摘をいただいているところでございますが、こういう制度につきましても、この基本法の理念に基づきまして、見直しを行うときにはこういう視点からも検討していただきたいと考えておるところでございまして、総理府といたしましても、そういうことを各省に要請をしてまいりたいと考えております。

○松本(惟)委員 ありがとうございました。
 基本法の理念に基づいて、個別法の見直しの際には要請を行っていくという御趣旨であろうかと思います。
 第四条につきましては、性別による固定的な役割分担等を前提とする制度、慣行を見直すということでございますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それから、ジェンダーに縛られない社会の実現については、男女の人権尊重と同様に、本法案の基本的な理念だと思います。
 先ほど御説明にもございましたように、逐条ごとにちゃんとその視点は貫かれておりますという御説明でございましたので、それならば、第一条の目的に明記されていいのではないか。
 例えばジェンダー、こういった片仮名でなくても、社会的、文化的につくられた性。私どもは思い込みがございます。人間形成の過程で、家族だとか学校だとか社会だとかから、こうあらねばならないというふうな性による固定的な思い込みの中で自分はつくられているということを気づくことがございますけれども、そういったつくられた性別からの解放を目指すのであれば、一条の目的に明記されてもよいのではないかと思いますけれども、その点につきまして、官房長官の御見解を再度伺わせていただければと思います。

○野中国務大臣 委員は、かつて総理府の男女共同参画審議会の委員として、本法案の成立までに大きな足跡を残していただいたわけでございまして、今日この法案の御審議をいただくことになったことに深い感激を覚え、敬意を表する次第でございます。
 今御指摘ございましたジェンダーについての問題でございますけれども、これにつきましては、先ほど来政府委員が御答弁も申し上げておりますように、社会的、文化的に形成された性別、いわゆるジェンダーというのは、先ほども申し上げましたように、一般的には非常に理解しにくいという意見があるわけでございまして、男女共同参画審議会におきます審議の過程や昨年公表されましたこの男女共同参画社会基本法の論点整理に対する意見の中で出されました。これを踏まえまして、この基本法案では、社会的、文化的に形成された性別という言葉を直接用いておりませんし、またジェンダーという表現も用いておらないわけでございます。
 議員が御指摘された点については、第一条の目的の中で、男女の人権が尊重されることの緊要性を規定しますとともに、男女の人権の尊重を定めた第三条の基本理念の中に、個人としての能力を発揮する機会が確保されていることを規定しておるところでございます。また、先ほどお触れになりました第四条の固定的な役割分担等という言葉などにも御指摘の問題意識はあらわされているのではなかろうかと考えておるところでございます。

○松本(惟)委員 御丁寧な説明をいただいたわけですけれども、もうこれ以上議論をしても先に進みそうにございませんので、次に進ませていただきます。
 男女の人権というこの言葉の意味合いを深く分け入った場合に、はてと思うこともございます。今、実情においては、やはり一般的に女性の方が人権の侵害を多く受けている、差別を多く受けているとするならば、男性に対して女性の人権をどのようにしていくのか、いろいろなことがございます。そういった意味から、私は社会的、文化的につくられたということを申し上げさせていただいたのですが、官房長官、大変御丁寧に御説明いただきましたので、今後は施策の中あるいは基本法の展開の中で、そういった立場をしっかり踏まえて促進をしていただきたいと思います。
 次に、暴力の問題についてでございます。
 女性に対する暴力については、言うまでもなく、女性の人権及び基本的自由の享受を妨げ、侵害するものでありますし、女性をより隷属的な地位に追い込む重大な社会的、構造的問題の一つだというふうに思います。
 一九九三年に開かれましたウィーン世界人権会議において、女性に対する暴力は人権問題であるとの宣言が行われ、同年に開かれた第四十八回国連総会においては、女性に対する暴力の撤廃に関する宣言が採択をされております。九五年の北京世界会議において、重要な課題の一つとして、実効ある取り組みが各国に要請をされております。国際社会においては、明確に人権問題としてその撤廃の取り組みが求められているところでございます。
 しかし、本法案にはいわゆる女性に対する暴力の根絶が明確に理念として掲げられてないように思うのでございますが、いかがでしょうか。先ほどの御説明の中では、人権ということに織り込めてあるというふうにおっしゃいましたけれども、これは個別の問題、個々の問題ではなく、基本的、構造的な問題と私は認識しているのですが、お答えをいただきたいと思います。

○野中国務大臣 いろいろ女性の暴力被害の問題についての御見解は、それぞれ衆参の審議を通じても出てきた問題でございますけれども、この男女共同参画社会基本法案というのは、男女の共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的としておるわけでございまして、女性に対する暴力の問題等個別具体的な施策としては規定をしておらないわけでございます。
 しかしながら、この法案の基本理念といたしまして、男女の個人としての尊厳が重んじられること等男女の人権の尊重を織り込んでおるところでございまして、男女がそれぞれ対等に人権が尊重されなくてはならないし、尊敬されなくてはならないということを基本理念にしておるわけでございますので、女性に対する暴力はその意味からも決して許されるべきものではないと考えるわけでございます。
 また、委員御承知のとおり、先月二十七日には、男女共同参画審議会から内閣総理大臣に対しまして「女性に対する暴力のない社会を目指して」と題する答申が提出をされたところでございまして、この答申の趣旨をも踏まえまして、政府全体として施策の推進に取り組んでいくのが私どもに与えられた責任であると考えておるところでございます。

○松本(惟)委員 個々の問題については、別途基本法に基づいて対処されるということの中に、暴力の問題を織り込んでいかれる。
 既にもう総理の諮問として審議会の中で議論が行われている、そして、その取りまとめ、中間取りまとめでございましょうか、それが出されたということでございますが、五月二十七日に男女共同参画審議会が出されました基本的方策をまとめた答申、その答申を受けて、政府としては女性に対する暴力の根絶に向けてどのような取り組みを行おうとしているのか、もう少し踏み込んでお聞かせをいただければと思います。

○佐藤(正)政府委員 男女共同参画審議会は、ことしの五月二十七日でございますが、「女性に対する暴力のない社会を目指して」という答申を総理に提出いたしております。
 この中で、「当面の取組課題」ということで五項目ほど取り上げられておりますが、まず第一が「女性に対する暴力に関する調査の実施」ということで、現在、実態がよくわからないということもございますので、調査をするようにという提言をいただいております。それから二番目に「関係機関・団体、専門家等への支援と公的機関の取組の推進」、三番目に「女性に対する暴力の根絶に向けての社会の意識啓発」、四番目が「女性に対する暴力の再発を防止する対策の検討」、五といたしまして「女性の自立のための取組」、こういうようなことを提言としていただいておるわけでございます。
 これを受けまして、政府といたしましては、まず、女性に対する暴力に関する実態調査をしなければならぬということが一つ、それから関係機関・団体、専門家等への支援等各種の施策につきまして、関係省庁と連携をとりつつ取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。

○松本(惟)委員 まず、実態の調査から把握をし、そして、省庁が多岐にわたっているということはわかっているわけでございます。その省庁を調整しながら、今ある法律で有効な部分とか新たに何か施策を講じなければならない部分とかあろうかと思うのでございますけれども、この暴力に対する問題も、それを受けた被害者である女性たちからは、長い間、早くこれを禁止するための法律をつくってもらいたい、そういった方向に持っていってもらいたいという願いが届きます、声が届きます。どうぞ、ゆっくりゆっくりなさるのではなくて、できるだけ急いで有効な手だてを講じていただきたいということを申し上げさせていただきたいと思います。
 続きまして、間接差別についてでございます。
 本法第三条に、男女共同参画社会の形成は、男女が性別による差別的取り扱いを受けないことを旨として行われなければならないというふうにございます。この性別による差別的扱いということの中には、直接差別だけではなく、間接差別も含まれているのかということが本法案にかかわって大変大きな関心を呼んでいることは御承知のとおりでございます。
 そこで、まず、女子差別撤廃委員会による日本に対する最終コメント。これは、女子差別撤廃条約を日本が批准いたしましてから、定期的に、どのように国内で差別の是正が行われ、何が残っているのかというようなことに対して報告書をお出しになることになっていると思いますけれども、その報告書に対して女子差別撤廃委員会が審査をし、日本に対するコメントを一九九五年にお出しになっています。このことについて伺いたいと思います。
 つまり、その中には、日本政府は、私企業における雇用機会均等法上の規定の遵守を確保し、私企業における昇給及び賃金に関して女性が直面している間接差別に対処するためにとった施策について報告をしなければならないというふうに書かれていて、間接差別について対処すべきであることが指摘されている、そのように聞いておりますが、そのとおりでございましょうか。

○佐藤(正)政府委員 第十四回女子差別撤廃委員会の報告の中の日本の報告に対する最終コメントにおきましては、「日本政府は、民間部門が雇用機会均等法を遵守することを確保するべきであり、民間部門において女性が直面している昇進や賃金についての間接的な差別を取り扱うためにとった措置について報告すべきである。」という項目が入っております。

○松本(惟)委員 そのとおりというふうに受けとめさせていただきます。
 ところで、諸外国におきましての間接差別についてお尋ねをしたいのですが、基本法令あるいは個別法令で定義を明確にして禁止をしている、諸外国ではそういった国があるというふうに聞いております。どのような規定になっているのですか、お尋ねをいたします。

○佐藤(正)政府委員 間接差別の定義は国によってかなり異なっておりますが、イギリスとアメリカの例をちょっと御紹介いたしたいと思います。ただ、口頭で読み上げますと非常にわかりにくい表現かと思いますが、お許しいただきたいと思います。
 イギリスにおきましては、性差別禁止法第一条、女性に対する性差別というところでございますが、ここに、一、本法のすべての規定の目的に関し、いかなる場合においても以下の行為を行った者は、女性に対する差別を行ったものとする。
 男性に対し同様に適用し、または適用するであろうとも、以下のような要件または条件を、女性に対して適用した場合。一、それに適合し得る女性の割合が、それに適合し得る男性の割合よりも著しく小さく、かつ、二、その適用されるべき者の性別に関係なく正当であることを立証し得ず、かつ、三、女性がそれに適合し得ないがゆえに、その女性に対し、不利益となるもの。
 また、第二条で……

○松本(惟)委員 済みません、御発言中ですけれども、簡潔に、要約をしてお話しいただけませんか。個別法の審議のときですとかなり厳密に必要かと思いますけれども、包括的で結構でございます。

○佐藤(正)政府委員 イギリスの規定は大体以上のとおりでございます。
 それから、アメリカにつきましてですが、公民権法第七編の七百三条にございますが、以下の場合には、差別的効果に基づく違法な雇用慣行となるというふうなことで、申立人が、被申立人は人種、皮膚の色、宗教、性別、または出身国に基づく差別的効果をもたらすある特定の雇用慣行を行っていると証明した場合、それに対して被申立人が経営上の必要性があると証明できない場合等々につきまして差別となるというようなことを規定いたしております。

○松本(惟)委員 例えば、オーストラリアだとかカナダだとかノルウェーだとかデンマークだとかスウェーデンだとかベルギーなんかでは、基本法令または個別法令で間接差別の定義を明確にして禁止しているというふうに私は伺っているんですけれども、もし誤りがあれば後日お聞かせをいただきたいと思います。
 そこで、いわゆる間接差別、第三条についてでございますけれども、男女が性別による差別的取り扱いをしてはならないというふうに三条では規定されています。これは、直接的な差別、間接的な差別、いずれも含んでいるというふうに理解をしてよろしいのでございましょうか。

○佐藤(正)政府委員 この法案の三条におきます差別的取り扱いという言葉でございますが、これは、男女共同参画審議会の中におきましても、間接差別というようなものを取り上げるべきではないかというような御意見がかなりございましたが、間接差別ということにつきましてまだ社会的なコンセンサスがないというようなことと、裁判の実例におきましても、明確に女性を差別するというような意図がないものにつきましても差別をしたという推認を受けたという実例もあるというようなことから、差別的取り扱いという表現で十分であろうというようなことがございました。ここで言います差別的取り扱いにつきましては、先生おっしゃるような間接差別をも含んでおると当方としては考えております。

○松本(惟)委員 含んでいるということでございますけれども、含んでいるということであるならば、わかりやすく、今、直接目に見える、一目でわかる差別的な取り扱いというのは、これはあってはならないということで、是正はできると思うのです。問題は、中立的に見えながら実は差別につながっている、非常にわかりにくい形の差別というものが複雑に絡み合って出てきている、これをどうしていくかということでございますので、含まれているということであるならば、国民にわかりやすく書いていただけたらよかったと私は思います。
 一九九七年の五月に雇用機会均等法の改正がございました際に、附帯決議の第一項、たくさんの附帯決議がついておりますが、そこには、男女双方に対する差別を禁止するいわゆる差別禁止法に将来は持っていくべきである。現段階では、御存じのように、雇用機会均等法は、男性に対して女性が差別をされているということはあってはいけない、こうなっているのですね。
 ですけれども、それで事は解決をしませんので、将来あるべき形としてはやはり性差別禁止法に持っていくべきであるということを書いた上で、続いて「いわゆる「間接差別」については、何が差別的取扱いであるかについて引き続き検討すること。」というふうにコンセンサスがあるわけです。
 何が間接差別かということを導き出すためにはかなり時間がかかります。しかしながら、冒頭申し上げましたように、この基本法というのは、個別法を誘導していく、つまり現状追認であってはいけないと思うのですね。それは、社会の急速な変化に対応できるものではないと思うのです。基本法というのはそんなに簡単に再々改正をされるべきものでもなかろうと思いますと、どうしてもここに、誘導効果のある、機能のある形できちんと規定をされてしかるべきであろう、基本法の性格上、私はそのように信じているわけであります。
 したがって、何が間接差別かわからないというのであれば、それを誘導していく、議論をしなさいよということでいいと思うのですね。そういうわかりやすさがこの法律の中にあってしかるべきだというふうに思います。
 いわゆる間接差別を禁止することは規定されていませんけれども、裁判判例では、直接的な差別だけではなく、結果として性による差別も差別的取り扱いとなるというようなことが、三陽物産の裁判、東京地裁で出された判例で明らかになっています。しかし、これを結論づけるためにはやはり随分の時間がかかっているわけですね。
 こういったものは、先ほど申しましたように、複雑に入り組んだ、いわゆるかき分けて見なければわからないような差別の実態を洗い出していくためには大変に非効率的である、差別が人権の侵害であるとするならば、これを誘導していけるような光をこの基本法は与えていただきたいなということで、ここはこだわっておきたいというふうに思います。
 それから次に、ポジティブアクションについてでございます。
 本来ならば、一方の性に対する優遇措置を講ずることは、性差別禁止に抵触することとなります。しかしながら、これまでの、一方の性に対する事実上の平等、これを促進していく、つまり是正をしていくために、これを目的としてとられるポジティブアクション、積極的是正措置、本文では改善措置というふうになっておりますが、いわゆる暫定的な特別措置につきましては差別とみなさないとするのが国際的な常識となっております。
 本会議でも私は申し上げましたけれども、本法案にポジティブアクションに関する規定が盛り込まれたことについては評価をいたしています。したがって、確認的にお尋ねをしたいのですけれども、本法案第二条で言う積極的な改善措置というのは、女子差別撤廃条約の第四条に「締約国が男女の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置をとることは、この条約に定義する差別と解してはならない。」とありますが、その暫定的な特別措置のことと理解してよろしいんですね。

○佐藤(正)政府委員 女子差別撤廃条約第四条に定めます暫定的な特別措置につきまして、その定義等から考えますと、本法第二条に定めております積極的改善措置に相当するものと考えております。

○松本(惟)委員 実は、積極的な改善措置と表現をされたことの意味合いはどういうことなのかということもお尋ねしたいと思います。
 私自身は、これは改善措置という言葉の響きからしますと、大変慎重にゆっくり、慎重はもちろん大事だと思います、緩やかに少しずつ直していくというふうなニュアンスが聞こえてまいります。しかしながら、社会、国際関係も含めまして見た場合に、大きな変化に対応していくためには、できるだけ速やかにこれを是正していかなきゃいけないんじゃないかというふうに思っている次第でございます。
 そのような考え方を述べさせていただきまして、次の質問に移らせていただきますが、男女共同参画の現状と施策、これは総理府の方が四月に発表されております。女性白書と通称言われておりますけれども、この女性白書の中に、国家公務員へ女性を登用するための諸外国の取り組みが紹介されてございます。その主な内容と特徴について御紹介をいただきたいと思います。

○佐藤(正)政府委員 諸外国の国家公務員に対します女性の登用につきましての取り組みにつきまして、平成十一年版の男女共同参画の現状と施策、いわゆる男女共同参画白書におきまして紹介しておりますが、その一部をちょっと御紹介いたしますと、カナダにおきましては、各省庁が女性やマイノリティーの労働力分析とか是正計画の策定を行いまして、国会に報告をしているというようなことがあります。オーストラリアにおきましては、機会均等を推進する計画を作成、実施することが義務づけられております。
 それから、アメリカ合衆国におきましては、職員五百人以上の各省庁に対しまして、マイノリティーや女性等の雇用平等を促進するための雇用計画を策定して実施するように求められております。また、イギリスにおきましては、各省庁向けの一般的な指針といたしまして、公務員の機会均等を達成するための行動計画というものが策定されていると承知いたしております。

○松本(惟)委員 ありがとうございました。
 やはり、さまざまな国におきましてそれぞれの取り組みが行われているということでございます。そしてそれは、私が承知しておりますのは、ゴール・アンド・タイムテーブル、つまりゴールを決めて、そこに至るタイムスケジュールをきちんと立てて是正計画を実行しているというふうに承知をしているわけでございます。また、それぞれの省庁の計画に対して指導監督を行うことによって実効性を確保しているというのが白書の中に見受けられます外国の例ではなかろうかというふうに思います。
 私、本会議におきまして、質疑の中でも、国家公務員の女性の採用、登用についてお尋ねをいたしました。これも先ほどの委員がお尋ねをしていたようでございますが、重ねてまたお尋ねをしたいわけでございます。
 そして、私が本会議で申し上げましたのは、具体的に取り組むためには数値目標を入れた中長期的な計画を作成することが不可欠であろう。努力をしておりますということだけではなかなか進みにくい現実がございます。したがって、少々きついかもしれませんけれども、やはり計画のもとに推進をされるということが実効性を確保していくという意味で大切かと思います。
 今後、内閣府に設置される共同参画会議、これは各省庁を指導できる立場にあるわけでございまして、その意味からも、数値目標を入れた中長期計画を作成して達成をチェックするということが必要と考えますけれども、いかがでございましょうか。

○野中国務大臣 御指摘の国家公務員への女性の計画的な登用についてでございますけれども、男女共同参画推進本部が平成八年十二月に決定をいたしました男女共同参画二〇〇〇年プランにおきまして、「女性国家公務員の採用、登用、職域拡大及び能力開発を一層推進する。その際、現状について定期的に把握・分析しながら計画的に取り組むことが効果的であるとの観点から、採用、昇進等の状況を定期的に調査・公表し、改善が必要とされた課題への取組を示した計画を策定することを検討する。」と掲げられておるところでございます。私どもといたしましては、これに従いまして、この計画を策定することとしなければならないと存じておるところでございます。
 また、本年三月十六日の公務員制度調査会の公務員制度改革の基本方向に関する答申におきましても、「公務部門においても、国家公務員法の定める平等取扱と成績主義の原則に基づき、男女共同参画の推進に向けて各種のポジティブアクションを推進し、性別によらない開放的な人事運用の一層の促進を図っていくことが必要である。」との提言がされたところでございます。
 政府といたしましては、引き続き女性公務員の採用、登用等の推進について着実に進めてまいりたいと考えておるところでございます。

○松本(惟)委員 ありがとうございました。
 二〇〇〇年プランの中で、検討するというふうに書かれていますので、それに沿って御努力をなさるという官房長官の御決意も伺わせていただいたわけですが、その検討がよい方向に向かいますことを念じてやみません。
 さらに、重複をいたしますが、官房長官がお答えくださいましたので何だか屋上屋になってしまうようですけれども、総務庁にも、三月に公表されました公務員制度調査会答申において、積極的な女性の採用、登用に向けた中長期的な努力目標の設定というふうに書かれておりますが、これをどのように受けとめられているのか、どのように取り組みを進めるおつもりか伺わせてください。
 官房長官、大変後先になって失礼をいたしますが、お許しいただきたいと思います。

○中川(良)政府委員 本年三月十六日に出されました公務員制度調査会基本答申におきまして、女性国家公務員の採用、登用の促進について、基本的な考え方として述べられておりますのは先ほど官房長官の方から御披露があったとおりでございまして、さらにそれに加えまして、改革方策といたしまして、「各省庁の政策・方針決定に携わる部門について積極的な採用、登用に向けた中長期的な努力目標を設定する」というようなことも述べられておるところでございます。
 こういったことを受けまして、各省庁の人事管理の指針となります平成十一年度における人事管理運営方針におきまして、男女共同参画社会の趣旨にのっとり、女性国家公務員の採用、登用についてその促進を図ることとし、基本答申を踏まえた方策について検討を行うということにいたしております。
 さらに、先般決定されました中央省庁等改革の推進に関する方針の中で公務員制度改革についても触れられておりますが、その中でも、男女共同参画の推進に向けて環境整備に取り組むとともに、女性の登用の促進を図るというふうにされているところでございます。
 総務庁といたしましては、こういったことを踏まえまして、公務部門におきます男女共同参画の推進について、男女共同参画の担当部局と連携を図りながら今後とも取り組んでまいりたいというふうに思っております。
 なお、公務員制度調査会の答申で言っております努力目標の具体的な内容につきましては、国家公務員法に定めます平等取り扱いあるいは成績主義の原則といったこととか、あるいはこの基本法に基づきまして策定されることになります男女共同参画基本計画をめぐる議論の動向等を踏まえながら、今後さらに具体的に検討してまいりたいというふうに考えております。

○松本(惟)委員 御努力をされているということはわかるわけですけれども、平等取り扱い、成績主義、こうおっしゃるこの二点についてでございますが、以前から、お尋ねすると必ずこの二つの言葉が出てくるのですね。これは決して否定するものではないと思います。
 しかしながら、この原則のもとに推進をされていたけれども、現実が遅々として、まあ少しは変わっていると思いますが、なかなか変わりにくいところがある。例えば、私、先般ドイツに行ったときに、これはもうよく知られていることですけれども、公務員で男女同じ成績であった場合にどちらを優先するかというと、いわゆる参画でおくれをとっている女性の方を優先するというふうなアファーマティブアクションがとられたりしています。
 それからもう一つ、成績主義の問題ですけれども、成績というのが公表されているのかどうかというのは気になるのですね。やはり個人が何で昇進ができなかったのか、何で採用がされなかったのかということを自覚しなければ、次の努力へ向けての意欲がわいてこない、わからないわけですね。そういう意味では、成績のいわゆるガラス張り、公表といいますか、できる限りのことは本人に知らせて、本人がやはり自分が努力をしなければならない部分をきちんと把握ができるような、そういう手だても講じてほしいなと思いますので、これから鋭意御検討されます際には、従来型ではなくて、さらに一歩進んでアファーマティブアクションを念頭に置かれまして御努力をいただきたいというふうに思います。
 民間では、この成績主義というのをできるだけ公表し、本人がそれに向かって努力ができるような大変厳しい手だてが講じられているところでございます。行き過ぎた競争というのはいかがなものかとも思いますけれども、しかし、ここはやはりちゃんとやっていただきたいなということを申し添えさせていただきたいと思います。
 そして、今お願いをしております女性国家公務員の採用、登用ということにつきましては、これは大変おくれをとっております民間への影響を考慮して申し上げているわけでございます。経済社会を担っている女性たちが、先ほど申し上げましたが、国連のいわゆる間接差別に対する、これも報告してくださいよと日本政府に言ったように、結果として日本の女性たちというのは、中断、再就職もございまして、家庭と仕事の両立のための施策がまだ十分ではないということ、さまざまなことがかかわって大きな差別を受けているわけでございますので、民間に対する公務員の影響力ということも十分考慮に入れて、公平、公正な社会づくりのために御努力を願いたいと思います。
 その意味で、内閣府が手がける最初の仕事の一つとしての問題でございますので、官房長官にぜひともさらなる御努力をお願いいたしまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 次は、国の政策方針決定過程への女性の参画として、国の審議会等への参画でございますが、これについて伺いたいと思います。
 二〇〇〇年プランでは、九六年の五月付男女共同参画推進本部決定に従って、ナイロビ将来戦略勧告の掲げる、指導的地位につく女性の割合は少なくとも三割までふやすということが約束をされているわけでございます。およそ十年程度の間に達成するとともに、当面二〇〇〇年度末までのできるだけ早い時期に政府は二〇%を達成するように努めるとございます。
 審議会等への女性の参画の状況につきまして、どのようなことになっておりますでしょうか。

○野中国務大臣 委員が御指摘になりました、それぞれ国の審議会の女性の参画でございますけれども、平成八年十二月に男女共同参画推進本部におきまして決定をされました、御指摘の政府の国内行動計画であります男女共同参画二〇〇〇年プランにおきまして、国の審議会等の委員への女性の参画の促進のための具体的な施策といたしまして、各審議会の女性委員の人数及び比率を定期的に調査、分析、公表し、計画的に取り組みを進める、また、引き続き女性委員のいない審議会の解消を目指すとされておるところでございます。
 私も、男女共同参画担当大臣として、男女共同参画推進本部におきまして女性委員の登用を呼びかけておるところでございます。
 ただ、率直に申し上げまして、なかなかこの三〇%達成目標というのは、言うべくして非常に厳しゅうございます。と申しますのは、一つは、社会的あるいはいろいろな経験をお積みになった方々、そして家庭等から解放された方々あるいは職場から参画していただく余裕のある方、こういうものを個別に見てまいりまして、そしてお願いをしようとしますと、年齢が七十歳以上を過ぎている、こういうことでございますし、いろいろな分野で調べてみましても、国家における審議会の委員は四つ以上兼ねてはならないとなっております。こういう中でいろいろ見てみますと、人が限定されてしまうわけです。
 我々は、もっと幅広くこれからより計画的にやっていかなくてはならないということを考えておりますけれども、また、先生方からもこういう現実にある問題を十分御理解いただきまして、委員等の参加についてもそれなりの示唆をいただきたいと思うわけでございます。
 我々といたしましては、先ほど申し上げましたように、これからも引き続き、国の審議会の委員への女性の参加について積極的に進めてまいる決意でございます。

○松本(惟)委員 ありがとうございました。
 現実的な御苦労というのは本当に、いろいろなこぼれ話も伺っておりますし、おありだろうと思いますが、さらなる御努力を、私も含めて御一緒に進めてまいりたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 続きまして、中央省庁の再編に伴って、審議会の整理統合、つまり整理合理化と申しましょうか、こういったことが行われております。政府案では、審議会の数が現行の二百十二から九十に、委員の数も五千三百人から千八百人になるわけでございますね。その審議会等の運営に関する指針の中に、女性委員の比率を十年以内に三〇%に引き上げるとございます。
 入れ物が小さくなった中で三〇%を目標にしていくということは、これも大変な努力がなければ実現されないであろうと思います。この三割というのは従来からの目標を踏襲したものですけれども、できれば十年と言わず、もっと前倒しをして実施をしていただけないだろうか。より重要なことはその実効性だというふうに思います。
 実は、手前みそになりますけれども、民主党といたしましても、以前から、審議会等の女性の委員の比率を高める政府の取り組みに連動して、連帯する取り組みとして、国会での同意人事案件というのがございます。これに対する同意、不同意を決定する際に、先ほど長官の方からおっしゃられました年齢、年齢差別をするわけではありませんけれども、そういったこと、それから性別、出身、それから兼任、そういったことについて基準を設けております。
 女性については最少人数の定数を決めて、三人から六人の場合は一名以上、この以上というところに力点を置いてあるわけですが、ゼロから一にするわけですけれども、これもなかなか並大抵ではないということを身をもって体験をしております。それから、七人から十三人の場合には二名以上ということで、その割合を下回る場合は原則同意しないというようなものでございます。事実、これによって不同意になった案件もございます。
 これも長官が先ほど御紹介くださいましたように、その分野に専門的な女性が見当たらないということで、依然としてゼロというようなことが同意人事案件の中に出てまいります。こういったことも、私ども政党としても、及ばずながら少しずつ努力をしているところでございます。はたから見ますと多少強引に見えるかもしれませんけれども、女性の比率を高めるためには、このように具体的な基準を設けて、着実な実行が求められるのではないかというふうに思っております。
 長官の御決意を伺いたいと思いましたけれども、御一緒に述べていただきましたので、次の質問に移らせていただきます。
 推進体制についてでございます。法律を実効あるものとして動かしていくためには、推進体制が大変重要かと思います。男女共同参画審議会設置法が成立をしたのが平成九年でございます。そして、法律に基づく新たな男女共同参画審議会が設置をされて、推進本部と、政府の施策の、国民各層の意見を反映させることを目的とするいわゆる審議会とが、いわば車の両輪として機能しているのが現状でございます。
 最初に申し上げましたのが男女共同参画審議会設置法、そしてこれに基づく男女共同参画審議会が設置をされて、そして推進本部とこの審議会が車の両輪として今機能している。この審議会を通じて、国民各層の意見が大変よく反映をされるようになってきているのではないかというふうに思います。
 現在の共同参画審議会の構成はどのようになっているのでしょうか。時間が少なくなりまして恐縮ですが、簡潔にお願いをいたします。

○佐藤(正)政府委員 審議会の委員は、委員二十五人以内で組織するということになっておりまして、男女のいずれか一方の委員の数は委員の総数の十分の四未満であってはならない、こういうふうに規定されております。

○松本(惟)委員 ありがとうございました。
 定数と、それから男女の比率について、初めて日本の法律の中でアファーマティブアクション、つまり割り当て制度を書かれた画期的なものである。その中で今回の基本法が議論をされたわけでございます。
 次の質問ですけれども、中央省庁等改革基本法では、男女共同参画会議の任務について、次のようになっています。「男女共同参画に関する基本方針、総合的な計画等について審議すること。」これが第一点目。第二点目は、「政府の施策に男女共同参画の視点が反映されるよう、関係大臣に必要な意見を述べること。」これが二点目です。三点目は、「男女共同参画に関して講じられる施策の実施状況を調査し、及び監視すること。」とされ、構成は、内閣官房長官、関係する国務大臣及び学識経験を有する者とされているわけでございます。
 男女共同参画審議会の機能は男女共同参画会議に近々移行するわけでございますけれども、その場合に、参画会議の構成についても、参画審議会が広範な国民各層から選出をされまして、この参画審議会も、定款はいわゆる学識経験者というふうになっているわけですけれども、広範な国民の代表がここに選任をされているところでございます。こういったことがぜひ引き継がれてほしいというふうに思います。
 共同参画会議の規模それから構成員並びに選出方法についてお聞かせをいただきたいと思います。

○野中国務大臣 お尋ねの男女共同参画審議会でございますけれども、今般の中央省庁改革関連法案におきまして、男女共同参画会議の議員につきましては、一つには内閣総理大臣が指定する内閣官房長官以外の国務大臣及び二つ目に男女共同参画社会の形成に関する有識者のうちから内閣総理大臣が任命する者をもって充てることになっておるところでございます。有識者の議員の数は、議員総数の十分の五未満であってはならないとされておるところでございます。
 このように、男女共同参画会議の構成員につきましては、有識者の意見が適切に反映されるように配慮をされておるところでございますけれども、会議の運営に当たりましても、御指摘の点を踏まえて、男女共同参画社会の形成の促進に役立ちますように、議長たる内閣官房長官のもとに適切な対応がされるように私どもとしても期待をしておるところでございます。

○松本(惟)委員 大変ありがとうございました。
 時間が参りましたので、午前中の質問はこれで終わりにさせていただきたいと思います。

○二田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十七分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議

○二田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。松本惟子君。

○松本(惟)委員 それでは、引き続いて質問をさせていただきます。
 官房長官、大変御多忙のところ、ずっといていただいてありがとうございます。
 それで、推進体制というのがこの基本法を動かしていく上で大変重要なことだと私は思っておりますので、午前に引き続きまして再度確認をさせていただきたいと思います。
 初めに、まず現在の共同参画審議会の構成人数について、幾人になっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

○佐藤(正)政府委員 現在の男女共同参画審議会の人数は二十五人でございます。

○松本(惟)委員 ありがとうございました。
 二十五人ということでございます。
 今国民の皆さんが心配をしておられますのは、参画会議への移行で、この審議会、つまり、午前中にも申し上げましたように、国民各層の意見、民間の意見を反映して、しかも、四〇%条項、つまり一方の性が一方の性の四割を下回ってはいけないという大変画期的な、他の審議会のモデルともなるような規定を持っているわけでございますが、格上げをすることによって国民の声が遠ざかってしまうのではないかという心配がございます。
 新体制で、お答えがございましたように、内閣官房長官、そして関係する国務大臣から構成をされるということで、これに有識者が加わるわけですから、これまでよりもレベルの高い会議となる、それ自体は結構なことで、大切なことだというふうに私は思っておりますが、その一方で、国民各層の意見も今まで同様に反映してもらいたい、そのように思う次第でございます。
 したがって、もう一度伺いますが、官房長官が午前中に、官房長官、国務大臣と学識経験者の比率が十分の五未満というふうにおっしゃられましたけれども、構成は今お聞きしたとおりですが、どれぐらいの規模を一体お考えになっているのかということについてお尋ねをしたいと思います。
 と申しますのは、十分の五、つまり二分の一ですね。これは二分の一条項になると思いますけれども、数によって、二分の一以上というふうに理解をしていいのかというようなこと、そのことによって、国民の声が反映されにくくなるとすれば、一方ではレベルが高くなったけれども、一方ではちょっとそごが起こるというふうな心配もございますので、お答えをいただければ幸いでございます。

○野中国務大臣 午前中もお答えをいたしましたように、この議員につきましては、内閣総理大臣が指定をいたしております内閣官房長官以外の国務大臣及び男女共同参画社会の形成に関する有識者のうちから内閣総理大臣が任命する者をもって充てることとしているわけでございますが、有識者議員の数は、委員御指摘のように、議員総数の十分の五未満であってはならないとするとともに、有識者議員のうち、男女のいずれか一方の議員の数は有識者議員全体の十分の四未満であってはならないとされておるわけでございまして、議員の具体的な人選につきましては、ただいま申し上げたような経過を踏まえ、男女共同参画審議会の機能が十分発揮されるよう、諸般の事情を踏まえて内閣総理大臣が適切な人選を行うと考えておるところでございます。

○松本(惟)委員 質問の趣旨は、国民各層の意見が反映をされる大変画期的な運営がこれまでの審議会においてはなされてきたということは、これは本当に関係する人々がひとしく評価をしているところでございます。やはり民間と一緒になってこそ実効が上がっていくという基本法でございますし、実態を変えていくためにもそのことが大切でございますので、民間人による意見聴取の機能が低下をしないこと、そのことをひとつお願いをしたいと思います。
 それから、できるだけ広く意見聴取の機能を持つように、運営においても工夫をしていただくという官房長官の午前中のお答えでございましたけれども、例えば民間人のみによる討論の場、これも必要でしょう。それから関係大臣も入った会議、これも必要かと思います。それから、全体が参加する会議のように、いろいろな面での工夫を凝らした運営によりまして、引き続き、民間の意見吸収が可能となるような、そして広がりを持った取り組みとして展開がされるように、重ねて官房長官にお願いをし、御決意を聞かせていただきたいと思います。

○野中国務大臣 御指摘のように、今後の運営のあり方につきましては、広く国民各層の意見が反映されるように一層努力をしていきたいと考えておるわけでございます。
 委員が十分御承知のように、男女共同参画審議会が昨年、この答申をおまとめいただく際にも、全国六カ所で意見交換会を開催されましたし、審議会委員が約二千人の国民の皆さんとともに活発な意見の交換をされたわけでございますし、あるいはファクス等によります意見も約三千六百件の意見が寄せられたところでございますので、今後また新たに内閣に設置されます男女共同参画審議会は、さらに過去のこの経過を踏まえながら、広く国民各層の意見を吸収して、それが施策に反映されるように努力をしていきたいと考えておるところでございます。

○松本(惟)委員 ありがとうございました。
 重ねてお願いをさせていただきますが、新しい参画会議の構成におきましても、有識者の二分の一という配分、さらには民間各層からこの有識者を選任し、配置していただきたいというふうに思います。そして政府とこの学識経験者と称する方々が一緒になって、よりよい方向を導き出していただきますようにお願いをいたします。
 では、参議院での修正が前文においてなされたというふうに承知をいたしております。そのことについて質問をさせていただきます。
 本案は、参議院におきまして、自民党、自由党、民主党、公明党の四会派提出の修正案が賛成多数で可決をされました。そこで、その修正の内容並びに趣旨、目的等について提出者に伺いたいというふうに思います。質問の一つ目はそのことでございます。よろしくお願いします。

○江田参議院議員 お答えいたします。
 参議院においては総務委員会に付託をされまして、総務委員会で、自民党、自由党、民主党・新緑風会、そして公明党、四会派の提出の修正案が出されました。この修正案が委員会において賛成多数で可決をし、したがって、委員会の議決は修正ということになりまして、これが本会議で全会一致で可決をされたという経過でございます。
 民主党・新緑風会を代表して、私が提出者になりましたので、私どもの立場から、どういう趣旨で修正案を出したかということについて申し上げます。
 御承知のとおり、男女の平等、同時に、男女がともに参画をして、それぞれの個性、能力に応じて均等な立場で社会に参画をしていく、これは長い経過を持った、言ってみれば闘いの歴史であったし、またこれからもそのことを目指して進んでいくものと私ども思っております。
 そうした中で、さまざまな論点が議論をされまして、そして政府においても、そうした論点を政府の立場からまとめて、今回の政府提案という法律案が出されました。そのことについては、私ども、これは高く評価をするにやぶさかじゃありません。
 しかし、政府の立場で多くの論点を取りまとめるというのはそれなりにやはり限界があるだろう、いろいろそこから落ちるものがあるだろうというので、私ども民主党・新緑風会として、我々の立場から今までの経過を振り返って、こういうことが大切だ、これはやはり基本法に盛り込むべきものだ、そんなものを取りまとめ、これをまた政府案とは別個の議員提案の法案として作成をし、参議院において提出をさせていただきました。
 同じテーマについての二つの法案ですからこれは対案ということになるだろうと思いますが、さまざま違いがあります。題名について、あるいは前文について、法律の目的についてなどなど、女性への暴力のことであるとか、あるいは救済体制のことであるとかさまざま違いがございますが、こういうものを出しながら、しかし、そこで対決とかというのじゃなくて、よりいいものをつくろう、こういうことで、テーブルの上に二つの案を出して参議院で議論をする、こういうやり方をいたしたわけです。
 ちなみに、このことについては参議院の委員会で、きょうお見えの野中官房長官から、これは提案している政府側としては申しにくい見解を求められておるわけでございますけれどもという前置きつきですが、一人の立法府にある者として、こういうあり方というものは、新しい合意形成を求める議会制度のあり方としても私どもは高く評価をしている次第であります、そういう答弁もいただいているところでございます。
 しかし、残念ながら、私どもの対案が成案になる、これはやはり限界がございまして、そういう議論を踏まえて、政府案を軸としながら、これを少しでも私どもの考えるいい方向に向けていきたい、こんなことで野党いろいろ議論をいたしました。前文をつけて趣旨、目的を明確にして法律をよりわかりやすくしようじゃないかとか、あるいは救済体制についてもっと法整備を含む方向性を示していこうじゃないかとか、あるいは地方への要請も法律の中にはっきり書き込もうじゃないかとかいろいろな議論をいたしましたが、最終的に、そうした経過で、前文をつけて法律の趣旨、目的等をより明確にしようという修正で、先ほど申しました四会派の意見がまとまったということでございます。
 修正の中身についてはもう皆さん御承知のとおりだと思いますけれども、私どもはまず、男女平等、日暮れてまだ道遠し、さらに、新しい時代をつくるためには男女共同参画ということが必要だ、そのために一定の方向を示していこう、これがこの法律である、そして特に、「男女共同参画社会の実現を二十一世紀の我が国社会を決定する最重要課題と位置付け、社会のあらゆる分野において、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の推進を図っていくことが重要である。」こういう高い位置づけを前文の中で書き込んだわけです。
 もとより前文というのは、これは法令の本文とは意味合いが多少違います。本文のように具体的な事項を定めたものではなくて、その意味では、前文の内容から直接法的効果を生ずるものではありません。しかし、各条項とともに法令の一部を構成し、また各条項の解釈、運用の基準を示すという意義、効力を有するものであって、法律全体が生き生きとしたものになったと思っております。

○松本(惟)委員 ありがとうございました。
 真摯な参議院での討論を経まして与野党合意で前文がつけられたことについて、私もよかったというふうに思っております。
 あと一つ質問をさせていただきたいと思います。
 男女共同参画社会というのは、国会の中ではこれまでの審議を通じてかなり浸透してきたと思いますけれども、国民一般については、まだ難解な言葉であるというような向きもございます。残念ながら、まだ広く行き渡ってはいない。そういう意味合いで、この修正によって新たに前文が加えられたことによって、法律の趣旨、目的、理念がよりわかりやすくなったことは事実ですし、その意味でも一歩前進であろうか、法文そのものまでいきませんでしたけれども、そのように思います。
 そこで、確認的に、前文の二つのパラグラフのところに「社会のあらゆる分野において、」というふうに書かれております。施策の推進を図る必要があるということですが、この「あらゆる分野」というのは、職域、学校、地域、家庭その他のあらゆる分野と理解してよろしいのでしょうか。簡単にお答えいただきたいと思います。

○江田参議院議員 おっしゃるとおりでございます。
 三つ目のパラグラフでございますが、これは政府の提案理由の説明の中にも社会のあらゆる分野においてという表現がございまして、国、地方公共団体及び国民が、職域、学校、地域、家庭その他のあらゆる分野において男女共同参画の実現に積極的に取り組んでいかなきゃならぬ、そういう趣旨で書き入れておるものでございます。

○松本(惟)委員 どうもありがとうございました。
 本当に、御苦労と御努力を受けまして、衆議院におかれましても、私も一生懸命、残された審議の時間、この法案がよりよいものとして誕生しますように力を注いでまいりたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○二田委員長 次に、石毛えい子君。

○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 男女共同参画社会基本法案の審議に際しまして、私は、たくさんの内容が盛り込まれている法案ではございますけれども、次の二点、大変重要な関心を持っております。
 第一点は、女性に対する差別、人権侵害を克服して、男女が平等に、かつ、ともに参画する男女共同参画社会を築いていくには、国及び自治体がしっかりと男女共同参画基本計画を策定し推進することが大切であるということが一つでございます。
 もう一つは、同時に、一人一人の個々人、女性が平等や共同参画を妨げられ、あるいはまたその人権が侵害された場合に、この男女共同参画社会基本法がしっかりとした救済策を法のうちに担保している、そのことが法を基本法として実効性を持つようにするために必要であり、かつ重要な大切なことだというふうに思っております。
 そのような観点に立ちまして、私の質問時間それほど多くはございませんので、きょうは、法案第十七条の苦情処理と救済策にかかわって質問をさせていただきたいと思います。
 まず、第一の質問でございますけれども、この苦情処理と救済を実際にどのように実施していくかということに関しまして、参議院での審議、そしてまた衆議院本会議での民主党の松本惟子議員の質問に対しまして御答弁いただいておりますのは、行政改革の折でもあり、行政相談委員や人権擁護委員など既存の制度を活用するという御答弁をなされていらっしゃいます。
 そこでお尋ねしたいのでございますけれども、この行政相談委員の活用と申します場合に、現在の諸制度におきまして、具体的にどのような行政相談委員を想定しておられますか。まだこれから、法が成立して、その後、審議会あるいは参画会議等々を経て動いていくことだというふうには存じますが、当然今までの審議の過程でもさまざまな議論がなされてきたということでございますので、現状の制度におきまして行政相談委員としてどのような相談委員が想定されておりますかということをまずお示しいただきたいと思います。

○佐藤(正)政府委員 どのような行政相談委員というお話でございましたが、国の行政相談制度というのがございまして、総務庁の行政監察局をヘッドといたしまして、地方の監察局、監察事務所までございますが、その下に行政委員が配置をされております。各国民から行政に対する相談がありました場合には、行政相談委員に相談、あるいは行政監察局の相談窓口がございますが、そちらの方に相談ができるという形になっておりますので、このシステム全体を考えております。
 そのほかに人権擁護委員の制度等ございますが、そういう制度を活用してまいりたいと考えておるわけでございます。

○石毛委員 もう少し具体的にお教えいただけますとありがたいのですけれども、例えば今の制度でいいますと、どういう機関に行きますとどのような行政相談委員がおられて、男女共同参画の問題、あるいは女性としての人権の問題に困ったこと、困難なことが起こった場合に相談できるかというようなことをお教えいただきたいと存じます。

○野中国務大臣 本会議においても答弁申し上げたところでございますけれども、人権の救済、苦情処理というのは非常に重要な問題でございます。
 それだけに、ただいま政府委員も答弁申し上げましたように、行政相談委員とか人権擁護委員等の積極的な活用をしていかなければ、一方において行政改革を言われておるときでございますので、可能であれば、それぞれの地域に苦情処理ができる機関が設けられることが望ましいわけでございますけれども、私どもといたしましては、ひとまずこの行政相談委員や人権擁護委員の方々に、この法が通りました後、関係各省の協力をいただいて、積極的に女性の委員の委嘱を進めていくということ。そして、そういう中から男女共同参画に関する認識を高める研修の機会あるいは情報の提供を図って、そしてこの方々が女性問題に関して高い識見を男女とも持っていただくようにしてまいらなくてはならないと思いますし、そうしない限り、この人権なり苦情の救済あるいは処理ということを実効あらしめることはできない、このように思っておる次第でございます。

○石毛委員 ただいま官房長官から大変力強い御答弁をいただいたと思います。
 男女共同参画社会というような表現は、本当にこの数年間の間に広がってきたといいますか、考えられてきた表現でございまして、まだまだ知られていない地域で個々の立場から見れば、本当にどこでそういうことが行われているかというような実情だと思いますので、ぜひ積極的に、今おっしゃられましたように女性の委員をたくさんふやされて、実効性のあるような方策を御検討いただければと存じます。
 次の質問でございますけれども、もう一点、ただいまお述べになられました人権擁護委員についてお伺いしたいと思います。
 まず、人数がどれぐらいおられるのかということ。それから、年代別、男女別の構成はどうなっているかということ。そして、いろいろな人権擁護委員に相談がなされておりますでしょうから、主要な案件別にと申しましたらよろしいでしょうか、できましたら、女性にかかわって、どういう相談がなされているかというようなことをお示しいただければと存じます。

○幕田説明員 現在、人権擁護委員は全国に約一万四千名が配置されておりまして、そのうち女性委員は約二八%に当たる約四千名でございます。その年齢構成別を申し上げますと、次のとおりでございます。
 五十歳未満の方が全体で約六百名でございまして、うち女性が約二百名であります。次に、五十歳から五十九歳までが委員全体で二千名でございまして、うち女性が約千名。次に、六十歳から六十九歳までが、委員が約八千名、うち女性が約二千二百名でございます。七十歳以上が、委員が約三千四百名、うち女性が約六百名でございます。
 人権擁護委員が取り扱った人権相談件数でございますが、平成八年が十七万九百七十五件、平成九年が十六万三千八百六件、平成十年が十六万九千四百九十二件となっております。
 その相談の内容でございますが、家事、民事に関する相談が多うございますが、女性の人権問題等の細かい統計はとってございません。
 以上でございます。

○石毛委員 約一万四千名の人権擁護委員のうち、三〇%弱、四千名が女性ということでございます。そして、年代構成別に見ますと、六十歳以上の方で一万一千四百名、うち女性が二千八百名ということで、お聞きしましたところ、人権擁護委員は超高齢社会という感想を持ちました。
 それから、男女共同参画という観点から見まして、この女性の割合はどうなのかという感想も持ちますところでございます。
 官房長官、突然で恐縮でございますけれども、今の年齢別、それから男女別というような実情でございますけれども、男女共同参画社会に対応する人権擁護委員の今の実情として、どのような御感想をお持ちでいらっしゃいますか。ちょっとお尋ねさせていただきたいと存じます。

○野中国務大臣 先ほども申し上げましたように、人権擁護委員、行政相談委員、それぞれ今までに設置されたものは、男女共同参画社会を構成するという上での建前に立ってでき上がったものでないと思うわけでございまして、本法が成立しました後はそれぞれ関係各省にお願いをいたしまして、先ほど申し上げましたように、男女共同参画社会の理念、政策、すべてが、研修やあるいは情報公開等を通じてわかっていただき、そして、その苦情処理や人権救済がその人たちの手によって受けとめられるような、そういう仕組みを私どもとしてはやっていかなくてはならないと認識をしておるところでございます。
    〔委員長退席、植竹委員長代理着席〕

○石毛委員 人権擁護委員の所管は法務省でございますので、こんなことを申し上げることもないことですけれども、ぜひ省を超えたところで、官房長官おっしゃられましたように、男女共同参画に対応し得る人権擁護委員ということで、これから積極的に充実していただければというふうに思います。
 そしてまた、統計のとり方なども、今の法務省の統計では、例えば高齢者の方ですとか障害者の方、女性の方、それぞれの属性別というふうに申しましょうか、それではどういう問題が起こっているかということがとれない統計の仕組みになっていると思いますので、その辺もどうぞ御検討をいただきたいと思います。
 次の質問でございますけれども、九四年度から子どもの人権専門委員、それから九六年度から人権調整専門委員という、人権擁護委員の仕組みの中で新しい委員のシステムが誕生しているということでございますけれども、その経緯を簡単に御説明いただきまして、そして、人数ですとかあるいは一般の人権擁護委員の方とどのような職務上の違いがあるのかというような点を御説明いただければと存じます。

○幕田説明員 先生が御指摘のとおり、子どもの人権専門委員制度が平成六年七月一日から設けられております。これは、同日付の法務局長、地方法務局長あての人権擁護局長通達に基づいて設置されているものでございます。
 これが設けられた趣旨は、子供の人権に関する問題が種々起こってきたこと、子どもの権利条約が批准、発効したこと等を踏まえて、子供の人権を専門に取り扱う人権擁護委員を、一般の人権擁護委員の中から適任者を人権擁護局長が指名する形で設けたものでございます。
 また、人権調整専門委員制度も、先生御指摘のとおり、平成八年七月一日に設置されたものでございます。設置根拠は、同日付の人権擁護局長の法務局長、地方法務局長あての通達に基づくものでございます。
 この制度が発足した経緯でございますが、人権侵犯事件に対する取り組みにつきましては、従来から法務省それから人権擁護委員が取り組んできたところでございますが、近年、特に被害者の実質的な救済を図る必要があるということが各方面から指摘されたことから、人権擁護委員の中から人権調整専門委員を指名いたしまして、中立公正な立場から、人権侵犯事件のうち被害者の実質的な救済を図る必要があると認める事件につきまして、当事者の言い分あるいは事実関係を確認した上で、その言い分や利害を調整することによって紛争を円満に解決し、人権侵害を受けた被害者の救済を図ろうということで設けられたものでございます。

○石毛委員 人数等もお示しくださいというふうにお願いいたしました。

○幕田説明員 失礼しました。
 現在、子どもの人権専門委員は全国に約七百名配置されております。うち女性委員は約三六%に当たる二百五十名でございます。また、人権調整専門委員は現在全国に約二百五十名配置されておりまして、うち女性委員は約二四%に当たる約六十人でございます。

○石毛委員 重ねてお尋ねいたしますけれども、人権調整専門委員二百五十名は全国に配置でございますか。
 それと、子どもの人権専門委員に関しましては、よく子ども人権オンブズマンというような通称をお聞きすることがございますけれども、法務省としても、この子ども人権オンブズマンというような表現は使っていらっしゃるのでしょうか。その点をお願いします。

○幕田説明員 人権調整専門委員二百五十名は全国に配置されている数でございます。
 それと、子どもの人権オンブズマンという名称は、人権擁護委員の県レベルの連合会の実情に合わせて使っておりまして、これにつきましては、その使用については法務省としては特に何ら異論はないということで考えておるところでございます。

○石毛委員 オンブズマンという表現を使われますと、例えばオンブズマンという職務につく人は、行政からは独立して任命されているとかあるいは勧告権を持つとか、北欧等のオンブズマンにつきましては、オンブズマンとしての固有の権能というのを持つようにシステム化されておりますけれども、今の御答弁では、県レベルの連合会の実情に応じて通称として使われているということでございます。
 このごろは市民オンブズマンですとか、いろいろオンブズマンという表現はその立場、その課題等々によって使われておりますから、法的にはどうというような問題点があるわけではないのかもしれませんけれども、法務省にかかわりまして、子どもの人権オンブズマンという通称が使われていることにつきましてどのような御感想をお持ちでしょうか、そこのところをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

○幕田説明員 オンブズマンという用語でございますが、厳密に言うと、外国の制度等で示されているようないろいろな特徴があるわけでございますが、私どもとしては、各県レベルで使われているオンブズマンというものは、いわば住民に対するわかりやすさという観点から選ばれて使われているものというふうに承知しております。

○石毛委員 きょうはこの点にはこれ以上入るつもりはございませんけれども、少し、やはり法務省の所管の中でこういう表現がされているということについては、例えば男女共同参画社会基本法の審議の過程で、この男女共同参画についてもオンブッド的な機能を持つような、そのような仕組みを考えるべきではないかというような議論もあったと伺っておりますので、そのあたりは厳密に精査をしていただかないと、通称のような形でこれが流布するということは、仮に人権擁護委員の方たちが男女共同参画社会の法の内容に対応していくというふうに想定しますと、いろいろとわかりにくさを広げていくことになるかとも思いますので、その点は今後とも御検討をよろしくお願いいたします。
 それで、次の質問でございます。
 繰り返しになりますけれども、人権擁護委員が男女共同参画あるいは人権の侵害に対して対応していくということでございますけれども、この点を人権擁護委員の職務にかかわってお尋ねしたいと思います。
 人権擁護委員法第十一条で規定しております人権擁護委員の職務は五点挙げられておりまして、一点が自由人権思想に関する啓蒙及び宣伝、二点が民間における人権擁護運動の助長に努める、三点目が人権侵犯事件につき、その救済のため、調査及び情報の収集をなし、法務大臣へ報告それから関係機関への勧告等適切な処置を講ずる、四点目、貧困者に対して訴訟援助その他人権擁護のため適切な救済方法を講ずる、五点目、その他人権の擁護に努めるというふうに規定されております。
 この法案にかかわりまして重要な点は、私は、三点目の人権侵犯事件につきその救済のためにどういう活動をするかということと、四点目の貧困者に対して訴訟援助等というところがとりわけ重要な意味を持つかと思いますけれども、三点目の職務にかかわりましてお尋ねしたいと思います。
 まずその一つは、ここで規定されております調査及び情報の収集というのは、人権擁護委員の方はこの数年どれくらいの件数でなさっていらっしゃるのでしょうかということ。それから二つ目が、その調査及び情報の収集というのは、人権擁護委員の主体的な判断でなし得るのか、あるいは、いずれかの機関等の指揮指導に基づくものなのかどうか。それから、関係機関への勧告件数はどれくらいになっているのか。それから、個々の人権侵犯の事件の申し出がありましたときに、それらの事案に対応した、その一連の申し出から解決、あるいは解決がつかない場合もあるのかもしれませんけれども、個別の事案につきまして評価はどのような仕組みで行われていますかという、以上、四点につきましてお尋ねいたします。

○幕田説明員 人権擁護委員が人権侵犯事件の調査処理に関与した件数でございますが、平成八年が一万九百六十四件、平成九年が一万九百七十五件、平成十年が一万一千五百十八件となっております。なお、委員が情報収集だけをしたという件数につきましては、統計はとっておりません。
 委員がお尋ねの、次の主体的な判断によって調査や情報収集を行うのかという点でございますが、人権擁護委員は、独自に情報を収集し、また調査等に従事することもあるわけでございますが、人権擁護委員法第十四条で法務大臣の指揮監督を受けるものとされておりますことから、委員は、人権侵犯事件につきまして、法務局長あるいは地方法務局長と密接な連絡及び協議を経た上で調査処理に当たるものとされております。
 なお、人権侵害の現状を直ちに排除するなどの急速を要する事案につきましては、人権擁護委員の独自の判断で即時適切に対処することができます。この場合は、事後的に法務局または地方法務局に通報するものとされておるところでございます。
 また、人権擁護委員が関係機関への勧告を独自に行った事例は見当たりませんが、個々の事案に関して言えば、例えば最近ですと、中学校教師が生徒に体罰を加えた事案に関連して、体罰禁止の重要性を訴える談話を人権擁護委員の県の連合会長が法務局長と連名で発表し、地域の啓発に努めた事例などがございます。
 また、申し立てを受けた後、処理までの間につきましては、先ほども申し上げましたように、申し出がありました後、その調査方針を立て、それから、具体的な調査を行うに当たりましては、人権擁護委員は法務局や地方法務局と緊密に連携、連絡をとりながら行うこととされており、このような仕組みによりまして、人権擁護委員による効果的な救済活動が行われるように期しておるところでございまして、この過程におきまして、人権擁護委員の個々の取り組みについての評価がなされているところでございます。
 しかしながら、委員お尋ねのような、全体を通しての効果測定のようなものは手続としては行われておりません。しかし、その処理の後、人権侵害が繰り返されたような場合については、再度適切な対応に努めておることは当然でございます。

○石毛委員 この調査に関しまして、今人権擁護委員一般について御答弁いただいたんだと思いますけれども、先ほどの人権調整専門委員は、当事者の言い分を聞く、あるいは事実関係の調査に当たるというような御答弁をいただいたと思いますけれども、人権委員一般の方と調整専門委員の方とのもしも権能の違いというようなことがございましたらば、その点を教えていただきたいと思います。

○幕田説明員 一般の人権擁護委員の権限も、それから一般の委員の中から選任される人権調整専門委員も、その法的な権限は人権擁護委員法に基づくものでございまして、同じでございます。
 しかしながら、人権調整専門委員は、事実関係の調査あるいは当事者の言い分の調整などに適した専門的な知識あるいは経験のある方を中心に指名しております。また、その活動の範囲も、一般の人権擁護委員の場合は、その推薦された市町村の区域内に活動が限定されるわけでございますが、人権調整専門委員の場合は、その活動を円滑に行うために、都道府県の単位で職務が遂行できることとされておるところが違う点でございます。

○石毛委員 次の質問でございますけれども、人権擁護委員法の第八条は、人権擁護委員の給与は実費弁償を受けることができるほかは無給というふうになっております。つまり、ボランティア活動であるということだと思いますけれども、これで人権擁護委員の活動が十分になされ得ると認識されておられるのでしょうか。それとも、これから、法が成立しまして、人権擁護委員の新しい活動分野が広がっていくということを想定しまして、今後のことも展望したときに、無給の人権擁護委員制度につきましてはどういう評価をなさっていらっしゃるでしょうか。そこのあたりをお尋ねしたいと思います。

○幕田説明員 人権擁護委員は、委員法にも使命として挙がっておりますように、国民の基本的人権を侵害されないように監視し、人権侵害があった場合には、その侵害を排除して救済し、人権思想の普及高揚に努めるという大変崇高な使命を負っておるものでございまして、また、こういった使命をいわゆる対価を受けることなくボランティアとして行うものとしたことにつきましては、委員法制定のときの関係者が大変高い志を持っておられたからではないかというふうに考えておるところでございます。
 しかしながら、人権擁護委員に対しましては、人権擁護委員法八条にもございますように、予算の範囲内で、職務を行うために要する費用を、実費を弁償することとなっておるところでございます。この観点から申しますと、今後とも委員の実質的な人権擁護活動に支障が生ずることのないように、予算のできる限りの確保及び効率的な執行に配慮していく必要があるだろうと考えているところでございます。

○石毛委員 今の御答弁は、最後のところがちょっと明確ではなかったような感じがいたします。実費弁償という意味で予算をできるだけ拡大する、そういう御答弁だったんだと思いますけれども、推察によっては、予算を拡大する中で第八条の改正もあり得て、有給化というふうなことにも聞こえなくはないということで、御答弁はあえて求めませんけれども、そういう感想を持ちましたということを申し上げたいと思います。
 それで、時間の関係もありますので次に移らせていただきます。
 これは、つとに指摘をされていることでございますけれども、国連規約人権委員会は、昨九八年十一月の第四回委員会の最終見解としまして、日本の人権擁護委員につきまして、人権擁護委員は法務省の監督下にあり、またその権限は勧告を発することに限定されていることから、人権侵害の申し立てに対する調査のための独立した仕組みを設立することを強く勧告する、そういう見解を表明しております。
 人権擁護委員の活動を所管する法務省として、この規約人権委員会の勧告をどのような認識で受けとめられておられますでしょうか。

○幕田説明員 人権救済制度のあり方につきましては、人権擁護施策推進法に基づきまして平成九年に法務省に設置されております人権擁護推進審議会におきまして、法務大臣からの諮問に基づいて、本年九月以降、本格的に調査審議がされる予定であると承知しております。
 委員が御指摘されたように、規約人権委員会からは、人権侵害の申し立てに対する調査のための独立した機関を設置すべきとの指摘を受けており、人権救済を行う機関については一定の独立性が必要との考えもあるところでありますが、法務省といたしましては、審議会での調査審議の結果も踏まえて慎重に検討してまいりたいと考えております。

○石毛委員 きょう、人権擁護委員につきまして法務省から一連の御回答をいただいたわけですけれども、先ほど来伺っておりましても、人権擁護委員に申し立てがあります侵犯事案といいますのは年に大体十七万件ぐらい、その中で人権擁護委員の方が調査をされております件数というのは一万強ということで、十七万件申し出がありました中で、全部が調査が必要かどうかということはあるかと思いますけれども、調査に当たっているのは一万件ぐらい。
 しかも、この調査といいますのは、人権擁護委員の権限としては、たとえ法務大臣の管轄下にあるとはいえ、独自の調査権を持つわけではなくて任意調査ということでございますから、積極的に人権擁護委員の独立した判断で調査ができるわけではない、そういう仕組みとして今機能している。しかも、無給のボランティア活動ということになっているわけですから、結果的にはやはり六十代、七十代の方が多くなるというのは当然の仕組みなんだろうと思います。
 今、人権擁護推進審議会で、九月以降この救済について審議をするということでございますけれども、国際的には、人権救済のあり方につきましては、例えば国連の人権センターは六つの指摘をしております。
 改めて申し上げるまでもないと思いますけれども、独立性、それから明確に規定された管轄権と十分な権限、アクセスの容易さ、政府間機構、民間活動等との協力、そして活動上の効率性、それから説明責任、こういう人権機関のあり方としての六つの要素を尺度として日本の人権擁護委員の制度についてはかってみるときに、きょう、私は、日本の人権擁護委員の仕組みというのは、それぞれ個々の人権擁護委員の方の御努力は別として、システムとして非常に心もとない、脆弱な仕組みだ、そういう見解を持っております。
 そうしたこともありまして、民主党が提案させていただきました法案の中では、この男女共同参画に対する苦情処理や、それから人権侵害に対する救済として、新しい法制度の立案を求めるということを入れさせていただいたところでございます。この点を申し述べさせていただきたいと思います。
 最後に、官房長官にお尋ねをしたいと思います。
 女性に対する暴力に関連してでございますけれども、この点は参議院の附帯決議に盛り込まれました。審議会からもこの点に関しまして報告書等が出されておりますから、これから積極的な議論が進んでいくことと期待をしておりますけれども、ドメスティックバイオレンスというのは、今、日本の社会にとって非常に大きな問題になってきております。そして、既に、女性に対する暴力につきましては、日本の中、さまざまな地域で、本当に真剣に、大変経済的にも精神的にもいろいろな御苦労をされながら、NPOの皆さん、そしてNGOとしても活動に取り組まれているところでございます。
 私は、新しい国内の人権機関を設置していく場合に、ぜひともこういうNPO、NGOとの連携がきちっととられるようなシステムとして形成していっていただきたいと思いますけれども、官房長官、こうした民間で行われております女性の暴力に対するNPO、NGOの支援活動にどのような御認識、また評価をお持ちでいらっしゃいますでしょうか、その点をお尋ねして質問を終わりたいと思います。

○野中国務大臣 女性の基本的人権の享受を妨げましたり、あるいは自由を制約するような女性に対する暴力は、この法案の基本理念に照らしまして、決して許されるべきものではないわけでございます。
 委員が御指摘になりましたようなNPOやNGO等さまざまな民間団体が、家庭内暴力等の被害を受けている女性を一時的に保護をしたり、あるいは自立のための支援を温かく支えていただいておるシェルターを運営していただいておることを私どもも聞いており、深い敬意を表しておる次第でございます。
 先ほど来申し上げておりますように、先月二十七日に男女共同参画審議会から総理大臣に提出をされました答申におきましては、被害者の支援、援助を効果的に行う上で、警察、医療機関、各種相談機関、民間の被害者援助団体等の関係機関・団体、専門家等が相互に連携をとることが大切であると指摘をされておるわけでございまして、また、当面の取り組み課題といたしまして、これら関係機関・団体、専門家等に対しまして、各種の情報の提供等支援を行うことが提言をされているところでございます。
 この答申を踏まえまして、政府全体といたしまして積極的に取り組んでまいりたいと思うところでございます。もちろん、私どもといたしまして、このNPO、NGO等、どのようにこれを支援しあるいは税制面等を配慮していくかを今あわせて検討しておるところでございます。

○石毛委員 質問を終わります。
 ぜひとも積極的な方策をお出しいただきますようお願いいたします。ありがとうございました。

○植竹委員長代理 次に、山中あき子君。

○山中(あ)委員 山中あき子でございます。
 この男女共同参画基本法の推進をぜひ進めてほしいというファクスや要望書やいろいろなものが、このぐらいうずたかく私の事務所にも来ております。それだけ女性の期待が大きいのであろうというふうに思っておりますが、参議院の議事録を拝見いたしましても、細かいことはもうほとんど議論が尽くされていると思いますので、私は、きょうは、これをどう具体化していくのか、いつ、どのような形に持っていくのか、そういう視点に絞って質問をさせていただきたいと思います。
 私は、日本の女性は非常に我慢強い方だというふうに思っておりますけれども、あす六月九日に、女性の政治参加を促進するためのWINWINという新しい組織が日本に初めてできまして、これは、資金も調達して女性の議員を支援していく、ただし、女性はだれでもいいということではなくて、きちんと選別する組織があるそうでございますが、日本もそういった動きが初めて出てくるというような動きになってまいりました。
 まさにこの男女共同参画基本法案というのは、そういう意味でそれを加速するという大きな役割があるというふうに思っておりますが、まず一番最初に、この基本法の意義、そして特徴というようなことについて、大臣からお話を承りたいと思います。

○野中国務大臣 お願いをいたしておりますこの男女共同参画社会基本法案は、申し上げるまでもなく、男女共同参画社会の形成に関しまして、基本理念、国等の責務及び施策の基本となります事項を定めることによりまして、男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的とするものでございます。
 政府といたしましては、第十三条に定めます男女共同参画基本計画の策定等、本基本法案の枠組みを活用しながら、幅広い分野にわたる男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進をしてまいる所存でございます。

○山中(あ)委員 今、基本計画の策定その他について基本的な理念を述べられましたけれども、もう一度、これは政治の意思がないと早く進めることができないと思いますので、官房長官として、基本法の策定を速やかに行うということも含めまして、この基本法案を実効あらしめるために最大の努力を払っていただけますでしょうか。その決意をお伺いしたいと思います。

○野中国務大臣 ただいま国会に、一方におきまして中央省庁再編のための法案をお願いをしておるわけでございます。その中におきまして、内閣府機能の拡充を行いまして、先般も申し上げましたように、現在の男女共同参画審議会も官房長官の議長としての位置づけを明確にいたしまして、そのもとに、男女共同参画室でありましたものを男女共同参画局に格上げをいたしまして、その内容を充実して、そしてお互いにこの内閣機能を生かして、それぞれの各省庁の調整機能も果たしながら男女共同参画社会の形成に資してまいりたい、このように思っておる次第であります。

○山中(あ)委員 決意を承りましたので、早速その法案に沿いまして、日ごろ考えておることを申し上げながら少し議論をさせていただきたいと思います。
 まず、前文に加わりましたところでございますけれども、そこの中に「日本国憲法に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ、男女平等の実現に」というようなくだりがございますけれども、平等ということは、非常にわかりやすいようでわかりにくい言葉でございます。例えば、男の子は青い服を着て、女の子は赤いかばんを持つというような平等の時代もありましたけれども、これから二十一世紀、平等というのはどういうような概念を考えていらっしゃいますでしょうか。

○野中国務大臣 なかなか平等という問題について、これを具体的に申し上げることの難しさを思うわけでございますけれども、少なくとも男女平等の実現につきましては、男女共同参画社会の前提となるものであるというように考えておるところでございます。
 したがいまして、この法案におきましても、男女共同参画社会が、男女が社会の対等な構成員として活動に参画する機会が確保される社会である旨を規定いたしますとともに、基本理念といたしまして、男女が性別による差別的取り扱いを受けないこと等の男女の人権の尊重を掲げておるところでございます。男女共同参画社会の実現というのはまさしく男女平等の実現でありまして、今後ともこれを本旨として取り組んでまいらなければならないと存じておるところでございます。

○山中(あ)委員 これは一九九四年に出ましたスウェーデンのスウェディッシュ・ワーク・エンバイロンメント・ファンドという中に、これはスウェーデンにおける平等の定義ということで、経済的な自立できる職業につくための権利、義務、機会。それから家庭を大切にし子供の世話をするための権利、義務、機会。政治、労働組合、これはスウェーデンですから労働組合、そのほか社会活動に参加するための権利、義務、機会というようなものを平等の権利、義務、機会というふうに認定しております。
 そして、教育、職業の選択、余暇の活動、権力や影響力を持つ立場など社会のあらゆる領域において、男性と女性のバランスが不可欠である。このバランスとは、女性、男性がどのようなグループの中でも少なくとも四〇%の人数を占めることを意味する。質的には、ノウハウ、経験、男女の価値観は、社会のあらゆる局面を向上させ影響を与えることが考慮される平等の機会を与えるべきであるというふうなことが言われております。
 先ほど官房長官がおっしゃいました、審議会の人数は改めて行政改革の後は四〇%ということがうたわれておりますので、まさにそういう意味では、進んでいると言われているこのスウェーデンに匹敵するようなところを目指しているのであろうというふうに思っております。
 そういう意味で、平等というのはいろいろな概念がありますけれども、ただ一点申し上げておきたいと思いますのは、単に差別を撤廃すれば平等になるというような考え方よりも、もっとそれから進めて、実質的にそれぞれ男性、女性がどういうクオリティー・オブ・ライフを追求していくか、そういう意味で、差別があったから差別をなくするよりも、超えた意味の人権、そういう発想で平等をとらえていただきたいというふうに思います。いかがでしょうか。

○野中国務大臣 議員お説のとおりだと思っております。

○山中(あ)委員 次に、やはり前文の中に、男女が互いに人権を尊重しつつということがございます。
 先ほどどなたかも触れていらしたと思いますけれども、やはり人権の最も基本的な尊重というのは核である家庭の中における人権の尊重だということを考えますと、女性への暴力というのが先ほどからもお話が出ておりますけれども、実は家庭内、ドメスティックバイオレンスというのが、これは東京都の調べでございますけれども、けさの新聞にも出ておりましたけれども、精神的暴力を受けたことがあるというのが五〇%。そして身体的な暴力を受けたことがある、これは夫やパートナーからということでございますが、それが三三・一%。それから性的暴力を受けたというのが二一・〇%というところまで来ております。
 人間開発指標という指標の中で、いつもカナダが一位で、日本はついこの間まで三位でしたが、残念ながら、今回は八位に転落している。こういう状況の中で、バンクーバーの総領事夫人の殴打事件もございましたけれども、やはり、これは文化の違いではなくて人権の意識の違いであって、それは日本がかなりおくれた状況にあるのではないかというふうに私は思っております。
 つまり、一番信頼しているはずの家族あるいはパートナーから暴力を受けたということは、人間として非常に精神的に不安定な状況に陥るわけで、それがすべての人間の活動に影響してくるというふうに思いますし、子供への影響も非常に大きいと思います。この点に関して、男女共同参画室の方では、平成十年度の予算、平成十一年度の予算の中に暴力に関する実態の調査費というのが計上されておりますけれども、実際にはまだ未調整で行われていないという報告が来ております。
 私は、これに加えて、そんなに大きな予算じゃありませんから、調査費用のみならず、こういうことが人間として人権を侵害するのだということに対する意識の改革といいますか、コンシャスネス・レージングといいますか、啓蒙のために、そういうことを男性にも女性にもわかってもらうための活動の予算もつけていただきたいというふうに思うのですが、その点はいかがでしょうか。
    〔植竹委員長代理退席、委員長着席〕

○佐藤(正)政府委員 平成十一年度におきましては、男女共同参画室の予算をかなり大幅に増額をいたしまして、先生今御指摘になりました実態調査費を入れるとか、それからまた啓発活動のための経費も盛り込んでいるところでございます。先日、男女共同参画審議会から暴力に関する答申もいただいて、実態調査をするようにというような御指摘も受けておりますし、啓蒙啓発も力を入れるようにという御指摘を受けておりますが、ここにつきましては、十分力を尽くしてまいりたいと考えております。

○山中(あ)委員 ぜひそういう方向で、早速調査を実施に移し、啓蒙活動を始めていただきたいと思います。
 次に、法案そのものの第一章の中の第二条の定義のところでございますけれども、ここの部分で、社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が保障され、ともに責任を負うべきであるということがございます。そしてまた、四条の方には、「男女の社会における活動の選択に対して中立でない影響を及ぼすことにより、」ということがございまして、選択を保障するというところがございます。
 私は、この文言が入ったことを大変喜んでおりまして、進んだ社会というのは選択のできる社会であるというふうに考えるわけですから、その選択を保障するという意味で大変この文言は評価いたしますが、これが具体的にどうなっていくかというところがまだ見えておりません。
 実は、日本の主婦あるいはその主婦を取り巻く環境で、外へ出ることがなかなかできないので、もっと外へ出やすくしようという議論がずっと参議院からなされてきました。
 私は、なぜ選択ということを申し上げているかといいますと、九四年にまだ大学におりましたときに、ロシアのIMEMOというところのお招きで、ロシアで女性の意識調査を、ほんの少しですけれども、したことがございます。そのときに、理想の女性像というものの三十数%は日本の専業主婦というのが出てまいりました。その理由は、旧ソ連時代は女性も働かねばならなくて、とにかく、仕事についてといっても、これは選択をした仕事ではなく、ねばならない、そういう中で行われてきた仕事であった。しかし、自分たちが自由社会のロシアに変わって、選べるのであれば、何か海の向こうから見ると日本の専業主婦は大変よく見えるらしくて、自分のうちがあって、子供が二人ぐらいいて、そしてカルチャー教室に行ってとか、いい部分ばかり言っていました。
 そういう動きもあるということからしますと、もう一点は、私も大学で、男女共学でしたので、五年間ぐらいですけれども毎年学生たちに、女性には職場で仕事を続けたいかどうか、男性には自分の妻になる人に家にいてほしいか、外へ出てほしいか。必ず、三〇%前後なんですが、専業主婦になりたいという女性と、それから自分の妻はうちにいてほしいという男子学生がいて、私は、一生懸命女性が外に出て自立できるようにと教えてきているのに、どうしてこういう結果になるのだろうと思いましたけれども、もしその数がちょうどぴったりしていて、それで合っているのであれば、これも一つの行き方で、そうすれば、Mシェープであっても、Mが戻るときに社会に復帰しやすければ、それを選択することが決しておくれたものではない。つまり、主婦は主婦で、胸を張って主婦であってほしいし、仕事を選んだら胸を張って仕事を選んでほしい、そういうふうに思いました。
 それで、ではMシェープに戻るときに一体どういう手当てが考えられているかという点なんですが、その点につきましては、残念ながら、数字の上でいきますと非常に難しい状態だと思います。
 女性が働き続けることを困難にしたり障害になっていることの第一番が育児というのが八三年で六五・一%、それから九六年の調査で七六・三%。それに、老人や病人の世話というのが八三年で三五・四%、九六年になりますと当然高齢化が進んでおりますので五三・八%ということになってきております。
 そういう中で、女性が一たん家庭に入って、それから社会復帰をするときに、幾つかの方法があると思いますけれども、これは九七年の補正予算のときの討論で私は申し上げたのですが、例えば、カウンセラーの仕事というのは実地の訓練を伴いますけれども、心理学を卒業した女性が家庭に入って子育てをしながら、通信教育その他でカウンセラーの資格を取る。子供が少し大きくなったときに実習に出る。もう少し大きくなったら職場につく。そうすると、日本の各小中学校に、子育てをした経験があって、そして資格のある女性がカウンセラーとして登用される。これは、もちろん雇用費はお金がかかると思いますけれども、新しい雇用の創出にもなりますし、Mシェープからの復帰の一つのあり方でもある。
 そういう意味で、労働省それから文部省などに、通信教育も含めたそういう女性の、家庭に置かれている女性が職場に復帰しやすいために、もう一つ何か資格を加えるとか、そういった努力をしていただきたいと思うのですが、大臣、努力をしていただけますでしょうか。

○野中国務大臣 委員の御質問が多岐にわたって問題提起をされておりますので、的確にお答えできるかどうかわからないわけでございますけれども、まずは家庭生活と職業生活を両立させていくために、一つはどのようにして育児対策を考えるかという問題でございまして、子育てに対します社会的な支援を総合的かつ計画的に進めていきますためには、エンゼルプランを策定したわけでございますけれども、この施策の具体化の一環といたしまして、緊急保育対策の五カ年事業を策定して、それぞれ各般にわたる施策を実施しておるところでございます。
 この中で、子育てと仕事の両立支援の推進につきましては、一つには、育児休業制度の定着等の雇用環境の整備を行うこと。二つ目には、緊急保育対策等の五カ年事業に基づきまして、保育所の低年齢、いわゆる三歳未満の受け入れ枠の拡大や延長保育の促進等を実施いたしまして、この施策を今推進しておるところでございます。
 引き続き、子育てと仕事の両立支援を含めまして、産み育てやすい環境というのをつくり上げていくためのさまざまな努力をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
 一方また、御指摘がございましたように、高齢者を介護する中における女性と職業との両立の問題があるわけでございまして、高齢者の介護を社会的に支援することがこのためには必要であると考えるわけでございます。
 政府は、新しい高齢者保健福祉推進十か年戦略、いわゆる新ゴールドプランに基づきまして、介護サービスの供給体制の整備を推進してまいったところでございますけれども、平成十二年より導入をいたしますこの介護保険制度は、高齢者を介護する女性の負担を軽減し、家庭生活と職業生活との両立を図っていこうということを考えておるところでございます。
 また、介護休業制度の定着促進を図りますなど、仕事と介護との両立を支援するための施策を推進していかなくてはならないと考えておるところでございます。
 いずれにいたしましても、労働時間の短縮とか、あるいは男女を問わず労働者が育児など家族と触れ合う時間を確保し、豊かでゆとりのある生活を実現していかなくてはならないと考えておる次第でございまして、特に、男女を問わずに長時間の時間外労働の抑制のための改正労働基準法に基づく時間外労働の限度基準の遵守の確保等を行いまして、育児など家族的な責任を男女とも果たしていけるよう、時間外労働のあり方というものを見直していかなくてはならないと考えておるところでございます。

○山中(あ)委員 今大臣から介護の問題、託児の問題、決意を語っていただきまして、大変心強く思っております。
 託児の問題につきまして、一つ提案させていただきたいことがございます。
 と申しますのは、これは九六年に私がまとめた本でございます。その中をちょっとかいつまんで御紹介させていただきますと、チャイルドケアというのは、日本でいう託児、育児、保育、いろいろなものがまじったものでございますけれども、このチャイルドケアについて、都市部のチャイルドケア、つまり東京などのようなところと、農村地帯も女性が非常に過重な労働を強いられていますが、そういうところのチャイルドケアというのは、日本が一律で考えていきますと、違った側面が出てくるというふうに思います。
 そういう意味で、例えば、高齢者ではないのですが、農作業はできなくなったけれども、子育てをしてきた経験のある人たちが農村の若妻会の人たちのチャイルドケアの一つの母体になれるような、そういった新しい発想で、それも無料ではなくて、一応きちんと対価をもらえるというようなことで、一つの地域の環境をつくっていくということが都会と違った面で私は必要ではないかというふうに思っております。それが一つの提案でございます。
 それから、アメリカのように全く公的な援助がない場合には、マック・チャイルドと言われるように、チェーン店で、チャイルドケアで大もうけをした方もいるくらいのところもありますけれども、大変成功したと言われているスウェーデンの場合には、やはり一歳までは母親が育てて、一歳からは自宅保育というか家庭保育というものに入れて、そして二歳、三歳ぐらいになって保育所に預けるというのが一般的に好まれているパターンです。
 フィンランドの例も同じようなものでございますけれども、私が訪ねましたイソアンテ保育園も含めて、フィンランドの保育園では、四、五歳児六、七人に対して、保母さんに今度補助員がつくということで、つまり大体三、四人に一人ずつつく計算になっていまして、これが法律で決められております。こういうふうに保母の待遇といいますか、責任範囲を小さくしていくことによって、非常に家庭の延長的な保育ができるという実態がございます。
 そして、もう一つ特徴的なのが自宅で保育ができるということで、家庭で、四人までですけれども、幼児を預かることが法的に許されております。そのかわり、保母の資格を持った人が自分の子育てと一緒に四人までを自宅に預かって、そしてここで、この対価というのは、個人的に支払われるのではなくて、ちゃんとヘルシンキならヘルシンキの市で決めた保育料と同じ金額を払うわけです。そして、保育所に送るかそれとも個人でやっているところに入れるかというのは親のチョイスになる、こういうようなことができています。
 それこそ、経験のある保母さんが、自分が家庭を持って、そしてなかなか家庭と仕事の両立ができないときに、家庭保育ということによってその経験を積み重ねられますし、そして、それがまた働く母親にとっては、大きなところに入れないで、うちの子はちょっと非常に気が弱いので、この三人か四人のところに入れましょう、あるいはこの人は信頼できるからこの人に預けましょうということが公的なお金の範囲内でできる、そういうシステムがございます。
 これには規制緩和が必要ですけれども、私は、今申し上げた農村地帯のことも一つですし、フィンランドあるいはスウェーデンのような自宅保育をひとつぜひ推進していただきたいと思うのですが、このせっかくの基本法が通ると同時に、そういった託児も、今官房長官がいろいろな意味で推進していくというふうにおっしゃったので、新たな視点でそういうことを検討していただきたいと思いますが、検討していただけますでしょうか。

○野中国務大臣 今委員から御指摘ございましたように、都市部における問題あるいは農村部におきますそれぞれチャイルドケアの問題というのは、全く趣を異にし、実態を異にしておるわけでございますので、その地域地域に合った施策を講じていかなくてはならないことは言をまたないと思うわけでございます。
 そういう中で、女性が経済的に自立できるような、そしてまた、男性と女性が同じように能力を発揮し、働くことのできる雇用環境というものをつくっていかなくてはならないと思うわけでございまして、今まで男女雇用機会均等法に基づきます機会均等確保対策やら、育児休業制度やら、介護休業制度の定着等によるいわゆる職業生活と家庭生活との両立支援対策を、これからも積極的に、今委員がおっしゃったような視点を十分組み入れながらやっていかなくてはならないと思っておるところでございます。
 政府といたしましても、今日、まことに厳しい雇用情勢があるわけでございまして、これを改善するために、どのようにして雇用を創出し、安定に向けました民間の努力に期待するとともに、新たな政府の施策によります雇用確保に向けた政策的な展開を図ることが急務であると考えて、今、それぞれの分野におきまして検討を重ねておるところでございます。
 そういう中におきましても、例えば、働く女性の都市部における苦痛を軽減するために、駅前保育所等、それぞれ政党から提案されました問題等も含めて、これから一層施策の充実に努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。

○山中(あ)委員 ぜひそうしていただきたいと思います。
 そして、ついでに、これは建設省の方にかかわることですけれども、スウェーデンの例を見ますと、室内で子供を育てるときには、例えば、床から八十センチ以下にガラスの使われているドアでは強化ガラスを使用することとか、おふろ場、お便所のドアは外からあけられるタイプのかぎを使う、つまり、子供が中に入ってかぎをかけてしまわない、あるいは、ヒーターやストーブなどのラジエーターは、角が鈍いものとして、熱くなる部分はガードを装備するとか、窓は十センチ以上開かないようにストッパーをつけるとか、家庭内保育を実施していくとすればそういったこともまた義務づけていく、そして、そういうことに対する改造に支援をしていくということもあわせて考えていただきたいと思います。
 それから、高齢者の場合にも、やはり家庭的な雰囲気でゆっくり暮らせるところがあれば、介護は介護保険法案が通ったとしてもやはり女性の負担になりますから、安心して父親なり母親なりを預けるところがあるという意味で、イギリスのような、ハウスと呼ばれているような一戸建てのうちの床をきちっと整備をして、平らにして、階段には車いすのまま上がれるような、五、六人がともに過ごせる、そして週末には家族が行ってそこにステイできるというような、これもまた規制緩和でございますけれども、労働省も含めて、それから厚生省も、そして建設省に至るまで、やはりこの男女共同参画の社会にするというためには、そういった細やかなところもぜひ忘れないで努力をしていただきたいというふうに思います。
 次に、総則の方に移らせていただきますが、ここに、第一章の第五条ですが、「国若しくは」というところで、立案及び決定に共同参画する機会を与える。これも多分いろいろなところで質問が出たことと思いますけれども、日本の場合には、申し上げるまでもなく、第一回目の選挙のときに衆議院では三十九名の女性がいて、そして、そこからずっと落ち込んで、今やっと二十五名に一歩ずつ上がってきた、こういう状況でございます。
 やはり国政の場にもっときちんと女性を登用するという手段といたしまして、例えば北欧の場合は、これは選挙制度が比例区だけでございますから、男性、女性、男性、女性、または女性、男性、女性、男性というような位置づけで、こういう形でちゃんと共同のあるいは平等の権利を行使できますよということをPRしています。そうではない全部小選挙区制のイギリスの場合には、三百の女性の団体が一緒になりまして、それで五年間かけて労働党の選挙までの間に女性を百八十人小選挙区から擁立していって百八人当選ということがありますし、アメリカの場合には、冒頭に御紹介したエミリーズリストのように、資金を集めて女性を支援する、そういう活動もございます。
 日本は、これからこの基本法が通って、どういう具体的な形で女性をもっと政治の世界に入れるということに力を尽くそうとなさっているか、何か具体的な案がありましたら、お願いいたします。

○野中国務大臣 御指摘のように、公的な部門はもちろん、私的分野を問わずに、政策、方針決定の過程への女性の進出あるいは女性の参画の拡大というのは、男女共同参画社会の実現の上では最重要課題であると考えておるところでございまして、私どもといたしましても、政府の国内行動計画であります男女共同参画二〇〇〇年プランにおきましても重点目標の第一番目に掲げておるところでございます。
 議員が御指摘のように、人材が育成され、女性が積極的に政策、方針決定の過程に進出をしていくというのは望ましいことであり、今後さらに努力をしなくてはならないことでございますけれども、しかし、今、女性議員の皆さん方がお呼びかけになりまして、そういう女性が進出するための基金づくり等をお考えのようでございますけれども、果たしてこれが、各党がそういうことを心がけてやる場合はともかくも、全党議員が寄ってやって、どのようにこれを配分していくのか、具体的になりますと非常に難しい問題でございますので、私どももその趣旨を承りながら、なかなか行く末に悩んでおったところでございます。
 ただ、いずれにいたしましても、女性の方が議会を初めそれぞれ政策決定に進出をしていただくというのは重要な課題でございますので、政府としての施策あるいはまた政党としてのありようについて、我々はその場その場における努力を惜しみなくやってまいらなくてはならないと考えておるところでございます。

○山中(あ)委員 先ほどのWINWINというのは、民間の方たちが協力して、政治家は全く中に入れない、選ばれる方でございますので、スクリーニングされるかどうかということで、入れない団体なのです。民間の方たちがそういうふうに動いておりますので、ぜひ、政治の分野にいる私たちとしましては、これから入ってくる方たちがもっと入りやすくなるために、例えば比例制度を各党で利用していただくとか、もしくは、副大臣、政務官など、行政改革のときに、複数になった場合にできるだけ女性を登用していただくとか、そういった政治の場での御努力をいただけないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。

○野中国務大臣 おっしゃるように、これから、副大臣さらには政務官等、大胆な政治主導の改革をやっていくわけでございますので、そういう際には、私どもとしても十分女性の登用ということについて配意していかなくてはならないと考えております。

○山中(あ)委員 ぜひそういう方向で検討していただきたいと思いますし、これも、お願いするだけではなくて、全員が考えていかなければいけないことだというふうに思っております。
 第一章の七条のところに「国際的協調の下に」ということがあるのですが、私は、国際という言葉がいつも非常に簡単に使われていて、国際基準は何だろうかというのが時々わからなくなります。
 例えば、この男女共同参画社会の基本法と類似する、全く同じではありませんが類似するような法令が、例えば七五年のイギリス、七七年カナダ、これはチャーター、人権法ですが、七八年ノルウェー、八四年オーストラリア、そして八八年デンマーク、九六年韓国というふうにそれぞれの国で制定されております。例えばイギリスのを見ますと、イギリスの特徴は、女性に対する性差別というのが第一条にありまして、そしてその次に、第二条に男性に対する性差別というのもはっきりとうたっております。
 これがうたってあったために、先ほど申し上げました、労働党が三百の女性団体が百八十人まで小選挙区で候補者を擁立したときに、男性から裁判を起こされて、差別ではないか、同じだったら女性をというのは差別だと。これが、イギリスは非常に早く結論が出ますので、裁判で、そのとおりだ、これは差別であるという結論が出まして、それで女性の方ではなくて男性の方が候補者になって、そこからちょっと百八十人から伸びなくなったという現実もございます。
 ですから、イギリスの場合はちゃんと男性、女性、両方が差別を受けないということをうたっておりますし、カナダの場合を見ますと、これはカナダは人権の問題ということですから、特にああいう多民族国家ということが一つの特徴である国を反映して、この法律は、人種、民族的出自、皮膚の色、宗教、年齢、性、婚姻上の地位、そういったことに関する差別の撤廃、平等ということの中にこの性というものが、ジェンダーというものが入ってくるというとらえ方で、イギリスのものとは全く違います。
 また、ノルウェーの方は、これは先ほどから出ていました、オンブズマンというよりオンブッドという言い方、女性の場合これを、平等の方をオンブッドといいますが、一九九六年十月だったと思いますけれども、このノルウェーのその当時のオンブッドが日本に参りまして、私もそのシンポジウムでモデレーターをさせていただきました。これは、確実にきちんと検証するだけの権限、それから調査する権限、そして、それを提起していった場合に、きちんとそれを遵守しなければいけないという、その権限のある独立した監視の体制があるということが特徴でございまして、ノルウェーのように人口五百万のところでオンブッドが機能するとしたら、日本は多分十二ぐらいのブロックに分かれて機能させないと、人口的にちょっと難しい。
 そういう意味では、地方にそういうものをゆだねるのか、もしくは、先ほど官房長官がおっしゃった、審議会のあり方をどうか検討するのかということになると思いますが、オーストラリアの特徴は、男女差別撤廃の法案の地位の委員長というのがいるわけですけれども、地位の委員長というのは人権委員会の委員長が兼ねるということになっておりまして、明らかに男女の性差別の問題というのを人権の問題ということでうたっております。
 それから、デンマークの場合には、オンブッドというようなスウェーデン、ノルウェーのようなものはございませんが、ちょうど地位に関する平等委員会、こちらの審議会のようなものではないかと思いますが、それが任命されるわけですが、そこにきちんと、例えば、これはデンマークの場合ですが、デンマーク労働組合から一名とか、経営者連盟から一名とか、従業員組合から一名とか、女性同盟から一名とか、女性学の代表を一名とか、そういうふうに分野をきちんとはっきりと法律の中に書き込んでございまして、総合的な人選ができるということが特徴であろうと思います。
 それから、韓国の九六年の基本法の一番最初の文言に「性差別慣行が根深い我が国社会の現実にかんがみ」という言葉がありまして、現実をきちっと直視しているという意味で非常に勇気のある書き出しである、現実に差別があるのだから、これをなくそうというような出だしでございます。
 そういうふうに考えてみますと、それぞれの国のそれぞれの法案は、それぞれの文化、社会、歴史を反映して、違う形になってきているわけです。そうしますと、この日本の基本法というのは非常にゼネラルなものですから、日本のアイデンティティーといいますか、日本の平等に関するスタンスというのは一体どこにあるのかなということがよく見えないのでございますけれども、その辺のスタンスについてお伺いしたいと思います。

○佐藤(正)政府委員 この法律案の基本理念の中に国際的協調という項目を入れました理由といたしましては、日本の男女平等についての動きでございますが、これはかなりいろいろな国際的な会議でございますとか条約等を契機として動き出しているというようなことが一つございます。
 そういうことが一つと、また今後、いろいろな国々に対しまして、日本といたしましてもこういう男女共同参画の理念に従いました社会の構成につきまして、いろいろ協力をしていこうというようなことも含めまして、ここにこういう規定を置いたということでございます。

○山中(あ)委員 やはり日本のアイデンティティーというものをきちんと確立して、日本は同じ平等であってもどこに重きを置いてあるかというようなことについて、やはり対外的にも国内的にもわかるような形でこれから実際の法の整備をしていただきたい。つまり、すべてに少しずつ全部目配りしても、それが進んでいく度合いというのが非常に遅いとすれば、どうしても開発指数なんかで見るとよく見えなくなってしまうということがございます。
 これは、これだけではなくて、ポジティブアクション、男女雇用機会均等法のときの質問でも申し上げましたけれども、セクシュアルハラスメントにいたしましても、欧と米では全然違うスタンスで、スタンダードで持っているわけですから、国際的なスタンダード、グローバルスタンダードというものは一体何かというのをもう一度もとに返って、日本は日本のMシェープも私は一つのあり方かなと思うのは、先ほどそういう意味で申し上げたのであって、必ずしも欧米型なんということが通用しない。
 これからは、一体自分が立っているところは何か、そういう視点で、もう一度この平等ということ、それからジェンダーの問題というようなものも含めて、どういう社会に日本があるかということを、ぜひそういう別の形で切り口を考えながら施策を進めていっていただきたいというふうに思います。
 それで、先ほどの審議会のことに関しましては、もう当初大臣のお言葉にもありましたけれども、ぜひ今度改革案の中で、あそこには有識者とかという言葉がやはりまだ入っておりますから、その中でどういう分野の人に必ず入ってもらうのかというようなこともきちんと、それぞれ法案をつくると思いますので、そのときにはもっと明確に定めて、こういう基準でこういう人たちが集まっているからこれは信頼性がある、こういうような形で、今までのいろいろ言われているいわゆる審議会と別の形でぜひ発足していただきたいというふうに思います。
 最後に、男女共同参画社会ですから、やはり雇用ということ、経済的な自立、精神的な自立を図るために、雇用の創出ということが非常に大きな意味を持つのではないかというふうに思っております。先ほどの、カウンセラーの問題だけではなくて、さまざまなニュービジネスと言われるはざまの産業というものをぜひ育成をしていただいて、そして雇用の創出を図っていただきたい。そのために、ぜひ人材の育成ということ。
 それからもう一つは、先日、四月の二十日でしたが、東京の米国商工会議所に講演に行きましたら、日本人の女性の若いスタッフが物すごく生き生きと動いているわけです。しかも、海外に行きましても、これは九七年の九月に、ワシントンでは日本人の若手女性の会というところに招かれまして、そこにいる人たちがミニコミ誌の編集をやっていたり、ローカルテレビの制作をやっていたり、ホームステイからベッド・アンド・ブレークファストのような、ちょっと小さな民宿的なものをやったり、いろいろな形で動いている。こういう若い女性の労働力の空洞化というものが、私はこれから日本の社会に非常にマイナスになるのではないかと思っております。
 どうしてここでやっているかということを聞きましたら、個人として認められるから、仕事のチャンスが多いから、社会的プレッシャーが少ないから、年功序列ではなくて能力主義なので意欲と実践の挑戦が報われる、努力し能力が認められればジャンプアップできるんだ、そういうようなことを言っておりました。
 中根千枝先生ではございませんけれども、日本はフォーマルストラクチャーとインフォーマルストラクチャーということで、非常に民主主義的な組織になっていましても、物事の決定が古い形の人間関係で築かれていくということで、そこに入っていなかった人が新しく入るというのが非常に難しい。そういう意味で、逆に二十一世紀は、今派遣業の方が自由にできるから派遣業になりたいという女性がふえているぐらいに、自分の能力を生かせる時代になってくるとすれば、社会を変えるためにも、女性の力をもっと活用していただけないかな、女性をもっと生かすことによって日本の社会が豊かになるのではないかなというふうに思っています。それが意識の世代交代というものを進めていくのではないかと思います。
 ここでもう一つ、最後に関連して提案したいですが、日本の女性たちは、今申し上げましたように、いろいろなレベルで非常に国際的に活躍しています。特に、緒方貞子さんは、やはり私は日本の今の女性の中で世界に誇れる最高の人物というふうに非常に尊敬申し上げておりますけれども、緒方さんの実際のこれまでの活動の中で、一九七一年になりますか、昭和五十一年から五十四年まで大学にいらした緒方さんが、国連の日本政府の代表部の公使としてニューヨークに行っておられます。お聞きしますと、このときの経験と人脈が、その後十五年、二十年たって花開いている。
 それで、外務省の統計を見ますと、労働省の赤松さんや、いろいろな方がそれぞれの省庁から出ていらっしゃいますけれども、そういう大学ですとか民間から、トップにいきなりつけるのではなくて、育つ場を与えて、チャンスを与える、そういうことがこのあたりからぱったりとなくなっております。
 私どものときは、ちょうどその陥没したところでございまして、自助努力でやらなくちゃいけないというのがすごく大変なので、今の四十代の方々に、年間十名でも、例えば民間にいる方等を含めて、いろいろな体験のできる場を与える。つまり、リーダーを育てる、そういう観点でもう一つ、雇用の創出だけではなくて、人材の育成にぜひ尽力をしていただきたいというふうに思っております。
 その辺も踏まえまして、最後に官房長官から御決意をいただければと思います。

○野中国務大臣 山中委員は、たびたび海外に出られまして、見識を深められ、また奥深い研究を修められまして、その時々にすぐれたレポートを出しておられるわけでございます。今その幅広い経験の中からいろいろな提言をいただいたわけでございますし、また先輩であります緒方貞子難民高等弁務官についてもお触れになったわけでございまして、我が国の女性の代表として、今困難な仕事に携わっていただいておるわけでございます。
 私ども、今後二十一世紀に向けて女性の男女共同参画を現実のものにしていきます政策決定の中では、先ほど来お話がございましたように、我が国特有の文化、社会、歴史というものを十分踏まえながら、さらに、そういう中におきます都市、農村等の状況を、十分違いを生かした中における男女共同参画というものを政策の中に生かして、女性がさらに、あらゆる分野において参画できるように努力をしてまいりたいと考えるところでございます。

○山中(あ)委員 七五年は藤田たき先生、八〇年は高橋展子さん、そして八五年は森山眞弓先生が女性会議の代表でしたが、残念ながら、北京会議だけ日本は男性でした。ぜひ来年の二〇〇〇年に女性を登用していただきたいということをお願いして、質問を終わります。

○二田委員長 次に、松浪健四郎君。

○松浪委員 自由党の松浪健四郎でございます。
 大臣におかれましては、長時間にわたってまことに御苦労さまでございます。
 きょうの質問者の名前を見ますと、男性は私一人だけであります。女性一人だけの場合は紅一点という表現がございますけれども、こういう場合、何と表現していいのだろうか。黒一点と呼ぶのか、あるいは白一点と呼ぶのか、日本語が見当たりません。
 このように、我が国の文化である語彙から見ましても、妻のことを家内と言い、家の中という、あるいはおんなへんに家を書くとか、とにかく、男は仕事、女は家庭、こういうふうに固定化されてきた、これが私たち日本社会の一つの文化であったような気もしますけれども、これではあかんということでこの法律が必要になっているのかもしれません。
 視点をがらっと変えて、女性の先生方は、もちろん女性の地位向上、性差別の撤廃、これらの視点からいろいろと質問をされておられましたけれども、男性ならば、ちょっと恥ずかしいし、後ろ指指されるかもわからないけれども、こういうことも聞いておかなあかんなというような疑問点を幾つか視点を変えて聞かせていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。
 いずれにいたしましても、男は仕事、女は家庭という固定的な役割分担意識が私たちの国に根強くありました。こうした日本的慣習に対して、男女が平等に、かつ、共同で二十一世紀の社会づくりを目指そうというこの男女共同参画社会基本法という法律が審議されるようになっているわけでございますけれども、小渕総理が来世紀へのかけ橋となる重要な法案と強調されましたように、だれしもこの趣旨に異論はございません。今国会での成立を期待する者の一人でございます。
 労働省によりますと、急激に進む少子高齢化に伴って減少する労働力人口は、二〇二五年には昨年よりも六百万人も少なくなる、このように推計されています。これだけを見ましても、女性の潜在的なパワーが今後ますますと必要になる、これは時代の流れであろうか、こういうふうに思うわけであります。
 そして、経済企画庁の昨年の資料によりますと、男女の機会均等の程度や就業、家事分担、育児の状況の指数の平均値から女性の働きやすさを国際比較した結果、日本は二十三カ国中十九位、欧米、北欧諸国に大きく水をあけられている、こういう状況にございます。
 さらには、国連の九八年の調査によりますと、日本の女性の能力は世界的にも高水準であるにもかかわらず、国会や行政、管理職に占める女性の割合などから見ますと、百二カ国中何と三十八位といわゆる途上国並みである、こういう報告もございます。これらの数値が示されていますように、日本の女性の能力が社会的に十分発揮されていないという現実にあるのは確かだ、こういうふうにも思います。
 今回の基本法の理念は、こうした状況を変革するために、男女が対等の個人として、ともに差別を受けることなく能力を発揮する機会を均等に得て、ともに責任を持つ社会にしようじゃないか、こういうふうな趣旨だと私はとらえておるわけでございます。
 そこで、まず最初に、この法律とそれほど関係ないかもしれませんけれどもお尋ねしておきたいことは、厚生省は約五億円のお金をかけられて「育児をしない男を、父とは呼ばない。」ごっついいいコピーやと私は思っておりますが、このコマーシャル、新聞の全面による広告、そしてポスターが大きな反響を呼んでおるわけでございます。
 これは、子育てや少子化の問題を厚生省は真剣にとらえて、そしてサムさんを起用してこのポスターをつくられたんだ、こういうふうに思っておりますし、これだけ話題になれば五億円では安かったのじゃないのかという気もいたしますけれども、子育てをした自信のある、経験のある私からしますと、ちょっと腹の立つコピーであったのも確かであります。
 まず、官房長官にお尋ねしたいのですが、官房長官の子育て経験というものをお聞かせいただけますか。

○野中国務大臣 私は、子供は娘が一人でございまして、しかももう子供ができるころ政治の社会に入っておりましたので、余り十分な育児もしないままに、家内に過重な負担をかけてまいりました。けれども、ある意味においては、できるだけそういう忙しさの中にも子供と触れることを大切にして、夜ほとんど食事をしない私でございましたけれども、何時になろうが朝は必ず子供と一緒に食事をする、それだけはずっと続けようというようなことを私のただ一つ子供に接する機会として続けてきたぐらいがお話しできることでございます。

○松浪委員 ということは、余り熱心に子育てをやらなかった。官房長官も父とは呼ばれない、そういう存在であるかもしれません。
 これは、ちょっと真剣にとらえなければいけませんのは、このコピーを逆に言いますと、仕事をしない女を母とは呼べないということになります。つまり、このコピーをよく考えていきますと、どうも夫婦共働きを奨励しているかの印象を与えるコピーになっているということ。もちろん、コピーですから余り深読みすることはよくないのですが、一言で言いますと、専業主婦をないがしろにしているような印象を私は受けるのですが、厚生省はそんなことを考えずに、これでよかろうということでこのポスターをつくられたのですか。

○星野説明員 お答えいたします。
 今回の少子化関係の広報事業の趣旨でございますけれども、少子化関連の広報事業の一環といたしまして、御指摘のように、本年三月に、新聞、テレビ、ポスター等でやらせていただいたものでございます。
 この趣旨、目的でございますが、昨年の十二月に総理主宰の少子化への対応を考える有識者会議の提言が出されたわけでございますけれども、そこにいろいろな提言が書いてあるわけです。その中に、家庭において男女の役割分担を見直し、家事や育児への男女共同参画を推進すること、あるいは男女共同参画の視点や、子育てが大切である、楽しいことであるということを伝えていくべきであるといったような提言が書かれてございます。
 そういった趣旨から、単に父親の育児参加ということだけでなくて、子育て自体が大切である、楽しいことであるということも伝える。あわせまして、一般的にやはり日本の現状においては、家庭において、どちらかといえば子育ての面において母親に偏重している現状がある。こういったことが少子化の観点からも家庭を持ったり子供を持ったりすることに対して制約になっているといったような御指摘もございまして、そういったことからこのような広報をさせていただいたものでございます。
 そういう意味で、御指摘のような点につきましては、この広報は母親が就労しているとか専業主婦であるとかいうこととは関係なく訴えたものでございますので、就労の促進、そういった観点はこの広報としては含んでいない。ただ、私どもとしては、女性の就労と育児の両立支援、両立をしたいと考えている方への支援策というものは講じていかなければならぬ、こういうふうに考えております。

○松浪委員 いずれにいたしましても、国が各家庭に足を一歩踏み入れる、また踏み入れなければならないような状況、時代を迎えているのかなというような印象を受けますし、この基本法もそういう一面を持っておるような気がいたします。
 いずれにいたしましても、画一的な家庭像を国が強要するというようなことがあってはなりませんし、各家庭、夫婦、家族がお互いに話し合って、そして一番うまくいくということが好ましい、こういうふうに思っております。
 そこで、女性の地位の向上であるとか性差別の撤廃、これらは当然のことでございますけれども、それらのことを頭の中に描きながら、この男女共同参画社会基本法について、余りいい質問と違いますけれども、幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 まず、第二条の一項目、これは男女共同参画社会の形成について書かれてありますが、こう書かれてあります。「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会を形成することをいう。」読んでよくわかるのですが、いいことが書かれてある、こういうふうに思うのです。つまり、女性も男性がやっているいろいろな仕事、これらをやるべきだ、こういうふうに読み取ることができるわけであります。
 そこで、近年では、タクシーによく乗りますけれども、ドライバーが女性であったりしますし、あるいは大きなダンプカーを運転している女性がいたりして、いろいろな方面に女性が進出をしてまいりました。非常に好ましいことだと認識しております。何も私は心配をしていないのです。ならば、なぜ心配をしないのかと申しますと、これらは免許という資格が必要であり、それらを取得されたならば女性が進出することができる。当然のことであると思うのです。
 六月の一日に驚いたことがありました。それは何かというと、女性のプロボクサーの試合がありました。ここまで女性が進出してきたのか。ボクシングですからね。殴り合い、どつき合いをするスポーツに女性が進出してきた。私は、これはちょっと進出し過ぎと違うのかと。
 あなたは頭が古い、固定的な観念を持ち過ぎだと言われるかもしれませんけれども、歴史的に見ましても、民族学的に見ましても、人類学的に見ましても、女性はずっと美の追求というものをやってまいりました。
 私は、人類学をかじったことのある一人の元学究として言わせていただきますと、例えば古代のメソポタミアにありましては、女性は頭蓋骨を変形させてでも頭の形を整えられました。その伝統はコンゴの女性にも受け継がれましたし、十九世紀まで南フランスでも頭蓋骨を変形させるというようなことまでやってまいりました。イースター島の女性が全身に入れ墨をするとか、あるいは中国の女性が纏足にしてきれいに歩くとか、あるいはミャンマーの首長族は女性の首を長くするとか、インドネシアの女性が耳たぶを長くするとかというような人体変工、こういうことをしたり、そして、民族服はその民族が一番美しく見える服装になっております。我が国の着物も、日本女性に一番美しく映る民族服であるというふうに私は認識しております。
 どんなジャンルにでも、みずからの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保されるということになれば、歯どめというものがきかなくなってくるのではないのか、そういう心配を私はしておりますけれども、官房長官は、女性のプロボクシング、どつき合いをするというのはどんな印象を持たれますか。

○野中国務大臣 私、現実に見ておりませんのでわかりませんが、男性のボクシングを見ておっても随分大変なことだなと思っております。

○松浪委員 官房長官が大変だなと思うぐらいですから、皆さん大変だと思われていると思うのですが、みずからの意思ですから、この法律ではやってよろしいということになっています。
 そこで、女子プロレスリングというのがありまして、ことし一人亡くなりました。一昨年も亡くなっています。昨年は大変なけがをされた女子プロレスラーがいます。男性も亡くなったりもしますし、ボクシングでも犠牲者が四十名近くこの国で出ておるわけですけれども、歴史的に続けられてきたスポーツですからどうということはありませんが、女性のプロボクシング、レスリングは実はライセンスというものがないわけなのですね。好きだから、やりたいから、ああ、いいよということで、即プロとしてやれるということになっています。
 プロスポーツをも含めてスポーツを文部省が管理しておるわけですけれども、女性がありとあらゆるスポーツに進出をする。ラグビーもやっています。アメリカンフットボールもやっています。サッカーもやっています。荒々しい激しいスポーツ、ハンマー投げもあります。男性に限られていたスポーツが、もはや男性だけのスポーツとは言えなくなってきました。
 こういう激しいスポーツを、文部省は指をくわえて見ているだけなのか。それとも、これから育てていくのか。それとも、何らかの形で助言を与えたりしていこうとしているのか。あるいは、この法律にのっとって、いえ、自由に個人の意思でやられているのですから問題はございませんとおっしゃるのか。その辺をお尋ねしたいと思います。

○高杉説明員 お答えいたします。
 先ほど先生おっしゃいました、女子プロレスの選手がここ三年間で二名亡くなられているということ、それからまた、女子プロボクシングというものの興行がことしの五月三十日に初めて行われたということは、私どもも新聞で承知をしております。
 ただ、先ほど先生もおっしゃいましたように、ボクシングとかレスリングとかそういうものも含めまして、女性がどのようなスポーツを行っていくのかということについては、やはりそれぞれの個人が自主的な判断のもとで行われるべきものだと思っております。したがいまして、近年、女性がいろいろなスポーツに進出をしてきているということになっておるわけでございます。
 しかしながら、スポーツを行うに当たりましては、そのスポーツの種類に応じまして、やはりスポーツを行う選手の安全に対する適切な配慮というものが必要でございます。したがいまして、現在でも、各競技団体におきまして、それぞれの競技が安全に行われるよう競技規則を制定したり、それから安全や健康に配慮をした研修会を行ったりということで、さまざまな取り組みがなされております。
 現に、日本ボクシングコミッション、これは男子になりますが、そのほか日本アマチュアボクシング連盟、日本レスリング協会という各競技団体におきましても、従来より、こういう症状が出たら試合に参加をさせてはいけないというような医事規則の整備、それからまた関係者への安全講習会などを実施してきております。
 しかしながら、先ほど御指摘のございました女子プロレス、これにつきましては、現在さまざまな運営団体が存在をしておる状況でございまして、全体を中立的な立場から指導していく組織、機関、資格制度が未整備であるというのも先生の御指摘のとおりでございます。また、先ほどお話のございました女子プロボクシングにつきましても、本年五月三十日に行われたということを私どもも新聞報道により承知しているというような段階でございます。
 したがいまして、今後は、これらの競技についても規則の制定とか全体の振興というものを図るための団体が発足し、それが自主的にそれぞれの規則を定め、安全面に配慮をした運営が行われていくということが望ましいと思っております。文部省としても、必要に応じまして関係者に対し助言をして、それらの動きを進めてまいりたいと思っております。

○松浪委員 性の商品化、これはあってはならないことだといろいろな方面から言われているのですが、スポーツという形で性の商品化がこの国であるという一面、この辺を文部省はよく見張っておいていただきたい。そして、安全性というものについては万難を排するよう御指導をお願いしたいと思います。
 かつて、古代ギリシャの中でスパルタが栄えたことがありました。古代のスパルタでは女性にレスリングをさせた史実がありますけれども、女性から女性らしさを抜き去るためにレスリングをした、そして女性たちを兵に起用した、したがって、一時的にスパルタは大変な隆盛を誇った、こういうふうに言われております。
 そして、この法律をよく読んでみますと、女性らしさであるとか男性らしさ、男らしさというようなものは全く出てまいりません。しかし、私たちが日常生活を送る上において、社会の中でそれを認知しておかないと、もちろんこの法律は理念法ですから、事細かく一々記述することはできませんけれども、文字どおり男女がこの法律を相互に理解し合わなければ、幾らこの基本法ができたとしても、固定された観念というもの、今までの習慣というもの、これを覆すことができないのではないのかというふうな思いを持っております。
 次に、第三条についてお尋ねしたいと思います。
 これは男女の人権の尊重について書かれてあるわけですけれども、「男女共同参画社会の形成は、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されることその他の男女の人権が尊重されることを旨として、行われなければならない。」こういうふうになっておるわけであります。つまり、男子であれ女子であれ女性であれ、その個人の尊厳が重んぜられるし、人権の尊重だということでございます。
 そこで、我が国には優生保護法があって、人工妊娠中絶手術が認められております。しかし、私は、厚生省から発表されている数字は優生保護法からしても多過ぎるのではないのか、そして、脱税の産婦人科医の多さから見ても、もしかしたならば、優生保護法以外の人工中絶手術を受ける女性が、個人としての尊厳が重んぜられているがゆえに多いのではないのか、そういうふうに心配し、そういうふうに推考する一人でもあります。としたならば、この三条は中絶を認める、勧めるというものになっていないのかという危惧をしておりますけれども、これらの中絶手術等いろいろなことについて厚生省にお伺いしたいと思います。

○小田説明員 この男女共同参画社会基本法三条の関係は、男女の個人の尊厳等人権の尊重について規定されておるところでございますが、本基本法は、男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的としておるものでございまして、人工妊娠中絶等の個別的、具体的施策については規定していないというふうに理解しております。
 人工妊娠中絶につきましては、優生保護法というのは平成八年で改定されまして、今は母体保護法ということになっておりまして、優生思想はなくなっております。その母体保護法によりまして、厳格な条件のもとで実施が許容されているところであります。今後ともそういった形で厳格な運用を図ってまいりたいというふうに考えております。

○松浪委員 大体、年間何万人ぐらい中絶されているのですか。

○小田説明員 母体保護法に基づきまして、人工妊娠中絶を行ったドクターの方は、毎年、厚生大臣の方にその実施した数値を報告するということが義務づけられておるわけでございます。毎年こういった統計を出させていただいておりますが、これによりますと、平成九年は三十三万七千九百九十九件となっております。
 この数字は、二十年前と比べますと、率あるいは実数とも半減しているということで、家族計画の普及あるいは避妊法の普及によりまして、こういった形で数は減少してきているところでございます。

○松浪委員 その報告は報告で、厚生省としてはそれが実数だというふうにお考えなんですか。一言で言えば、表現は悪いのですけれども、やみの中絶、これはあるのかないのか、どういうふうに思われているのか、ちょっとお聞きしたいと思います。

○小田説明員 やみ中絶ということは非合法の中絶というふうな形だと思いますが、先ほど申し上げましたように、人工妊娠中絶につきましては、いわゆる母体保護法指定医という、これは医療機関の看板にも掲げられておりますが、そういった方が厳格な規定のもとで実施するということでございまして、そういった条件から、やみの中絶というものは考えにくいというふうに思っております。

○松浪委員 厚生省の口から、やみの中絶あります、これだけいますと言うわけにはいかないでしょうから、私は、いると思っているんですね。
 女性の人権を尊重しなければならない、しかし、胎児にも人権がある。そして、この法律ができて、個人としての尊厳が重んじられるというようなことになれば、もしかしたら、中絶を容認する内容になってしまうというおそれもあるわけですけれども、そういうやみの中絶が行われないよう、厚生省に厳しく取り締まっていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 次に、第四条、社会における制度または慣行についての配慮、これについてお尋ねしたいと思います。
 これは第二条の二号と関連するというふうに思うわけですけれども、「男女共同参画社会の形成に当たっては、社会における制度又は慣行が、性別による固定的な役割分担等を反映して、男女の社会における活動の選択に対して中立でない影響を及ぼすことにより、男女共同参画社会の形成を阻害する要因となるおそれがあることにかんがみ、社会における制度又は慣行が男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り中立なものとするように配慮されなければならない。」こういうふうに書かれてあります。
 この第四条を読んでほうふつとさせられるのは、ここ数年前から、防衛庁は、防衛大学校の学生に女子学生の入学を認められました。何で男ばかりであった防衛大学校に女子学生の入学を認めるようになったのか、お尋ねしたいと思います。

○枡田説明員 防衛大学校におきます女子学生の採用についてでございます。本件につきましては、平成四年度から女子の採用を行っております。
 お尋ねのその理由でございますが、我が国におきまして女性のあらゆる分野への参加が促進されつつある、こういった社会一般の動向を踏まえました。そして、防衛庁としまして、防衛大学校への女子の受け入れについて検討を進めた結果、婦人自衛官の職域の拡大が自衛隊の中で順調に進んでいるということ、あと、諸外国の同じような、例えば士官学校の受け入れの状況、また防衛大学校の訓練内容の大部分、これが女子にも履修可能であるという判断、同校におきます女子を受け入れても自衛隊の精強性を維持することは可能であると考えられる、こういった理由によりまして、女子の能力を積極的に活用する、そして優秀な人材の確保を図るということで、女子の受験を認めまして採用を行うこととしたものでございます。

○松浪委員 ちょっとお尋ねしますけれども、女性自衛官はどのような任務を担当されているんですか。

○枡田説明員 御説明します。
 現在、婦人自衛官、平成十年度末現在で約九千名おりまして、これは、全自衛官現員は二十三万六千人程度でございますが、これの三・八%程度でございます。
 この九千人の内訳でございますが、一般の職域と申しますか、それが七千八百名程度、あと医官、歯科医官、これが約百名、看護の分野が一千百名強となっております。
 こういった婦人自衛官の中には、例えば、陸上自衛隊の例でいいますとUH1のヘリコプターパイロットだとか、海上自衛隊でいいますとP3C哨戒機のパイロット、あと潜水員、航空自衛隊でいいますとC1輸送機のパイロット二名、こういったことで、いろいろな分野に及んでおります。
 ただ、防衛庁としましては、平成五年の六月でございますが、母性の保護、プライバシーの保護、こういった観点から当面制限することといたしました普通科中隊、戦車中隊、海でいいますと護衛艦、潜水艦の乗組員、戦闘機パイロットその他一部の配置を除きまして、すべての職域を婦人自衛官に開放しているところでございます。

○松浪委員 お聞きしていただいたとおり、防衛庁はごっつい進んでいるんですね。そんなところまで女性が進出しているのか、恐らく驚かれた先生方もたくさんいらっしゃると思うんですが、ごっついおくれているところもあるんですね。
 そこで、文部省にお尋ねしますけれども、国立の女子大が二つあります、お茶の水女子大、奈良女子大。ここは結局、男性の入学を認められるんですか。

○清水説明員 お答え申し上げます。
 両大学とも、正規の学生としては男性の入学を認めておりません。

○松浪委員 では、これはなぜ女子大というのはできたんですか。ちょっとそれを、国が女子大をつくる必要があったのかどうか、お尋ねしたいと思います。

○清水説明員 お答え申し上げます。
 両女子大は、先生御案内のように、戦前は女子高等師範学校として、女子教育、あるいは教員、教育面での指導的な人材養成ということで発足したわけでございます。
 戦後におきましては、それぞれ、女性に関する高等教育、教育機会あるいはさまざまな形の機会の確保、教育研究の振興という観点から、国立大学として、引き続き新制大学として二大学が存立している、こういうことでございます。

○松浪委員 そうしますと、戦前の女子師範からスタートをして、時代が変わってきて、この男女共同参画社会基本法という法律ができようとしている今日、女子大でなければならないという必要が全くなくなってきているのではないのか、国が率先して男女共学の学校にしなきゃならないんじゃないか、こういうふうに思うんですが、いかがお考えですか。

○清水説明員 お答え申し上げます。
 今先生のお尋ねは、それぞれの大学の存立の基盤ないし理念ということにかかわることであろうかというふうに思っております。
 例えば、今お尋ねがございました女子教育、高等教育機会の確保というふうな状況で申し上げますと、データ的に申し上げますれば、大学学部への進学率、昭和二十年代当時は、全体として女性が二・四%という進学率でございました。その時点におきまして、男性の進学率は一三・三%でございます。これは二十年代のちょうど半ばごろの数字ということでございます。現在、平成十年の数字で申し上げますと、例えば大学学部への進学率ということで申し上げますと、男性が四四・九%に対して女性が二七・五%というふうな状況に相なっております。
 また、それと同時に、これら両大学は、それぞれその建学の精神ないし教育の目標、理念ということになるわけでございますけれども、先ほど申し上げました女性に対する高等教育機会の確保、あるいは人材面、とりわけ研究者の育成面、あるいは女性学あるいはジェンダー等に関する教育研究の振興というようなことで、基本的に、あえて申し上げさせていただければモデル的と申し上げましょうか、そういうふうな重要な役割を果たしておるということでございます。
 なお、つけ加えさせていただきますれば、やはり、それぞれの両大学にありましても、新しい時代、社会というふうなもとで、それぞれの教育の理念あるいは目標というものをどのように構築していくのか、あるいは、古い伝統というものを受け継ぎながらもどういう形で自己革新を図っていくのかというようなことについて、今それぞれの大学で作業が行われている、こういうふうな状況であるということでございます。

○松浪委員 今の御説明からでも、もはや女子大の存在する必要性というのは全くない、私はそう思っているわけでありますし、女性の研究者をつくる、女性の教育をする、これはほかの大学でもやっているわけですから、この法律ができたそのあかしとして、私学は建学の精神がありますからとやかく言いませんけれども、少なくとも国がこの法律をつくって女子大をずっと、しかも戦前につくった、女子教育を特に力を入れてやらなきゃならない、そして男と女は全然違うんだという発想のもとにできた師範学校、これを今の時代も続けるんだということであれば、この基本法は一体何なんだというふうに私は思うのですが、官房長官、国立の女子大、必要ないのじゃないでしょうか。いかがですかね。

○野中国務大臣 現実に国公立として存在をしておるものでございますので、この法との絡みにおいて私どもがその存立についてお答えすることは適切でないと考えております。

○松浪委員 官房長官にうまいこと逃げられましたけれども、この基本法をつくるならば、とにかくそこまで国が本腰を入れて、男女が平等であり機会をともに与える、そして今までの慣習というものを打ち破っていくんだという強い意識に基づいてこの法律を成立させる必要があるんじゃないのか、私は、その象徴的なものになるような気がしておりましたけれども、男女が平等で互いに機会を与えられる、そういうふうになってもらいたいなというふうに思います。
 次に、第六条についてお尋ねいたします。
 家庭生活における活動と他の活動の両立ということで、役割分業社会の象徴的な箇所であるかもしれませんけれども、「男女共同参画社会の形成は、家族を構成する男女が、相互の協力と社会の支援の下に、子の養育、家族の介護その他の家庭生活における活動について家族の一員としての役割を円滑に果たし、かつ、当該活動以外の活動を行うことができるようにすることを旨として、行われなければならない。」これは冒頭でも御質問させていただきましたけれども、家庭生活にまで国が法で踏み込むということはいかがなものかというふうな考えを持っていまして、もしかしたなら、これは夫婦げんかにまで国が介在するというような形になってはいないか。
 仕事をしに出ていきたい。だんなさんやおじいさん、おばあさんが、いや、ちょっと困るから残ってくれ。いや、法律で働きに行ってもいいようになっているし、家族がそれを理解してちゃんとやらなあかんように保障されているというようなときに、これは法律を盾に夫婦げんかがおさまらないというふうになる。ちょっと踏み込み過ぎているなという心配を私はしているのです。それだけ女性の地位が家族の中、家庭の中でも低かった、社会的にも低かった、この裏返しがこういう形になったのかもしれませんけれども、私自身は踏み込み過ぎているというふうにとらえているのですが、総理府、どうでしょうか。

○佐藤(正)政府委員 この法案は、男も女も、伝統的な固定的な役割分担意識といいますか、それによりましておのおのの役割が限定されるということがあってはならないということで、おのおのみずからの選択によりましていろいろな活動に参画できるということを保障したい、こういう法律でございます。家庭生活と他の活動の両立がそういう意味からいきまして重要でございますので、六条におきましては、これを基本理念として明示させていただいておるということでございます。
 男女共同参画社会を実現するためには、家庭を含めたあらゆる分野で男女が互いに責任を担い、また協力をし合わなければならないということでございますが、個々の家庭におきましては、最初に先生もおっしゃいましたが、各家庭はおのおのその構成員の話し合いによりましてどういう役割分担をしていくかということをお決めいただくことになろうかと思いますので、当然のことながら話し合いを通じて役割を決めていただきたい、こう考えるところでございます。
 なお、本条は基本理念の項目でございまして、ここから具体的な義務を課すものではございません。

○松浪委員 いずれにいたしましても、この法律をつくって、そして役割分業社会というものの理解を深めていく必要がありますし、本当に男女が平等で開かれた社会にするということを心から望みたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
 最後に、国際的協調について、第七条でございますけれども、ここは「男女共同参画社会の形成の促進が国際社会における取組と密接な関係を有していることにかんがみ、男女共同参画社会の形成は、国際的協調の下に行われなければならない。」なるほどというふうに思います。私も外国でいろいろな国々で生活をしたことがありますけれども、ここで言う国際的協調とはどういうことなのか、私、ちょっとよくわからないのですが、御説明していただけますか。

○名取説明員 お答えいたします。
 男女共同参画社会基本法第七条におきまして、国際的協調を男女共同参画社会についての基本理念として掲げているところでございますが、これは、国内の問題と国際社会の問題が緊密に関係しており、男女共同参画社会の形成に関しても国際的な連携、協力のもとに行うことが望ましいことから規定しているものでございます。したがいまして、本条は国際社会全体の動きと協調するということを定めたものでございまして、特定の国と協調するということを定めたものではございません。
 この国際的協調のための措置につきましては、七条には基本理念を設けておりますが、これを受ける形で、第十九条に国際的協調のための措置という規定を置いております。ここにおきまして、具体的には、国際機関との情報の交換ですとか、国連等の諸活動への協力ですとか、男女共同参画社会の形成に関連する発展途上国への政府開発援助等を想定されているところでございます。

○松浪委員 なぜこのように質問させていただいたかと申しますと、資料等たくさんいただきまして勉強させていただきました。そうしますと、おおむねこの法律をつくるに当たりましては欧米先進諸国の資料をもとにしてつくられている。これらの国々は押しなべてキリスト教の国なんですね。我々、この国は伝統的に儒教的精神、これは私たちの心の片隅に横たわっているように私は理解しております。
 そうしますと、これは今説明を聞いていたら、国連機関との協調とかうまいこと表現されておりましたけれども、私は実はイスラム教の国での生活が長いのです。そして、その国にありましては、男性と女性の役割分担というものはどういうふうになっているのか、よく承知をいたしております。町を歩くときには女性はどういうふうにしなければならないか、女性隔離の習慣というものがあってどうなのか、これらのことに私は十分な知識を持つものでありますけれども、国際的協調ということになりますと、イスラムの国が世界で三分の一あるわけですね。この国の人たちとの協調というようなことになりますと、この基本法は吹っ飛んでしまいます。
 そこで、その地域地域の特色、伝統、歴史、文化、これらを踏まえた上での国際的協調でなければ、我々は単にキリスト教の国々とだけしか協調できないということになりますけれども、その辺はいかがですか。

○佐藤(正)政府委員 先ほど室長から申し上げましたとおり、この法案あるいは男女平等の動き自体が女子差別撤廃条約あるいは人権宣言あるいはILOの百五十六号条約その他から動き出しているということもございまして、そういう動きとも連携をしながら動いていかなければいかぬ。
 それからまた、先ほど申し上げましたように、発展途上国に対しましては、先輩といたしましていろいろ御協力もしなければいかぬだろう。そういうことを含めまして国際協調という規定を置いたことでございまして、キリスト教とかイスラム教とか、それぞれ国々によりましてはいろいろな特徴があろうかと思いますが、こちらから援助する場合におきましても、当然のことながら、そういう特徴を踏まえた上で動いていくことになろうかと考えております。

○野中国務大臣 今、松浪委員のさまざまな御質問を承りながら、歴史的な検証を見事にされ、かつ、すぐれた識見と豊富な経験とに裏づけられまして、さまざまな視点に立って、鋭い御質問、御意見を賜りました。男女共同参画を担当する閣僚の一人として、私自身、みずからの足らなさを恥じ入っておるわけでございます。
 今御指摘ございましたように、国際協調につきましても、それぞれの民族の歴史、文化、宗教等を十分踏まえながら、この男女共同参画が我が国においても、我が国の歴史、文化に裏づけられて、成立をいたしました後、実効ある政策が行えるようにやってまいりたいと存じておるところでございます。

○松浪委員 長時間にわたりまして、失礼な箇所もあったかと思いますけれども、心からおわびをいたしまして、そして、真摯な御答弁をいただきました、このことに対してもお礼を申し上げまして、質疑時間が終了いたしましたので、これで終わります。
 どうもありがとうございました。

○二田委員長 次に、瀬古由起子君。

○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
 二十世紀は、人類史の上でも、人権と民主主義が大きく前進した世紀でございます。それと同時に、男女平等と女性の地位向上の課題でも画期的な進歩を遂げた世紀だと思います。日本も戦後、男女平等を掲げた憲法の出発から、一九八五年に批准した女子差別撤廃条約を初め、国際的な動きの影響を受け、女性の地位向上を目指す取り組みも前進してまいりました。
 しかし、日本の女性の地位の到達は、世界の水準に照らして極めて深刻なものだと思います。雇用機会均等法の女性差別禁止が企業の努力義務規定になっているために、男女の賃金格差は六三・一%で、法制定後、二・六%縮まっただけでございます。パート労働者を含めると、女性の賃金は男性の五〇%。女性労働者の三分の一がパート。東京都がことし三月に発表した派遣労働に関する実態調査によりますと、派遣労働者の八六%が女性です。年収は百万円未満が二割、約四割が社会保険に加入していないという状況でございます。今日、圧倒的に女性が占める不安定、低賃金労働者はふえる一方です。
 三日の本会議の質問の中で、私は、今日の日本の男女差別の最もひどい職場での企業の責任、そして母性保護の問題を提起しましたが、その重要性を総理も官房長官も認めていただきました。きょうは、その中で第一番目に、深刻な母性保護について、女性労働者の妊娠、出産をめぐる状況について、具体的に質問をいたします。
 第一番目に、お配りいたしましたナンバー一の資料をごらんいただきたいと思うのです。この中に、これは大都市の看護婦さんたちが集会を行った、そのための準備の資料として出されたものですけれども、一九九八年度の夜勤回数、そして異常妊娠関係実態調査でございます。
 異常妊娠者率は、これは主な病名でいいますと切迫流産とか早産とか妊娠中毒症が多いわけですけれども、この異常な妊娠者率は一六%から六四%。六四%の横浜市大附属病院は、常に妊産婦を各病棟が持っているという状態です。妊娠しても、夜勤免除というのはやれることになっているのですけれども、実際には、自分が申請をすると他の人が夜勤が八回以上になって申請できない、こういう状況で、妊娠しても働き、夜勤をやるという事態になります。
 夜勤実態も、名古屋市立大学病院では、月九回以上というのが三九・一%になっています。妊婦が九回夜勤をしている病棟も出てきております。名古屋市の緑市民病院では、一人で三回も流産されたという方がいるわけですね。とうとうこの方は職場をやめてしまわれたそうです。大きいおなかで四十五人の患者さんを看護するのだそうですけれども、大体深夜に起きているというだけでおなかが張ってくるわけですね。その上病棟も走り回るという状態ですから、異常妊娠、異常出産というのは続出しているわけです。
 これは、日本医労連の医療労働者の労働・健康実態調査、全国都道府県の五百三十施設にわたって六万四千七百三十四人を集約したものでございます。この資料によりますと、妊産婦の業務軽減、免除の取得状況、全くとれなかったという方が時間外労働で四四・一%にも達しております。夜勤で全くとれなかったという方が二三・七%、休日労働で四九・三%です。これは妊産婦の方なんですね。全日本国立医療労働組合の調査です。これは国立なんですけれども、ここでは、一九八〇年以降百九十九人の看護婦さんが在職死、亡くなっている。過労死に多く見られる脳や心疾患が二割を占めております。こういう状況なんです。
 それで、妊娠したり出産した看護婦さんが夜勤や残業や休日勤務をえらくても免除申請できない、人手不足などから法的な権利が守られていないという医療の職場の現状があります。今政府は、完全週休二日制、週四十時間労働、年休は一〇〇%消化だ、こういうふうに労働者や国民に約束しているわけですが、看護婦さんはその上、看護婦確保法がありまして、処遇の改善というのをきちっと国がその責任を明確にしているわけです。その中で、夜勤も月八回以内、看護婦さんの場合は、特に妊娠などを想定した予備率、これをきちんと確保した上で人員配置しなければ、次々と異常な妊娠、異常出産という事態が起きてくると思うのです。
 厚生省は、この点、今どのような医療の職場の現状を把握されておられるのか、どのような対策をとっておられるのか、お聞きしたいと思います。

○小林(秀)政府委員 お答えを申し上げます。
 看護婦等の夜勤負担の軽減に関しましては、看護婦等の人材確保の促進に関する法律等に基づきまして各般の人材確保対策を講じていますとともに、同法に基づく基本指針において、複数を主として月八回以内の夜勤体制の構築に向けて積極的に努力する必要がある旨を示すことにより、その取り組みを講じてきておるところでございます。
 また、平成三年に策定をされました看護職員需給見通しにおきましては、労働基準法等に定められている年休それから産前産後の休業、生理休暇及び育児休業の需要を見込んでいるところでございまして、各般の人材確保対策の結果、看護職員の需給は現在のところ順調に推移してきていると思っております。
 さらに、妊産婦である看護婦の夜勤負担の軽減につきましては、労働関係法令においても妊産婦に着目した保護規定が設けられているものと承知をいたしておりますが、厚生省としても、妊産婦である看護婦等については特別な配慮が求められるものと考えております。厚生省といたしましては、看護婦の夜勤負担軽減等の看護婦等の処遇の改善を進めていくためにも、看護職員需給見通しを踏まえつつ、看護職員を確保していくことが重要であると考えております。
 現在、看護職員需給見通しにつきましては、その達成状況や介護保険の導入等、看護をめぐる状況の変化等も勘案して、本年度よりその見直しを検討することとしておりますが、需給見通しの見直しを検討するに際しては、これらの視点を踏まえて検討してまいりたい、このように思っております。

○瀬古委員 今私が実態を述べましたけれども、今後の問題は今後の問題でやっていただきたいのですが、当面、本来命を守る、健康を大事にしなければならない看護婦さんがこういう実態で働いているということは、やはり直ちに調査して、それなりの体制をつくるということが必要ではないでしょうか。厚生省は、看護婦さんが夜勤、特に妊産婦については一体どういう事態で今働いているのかというのはきちっと調査されたのでしょうか。その点いかがですか。

○小林(秀)政府委員 まず、厚生省みずから今先生が御指摘された妊産婦の状態についての調査はいたしておりませんが、今先生がお示しされたようなデータだとかその他いろいろな文献等もあります。
 そういうことで、厚生省としては、本年度より開始をいたします看護職員需給見通しの中で、この夜勤負担の軽減の状況の把握にも努めながらきちっとやってまいろう、このように思っております。

○瀬古委員 官房長官にお聞きしたいと思うのですけれども、男女共同参画の前提として、女子差別撤廃条約前文が掲げております母性の社会的重要性、これが大変重要だというふうに思うわけですね。この看護職場におきましては、夜勤とか交代勤務、こういうものがありますから、本来でいうと、一般の労働者よりもさらに労働時間を短くするとかさまざまな配慮が私は必要だと思うのです。
 今厚生省が、よく実態をつかんでそれなりの体制といいますか、人の確保についてはとっていただけるということでお話をいただきましたけれども、男女共同参画の前提として、こういう医療の職場の状態をどういうふうにつかまれ、そしてどのような改善が必要だというふうにお思いでしょうか。長官、お願いします。

○野中国務大臣 今政府委員から御答弁申し上げましたように、法律あるいは通達等において、医療現場に従事する看護婦の勤務態様につきましては一応の配慮は行われるようになっておる状態でございますけれども、医療の現場におきましては、まさしく委員が御指摘のような深刻な事態でございまして、特に私立病院等におきましては、経営あるいは競争力等から非常に過酷な労働が強いられておることは私も承知をしております。
 また、私自身、社会福祉法人として重度障害者の施設の経営に当たっておりますけれども、そういうところにおきましても、人道愛の上から非常に介護してくれる寮母たちの労働が過酷になっておる現場も知っております。また、医療現場におきまして、臨終等をお迎えになった状況の中では、これまた人道的に医師、看護婦等が自分たちの勤務条件を超えてやっていただいておるような場面もかいま見ることが多いわけでございます。私どもは、こういう医療の状態が深刻化すればするほど、看護婦の勤務の態様につきまして、より十分な行政的配慮が必要であるということを痛感しておる昨今でございます。
 この法案の御審議に当たりまして御指摘いただいたことをこれからの施策にまた十分生かしていけるよう、配慮をしてまいりたいと考えております。

○瀬古委員 では、二点目にお聞きしたいと思うのですけれども、医療の現場に続いて、さらに深刻な実態は、業者婦人の問題です。とりわけ、父ちゃん母ちゃんで、家族で自営している業者、その中で、女性の状態というのは大変な事態になっております。
 きょう私、全国商工団体連合会婦人部協議会が行いました全国業者婦人の実態調査というものがございます。この中の調査を見てみますと、これは一九九七年に行われた調査なのですけれども、中高年化が急速に進む中で、長引く不況で売り上げ状態の悪化を労働時間の延長で乗り切ろうとする、こういう実態が出ております。休日も、週一日とれる人も少ない。業者婦人は家事とか育児それから介護、家庭内の労働の担い手ですけれども、この中で、体の不調を訴える人は六割を超えるという状態になっています。
 お手元にお配りしておりますナンバー二の資料なのですけれども、業者婦人の体のぐあいがどういう状態になっているのかということと全国平均の訴えの率と比較して、二つ表を並べております。
 この中で見ましても、実際には、四十代以上になりますと、一般の全国平均と比べましても、二〇%以上、訴える方が業者婦人の場合は多いということになっているわけですね。さらに調査をした内容を見てみますと、その中身も深刻で、精密検査が必要だというのは、四十代で二割にも達しております。それから、五十代、六十代は三割が異常な状態だというふうに診察されている。
 中小企業庁にお聞きしたいと思うのですけれども、業者婦人の現状をどのように認識されているのでしょうか、お聞きいたします。

○鴇田政府委員 お答えをいたします。
 小規模零細企業の中小企業者の場合には、今先生が御指摘のように、業者婦人という形で、婦人の方が、経営、労働あるいは家庭まで含めて獅子奮迅の活躍をしていただいていると我々認識をいたしております。
 私どももいろいろ調査をしておるわけですが、昨年の十一月に、これは大企業、中小企業、中堅企業も含めて約二万社の調査を年末にさせていただきました。
 今先生お配りされた資料の中に健康問題等々ございますが、我々の調査でも、小規模企業の事業主、これは女性、業者婦人の方が多いわけですが、現在、生活上の一番の問題としてはやはり健康問題であるという指摘をされている方が全体の約三四%を占めております。また他方、同時に御指摘のありました週休二日制の問題でございますが、週休一日をとれるのがやっと、三八%ということで、大変厳しい環境になっている点は我々認識をいたしておるわけでございます。
 経済状況も大変厳しい中で、中小企業一般も大変経営が厳しい状況の中にありますが、特にこの小規模零細企業における婦人の方の御苦労というのは、我々も認識をいたしているつもりでございます。

○瀬古委員 今答弁していただきましたように、中小業者、特に自営の業者婦人の場合の実態が大変深刻だということだと思うのです。
 今回の男女共同参画社会基本法は、こういうすべての女性の問題について、生涯にわたる健康の保護、これは当然の権利だというふうに位置づけていると思うのです。これは共同参画の前提でもあるわけですよね。そうすると、一刻も待てないような業者婦人の健康状態や生活状況、これは何とかしなければいかぬというのは、当然この男女共同参画社会基本法の理念に沿って対策を講じるということが私は必要になってくると思うのです。
 実は、男女共同参画をつくっていく基本になります男女共同参画の現状と施策、男女共同参画白書、こういう幾つかの資料を見てみましても、業者婦人の項というのが全く皆無と言っていいほどないわけですね。少し農山漁村の女性の問題なんかは触れているのですけれども、見事に欠落していると言ってもいいほど、業者婦人のところはどこを探しても出てこないわけです。それは深刻な状態になっているだけに、一層その実態を調査して、そして対策を講じる必要があるのではないかと思うのですが、その点、長官、いかがでしょうか。

○佐藤(正)政府委員 先生から御指摘の点につきまして、白書にも欠けているということでありますと非常に問題でございますので、今後、その点につきましては配慮して取り組んでまいりたいと思います。

○瀬古委員 長官、いかがですか、今欠けているという問題を認められたのですけれども、なぜこういう問題が放置されたままになっているのでしょうか。その点での今後の対応をどのように率直な御感想をお持ちでしょうか。

○野中国務大臣 御指摘のような問題は、この法案が基本法の性格を帯びましたために、御指摘のようなところである意味において配慮されていないという御指摘も当然のことであろうかと考えるわけでございまして、今後、個別法のありようについて十分配慮を加えてまいりたいと考えております。

○瀬古委員 全国で初めて小規模事業所の業者婦人の実態調査が実施されたのは高知県でございます。この中でも、多くの業者婦人が出産直前まで働いて、そして病気になっても休めないという状態がリアルに浮き彫りになった、こういう調査がございます。
 それで、なぜ出産ぎりぎりまで働かなければならないのか。もちろん今業者自身の深刻な不況の問題もありますけれども、この業者婦人の場合に、特に母性を保護するための休業補償としての出産手当金、それから病気で休んだときの休業補償である傷病手当の給付がないという問題なのですね。
 それで、財政的な問題でも一定の確保をしないと休めないという問題もありますし、実際に業者婦人の皆さんに聞いてみますと、やはり社会的に、公的にきちんと認められて休める、こういうものが欲しい。そのためにも、こういう手当金なりで一定の給付があると、ある意味では休むということが認められるといいますか、そういう立場からいっても、こういう出産手当金や傷病手当金の給付は、もう前々から切実な声として出ているのですけれども、何らかの形で母性保護という立場からもぜひ検討してもらいたい。
 この給付というのは、実際には自治体の条例によって支給できるということになっているわけです。自治体も困ってといいますか、現状を見るに見かねて、実際には各自治体が出産手当金や傷病手当金を出すとしたらどれぐらいの費用がかかるのかという計算をそれぞれの自治体がやって取り組んでいるところもあるのです。しかし、自治体が一歩踏み込もうと思いますと、今の国保の現状というのは御存じのように大変な事態があるものですから、これは、出産育児一時金が三分の二が交付税措置になっています。そういうふうな一定の国の財政的な補償がなければ、計算まではしたけれども、自治体がなかなか踏み切れないという問題があります。その点でも母性保護の立場からも国として検討すべきではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。

○辻説明員 お尋ねの出産手当金あるいは傷病手当金、今の業者婦人は国民健康保険制度の適用ということですので、これについてということでございます。
 まず、この性格でございますけれども、被用者保険制度におきましては、出産、傷病によりまして休業期間中に労務に服さない、したがって賃金の支払いが行われない、こういう状況に対して支給する、こういう性格のものでございまして、自営業等といった形のものを対象とする国民健康保険制度につきましては、そういうケース、なじむケースは少ない、あるいは実際問題として仕組み方も大変難しいというような状況がございます。
 今御指摘がございましたけれども、市町村は条例で定めることによって傷病手当金の給付を行えますが、これは任意で行うという位置づけにとどまっておりまして、現にこの制度を設けている市町村はないという状況でございます。そういった傷病手当金等の性格、そして仮に市町村が条例を定めて傷病手当金の給付を行う場合でありましても、これは独自の判断と財政責任で行う任意給付でございます。
 ただいま御指摘になりました出産一時金は、これは法定給付、基本的には、法律上、原則として全市町村が給付しなければならないということ、そういうことから国の財政支援がそちらへ入っているわけでございますが、これにつきましては任意給付ということでございますので、例えば国が財政支援で支援するというふうなことは、残念ながらなじまないというふうに考えております。

○瀬古委員 そんなことないと思いますよ。財政支援という点でいえば、もちろんこれは法律的には市町村の任意給付ということになるけれども、そのために、今市町村が何とか突破できないかということで、例えば一日の賃金の計算の仕方も、最低賃金で計算してみたり、いろいろな工夫はしているわけですよ。
 そして、業者婦人の場合だって、お産すれば入院もするわけでしょう。その間は仕事につけないわけですよ。そういう点でいえば、ぎりぎりまで、もう本当に陣痛が来るまで働いて、そしてお産で入院、退院してきたらすぐ働かざるを得ないことになっているので、業者婦人の健康状態も今大変ひどい状態になっているわけです。
 そういう面では、きちっと自治体が何とかしたいと思っているのに、そんなものはなじまないなんと言って一刀両断に切り捨てるのではなくて、今改めて男女共同参画という立場で、母性保護が、それが前提だと言うのなら、業者婦人の場合にも、その点でも考え方というのはあるのではないかと思うのですね。その点、いかがでしょうか。

○辻説明員 基本的に、この給付の性格でございますが、出産や傷病によって休業する、そしてそのために賃金が支払われない、それが支払われないということを補てんするという性格のものでございまして、業者婦人の方々に、出産とか、そういったときの大変な状況というものについての配慮ということについて、さまざまな判断が必要かと存じます。給付の性格上から見ましても、そしてまた、そういう任意給付ということで位置づけられているということから見ましても、今申しましたように、なかなか難しい事情があるということでございます。

○瀬古委員 ですから、補助の仕方もいろいろあると思うのですよ。賃金が払えない、その賃金にかわるものとして、そういう支給をするというやり方も当然あるかもしれませんけれども、それぞれ自治体が何らかの形で出産、妊娠にかかわって手当を出した場合に、それなりの援助の仕方というのをもっともっと考えるべきだと私は思うのですけれども、長官、いかがでしょうね。こういう業者婦人の出産手当金、傷病手当金について、業者婦人の深刻な健康状態や妊産婦の状態から見て、何らかの援助の方法はないでしょうか、いかがですか。

○野中国務大臣 この基本法で、男女の基本的な人権の尊重ということが言われておるわけでございまして、この基本理念を考えますときに、今委員から御指摘のありました業者婦人の問題というのはまことに深刻な問題でございまして、ある意味において、政府委員が答えましたように、国民健康保険関係における任意給付の問題になろうかと思いますけれども、それぞれ地方公共団体でこの任意給付を実施しておるところもあるわけでございますので、地方財政対策も含めながら、今御指摘のような問題等につきまして、基本法の成立の経過からかんがみて、私どもとしても各関係地方公共団体なり、自治省初め厚生省等とよく協議をしてまいりたいと考えております。

○瀬古委員 私、二点の問題、特に医療の現場における看護婦さんたちの実態や業者婦人の問題について、母性保護が本当に大変な状態になっているということもお話をさせていただきました。
 今度の男女共同参画社会基本法には何とか、今の女性の母性保護の実態から、母性保護を明記してもらいたい、きちっとこの法律に入れてもらいたいという声がかなり多くのところから出されているのですけれども、その点いかがでしょうか。

○佐藤(正)政府委員 男女共同参画社会基本法案は、基本理念等を定めることによりまして、男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的としている基本法でございます。
 したがいまして、母性保護等の個別具体的な事項につきましては本法案の中に具体的に規定はしておりませんが、法案の中で基本理念といたしまして男女の人権の尊重を盛り込んでおりまして、この基本理念に照らしまして、母性保護の問題も重要であると認識をしております。
 以上でございます。

○瀬古委員 次の問題に移りたいと思うのですけれども、近年、雇用の流動化、つまり不安定雇用が拡大したアメリカでは、男性の賃金が引き下げられた結果として、男女間の賃金格差が縮小している、こういうことが伝えられております。
 男女共通の労働時間、こういうものも不十分なまま、今女子保護規定が撤廃されたり、また不安定、低賃金労働のままで長時間労働を強いるという状況が生まれている。女性が家庭責任や育児などのために長時間働くことができないという点から、パートや派遣労働にならざるを得ない。そうするとますます、先ほど私が冒頭で指摘しましたように、かなりひどい労働条件で働かざるを得ない。こういう事態になっているわけです。
 そういう点では、女性は、不安定、低賃金を強いられながら、家庭や子育てを両立させるか、それとも、もう家庭も子育てもあきらめて、男並みに仕事人間に徹するか、こういう選択に事実上迫られているわけですね。
 これでは、今までの重要な社会問題になっております少子化傾向にますます拍車をかけるということにもなりますし、本気で男女平等を追求するというなら、やはり家庭責任や育児を果たしながら能力が発揮できるようにするという法的や社会的なルールというのが私は必要じゃないかと思うのですね。幾ら精神的に両立しましょうといったってできないと思うのですよ。夫婦で話し合いましょうといったって、実際にはそういう状況にないわけですね。
 それで、男女の平等というのは、単なる男と女、男性と女性との間の格差をなくして均等になるだけじゃなくて、やはり男女ともに本当に人間らしく働けるといいますか、生存権も保障されて人間らしく生活できる、そういう保障の中で差別が撤廃され実現できるものじゃないかというふうに思うのですけれども、その点いかがでしょうか。

○佐藤(正)政府委員 男女共同参画社会を形成していくに当たりましては、男も女も家庭生活における活動と他の活動との両立が重要でございます。おのおの家庭の中での生活が充実していなければいけないということは御指摘のとおりだと思います。男女共同参画社会基本法案の第六条におきましては、その旨を基本理念として明記をしているところでございます。
 ただ、子の養育あるいは家族の介護等の多くは実際には女性が担っていることが多いという現状にございますので、本法案におきましては、家族を構成する男女が、相互に協力するとともに、社会の支援を受けながら、家族の一員としての役割を円滑に果たし、家庭生活と他の活動の両立を図ることができるよう、男女共同参画社会の形成を目指すということにしております。こういう環境整備が重要であろうかと思っておるところでございます。

○瀬古委員 環境整備でいいますと、共働き家庭の中で、学童保育所だとか保育園だとか、こういう環境をぜひ充実してほしいとか、介護にかかわる問題についてもぜひ充実してほしいという声もあります。
 そして特に、私は、日本の場合に何といっても労働者の長時間労働という問題があると思うのですね。これを縮めないことには、幾らいろいろな社会的な支援があったってやれないという問題もあると思うのです。とりわけ日本の場合は、職場と住んでいるところが離れていますから、通勤も、一時間も二時間もかかってしまう。
 そういう点では、男女ともきちんと労働時間を、特に残業時間なども制限するということをきちっとやらないと、私は、幾ら家庭と仕事の両立と言っても不可能だと思うのです。その点は、何としても男女共通の時間規制というのをやるべきだと思うのですけれども、いかがでしょうか。

○鈴木説明員 労働時間短縮につきましては、四十時間労働の定着ということでこの間対策を講じてまいりました。その成果もありまして、労働時間はこのところ減少傾向にございます。
 また、今御指摘の時間外労働の問題でございますが、我が国におきましては、時間外労働、これは景気変動に対する雇用調整機能という側面もありまして、長期的に見て雇用の安定を図るためにはその上限を画一的に罰則をもって規制することは適当ではないと考えております。
 なお、男女を問わず、長時間の時間外労働を抑制するため、改正労基法に基づきまして時間外労働の限度基準、これをつくりましてこの四月から施行しております。これの遵守につきまして、労使への的確な指導に努めてまいりたいと考えております。

○瀬古委員 要するに、時間規制の問題も自由にしておくから、いつまでたっても改善できないわけです。私はきちっとした規制が必要だというふうに思います。そうしなければ、結局家庭と仕事の両立なんてできないのですよ。この点は、はっきりやはり今後の課題として検討するべきだというふうに思います。
 もう時間がございませんが、次に移ります。
 岩男男女共同参画審議会会長が、日経新聞で、去年の五月の十一日にこんなことを述べておられました。「基本法が施行されれば、その理念はすべての法律に影響する。もし既存の個別法の中で基本法に反する規定があれば改正する必要があるし、理念を実現するために法律が必要となれば新たに作ることもできる。」こういうふうに述べておられます。
 それで、この中で、新たな法律もしくは今の法律をこの基本法によって変えていけるのだという立場だと思うのですけれども、これは、例えば法制上の措置として、どのような新規立法や既存の法律等の見直しが考えられているのでしょうか。

○野中国務大臣 岩男会長がお話しになりましたことは私も承知をいたしております。男女共同参画社会基本法の十一条におきまして、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を実施するために必要な法制上または財政上の措置その他の措置を講ずることが重要であることから、この旨を記載しておる次第でございます。
 基本法という性格でございますので、本条は特定の個別具体的な施策を念頭に置いて直接的に立法措置等を講ずるような規定をいたしておりませんけれども、今後、この基本法の制定に基づきまして、新たにどのような措置を講じていくかは、個々にその必要性を検討した上で、十分個別に対応してまいらなくてはならないと考えております。

○瀬古委員 幾つかの法律を改正してもらいたいし、また新しい法律をつくっていただきたいと思うのですけれども、一つだけ事例をお話ししたいと思うのです。
 先ほどお話ししました業者婦人の問題についてですけれども、個人事業主が家族に賃金を支払ってもそれを経費と認めない原則というのがあるわけですね。ヨーロッパなどでは、自家労賃は必要経費として認めるというのがあるわけで、文字どおりこれは自家労賃をきちっと認めるということは、税制問題にとどまらない業者婦人の人格、人権、そして労働を認めさせる人権宣言だというふうに言われております。
 本法案の施行によるこういう新たな法律の改正などの措置によって、業者婦人の働き分を認めていく、そしてみずからの健康をも本当に顧みる時間も余裕もないまま必死で家業や育児や子育てや介護と頑張ってきた、こういう業者婦人の社会的、経済的地位向上のための法改正の措置というのは、当然この男女共同参画社会基本法の制定が力になっていくだろうというふうに思われるわけですけれども、その点、いかがでしょうか。

○野中国務大臣 詳細に必要とあらば政府委員から答えさせますけれども、恐らく青色申告等についての内容についておっしゃっておることだと思います。いずれにいたしましても、税制は、委員御承知のように、事業者や家族従業員が男性であるかあるいは女性であるかにかかわらず同一の取り扱いになっておることでございますので、そのように御理解いただきたいと存じます。

○瀬古委員 しかし、実質的には業者婦人の人たちの働いている分が認められない。これはいろいろ問題になっていますけれども、男であったって女だって変わらないと言うけれども、事実上女性に対する差別だということがこういう問題でも私は言えると思うんですね。私は、ぜひこれは改善していただきたいというふうに思います。
 それと、もう時間がございませんので最後ですけれども、やはり男女平等の実現というのは多くの女性が望んでいましたし、この基本法を願っていました。しかし、残念ながら、この基本法は意思決定過程への参画という問題がかなり中心になっております。もちろんそれは大事なことですけれども、実態としての男女平等を本当に実現してほしい、そういう法律をぜひつくってもらいたいという強い願いがあります。
 そういう点でも、大いに今後とも、この運用や基本計画の策定に当たっては、そういう男女平等をしっかりと実質的に保障できるものにしていただきたい、この旨発言しまして、私の質問といたします。
 ありがとうございました。

○二田委員長 次に、辻元清美君。

○辻元委員 社会民主党、社民党の辻元清美です。
 本日の議題になっております、言いにくいんですよ、男女平等法にした方が言いやすいなと思いながら、男女共同参画社会基本法案につきまして審議させていただきます。
 まず最初に、野中官房長官に率直な御意見を伺いたいのですが、日本の男女平等の現状というのをどのようにお感じになっていらっしゃるか、御認識されているか、まず率直な御意見を伺いたいと思います。

○野中国務大臣 長い封建社会から我が国の歴史をたどりますときに、男女平等参画という社会が残念ながら構築をされてこなかったわけでございます。戦後、新たな憲法下におきまして、それぞれ男女の平等の施策が打ち立てられてまいりましたものの、その個々については、今回基本法をこの時期に出さざるを得ないほどおくれてきたというように認識をしておるわけでございまして、改めて、この基本法によりまして、男女共同参画社会が構築されるように、我々は施策の上で実効あらしめなくてはならないと考えておる次第であります。

○辻元委員 私も、まだまだこれから努力していかなければならないという認識では一致させていただいております。
 さて、その中で、それでは現状について、この法案の定義の部分にも「男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受すること」というような文言があります。
 さて、参議院から、そして本日衆議院、審議してきます中に、さまざまな委員の方がさまざまな数値を挙げていらっしゃいます。私はそれをちょっとまとめてみました。これは今どういう現状にあるのかということがわかりやすいと思いますので、ここで御紹介したいと思います。
 まず、賃金について、経済的というのがありますが、これは労働省発表の働く女性白書では、男性の約五〇・八%。そして、女性の労働者は、パート労働者のうち全体の七割近くが女性である。そしてまた、母子家庭であった場合、平均年収は父子家庭の約半分で二百十五万円であるというような数字。
 そして、これも参議院、衆議院わたりまして皆さんが御指摘した数字です。育児休業の問題も多々出てきました。配偶者が出産した男性労働者に占める育児休業取得者の割合は〇・一六%、一万人に十六人であったというような統計。そして、育児休業をとった人の中に男性と女性の占める割合は、男性がたった〇・八%で、女性が九九・二%である。公務員の場合は、これよりももうちょっと低くなっています。また、日本の男性の育児時間は一日十七分。育児、介護、家事などを含めましても二十一分から二十七分ということで、女性は約四時間というような数字も参議院の委員会では飛び出してまいりました。
 さて、それ以外にも女性の場合は、就業を希望しながら現実的には子育て期にあるから断念せざるを得ないというような、九四・四%の人が難しいから断念しているというような統計もあります。
 私、今三十代なんですけれども、これは私の問題でもあるんですね。私の友達も働く女性がたくさんいるわけですが、子供を育てながら、なかなか難しいな。議員の場合も、先ほど官房長官が議員になってから子供が生まれましたという発言で、私も議員になってから子供が生まれたら、選挙区の間を行ったり来たり、これはどうなるのかなとか、さまざまな職業がありますけれども、女性の議員にとってもこれは死活問題であるのではないかと考えながら、この数字を拝見しました。
 また、これも参議院で出た数字ですけれども、おさらいしますと、女性が二十歳のときに就職して六十歳まで働くと考えた場合、生涯所得は二億三千六百万円。これが、仮に途中の中断で、二十七歳で出産して育児のために一たん休んで、三十二歳で同種の職業に復活した場合はマイナス六千三百万円、二七%所得が減る。また、これがパートタイマーで就職した場合にはマイナス一億八千五百万円、七八%所得が減るという数字にも私は驚きました。
 このように経済的ではなく、政治的という言葉もありますけれども、これもきょう朝からも出てきている数字で、自治体議員に占める女性の割合は六・九%であったとか、それから衆議院議員は五百人いますけれども、現状二十五名で、選挙権をとったときには先ほども出ました三十九人だったということで、減っているというような話が多々出てきています。
 そういう中で見ますと、ポジティブアクションとか、それからこの基本法ができましても、かなり努力を積極的どころか強引にでもやっていかないと、女性の立場からいいますとイコールにならないというのが今の現状ではないかと私は認識しています。
 さて、数字のおさらいはそれぐらいにしまして、そこでちょっと政府にお伺いしたいのですけれども、この男女共同参画という法律の名前につきましての御答弁の中で、男女平等が前提になっているという御答弁が多々ありましたけれども、私は今のような数字を見ますにつけても、現状では前提になっていないのではないかというふうに率直に感じるわけですが、いかがでしょうか。
    〔委員長退席、植竹委員長代理着席〕

○佐藤(正)政府委員 この法案につきましては、男女平等が実現した上でこうなるということではなくて、男女平等という憲法の理念、それから個人の尊重という理念、この二つを結び合わせまして男女平等参画社会を形成していきたい。これは、男女平等が実現された社会となるという前提で考えておるところでございます。

○辻元委員 ということは、その男女平等ということと男女共同参画社会との関係なんですけれども、よく集合の図がありますね。そうしますと、今の御発言ですと、男女共同参画社会の方が、集合の図でいえば男女平等の外側にあるというような御認識なんでしょうか。

○佐藤(正)政府委員 男女平等及び個人の尊重の上に乗るというふうに考えております。

○辻元委員 上、下、ちょっと何かだんだん混乱してきたのですが、私は、男女平等の方が外にあるというふうに思うのですね。
 これは指摘にとどめさせていただきます、たくさんの方も指摘しておりますので。やはり男女平等法とした方が言いやすいし、わかりやすいし、海外との整合性もとれるのではないかと私は考えています。
 さて次に、基本理念の中で、家庭生活における活動と他の活動の両立とか人権の尊重などさまざまありますけれども、この中で、特に社会における制度または慣行についての配慮、これが結構くせ者と言ったら変なんですけれども、何となくそうなっているとか、今までそうだったから男女の役割はこうであるとか、そこの部分の意識を変えていかないと、幾ら制度をつくっても魂が入らないのではないかと思います。この制度または慣行というのは、どういうことを想定されているのでしょうか。
    〔植竹委員長代理退席、委員長着席〕

○佐藤(正)政府委員 ここで言っております制度または慣行というのは、非常に幅広い概念でございます。
 参議院の審議の中におきましても、また衆議院の中におきましてもいろいろ御指摘を受けている中には、例えば税制の問題でありますとか年金の問題でありますとか、いろいろ御指摘を受けている点がございますが、そういうものを含めまして、この基本理念に照らして見直しをしていただきたいということを考えております。

○辻元委員 今、制度を中心にお答えになったように思うのですが、慣行というところは、これはどのような御認識でいらっしゃいますか。

○佐藤(正)政府委員 慣行という中には、例えば性別によります固定的な役割分担意識によりますものも含まれる。例えば、男は仕事、女は家庭というような考え方等も全部入ってくるものだと思っておりますが、そういう意味で非常に幅広い対象と思っております。

○辻元委員 私もこの辺を考えてみたのです、慣行というのはどういうことがあるのかなと。
 小さい子供のときの疑問が一つありました。教育の場で、男女平等であるということは習うのですけれども、名簿の出席をとるときに、かつては必ず男性のあいうえお順から始まって、次に女子生徒のあいうえお順になって、何でだろうなと私は疑問を持っていました。
 これをごちょごちょまぜてもいいのじゃないかなと当時は思っていたり、それ以外にも、例えば経済面で申し上げますと、私はかつてピースボートというNPO団体を主宰していまして、国際協力の仕事をしておりました。その折に、そういうNPOや、それから女性起業家の活躍というのが最近目覚ましくなってきているわけなんですけれども、その中で非常に障害があるのです。
 例えば銀行に融資の依頼などに行った場合に、女性の場合は、私も経験しているのですが、御主人のお仕事はと聞かれるのですね。私は独身ですから、御主人はいませんと答えると、一瞬ちょっと不審そうな顔をするわけです。次、お父さんの仕事はと聞かれるのですね。
 でも、これは、男性が行った場合は、あなたのパートナー、妻の仕事はとか、お父さんの仕事はというのを、三十過ぎて行くわけですから、なかなか聞かれない。ところが、そういうところでも、なかなか女性一人で、銀行から融資を受けたり所定の手続をとる以外に、これは慣行といいますか社会的な何か圧力というか、そういうものがあるのも現状です。
 さて、そういう中で、ちょっとこの慣行について、個人的な意見で結構ですので、ぜひ長官に幾つかお伺いしたいと思います。
 例えば社会の慣行の中に、政治の部分で、私は国会議員になりまして最初びっくりしたのは、この表だったのです。辻元清美君と書いてあるのですね。これが私たち女性にとっては非常に不自然な感じがしまして、かつて土井たか子議長の折には「さん」で呼んだというようなこともございましたけれども、これも初めからここにも「君」だけ書いてありまして、これを「さん」にするとか、政治の場でも慣行になっていることの見直しは必要ではないかと私などは考えるのですが、いかがでしょうか。

○野中国務大臣 お説のように、私どもが意識しないで、慣行として個々にそれを指摘すれば、非常に矛盾点を持っておるということが多かろうと思います。
 土井議長が衆議院議長として就任されましたときに、議長席から突然「さん」と呼ばれましたときには、おおという声が出るほど異常な状態でございましたけれども、それが定着をしていったことを今鮮やかに思い起こしながら、私どもはさまざまな視点で、こういう男女のありようについて注意深く考えていかなくてはならないと思っております。

○辻元委員 辻元清美君と呼ばれましたが、やはり慣習というのはそういうものだと思うのですね。私は、やはりそこのところに私たちがどう立ち向かっていく、ここはかなり決意とか、しかし、はっきり申し上げたら、それを変えてもだれも損をするとか不利益をこうむるわけではないけれども、ずっと何だか継続していた、それを一つ一つ見直していくということがこの法律を制定する私たちの責務でもあるし、意味だというふうに考えております。
 さて、そのほかにも、参議院の方でも出ていました相撲の土俵に女性が上がれないという問題ですね。この間、小渕総理も表彰式に行っていらっしゃいましたけれども、女性の総理大臣が出る可能性だってあるわけですから、この辺の相撲問題、これも、これは長官に感想というか、文化との衝突ということが出てくるのですけれども、どのようにお感じになるでしょうか。率直な御意見で結構ですよ。

○野中国務大臣 相撲協会が定められておることでございますので、私どもがとかく申し上げる立場にありませんが、女性総理大臣がお出ましになられて、女性総理大臣が行かれても、私はいいのではなかろうかと思います。また、相撲協会においても、そういう意識改革をしていただくことがあってしかるべきではなかろうかと思っております。

○辻元委員 そのためには女性総理大臣を誕生させなければいけないというのがまず最初ですので、女性の議員も皆頑張りたいと思います。
 さて、それでは引き続きまして、この法案のポジティブアクションについて幾つかお聞きしたいと思います。
 先ほどからの現状を見ますと、やはりここは非常に重要なポイントだと思います。特に今も慣行についてお話しさせていただきましたが、男性の意識啓発というところも非常に大事ではないかというふうに考えております。
 現在、政府では、この男性の意識啓発にとって、どのような具体的な施策を進めていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。

○佐藤(正)政府委員 現在、総理府の方で男女共同参画につきましての意識啓発をやっておりますが、これは男、女と分けておりませんで、一体といたしまして男女共同参画社会の形成が重要であるというような立場で広報をやっているところでございます。
 具体的には、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等のマスコミ、インターネットなどでホームページを開設するなどいたしまして、いろいろ広報活動に努めているところでございます。

○辻元委員 これは男女を分けてというわけではないのですけれども、これは審議の中でも出てまいりましたが、やはり男性に対するジェンダー教育、ジェンダーとは一体どういう概念であるのかというようなことへの啓発活動といいますか啓蒙活動というのは、私は、ポジティブアクションの根底を築く上で非常に大切だと考えていますので、それは充実させていただきたいと思います。
 さて、引き続きまして、法制上の措置などについて、法制上、財政上の措置という言葉が出てくるのですけれども、これは個別法の改正とか新規立法などを意味していると思いますが、先ほど税や、それから私は年金などについてもこの中に入るのではないかと思いますけれども、どういうことを想定していらっしゃるのか、お聞かせください。

○佐藤(正)政府委員 この法律案は基本法でございますので、個別具体的な分野についての規定は置いておりませんが、この法案が制定されまして、この基本理念のもとで、各分野におきましていろいろ御議論がなされることと期待をいたしております。
 その上で、今お話のありました税制とか年金とか保険の分野、いろいろあると思いますが、こういうところにおきましても、制度の見直しの行われる上で、男女共同参画の視点からも見直しをしていただきたいと考えておるところでございます。

○辻元委員 私は、やはり男女共同参画社会という視点ですべて見直していく、すべて一つ一つ細かくチェックしていかないと、この基本精神が実効性を持たないと思います。
 さて、そういう中で、新規立法ということで、夫婦別姓ですね、民法改正についてなんですけれども、これは議員立法でもやっていこうということがありまして、私は、かつて自社さ時代に野中官房長官に御苦労いただいたという記憶がございまして、官房長官は推進派ではないかと思っているのですが、今この法案の担当大臣におなりになりまして、民法を変えて、選択制ですから、夫婦の別姓を認めていこう、これはかなり中核的な新規立法として検討していくべきだと考えておりますが、いかがでしょうか。

○野中国務大臣 私は、かつて政権を共有したときに、そのプロジェクトの責任者として、選択制夫婦別姓について一緒に取りまとめ役をさせていただいた一人でございます。残念ながら、成案を得るまでに政権がかわりまして、ついにこれを実現することができなかったことを今も残念に思っております。
 今後、また新たな視点で関係者の皆さんが実りあるものにしてくださることを願っております。

○辻元委員 ぜひこれは、与野党を問わず、今の長官のお言葉の中の実りあるものにともにさせていただきたいというように考えますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 さて、次に、女性に対する暴力の問題も多々議論されてまいりました。ここで、まず最初に、女性に対する家庭内暴力の現状について政府はどのように把握されているのか。これは、警察の方に来ていただいていると思いますので、ちょっと現状を教えていただけますでしょうか。

○深草説明員 平成十年中における夫から妻、内縁を含みますけれども、に対する犯罪としては、殺人、暴行、傷害、脅迫等の刑法犯五百十三件を検挙しております。

○辻元委員 それは、現状では、把握ということは他の問題に比べて非常に難しいのではないかというわけですけれども、このところはふえているのでしょうか、どうなんでしょうか。

○深草説明員 内縁関係を含む夫から妻への犯罪について、最近五年間の検挙状況の推移を見ますと、年によって若干の高低がありますが、平成七年以前は四百件台であったものが、平成八年以降は五百件台で推移している状況にありまして、若干増加傾向がうかがえるという状況です。

○辻元委員 例えば路上を歩いている女性にいきなり男性が殴りかかったら、皆これはおかしいというふうに思うわけですが、それが今、家の中で行われた場合に、行われている行為は同じことが行われているということで、やはりこれは、先ほどからNPOによりますシェルターの話も出てきていますけれども、私は、同じ行為であるというまずその基本認識に立って取り組んでいかないと、それ以外の要素を交えますと、ちょっとこの問題をはぐらかしてしまうのではないかな、これから女性に対する暴力に対しては厳格な取り組みが必要であると考えます。
 そこで、本法案では、この暴力の問題は、人権の尊重というところに理念というか考え方が盛り込まれているということでしたが、女性の暴力に対しては特に特記して今後取り組んでいくべき問題と考えますが、その御決意を長官にお伺いしたいと思います。

○野中国務大臣 ただいま委員から御指摘がございましたように、この法案は、基本理念として、第一に、男女の個人としての尊厳が重んぜられるべきことを規定しておるわけでございまして、人権の尊重を織り込んでおるところでございます。この基本理念に照らしますと、女性の基本的人権の享受を妨げたり自由を制約する女性に対する暴力というのは決してあってはならないものだと思うわけでございます。
 現在、政府の行動計画でございます御承知の男女共同参画二〇〇〇年プランにおきましても、女性に対するあらゆる暴力の根絶を最重点目標として取り上げて、努力をしておるところでございます。
 また、さきにも申し上げましたけれども、先月二十七日には、男女共同参画審議会から小渕内閣総理大臣に対しまして「女性に対する暴力のない社会を目指して」と題する答申が提出をされたところでございまして、この答申の趣旨を踏まえまして、政府全体として積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

○辻元委員 短い時間の中で、今さまざまな論点の確認をさせていただいているわけですけれども、次に、苦情の処理ということがさまざま議論されてまいりました。
 この苦情の処理につきましては、官房長官は、当面、既存の委員会を活用する旨の見解をお示しになっているわけですけれども、現行の制度は、現状において、性差別の撤廃等女性の人権の確立に有効に機能してきたとは、先ほどの数字等々を見ても、思えないと思うのですね。果たして、それが同じようであるならば、これから機能していくというように、私も今の現状を見ていくとそう思えないのですけれども、この点についてはいかがでしょうか。

○野中国務大臣 この法案の十七条で、男女共同参画社会の形成を促進するためには重要な課題であることから、国は、政府の施策についての苦情の処理のために必要な措置及び人権が侵害された場合に被害者の救済を図るために必要な措置を講じなければならない旨を規定しておるわけでございます。
 今日まで御質問をいただきます中で、私どもといたしまして、この苦情処理というのは非常に重要な問題でございますし、また救済というのはそれ以上に具体的な手続を必要とする問題でございますので、いろいろ検討をしたところでございますけれども、一方、国会で御審議をいただいております中央省庁の再編という問題もございまして、行政のスリム化をお願いしておるところでございます。そういった点で、答弁をいたしておりますように、現行の人権擁護委員を中心にいたしまして、ぜひこのような関係の皆さん方の御協力をいただくことにいたしたい。
 特に、行政相談委員、人権相談委員の方々に男女共同参画の知識、認識を得ていただくための研修会を開催いたしましたり、情報の提供を行ったりいたしまして、この各委員の中から、女性問題等に関して高い識見を持っていらっしゃる方々にこの男女共同参画の関係する人権救済、苦情処理、こういうものについて特定の担当をお願いするような方途を考え、あるいは、地方公共団体におかれましても女性の苦情処理に関係する担当のセクションをお願いする等、緊密な連携をとって、とりあえずはこの苦情処理について対応をしていきたいと考えておるわけでございます。
 その他この推移を見ながら、また、一方におきます先ほど申し上げました行政改革との関連等も考えながら、第三者機関等も考慮に入れながらこの問題の対応は考えていかなければならないほどより重要なものであると認識をしております。

○辻元委員 今御答弁の中で、推移を見ながら、第三者機関の設置なども検討を要するのではないかという御発言がありました。
 特に、先ほど女性に対する暴力の問題を取り上げさせていただきましたが、これなどは、NPO、要するに民間のボランティア団体などが積極的に取り組んでいます。また、さまざま、行政に訴えられないようなことをそういう団体がきめ細かにケアしているのが現状ですので、私は、やはり第三者機関として、このようなNPOも含めた機関の検討をしていくべきであるというように考えます。
 また、最後の二十条に、地方公共団体及び民間の団体に対する支援というようなことも出ていまして、この民間の団体というのはそのようなNPOのことであると解釈してよろしいんでしょうか。

○佐藤(正)政府委員 ここで書いております民間の機関というのは、NPOとかNGOとかいろいろございますけれども、そういう団体を対象といたしております。

○辻元委員 それで、行革の問題はありますけれども、一方にポジティブアクションがあるわけです。ですから、私は、スリムにするところはするけれども、大事にするところはやはりしっかり大事にしていかないと、どれも一律にスリムにしていくという問題ではないと思いますので、今回のこの苦情処理、人権侵害の被害救済のためというところは、これはかなり今まで以上に力を入れても将来のスリム化につながるというような視点で、ぜひ第三者機関への検討に力を入れていただきたいというように考えますが、もう一回、長官、ちょっとNPOも含めて、NPO法のときも長官にえらいお世話にもなりまして、一緒にこの法律もつくりました。先ほどからの御答弁の中に、NPOへの税制の優遇も考えながら進めていかなければいけないというような御答弁も私しっかりメモしているんですけれども、第三者機関、NPO、これから大事にしていきたいというようなお気持ちだと思いますが、御確認させていただきたいと思います。

○野中国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、まずは法務省が行っております人権擁護を主体に考えていきたいと思っておるわけでございます。ただ、NPOを初め民間団体の皆さん方が積極的にお取り組みをいただいておることも承知をいたしております。
 現在、私どもは、深刻な雇用状態をどのように改善をしていくかの中におけるNPO等の活躍の場を考え、これに対する税制やあるいは助成の方途等も考慮をしておるところでございます。そのようなものをさまざま考えながら、対応を考えてまいりたいと存じておるところでございます。

○辻元委員 もう一点伺いましてから参議院での修正についてお伺いしたいと思いますので、もう一点政府にお伺いします。
 この国際的協調という部分なんですが、私は、これは日本国憲法の理念にのっとって積極的に進めていくべきだと思いますので、一つはODA、この中で、開発途上国の女性支援の割合、女性自立のためのODA、特に草の根ODAの割合をふやしていく方向で積極的な国際的協調というものをしていったらいいなと考えているんですが、現状で、この途上国への女性自立支援というのは、日本はどのようになっていますでしょうか。

○大島(賢)政府委員 開発援助協力におきまして、人口の半分を占めると同時に生産面でも非常に重要な役割を果たしている女性が男性とともにその担い手となっていくということは極めて重要であるわけでございまして、そういう観点から、国際的にも開発における女性の役割重視ということが言われております。
 我が国におきましては、従来、政策的な位置づけが必ずしも十分でございませんでしたけれども、五年前に北京におきまして第四回世界女性会議が開かれました際に政策としてまとめまして、これを途上国の女性支援イニシアチブという形で発表いたしました。開発援助協力を行う際に、女性の地位向上と男女格差の是正に配慮するという、特にその分野といたしまして、教育、それから健康、三番目に経済社会活動への参加ということで、三つの重点分野を明らかにいたしました。
 具体的には、職業訓練センターを、特に最近の例で申し上げますと、フィリピンに対しましてかなり大規模な女性のための職業訓練センターを設立いたしまして、フィリピン政府の協力によりまして、年間約千四百名強の女性の職業訓練、それからジェンダーの問題に対します調査研究、啓蒙、こういったナショナルセンターを立ち上げるべく今協力を開始しているところでございます。
 さらに、草の根レベルにおきましても、幾つかのアフリカの国、中南米等の国におきまして、規模は小そうございますけれども、女性のそういった職業訓練を含みます女性自立のための支援等を行っておるわけでございまして、今後ともこれはぜひ力を入れていくべき分野であるというふうに思っております。

○辻元委員 特にODAの使い方については、私もほかにも意見がありますが、女性の自立支援にさらに力を入れていただきたいということを強く申し上げたいと思います。
 さて、あと二点だけ簡単に確認をさせていただきたい、これは政府になんですが、先ほどからも出ております、差別という言葉の中に、直接、間接差別、両方含まれているという理解でいいかという点と、それから、国民の責務の中に事業主、企業も入っているという理解でいいかどうか、その点だけ、確認で結構です。

○佐藤(正)政府委員 差別的取り扱いという言葉の中には、明確な差別を意図したものだけではなくて、結果として差別として裁判で認定されるようなものもございますが、そういうものも含まれるといいますか、そういうものも対象となり得るというふうに考えております。
 それからもう一点、国民の責務の中で、「国民は、職域、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野において、」と書いてございますが、この中で、特に「職域」とございます。この中には、国民はいろいろな立場で参画しておるわけでございますが、当然事業主としての個人もありますし、また、法人に対しましても可能な限りこの理念は適用されていくと考えております。

○辻元委員 それでは、修正案についてお聞きしたいと思います。
 この修正案で前文をつけられたという議論の過程を私も伺っております。
 その中で、さまざまな議論の中で特に出てきた、人々の意識の中に形成された性別による固定的役割分担意識等を反映して、社会の諸活動への男女の参画の現状にはいまだ格差がありというような認識を入れる、もしくは男女平等の実現に向けてなお一層努力が必要であるというようなことが入るか入らないのか、随分御議論が提出者の間でされたようなのです。結論としてここが欠落してしまったのは私は非常に残念でならないわけなのですが、提出者といたしまして、そこの経過、なぜこうなったのか、御説明いただけますでしょうか。

○海老原参議院議員 お答えいたします。
 前文というのは制定の趣旨とか位置づけを簡潔に述べるものでございまして、その意味から申しますと、「なお一層の努力が必要とされている。」これは主語は「男女平等の実現に向けた様々な取組が、」ということで、これですべてをのみ込めるということで考えたわけでございます。
 なぜそれだけにとどめたかということでございますけれども、もう一つ、私ども、どうしても言いたいことがございました。それは、その次のフレーズでございますけれども、読み上げは省略いたしますが、要するに、これからの日本を考えていく上で、今まで疎外されてきた女性の方々がしっかりした権利を持って社会のあらゆる面に参画していく、これは今の日本の停滞を救っていく上に非常に大事なことだ、この文言をぜひ入れたい。いわば、国の立場からのモチベーション、これを入れておかねばならない。
 先生は市民運動を非常に熱心にやっておられて、私いつも敬服しておりますけれども、市民の権利の推進という個人の立場と、それからもう一つ、やはり共同体の視点というものも入れた方がベターであろう。国としてこれは非常に大事なことである。共同体の視点と個人の視点が矛盾して競合することもありますけれども、これは非常によく一致しておる。ですから、双方相補うような構成にした方がよろしかろうと思いまして、この二本立ての構成にしたということでございます。

○辻元委員 私は参議院の議事録を持っておりまして、江田委員が御主張の中で、五月十三日、「やはり政府案もジェンダーの視点ということを考えるならば、そうした男女の人権とは何かというものがちゃんとわかるような少なくとも前文のようなものが要るんじゃないか」という御指摘をされ、そこから議論が始まっていると思います。このジェンダーの視点ということを随分とるる御主張なさっていたのですけれども、頑張ってほしかったのですけれども、江田委員はいかがでしょうか。

○江田参議院議員 ジェンダーの視点という言葉自体がどれほど定着しているかというのはよくわからないのですが、いずれにしても、生物学的に男性と女性が違う。それは確かに違うのですが、そういうことじゃなくて、社会的、文化的に、あるいは人々の意識の中で、男はこうだ、女はこうだという差別ができている。それが今の世の中に厳然としてあって、ですから今の世の中、制度としてあるいは慣行としてすべてが平等になっているのじゃなくてやはり男女の差がある、その意味でジェンダーバイアスのかかった社会になっている、それを変えなければいけない、それがこの共同参画の基本なんだ、そのことを私は強く主張してまいりました。
 私ども、前文をつける場合にもそういうものも含んだ提案をいたしましたが、何分、これが成案になるにはやはり多数の支えによって可決をされなければいけないので、ぎりぎりのところで、まあこういう表現でひとつ成案を得ようと納得をしたところでございます。

○辻元委員 率直な御答弁をいただきましてありがとうございます。
 さて、時間が参りましたのでこれで終了させていただきたいと思いますが、私は、やはりすべての政策、これから私たちが立案していく際には、このジェンダーフリーの視点と、それからもう一つ、エコロジーの視点、この二つ、すべての政策、どんな小さなことでも考えていくべき非常に根幹をなすものだというように考えます。そういう考えにのっとりまして、本法案についても実効性を持たせるためにさらに深めた審議を本委員会でも続けていきたいと思います。
 以上で終わります。ありがとうございました。

○二田委員長 次回は、来る十日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時五分散会