156-参-内閣委員会-19号 平成15年07月15日

平成十五年七月十五日(火曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 七月十日
    辞任         補欠選任
     高野 博師君     白浜 一良君
 七月十一日
    辞任         補欠選任
     谷  博之君     岡崎トミ子君
     山口那津男君     高野 博師君
 七月十四日
    辞任         補欠選任
     小林美恵子君     畑野 君枝君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         小川 敏夫君
    理 事
                亀井 郁夫君
                森下 博之君
                山下 善彦君
                長谷川 清君
                吉川 春子君
    委 員
                阿南 一成君
                岡田  広君
                竹山  裕君
                西銘順志郎君
                野沢 太三君
                山崎 正昭君
                岡崎トミ子君
                川橋 幸子君
                松井 孝治君
                白浜 一良君
                高野 博師君
                畑野 君枝君
                島袋 宗康君
                黒岩 宇洋君
   衆議院議員
       発議者      中山 太郎君
       発議者      荒井 広幸君
       発議者      西川 京子君
       発議者      福島  豊君
       発議者      井上 喜一君
       発議者      五島 正規君
       発議者      肥田美代子君
       発議者      近藤 基彦君
       修正案提出者   逢沢 一郎君
   副大臣
       内閣府副大臣   米田 建三君
       厚生労働副大臣  鴨下 一郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        鴫谷  潤君
   政府参考人
       内閣府政策統括
       官        山本信一郎君
       内閣府男女共同
       参画局長     坂東眞理子君
       文部科学省生涯
       学習政策局長   近藤 信司君
       文部科学省スポ
       ーツ・青少年局
       長        田中壮一郎君
       厚生労働省雇用
       均等・児童家庭
       局長       岩田喜美枝君
       厚生労働省年金
       局長       吉武 民樹君
       国立社会保障・
       人口問題研究所
       長        阿藤  誠君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○少子化社会対策基本法案(衆議院提出)

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○委員長(小川敏夫君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、谷博之君、山口那津男君及び小林美恵子さんが委員を辞任され、その補欠として岡崎トミ子さん、白浜一良君及び畑野君枝さんが選任されました。
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○委員長(小川敏夫君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 少子化社会対策基本法案審査のため、本日の委員会に政府参考人として、理事会協議のとおり、内閣府大臣官房審議官石川正君外十三名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(小川敏夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(小川敏夫君) 少子化社会対策基本法案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○亀井郁夫君 おはようございます。自由民主党・保守新党を代表いたしまして、一言質問をしたいと思います。
 私が申すまでもなく、この少子化問題というのは非常に大きな問題であり、皆さん方の御指摘のとおりでございまして、そういう意味ではこの法案というのは大変大事な課題だと私は思うわけでもございます。その意味では非常に時宜を得た法案だと思いますけれども、ただ、この問題についてはいろいろと世界観に絡むような問題もありまして、その意味では先ほどの、参考人の八木先生がいみじくも指摘されましたけれども、呉越同舟の法案だというふうに言われました。そのとおり、そういう点もあろうかと思います。
 衆議院において与野党審議された経過も読ませていただきましたけれども、皆さん方の答弁については不統一な面もうかがわれますので、これについて、今日は確認の意味を込めながら尋ねさせていただきたいと思うわけであります。
 衆議院で十分な審議を尽くされ、参議院でも尽くされてきましたので、そういう状況でございますけれども、衆議院の法案を参議院でそのまま通すということではありませんので、今日の質疑の状況を見ていろいろとまた影響も出てくるんじゃないかと思いますので、慎重な御答弁をお願いしたいと思います。
 まず最初に、本法案の制定の趣旨でございますけれども、少子化対策基本法でなしに少子化社会対策基本法となっております。この社会が付くと付かないでは、この前も質問ございましたけれども、少子化を防ぐための施策の基本法なのか、あるいは少子化になっちゃった社会における基本法なのかということで、意味が違ってこようかと思うわけでありまして、そういう意味では、少子化してしまった社会の対策であれば、例えば人口減に伴う労働力の確保というのは日本の発展のためにも大事でございますし、そういう意味では雇用という問題が、雇用確保というものが大きな問題になり、外人の移入という問題も大きな問題になろうかと思うわけでございますけれども、この場合、この法律はいずれを目的にしているのかと。少子化を防ぐためなのか、少子化社会における基本法なのか、これについてお答え願いたいと思います。

○衆議院議員(中山太郎君) 亀井委員にお答え申し上げます。
 少子化社会対策の主たる内容は、急速な社会化の進展に歯止めを掛けるための施策でございまして、少子化対策にほかなりませんが、現に存在している少子化という現実に対処するために、第二条第四項において、社会、経済、教育、文化その他あらゆる分野における施策が少子化の現況に配慮し講ぜられるべき旨を規定しており、これが少子化対策以外の少子化社会対策であると理解をいたしておりますし、委員御指摘のように、外国人労働者の受入れなどによる労働力確保のような問題は、このような施策の一環として慎重に検討されるべき課題であると考えております。
 本法案における少子化社会対策とは、基本理念の下に各種施策を有機的に関連させ、総合的施策の実施を施すものであり、少子化社会に向ける施策を講じつつ、少子化に対処するための施策を同時に推し進めることにより、少子化社会において生ずる諸問題を解決しようとするものでございます。

○亀井郁夫君 ありがとうございました。
 ただいまの説明ですと、この法案は少子化の進行に歯止めを掛けるということがポイントであり、同時に、そのことによって少子化した社会に対する対応にもなるだろうというふうな、主と従と言ったらなんですけれども、主はやはり少子化の進展を食い止めることなんだというふうな御説明だと理解していいかと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。

○衆議院議員(中山太郎君) 社会の個人個人にとってこの少子化という現象が、何十年あるいは百年というような長期のスパンで国家の形というものを政治は見ていく必要があると私は考えておりまして、そういった中では、この個人個人の問題もさることながら、国の形がどうなっていくかという問題が政治の大きな一つの課題であろうと考えております。
 その中で、個人の権利と自由、こういったものはもちろんございますけれども、家庭とかあるいは地域の協力とかいろんなものがございまして、そういうものが全部整備をされる、こういうことが非常に必要ではないかと存じております。

○亀井郁夫君 ありがとうございました。
 それでは、もう一つお尋ねしたいのは、この基本法の制定によってこの少子化問題が歯止めを掛けることができるのかどうなのか。今一・三二人という非常に低い数字になっている出生率でございますけれども、これを上げることができるのか、どの程度のことを皆さん方、考えておられるのか、お聞きしたいと思います。

○衆議院議員(中山太郎君) 御婦人方また御主人方の中で子供が欲しいと思っていらっしゃる方はたくさん世の中にいらっしゃいます。しかし、この出産ということは全く女性の方々にとっても大事業でございますから、そういった意味で、まず産まれるときの苦しみ、まあ産みの苦しみと申しますか、また生まれてきた子供たちを育てていくときの親としての心の苦労、また身体的な苦労というものがあることはお互い我々の社会の共通の概念であろうと思います。
 そういった中で、やはり生産年齢人口が二〇〇七年から減少を始めまして日本の生産力というものが落ちてくる可能性がある、この見通しをもって外国人労働者の問題が浮上してくるわけでございますが、働きたいと、働いている女性たちが引き続き働きながら子供を持ちたいと、こういう希望のある方には、社会の制度の中で早朝保育のできる保育所を駅前に作るとか、あるいは深夜の保育をしてくれる深夜保育所を作るとか、いろんな社会全体が取り組まなければならない、この個人個人のいわゆる喜びと苦しみを解決してあげる問題が政治の場に求められていると思っておりまして、そういう制度を整備していくということを基本に考えてこの法案を考え出したわけでございます。

○亀井郁夫君 今お話がございましたように、やはり日本の労働力問題を考えたときにはどうしても移民という問題に触れなきゃいけないという問題がございますし、そのことももう無視したんではないということでございますけれども、現にやはり世界各国の中でアメリカだけは余りこの少子化問題が問題になっていない。これは移民が随分自由であり、自由というわけじゃありませんが、大量な移民、移民が行われており、それがやはり国力の源泉になっているという形ですけれども、そうではない国においてはこの少子化が非常に問題になっていることも事実でございますので、それは必ずしも否定するものではないという話でございましたから理解しますが。
 それでもう一つ、この法案が既婚者を中心にした法案になっている。確かに、結婚しようがすまいが女性のいろいろなライフスタイルがあることはよく認めます、認めるところでありますけれども、この法案がすべて既婚者を対象にした法案になっておって、未婚者に対する対応が触れられていないという点を考えるわけでありますけれども、確かに出産という問題を考えますと、婚外、婚外の出産もあるわけでありますけれども、一応、一応常識的には結婚して、そして子供を作るというのが普通でございますので、そういう意味では未婚者が問題だと私は思うわけでありまして、日本の場合、御案内のようにやはり既婚率が随分減っている、未婚率が高いということと、そして晩婚率が高くなっているということが大きな課題だと私は思うわけでありますけれども、そういう問題に対して全く触れられていないということについてはどのようにお考えでしょうか。

○衆議院議員(中山太郎君) この法案、すべての個人が自ら結婚や出産を望んだ場合には、それが妨げられることのないよう、結婚や出産の妨げとなっている社会の意識、慣行、制度を是正していくとともに、子育てを支援するための諸方策の総合的かつ効果的な推進を図ることを目的とするものでございます。
 少子化をもたらす未婚化、晩婚化の原因につきましては、個人の結婚観、価値観の変化に加えまして、結婚の先にある育児の負担感、育児と仕事の両立への負担感、親から自立した結婚生活を営むことへのためらい等が考えられております。このために、子育て、仕事の両立支援などの子供を産み、育てやすい環境整備を進めるとともに、結婚は個人の選択に基づくものであることを前提としつつ、次世代の親作りとして、子供の生きる力をはぐくむための体験活動、若者の安定就労のための施策、男女が協力して家庭を築き、子供を生み、育てることの楽しさや意義に関する教育、啓発等の様々な取組を進めていくことが必要であると考えております。
 未婚化、晩婚化対策として以上のような施策を想定しているところでありまして、御指摘の未婚者に対する結婚紹介等につきましては、民間の事業が進展している中で、公的な取組に関しては地域の実情に応じた取組が検討されていくものと考えております。

○亀井郁夫君 ありがとうございました。
 今の、ただいまの御説明ですと、未婚者についても十分頭の中に入れて考えているんだということで、それについては、これに触れていないけれども十分やってほしいというお気持ちがあるわけでございますけれども、そういう意味では、やはりこれから、なかなか難しいことなんですけれども、結婚紹介等、今民間で繰り広げられておりますけれども、そういう問題についても真剣に取り組んでいかないとこの未婚率の縮減ということは難しいんではないかと思いますので、頑張っていかなきゃいかぬと思いますが。
 続きまして、お尋ねしたいのは、余り衆議院では触れられていなかったんですが、「生み育てる」というところに点を付けて「生み、育てる者」というふうに分けておられることでありますけれども、これは簡単に点を入れただけですからどういうことないように思われますけれども、これの、産む役割と育てる役割、これを分けることは非常に大きな意味があるわけでありまして、生まれた子供は確かに社会の宝だと思いますけれども、社会が育てるんだというふうに割り切ってしまうといろいろ問題があろうかと思います。
 十年前だったですけれども、スウェーデンの記者の方とシンポジウムをやったときに、その人がおっしゃいましたけれども、スウェーデンでは生まれた子は社会の子だということで育てているというふうなお話がございまして、そういう意味では、低かった出生率をどんどん高めるためにそうやっているんだということで、確かに二・一三まで一九九〇年には上がってきたということでございますけれども、しかしそういった形が本当にいいんだろうかという気がします。と同時に、またその後、スウェーデンは財政事情から社会保障を切り下げていきましたら、見事にこの出生率も下がりまして、今は一・五二ぐらいに下がっていると。なお下がっているというような話でございますので、そういう意味では、社会の子として社会の育成と、もちろん育児を応援してやるということはいいわけですけれども、やはり育児についての責任は、この法案にも書いてありますけれども、第一義的にはやはり親の責任だと私は思うわけでありますけれども。
 そういう意味では、こうした社会の子として育てるというニュアンスが出てくるような文言に、わざわざ点を入れ、付け加えられたという点について、どうも分からないんですけれども、なぜだろうかというふうな気がしてしようがないんですが、これについてはひとつ御説明願いたいと思います。

○衆議院議員(逢沢一郎君) 亀井先生から大変大切な、重要な点について御指摘をいただいたものと思います。修正案提出者といたしましてお答えをいたしたいと思います。
 今、亀井先生御指摘のように、衆議院の段階で前文の幾つかの部分に修正を加えさせていただきました。「安心して生み、育てることができる」、あるいは「子どもを生み、育てる者が」というふうに、点、ポツを入れさせていただいたわけであります。大半の場合は子供を産む者と育てる者は同一の者であるというふうに認識をいたしているわけでありますが、例えば、率直に申し上げて、里親のように場合によっては子供を産む者と育てる者が違うこともございます。原案の段階でもそのような趣旨を踏まえた法案、条文にしておったわけでございますけれども、そうした立場の方々にもやはり配慮をする必要があるのではないか、いろいろ衆議院の段階でも議論があったわけでありますが、その趣旨をより明らかにする方がよいだろうと、そういう判断で修正を加えさせていただいたわけであります。
 しかし、委員、この法案をお読みをいただいたわけでございますが、この施策の基本理念、第二条の冒頭のところでございますけれども、「父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するとの認識の下に、」ということを施策の基本理念の冒頭のところにきちんとうたっているわけでございまして、先ほど懸念という意味で御指摘をなさいました、生まれた子供は社会の子供として社会が育てるんだ、決してそういうことを意味しているんではないんだ、そういう方向を目指しているものでは決してないんだと。あくまで第一義的には、責任を有する、つまり父母その他の保護者が子育てについての責任を有するんだという認識をきちんと基本理念の中で確認をしておるということを強調させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

○亀井郁夫君 趣旨はよく分かりました。
 それで、前文以外に、各条文でも何か所も「生み育てる」というところが出るんですが、これも全部ポツが入るんですかね。

○衆議院議員(逢沢一郎君) 基本的に「生み、育てる」というふうに修正を加えさせていただいている、整理をさせていただいているというふうに認識をいたしております。

○亀井郁夫君 そうしますと、ちょっと細かいことですけれども、第十一条や十二条、十四条、十五条というのは産むことではなしに育てることに絡んでの保育の問題だとか教育の問題だとか、そういうことになりますので、何か表現的に産む者、育てる者、育てる者は、おっしゃったように里子等にもらって、産んだ人間と育てる人間が違う場合はもちろんあるわけでありますけれども、その辺のところがちょっと整理ができていないような気がするんですが、その辺はいかがお考えでしょうか。

○衆議院議員(逢沢一郎君) 亀井先生から、十一条、十二条あるいは十四条、十五条についてどういうふうに理解をしたらいいかという趣旨の御質問をいただきました。
 簡潔に触れておきたいというふうに思いますが、まず十一条につきましては、保育サービス等の充実について規定がなされております。これは、既に子供が生まれた場合の規定でございますので、子供を養育する者を十一条におきましては対象にしておるということを明確にしておきたいと思います。
 十二条は、地域社会における子育て支援体制の整備について規定をいたしておりますけれども、子供を生み、育てる者を対象といたしております。例えば、私も修正案の提出者として勉強をさせていただいたわけでありますが、例えば中学生、高校生等を対象にいたしまして、保育等の経験をさせることにより子育ての知恵が伝承されるような試みも想定をいたしております。こういうことから、子供を産む可能性ある者も対象となるという趣旨であると、そのことが十二条には含まれているんだということを御理解をいただきたいと存じます。
 十四条でございますが、ここではゆとりのある教育の推進等について指摘をいたしているわけでありますが、この十四条におきましては、子供を生み、そして育てる者がやはり対象となっているわけでございます。予定子供数が御承知のように理想子供数を下回る理由といたしまして、子供が伸び伸びと育つ環境でないということがよく指摘をされております。養育の実態あるいは教育の実態、随分お金が掛かる等々についても指摘があるわけでありますが、これから子供を産む世代にとってゆとりのある教育の推進は欠かせない要件である、そういう認識の下、施策について十四条で整理をいたしました。
 長くなって恐縮でございますが、十五条におきましては、生活環境の整備についての指摘でございますが、ここでは同様に、子供を生み、そして育てる者が対象となっているわけでございます。家が狭い等の理由が子供を持ちにくい、そういう指摘もある中、少子化に歯止めを掛けるための施策として重要なことを十五条で整理をいたしているわけでありまして、ここのケースも、対象は子供を生み、そして育てる者であるというふうに認識をいたしております。
 どうぞ御理解を賜りますようにお願いを申し上げます。

○亀井郁夫君 趣旨はよく分かりました。
 それから、先ほどちょっと申しましたように、スウェーデンでは子供の半分は父親が分からないという話も聞きましてびっくりしたんですが、やはり子供を育てるのに私は家が、家庭が大事であろうと思うんですね。
 そういう意味では、この法文では、父母その他の保護者が一義的責任を持つというふうな表現になっておりますけれども、家庭という言葉が何か随分遠慮深く使われているような感じがして仕方がないんですね。もっと表に家庭というのを出してもいいんじゃないかと。子供の教育は家庭からということで、今も非常に大きな問題になっている。確かに、父母その他の保護者というのは家庭の一員である場合が多いんですけれども、そういう意味では、家庭についてのことが余り触れられていないという点で非常に奇異に感ずるわけでありますけれども。
 特に、この間、参考人でお呼びした八木先生のお話だと、マルクス主義は家庭というのを否定しているという話がありまして、家庭では男性が横暴で奴隷的服従を強いるんだということで、女性に、だから女性は、それから逃げていくためには家庭から逃げていけということでありまして、家庭を崩壊するところにマルクス主義の一番手近な原点があるんだというふうな話でありまして、(発言する者あり)いやいや、ありましたけれども、関係があるんだと先生は紹介されたので、へえと思ってびっくりしたんですが、まさか皆さんがマルクス主義を、マルクス主義をベースにしてこの法案を作られたとは思いませんけれども、やはり家庭に対する考え方をもっと強くやってほしいと私は思うんですけれども、それについての考え方はどうでしょうか。

○衆議院議員(逢沢一郎君) 大変興味深いお話を承りまして、少しく勉強をさせていただきたいと思いますが、先生御指摘のように、やはり子育て、これはあくまで家庭がベースである、円満な愛和な家庭があって初めて健全な子供がすくすくと育つことができる、全く御指摘のとおりであろうかと思います。
 理想は父母がきちんとそろっているということでございましょうが、いろいろな理由で、里親の場合、あるいはおじいちゃん、おばあちゃんがお育てになる、そういう家庭もあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、家庭の大切さ、この法案を通じて国民の皆様にもよく理解を、正しく理解をいただきたい、そんな思いであることをあえて付け加えさせていただきたいと存じます。

○亀井郁夫君 ありがとうございました。
 家庭についても十分配慮をしなきゃいけないというお話でございましたけれども、そういう形でこの法律は運用されるべきだと思うわけでございますが。
 次にお尋ねしたいのは、「結婚や出産は個人の決定に基づくものではあるが、」という表現が挿入されておるわけでありますけれども、最初の原案にはなかった文言でございますけれども、これが修正案で入っておるわけであります。
 もちろん、個人主義が普及しまして個人の意思が尊重されるというのは当然のことでございますけれども、しかし結婚や出産は私は個人一人でできるものではない、相手があることですからね。そういう意味では、当事者の合意によって結婚をし出産をするんだろうと私は思うわけでありますし、これについては最初の我が党の委員の質問のときにも中山先生から、当事者ということと同じ意味なんだというふうな御答弁もございましたが、その後の答弁ではその辺が消えてしまっておって、個人は個人で、個人イコール女性なんだと、女性が決めるんだというふうなニュアンスが強かったようでございますけれども、私はやはり個人というのは、これはむしろ当事者という意味であって、女性が勝手に結婚を決め、また勝手に出産を決めるということではないと私は思うんですね。
 そういう意味では、こういった自己決定主義という言葉が随分はやりまして、そういう意味では、後ほどまたお尋ねしますけれども、ジェンダーフリーの問題に絡んで中学校や小学校の子供たちの性教育にも及んできておって、女の子に、結果は自分が決めるんだからどうでもいいんだというふうな形になっておって非常に嘆かわしいこともあるわけでございますけれども、そういう意味では、この問題について、どういう意味でこれを挿入されたのか、ひとつ御説明願いたいと思います。

○衆議院議員(逢沢一郎君) 亀井先生からもう一つの修正点につきまして、その本意といいますか、意図するところはどうなんだということについて御質問をいただきました。
 前文の中に、御承知のように、「もとより、結婚や出産は個人の決定に基づくものではあるが、」というものを挿入をさせていただいたわけであります。もとより、原案におきましても、個人の自己決定権を当然の前提として、結婚や出産の妨げとなっている様々な要因を取り除くんだ、そして子育てを支援するための諸方策の推進を図って個人が望む選択ができるような環境を整備しよう、そういう趣旨、意図がこの法律の本旨であるわけでございます。
 もちろん、衆議院の段階でもいろんな意見がありました。議論があったわけでありますけれども、本法案が、個人の自己決定権を当然の前提として、少子化に対処するための方策が個人の自己決定権を決して侵害するものではないんだということをやはり文言上明らかにした方がいい、これは一つの政治判断と言ってもいいかと思いますが、明らかにした方がいいという判断でこのような修正を加えさせていただいたということを率直に申し上げておきたいと思います。
 ただ、自己決定権の主体について、先ほど、それはあくまで女性なのかということについて先生から御指摘をいただいたわけでございますけれども、これは女性だけがその自己決定権の主体として想定されているわけでは決してございません。もちろん、結婚や出産の前提となる妊娠というのは、御承知のように一人だけではできるものではございません。カップルの合意、同意、すなわち個人と個人の決定にゆだねられる、二人の同意にゆだねられるんだということをあえて指摘をしておきたいというふうに思います。
 どうぞよろしくお願いします。

○亀井郁夫君 ただいまの説明で、個人というのは女性だけではないというふうなお話でございますので、そうであれば私もよく分かりました。
 それから、これに絡みまして、平成七年の世界人口会議で提唱されたリプロダクティブヘルス・ライツ、この問題が、これがベースになっておるわけでありますけれども、性と生殖に関する個人決定主義というのが先ほど申し上げましたように相当喧伝されておるわけでございまして、そういう意味では、この問題は男女共同参画局長にもお尋ねしたいんですけれども、これが非常に混乱を招いているということで、このことからいろいろと地方の条例まで随分こういうベースで作られているというふうなこともございますけれども、私は非常に問題だろうと思うので、特に先ほど申し上げましたように、子供たちの性教育について非常に大きな問題を及ぼしておりますので、このリプロダクティブヘルス・ライツと、これはヘルスが付いているんですから、単に権利じゃなしに健康上の問題等を考えた上でのライツだと思うんですけれども、その辺が全く無視されているような気がするわけでありますけれども、これについての、自己決定主義についての正しい解釈を局長の方からひとつ説明していただきたいと思います。

○政府参考人(坂東眞理子君) 今、リプロダクティブヘルス・ライツについてのお尋ねがございましたけれども、私ども男女共同参画基本計画の中で、施策の基本的な方向として、リプロダクティブヘルス・ライツに関する意識の浸透、あるいは生涯を通じた女性の健康の保持増進対策の推進ということを挙げておりまして、男女ともに妊娠、出産、女性の生涯を通じた健康に高い関心を持ち、男女ともに高い関心を持ち、正しい情報、知識を深めるための施策を推進するというふうに言っておりまして、もう少しかみ砕いて自分なりに解釈した言葉で申しますと、妊娠や出産によっていろいろなライフステージで男性とは異なるいろいろな健康上の問題に直面する女性が、自らの体について正しい情報を入手する、自分で判断する、そして健康を享受することができるようにしていくという適切な行動を選択する力、選択をする以上は当然その結果も引き受けなければいけないわけですけれども、そうした力を付けるということが大変重要で、それが男女共同参画基本計画の趣旨であり、基本法にも沿っているというふうに思っております。

○亀井郁夫君 ありがとうございました。
 やはり女性にとっては出産というのは大変なことでございますので、健康上のことを十分配慮しなきゃいけないのは当然でございまして、体の中のことにつきましては夫さえ分からないということもあるわけでございますから、そういう意味では十分女性が判断しなきゃいけないのは当然のことだと私は思いますし、そういう意味においてこのリプロダクティブヘルス・ライツというのが理解され、やられればいいんですけれども、安易な形でやられては私は困ると思うわけでございまして、そういう意味では、このことに絡みまして、学校でも最近は何だか更衣室が男女一緒だとか、それはもう変なことが、男と女、男らしさ、女らしさを否定するところから始まって、そんなことが行われているということも指摘されており、困ったものだと思うわけでありますが、そういう意味では行政上の問題として、文部省辺り、この辺についてはどのように考えておられるのか、お答え願いたいと思います。

○政府参考人(田中壮一郎君) 学校教育におきます性教育につきましては、従来より、生命尊重、人間尊重を基盤といたしまして、児童生徒の発達段階に応じまして性に関します科学的知識を理解させますとともに、これに基づきました望ましい行動が取れるようにすることをねらいといたしまして、保健体育あるいは特別活動、道徳等を中心に、学校教育全体を通じて指導をすることといたしておるところでございまして、先ほどお話のございました男女共同参画基本計画の中でも学校における性教育の充実が取り上げられておるところでございますけれども、その中におきましても、ただいま申し上げましたような考え方に立ってその充実を図ることが必要であるとされておるところでございます。
 したがいまして、児童生徒の段階というのは心身が非常に発達し発育していく、変化が著しい時代であるわけでございまして、学校における性教育につきましては、学習指導要領にのっとりまして、児童生徒の発育、発達の状況、あるいはその受け入れる能力を適切に考慮しながら、保護者の理解を十分に得て推進していただくことが大切であるというふうに考えておるところでございます。

○亀井郁夫君 ありがとうございました。
 この点に関しましてもう一つお尋ねしたいのは、行政上の問題として、個人が決めるということに絡みまして、刑法や母体保護法でいろいろ保護されておるわけでありまして、母体がですね、そういう意味では、それとの関係においてこの法律はどのようになるのか、自由なんですよということじゃ困るわけでございますけれども、これについて起案者の方はどのようにお考えでしょうか。

○委員長(小川敏夫君) 提案者どなたか。
 速記を止めてください。
   〔速記中止〕

○委員長(小川敏夫君) 速記を起こしてください。

○亀井郁夫君 もう一度お尋ねします。
 個人が決めるんだということになっておりますけれども、片方で刑法やそれから母体保護法で堕胎そのものについてのいろいろな規制がございますから、それとの絡みにおいてはどのようにお考えでしょうかということをちょっとお尋ねしたわけでございます。逢沢先生、お願いします。

○衆議院議員(逢沢一郎君) 大変恐縮でございました。今、亀井先生が御指摘いただいたことと修正の観点についてお答えをさせていただきたいと思います。
 本修正によりまして、堕胎の自由が定められ、刑法第二百十二条から第二百十六条までの堕胎罪の規定が空文化するというふうなことがあっては決してならないというふうに考えているわけでございます。堕胎をしたときの処罰の有無につきましては、御案内のように、そしてまた今御指摘をいただきましたように、刑法や母体保護法を始めといたします現行法令によってきちんと規定がされておるところであります。本法案は、その処罰の在り方について規定をしたものではございません。刑法や母体保護法等の現行法令の効果に影響を及ぼすものではないということを修正案提出者として明言をしておきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

○亀井郁夫君 ありがとうございました。
 後法は前法を変えるというルールもございますけれども、これによって、今おっしゃったように、刑法や母体保護法が変えられるのではなしに、それはそれとしてちゃんとやっていくんだということを予定しているというふうなお話でございましたので安心いたしましたが、次にお尋ねしたいのは、ゆとり教育との関係でございます。
 生まれた子供がゆとり教育の中で育っていくということで、ゆとり教育の推進が強く掲げてありますけれども、これにつきましては、教育の内容や充実、あるいはまた入学者の選抜方法の改善や、子供たちの文化、スポーツ、社会などの体験活動にも触れられておるわけでございますけれども、ゆとり教育というのは、文科省においても数年前までは盛んに取り上げられておったんですが、最近では学力の低下との関係において今ゆとり教育が強く反省を求められておるわけでございまして、文科省におきましても、例えば学習指導要領が、これまでは最高基準だと言っておったのが今では最低基準だというふうに言っているということもありますし、そういうことでは随分このゆとり教育に対するアプローチの仕方が変わってきているように思うわけでございますけれども、そのことをこの段階においてあえて書き込まれたのはなぜなのか、これについて提案者の方に御質問したいと思います。

○衆議院議員(中山太郎君) 今、委員御質問のゆとり教育の問題でございます。
 我が国においては、学歴偏重の風潮がやはり根強いものがございます。子供の教育についても悩みを持っている親御さん方も多いわけであります。こういう中で、これらのことは子供も親にもゆとりを失わせて、子育てに関する大きな心理的な負担を構成しているものと考えております。学歴偏重の風潮は、親が産む子供の数を少なくする方向に働いていると考えられても不思議はないと思っております。
 子供を生み、育てる者が感じているこのような心理的な負担を軽減してあげることは、家庭や子育てに夢を持たせ、安心して子供を生み、育てることができる環境を整備するという少子化社会対策の理念の実現に資するものでありまして、少子化社会対策に位置付けすることができるものと考えております。
 なお、文部科学省の提唱するいわゆるゆとり教育とは同じものではなく、内容についてはこれから具体的に議論をしてまいりたいと考えております。

○亀井郁夫君 今、ゆとり教育についての考え方はかなりこれからまた考えていきたいんだというふうなお話がございましたけれども、これについて文科省の方、どのように受け止められるか、お答え願いたいと思います。

○政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。
 委員御案内のとおり、昨年四月から新しい学習指導要領を実施をしておるわけでございますけれども、その中では、ゆとりの中でいわゆる生きる力を育成するということをねらいとしているわけでございます。そのために、全員が共通に学ぶ内容の厳選によって生じました時間的、精神的なゆとり、余裕を活用して、きめ細かな指導でありますとか、体験的、問題解決的な学習を充実することによりまして、子供たちに基礎、基本というものを確実に身に付けさせていきたいと、そしていわゆる生きる力を育成をしていきたいと、こう考えているわけでございます。
 そして、こういったねらいが真に実現されるように、文部科学省といたしましては、例えば習熟の程度に応じた指導など、きめ細かな指導を行うことができるように教職員定数の改善に努めているわけでございますし、あるいはいわゆる学力向上フロンティア事業と、こういったような事業を通じまして確かな学力の育成を図ってまいりたいと、こういうふうに考えているところでございます。
 今後とも、この法案の趣旨も踏まえながら関係施策の推進に努めてまいりたいと、かように考えているところでございます。

○亀井郁夫君 ありがとうございました。
 文科省としても出生率が上がるような教育改革をこれからも是非ともやっていただきたいと思います。そういう意味ではよろしくお願いしたいと思いますが。
 もう一つお尋ねしたいのは、第六条の国民の責務でございますけれども、これが余りにも抽象的過ぎて何をしていいのかよく分からないというふうな意見もございますので、これについてもうちょっと詳しく御説明願いたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしくお願いします。

○衆議院議員(中山太郎君) 少子化対策につきましては、基本的には行政の行うべきものでございますけれども、国民も少子化社会の現状を理解し、安心して子供を生み、育てることのできる環境の整備に努めることは、国民も社会の一員である以上、当然のことであろうと考えております。
 このため、国、地方公共団体、さらには事業主の責務を規定した上で、主にサービスの受け手となる国民の責務も併せて規定したものでございます。国民の責務とは、そういった社会の一員として果たすべき責務であり、具体的には、少子化の進展している現状を認識し、少子化社会に対する理解を深め、安心して子供を生み、育てる環境の整備に努めるとともに、少子化社会における諸施策に協力する責務であると考えております。

○亀井郁夫君 国民の責務というと、非常に抽象化されて、具体的な話はなかなか聞けないわけでありますけれども、産めよ増やせというふうな昔の形には簡単には、書いていないわけですから、そうじゃないと思いますけれども、安心して子供が産める、また育てられる社会を作るようにみんなで努力していこうという意味に理解いたしましたけれども、よろしくお願いしたいと思います。
 それから、先ほどからお尋ねした中で、出産についての手当てが全く触れられていなくて、この辺についても出産手当とか、それについてもよくよく考えていく必要があるんじゃないかと私は思うんですが、そういう意味では、絡みましてもう一つお尋ねしますけれども、少子化社会における年金制度の問題でありますけれども、いわゆるDINKS世帯というのは、何か夫婦で高学歴で共働きという家庭のようでございますけれども、DINKS世帯で子供がいないわけでありますから、その世帯の収入は、子供を一生懸命育てる、育てている家庭に比べたら随分収入が違うというような話もあるわけでありまして、一説によると二億円ぐらい違うんだというふうな数字も出ておりましたが、それはいろいろあろうかと思いますけれども、しかし、そういう意味でまた同時に、年金の問題も今の制度では非常に差があると。
 要するに、自分は子供がいないんですから、自分が年を取ってからもらう年金は、隣の一生懸命育ててもらった子供から年金を払ってもらうという形になるので、これもおかしいじゃないかというふうな話もございますけれども、そういう意味では、フランスのように子育てする期間は年金に加算するとか、あるいは子育てについては子育て手当を、育児手当を出すとか、そういうふうな形で何か考えていかなきゃいけないんじゃないかというふうな声もございますけれども、この問題についてはどのようにお考えでしょうか。中山先生、お願いします。

○衆議院議員(中山太郎君) 子育てに対する手当、これが現実のコストとの差は現実にございます。例えば、出産手当につきましても平均三十万出ておりますけれども、実際に出産に必要な経費は約四十万と言われております。そういった面やら、あるいはこの育児休業制度をどのような形で男女が取っているかというようなデータも見てみましても、女性は五六から七%ぐらいの育児休業を取っておりますが、男性の場合はわずか〇・五%でございまして、これはやはり男性としては、この企業で実力を発揮してどんどんと上進したいと、こういう、男性としての大きな希望があると思います。そういった中で、経営者側が男性の育児休業を取得することについての十分な理解を持つことが、これからの男女共同参画社会には極めて大切なことに相なろうかと思います。
 また、先生御指摘のように、年金の問題につきましては、やはり少子高齢化になってまいりますと、このバランスが、社会保障制度の財政基盤が崩壊する可能性がありますので、その点はこれから国民の皆様方に十分説明をした上で、いかにして高齢者の年金を少子高齢化の社会において提供できるかと、こういったことは、税制あるいは国の補助制度、こういったことを含めて総合的にこの法律に基づいて各省でも御検討願えるものと考えております。

○亀井郁夫君 この今の年金問題等については、これから各省、この法律を受けてやるんだというふうなお話でございましたが、そういう意味で直接関係ある厚生労働省にお聞きしたいんですけれども、この法律を受けて、具体的にこういう問題について検討する用意があるのかどうか。厚生労働省の方お見えですよね、お願いいたします。

○政府参考人(吉武民樹君) 今、先生御質問がございました子育てと年金の関係でございますけれども、これは今年の三月に少子化対策推進関係閣僚会議でも検討するということでお決めをいただいております。
 その基本的な考え方としましては、これから女性、特に女性の働き方が非常に多様になってくるだろうというのを前提にいたしております。そうしますと、育児期間の中で例えば収入が非常に減る方あるいはなくなる方があるわけでございまして、今の現行で申しますと、基本的には育児休業期間は手当てをいたしておりますけれども、それ以外の場合については年金額計算上は減ってくるという状態になりますので、この点につきましては次回の年金制度改正の中で検討してまいりたいというふうに考えております。
 それからもう一つでございますが、年金の積立金がございまして、今市場が非常に厳しい中で運営は非常に厳しい状況になっておりますが、年金の積立金を活用いたしまして、文部科学省で奨学資金を充実していただくというのが大前提でございますが、これにプラスをいたしまして、将来の次世代の方、年金の保険料で申し上げますと非常に長い期間負担をしていただきますので、こういう方々が自分で自立して学べるような、そういう教育資金を検討をしてはどうかということで、この二点を中心に検討しているところでございます。

○亀井郁夫君 どうもありがとうございました。前向きにいろいろと検討していただきたいと思います。
 時間がちょっと、十分だけ残っておりますけれども、これでやめさせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子でございます。
 少子化社会の問題については、本当にこの国の在り方といいますか、それからこの国に住む人々の将来の生活にとって、現在及び将来の生活にとって大きな問題であることは当然、もちろんでございます。ということで、民主党・新緑風会といたしましても、この議員立法の趣旨には賛成という態度でございますけれども、幾つか私ども、先生方のところもそうかと思いますが、特にこの内閣委員会の委員のところには女性の様々な団体の方から懸念が表明されておりまして、その懸念につきましても衆議院でも、あるいは参議院に移りましても議論が行われているところでございます。
 さて、少子化という問題は今に始まったことではないわけでございまして、やはり家族といいますか家庭といいますか、あるいは個人一人一人の生活といいますか、そうした人間の生き方といいますのはその国の社会、経済の在り方、時代の変化によって非常に大きく変わるわけでございます。自己決定、自分の人生だれにも任せられるものではない、自分で自立して生きていくためには自己決定、自分の生きたいように悔いのないように生きると、これが人の生き方でございますけれども、それでも客観要因によって非常に大きく左右されると、これが事実でございます。
 そこで、まず審議に入ります前に、もう一度簡単に、時間が短くて大変恐縮でございますが、今日は社会保障・人口問題研究所所長の阿藤さんにお見えいただいておりますので、時間が短くて恐縮でございますけれども、そもそものところを少し問題整理をしていただきたいと、研究者の立場からの認識を伺いたいと思います。
 まず第一点目は、少子化の要因とそれに対する対応策について、もう既に平成九年でしょうか、人口問題審議会の中から、日本の社会への警鐘ということで提言されたわけでございますが、そのポイントについて認識といいますか、御指摘いただきたいと思います。

○政府参考人(阿藤誠君) 少子化、これは一九七〇年代半ば以降に始まりましたいわゆる人口置き換え水準二・〇八以下への出生率の低下でございますが、それのいわゆる人口学的な要因というのは、これはまあ先進国に共通でございまして、中心的には結婚の高年齢への先送り、いわゆる未婚化、晩婚化でございます。で、最近になりまして、日本では結婚した夫婦の出生力低下というふうな要因が加わったというふうに分析されております。
 こういった未婚化、晩婚化、そして夫婦出生力の低下の背後にあります社会経済的な要因というのは、言うまでもなく大変複雑でありまして様々な要因が考えられます。しかし、この政策的対応ということを踏まえた上での可能性あるいは有効性という点から考えますと、重要な大きな要因は次の二つというふうに私自身は考えております。
 一つは、女性の社会進出が進んだことによって、社会全体として職業労働と家庭、あるいはまた仕事と子育てというものの両立が容易ではなくなったということが何といっても大きな背景にあると思います。
 それから第二番目は、かつてのように自営業中心の社会では子供というものが家の宝、家業の労働力であり老後の保障という、そういう意味合いを持っていたわけですが、それがサラリーマン社会に変わってきて大変弱まってくると。そういう中で、人々にとって結婚をし子供を持つということが選択的、今までのように必然的でなくて選択的なものになってきたということがあると思います。しかも、その上で、子供の教育期間が長くなり、子育ての経済的、心理的な負担感が強まったということが第二番目の大きな背景にあると考えます。
 経済学的にはこれを、第一番目の要因をよく子育ての逸失利益あるいは機会費用の上昇と言い、そして二番目は子育ての直接費用の上昇と、こういうふうに表現しております。したがいまして、少子化への政策的対応の中心というものは、やはり第一番目にこの両立問題の改善ということでございます。そして第二番目には、子育ての経済的、心理的な負担感の軽減というふうに考えております。
 具体的には、両立問題の改善のためには、政府でも進められておりますように育児休業制度あるいは保育サービスの充実、男性の育児参加促進のための施策といったようなことがあると思います。
 それから、子育ての経済的、心理的な負担感の軽減ということの具体策としては、もちろん児童手当あるいは税制における子育ての優遇の措置、奨学金あるいは保育サービス費用の軽減といった経済的負担の軽減策のほかに、地域社会、学校教育、生活環境、リプロダクティブヘルスなど、子育てにかかわる全般的な環境整備が含まれるというふうに考えております。

○川橋幸子君 短い時間に端的に御指摘いただきましてありがとうございました。
 今回の少子化社会対策基本法も、個人の自己決定を尊重するということが基本になっておりまして、しかし、なお産みたいけれども産めない、望むだけの子供の数が産めない、こういうギャップを何とか国がサポートすることによって充足できるようにしようではないかと、そういうことに懸かっているわけでございます。そういう趣旨の法案でございますが、なお出生力の回復ということを非常に強く望む声もあるわけでございます。
 日本の経済規模なり人口規模なりというものが国力ということでとらえられた場合には、産めよ増やせよ法案ではないんだけれども、そうした声も、産めよ増やせよ、できるだけ、できるなら産んでほしいといいますか、そういう期待があるわけでございます。そうした場合に、私が個人的に考えますのは、家族の形態が非常に大きく変化している、以前のようにおじいちゃん、おばあちゃんの手助けがかりられるわけではない、それから共働きでなくても専業主婦の家庭の場合も、夫は長い通勤時間を掛けて働き、そして今のような厳しい雇用環境になりますと何と週六十時間以上働く、週六十時間です。これかえって、子供を産めというのは、これは非人間的な要求になるのではないかと。おまけに自己啓発もしろというぐらい職場は厳しくなっております。
 少し話が横道にそれましたけれども、家族というものに対するサポートが非常に大変だと、こういう時代になってきているわけですね。しかも、その家族の形態が非常に多様化しているということを考えましたときに、例えば出生力、出生率の回復の可能性について、かつて平成九年の人口審の報告書は、選択的な夫婦の別姓とか事実婚などに対して社会的な寛容度を高めることが考えられるではないか、あるいは非嫡出子に対する法律上、制度上の差別が、差別といいますか、要するに法律婚でないものに対する取扱いの区別があるわけでございますけれども、そういうものに対する区別を是正していく、多様な家族を認めることが必要ではないかということが提言されたところでございますが、こういうことについてはどのように、人口学的にはどのように考えられるのでしょうか。

○政府参考人(阿藤誠君) 先ほど慣例を存じませんで、失礼いたしました。
 今の御質問の中で、人口学的にある程度はっきりといいますか、言えることというのは、人口学的なデータの国際比較から見ますと、婚外子割合の高い国ほど出生率が高いと、これはもう極めて高い相関があるわけでございます。で、この婚外子割合が高い国というのはほぼ同棲、いわゆる事実婚の多い国を意味しております。この事実から、同棲が社会的に容認された国ほど出生率が高いということが相関関係から言えそうであります。ただし、欧米諸国の経験から見る限り、同棲をするかしないかというのは若者自身の判断でございます。
 で、その点であえて言えば、日本でこれほど同棲が低い、婚外子が少ないということは、日本の若者は今のところ余り同棲というものを選択していないと、こういうふうに言えるのではないかと思います。また、言うまでもないことですが、同棲自体は今申しましたように若者自体が選択する問題でありますから、同棲を政策的に促進しろと、そういう性格のものではないというふうに理解しております。
 この選択的な夫婦別姓、それから非嫡出子に対する制度上の差別是正といったことにつきましては、もちろん民法上いろいろ議論があることは存じておりますけれども、それがどれほど直接的に出生率に結び付くかどうかということは、人口学的な見地からは何とも言えないということでございます。

○長谷川清君 委員長。

○委員長(小川敏夫君) 長谷川君。
 速記を止めてください。
   〔速記中止〕

○委員長(小川敏夫君) 速記を起こしてください。
 暫時休憩いたします。
   午前十一時一分休憩
   〔休憩後開会に至らなかった〕