145-参-共生社会に関する調査会-3号 平成11年04月19日

平成十一年四月十九日(月曜日)
   午後一時二分開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月十五日
    辞任         補欠選任
     輿石  東君     前川 忠夫君
 四月十九日
    辞任         補欠選任
     前川 忠夫君     輿石  東君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         石井 道子君
    理 事
                釜本 邦茂君
                溝手 顕正君
                直嶋 正行君
                大森 礼子君
                林  紀子君
                福島 瑞穂君
                入澤  肇君
    委 員
                岩永 浩美君
                佐藤 泰三君
                清水嘉与子君
                末広まきこ君
                仲道 俊哉君
                橋本 聖子君
                林  芳正君
                森下 博之君
                朝日 俊弘君
                小宮山洋子君
                輿石  東君
                高嶋 良充君
                松 あきら君
                小池  晃君
                八田ひろ子君
   政府委員
       文部大臣官房長  小野 元之君
       文部省生涯学習
       局長       富岡 賢治君
       文部省初等中等
       教育局長     辻村 哲夫君
       厚生省社会・援
       護局長      炭谷  茂君
       厚生省児童家庭
       局長       横田 吉男君
       厚生省保険局長  羽毛田信吾君
       労働省女性局長  藤井 龍子君
   事務局側
       第三特別調査室
       長        大場 敏彦君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○共生社会に関する調査
 (男女等共生社会の構築に向けてのうち女性に
 対する暴力についての現状と課題に関する件)
 (派遣委員の報告)

    ─────────────

○会長(石井道子君) ただいまから共生社会に関する調査会を開会いたします。
 共生社会に関する調査を議題といたします。
 本日は、「男女等共生社会の構築に向けて」のうち、女性に対する暴力についての現状と課題に関する件について、まず政府より説明を聴取いたします。
 初めに、文部省より説明を聴取いたします。文部省小野官房長。

○政府委員(小野元之君) 文部省の官房長の小野でございます。
 今回、共生社会に関する調査会に対しまして文部省関係の資料をお手元に差し上げてございます。
 二つの大きな項目がございますが、一つはジェンダーに関する教育、これにつきまして、文部省といたしまして、初等中等教育、大学における教育、それから社会教育におきます教育、これらについて御説明申し上げたいと存じます。
 それから、二つ目の大きな柱でございますが、セクシュアルハラスメントに対する対策といたしまして、人事院の報告等を受けまして文部省といたしましてもこの三月三十一日付で規程等を設けましたので、それに関連いたしまして、学校におきますセクシュアルハラスメントの防止のための取り組み状況、それから文部省としての規程等につきまして後ほど御報告申し上げたいと思います。
 まず初めに、ジェンダーに関する教育でございます。
 一ページをごらんいただきたいと思いますが、初等中等教育におきます取り組みでございます。まず一つは、男女平等に関する教育の関係でございます。
 男女の平等に関する教育につきましては、そこにございますように、小学校、中学校、高等学校、それぞれあるわけでございますけれども、特に初等中等教育の段階におきましては、児童生徒の発達段階に応じまして、社会科それから家庭科、道徳及び特別活動等におきまして指導することといたしております。
 具体的には、そこにございますように、小学校で、例えば日本国憲法の学習におきまして男女の平等を取り上げるということもございますし、道徳の中で男女仲よく協力し合って助け合う、そういったことを指導しておるところでございます。それから、中学校でございますが、家族制度におきます両性の本質的な平等や異性についての理解などをそれぞれの教科等で教えることといたしております。それから、高等学校におきましては、人間の尊厳と平等、あるいは男女相互の理解と協力などをそれぞれ指導することといたしております。公民科でございますとか家庭科、特別活動等でございます。
 なお、昨年七月の教育課程審議会の答申を受けまして、ことし三月までに小学校、中学校、高等学校の学習指導要領を新しく改訂したところでございます。今回の改訂におきまして、従来の扱いに加えまして、特に中学校の特別活動それから高等学校の公民科、家庭科等におきまして、男女が相互に協力して家族の一員としての役割を果たして家庭を築いていくことの重要性、それから職業生活や社会参加におきまして男女が対等な構成員であるということなどにつきまして指導の充実を図ることとしておるところでございます。
 今後、この新しい学習指導要領につきましては、小中学校が平成十四年度から、それから高等学校が平成十五年度から学年進行で進むわけでございますけれども、解説書の作成でございますとか新しい教育課程の説明会の開催などによりまして、それらの趣旨の実現に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
 次に、第二番目の性に関する教育でございますが、(2)にございますように、学校におきます性に関する教育につきましては、人間尊重の精神を基盤といたしまして、児童生徒の発達段階に応じて性に関する科学的な知識を理解させる、そして児童生徒が健全な異性観を持ち、これに基づいた望ましい行動がとれるということを目的といたしまして、体育、保健体育あるいは道徳、特別活動等において行っているところでございます。
 具体的には、小学校段階では心や体の発育、発達などについて教えてまいります。二ページでございます。それから、中学校におきましては、思春期におきます心や体の変化などについて指導することといたしております。また、高等学校においては、思春期と健康、結婚生活と健康などについて指導することといたしております。
 特に、今回の学習指導要領の改訂におきまして、子供たちの発達がかなりもう早くなっているということもございますので、現在、小学校の五年生から指導しております体の発育や発達に関する中身を四年生から指導するということで早めておるわけでございます。それから、各学校段階におきます性に関する指導の内容を充実いたしまして、異性を尊重することでございますとか、性に関する情報への適切な対処、それから性感染症の予防などについて充実を図って指導してまいりたいというふうに考えているところでございます。
 こういった指導につきましても、新しい学習指導要領の解説書でございますとかあるいは新しい教育課程の説明会等を開催することによりまして、これらの趣旨の実現に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
 それから次に、大学におきます取り組みでございますが、三ページでございます。大学におきまして女性学関連の授業科目等を開設しておる大学でございますけれども、平成九年度の調査で国立が三十九校、公立が十二校、私学で百十八校、合計百六十九の大学でそれぞれ科目を開設してございます。その表にもございますように、広島大学で女性学、高崎経済大学ではジェンダーと福祉という科目、あるいは例でございますが、大東文化大学では女性問題と社会教育といったような形で、教育、福祉等いろんな分野にわたりまして女性の観点からとらえられた学問が展開されているところでございます。
 さらに、文部省におきましては、平成八年度、お茶の水女子大学に学内の共同教育研究施設、女性文化研究センターというのがあったわけでございますけれども、このお茶の水女子大の女性文化研究センターをジェンダー研究センターとして発展的に改組を図りました。
 こういったことで、女性学やジェンダー研究に関する教育研究体制の整備充実に努めているところでございます。今後とも、こういった女性学が非常に重要であるということを認識いたしまして、大学におきます教育研究の充実に適切に配慮していきたいというふうに考えているところでございます。
 次に、社会教育における取り組みでございます。四ページでございますけれども、男女共同参画社会を早急に実現していくということを考えます上では、男性を含め人々が男女平等意識をはぐくんでいくということが一番大事でございます。同時に、女性もみずからの意識と能力を高めていく、力をつけていく女性のエンパワーメントが求められているところでございます。こういったこともございまして、文部省といたしましては、女性が学習の成果を生かして社会のあらゆる分野での活動を促進するために学習機会や男女平等を推進する教育・学習活動の充実を図るということを行ってきておるところでございます。
 また、例えば我が国の父親が子供と一緒に過ごす時間がほかの国と比べても比較的少ないといったような統計もあるわけでございますけれども、本来、男女が協力して取り組むべき子育てにつきましても、ともすれば母親に責任がゆだねられてしまうといった実態があるわけでございます。父親の存在感が希薄化しているということもあるわけでございますが、そういったことを踏まえて、母親だけではなくて父親の家庭教育への参加を支援、促進するための取り組みを進めておるところでございます。
 四ページの中ほどにございますが、文部省としては、厚生省さんとも連携を図りまして、家庭教育手帳、それから家庭教育ノートというものを作成して、全国の子供さんを持つ父親、母親を対象に配付を行っているところでございます。
 家庭教育手帳でございますが、これは乳幼児期から小学生程度の子供の家庭教育やしつけのあり方、心の成長について書いているわけでございますけれども、母子健康手帳を交付いたしますときに、あるいは一歳六カ月児健診のとき、あるいは三歳児の健診のとき、あるいは小学校入学前健診のとき、こういった機会を活用いたしまして、該当するすべての親の方たちに配付しようということで今やっておるところでございます。
 それから、家庭教育ノートにつきましても、家庭教育手帳と同様、思春期や思春期の前の子供たちをめぐる家庭教育にはさまざまな課題があるわけでございまして、小中学校を通じまして各家庭に配付するということを行っておるわけでございます。
 そのほかさまざまな活動をやっているわけでございますけれども、毎年二回、男女が協力する家庭像あるいは子供を育てることの楽しさについてフォーラム家庭教育といったものも開催をしております。それから、男女共同参画学習を促進するためのさまざまな事業、それから青年男女が共同して参画するセミナーを実施する等、五ページにかけましてさまざまな事業を行っております。それから、国立でただ一つの女性のための施設、国立婦人教育会館におきましても、婦人教育の指導者や、その他実践的な研修や専門的な調査研究等を行っておるところでございます。
 その他、五ページの(2)にございますように、地方公共団体に対する補助等も行っておるところでございます。同じような観点から、地方に対する補助事業についても充実していきたいというふうに考えておるところでございます。
 次に、「U セクシャル・ハラスメント対策」でございますが、六ページでございます。
 文部省におきましては、学校におきます教職員間、あるいは教員と学生の間、あるいは教員の児童生徒に対するセクシュアルハラスメントを防止するという対策の取り組み状況につきまして、平成九年度に各都道府県教育委員会や大学などを対象に調査を行いました。その調査の結果、教育委員会におきましては、教員に対する研修については大半の教育委員会で初任者研修や校長・教頭研修等で、あるいは各教科等の一般的な研修の中で服務規律とか生徒指導等を扱う中でセクシュアルハラスメントの問題を取り上げてございます。
 それから、子供に対する相談窓口につきましても、すべての教育委員会でセクシュアルハラスメントの問題を含めたさまざまな相談に応じられるように随時対応しているところでございます。
 それから、お手元にお配りしております資料にございますが、大学につきましては、全学的な調査・対策機関を設置しているというところがまだ三十九校でございます。それから、全学的な防止のための対策を実施しているところもまだ四十八校でございます。それから、防止に向けた全学的な広報活動を実施しているのが三十八校ということで、それぞれまだ六・六%から八・二%程度ということでございますが、学生の相談窓口を設置しているというところは一八・七%の百十校となっておるわけでございます。
 一部の大学においては積極的な取り組みがあるわけでございますけれども、全体としてはまだまだ十分でないと文部省は考えておるところでございまして、今後こういった調査結果を踏まえながら、各大学における積極的な指導をしていきたいというふうに考えております。
 特に、七ページにございますように、文部省におきましては、本年三月三十日に、各国立学校等を含めた文部省の全職員を対象といたしましたセクシュアルハラスメントの防止等に関する規程を定めたところでございます。これを文部省の各施設、機関に通知いたしまして、この防止のための取り組みを促すことといたしております。それから、教育委員会等につきましても、別途通知をすることにいたしておりまして、各教育委員会での積極的な取り組みをお願いしておるところでございます。
 この規程におきましては、セクハラの防止や排除、それからそれに起因する問題が生じた場合に、それぞれ人事行政の一環としてきちんとやっていく。それから、特にセクハラにつきまして、職員が他の職員に行うものだけではなくて、教官等が学生に行うもの、そういったことも当然のことながらその中に入れましてセクハラの定義をきちんとした上で、学生や保護者等に対するものも含めまして、きちんと位置づけた上で積極的な取り組みをしてまいりたいと思っているところでございます。
 今後とも、セクハラ防止の措置を講ずるとともに、国立学校初め各教育委員会に対する適切な指導を行いまして、積極的に対応してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
 以上、御報告を申し上げます。

○会長(石井道子君) ありがとうございました。
 次に、厚生省炭谷社会・援護局長。

○政府委員(炭谷茂君) 厚生省の資料をごらんいただきたいと思います。
 私の方からは、まず「婦人保護事業等」の部分について御説明させていただきたいと思います。
 資料の一ページをごらんいただきたいと思います。
 まず、「婦人保護事業の概要」でございますけれども、売春防止法第四章に基づく要保護女子の保護更生と売春の未然防止に関する業務を、婦人相談所、婦人相談員、婦人保護施設が中心になって実施いたしております。
 婦人相談所につきましては都道府県に必置されておりまして、次のような一項から七項までの事業をやっているわけでございます。特に、「E一時保護」と申しますのは、要保護事業の緊急的な保護等を行っているというものでございます。
 婦人相談員、これは都道府県に必置され、市は任意設置となっておりますが、相談業務を実施しております。
 婦人保護施設につきましては、都道府県、市町村、社会福祉法人が設置しておりますけれども、現状は社会福祉法人が設置するものが多いわけでございますが、要保護女子を収容保護し、自立更生を行うための業務を行っております。設置状況は下欄に書いてあるとおりでございます。
 二ページに参りまして、婦人保護関係予算の概要でございます。約二十億近くの予算額でございます。内容につきましては、婦人相談員の設置・活動費、婦人保護施設の運営費、一時保護所の保護費につきまして補助率二分の一で支出いたしております。
 婦人保護事業の広報活動につきましては、創意工夫を生かして積極的に行うよう指導しておりまして、その費用につきましては国庫補助を実施いたしております。補助率二分の一、二千二百万円余の支出予算額になっております。
 次に、三ページでございます。
 本日の主な議題でございます家庭内暴力の被害者に対する婦人相談所の対応でございます。現在の婦人保護事業につきましては、先ほど御説明しましたように売春防止法に基づいて行っている事業でございますけれども、現実的には必ずしも売春を行うおそれがあるとは言えない者も含め、日常生活を営む上で何らかの問題を有している女子の方々について広く相談に応じ、保護、援助を行っている実態がございます。
 実際に、相談内容、件数は、これは平成九年度の状況でございます。家庭内暴力、これはアンダーラインを引いておりますけれども、「夫の暴力・酒乱」というものについては五千三百六件、一〇%の割合を占めているわけでございます。
 いわば純粋な売春防止という関係から見ますと、売春防止法の五条違反の者が〇・五%、「その他」の欄に書いてございます「売春強要」、その他のものが売春に直結する問題がございますけれども、現実的には幅広く日常生活を営む上での何らかの問題を有している女子に対する相談事業をやっているという実態がおわかりになると思います。
 四ページでございます。
 婦人相談所に併置されております一時保護所の入所状況でございますけれども、各都道府県に一カ所。そして、一時保護所に措置している、これは一時保護所へ入所していただきましてケアをしているという件数でございます。四千六百六件と、必ずしも人数と一致しない場合、実数とは一致しない場合もあろうかと思いますけれども、このような実態でございます。
 保護施設の入所状況、現在五十二カ所の施設がございまして、措置をしている件数というのは千四百二十六件というふうになっております。近年はほぼ横ばいの状態でございます。
 五ページをごらんいただきまして、婦人保護事業関係職員に対する研修体制の状況でございます。
 「(1)全国研修」は、厚生省において実施、主催しているものでございます。婦人保護事業関係職員について、所長並びに主管係長についてのもの、また全国婦人相談員、心理判定員に対するもの、それから婦人保護施設長に対するものを実施しております。
 (2)は都道府県の研修でございます。
 都道府県においても積極的な研修が行われております。この中には夫の暴力等に対するテーマも重点的なものとして掲げられております。
 ちなみに、先ほど申し忘れましたけれども、全国研修におきましてもこのような家庭内暴力の問題もテーマとして重点を置いて取り上げているところでございます。
 六ページに参りまして、暴力被害者に対する精神保健・ケア、医療福祉対策及び従事者に対する研修体制でございます。
 精神保健・ケア対策、医療福祉対策につきましては、婦人相談所、婦人保護施設において、保健所、福祉事務所等関係機関と連携を図りながら実施しております。婦人相談所には医学的な判定や心理的な判定の専門家を、これは医師または心理学を勉強した専門家でございますけれども、配置して精神保健・ケアに配慮した保護、援助を実施しております。婦人保護施設におきましても精神科医を配置し、心身に障害を持つ入所者の処遇に配慮いたしております。
 従事者に対する研修につきましても、先ほども申しましたような研修の一環としてやっておりまして、暴力問題等の事例検討を主に研修を行っております。
 五の家庭内暴力に関する警察及び民間シェルターとの連携でございますけれども、婦人保護事業の実施に当たりましては、被害者のプライバシーにも配慮しつつ、被害者等に危険が及ぶ場合には警察に通報する。また、いわゆる民間シェルターにつきましては、その実態はそれぞれ違っておりますが、行政との連携も一概には言えませんけれども、関係者間の情報交換、または民間シェルターから婦人相談所への暴力被害者に対する対応の依頼等が行われているケースもございます。
 以上でございます。

○会長(石井道子君) ありがとうございました。
 次に、厚生省横田児童家庭局長。

○政府委員(横田吉男君) 児童家庭局長でございます。母子家庭福祉対策につきまして御説明させていただきたいと存じます。
 母子家庭というのは、夫と死別または離別した女子とその扶養する二十歳未満の児童から成る家庭を申し上げております。
 まず第一に、母子寡婦福祉資金の貸し付けでございます。各種貸付金がございますが、ここでは主なものといたしまして修学資金と就学支度資金を挙げております。ここにございますように、国公立ですと高等学校で二万五千五百円、大学でございますと六万一千五百円を無利子で貸し付けることができるというふうになっておりまして、これは文部省の第一種奨学資金の限度額の約一・五倍になっております。全体の貸付実績といたしましては、中欄の表にございますように、貸付件数五万七千件、貸付金額二百四億円でございまして、この修学資金と就学支度資金で全体の九割強を占めております。
 それから二番目に自立促進対策でございますが、ここにア、イ、ウ、エと掲げてございますように、訪問介護員、ホームヘルパー等の養成講習会を行っております。
 母子家庭等比較的つきやすい職業としてホームヘルパーがあるわけでありますけれども、その職種に必要な知識、技能を習得させるための養成講習会の開催を行っております。
 それから、就労促進支援事業といたしましては、母子家庭の就労支援のための計画をつくりまして、自治体、公共職業安定所、福祉事務所、母子生活支援施設等の連携によりまして就労支援体制の整備を進めることにいたしております。
 それから、離別等に伴う法律相談等につきまして、専門家にお願いいたしまして相談事業を実施いたしております。
 次に、八ページをごらんいただきたいと存じますが、生活支援対策といたしましては、母子家庭の場合には働いている場合が多いということで、まず困った場合の家庭介護人の派遣事業を実施いたしております。
 それから、子供のしつけでございますとか健康管理等に関する指導講座の開催、電話相談等の実施。
 さらには、疾病等によりまして児童の養育が一時的に困難となった場合、あるいは夫の暴力等によりまして緊急一時的に保護を必要とする場合などに、児童福祉施設等において一定期間養育、保護する短期入所生活援助事業及び恒常的な残業等のために児童に対する生活指導、家事等で困難を生じている場合に、児童福祉施設に通所させまして生活指導、夕食の提供等を行います夜間養護事業等を行っております。
 それから、母子家庭の身の上相談等に対する相談指導ということで、母子相談員が、社会福祉事務所が主でございますけれども、一千百五十五人ほど配置されております。
 それから、母子を一体として入所させて保護する施設といたしまして母子生活支援施設というのがございますが、これが全国に三百カ所整備されております。その他の施設といたしまして、母子福祉センター、母子休養ホーム等が設置されております。
 次に、九ページをごらんいただきたいと存じます。
 経済的な支援の一つといたしまして児童扶養手当の支給というのがございます。母子家庭の生活の安定と自立の促進を図るために児童扶養手当を支給することにいたしておりまして、所得制限によりまして、受けられる場合、受けられない場合、一部支給等が決まっておりますが、全部支給の場合には月額四万二千三百七十円、一部支給の場合には月額二万八千三百五十円ほどの額になっております。
 先ほど申し上げました母子生活支援施設につきましてさらに若干詳しく敷衍してございます。
 これにつきましては、「配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子」ということで、離婚等にまで至っていない母子、あるいは夫の暴力等から逃げて住所を離れてしまった女子等を対象にいたしまして、これを保護し、自立の促進と生活の支援を図ることを目的とした施設であります。児童の場合、通例十八歳未満でありますけれども、母子生活支援施設の入居の要件といたしましては二十歳に達するまでというふうになっております。
 施設は、先ほど申し上げましたように全国三百カ所でございまして、現在、一番下にございますように十年度で四千百六十六人、定員に対しまして約七〇%の入居率になっております。
 十ページをごらんいただきたいと存じます。
 入所理由別の世帯数でございますけれども、四千四百七十九世帯、平成四年の調査でございます。これを対象にした内容でございますけれども、一番多いのが入所前の家庭内環境の不適切によるものということで千五百五十件、三四・六%を占めております。これは夫の暴力等によるものも入っておりますけれども、離婚いたしまして実家に戻っている場合におきまして家庭的ないろいろなトラブルから母子生活支援施設に入所したいというふうに言ってくる方も入っております。
 それから、次に多いのが経済的理由ということで千二百五件、二六・九%。住宅事情、これが千三十六件、二三・一%というふうになっております。
 支援内容につきましては、先ほど申し上げましたように、保護それから自立、生活支援ということでございますが、近年、広域的な対応が求められているということもございまして、平成十一年度からは夫の暴力等のために住所地から避難をしてきた母子を受け入れるために必要な経費を支弁する広域入所促進事業を創設したところでございます。
 以上でございます。

○会長(石井道子君) ありがとうございました。
 次に、労働省藤井女性局長。

○政府委員(藤井龍子君) 女性局長の藤井でございます。
 私の方からは、母子家庭の母親に対する就労面での支援対策と職場におけるセクシュアルハラスメント、以上二項目について御説明申し上げたいと思います。
 まず、母子家庭の母親に対する就労面での支援対策でございますが、母子家庭の母親の場合、子育てとの両立等について制約が大変大きいという問題、あるいは仕事についた経験がない方が多い、あるいはつかれた経験があっても大変長い間仕事から離れておられたという方が多く、就職につきましてはさまざまの困難が伴う場合が多いということもございまして、労働省ではきめ細かな対応をさせていただいておるところでございます。
 まず、就業に対する相談でございます。
 公共職業安定所、全国に四百七十八カ所置いてございますが、ここに寡婦等職業相談員を配置いたしまして、母子家庭の母親等については特別に就職についてのきめ細かな相談、指導を行いまして、その方の御希望や適性に合った職業紹介に努めているところでございます。実績が平成九年度で出ておりますが、求職申し込み件数が八万二千件ほど、就職していただいた方が三万二千という状況でございます。
 次に、女性就業援助施設におきます相談でございます。
 都道府県に女性就業援助施設というのが設置されてございまして、女性に対し就職のための相談、情報提供、技術講習等を行っておりますが、母子家庭の母親等につきましては、この技術講習を優先的に受講できるよう配慮いたしますとともに、受講旅費等を特別に支給してございます。技術講習の概要は、下にございますようにワープロ、パソコン等でございまして、期間は二十一日間、講習料は無料、交通費で往復一千円まで実額支給というような状況になってございます。
 次に、職業訓練でございますが、ハローワーク、公共職業安定所に求職に来られた母親の方々について、公共職業能力開発施設において職業訓練を受けることができることになってございます。その訓練期間中に特別に訓練手当が支給されるということになっております。囲みのところに書いてございますが、期間は三カ月から一年程度、費用は無料で、訓練手当は平均月額十三万八千五十円となってございます。
 ただ、これは十年度の数字でございまして、十一年度は十三万九千七百七十円ということで、若干ではございますが増額をしてございます。恐れ入りますが、御訂正をいただければありがたいと存じます。
 さらに、職場適応訓練を実施してございまして、仕事や職場環境になれるために特別に事業所内で訓練を受けることができる制度がございます。母子家庭の母親等に対しましては、同じく訓練期間中、訓練手当が支給されるということになっております。これは期間が六カ月以内、中小企業は一年以内ということで、訓練手当は、先ほど申し上げましたとおり、十一年度で十三万九千七百七十円となってございます。
 次に、就職援護措置ということで、事業主に対する援助も講じてございます。
 母子家庭の母親等をハローワークの紹介によりまして継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対しまして賃金の一部を助成するという制度がございます。特定求職者雇用開発助成金でございます。実際には、雇い入れた労働者一人につき賃金の四分の一、中小企業につきましては三分の一を支給し、期間は一年ということでございます。
 職場適応訓練費の支給でございますが、これは、先ほど職場適応訓練の訓練手当が母親等に支給されると申し上げましたが、その職場適応訓練を実施していただく事業主に対しまして訓練費用を支給している制度でございまして、訓練生一人について月額二万三千九百円、六カ月以内、中小企業の場合は一年以内という形になっております。
 以上が就労面での支援対策でございます。
 次に、職場におけるセクシュアルハラスメントについて御説明を申し上げます。
 本年の四月一日から施行となりました改正男女雇用機会均等法の中に初めてセクシュアルハラスメントに関する規定が設けられております。それはなぜかと申しますと、四ページに掲げてございますように、セクシュアルハラスメントというのは、女性労働者の個人としての尊厳を不当に傷つけるとともに、女性労働者の能力の発揮を阻害するものである、また企業にとりましても、円滑な業務の遂行を阻害するとともに、社会的評価に影響する問題であるというとらえ方でございます。
 したがいまして、改正均等法の第二十一条に、事業主は職場におけるセクシュアルハラスメント防止のために雇用管理上必要な配慮をしなければならないという規定を設けまして、事業主が具体的に配慮しなければならない事項について別途指針というものを定めたものでございます。
 指針につきまして若干御説明申し上げたいと思いますが、五ページに概要を掲げてございます。これは事業主に講じていただきたい措置というものをまとめたものでございます。
 指針というのはそういう性格のものでございますが、まず、それでは職場におけるセクシュアルハラスメントとはどういうものかということを二つ掲げてございます。
 対価型セクシュアルハラスメント、これは、職場において行われる性的な言動に対する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受けるものでございます。二番目のセクシュアルハラスメントは、環境型セクシュアルハラスメントと申しまして、職場において行われる性的な言動により女性労働者の就業環境が害されるものということで、それぞれ下に具体例をお示ししてございます。
 こういうふうにセクシュアルハラスメントの定義をお示しした上で、事業主にこのようなセクシュアルハラスメントが職場で起きないよう雇用管理上配慮すべき事項というのを三つ定めてお示ししてございます。
 まず第一点は、事業主の方々に方針を明確にし、それを従業員の方々に周知、啓発していただきたい。すなわちセクシュアルハラスメントをしてはいけない、あってはならない行為であるということを事業主の方針として、姿勢として明示していただきたいということでございます。
 二点目が相談、苦情への対応ということで、従業員の方々からの相談、苦情のための窓口を整えていただきたい、さらにその窓口において内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するということを配慮していただきたいということでございます。
 それから三点目は、事後の迅速かつ適切な対応ということで、セクシュアルハラスメントについて相談、苦情があった場合、その事実関係を迅速かつ正確に確認し、その処理について適切に配慮していただきたいということでございます。
 このような指針を定めまして、行政指導に努めておるところでございますが、さらに具体的にどういうことを私どもで講じているかということを六ページにまとめてございますので、御説明申し上げたいと思います。
 職場におけるセクシュアルハラスメント防止対策といたしまして、まず私ども都道府県女性少年室におきまして行政指導に努めているところでございます。特に、セクシュアルハラスメント防止というのは企業のトップ層あるいは管理職の方々の意識によるところが大きいということもございますので、そういう方々の意識啓発に努めますとともに、先ほど御説明申し上げました指針等の内容に基づく行政指導を実施しているところでございます。
 それから、女性労働者からの相談への対応ということで、女性労働者からの相談が最近大変ふえてきております。相談者の方々のプライバシーや心身の状況というものに十分配慮しながら、私どもではこれらの相談に丁寧に対応いたしまして、均等法に照らし問題があるという場合はそれぞれの企業に対し適切な指導を個別に行わせていただいているところでございます。
 また、精神的ダメージを受けた相談者からの相談により適切に対応できますよう、十一年度、本年度から都道府県女性少年室にセクシュアルハラスメントカウンセラーを配置いたしまして、相談体制の充実を図ることにしているところでございます。
 さらに三点目でございますが、企業におきます取り組みをさまざまな形で援助するために関係団体を通じまして実践的な講習会の開催あるいは具体的な個別の御相談への対応、あるいは啓発ビデオをつくりましてこれを配付する等の施策を行っているところでございます。
 六ページの三のところに女性少年室が対応いたしました相談件数と相談内容を若干まとめてございます。平成八年度千六百十五件でございましたのが、九年度は二千五百三十四件、十年度はちょっと上半期の数字しかまだ確定的な数字が出てございませんが、二千三百四十八件ということで、毎年毎年相当の割合で相談件数がふえているというのをごらんいただけると思います。恐らく十年度は最終で七千件ぐらいになるのではないかと思っております。
 この相談件数の中には、企業からの御相談、女性労働者の方からの御相談、両方入っておるわけでございまして、十年度、とりわけ後半になりましては企業としてどういう具体的な措置を講じたらよろしいかという御相談が大変ふえてきておるという状況でございます。
 相談内容でございますが、七ページに簡単にまとめてございます。企業の方からは防止対策にどう取り組んでいったらいいかということ、労働者からはセクシュアルハラスメントのために退職に追い込まれた、またセクシュアルハラスメントのために精神的に非常なダメージを受けどうしたらいいかわからないといったような相談が多いという状況でございます。
 最後に、この四月一日から均等法が施行されたわけでございますので、その前後で企業の方でセクシュアルハラスメント防止対策に具体的に取り組んでいただいております例を幾つかまとめてございます。簡単に御紹介を申し上げたいと思います。
 それぞれの企業で企業行動基準とか企業倫理規定の中にこういったセクシュアルハラスメントあるいは嫌がらせをしてはいけないということを盛り込まれている、あるいは就業規則にこれを明示される、あるいは社内報とか場合によってはホームページを使ってセクシュアルハラスメントをしてはいけないということを従業員に周知されているという状況でございます。
 それから、相談窓口、苦情窓口につきましては、労使で苦情処理委員会を設けられそこを窓口にするというふうに定められているところ、あるいは人事部門が中心になって特別に相談窓口を設けられたところ、あるいは社外の専門の方に窓口をお願いしているところというようなものが見受けられます。
 それから、事後の対応につきましては、まだ事案が出ておりませんので、具体例としては申し上げられないところでございますが、多くの企業で場合によっては懲戒処分の対象になるということを明示されているというようなところもあるわけでございます。
 以上、セクシュアルハラスメントについて御説明申し上げました。
 今後とも、企業におきましてしかるべきセクシュアルハラスメント防止措置が講じられるよう行政指導に努めてまいりたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。

○会長(石井道子君) ありがとうございました。
 以上で説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○森下博之君 私は、婦人相談所においていわゆるDV女性を受け入れることになりました経過と根拠についてお伺いしたいわけであります。
 今の局長の御説明にもございましたように、婦人相談所が受けた相談件数は五千余ということでありまして、本当に最近こういったDVが非常に身近で深刻な問題というふうに受けとめられているわけであります。また特に、最近はニュース等で特集番組が組まれるといったこともありまして、大きな社会問題となっているわけでありますし、当然助けを求める女性もふえてきておると思うわけであります。その安全の確保と回復のための支援等はますます重要な課題となってくると思うわけであります。
 しかし、DV被害を受けた女性のためのシェルター数というのは、民間団体の運営によるものが全国でも二十件余と非常に少なくて、公的なシェルターについては実態として売春防止法に基づく婦人相談所が一時保護という形でその役割を担っておるという現状ではないかと思うわけであります。
 そういう中で、私はまず婦人相談所がDV被害女性を受け入れるように相なった経過と根拠についてお伺いさせていただきたいと思います。

○政府委員(炭谷茂君) ただいまの御質問の件ですけれども、先ほど御説明いたしましたように、本来婦人保護事業を行ってまいったわけでございますけれども、いわゆるドメスティック・バイオレンスに対して対応を行うようになってきたというのは、一つは婦人相談所なり婦人相談員なりが現実の問題に対応せざるを得なかったというところがあるのではないだろうか。つまり、これに対応してくれる適切な施設がほかになかったという現実、目の前のニーズにこたえなければいけなかったという問題が一つあっただろうと思います。
 それから、そもそも売春防止の観点から取り組みましたのは、未然防止という見地から婦人相談所が積極的な対応を示してきた。またそこには、売春からの要保護女子というふうに私どもは呼んでおりますけれども、要保護事業とドメスティック・バイオレンスというのが共通の背景なり事情もあったんじゃないだろうかというようなことからの取り組みと、またそれに応ずるだけの専門的なスタッフも婦人相談所にあったというような事情から、婦人相談所がこの家庭内暴力の問題に対して対応してきたというような実情だろうというふうに考えております。

○森下博之君 現状の問題点がいろいろと指摘されておるところであるわけでありますが、こういった救済をしなくてはならない被害女性がふえているという現状の中で、申し上げましたように公的シェルターがない以上、婦人相談所が対応せざるを得ないのではないかということに相なろうかと思うわけでありますが、言ってしまえばそういった本来の婦人相談所の業務といいますか、それを超える部分で仕事の量もふえているわけでありますので、果たして定員の確保というのがきちっとできておられるだろうかとか、あるいは福祉事務所が保護が必要であるという判断をしないと入所ができないということに相なりますと、その被害を受けた女性は直接主体的に利用できない面もあるのではないか。
 また、福祉事務所との連携がうまくいっているであろうかというような問題とか、被害を受けた女性が子連れであった場合に、未就学児であれば同居できるようでありますが、就学児の場合は母子が切り離されて保護されるというような扱いになっているということも承るわけであります。また、夫からの人身保護請求が出た場合に、それに対抗するというか拒否をする法的根拠がないということも指摘されておるところであります。また、入所期間というのも原則二週間という非常に短期ということであるわけであります。
 今申し上げましたこういった問題点を解決するということになりますと、婦人相談所の中に女性に対する暴力を取り扱う機関として、今は生活課長の通知ということで取り扱われている、その根拠を求めておられるようでありますが、やはりこの法的根拠を与えるべきではないかというふうに思いますが、いかがでございますか。

○政府委員(炭谷茂君) ただいま先生が指摘されました問題点、関係者からもいろいろとこのような問題点が出るところでございます。これに対しまして、私どもはできるだけ現実的な対応、または弾力的な対応というふうに努力をいたしております。
 例えば、福祉事務所につきましては、実際は措置権限と申しますのは婦人相談所にございまして、福祉事務所ではなくて婦人相談所の所長が行うというふうになっておりますけれども、当然福祉事務所を通じて婦人相談所に参りますので、福祉事務所でブロックされてしまうということもあろうかと思います。そのようなことのないように、常に福祉事務所と婦人相談所が密接な連携をとっていただくというような指導もいたしております。
 それから、婦人相談所の性格上、一時保護と緊急的な対応ということで、特に私どもは期間を示しているわけではございませんけれども、全国の実態を見ておりますと大体二週間というのが通常でございます。これにつきましてもやはり弾力的な対応をしていただくように、事情に応じて対応していただくようなことはお願いしております。
 またお子さんの問題、これは未就学児ということを原則にしておりませんで、施設の状況、例えば女性が多うございますから、やや年長の男の子を預かるという場合は風呂の問題とか、部屋が相部屋の場合が多うございますから、そういうことで婦人相談所の一時保護ができない。そこで他の施設にお願いするということを行っていることもございますけれども、できるだけ現実に応じた対応ということをしてまいりたいと思っております。
 ただ、今、先生がおっしゃいました何らかの法的な体制、売春防止法という体系から外れたもう一つの体制、法体系のもとでやるべきじゃないかという御指摘でございますけれども、これにつきましては、現在総理府の方で男女共同参画審議会の女性に対する暴力部会というところで御検討されているようでございますから、その検討を待って私どもとして対応していきたいというふうに考えております。

○森下博之君 売春防止法の改正の問題にもわたろうかと思うわけでありますが、近時、婦人相談所が売春防止法上果たす役割というのは著しく低下をして、一部にはその存在すら疑問視する声もあるわけであります。
 したがいまして、婦人相談所を売春防止法から切り離して、女性に対する暴力の公的なシェルターとしてもきちっと位置づけてはいかがなものか、そうすることによって電話相談とかあるいは夜間の緊急の保護等々、出所後のそういった方々が自立をできるような機能を拡充するということも必要になってくるのではないかと思うわけであります。その点いかがなものでしょうか。

○政府委員(炭谷茂君) 現在の売春をめぐる情勢でございますけれども、確かに件数ということにつきましては一時よりもある程度落ちついているところもあろうかと思います。ただ、売春の形態というのは、御案内のように多様化もしくは潜在化しているというふうに言われておりますし、それが一般化、日常化しているというのが平成九年につくりました総理府の売春対策の現況という報告でも明らかになっております。
 そこで、私どもとしては、売春防止法はそれなりにやはり今日においてもその存在意義というものがある、また、そうしていかなければいけないという事情にあるというふうに承知しております。
 そこで、売春防止法の中で行うのがいいのか、それとも全く切り離してやるのがいいかということについては、私自身の考えとしては、売春防止の理念とか方法とか対象者というのとはやや違った側面があるだろうというふうに考えております。例えば売春の場合は、理念としては、やはり性道徳とか転落の防止、また公衆衛生というようないわゆるドメスティック・バイオレンスにないような理念がございます。ですから、ある意味では、現在私どもがやっていることは目の前のニーズにこたえざるを得ないという現実的な対応からしているところでございます。
 ですから、これと別体系のものを行うかどうかということについては大変いろいろな面から検討しなければ問題があろうかと思いますけれども、それについては先ほどのような審議会で政府全体として御検討されておりますので、その結果を待って私どもとして対応させていただきたいと存じております。

○森下博之君 もちろん今の局長の答弁で満足をいたしておるわけでありますが、初めにちょっとお話しになりました要保護女子の範囲ということの中で、売春を行うおそれが当面はないが、放置をすれば将来売春を行うおそれがあるという中でこの根拠を求めておられるようでありますが、夫の暴力を受けたそういう女性というのは私は全く異質の、将来にわたっても売春のおそれなしというふうに考えるのが常識的な判断ではないかと思うわけでありまして、今御答弁にあったような後者のお考えでひとつ取り組んでいただきたい。この点については答弁は結構でございます。
 それで、最後に一点だけ、婦人相談員についてちょっとお伺いしたいわけであります。
 これは御案内のように、婦人相談所の職員のほかに、その相談所あるいは福祉事務所に配置をされておって、そういった方々に対して相談に乗っておられるというお立場であろうかと思うわけであります。しかし、これも売春防止法に準拠しておるわけでありまして、結局こういった相談についても専門的な知識が要求されることに相なろうかと思うわけであります。一定の研修はやられておるということで今御説明を受けたわけでありますけれども、全国的に一定水準を確保するという意味では非常に研修ということが大事なことに相なるのではないかと思うわけであります。この点、最後にお伺いをして、私の質問を終わります。

○政府委員(炭谷茂君) 婦人保護に携わる人たち、特に婦人相談員を初め心理判定員等につきましては、単なる情熱だけではだめでございまして、専門的な知識、技術が必要でございます。
 そこで、私どもといたしましては、厚生省ベースでは全国一回実施いたしております。これは、それぞれの現在の問題で特に今日話題になっております家庭内暴力の問題というものを重点的に取り上げております。本来、婦人相談員であれば、私も先ほど説明しましたように、売春中心ということになろうかと思いますけれども、現実的には暴力の問題が一番大きい問題でございますから、昨年度行いましたテーマにおきましても、暴力問題について、それの対応の仕方、また自立の仕方、それから関係機関とのネットワークのあり方ということに重点を置いて五つの分科会をつくりまして研修をしていただいておるという状況でございます。
 また、地方のレベルにおきましてもそれぞれやっていただいておりまして、婦人相談員につきましては、全国で、これは四十七都道府県を総計いたしますと百七回の婦人相談員の研修会、またその他相談所、保護施設等の研修会を合わせますと二百三十八回、これは平成十年度の事例でございますけれども、やっております。
 その中のテーマにおきましても、例えばドメスティック・バイオレンスについての事例研究とか、それからシェルターからのレポートとかいうようなことにつきまして、ドメスティック・バイオレンスを中心にした研修を特に重点的に実施しているところでございます。

○森下博之君 ありがとうございました。
 終わります。

○仲道俊哉君 自民党の仲道でございます。
 男女共同参画基本法が参議院で上程されましていよいよ二十一世紀に向けて男女共生社会の到来という、身近に感じてきたわけでございますが、当調査会も先般二月十六日から十八日に徳島県と兵庫県に調査、視察に行ってまいりました。
 そこで、徳島県で二人のすばらしい女性の社長にお会いができました。会社の経営やまた考え等も拝見することができたんですが、その中で特に私が感じましたのは、ごく自然体の中で特別女性を意識するのではなくて経営に当たられているその姿、その反面、私たちが話し合いをするテーブルの上に素朴な花が何げなく飾られている、そういう女性らしい気遣い、そういう接待がされておるというのを実態的に先日体験いたしまして、まさに二十一世紀の男女共同参画を地でいくような、そういう姿かなと思ったわけでございます。
 これは労働省の方の指導もあったのかどうかもわかりませんが、そういう姿に対する、経営に対する労働省としての考え方、今後のそういう男女共同参画社会、きょうの説明にはございませんが、ちょっとそういうことを感じましたので、最後でもよろしゅうございます、ちょっとお聞きをいたしたいというように思います。
 そのときに、徳島県で聞いたことわざに「讃岐男に阿波女」という、そういうことわざもちょっとお聞きしましたが、これはどのようにお考えになるか、その点についても労働省の立場でひとつ御見解をお聞きいたしたいというふうに思います。
 兵庫県では、今度は反対にまた女性に対する暴力の生々しい実態が報告をされました。その中で、夫、恋人からの暴力に関して警察の適切な対応を求める要望書が十三団体から出ておりましたし、また女の駆け込み寺、生野学園からの実態報告、また民間シェルターの切実な願い等が提出をされたわけでございまして、そのいずれの報告もすべてほとんど行政に対する不満、それが大部分であったわけです。
 今の我が党の森下先生の質問にも関連してきますが、厚生省の説明の中の今の婦人相談所の売春防止法が保護事業であるからということ一点張りで、今の説明では、目の前の差し当たりどうしてもしようがないからやっておるんだという、本来とは違った手間仕事みたいな感じを、何かそういう感じを今の説明の中から私は受けまして、それをお聞きしている関係者の方は多少何か憤りを感じたのではないかというような感じすら、私も聞いていたしたんです。
 そういう関係の中で最近、平成十一年四月一日付で厚生省から「夫等からの暴力により保護を必要とする女性への対応について」という通達が出されております。厚生省社会・援護局と厚生省の児童家庭局からこの四月一日付で出されておるんですが、こういうのが出された背景というのは、やはり特別何かあると思うんですが、本来の姿の売春防止法等の関係からでなくて、こういうことを出される、では具体的に何年ごろからこういう問題が厚生省の方としては把握をされ、このことに対してこういう通達を出さなければならないようなことになったのか、その背景についてちょっとお聞きをいたしたいと思います。

○政府委員(炭谷茂君) まず、私自身の先ほどの発言の中で、片手間にやっているというふうな印象を持たれたということについてまずおわびさせていただきたいと思います。
 これは実際、私自身そのような婦人相談所や婦人保護施設の方にお伺いし、お話をお伺いしますと、非常に熱心に取り組んでいただいているということをひしひしと感じております。決して自分たちの本来の仕事ではないというようないいかげんな気持ちでやっていらっしゃるふうには到底とり得ない、本当に性格上、夜間も泊まってやらなくてはいけない、それから場合によっては暴力的なもとのだんなさんが訪れてくるというような非常に難しい場面も相当遭遇されております。そういうお話をお聞きしますと、やはり本当に真剣になって取り組んでいただいているなというふうに思っております。
 そこで、私ども今の先生の御質問の関係で、ことしの四月一日に出しました通達の理由でございますけれども、現実的にやはり私どもの婦人保護事業また母子生活支援事業、昔でいう母子寮でございますけれども、そのようなところは目の前のニーズを前にして必要なサービスというものを適切にやっていただかなければいけない、むしろ積極的にそのようなニーズに対して対応していただきたいという趣旨でこの通達を出させていただいております。
 そこで、いつごろからこういう問題が生じたのかということでございますけれども、売春防止法が昭和三十三年に全面施行されましたけれども、当時からこういう相談ということについては徐々に出てきたようでございます。現実的にこのようなだんだん大きな問題になってきたというのは、これはいつごろかというのはなかなか難しゅうございますけれども、一つの象徴的なものとして、東京都では昭和五十二年に、このようなドメスティック・バイオレンスを初め女性の問題を売春防止法とあわせて取り上げるというような条例をつくっておりますので、昭和五十年代前半では相当の大きな問題として出始めているんじゃないのかなというふうに思います。
 私どもも、累次いろいろな会議等でこのような問題に対して積極的に、また現在の枠内で弾力的に現実的な対応をするように指導してきております。そして、先ほど森下先生が引用されましたけれども、平成四年のときに通達を出しまして、このような問題も婦人保護事業として対象の者に加えるよう通達で明示をしまして取り組んでいるというふうな事情でございます。

○仲道俊哉君 これも森下先生のときに出たんですが、今後の問題として随分いろいろな調査、我々また参考人等からお聞きしたときも、公的な相談所をぜひつくってほしいという非常に強い要望があるわけです。
 先ほどの御答弁では、差し当たり厚生省も福祉が中心であるからちょっと窓口になりにくいということ等の御意見もあったんですが、実際に今これだけ問題が起きておるわけですから、どのように役所として取り上げるのか、考えられるのか。民間シェルター等もぜひ資金等でも何か補助等というような考え方もせめてというような意見もございますし、もう少し役所として今後窓口はどこなのか、せめて取り組む取り組まない、いずれにしても窓口、それが実際働く女性の方が多くなるからということで今後労働省が窓口になるのか、また厚生省が福祉の関係、婦人の関係からなるのか、そういうことについてはどうでしょうか。厚生省並びに労働省の方からもちょっとその点について御意見をお聞きいたしたいと思います。

○政府委員(炭谷茂君) まず、家庭内暴力の問題につきましては、これはいろいろな側面があるようでございます。
 例えば、一九九三年に国連による女性に対する暴力撤廃宣言という宣言が出ております。その宣言の中身を読ませていただきましても、私ども厚生省の対応している単なる福祉的なものだけではだめだと、いわば文化的なもの、法制的なもの、社会的なもの、いろいろな側面で解決していくべきだというような宣言がなされております。また、諸外国の法令を見ましても、そのような立法例が多いようでございます。
 それで、私ども自身は福祉的な面、また現実的に婦人相談所等の施設を持っているわけでございます。そこにまた専門的な職員もおりますので、やはり現実の問題に対しては積極的に対応していかなければいけないだろうと思います。
 ただ、厚生省の立場になりますと、そこには福祉としての限界、それだけでは問題は解決しない、いわば労働行政もあれば教育行政もある、また人権という面で人権擁護的な面もあるだろうということで、政府それぞれで一体となって取り組んでいかなければいけないのじゃないかというふうに考えています。

○政府委員(藤井龍子君) 今、厚生省の局長がお答えになったとおりでございまして、もちろん職場との関連性が全くないということではないと存じますが、労働省はあくまでもやはり職場における女性の問題ということでございます。
 将来的にはこの問題について私どもは私どもなりに研究し御協力はしていかなければいけないと思っておりますけれども、御検討の推移というのを見守ってまいりたいと存じております。

○仲道俊哉君 それなりの結論はまだ今のところ研究段階だからなかなか出ないと思いますが、ひとつ両省庁とも積極的に前向きに取り組んでいただきたいと思います。
 現実のこういう問題、実態があるわけでございますが、先ほど厚生省の方から、また労働省もセクハラの問題等ありますが、婦人相談所なり婦人相談員等の研修は説明がございましたけれども、実際に本来の事業とは違った意味でのこういう目の前の現実に対応しなければならない側面があるということです。そうすると、それに対応する具体的な職員の研修等については、実際にどういうような研修体制をされて、また今までの職員の研修分野とは違って、新たにどういう割合で、特にこういう問題が多くなったからこれだけ多く時間をかけて研修しておるというような実態がございましたらお知らせいただきたいと思います。

○政府委員(炭谷茂君) 私ども婦人保護事業におきましては、今日の議題になっております家庭内暴力、ドメスティック・バイオレンスにつきましての問題というものについて特に重点的に取り上げるようにいたしております。
 具体的に申しますと、昨年度の研修で全国婦人相談所長及び婦人保護主管係長研究協議会というものを設けております。これは百六名が参加をいたしまして、その中におきましても女性に対する暴力への対応というものにつきましてテーマとして取り上げております。また、先ほどの繰り返しになりますけれども、各都道府県での研修におきましてもドメスティック・バイオレンスの問題を重点的に取り上げております。また、問題は研修の中身でございまして、それについて特に各都道府県の状況を見てみますと、具体的にどのように対応したのかという事例研究というものを中心に置いて、実際に役立つような研修ということに力を入れているというふうに思っております。
 ですから、私どもとしてさらに研修の効果を上げるために工夫をして、また都道府県と一体になって考えていきたいというふうに考えております。

○仲道俊哉君 今までの事例、またこれまでの参考人等の話を聞きますと、女性に対する暴力の事例というのはほとんどドメスティック・バイオレンスなんですね。
 当初、私はDVというのは直訳するとどういうふうになるのかと思ったんですが、なかなか夫婦間の暴力だけじゃない。特に、説明等では夫や恋人等を含む暴力であるということで、夫婦間の暴力であればお互いに皆さんある程度の理解をすると思うんですけれども、恋人からの暴力ということに対して私は理解に苦しむんです。今の男女間というのは実際どうなっているのか。本当に好きな人、恋人から暴力を受けるなんということは、我々の年代では本当に考えられないわけでございます。
 ですから、実際には被害者の女性だけの立場でなくて、加害者である男性の教育、これが実際にどうなっておるのかということについて特に文部省にお聞きしたいんです。ジェンダーに関する教育というのが載っておりますが、ジェンダーというのはそもそも直訳するとどういう言葉になるんですか。

○政府委員(富岡賢治君) この問題を考えるに当たりまして、やはり男女の人権が尊重されているということが基本だろうと思うんですが、そのためには男女共同参画社会の形成ということが何といっても大事だろうと私ども思っているわけでございます。
 今、先生御指摘の社会的、文化的に形成された性差、つまりジェンダーということだろうと思いますけれども、そういうものにとらわれない意識を培う教育というのを学校教育、社会教育で培っていくということが大事だと私ども思っております。特に、平成八年に政府が策定した計画でございます男女共同参画二〇〇〇年プランに基づいて男女共同参画を推進しまして、多様な選択を可能にする教育、学習の充実を通じて、ジェンダーにとらわれない意識を培う教育を進めようということで進めてきたわけでございます。
 これからも学校教育、社会教育でいろいろなことができると思いますけれども、そういう観点で努力してまいりたい、このように思っているわけでございます。

○仲道俊哉君 今まで戦後民主教育の中で男女平等教育や暴力に関する教育というのは我々実際にしてきたわけですが、それとジェンダーに関する教育というのはどう違うんですか。

○政府委員(富岡賢治君) 例えば、お互いの人権を尊重するということは終始一貫変わらない人間としての基礎、基本のことだろうと思いますけれども、特に文化的な性差にとらわれない教育というのは歴史的な積み上げの中で今やらなくちゃいけない。そういう点の思いやりとかなんとかということでは常に共通のことでございましょうけれども、性差にこだわらない教育、そして女性も参加していくような新しい社会をつくっていく教育ということでは、新しい時代に対応した観点でやっていきたい、このように思っております。

○仲道俊哉君 何かわかったようなわからないような話でございますけれども。
 それでは、実際に文部省として今後ジェンダーに関する教育をするということになると、その指導をする教員、これはやはりジェンダー教育ということについて教える教師自身が理解をし、そして教師自身がそういうことについての実践ができるような、概念的でもいいが、まず教師がわかっていないとなかなか教育ができないんじゃないかと思うんですが、その点についての教職員の研修というのをどのようになされていますか。

○政府委員(辻村哲夫君) ジェンダーフリーの教育、特に今先生のお尋ねの中で我々がこれから特に留意していかなければいけないのは、形式的な男女平等、人権ということに加えて、男子と女子との固定的な役割といったものを是正していく、そういう視点が必要だろうと思うんです。
 それは、社会科とか家庭科とか道徳や特別活動という教科等の活動に加えて、教師が子供たちに接するときの接し方、指導の仕方、そのときに男とか女とかということを意識した形で指導しているかどうか。順番もそうですし、あるいは役割分担の与え方もそうですし、そういう教師の学校生活における子供に対する態度なり発言、言動、こういったもの全体に留意をした形での教師のあり方というものをこれから探っていかなければいけないのではないかというふうに思うんです。
 私どもこれまでの研修でも、先生御指摘のとおり、いろいろと努力をしてまいったわけでございますけれども、これから新しい学習指導要領もできまして、完全学校週五日制下での新しい学校教育というものを目指そうというときでございます。そのときに、こうした男女共同参画型社会の形成ということを目指して、ちょうど時期的に軌を一にしているときでございますので、国におきます研修あるいは各県の教育委員会、市町村の教育委員会の研修、あるいは学校内での研修、あるいは教師自身の研さんもあろうかと思いますけれども、そういった点に留意した形で研修というものを進めていく、それが必要なことなんではないか、こんなふうに私どもは思っております。

○仲道俊哉君 もう時間がありませんから最後の質問です。
 ですから、私は、これまでのいろいろな討議の中で、被害者の女性の暴力に関することのみがなされておって、その前の実際に男性がどうするのかということについての教育が一番大事であろうというふうに思っておりますので、その点についてはぜひよろしくお願いいたしたいと思います。
 最後に、先ほどの質問についてお答えいただきたい。

○政府委員(藤井龍子君) 先ほど仲道先生から最初に御質問があった件でございますが、大変いいお話をしていただきましてありがたく思っております。
 今回の均等法を改正いたしました趣旨というのは、これまで日本の企業社会というのは、男性が経営者であり基幹労働者で、女性は補助労働者という位置づけであったわけでございますが、そういう男性とか女性とかという性別で区別したり差別をしたりするのではなくて、それぞれ個人の適性とか能力あるいは意欲、これをしっかり見て人事管理、労務管理をしていただきたい、昇格昇進も考えていただきたいというそういう趣旨でございますので、先ほどおっしゃいました女性の経営者の方が本当に男も女もない感じでやられておられるというのは、大変私どもとしてはうれしいお話でございました。
 それから、「讃岐男に阿波女」でございますか、ちょっと私はあれなんでございますが、何かそういうことは我が国ではよく言われることで、お話のあやといいますか、そういうようなことは別に私としてはそれほど個人的にはこだわるようなあれではございません。
 ちなみに、私の知り合いで、かかあ天下で有名な群馬の男性と亭主関白で有名な鹿児島の女性が結婚したのがございます。双方とも控え目で非常にうまくいっているかと思って見ていましたらとんでもございませんで、両方とも個性が強くて意地の突っ張り合いを毎日やっているというようなのもございますので、やはり一くくりにして女性はどうだとか男性はどうだとかというのではなくて、個人個人の差ということであろうかと思います。

○仲道俊哉君 ありがとうございました。

○小宮山洋子君 御説明いただいた順番に文部省、厚生省、労働省と伺っていきたいと思いますが、御承知のように、急遽質問者が変わりましたのでお願いしておいた質問とちょっとずれてくるところがあるかもしれないところは御容赦ください。
 まず、文部省に伺いたいんですけれども、今のお話の続きにもなるかと思いますが、やはり子供のころからの意識の形成がすごく大事だと思うんです。そういう意味で、今学校で行われているジェンダーに関する教育、人間教育としての性教育とでも言うんでしょうか、そういうものが私はまだまだ十分ではないと思っています。
 今お話のあった教員の研修の問題とか、それから教材にしましても、例えば東京都の女性財団がジェンダーチェックということで教材をつくったところ全国から問い合わせが殺到したというように、まだまだ教員の問題、教材の問題は足りないと思うんですけれども、どのようにお考えになっているか伺いたいと思います。

○政府委員(辻村哲夫君) 教材にいろいろな種類がございます。教材の中でも主たるものとしては教科書がございますが、教科書の検定におきましては、この点は大変重要な視点として、どの教科の教科書におきましてもこれを十分にチェックして検定を行うという努力を我々はしております。
 よく言われますように、いわゆる男性の職業、女性の職業という固定した職業観で、例えばポリスマンとかというようなそういうタームがどんどん変わってきているということ。こういうことについてチェックをするというのは当然でございますけれども、あと、いろいろなイラストとか挿絵等において、固定的な男女の役割観を前提にした形でのイラストとか漫画のようなものとかということにつきましても相当に我々神経を使って検討をいたしております。もちろんこれは検定でチェックするというだけではなくて、執筆者におきましてもそういった考え方、理念というものが広がってきているように思いますが、これからもさらに進めてまいりたいと思います。
 教科書は検定という手続がございますが、それ以外に各学校では教育委員会の判断あるいは学校の判断においていろいろな教材が使われます。そういうものにつきましては、先ほどの仲道先生の御質問にもあったわけでございますけれども、これは個々の学校の教師たちの意識あるいは教育委員会としての意識といったものが重要でございますから、各県、市、学校、相当にそういった点についての心遣いというものが行われるようになってきていると思いますけれども、なおそういう御指摘もあるということであれば、我々いろんなそういった県の人たちとの会もございますので、こういったことが国会においても話題になっているというようなことを伝えまして、考えるチャンスにしたい、こんなふうに思っております。

○小宮山洋子君 教科書における男女差別について何か本が執筆されるぐらい、チェックをいたしますと、中のいろいろ扱いについてもまだまだ不十分な点があると思いますので、ぜひそのあたりのことと、教員の研修の中にきちんとこういうジェンダーの視点が入るようにということをお願いしたいと思います。
 それで、個別の問題ですけれども、例えば男女混合名簿がございます。性別で男性が先に呼ばれて、その後女性が呼ばれるというと、いつも男性が上位にあるように思われる。ところが、これについて文部省では、これは国が決めているのではない、各都道府県の教育委員会にお任せしてあるので、データもとっていないというお話を以前伺ったことがあるんですけれども、文部省としてはどういうふうにその取り組みをなさっているのか、伺わせてください。

○政府委員(辻村哲夫君) 確かに、私ども文部省として、こういった出席名簿あるいは児童生徒の名簿はこうあるべきといったものを一律に示すということはいたしておりません。恐らくこれは各県の教育委員会においてもしていないのではないか。むしろ個々の学校、あるいは場合によっては個々のクラスの先生のお考えでどんなふうにするかということが行われている、まさにすぐれて学級経営、学校経営の運用上の問題として対応されているだろうと思います。
 したがって、私どもは直接男女混合名簿の現状いかにということで調査はいたしていないわけでございますけれども、私どもの手元に、この三月に発表されまして、昨年の十一月に行われた日本教職員組合のサンプル調査がございますが、それでは、小学校、中学校、高等学校、特殊教育諸学校、幼稚園を含めまして四割ぐらいの学校が男女混合名簿になっている、それは過去に比べますと相当な数でふえているという状況を把握いたしております。この名簿等に対する取り組みといたしまして国の取り組みはいかにと聞かれますれば、今のようなお答えになるだろう、こんなふうに思います。

○小宮山洋子君 おっしゃるとおり日教組しか調査をしておりません。
 それで、全体で四割とおっしゃいましたけれども、中学が非常に率が悪いんです。以前私が聞いたところでは一六%しか上がっていませんでした。都道府県の方でも多くのところではそういう調査はしていらっしゃらないと聞いています。
 これは、やはり国として男女共同参画社会をつくろうという中で、文部省としても、このあたりは知らぬということではなくて、もっと積極的な取り組みがあってしかるべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○政府委員(辻村哲夫君) 先ほど言いましたように、この名簿は学校運営、学級運営上必要があって、これは何か義務づけられてつくられている名簿ではございません。例えば、指導要録評価というようなことでありますと、国がその作成を義務づけ、その作成に当たっての基準といったものをつくって、それを参考にしながら各学校で作成されるわけでございますけれども、この名簿のつくり方の問題でございますから、これはすぐれて学校内の問題であろうというように思います。
 したがって、それを国としてどうあるべきかということを何か一律的、画一的に指導するということは、学校のあり方の問題として私どもなかなか難しい点があるのではないかと思っております。ですから、それはそれぞれの学校において、さまざまな観点から名簿はどうあるべきかということをお考えいただいて作成していただければいいのではないかと思います。
 ただ、先ほどのお答えの重複になりますけれども、国としてこういったやりとりが男女共同参画型社会の形成という中で行われているよということをさまざまな機会に伝えていくということは考えてみたい、こんなふうに思います。

○小宮山洋子君 それからもう一点、細かい点ですけれども、現在、小中学校の中に女子の更衣室が設置されていない学校が割とあるというふうに聞いています。このあたりのことについては、もしそういうところがあれば補助制度なども使ってきちんとするという点についてはいかがでしょうか。

○政府委員(小野元之君) 文部省におきましては、従来から学校施設について、計画・設計上の留意点ということで学校施設整備指針というのを示しているわけでございますけれども、こういった中で、学校の設置者に対しまして男女別の更衣室の整備を促すということを行っておるところでございます。
 それから、公立学校の国庫補助の基準面積の算定に当たりましても、こういった男女別の更衣室を積算の中に加えておるところでございます。文部省の調査では、教員でございますと、男女別の更衣室の設置状況は、平成六年度では四六・七%、これでも足りないわけでございますけれども、平成十年度では六〇・一%と少し設置水準は高まっているところでございます。
 国としてもこういったものを積極的に指導していきたいというふうに考えておるところでございます。

○小宮山洋子君 それから、教員の生徒に対するセクシュアルハラスメントなどについてですが、相談の窓口の体制は整えてあるというふうに伺っていますけれども、子供たちが被害に遭ったときに本当にそれを訴えていきやすい状況が整えられているのか、そのことが周知徹底されているのか、そこで相談に乗る人の人材の育成の問題などについて伺いたいと思います。

○政府委員(辻村哲夫君) 先生ただいま御指摘いただきましたように、県・市教育センターにおきましてそういった窓口が設けられてございます。ただ、そのことが個々の学校の子供たちにどのくらい伝わっているかという点はこれからの課題だろうと思います。
 それぞれのセンターからは、相談時間でありますとかあるいは電話番号ですとかといったものが、カードとかあるいはパンフレットというような形で、学校を通しまして子供たちに伝えられるような形には一応なってございます。ただ、それが現実に学校から個々のクラス担任、クラス担任から子供という形できちっと伝えられているかどうかという点につきましては、私ども十分把握をいたしておりません。
 しかし、そういったものができておりましても、ただパンフレット等が形式的に学校に届いているだけで子供たちに十分伝わっていないとすれば、せっかくのそうした体制も生きないわけでございますので、その点については、我々これから各県市の方に、具体にどんな形で周知徹底が図られているかをチェックしながら十分な対応ができますように伝えていきたい、こんなふうに思います。

○小宮山洋子君 ぜひ十分に取り組んでいただきたいというふうに思います。最初に申し上げましたように、この暴力の問題というのは小さいころからの教育の問題がとても大きいと思いますので、ぜひ文部省の積極的な取り組みをお願いしたいというふうに思います。
 次に、厚生省の方に伺いたいと思います。
 婦人相談所での相談件数は九七年度が夫の暴力など五千三百六件と報告されていますけれども、このうち、例えば一時避難をさせるとか実際に救済をされたものはどれぐらいになるのでしょうか。

○政府委員(炭谷茂君) ただいま御指摘されました五千三百六件は婦人相談所への相談件数でございますが、この中の相談の実態を見てみますと、大半のものは、実際は口頭の指導で解決がつくというようなものもございますし、中にはやはり一時的に保護しなければいけないという場合もあろうかと思います。
 ですから、この中でどれだけ他の一時保護所なり婦人保護施設においてケアをしたかという数字は、現在つかんでおりません。

○小宮山洋子君 それで、暴力の実態としては、とてもそのままにしておけない状態というのが、最近、例えば埼玉県の女性政策を考える住民ネット、ここでかなり綿密な調査をした結果、一〇・八%の女性が暴力を受けた経験があると。それから、先日来御紹介している東京都の調査におきましても、程度の差はありますけれども二〇%ぐらいの女性が何らかの暴力を受けている。
 こういう中で、公的なシェルターが足りないために民間のシェルターがかなり活動していると思いますが、そういう現状をどういうふうに受けとめていらっしゃいますか。

○政府委員(炭谷茂君) 確かに、先生御指摘のように、現在、民間のシェルターの役割というのは大変大きいものがあろうかと思います。
 数については正確に把握しておりませんけれども、大体二十以上は既に特定の名前で私ども承知しております。それらの実態をその方々の話とかまた書かれている論文等でいろいろ拝見いたしますと、やっていらっしゃる方々自身がドメスティック・バイオレンスの経験者であるとかというような状況で、本当に親身になって、相手の立場になって相談されているということを見聞いたします。ですから、その面で、私どものやっている公的なサービスとは違った面の特色が十分あるんじゃないのかなというふうに思います。
 そして、実態につきましても、例えば女性の家HELPのように割合国際的な活動を中心にしている面、またAKKのようにアディクション、アルコール依存症とかそういうようないろいろな分野について専門性を持っているものというように、大変さまざまな特色がそれぞれによって違っているんじゃないのかなというふうに思っています。

○小宮山洋子君 公的なシェルターというのは今幾つぐらいあるんでしょうか。

○政府委員(炭谷茂君) 公的なシェルターというようなことで申しますと、私ども、一時的に保護をするとかまた割合長期間にわたって保護をするという役割を担うものは、婦人相談所の中にございます一時保護所というものがございます。これにつきましては、各都道府県一カ所、四十七カ所ございます。また、婦人保護施設につきましては五十二カ所ございます。これがいわばシェルターの役割を果たしているだろうというふうに思います。

○小宮山洋子君 形としてはありましても、量からいきますと民間の方で対応しているものの方が中身的にもかなり濃いものがあるのではないかというふうに思うのですけれども、そのあたりで、民間との連携をどういうふうにとっていくかとか、あるいは民間の方では財政的にも非常にきつい中でやっている、その辺を厚生省の方でも助けていくというようなことはお考えになっていないんでしょうか。

○政府委員(炭谷茂君) まず、民間と公との量の問題から申しますと、公のお世話をしている割合というのはやはり施設数からいって多いだろうというふうに思います。質については、それぞれの特色を持ってやっていらっしゃるんじゃないのかなというふうに思います。
 それで、公と民間との役割分担ということになりますと、それぞれ工夫をされています。
 一、二紹介させていただきますと、例えば民間のシェルターでなかなか対応できない、もしくは定員がいっぱいである、民間のシェルターの場合余力として十人とか非常に小規模なものが多うございます。それで、公の方にお願いをするというような場合もございますし、反対に、公のところに来た場合、相手の男性から追いかけられて見つかってしまった、それで一時的に民間のシェルターにお願いするという逆の場合もございます。
 それから、これは東京都で昨年度から始めた例ですけれども、民間の方々も参加していただき、また公の婦人保護施設、婦人相談所が入りまして連絡の協議会、そしてお互いにどのようにドメスティック・バイオレンスに対応していったらいいかというような情報の交換というようなこともやっております。ただ、民間シェルターがありますのは全国で十二、三県にとどまっておるわけでございますから、ある程度限定された両者の連携関係だろうというふうに思っております。
 また、これについて公の援助をするかどうかということでございますけれども、先ほど御説明しましたように、民間シェルターの実態は本当にさまざまでございます。ですから、公の援助というものについてなかなかのりにくいところがあるだろうと思いますし、また自由な活動をされているということもございます。
 ですから、現在、男女共同参画審議会の女性に対する暴力部会でもこのようなケアの体系のあり方について今後検討されるというふうに承知しておりますので、その中の一つの検討事項になるんじゃないのかなというふうに承知いたしております。

○小宮山洋子君 ちょっと前の委員の質問に出ましたけれども、母子生活支援施設ですか、以前母子寮と言っていた部分ですけれども、そこについて、児童福祉法改正の中ではっきりと暴力の被害に遭った人についても積極的に受け入れるということになったかというふうに思うんですが、現実にはそうした対応というのはどの程度行われているのでしょうか。

○政府委員(横田吉男君) この資料の十ページをごらんいただきたいと思いますが、平成四年の調査でちょっと新しいものがないわけでありますけれども、「入所理由別入所世帯数」ということで見ますと、一番多いのが「入所前の家庭内環境の不適切による」ということでございまして、御指摘の暴力等によるケースもこの中に含まれているということであります。
 ただ、このケースの中にはそれ以外に、実家等に離婚して戻っていたところ父母なり兄弟と折り合いが悪くなって母子生活支援施設の方に入所してきた場合、あるいはもとの夫の家の方に行っていた場合でその家族とうまくいかなくなってこちらに入ってきたものというようなケースも入ってくると思われますのですべてではございませんが、御指摘のようなこの中で暴力等によるということだけで調査したものはございません。

○小宮山洋子君 それと、これも先ほど質問が出た部分ですけれども、ある程度高学年の男の子を持っている場合に別にされてしまう、本当は必要があるのにそのことで入れないというケースもあると聞いているんですけれども、そのあたりはどういう具体的な配慮が可能だとお考えになりますか。

○政府委員(炭谷茂君) まず、婦人相談所また婦人保護施設において同伴する子供の年齢制限を制度的に行っているかどうかということについては、まずこれは行っておりません。ですから、制度的には同伴の男子の年齢によって制限するようなことはないわけでございます。
 しかし、実際の施設の状況、例えば部屋が相部屋の場合、ある程度年長の男子にとっては支障を生ずる、また、入浴施設での制限というようなところで、ある程度年長、例えば高校生以上の男子はお断りするというようなことが現実的に行われているわけでございます。
 ただ、その場合どうするかということでございますけれども、例えば私ども厚生省が所管しております母子生活支援施設、いわゆる母子寮での対応ということとか、また、余裕のある婦人保護施設、この場合個室等を備えている場合がございますからそのような施設での対応ということで、支障のないようにしていかなければいけないというふうに思っております。

○小宮山洋子君 ぜひそのあたりは柔軟な対応ができるような配慮をしていただければと思います。
 これはお答えいただかなくて結構なんですが、最後に、労働省の方は婦人少年室を女性少年室と改称しています。今、全体に婦人を女性と言いかえるようになってきていると思うんですが、婦人保護事業につきましても、婦人相談所、婦人相談員、このあたりの名称についても御検討いただければと思います。
 それで、最後に労働省に伺いたいんですけれども、母子家庭に対する公共職業訓練というのをいろいろとしていらっしゃると伺いましたが、こういうような施策が余り知られていないというか、利用の状況がまだ足りないのではないかと思うんですけれども、そのあたりはどういうふうにPRなどをしていらっしゃるでしょうか。

○政府委員(藤井龍子君) 私どもでは毎年こういうパンフレットといいますかリーフレットをつくりまして、先ほど御説明申し上げたような訓練手当の話とか職場適応訓練というのがありますというようなことを母子家庭の母親の方々あるいは事業主の方々に対して周知に努めているところでございます。
 特に、厚生省さんと連携して周知を図るのが重要であろうということで、これと同内容のパンフレットを各福祉事務所それから各市町村の児童扶養手当の申請の窓口等にも備えつけていただいておりまして制度の周知には努めているところでございますが、御指摘のところは反省すべきところもあるかと思いますので、引き続き厚生省さんと連携しながらPRに努めてまいりたいと思います。

○小宮山洋子君 特に、母子家庭に対する児童扶養手当の受給条件が去年厳しくされたときにも就労支援ということが大きな柱に立てられていたと思いますので、今おっしゃったように、ぜひ厚生省の方とも連携をよくとっていただいてそのあたりの周知を、せっかくある仕組みが知られないというのは残念なことだと思いますので、徹底をしていただきたいというふうに思います。
 それから、改正均等法が施行されましてセクシュアルハラスメントについての雇用管理上の必要な配慮義務ということが実施に移されているわけです。女性少年室が相談の窓口になると聞いていますけれども、そこに訴えがあった場合、実際、企業に対してはどういうような指導なり取り組みをされることになっているんでしょうか。

○政府委員(藤井龍子君) セクシュアルハラスメントについて女性労働者の方々から御相談がありました場合は、私どもの女性少年室の職員がそれぞれ丁寧にといいますか、かなり時間をかけてよくお話を伺うという形で対応してございます。お話を伺った結果、均等法の違反があるのではないか、あるいは均等法の趣旨からしていかがなものか、あるいはそこまでいかないとしても何かのお手伝いができるようなものもあるかと思います。そういうものにつきましては、それぞれの事業主の方々に個別に具体的にお話を申し上げ、解決できるような援助をさせていただいているというような状況でございます。
 ただ、セクシュアルハラスメントは個人のプライバシーにかかわる問題がございますので、そのあたりは非常に慎重に対応をさせていただいております。

○小宮山洋子君 それで、今度新しく十一年度から女性少年室にセクシュアルハラスメントカウンセラーが設置されると伺っていますけれども、これは全部のところに設置されるのか。大体、常勤でいて、どういう資格というかどういう人材がそのカウンセラーに充てられるのか、教えていただけるでしょうか。

○政府委員(藤井龍子君) これまで女性少年室の職員が主として対応してまいったわけでございますけれども、セクシュアルハラスメントの御相談に見える女性労働者の方々の中には、精神的に相当ダメージを受けておられる方、あるいは興奮状態で事実関係についてきちんと御説明がしづらいような状態の方などいろいろいらっしゃいますので、やはり心理的、専門的な知識のある方々に御対応いただくのがよろしいのではないかということで、平成十一年度から計画的に女性少年室にセクシュアルハラスメントカウンセラーを設置していこうということで、平成十一年度は二十程度の女性少年室に設置いたしまして、大体週一回程度は御相談に応じられるような体制を整えたいと思っております。
 カウンセラーには、そういう専門的な知識や技術、経験をお持ちの臨床心理士あるいは産業カウンセラーの方々に御依頼する予定にしてございます。

○小宮山洋子君 女性少年室でしっかりした体制をとっていただくと同時に、各企業の中に女性の産業医がいるとかあるいはそういうカウンセラーのようなことができる人がいるというようなことも必要かと思うんですが、そのあたりは労働省としてはどういうふうにお考えになっているでしょうか。

○政府委員(藤井龍子君) 産業医は主として健康指導ということでございますので、セクシュアルハラスメントの相談まで産業医に期待するのは無理なところがあるかと思います。
 ただ、先ほど申し上げましたように、指針で事業主が講ずべき措置の中に、苦情・相談窓口を整え適切な対応をするようにということにしてございますので、その中ではそういうニーズの高い事業所では専門の方をお願いするというような指導も考えていかなければいけないと思っておりますが、現実にそういう専門のカウンセラーの方に外部の窓口としてお願いをしているという企業も幾つかございます。

○小宮山洋子君 先ほどからこうした問題については女性少年室が中心に取り組むというお話を伺っていますけれども、今度、行革の中で三つの部署が統合されることになります。そうした中で、私は、女性の部分が今でさえ人手が足りなかったのに統合される中でまたないがしろになってしまうのではないかということを非常に心配しますので、そのあたりのことをきちんと位置づけていただきたいと思うんですが、そういう検討はどうなっているでしょうか。

○政府委員(藤井龍子君) 行政改革の流れの中で、私ども都道府県の出先機関統合という方針が固まっておるところでございます。
 その出先機関の中で、女性労働関係を所管する組織につきましては、これまでと同様、皆様方のニーズに十分こたえられるような体制を整える予定にしているところでございます。

○小宮山洋子君 終わります。

○大森礼子君 公明党の大森礼子です。
 まず、文部省に最初にお尋ねいたします。
 ことし二月三日の調査会の参考人質疑で、アディクション問題を考える会の代表米山奈奈子参考人から次のような問題提起がございました。暴力を振るう夫から逃れまして女性が隠れて生活をする、その場合に、子供がいたらその子の学校の問題をどうしようかという問題が起きてきます。住民票がなければ就学が認められないという制度上の問題がある。それから、移った場合でもさきに通っていた学校に対してその移転先を通知しないでほしいとか、いろいろ暴力を振るう夫に知られたくない状況というものもございます。
 子供の就学をめぐりまして文部省の方では何らかの配慮があってしかるべきだと思うのですが、これまでどのように対応されてこられたか。それからまた、こういう問題はふえると思いますので、これからどのように対応されるおつもりなのか、お尋ねいたします。

○政府委員(辻村哲夫君) 子供たちの就学は、今先生御指摘のとおり、住民基本台帳法に基づきます住民基本台帳に基づいて教育委員会が学齢簿をつくります。その学齢簿に基づきまして就学すべき学校が決まってくる、こういう仕組みでございます。
 したがって、原則は移動があった場合には転入届をする、それが基本台帳に記載され、学齢簿に移っていくということなのでございますが、住民基本台帳法が制定された当時も今のような議論がございまして、やはり原則は原則、そのことによって義務教育という大事な行政をきちっとするということで厳格な対応が必要であろうという一方で、子供が教育を受けるということも非常に大切だということです。
 原則はそうでございますけれども、何らかの手続等で記載されていない場合であっても教育委員会が学齢簿を作成して、それに基づいて学校を指定して就学を認めるということも結構ですというあわせた通知をいたしております。その線で私どもこれまで参りましたし、これからもそうしてまいりたいと思います。
 それから、それは教育委員会段階の問題でございますけれども、学校は、その子供の健康状況とか学習活動の状況を記録いたしました指導要録というのがございまして、それを転校に伴って移動させますが、それは学校がその相手に対しまして秘匿するということをきちっとすれば防げるのではないかと思いますので、そんな形でこれからもやってまいりたい、こう思います。

○大森礼子君 文部省に対しては以上です。
 次に、厚生省にお尋ねするのですが、先ほど婦人相談所の問題につきまして森下委員、それから仲道委員が問題提起をされました。全くその意見と私は同じ意見でございます。それから、婦人相談所の根拠規定というのが売春防止法の三十四条であるということ、それにもかかわらず、現実問題には対応せざるを得なかったので保護を広く広げてDVの場合にもという、こういう御説明なのですが、これは根拠規定を売春防止法に置くということ自体現実と合致していないのではないかと私は思うわけです。
 それで、先ほどの質疑の中で、森下委員の方からも売春防止法から切り離して何か公のセンター、こういうふうなものにすべきではないかという質問に対して厚生省は、売春の態様が多様化、潜在化しており、今日においても存在理由ありというふうにおっしゃるわけですけれども、本当ですか、これはもう存在理由がないんじゃございませんか。厚生省にお尋ねいたします。

○政府委員(炭谷茂君) 現在の売春防止法の機能でございますが、先ほども引用させていただきましたけれども、総理府の売春の状況報告書、これは年次報告書でございますけれども、それを見ましても、最近の売春の状況というのは潜在化し、また日常化しているという新たな状況があるわけでございます。そのような観点から、やはり売春防止法に基づく施策の重要性というものは今日なおあるだろうというふうに考えております。
 現実に数は少なくなっておりますけれども、売春に対する相談もしくは保護については、現在、婦人保護施設においても売春歴のある人、売春のおそれのある人の保護も現実に行われております。

○大森礼子君 要保護女子ですか、それは確かにそういう根拠規定があるわけですから保護はされているんでしょうけれども、売春というのは広く行われているんです。ただ、制定当時とはどう違うかというと、違法性の認識がだんだんなくなっている。
 今度、超党派で児童ポルノ禁止法案を提出するわけですけれども、本当に援助交際というふうにどんどん年齢が下がっていく。だから、そういう違法性の意識というのがだんだんなくなってきますから広がる傾向にある、それはそうなんです。だからこそ、特別に売春という問題に限る必要はないのではないかということも申し上げたいわけなんです。その一つの内容として売春問題というのを取り上げればいいのではないかということです。
 それから、実際に、いただいた資料の三ページでしょうか、「婦人相談所が受けた相談内容及び件数」の中で売春関係といったらどれになるんでしょうか。「その他」のところで「売春強要」が全体の〇・四%、これは多分自分が強要する癖があるといって相談したケースはないと思いますから、強要されたといった相談だろうと思います。それから売春防止法五条違反が〇・五%、それから不純異性交遊、これも売春予備軍といっては変ですけれども、これらが関係あるんでしょうか。この数値を合わせましても現実に機能していないではないか、数字から見まして。機能していないという言い方をしちゃいけないんですね、メーンな目的ではなくなっているということを申し上げたいわけです。そういう実態というのはもうおわかりになっている。
 他方で、ほかに根拠規定がないからどんどん現実問題に対応していかれている、これは評価するのですが、そうであるならば、時代の流れというのを一番関知し得るのも現場なわけですから、もう審議会がどうのこうのとか、それを待ってというのではなくて、現場の意見として厚生省の方から、もはやこの売春防止法だけの規定では時代錯誤です、時代に合っていませんよ、我々も仕事がやりにくい、こういう形にして例えばDV問題でも保護を図るべきではないでしょうかという意見が出てしかるべきだと思うんです。それを何かどこか審議会が決めるのを待って、総理府の何とかを待ってというのは、現場を扱われる厚生省の御意見としては何か非常に主体性がないように思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府委員(炭谷茂君) 確かに、現在の婦人相談所における対応ということは現実的な要請から行ってきております。
 まず、現実問題で売春を行うおそれのある相談というのはそのうちどれだけあるんだろうかということについて数字だけ御紹介させていただきますと、約二五%、四分の一程度は売春歴があるとかもしくは売春を行うおそれがあるというような数字でございます。ですから、ある程度の数というものは現実に婦人相談所で扱っているという問題がございます。
 そこで、現場から、また厚生省自身からこのようなものに対して発言していくべきじゃないかという御指摘でございます。
 これについては、ドメスティック・バイオレンスというのは、福祉サイドだけの問題というものよりももっと幅広いいろいろな問題があるというのが現実の姿でございます。事実、いろいろな専門書を読みますと、いろいろな諸外国の法制を見てみますと、福祉だけの対応というよりも、むしろ人権的な問題もしくは人身保護的な色彩の強いというような法律を持っているようでございます。
 このような問題について、先ほど来言っております審議会での中間取りまとめ、今後さらに検討されていくというふうに承知しておりますので、その場での御議論にゆだねたい、その議論を見ていきたいというふうに思っております。

○大森礼子君 ドメスティック・バイオレンスにはいろんな側面があるのは確かです。いろんなとらえ方ができます、人間の一つの行為ですから。ただ、とりあえず逃げてこられた場合にどう対応するかという点につきましては、やはりそこは厚生省がもっと積極的に言ってもいいと思うんです。
 それから、売春防止法に根拠を置くということは、今、売春歴がある人が二五%とおっしゃいましたけれども、先ほど言いましたように、売春自体がそれほど違法性の意識がなくなっているということがありましたから、ふえても別におかしくないと思います。
 それから、夫からの暴力を受けて逃げてこられた方とかそういう相談を受ける方、いろんな相談内容も複雑多様化していると思います。そういうときに、そういう婦人相談所へ行く場合に、これが売春防止法上の施設だということは相談に行く方自体もそのような目で見られることになりまして、そういう観点からも、やはり相談が売春関係以外にふえておるのであれば中身を変える必要があるのかなというふうに思います。
 時間の関係がありますので、通告の一つですが、夫の暴力から逃れて生活する母子、親子は、離婚でもしない限り母子家庭ではないことからいろんな経済的支援が受けられないという問題がございます。
 それで、米山参考人からも、児童扶養手当にしても別居後一年以上、これも遺棄されてからということですが、でないとだめとか、それから母子寮など公的な住居の入居条件も離婚が前提になっている場合があって、暴力被害女性が支援を受けられない現状が多々あるという意見陳述がございました。
 こういう点について、厚生省としてはこういう不都合を改善できないものか、厚生省の御意見をお伺いいたします。

○政府委員(横田吉男君) 児童扶養手当の支給対象といたしましては、父が死亡した場合でございますとか父母が離婚した場合のほかに、父が拘禁された場合あるいは生死不明の場合、これらは一年以上ということになっておりますが、こういったことと同じように、遺棄の場合につきましても一年以上遺棄されている方につきまして支給するというような要件になっております。
 遺棄の一年以上の期間が長いのではないかという御指摘でございますけれども、本来児童そのものを養育するのは父母の責任というような民法上の体系の中で、どのような場合を遺棄とするかについては、父が出た場合、母が家を出た場合、いろいろなケースがある中で、対応が大変難しい問題の一つになっております。そういった支給するかどうかを決定する一つの要件といたしまして、多様な状況の中にこの一年というケースをもって判断しているということでございます。
 これらにつきましてどうするかについては、生死不明の場合あるいは拘禁されている場合等も含めまして、検討する必要があるかと思っております。
 また、母子生活支援施設への入所の要件でありますけれども、これにつきましては、法令上も、配偶者のない女子、離婚した場合あるいは死亡した場合のほかに、これに準ずる事情にある女子ということで、離婚まで至っていないけれども入所を必要とする母子、あるいは夫の暴力等から逃げてきたというような場合も含まれますので、ちょっとその点はつけ加えさせていただきたいと思います。
 また、入所につきまして、原則は住んでいた住所地の福祉事務所を通して申請するという形になっていたわけでありますけれども、このたび私ども弾力化いたしまして、他の府県に逃げてきたというような場合につきましても、その逃げてきた先の住所地の福祉事務所を通じてその地の母子生活支援施設に入所ができるように改善をしたところでございます。

○大森礼子君 以上です。

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 厚生省にお聞きをしたいんですけれども、最初に、婦人保護事業が売春防止法の適用によってなされているという問題、先ほどから御議論ある問題です。
 現在、婦人保護事業への相談件数のうち、必ずしも売春を行うおそれがあるとは言えないもの、いわゆる売春防止法の対象外に当たるもの、これは全体のどのくらいの割合かということなんです。先ほど七五%という数字もございましたけれども、新しい数字ではもう少し多くなっているのではないかというふうにも聞いておるんですが、いかがでしょうか。

○政府委員(炭谷茂君) 婦人相談所における相談者で、売春のおそれのない者の割合でございます。
 先ほどちょっと丸い数字で申し上げましたけれども、正確な数字で申し上げますと、平成九年度では七七・九%になっております。

○小池晃君 先ほどから御議論あるように、こうした問題に売防法で対処するというのは、これは現実にかみ合っていないということは明らかだと思うんです。性質の違う法律を拡大解釈して一時しのぎに対応するのはやはり限界ではないか。
 先ほど、現実的、弾力的にというお話もありましたけれども、例えばこういうケースもあります。
 夫の暴力を逃れて施設に入所した妻に対して、夫が裁判所に人身保護を請求して裁判所がこれを認めて、夫に引き渡さざるを得ない、こういうケースが起こっているわけであります。
 不当な暴力から救済を求めてきた女性を、法的には売春を行うおそれのある女子としてしか扱えない、こういうことの矛盾があらわれているのではないかというふうに思います。法的整備を検討されているということですが、これはぜひやるべきだということを申し上げたいというふうに思っております。
 その上で、現実の問題として、現在担っている婦人保護事業と母子家庭生活支援事業についてお聞きをしたいと思うんですが、最初にこの量的な問題であります。
 婦人相談所併設の一時保護所についてでありますけれども、厚生省から数字をお聞きしたんですが、これを見ると、入所者の数が、九三年度は三千七百四十四人、これから年々ふえて、九七年度には四千六百六人というふうに聞いております。ところが、一時保護所の定員数は、九三年に六百五十人だったのが、九七年には六百三十八人と減っているわけであります。
 これは一体どうしてでしょうか、お聞きしたいと思います。

○政府委員(炭谷茂君) 現在、婦人相談所につきましては、今、先生の申されましたように、先ほども資料の四ページの措置件数という数字で本日御紹介させていただきました。確かに措置件数は増加いたしております。
 そこで、これについて対応が十分かどうかということについて申し上げますと、全国的な数値で申しますと、ほぼ対応できているんじゃないか。もしこれが地域によっては対応できていないところがあれば、それは申請があればそれについて対応していくということは私どもとして考えたいと思っております。
 また、婦人保護施設についての実情を御説明いたしますと、婦人保護施設については、現在、定員について実員の占める割合というのは現実には半分以下になっている。いわば半分以上があいているという状況でございます。

○小池晃君 地方によって空き部屋を整理する必要がある、それは確かにあると思うんですが、入所者の総数が一・二倍にこの五年間でふえてきているわけであります。特に、都市部では公的な施設を拡充する声は高まっているのではないでしょうか。今度、総理府が初めてDV被害の全国調査を行うわけですけれども、ぜひその結果も受けて施設拡大、そういう方向でイニシアチブを発揮していただきたいということを申し上げたいと思います。
 その上で、その内容の問題なんですが、数だけではなくて中身の充実も非常に重要だと思うんです。特に、DVの被害者の場合は心理療法などの精神面のアフターケアというのは非常に大事だ。これは精神科医を配置されていると言いましたが、週一回なわけです。そういうこともあるし、また相談所の方ですけれども、心理学判定の専門家を配置するということになっております。
 ところが、その専門家の要件というのが「大学において、心理学を専修する科目を修めて卒業した者」、こういう基準になっておりまして、だとすると、ほとんどの大学を卒業した方というのは大体心理学を履修しているのではないか。私も実際履修をしているわけですけれども、それで専門家というのはちょっとこれは余りにどうなのか、十分な配置基準と言えるだろうかという問題です。
 先日、この調査会で調査した兵庫県の県立婦人相談センターの実態を見ても、三人の婦人相談員は非常勤の嘱託である、一人配置されている心理判定員というのも、これは県立中央こどもセンターと兼務だと。ふだんはこどもセンターの方にいて事態があるたびにやってくる、その都度その都度来るんだ、そういうことだったそうであります。これはぜひ充実改善が必要ではないかと内容的な問題を見ても思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府委員(炭谷茂君) 婦人相談所におきましては、精神的また心理的な判定を行うということがケアを行う場合の前提だろうというふうに考えております。そのためには、心理判定員また精神科医の適切な配置というものが必要でございます。ですから、このような人たちの配置ができるよう私どもも都道府県に対して指導してまいりたいというふうに考えております。

○小池晃君 ちょっと余り質問に答えられていないような気がするんです。
 今の基準では不十分ではないか。ちょっとつけ加えさせていただきますと、婦人相談所は精神科医の配置も週一回、婦人保護施設については精神科医は月一回か二回の配置でいいということであります。それから、先ほど言ったように、心理学判定の専門家というのもかなり基準としては不十分なのではないかと思うんですが、この辺について改善する御検討の余地はないのかということでございます。

○政府委員(炭谷茂君) まず、心理判定員の適切な人員の配置につきましては、確かに現在の要件と申しますのは、先ほど述べられましたように大学の心理学を履修した人間というふうになっているわけでございます。その中でも、やはり現在の婦人相談所の業務は複雑化また困難性が増してきておりますので、より適切な人間、また配置後も研修等の機会で適任者を得るというような、配置するということが重要だろうというふうに思っております。
 また、精神科医の配置につきましては、それぞれの実情、例えば判定事務の多いところにつきましてそれぞれの県で御苦労をしていただいております。例えば、具体的に申しますと、東京都など非常にドメスティック・バイオレンスが多いところについては医師が五人配置されているような形で、いろいろと工夫をされております。
 そのような実情を見ながら、私どもとして対処してまいりたいというふうに思っております。

○小池晃君 続いて、母子生活支援施設の問題についてお聞きをしたいと思います。
 母子生活支援施設にDVの被害者を受け入れるということですが、これは保護施設として見た場合に、私も北海道の民間シェルターを見学してきたんですが、加害者の男性から入所者を守る警備システム、場所を明らかにしない問題であるとかあるいは警備のシステムであるとか、そういうことが非常に大切なんだというお話も聞いております。それから、先ほどからもお話のある精神面のケア、こういった独自の整備も必要なんではないかなというふうに思うんです。
 広域事業を実施される、これは確かに大切なことで必要な措置だと思うんですが、こういう警備の問題などについてどう保障されるのか、どういう対策を考えられているのか、お聞きしたいと思います。

○政府委員(横田吉男君) 夫の暴力等から逃げてきた場合、広域入所ということによりまして地域が離れますので、その点で取り返しとかそういった点がやりにくくなるのではないかということが一つ。
 それから、母子生活支援施設の中におきます警護体制でございますが、特に夜間の管理体制につきましては、職員による宿直あるいは警備員の常駐等で現在対応を行っているところでございまして、こういった点で、ただ夫が取り返しに来ましても直ちにこれに応ずるということがないように体制を整えているところでございます。

○小池晃君 ぜひその点は強めていただきたい。
 それから、これもまた数の問題になるんですが、母子生活支援施設、これの定員数と現在入所している現員数を調べさせていただきました。
 例えば、政令指定都市でいいますと北九州市、ここは定員が八十人に対して現員が八十人、これは九八年四月一日現在ですけれども一〇〇%、いっぱいなわけであります。都市部を見ますと、政令市全体で定員に対する現員率、入所率というのはやはり九八年四月一日現在で八六・七%、九割近い数になっております。
 こういう状態の中で、これから激増、今もふえていると言われているDV被害に遭った母子を果たしてスムーズに収容できていくのかということが大変心配されるのではないか、そういう今の実情に応じた施設拡充、こういう方向で政策的なイニシアチブを発揮すべきではないかというふうに考えるんですが、これはいかがでしょうか。

○政府委員(横田吉男君) 現在の母子生活支援施設の定員に対する入所者数といたしましては、全体として七〇%程度ということでございますが、御指摘いただきましたように大都市部、特に政令市等におきましては比較的入所率が高くなっている。特に、個別に見ますと、北九州市におきましては定員が八十でございますが入所者数が八十名ということで一〇〇%、この一カ所でございますが、あります。
 こういったところにおきまして施設が不足であるということであれば、その整備等につきまして私ども積極的に支援をしてまいりたいというふうに考えております。

○小池晃君 ぜひ厚生省の方でイニシアチブを発揮していただきたいというふうに思います。
 それでは、最後に民間シェルターの問題についてお聞きをしたいと思います。
 民間シェルターの経営の困難さということは、当調査会の参考人質疑でもるる語られた問題であります。また、先ほど御議論もございました。公的な機関と民間シェルターの連携、これは非常に大切なことなんですが、このことで民間シェルターの負担が過重になってしまう、そういう事態が現実には起こってきているのではないかというふうに思うんです。
 これは私が札幌で調査した民間シェルターの例なんですが、市役所の発行物に御相談はここへということで電話番号まで載せてもらった、そうなったらば逆に役所の窓口からの直接依頼もふえるし対応が非常に大変になってしまった、大わらわになってしまったというようなお話をお聞きしました。
 本来は公的機関がするべきことを民間シェルターが肩がわりしているような実態も、全体として数は公的なものが多いというふうに先ほどお話がありましたけれども、そういう側面もあるのではないか。さまざまな実態があるから一律な助成ということにはならないというような趣旨の御説明もありましたけれども、やはり一定の基準を設けて国が助成していく、財政的支援をしていく、こういう必要もあるのではないか、検討すべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府委員(炭谷茂君) まず、このようなドメスティック・バイオレンスに対する対応については、やはり全国どこでも一定水準のものが常に基本的に確保されるという体制をとっていく。そのために、私どもとしては婦人相談所、また婦人保護施設、婦人相談員という三つの制度を現実に使いまして対応しているわけでございます。
 これに対して、民間シェルターはそれぞれ大変特色のあるまた立派な活動をされているということについて承知いたしております。
 ただ、先ほど来の御回答に重複するわけでございますけれども、それぞれの特色があり、またそれぞれ非常に変化に富んでおります。ですから、これについての財政上の援助というのはなかなか制度に乗りにくいところがあろうかと思います。
 ただ、いずれにいたしましても、これは現在の審議会で、対策のあり方ということで中間取りまとめ以降さらに検討されるというふうに聞いておりますので、その審議状況を待ちたいというふうに思っております。

○小池晃君 最初に申し上げました適用法の問題、根拠法の問題からして、これは行政側の責任によって現場に混乱が生じているという問題だと思いますし、民間シェルターの今の実態というのも、行政のすき間で大変な状態に陥っている方を救うためにやむにやまれず起こっている運動という意味でいうと、実態はさまざまであれ公的な支援の手を差し伸べる、そういう方向で動くべきだというふうに思います。そのために必要な基準を設けてやっていくことがやはり必要なのではないか、そのことを申し上げた上で、質問を終わりたいと思います。

○福島瑞穂君 きょうは、売春防止法に基づいてドメスティック・バイオレンスに苦しんでいる女性を救済しているという点の矛盾と限界がかなり出たと思うのです。
 例えば、婦人保護施設に収容された女性は、訓練施設ですから、生活訓練などを受けなければならないというふうに聞いております。夫の暴力に苦しむ女性にはそういうことは不要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○政府委員(炭谷茂君) 婦人相談所、婦人保護施設においてそれぞれプログラムを組みまして、それぞれの人に適切な生活指導を行っているということでございます。それは当然その対象となっている方々のアセスメントを行っての上のことでございますから、その人が必要でない、特に今先生が御指摘されたようなドメスティック・バイオレンスの人に通常の生活指導が必要かどうかということは、その人によっては必要がないという場合も多いんじゃないかなということでございまして、一律のメニューを提供するということはないだろうというふうに思っております。

○福島瑞穂君 民間シェルター、特にシェルターへの経済的サポートなしではなかなか大変だと思うのです。
 例えば、私はたまたまHELP、アジアからの出稼ぎ女性の緊急避難所の協力弁護士の一人なんですが、HELPでも約半数の入所者が日本人女性なんです。そのうちの九〇%が女性相談センター待ちで、さらにその中でも自立しにくい女性、高齢者、知的障害が多少見られる女性などの入所が後回しにされる傾向があります。結局、婦人相談所に入れない人がHELPやNGOのシェルターに入ってくるという状況があるのですが、それを踏まえてもなお公的援助というのは難しいでしょうか。

○政府委員(炭谷茂君) まず、私として、今先生が御指摘されましたように、本来やはり基本的に公的な施策、基本的なものは全国どこでも必要な人に対してケアが提供されるべきであるというふうに思っております。
 ですから、婦人保護施設また婦人相談所の一時保護でできないというのは、先ほど例に引きましたけれども、何か暴力の夫から追跡されて一時的にかくまってもらうために民間シェルターの応援を求めるというような場合は合理的でありますけれども、公的な施策が適用できるにもかかわらず民間に移すということはいかがだろうかということで、公的な施策で対応していくということがまず何よりも重要だろうというふうに思っております。
 それから、民間シェルターに対する援助につきましては、これは先ほど来申しておりますように、政府全体での審議会が中間報告以降現在さらに継続的に検討をされておりますので、その検討を待って考えていかなければいけないというふうに思っております。

○福島瑞穂君 その婦人保護施設が特に東京などでは満杯状態で、それからあふれてしまうという現状がある中で、公的なところも不十分だと思いますが、いかがですか。

○政府委員(炭谷茂君) まず全国的な数字から見ますと、例えば平成九年度を見ますと、定員が千五百九十四名ありまして、在所者数は七百二十一名でございます。定員に対する充足率は四五・二%で、約半分以上があいているという全国的な状況がございます。
 しかし、問題は東京でございます。東京についてはたしか五カ所か六カ所程度公的な施設、これは千葉県の館山市にも、圏外につくっているものもございますけれども、現実を見てみますと、私も東京の婦人保護施設を訪れたことがありますけれども、やはりこのような先ほどの全国的な数字ではない状況だろうと、かなり入所者がいらっしゃいます。
 ですから、これについて一部の都府県においては、このようなものは必要に応じて、もし不足しておればさらに増設ということについて御計画があれば、私どもとして対応していきたいというふうに思っております。

○福島瑞穂君 ドメスティック・バイオレンスが非常に社会的な問題であるにもかかわらず、逆に七百何十人しか入所していないということの方が問題、アクセスか施設に問題があるのではないかと逆に思うんですが、いかがですか。

○政府委員(炭谷茂君) まず、先ほど来この調査会の御審議をお聞きしていまして、やはり売春防止法の施設であるということも一つのネックになっているのかなというふうにも思います。入りにくいところ、相談しにくいところがあろうかと思います。
 ですから、都道府県によっては施設の名前を例えば女性センターとか、いろいろとそういうものをなくすような、入りやすいような名前をつけていらっしゃるという工夫もされています。そしてまた、電話での二十四時間、休日での対応もされております。
 ですから、もう少し婦人相談所、婦人保護施設を気安く利用していただく、そのために例えば福祉事務所なり民生委員の方々についても知っていただいて、利用しやすいような施設サービスにしたい、そういうもので一層努力していきたいというふうに思っております。

○福島瑞穂君 婦人保護施設はどうしても法律上の建前とずれているというところで問題を抱えていると思うんです。あるいは、やはり門限やさまざまな管理という面がありますから。
 もう一方で、NGOに対する補助についてはやっぱり渋いというか、答えが出てこないので、結局なかなか両方の面からドメスティック・バイオレンスになかなか対応しにくいと思うのですが、厚生省はそれはどう考えていらっしゃるのでしょうか。

○政府委員(炭谷茂君) まず、民間のシェルターの役割でございますが、これは非常に貴重な存在だろうと。特に、先生も実際に民間のシェルターの顧問弁護士をHELPの方でされておるというふうに私どもも聞いております。
 そのような活動を見てみますと、実際に世話をされている方が被害に遭った方、実際に苦しまれた方が世話をされている。そして、自分たちで施設を手づくりでつくられているというふうな努力をされていると私ども大変感心して、感服もいたしております。
 ただ、これと公の施策がうまく補い合う、またむしろ私ども公の施策はもっと基本的なものをさらに充実させていく努力を一層続けさせていただきたいと思いますけれども、助成については、先ほど来申しましたように、厚生省だけでの検討ということから離れまして現在政府部内で検討されておりますので、その検討を待たせていただきたいというふうに思っております。

○福島瑞穂君 一九九九年四月一日の通達があり、大変評価をするものです。
 ただ、例えば外国人、特に超過滞在の外国人受け入れについて入国管理局に通報することを求めていらっしゃいます。そうしますと、外国人の女性などは通報されるということを考えてむしろNGOの施設などに入りにくくなるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○政府委員(炭谷茂君) まず、不法滞在の場合の通告の関係ですけれども、これは公務員としての義務にかかっておりますので、ある意味ではやむを得ないところがあろうかと思います。
 ただ、今先生おっしゃいました、私ども通達でそれを明記しているかどうかということについて、今手元に持っておりませんのでちょっとお答えしにくいところがございますけれども、不法滞在についての扱いというものについてはどうしても公務員としての制約というものはあろうかと思います。ただ、緊急的な保護というものについて、婦人保護施設において対応しているということはございます。

○福島瑞穂君 外国人の女性は逆にそういうNGOのところに入りにくくなると思うので、この点はぜひ御検討ください。
 というのは、通達は、「事前に入国管理当局に連絡し、引取りが確実に見込まれる等一時保護の要件を満たしていることを確認すること。」とありますので、この点は再検討をお願いします。
 それで一点、時間をオーバーして済みません。ちょっと通告外なんですが、せっかくですので文部省に質問をさせてください。
 先ほど、教育の中のジェンダー教育ということをおっしゃって大変心強く思ったのですが、例えば男の子あいうえお順、女の子あいうえお順ではない男女混合名簿について文部省はどう考えていらっしゃるのか、推進されるお立場なのか。
 もう一つ。例えば、中学校なども男の子はズボン、女の子はスカートという標準服があるのですけれども、客室乗務員でもスカート、ズボン両方はいていますので、基準服などもジェンダーを強調するのはやめたらいい、選べるように、ズボンをはきたい女の子はズボン、スカートをはきたい女の子はスカートでもいいと思うんですが、そういう点についていかがお考えでしょうか。

○政府委員(辻村哲夫君) いわゆる混合名簿について、あるいは各学校におきます生徒たちの制服の問題でございますけれども、これは男子女子問わず、私どもは各学校の指導のあり方の問題として対応していっていただいたらいいというふうに思っております。
 先ほど、日教組の調査結果を報告いたしまして、全国、幼稚園から高等学校までで四割ぐらいが今混合名簿になっているということであったわけでございますけれども、文部省としてそれぞれの学校が画一的にこうあるべきということを言う立場にないのではないか、ただ、こうしたところでこういう御議論があるということは情報として伝えつつ、各学校の判断にゆだねるべきものと私たちは思っております。
 一方、制服につきましても、これは指導のあり方の問題としてどうあるべきなのか、校則の問題その他含めまして各学校において考えていくべき事柄であろう、こういうふうに思っております。

○会長(石井道子君) 時間です。

○福島瑞穂君 最後に一言。
 男女共同参画社会基本法案も教育における男女平等がありますので、確かに学校内の自治の問題はあると思いますが、ジェンダー教育を進めると力強くおっしゃったわけですから、ぜひその観点から進めていただけるよう要望して、質問を終わります。

○入澤肇君 ドメスティック・バイオレンスとかセクハラについての現状なり対応策につきましては、きょう非常にいろんな質問が出たわけでございまして、私からその背景とか原因とか理由について、今言われていること、総理府の人権擁護に関する世論調査、それから野村総研の調査結果をもとにしまして幾つか御質問したいと思います。
 女性が職場で十分な能力を発揮できる、男性優位の社会を緩めていくあるいは直していくということのために一番必要なのは、やっぱり女性が働きやすい職場をきちんとつくることですね。
 そういう意味で労働省にお聞きしたいんですが、民間部門はともかくとしまして、まず役所の公的な部門でいわゆるライン制をスタッフ制に切りかえると。産前産後の休みの後女性が職場に簡単に入り込めるためには、今の場合、課長、課長補佐、係長、こういうふうなライン制ですが、そういうのを一切やめまして、テーマごとのプロジェクトチーム方式を役所の組織の基本に据えたらどうかと思うのですが、いかがでしょうか。

○政府委員(藤井龍子君) 役所の組織の話になりますと、労働省というよりは総務庁の所管になるかと存じますので、何とも私の方からはお答えしかねるところでございますが、民間の企業では情報化の進展あるいは国際競争が大変激しくなっているという中で、そういう職階を非常に簡単にしていく、臨機応変にいろんな問題に対応できるようなプロジェクトチーム方式あるいはスタッフ方式にかえるというようなのは傾向としてかなり出てきているようでございます。
 ただ、これはもう民間企業の経営上の必要性でそういうふうにおやりになっていらっしゃるわけでございまして、そういう中で女性も昇進しやすいというか管理職に登用されやすい雰囲気が出てくればいいのかなと私は考えているところでございます。

○入澤肇君 これは何も総務庁の問題じゃなくて、文部、厚生、労働、皆さんに関係するのかもしれませんけれども、男女共同参画社会基本法だとか、女性の問題について地位の向上とか何か言う場合に、どうも聞いていて抽象的で、大体総論的なんですね。世論の受けをよくするために美しい言葉で語ればいいじゃないかというような感じがありまして、もう一つ非常に不満足なんです。
 私は、この仕組みの中で、具体的に男性優位社会を崩していくためには何が問題かということについて各省がもっと真剣になっていいんじゃないかと思う。今、ライン制からスタッフ制へ移行させるということは、私も自分の経験の中で極めて重要じゃないかと思いましたので御質問したわけでございまして、ひとつ十分に検討していただきたいと思うんです。
 それから、もう一つ大事なことは、単に平等を追求するというけれども、男女それぞれ肉体的にも心理的にもかなりの差がありますね。そういう能力についての科学的な認識の上に立った真の平等の追求ということをどこまで考えておられるか。男女の能力についての科学的な研究というのは、労働省、厚生省、文部省それぞれどのくらい、どういう研究が行われているかについて端的にお聞きしたいと思うんです。

○政府委員(藤井龍子君) 均等法の理念としておりますのは、先ほど来出ておりますようにジェンダーの問題ということで、社会的、文化的に出てきている性差別というものをクリアするということでございます。
 生理的なといいますか肉体的な男女の差というのは、これはおっしゃるとおりあるであろうということで、例えば職業の能力がどうであるかとかなんとかということにつきましては、ちょっと私今データがございませんので具体的にはお答えしづらいところがございますが、そういう生理的、肉体的な観点からの研究というのは必要な部分もございますので、私どもそれなりに研究は進めていかなければいけないと思っておるところでございますが、今のところ私どもの女性局におきましてはそういうような観点からの調査研究はちょっとないという状況でございます。

○政府委員(小野元之君) 文部省としては、先ほど御報告申し上げましたように、大学等におきます女性学、あるいはジェンダーについてのそういった科目の開設がかなりふえてきておるわけでございます。特に、先ほど女性の能力のお話がございましたけれども、例えば一つの例でございますが、いわゆる女性の校長先生の割合でございますけれども、平成元年には二・七%でございましたけれども、平成九年では九・四%までと、かなりふえてきております。
 これはまさに女性の校長の役割というのもかなり広がってきているわけでございまして、文部省としてはそういった性による差別といったものがなくなるように、むしろ積極的に女性の能力が活用されるような支援をしてまいりたいというふうに考えております。

○入澤肇君 なぜこんなことを言うかといいますと、総理府だったと思うんですけれども、高齢者と六十四歳未満の方々の生産性の比較というのをやったことがあるんです。要するに、高齢者になると生産性が低いから給料を低くしてもいいんだとか、あるいは退職させてもいいんだということに対して、本当にそうなんだろうかと調べましたら、ある一定の部分においてはむしろ若年層より高齢者の方が生産性が高い、まず間違いが少ないというふうな結果が得られている。
 私は、男女の平等を本当に言うのであれば、男女の能力について、男性にない能力を女性は持っていることがありますし、多分に持っていますし、それから女性にない能力を男性は持っている。そういう意味で、科学的な認識の上に立った真の平等を追求すべきだし、またその上で対価の算定方法、主要労働と補助労働に分けて対価の算定方法ももっと研究してしかるべき、本当の意味での平等を追求する政策を各省挙げてやっていくべきじゃないかと思うんです。
 そういうのがないと、いつまでたっても社会通念、慣習、しきたりから男性優位社会だということで、特別にドメスティック・バイオレンスとかセクハラとかいうことを問題にしなくちゃならない社会がいつまでも続くと思うんです。社会の根本にある基本的な分野についての研究をぜひお願いしたいと思います。
 それからもう一点、文部省にお聞きしたいんですけれども、いわゆるジェンダー教育とかなんか言われていますけれども、公立学校において男女別学制をとっているところがございます、高等学校なんかにおいて。例えば、群馬県とか栃木県とか埼玉県、茨城県等はまだ今でも相当部分について男女別学じゃないでしょうか。この男女別学ということの教育的な効果についてどうお考えになっているか。

○政府委員(辻村哲夫君) 男女別学につきましては、特段これを禁止するあるいはこれを奨励する、両方ございません。したがいまして、それぞれの設置者においてこれが行われているところでございまして、地域によってでございますけれども、確かに高等学校を中心に何百かの学校が残ってございます。
 これにつきましてどういう教育上の評価を下すかというのは、それぞれの設置者において県民の意見あるいは保護者等の意見を聞きながら、それを維持していくのか、それを男女共学にするのかというのはそれぞれの各県ごとの判断にゆだねられているというのが現状でございまして、文部省がそれぞれの設置者の判断にそれをゆだねているというのが現状でございます。

○入澤肇君 先ほどの名簿の件といい、それぞれの設置者とかなんかにゆだねているというんだけれども、教育上そういうことが果たして適切なのかどうかということについてはいろんな研究所があるわけですから、私は文部省がこれも研究テーマにしていいんじゃないかと思う。一番思春期で異性に対する関心の高くなる高校時代に、私は男子校で育ったんですけれども、やはりこれは男女共学であった方がよかったんじゃないかということを思うこともしばしばあるんです。
 そういうふうないろんな角度からの研究をやっていただきたいと思う。こういうことも本件のドメスティック・バイオレンスとかなんかの背景の一つとしてぜひ究明すべき問題じゃないかと思います。
 本当はもっと聞きたいんですが、時間を過ぎると申しわけありませんので、時間厳守で終わります。

○会長(石井道子君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
    ─────────────

○会長(石井道子君) 次に、先般本調査会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。釜本邦茂君。

○釜本邦茂君 去る二月十六日から十八日までの三日間、徳島県及び兵庫県において、男女等共生社会に関する実情調査を行いました。
 派遣委員は、石井会長、溝手理事、直嶋理事、大森理事、林理事、福島理事、入澤理事、堂本理事、末広委員、仲道委員、森下委員、岡崎委員、輿石委員、高嶋委員、八田委員及び私、釜本の十六名であります。
 以下調査の概要を御報告申し上げます。
 一日目は、まず、徳島県庁において、県当局者から男女共同参画に対する取り組み状況と「女性による県議会」の概要について説明を聴取いたしました。
 徳島県は、昭和五十三年に「徳島県婦人行政連絡会議」を設置し、昭和五十九年には「徳島県婦人対策総合計画」を、また、平成三年には「徳島県女性対策総合計画」を策定し、女性行政を総合的に推進しております。さらに、平成九年には、二十一世紀に向けての女性行政の新たな指針となる「徳島県女性総合計画(女と男輝くとくしまプラン)」を策定し、共同参画社会の実現を目指しております。
 女性の政策・方針決定の場への参画状況の指針の一つである県の各審議会等への女性の登用状況は、平成十年六月一日現在で、委員総数に占める女子委員の割合が一八・二%となっておりまして、国の審議会等の女性委員の割合より若干高くなっております。
 平成十年七月に開催された「女性による県議会」は、「徳島県女性総合計画」が女性の政策決定の場への参画を主要課題として位置づけていること、平成十年度が国連総会で「世界人権宣言」が採択されて五十周年に当たることから計画されたもので、参議院五十周年記念行事の一環として開催された「女性国会」にもヒントを得たということです。ここでは、参加申し込みのあった百四十人から、抽せんによって県議会議員定数と同じ四十二人の女性議員が、「教育・人権」などの四つの委員会に分かれて意見を交わし、本会議で委員長報告を行っております。
 以上の点につき、派遣委員からは、「女性による県議会」の提言の県政への反映状況、県職員の女性割合と管理職への登用状況等について質問がなされました。
 午後は、まず、株式会社マルハ物産を視察いたしました。女性社長が活躍され、レンコン加工品については日本一のシェアを占めているということでありました。
 次に、徳島県立二十一世紀館、美術館及び博物館の視察を行いました。施設一帯は、文化の森総合公園として自然と施設が調和した公園となっており、多くの県民が訪れているとのことでありました。
 二日目は、まず、淡路島において「ジャパンフローラ二〇〇〇」の建設会場の視察を行いました。「ジャパンフローラ二〇〇〇」は、来年の三月から六カ月にわたって開催される国際園芸・造園博でありまして、人と自然のコミュニケーションをテーマとして会場建設が行われておりました。
 午後は、兵庫県公館において、県当局者と、阪神・淡路大震災後の復興状況等につき懇談した後、兵庫県立女性センターにおいて、まず、県側から男女共同参画に対する取り組み状況について概況説明を聴取いたしました。
 兵庫県におきましては、昭和五十二年に婦人対策室を設置し、平成二年に、男女共生社会の実現を目指す「新ひょうごの女性しあわせプラン」を策定、平成八年には「新ひょうごの女性しあわせプラン 後期実施計画」を策定し、施策の展開を図っております。
 兵庫県の審議会等への女性の登用状況は、平成十年三月末現在で女性委員比率が一九・八%となっております。また、同県は、女性を中心とした市民団体の活動が活発で、市民活動団体の数が平成八年で六千七百七十七団体と、全国でも群を抜いております。
 また、兵庫県立女性センターは、女性のための総合的な行政拠点施設として多彩な事業展開を行っております。女性に対する暴力については、相談室において相談を受け付け、「女性に対する暴力の相談機関ネットワーク会議」を開催して近隣府県の相談機関との連携体制を構築することにも取り組んでいるとのことです。
 以上の点について、派遣委員からは、女性からの相談に見られる阪神・淡路大震災の影響、女性に対する暴力の問題につき他府県と連携する意義等について質疑が行われました。
 次いで、女性に対する暴力の問題について、女性救済のための民間組織である日本DV防止・情報センター関係者及び兵庫県警察本部と、それぞれ意見交換を行いました。
 日本DV防止・情報センター関係者との意見交換では、カウンセラー、弁護士、民間シェルター、報道の各方面で、女性に対する暴力の問題に取り組んでいる方々の話を聞くことができました。ここでは、ドメスティック・バイオレンスが犯罪となりにくい状況、暴力家庭での世代間連鎖、民間シェルターの運営実態、アメリカの法制度と関連機関のネットワーク体制等について説明を聴取した後、DV被害者の保護救済策、男性が暴力を振るう理由とアメリカの再教育プログラム等について意見交換を行いました。
 兵庫県警察との意見交換では、警察における被害者対策の概要について説明を聴取し、警察官に対するジェンダー視点からの研修、女性に対する暴力についての現場警察官の対応等について質疑が行われました。
 三日目は、まず兵庫県立婦人相談センターの視察を行いました。
 各都道府県に設置されている婦人相談所は、売春防止法上の機関でありながら、事実上、夫の暴力から逃れてくる女性にとって公的シェルターの機能を果たすようになってきており、同センターでも、一時保護入所は夫の暴力から逃避したケースが三七・五%と最も多くなっております。
 派遣委員からは、女性の自立に向けての地域での支援体制、加害者である男性からの追及への対応等について質疑が行われました。
 続いて、芦屋市役所において北村芦屋市長と意見交換を行いました。北村市長は、平成三年四月に全国初の女性市長として当選されて、現在二期目を務めておられます。
 派遣委員からは、女性市長ゆえの苦労、女性職員の登用、阪神・淡路大震災に際しての対応状況等について質疑が行われました。
 以上の日程を通じて、日ごろ最前線で問題と取り組んでいる方々の話を伺い、意見を交わすことができ、有益な調査を行うことができました。
 最後に、今回の調査に当たりお世話になった関係各位の御協力に対し心から感謝を申し上げ、報告を終わります。

○会長(石井道子君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十二分散会