156-衆-予算委員会第一分科会-1号 平成15年02月27日

本分科会は平成十五年二月二十五日(火曜日)委員会において、設置することに決した。
二月二十六日
 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
      亀井 善之君    中山 正暉君
      持永 和見君    中村 哲治君
      細川 律夫君    赤羽 一嘉君
二月二十六日
 持永和見君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成十五年二月二十七日(木曜日)
    午前九時開議
 出席分科員
   主査 持永 和見君
      亀井 善之君    中山 正暉君
      井上 和雄君    今田 保典君
      津川 祥吾君    永田 寿康君
      細川 律夫君    赤羽 一嘉君
      遠藤 和良君    桝屋 敬悟君
   兼務 栗原 博久君 兼務 木下  厚君
   兼務 水島 広子君 兼務 上田  勇君
   兼務 石井 郁子君 兼務 藤木 洋子君
   兼務 東門美津子君 兼務 松浪健四郎君
   兼務 山谷えり子君
    …………………………………
   国務大臣
   (内閣官房長官)
   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長)
   (産業再生機構(仮称)担
   当大臣)         谷垣 禎一君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   国務大臣
   (沖縄及び北方対策担当大
   臣)
   (科学技術政策担当大臣) 細田 博之君
   国務大臣
   (金融担当大臣)
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣
   (規制改革担当大臣)   石原 伸晃君
   国務大臣
   (防災担当大臣)     鴻池 祥肇君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   内閣府副大臣       根本  匠君
   内閣府副大臣       米田 建三君
   法務副大臣        増田 敏男君
   内閣府大臣政務官     大村 秀章君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   内閣府大臣政務官     阿南 一成君
   衆議院事務総長      谷  福丸君
   参議院事務総長      川村 良典君
   裁判官弾劾裁判所事務局長 天野英太郎君
   裁判官訴追委員会事務局長 高田 健一君
   国立国会図書館長     黒澤 隆雄君
   政府特別補佐人
   (人事院総裁)      中島 忠能君
   会計検査院長       杉浦  力君
   最高裁判所事務総長    竹崎 博允君
   政府参考人
   (内閣官房拉致被害者・家
   族支援室長)       小熊  博君
   政府参考人
   (内閣府大臣官房審議官) 永松 荘一君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   山本繁太郎君
   政府参考人
   (内閣府男女共同参画局長
   )            坂東眞理子君
   政府参考人
   (内閣府道路関係四公団民
   営化推進委員会事務局長) 坂野 泰治君
   政府参考人
   (宮内庁次長)      羽毛田信吾君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  瀬川 勝久君
   政府参考人
   (警察庁刑事局長)    栗本 英雄君
   政府参考人
   (警察庁交通局長)    属  憲夫君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    奥村萬壽雄君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君
   政府参考人
   (防衛施設庁長官)    嶋口 武彦君
   政府参考人
   (防衛施設庁施設部長)  大古 和雄君
   政府参考人
   (防衛施設庁業務部長)  冨永  洋君
   政府参考人
   (総務省人事・恩給局長) 久山 慎一君
   政府参考人
   (総務省情報通信政策局長
   )            高原 耕三君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    中井 憲治君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 齋木 昭隆君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (文部科学省科学技術・学
   術政策局原子力安全監)  広瀬 研吉君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁電力・
   ガス事業部長)      迎  陽一君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁原子力
   安全・保安院審議官)   薦田 康久君
   政府参考人
   (中小企業庁経営支援部長
   )            川口 幸男君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房技術
   審議官)         白取 健治君
   政府参考人
   (国土交通省道路局次長) 榊  正剛君
   政府参考人
   (国土交通省自動車交通局
   技術安全部長)      中山 寛治君
   内閣委員会専門員     小菅 修一君
   安全保障委員会専門員   小倉 敏正君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
分科員の異動
二月二十七日
 辞任         補欠選任
  中村 哲治君     津川 祥吾君
  赤羽 一嘉君     太田 昭宏君
同日
 辞任         補欠選任
  津川 祥吾君     井上 和雄君
  太田 昭宏君     遠藤 和良君
同日
 辞任         補欠選任
  井上 和雄君     今田 保典君
  遠藤 和良君     青山 二三君
同日
 辞任         補欠選任
  今田 保典君     永田 寿康君
  青山 二三君     桝屋 敬悟君
同日
 辞任         補欠選任
  永田 寿康君     井上 和雄君
  桝屋 敬悟君     太田 昭宏君
同日
 辞任         補欠選任
  井上 和雄君     中村 哲治君
  太田 昭宏君     赤羽 一嘉君
同日
 第二分科員東門美津子君、第三分科員松浪健四郎君、山谷えり子君、第四分科員木下厚君、第五分科員石井郁子君、藤木洋子君、第六分科員水島広子君、第八分科員栗原博久君及び上田勇君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十五年度一般会計予算
 平成十五年度特別会計予算
 平成十五年度政府関係機関予算
 (皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣及び内閣府所管)

     ――――◇―――――

○持永主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。
 私は、本分科会の主査を務めることになりました持永でございます。よろしくお願いします。
 本分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣及び内閣府並びに他の分科会の所管以外の事項についての審査を行うことになっております。
 平成十五年度一般会計予算、平成十五年度特別会計予算及び平成十五年度政府関係機関予算中内閣及び内閣府所管について審査を進めます。
 政府から説明を聴取いたします。福田内閣官房長官。

○福田国務大臣 平成十五年度の内閣及び内閣府関係予算について、その概要を御説明申し上げます。
 内閣所管の平成十五年度における歳出予算要求額は九百三十一億一千三百万円でありまして、これを前年度当初予算額九百五十億六千二百万円に比較しますと、十九億四千九百万円の減額となっております。
 要求額の内訳といたしまして、内閣官房には、情報収集衛星のシステム開発、内閣の重要政策に関する総合調整等のための経費として八百十三億五千六百万円、内閣法制局には、法令審査等のための経費として十億四千六百万円、人事院には、人事行政等のための経費として百七億一千百万円を計上いたしております。
 次に、内閣府所管の平成十五年度における歳出予算要求額は五兆六千六百十四億七百万円でありまして、これを前年度当初予算額五兆六千六百六十一億二千百万円に比較しますと、四十七億一千四百万円の減額となっております。
 要求額の内訳といたしまして、その主なものについて御説明いたします。
 内閣府本府には、経済財政政策、科学技術政策、沖縄対策、沖縄振興開発、男女共同参画社会の形成の促進、青少年の健全育成、国民生活行政、防災対策、原子力安全対策、食品安全行政の充実強化、北方領土問題の解決促進、国際平和協力業務、化学兵器禁止条約の実施、京都迎賓館(仮称)の建設、政府広報等のための経費として四千百四十八億三千八百万円、宮内庁には、皇室の公的御活動、皇室用財産の維持管理に附帯して必要となる事務等のための経費として百十四億六千百万円、公正取引委員会には、構造改革の流れに即した法運用、競争環境の積極的な創造、ルールある競争社会の推進等のための経費として七十八億五千三百万円、警察庁には、警察庁、その附属機関及び地方機関の経費並びに都道府県警察費補助等のための経費として二千五百八十九億九千二百万円、防衛本庁には、陸上、海上、航空自衛隊等の運営、武器車両及び航空機等の購入並びに艦船の建造等のための経費として四兆三千七百十九億一千六百万円、防衛施設庁には、基地周辺対策事業、在日米軍駐留経費負担及びSACO関連事業等のための経費として五千八百七億四千七百万円、金融庁には、金融庁一般行政、金融機関等の監督、証券取引等監視委員会の運営等のための経費として百五十五億九千九百万円を計上いたしております。
 以上をもって、平成十五年度の内閣及び内閣府関係予算の概要の説明を終わります。
 よろしく御審議くださいますようお願いいたします。

○持永主査 以上で説明は終わりました。
 内閣官房長官以外の大臣は御退席をされて結構です。
    ―――――――――――――

○持永主査 内閣府本府について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水島広子さん。

○水島分科員 民主党の水島広子でございます。
 本日は、ジェンダーフリーについての政府の見解を伺いたいと思います。ジェンダーの問題について、ここのところの国会審議や政府の対応がかなり現場に混乱を与えておりますので、きょうは改めて整理をさせていただきたいと思っております。
 二〇〇二年十一月十二日、参議院内閣委員会で福田官房長官は次のように答弁されております。
  男らしさとか女らしさ、これはやっぱり男女という性別がある限りあるのではないかと思います。ただ、時代が変わり、社会の情勢が変わって、その考え方に多少の違いがあるということがあったとしても、男女の性別というところから出てくるものは、これは否定することはできないと思っております。
このような答弁なわけですけれども、この答弁で、男らしさ、女らしさという言葉を官房長官は生物学的な性として使っているのか、社会的な性として使っているのかが全く私には不明であるわけですけれども、一体どちらの趣旨で使われているのでしょうか。

○福田国務大臣 確かに私、そういうような答弁をしたことがございますけれども、これは明確な言葉、厳格に言葉を選んでということではないということで使いましたけれども、しかし、一般的に言えばそれでわかるんじゃないかなと思って、私は申し上げたんです。
 そこで申し上げたところは、性別というのは、これは生物学的な意味での違いですね、男女の違い。すなわち、英語で言えばセックス、こういうことになります。
 念のため申し上げれば、男女共同参画は、男女に差があることを認めず人間を中性化するという考え方ではありません。生物学的には男女に違いがあるということは当然として認めた上で、一人一人の個性を尊重したような選択を認め合い、性別にかかわりなく個人の能力を十分に発揮できる社会の実現を目指すものである、こういう考え方でございます。

○水島分科員 そうしますと、先ほどの答弁なんですけれども、
 時代が変わり、社会の情勢が変わって、その考え方に多少の違いがあるということがあったとしても、男女の性別というところから出てくるものは、これは否定することはできない
ということで、時代が変わって、社会の情勢が変わると、生物学的な性が変わるという趣旨の答弁なんでしょうか、それともこの時点で社会的な性ということをおっしゃっているんでしょうか。

○福田国務大臣 これは、ジェンダーと言っても、社会文化的な背景をもとにした考え方ですけれども、セックスと言うと、これはもう男女というので生物学的に明確に分かれているわけですね。とはいいながら、その見方、考え方というのは、昔と今といろいろな考え方があるでしょう。多少違いがあるということはお認めになると思うのです。それはジェンダーの部分に踏み込んでいる表現かもしれぬけれども、しかし、そういう見方があるということ、それから男女間の問題とか、そういうことにおいてはやはり時代によって多少の違いが出てきているのじゃないかなというように思いますので、そういうふうな表現を使ったということです。

○水島分科員 しつこくて申しわけないのですけれども、時代によって変化が出てくるのはジェンダーであって、生物学的な性は、れっきとした雄雌の、人間が生き物である以上はあるものであって、そうしますと、官房長官がここで否定することができないと言っている男らしさ、女らしさというもの、これは一体どちらなんでしょうか。

○福田国務大臣 ジェンダーのもとはやはりセックスだと思うんですよ、やはりセックスが根源にあるのです。ですから、ジェンダーと言った場合にセックスを無視するわけにいかないということですから、言ってみれば一緒のものだと。ただ、セックスは生物学的な違いだということで、これは生物学的には違うんですよ、生物学的には違う。だけれども、セックスと言っても、そこのところは微妙なところですけれども、私なんか昔のセックスと今のセックスと何か違ったような感じがするので、そういうふうに申し上げた。これは文化的な部分が入っているかもしれません。

○水島分科員 今、官房長官はなかなか重大な発言をされているわけですけれども、ジェンダーのもとはセックスである、それは確かにおっしゃるとおりだと思いますし、だからこそこの問題は慎重に扱っていかなければいけないと思っております。
 生物学的な性別であるセックスというものは明らかに存在しているわけです。例えば男性には月経もありませんし、妊娠、出産もない、これは歴然とした事実であるわけです。そのことを認めて尊重した上で、機会の均等ができるだけ妨げられないようにするのが男女共同参画社会基本法の理念であると思っておりますけれども、私の理解は正しいでしょうか。

○福田国務大臣 そうですよ、そのとおりだと思いますよ。

○水島分科員 そうしますと、セックスによってジェンダーがつくられてきたという歴史があります、もちろん。女性の方が、女性は子供を産むから、ずっと仕事をするのには向かないんじゃないかとか、そういう考え方がいろいろあって、女はうちにいるもの、男は外で働くもの、それは一つのジェンダーと言えると思うんですけれども、そういうことによって女性にとって例えば働く機会が失われるとしたらそれは問題だというような考えからつくられてきているのが、この男女共同参画社会基本法であるという理解でよろしいでしょうか。

○福田国務大臣 要するに、ジェンダーが違う、そしてその結果、そのジェンダーというものをもう少し社会的な意味で考えれば、女らしさとか男らしさとかいったようなものが出てくる。それは、その時々で違うことはあるんですよ。それはお認めになりますね。昔と今じゃ違うでしょう。しかし、男らしい職業、例えば自衛隊だと。自衛隊隊員、最近、女性も大分入ってきていますけれどもね。それから、女らしい、今、看護婦、これも男も入ってきていますけれども、看護婦も女らしいと。こんなふうな社会的な通念というのがありますよね。ですから、そういうように、昔は軍隊に女性というのは恐らく考えられなかった、看護婦も昔は男は考えられなかった、こういうことはあったと思いますね。ですから、そういう社会の変化によって、やはりそういうものはだんだん変わってくるということはあるわけですよ。
 ですから、それは、しかし、ジェンダーということもあるんだけれども、女性は例えば腕力がないとか、それから看護婦さんは女らしい優しさがあるとか、こういうことを言うと問題になるのかもしれぬけれども、だけれども、そういう社会通念というのはないということは言えないでしょう。ですから、そういうようなことも含めて女らしさ、男らしさというものがある、その根源はセックスだ、こういうことです。

○水島分科員 今のは私は大変重大な問題発言だと思いますけれども、官房長官がまさか本気でそんなことを思っていらっしゃらないと思うので、少し考え方の整理をさせていただきたいと思うんです。
 今おっしゃったように、男らしい職業、女らしい職業という考え方そのものがジェンダーであると思いますけれども、結局、そのような、例えば、看護の仕事は女らしい仕事だからということで……(福田国務大臣「そういう通念」と呼ぶ)そういう通念があるということのために、ある男性が看護職につきたいことを妨げられるとすれば、それはよくない、一人一人がそういう個性、能力があるのであれば看護の仕事ができるようにしていこうとするために男女共同参画社会基本法がつくられているのではないかと思っているんです。
 ですから、恐らく、官房長官がおっしゃっている、否定するものではないというのは、そういう通念を持っている人の存在を否定するものではないというふうに答弁していただかないと、多分誤解を招いて……(福田国務大臣「そう言っているじゃないですか」と呼ぶ)いや、そういう人の存在をじゃなくて、そういう通念はあるというふうにおっしゃっていたので、そこはちょっともう一度きちんと言い直して、官房長官の発言は重大ですので、ぜひもう一度言っていただきたいんです。そういう通念を持っている人たちが存在することによって個々人の自由な選択、希望がかなえられないことを、なるべく政府としては個々人の個性を尊重するような立法措置としてこの男女共同参画社会基本法をつくっているんだというような趣旨の御答弁、あるいは、今のことでそのとおりだと言っていただいても結構なんですが。

○福田国務大臣 委員のおっしゃっていることと私の考えていることと違わないですよ、同じこと。同じことを言っているんですよ。ただ、余りワンパターン化してしまうということについては、強制をするとかいったようなことがあって、それはかえって個人の自由を妨げるということになるから、そういうことで社会をまとめようというような考え方はよくない、私はこういうふうに考えているんです。

○水島分科員 私の考えと同じだと言っていただいたので大変自信を持ちましたけれども、そのワンパターン化ということなんですけれども、次に進ませていただきたいんですが、ジェンダーフリーという言葉についてなんですが、最近、自治体のプログラムなどで、ジェンダーフリーと名前のついたものが認められなくなるというような動きがあると聞いております。
 二〇〇二年の十一月十二日に、男女共同参画局の坂東眞理子局長はこのように答弁をされているわけですが、
 ジェンダーという言葉は、社会的、文化的に形成された性別という意味で男女共同参画基本計画においても使用しておりますけれども、ジェンダーフリーという用語はアメリカでも使われておりませんし、北京宣言及び行動綱領や最近の国連婦人の地位委員会の年次会合の報告書などでも使われておりません。もちろん、日本の男女共同参画社会基本法、男女共同参画基本計画等の法令においても使用しておりません。
  したがって、我が局、男女共同参画局としては、ジェンダーフリーの公式的な概念はこれこれでございますということをお示しできる立場にはございませんけれども、現在、一部に、男性と女性の区別をなくするんだ、男性と女性を画一的に扱うんだ、画一的に男性と女性の違いを一切排除しようという意味でジェンダーフリーという言葉を使っている方がいらっしゃる、そういうことは大変一部に誤解を持たれているんだなと思いますが、男女共同参画社会はこのような意味でのジェンダーフリーを目指しているのではなくて、男女共同参画社会基本法で求められているとおり、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる社会、男女が差別を受けることなく、対等なパートナーとして様々な分野に参画し、利益も責任も分かち合っていけるような社会を目指しているというふうに思っております。
というような答弁なんですけれども、この答弁を受けまして、一部の人たちは、ジェンダーフリーの考え方を政府が否定したと、鬼の首をとったかのように興奮をしているわけでございます。
 もちろん、男女共同参画社会として局長が求める社会像については、私には全く異議はございません。でも、「このような意味でのジェンダーフリー」という表現には疑問を感じます。ジェンダーというのは社会的、文化的に形成された性別という意味であるということをおっしゃった上で、そこからフリーになる、解放されるという言葉なわけですから、生物学的な性別まで否定するわけではないということぐらい、これは英語が堪能な局長であれば御存じなのではないかと思います。
 確かに、ジェンダーフリーという用語はアメリカでも使われておりません。でも、アメリカ人と、あるいはヨーロッパの人と国際会議などで英語で話す際にジェンダーフリーという言葉を使った経験からいいますと、それはとてもよい表現なので浸透させていきたいというような反応が得られております。日本でも、市民団体や地方自治体などのパンフレットやホームページなどをいろいろと調べてみましたけれども、ジェンダーにとらわれない、ジェンダーに縛られないという趣旨で正しく使用されており、生物学的な性別まで否定するようなものは私は見つけることができませんでした。
 ジェンダーフリーは、あくまでも、ジェンダーからフリーになることという意味だと思いますので、「このような意味でのジェンダーフリー」という答弁はおかしいのではないでしょうか。ジェンダーフリーという用語をこのような意味で用いるのは不本意だとでも答弁すべきだったのではないかと思っております。聡明な局長が生物学的な性差と社会的な性差の違いもわからないとは思えませんので、ぜひここで答弁を修正していただければと思います。

○坂東政府参考人 お答えいたします。
 御指摘のとおり答弁をしておりますが、それは本当に一部に、現在、一部にですが、男性と女性の区別をなくするんだ、男性と女性を画一的に扱うことがジェンダーフリーなんだという意味で使っておられる方がいらっしゃいますので、そうではないんだ、男女共同参画というのは、そういう、画一的に扱うジェンダーフリーを目指しているのではないという意味で申し述べております。
 そしてまた、このジェンダーフリーの公式的な概念というのがまだきちんと定義されておりません。委員がおっしゃいましたように、社会的な、文化的な、形成された役割からの抑圧あるいは差別をなくするという意味で使っていらっしゃる方もいらっしゃいますけれども、そうではなしに、先ほど申しましたように、本当に、画一的に扱うんだという意味で使っていらっしゃる方もいるということで、その定義がはっきりしていない、そしてまた、我々自身もその定義をするべき立場にないということでお答えをしたものでございます。

○水島分科員 そうしましたら、官房長官にお答えいただければいいかと思うんですが、では、今私が言ったような趣旨でのジェンダーフリーということを言いたい場合にはどういう言葉を使えばよろしいんでしょうか。

○坂東政府参考人 僣越でございますが、性にかかわりなく個性と能力が尊重され、発揮できるという意味で使っていただければと思います。

○水島分科員 ジェンダーという言葉の定義はあるということですので、例えばジェンダーに縛られないとか、ジェンダーにとらわれないとか、そういう表現でもよろしいでしょうか。

○坂東政府参考人 男女共同参画基本計画では、ジェンダーに敏感な視点を持って男女共同参画社会を推進する、いろいろな社会制度を見直していくというふうな使い方をしております。

○水島分科員 それでは、そういうジェンダーフリーという片仮名言葉がいけないというレベルの話であれば、ジェンダーに縛られないというふうにただ使いかえればいいだけなのだということが理解できました。政府が、男女共同参画社会基本法という法律を持ちながら、ジェンダーからの解放という考え方を否定したという一部の報道が正しいとはまさか思っておりませんでしたけれども、本日、そのとおりであるということがわかりまして、大変安心をいたしました。
 官房長官は、フェミナチという言葉を聞いたことがございますでしょうか。

○福田国務大臣 今初めて聞きました。済みません。

○水島分科員 もちろん、知っていなければいけない言葉ではありませんので、結構なんですけれども、私も別に日常的に使っている言葉ではありませんが、最近どうも私のような人間がフェミナチと呼ばれているようでございます。この言葉こそ正確に定義されていないので、私もよくわからないんですけれども、多分、私の察するところ、フェミニストナチズムというようなことの略語ではないのかなと思いまして、それこそ、先ほどからおっしゃっているように、画一的に何かを押しつけようとしている人というふうにどうも曲解されているように思っております。
 ただ、男女共同参画、あるいは私が使う意味でのジェンダーフリーというのは、画一的なジェンダーの枠にとらわれずに、それぞれがそれぞれの人らしく暮らしていくという考えだと思いますので、そういう意味ではナチとは全く対極の位置にあると思いますけれども、私の考え方は正しいでしょうか。

○福田国務大臣 よろしいんじゃないですか。

○水島分科員 それでは、私のような人間をフェミナチと呼ぶのは正しくないということを、官房長官にお墨つきをいただきましたので、ぜひこれからもまた自信を持って、多様な価値観が尊重される社会の実現のために頑張ってまいりたいと思っております。
 また、もう一つ気になっている表現なんですけれども、ジェンダーフリーの行き過ぎとか、行き過ぎたジェンダーフリーとか、そのような表現をこのごろ一部で見かけるわけでございます。ジェンダーフリーというのが、私の使う意味では、ジェンダーからの解放、ジェンダーにとらわれない、そういう枠を取り払うという意味で使う限りは、枠を取り払い過ぎるということは理屈からいってあり得ないと思うんですけれども、これもよろしいでしょうか。

○福田国務大臣 個人がその能力を発揮するという社会をつくりたい、活力ある社会をつくりたいという観点からいえば、それが強制されるとか、そういうことでなければよろしいんじゃないでしょうか。

○水島分科員 強制というのがあくまでも枠ということなんだと思いますので、また何らかの生き方の枠にその人をはめて無理やり強制するなんということになりますと、本来の、枠から解放されるという趣旨に反することですので、強制というのはそこでは全くあり得ないと思っておりますけれども。
 そうしますと、ジェンダーにとらわれないという姿勢が行き過ぎるということはないと言ってよいですね。

○福田国務大臣 ですから、再三申し上げているように、それは個人の自由なんですね、そういうことは。
 ただ、社会規範とか、社会的な制約というか、無言のルールとか、いろいろなのがあるんだけれども、そういったようなものを全く無視していいかどうかというのは、またそこでケース・バイ・ケースで考えていかなければいけないというふうに思っています。

○水島分科員 今、官房長官がおっしゃったのは、もっと根本的な話であって、基本的人権に関しても、それは他者の人権を配慮しながら生きていかなければいけないとか、多分そのレベルの話だと思いますので、このジェンダーの問題に限ったことではないと思います。今の御答弁からは、少なくとも私が使っている意味ではジェンダーフリーの行き過ぎということはあり得ない、個人が自由になり過ぎるということはあり得ないと。それが他者の自由を侵害する場合にはもちろん問題になりますけれども、自由そのものとしては問題にはならないということが理論的にも確認されましたので、またこちらも自信を持って進めてまいりたいと思います。
 また、二〇〇二年の十一月十五日の内閣委員会におきまして、副大臣が、「十二日の参議院内閣委員会における質疑応答を刷り物にいたしまして、近日中に全国の都道府県に送付することを決定しております。」と答弁されております。これを受けて、実際に十二月四日付で「国会の質疑について」という文書が、都道府県、政令指定都市に送られ、市町村にも周知徹底させることと書かれております。
 このような国会の審議の様子が自治体に送られるというのは、余り日常的なことだとは思わないんですけれども、何を意図してこのようなことをされたんでしょうか。

○米田副大臣 冒頭からの官房長官と委員の質疑を伺っておりましたが、まさに、さまざまな誤解や食い違いやすれ違いや、いろいろな議論がこの間あったわけでございますし、現在もあるわけであります。
 したがって、男女共同参画社会形成のための国の基本的な考え方、本当に基本中の基本の部分についてのやりとりがさきの国会で行われたというふうに考えております。言ってみますと、この男女共同参画社会基本法等に関する国の施策の基本的な考え方の理解を一層深めていただく、こういう趣旨で国会の質疑を取りまとめたものを地方公共団体に送らせていただいたわけでございます。

○水島分科員 ところが、私もそれを拝見したんですけれども、また議事録も当然当時から拝見しているんですけれども、きょう私がこれだけ確認しなければならないほど、ちょっとわかりにくい内容だったということなんです。そうしますと、それを整理させていただいた本日の私のこの質疑に対する答弁も、各自治体に送っていただけるんでしょうか。
 官房長官のツルの一声でも、言っていただければ。

○坂東政府参考人 先ほど副大臣から御答弁なさいましたように、男女共同参画に対する政府の考え方を地方公共団体に伝えることは大変重要なことだと思いますので、御指示を仰いで、できるだけ情報を提供したいと思っております。

○水島分科員 そうすると、指示をされる立場である官房長官は、本日のこの質疑の内容、答弁、各自治体に同じように送っていただけますでしょうか。

○福田国務大臣 恐らく、そうするんじゃないかと思いますよ。

○水島分科員 私も、この分野に関して、決して普通の人よりも知識が少ない方だとは思わないんですけれども、それをもって読んでも政府の答弁というのはよくわからないところが多かったので、それで本日、そのような声を代弁して、ここで確認をさせていただいたわけでございます。あちこちで混乱されている方がいらっしゃいますから、ぜひ、今官房長官がおっしゃってくださったように、本日のこの会議録につきましても各自治体に送っていただけますように、改めてお願いを申し上げます。
 本日の結論ということになりますけれども、そうしますと、内閣府としてはというか政府としては、ジェンダーフリーという言葉をきちんと定義した上であれば、ある自治体なりある市民団体なりが、これはジェンダーにとらわれないということを意味するのだということをきちんと定義した上であれば、自治体などが使っても問題ないと考えられておりますでしょうか。また、私が地元に戻りまして、地元の自治体の方に、政府はそう言ったというふうに申し上げてよろしいでしょうか。

○福田国務大臣 先ほど坂東局長からも答弁いたしましたけれども、ジェンダーフリーという言葉はいかなる場合でも使ってはいけないということではないので、誤解を招くような、そういうおそれがあるので政府として公式に使っていない、こういうことですね。ですから、使用する際に、例えば地方公共団体とか関係機関において用語を適切に定義して、それが誤解なく理解されるようにする、これが大事だと思います。

○水島分科員 そうしましたら、何だか慌ててジェンダーフリーという名前のついたプログラムをやめているなんという話も少し聞いておりますけれども、そういうところでももともとジェンダーフリーとはということで定義されて使っているところが多いですので、それであれば慌ててこの国会の答弁の結果を受けて取りやめる必要がないということで確認させていただけたと思います。
 本日、大体、私の頭の中で、あるいは多くの方たちの頭の中で混乱していたことが官房長官によってきちんと整理されたということで、大変うれしく思っております。あくまでも、最初に官房長官がおっしゃいましたように、ジェンダーというのは、確かにもともとはセックスと切り離せない関係のところから出てきたことは間違いのないことでございまして、だからといって、そのことによって個々人の機会均等、先ほど官房長官は何か女性の方が腕力が弱いとか何とかおっしゃいましたけれども、例えば、私、女ですが、私よりも腕力の弱い男性もいらっしゃるわけですし、例えばあと、よく子育ては女に向いているからといって保育園の先生は女の仕事だというふうに言う方もいらっしゃるけれども、私はやはり、子供が嫌いな女性よりは子供が好きな男性に自分の子供を預けたいと思います。このような考え方は官房長官には支持していただけますか。

○福田国務大臣 支持します。

○水島分科員 ありがとうございます。
 ですから、官房長官もぜひ、私ごときから申し上げるのは僣越なんですが、これから答弁なさるときに、男らしさ女らしさはありますなんというふうに、否定できませんというふうに答弁されてしまうと、官房長官もそのような人たち、そのような価値観の人だというふうに思われてしまいますので、そういう価値観を持った人がこの世の中に存在していることは理解をしている、ただ、そのことによって個々人の自由な選択が妨げられないように努力していくのが政府としての務めではないか、そのような……
 違いますか。違えば言っていただきたいんですが、そのように言っていただければと思うんですが、いかがでしょうか。

○福田国務大臣 趣旨はよくわかっています。しかし、言葉遣いで、女らしさ男らしさ、こういうところで男らしさ女らしさという、その定義のような話をしているときには問題になるかもしれぬけれども、一般的にはそういう言葉はあるし、また、そういうものがあって楽しい社会ということもあるかもしれぬ、そういうことも考えて判断していくべき問題だと思います。

○水島分科員 もちろん、官房長官がお友達とお話なさるときは、もうどんな表現を使われても御自由だと思うんですが、今は男女共同参画を推進していく官房長官というお立場にいらっしゃるわけですので、官房長官として御発言になるときには、その男らしいとか女らしいという言葉のためにどれほど多くの男性、女性が機会を奪われてきたかというようなことをぜひ頭に置いていただいて……(福田国務大臣「それほどのことはない」と呼ぶ)それほどのことはないと……(福田国務大臣「気にしなくていいですよ」と呼ぶ)気にしなくていいとおっしゃるんですけれども、先ほどおっしゃったように、例えば、えっ、男のくせに看護の仕事をするのとか。
 ですから、そういうことで、かなりそのことについて敏感になっている方がいらっしゃるので、ぜひそういった一人一人の方たち、あるいは官房長官がここで発言されたことで、自分の職場で、ほらごらん、男らしさ女らしさというのはあるんだと言われている、本当に一人一人の方たちのことをぜひ思いめぐらしながら、これからもまた前向きな御答弁をいただけますようにお願いいたします。
 きょうは、別に官房長官にけちをつけに来たわけではございませんで、今までの答弁をちょっと確認させていただきたくて伺ったわけです。私が期待したとおりの御答弁をいただきまして、ありがとうございました。ぜひこれからも男女共同参画社会の推進のために御尽力いただけますようにお願いいたします。
 ありがとうございました。

○持永主査 これにて水島広子さんの質疑は終了いたしました。
 次に、山谷えり子さん。

○山谷分科員 保守新党、山谷えり子でございます。
 男女共同参画社会、男性と女性が互いに理解、共感し、お互いの思いを深め合って、思いやりのある、調和のある、活力のある社会をつくっていくんだということは、本当に結構なことでございます。
 しかしながら、それぞれの都道府県とか市町村で男女共同参画推進条例がつくられていっておりますけれども、そうしたものをいろいろ点検、調査いたしましたところ、定義があいまいだったり、これは一体どういう解釈なんだろうかというようなことを思うことがある条例がございますので、その辺について質問させていただきたいと思います。
 例えば、最近、男女共同、いろいろメディアで報道されておりますが、男女共同参画条例、四十都道府県を調べたところ、女性や夫婦本人に出産、中絶の自由などを認めることにつながる性の自己決定権という規定を何らかの形で盛り込んでいるところが十八県ある。これは国内法に抵触するおそれがあるし、また、国際会議でもさまざまな意見がございまして、このような形というのはいかがなものかということがあるわけでございます。
 米田副大臣はこの報道の中で、この新聞の調査どおりだとすると、ゆゆしき事態だというふうにお答えになっていらっしゃるんですけれども、もう少し詳しくその思い、背景などを説明していただけませんでしょうか。

○米田副大臣 新聞社から電話の取材を受けまして、そういうおそれがある、どう思うかと問われましたので、もしそれが事実であるならば、それは法に触れるような趣旨を含むことになるから問題であろうというお答えをいたしました。そして、その後、その条例を私も精読し、また当局の担当者とも協議をいたしました。それを踏まえての思い、考え方を申し上げればよろしいんでしょうか。
 いわゆる性の自己決定権、性と生殖の権利について、これが結果的に中絶を容認することにつながるのではないか、これを懸念する向きがあるわけであります。平成六年の世界人口会議で提唱されましたリプロダクティブヘルス・ライツの考え方における性の自己決定権が、中絶の自由をも含んでいるのではないか、こういう懸念から、そういうおそれを指摘されているんだろうというふうに思います。
 ただ、まず大前提としまして、各条例を読みますと、いわゆる性と生殖の権利をうたっているけれども、それが直ちに中絶を容認しているというふうには、私は言えないだろうというふうに思います。少なくとも、中絶容認という言葉はどこにもありません。しかし、一方で、出産についても、みずからの決定が尊重されるというふうな明確な表現をしておる自治体の条例もございました。
 御案内のとおり、我が国は、既に既存の法律に妊娠の中絶に関しては限定的な枠がきちんとあるわけであります。例えば、母体保護法では、身体的、経済的理由で母体に有害となるおそれがある、また、暴行、脅迫による妊娠、こういうふうに規定をされているわけであります。では、そのことを踏まえた、単なる概括的な理念規定ならばよろしいんだけれども、それを超える意味があるのかどうか、それを超える意味を持たせた上での条例ならばおかしいではないかという議論が発生する余地はあるんだろうというふうに私は思いますが、これはその条例制定者に確認してみなければわかりませんけれども、そういう議論も発生し得るんだろうとは思います。
 また、性の自己決定ということでありますが、性の自主性を阻害する事案について我が国はどうなっているのかといいますと、まず、そもそも結婚は両性の合意によることとなっておりますし、わいせつな行為や強姦等を厳しく処罰する法律もあるわけであります。しからば、それを超えるところの性と生殖の権利とは何かということ、これは、やはり今後の男女共同参画社会の形成を目指す、私は、基本的にすばらしいことであるし、先ほどの水島委員と官房長官の質疑を聞いていても、政府と水島委員との基本的な考え方に違いがあるなんてちっとも思っていませんよ、極めて常識的な、基本的なことをおっしゃっているわけです。
 ただ、さきの国会でも、これは山谷委員がたしか御指摘されたと思いますが、一部に、桃太郎のあの民話すらよくない、それから、おじいさんが山へしば刈りに、おばあさんが川へ洗濯でしたか、これもいかぬというふうなことを、奇抜なことをおっしゃるような部分もある、それはおかしいではないかと。あくまでも、性差による差別はよろしくない、けれども、機械的に、画一的に男女を扱うものではないというごく常識的な見解を、さきの国会で官房長官も私も局長も示させていただいた、こんなふうに実は私は考えているわけであります。
 そういうふうに考えていきますときに、随分たくさんの条例がありますから、一つ一つの条例の裏の真意を確認する間はございませんでしたが、そういう議論はあってもいいんだろう、そういう疑念を持つ方もおられるんだろうというふうに一つは申し上げられるんだろうと思います。
 平成十四年の七月の二十二日に、衆議院の決算行政監視委員会第一分科会、まさに委員の御質問に対して、坂東局長が、男女共同参画基本法が制定される前の男女共同参画審議会において、「リプロダクティブヘルスについては、生涯を通じた女性の健康ということで、大事だという合意はされている」が、「ライツについては、いろいろな意見があるというふうな記述になって」いる、「国際的な場でもリプロダクティブライツについてはいろいろな議論が行われている」というふうにちなみに坂東局長はお答えでありました。
 いずれにしましても、政府が法律に違反することを容認しているわけではございませんし、各自治体の真意も、まさか法律に違反する事態を想定して条例をつくったとは考えにくいというふうに思いますが、議論はいろいろあっても結構だろうと思います。
 また、今後の施策の中で、新しい施策でもありますから、いろいろな知恵の結集、工夫というものが行われて正しい姿が形成されていくんだろうというふうに思います。

○山谷分科員 「男女共同参画推進条例のつくり方」、こういうマニュアル本が町に出回っておりまして、そこでは、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツの視点から女性の生涯を通じた健康を支援するための総合的な対策の推進を図る必要があるとされています。」というふうに書いてあるわけですね。
 ところが、坂東局長のお答えにもありましたように、国際的な場で、去年も国連の場で非常な大議論がありました。リプロダクティブヘルスはともかくとして、ライツに関しては、非常な議論が、対立がまだあるわけでございますね。今米田副大臣の御答弁にもございましたように、これが何を意味するのかというような、その意味のところまでは不明というような部分があるわけでございまして、官房長官、これはぜひ、政府として確認、調査すべきことではございませんでしょうか。
    〔主査退席、亀井(善)主査代理着席〕

○坂東政府参考人 お答え申し上げます。
 リプロダクティブヘルス・ライツという概念につきましてはいろいろな議論がございましたが、男女共同参画基本計画の中でも、重要な分野といたしまして、「生涯を通じた女性の健康支援」ということで、カイロの国際人口・開発会議においてこの概念が提唱され、今日、女性の人権の重要な一つとして認識される、生涯にわたって安全で満足のいく性生活、安全な妊娠、出産、子供が健康に生まれ育つことなどが含まれております。

○山谷分科員 それはもうもちろん重々わかっておりまして、ライツに関して、中絶容認、拡大を支持するように解釈されるのではないかということを、国際的な場で、国連の場でも議論されているわけでございまして、日本では一体これをどういうふうに解釈しているのか、意味は何なのかということを、政府は確認、調査すべきではないかという質問でございます。官房長官、お答えいただきたいと思います。

○坂東政府参考人 議論は行われております。その上で、私どもの閣議決定をした男女共同参画基本計画でこうなっておりますと答えております。
 私どもといたしましては、いろいろな議論、特に昨年の十二月にバンコクでESCAPの方でも、人口・開発会議で我が国の政府代表木村義雄厚生労働副大臣がおっしゃっておりますように、このリプロダクティブヘルス・ライツは固有の権利として推進していくという立場でおります。
 それと、また、調査をするということについて、それぞれの場でどういう発言が行われているかということについては、我々の方でも十分情報を集めるようにいたします。

○山谷分科員 この自治体の条例の趣旨が何であるかということはぜひ御調査いただきたい。今の答弁は、そういう確認でよろしゅうございますね。ありがとうございました、確認できたということだと思います。
 続きまして、例えば市の条例になりますと、さらに誤解を招くのではないかというような条例がございまして、岡山・新見市の男女共同参画まちづくり条例には、「すべての市民は、家庭、学校、地域、職場その他の社会のあらゆる分野において、次に掲げる行為を行ってはならない。」として、新聞、雑誌、ポスター等により、情報を表示する場合は、固定的な性別役割分担、女性に対する暴力及び性的羞恥心を助長し、または連想させる表現を行ってはならないということが書いてございます。
 これは、連想してもいけないという、このあいまいな、これは一体何を意味するものでございましょうか。副大臣、いかがでございますか。

○米田副大臣 岡山県新見市の条例でございますので、私が何を意味するかというお答えをする話でもないんだろうと思いますが、連想することについても触れている部分が表現の自由を侵すのではないかという御質問だろうと思います。
 何が男女の役割を固定的にとらえているのか、あるいは何が役割の固定化を表現しているとだれが判断をするのか、裁定するのか、神様なのか、神様ではないんだろう、だれなんだろうかと、条例をさらに精読しないとわかりませんが、そういうことまで踏み込んでいるのかどうか。恐らく一つの理念規定なんだろうと思いますが、そういう疑問が発生してくることも不思議ではないだろうというふうに一つは思います。
 こういう条項を設けられて、実際に具体的な市の施策に反映される場合に、おっしゃるような表現の自由を抑圧するようなことにならないような相当な注意というものは、当然、市当局も要請されてくるんだろうというふうに思います。
 なお、近代法治国家におきましては、たとえ違法なことではあっても、想像しただけで罪に問われるというようなことがないことは言うまでもありません。また、文学や芸術においては、その芸術的な目的において、インモラルな状況あるいは人物を主人公にしたりテーマにしたりすることもあるわけであります。また、あえて言うならば、男女の役割の固定化が必要だという、まあ余り多くないんだろうと思いますが、そういう方もおられるんでしょう。そういう主張をすることもまた、たしか我が国の憲法では自由なわけであります。
 いずれにしましても、思想、信条、表現の自由を侵すようなことがあってはならないし、政府ももちろんそういうようなことを容認しているわけではございません。
 さらに言うなれば、自治体の条例の真意が、いわゆる具体的に強制的な思想統制をねらったものとも思えないわけでありまして、いわゆる理念を掲げたということだろうと思いますが、いずれにしましても、今後の具体的な施策が展開されるならば、その形を注目したいというふうに思います。

○山谷分科員 固定的な性別役割分担を連想させる表現を行わないよう努めなければならないなどとする条例、これは、表現の自由と抵触するおそれがあるというようなものが、全国で二十五を超える自治体で規定が見られるわけでございます。
 規制の対象は「広告、ポスター等、公衆に表示するすべての情報」、これは水戸市でございます。それから、公に発信しようとする情報、これは千葉県市川市。それから、あらゆる情報、三重県桑名市などでございます。性別役割分担を直接表現したものだけではなくて、連想させるものについても何人も行ってはならない、してはならないなどと定めておりまして、出版、文学、広告などの表現活動の自由を保障いたしました憲法にも、憲法との整合性、疑問が非常に残ると思うんですが、この「連想」というのは本当にあいまいで主観的で、これに基づく規制というのが、ほかにもこんな例があるのでございましょうか。理念の拡大解釈ではないかと思いますが、官房長官、いかがでございますか。

○福田国務大臣 この第五条を見てみますと、一、二、三、四、全部、一、二、三はかなり常識的なことなんですね。ですから、御指摘の四の項目も、常識的な範囲で考えてくださいということで、ただ、その常識が、往々にして逸脱した、常識でない行為があるから具体的に書いたのかな、こんなふうに思います。

○山谷分科員 常識、常識とか、すごくあいまいでございまして、やはりこれは、かなり背景も説明していただきたいと思いますので、新見市の条例を制定なさった責任者を参考人招致求めたいと思います。
 新見市のこの条例の中には、「家事、育児、介護等、従来女性が担ってきた無償労働に対し、必要に応じて経済的評価を与える家庭づくり」ということも書いてあります。水戸市にも同様の、例えば家事労働、育児、介護等、従来女性が担ってきた無償労働に対し、必要に応じて経済的な評価をすることというような文があるんですね。
 そうしますと、もちろん家事、育児、負担な部分もあるわけですけれども、それは、本当に豊かに生きる喜び、営みということもございまして、経済換算された家事の値段を、これはだれかが払わなければならないのかというような、そんな論争もきっと起きるような部分だと思います。
 それからまた、「農林漁業、商業等の自営業において、女性の労働が正当に評価される職場づくり」なんということも新見市の場合書かれておりまして、これなんかも、男女共同参画推進会議の中で、農水省のヒアリングの中で、家族経営協定、数値目標を各県ごとにつくられる必要があるのでは、協定を結んだ農家は農業者年金基金などで優遇したらとか、補助事業の採択についてもこれは考えたらというようなやりとりがあったりするわけですね。
 そうしますと、この部分が何を意味するのか、背景は一体何なのか、解釈は何なのか、理念というのがどれで、それでどういうふうに解釈しているのか、やはり大変聞きとうございますので、ぜひ参考人招致を求めたいと思います。

○福田国務大臣 これは、今御指摘の水戸市のことについて言えば、これは水戸市の自治の問題に属するんだろうというふうに思います。
 問題は、男女共同参画基本法に基づいてこの条例が理解される、そして実施されるというのであれば、それはそれで水戸市の考え方、これも議会の審議を経て制定されている、こういうことでございますから、それは、その判断は尊重すべきものだというように考えます。
 ですから、それに対して国として、その趣旨に反するということであるならこれはまた別でございますけれども、そうでない限りは、その自治に任せるのがこれからの地方自治じゃないかというふうに思っております。

○山谷分科員 本当に地方の自治は大事でございますけれども、本当にこの趣旨があいまいでございまして、聞きたいということでございますので、また、同様の、表現の自由の侵害とか、家族協定というのは一体何を考えているんだろうとか、やはり背景がわかりませんので、ぜひ、これ以上の混乱それから理念の拡大解釈による現場での混乱を招くことを防ぐ意味でも、参考人招致を求めたいと思います。

○亀井(善)主査代理 本件につきましては、予算委員長並びに理事会の方にお話を申し伝えたいと思います。

○山谷分科員 先ほどの米田副大臣の御答弁にもございましたけれども、芸術作品なんかでは、やはりそのようなインモラルとか悪の題材をテーマにというようなこともあるわけでございまして、そういたしますと、先ほどの、表現の自由を侵すものではないか、それが「新聞、雑誌、ポスター等により、」このようなところまでいくと、これは国としても何か指導する権限を発動すべきではないかと思いますが、官房長官、いかがでございますか。

○福田国務大臣 先ほど、これはどこのでしたっけ……(山谷分科員「新見市」と呼ぶ)新見市の分ですね。
 これは、先ほど申しましたように、常識的な範囲、それは常識といったっていろいろある、こういうことでありますので、こういうふうに言うとまた混乱するというふうに言われるかもしれぬけれども、新見市の常識というものもあるんじゃなかろうかと思いますよ。ですから、それは新見市の考え方。例えば、この条例も当然新見市の議会で決めたことだというように思いますので、その考え方がどうなのかという考え方を聞くことはいいと思いますけれども、やはり新見市の議会の考え方を尊重すべきかなというふうに思っています。
 ただ、先ほど申しましたように、この規定はかなり常識的な部分について言っている、常識的な判断をしなさい、こう言っているんじゃないかと思います。

○山谷分科員 私も本当に常識的に善意で解釈したいわけでございますけれども、しばしば行き過ぎとか何かおかしな解釈が現場で通っておりますので、非常にその辺を心配しております。国、県、市という公共機関が、家庭、個人の思想、良心に入り込んでいくのではないかというようなおそれもあるわけでございまして、これは恐らく憲法学者の間で非常に論争になる部分ではないかというふうに思うんですね。
 ですので、政府としても、そのような議論がお互いにできるような場をつくるとか、地方公共団体がこれは押しつけているのではないか、何かを鼓吹しているのではないかというようなおそれもあるわけでございますので、官房長官、その辺の国としてのスタンスをもう一度お聞かせいただきたいと思います。

○福田国務大臣 まず、一般論として申し上げるんですけれども、男女共同参画社会の形成という目的のために、一定の表現を行わないよう配慮または努力を求めるなどの規定であると、憲法上の問題が生じるとは言えない、こういうふうに考えております。
 それから、この基本法をつくりまして、それがどのように、実際に施行してこれが国民の間に定着していくかということについては、政府としても大変関心のあることなんですよ。ですから、いろいろな機会に国民の意見を聞き、また各地方自治体の意見を聞くというようなことは必要なことだろうと思います。
 これは、十分な、監視と言ってはいけないけれども、いろいろと調べながら、この理念がどのように、政府の考えているような方向でいっているかどうか、逸脱しないことがないかどうか、これはよく観察をさせていただきたいと思っています。

○山谷分科員 男女共同参画という本当に大切な考え方がやはりきちんと現場で定着して、それが、個人、家族、地域社会そして国に、非常に温かな、活力のあるよい動きになっていくように、逸脱についてはそれなりにきちんとチェックして、もし拡大解釈、常識に外れた部分があれば見直していかなければいけないというふうに思いますので、今の官房長官の御発言を非常に重く受けとめさせていただきました。
 また、そのほかに、福間町の男女がともに歩むまちづくり基本条例では、入札参加希望業者に企業の男女共同参画の推進状況を届け出るように義務づけているという部分がございます。こうしますと、男女共同参画の推進状況がよろしくないとかよろしいとかいうのは、だれが、どういう数値で、あるいは実態で把握なさるのかわかりませんけれども、納税者の権利侵害になるおそれもあるわけでございまして、米田副大臣、その辺はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。

○米田副大臣 お答えをいたします。
 地方自治法では、極めて事細かに自治体と民間業者、企業等との契約のあり方が定められております。その精神をそんたくするに、これは地方の事業だけでなく国も同様であろうかと思いますが、国民の税をちょうだいして行われる仕事に関して、すぐれた内容の仕事が公正透明なルールによって廉価な、できるだけ安い価格で、しかも、しっかりとした仕事をしていただく、それをまた公正透明なルールで受注業者が決まっていく、こういうことをきちんと担保せねばならない。これは国も地方も共通した原則なんだろうと思います。
 そういう趣旨にこの男女共同参画の推進状況をチェックすることが直結するのかどうかといいますと、直結するとは想像しがたいわけでありますが、自治体は自治体のそれぞれの考えがあるんだろうと思います。
 問題は、しからば、その進捗状況をチェックすることが最終的な仕事の受注の決定要因になっているのかどうか、その辺が問題のポイントではないでしょうか。単なる業者登録の際の添付書類である、それ以上の意味はないという考え方もあるでしょうし、いや、添付書類であってもそれは大いなるブラフであるというとらえ方もあるでしょうが、精査しなければ、その辺のところは、今、一概に申し上げられないだろうと思います。

○山谷分科員 理念としてはわからなくもないけれども、ひとえに、実態がどうかということがこれから重要な問題になってくると思いますので、これは本当はどういう趣旨でこの条例がつくられたのかということもちょっと不明な部分があるというあいまいな解釈。やはり、実態がどうかということをあくまでもチェックしていくというような努力がこれから求められていくのではないか、その努力をしなくては男女共同参画社会をつくろうという本来の思いがゆがめられていくのではないかというおそれを感じておりますので、その辺、政府としても対応をお願いしたいと思います。
 質問の時間が参りましたので。ありがとうございました。

○亀井(善)主査代理 これにて山谷えり子君の質疑は終了いたしました。
 次に、石井郁子君。

○石井(郁)分科員 日本共産党の石井郁子でございます。
 きょう、私は、全国で二百万人近いと言われる商工業などの自営業における家族従業者、いわゆる業者婦人の権利、地位向上の問題で御質問させていただきます。
 業者婦人の役割については、政府はこのような答弁をされています。「我が国の企業の大部分を占める中小企業の中で」、一部省略いたしますけれども、「家庭そして経営、さらには労働、こういった各面で非常に大きな役割を果たされている」これは二〇〇一年の参議院経済産業委員会でございますけれども、我が党の同僚議員に対しての御答弁でございます。
 そこで、まず内閣府の官房長官にお聞きしたいと思います。
 今お話しのように、男女共同参画ということが進められておりますけれども、その共同参画という立場から見まして、こうした業者婦人の担っている役割また実態などをどんなふうに考えていらっしゃるか、ちょっと所感をお聞かせいただければと思います。

○福田国務大臣 ただいま委員から御指摘ございましたように、我が国の非農林業における家族従業者の約八割は女性である、こういうことでございます。これは平成十四年の統計でございますけれども、自営中小企業などにおいて、女性家族従業者は経営の重要な担い手であるということでありまして、経営に果たしている役割は極めて大きいものがございます。
 男女共同参画の観点からも、基本計画の「雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保」の箇所で規定いたしておりますが、「女性が家族従業者として果たしている役割の重要性が正当に評価されるよう、自営業における経営と家計の分離等、関係者の理解が得られるように」、これから努めていかなければいけない。これは重要なことだと考えております。

○石井(郁)分科員 どうもありがとうございました。
 今も御紹介いただきましたけれども、国の男女共同参画基本計画の中にそのような記述がございます。「女性起業家、家族従業者等に対する支援」として幾つか掲げられているわけでございます。ただ、この項目は各省庁でどのように具体化されるかということのようでして、その中身は、一つ一つ、この項目からすぐにはわかってこないわけですね。
 一方で、私、きょう、御紹介したいのは、地方自治体が基本計画をつくる、あるいは条例をつくるという動きがずっと進んでいます。先ほどの質問にもそういうことがあったかと思います。私の見たところで、幾つかの自治体で、この業者婦人、自営商工業の家族労働あるいは女性の問題について、かなり踏み込んだ記述が出てきているんですね。
 これは大阪の堺市ですけれども、こういうことになっています。「自営業においては、」「男女が自立した対等な関係として経営に参加できるよう支援することが必要」である。また、これも大阪で、岸和田市の例でございますけれども、ここはかなり詳しくて、「自営や家族従業者に従事する女性はこれまで、その働きが十分に評価されず、個人の報酬などの面においてもあいまいな状態に置かれてきました。」一部省略しますけれども、「個人としての経済基盤の確立も進めなければなりません」また、「自営業、家族経営の農漁業等の関係団体に呼びかけて、それらの団体への女性の参画を促進するよう努める」というようなことが書かれています。
 ですから、国の方は、先ほど官房長官も御紹介いただきましたけれども、「女性が家族従業者として果たしている役割の重要性が正当に評価されるよう」等々あるわけですけれども、さらに、こういう計画を念頭に置いた上で、業者婦人の地位向上についての具体的な項目が入っているというふうに思われるわけです。
 そこで、男女共同参画局長に伺いたいと思います。
 私は、基本計画というのは年度を切っての基本計画ですし、また、その後にはさらに新たな計画も立てるというふうになっておりますので、こうした視点で、この業者婦人の問題についての視点で大いに補い、充実させていく必要があるかと思いますが、その御認識を伺いたいと思います。

○坂東政府参考人 お答えいたします。
 中小企業庁が平成十四年に実施いたしました調査は、基本計画に盛り込まれております「商工業等の自営業における家族従業者の実態の把握」に基づいて実施されているものであり、我々といたしましては、計画が着実に実施されたものとして評価しております。

○石井(郁)分科員 今の御答弁ですと、実態調査は着実に進んだと。実態調査だけですね。それ以上はないんですか。あるいは、今後どうするかということについて、今の私が御紹介申し上げました地方自治体では、かなり踏み込んだというか、具体的な項目まで入れているということからすると、もっと計画の手直しが必要ではないのでしょうかと伺ったわけですが、いかがでしょうか。

○坂東政府参考人 計画の見直しにつきましては、現行計画が今どのように実施されているか、また、今お話がございましたような地方公共団体でどのように取り組まれているか、また、男女共同参画会議あるいは国民各層の御意見も十分に踏まえて、関係省庁との調整を行いながら実施していくことになると思います。

○石井(郁)分科員 今のお話に出ていますように、業者婦人の実態調査でございますけれども、そのことでちょっと伺いたいと思います。
 二〇〇二年三月に、中小企業庁の委託事業として、自営中小企業者の家族の労働と健康に関する調査研究委員会報告書が出されました。これは二十二年ぶりの、政府として行った調査ということで、関係者、業者婦人の間からも大変喜ばれております。これは、百四十六国会で採択されました、業者婦人の支援施策を求めた請願署名という項目の具体化でもありまして、私どもは、そういう二十二年ぶりという点で評価もしているところでございます。
 それで、中小企業庁としては、この報告書の結果を内容の特徴も含めてどのように評価していらっしゃるか、若干伺いたいと思います。

○川口政府参考人 近年、働く女性を取り巻く環境も大きく変化していることを踏まえまして、昨年度、自営中小企業に携わる女性について、労働や健康、さらには経営等の側面から、その実態や抱える課題等を把握するため、御指摘のありました調査を行ったところでございます。
 本調査によりまして、自営中小企業に携わる女性をめぐる労働状況に関しましては、労働時間の短縮や休日の機会の増加等、従前に比して全般的に改善されてきているという結果が出ておりますが、仕事と家庭で重要な役割が期待される中、近年の厳しい経済情勢も反映しまして、経営面でのさまざまな課題やニーズ等を抱えていることが改めて認識されたところでございます。
 中小企業庁といたしましては、本調査の結果も踏まえまして、全国各地の商工会、商工会議所等を通じまして、例えば経営に役立つ情報の提供やITに関する研修等、自営中小企業に携わる女性のニーズに対応した取り組みが積極的に行われるよう、引き続き努力してまいります。

○石井(郁)分科員 この調査は全国商工会連合会に委託されて行ったということですけれども、この調査の対象数、サンプルがどのくらいだったのか。それから、私が見たところ、業者が集中している大都市圏、政令指定都市など、そういうところがどうも少ないんですね。その辺の事実関係をちょっとお示しください。

○川口政府参考人 本調査につきましては、全国商工会連合会に委託したものでございまして、その傘下の全国各地に所在する商工会を活用いたしまして実態調査を行ったものでございます。全国で六百の商工会地域の自営女性約六千名に対しまして、調査票を送付して回収し、調査を実施いたしました。
 商工会の地域は町村が多くなっておりますけれども、市の区域や都市部も含まれております。したがいまして、調査対象地域も町村が多くなっておりますが、一部の都市部地域も含まれておるところでございます。

○石井(郁)分科員 首都である東京で見ますと、中規模の六市のみなんですね。それから、私は大阪ですから大阪の例で申し上げますと、大阪府下で四つなんですよ。泉南市、四条畷市、富田林市、河内長野市。大阪に詳しい人が見たら、これは新興住宅地や農地を含むところであって、もちろんそこにも自営商工業者がいらっしゃいますけれども、圧倒的に大阪市とか有名な東大阪市とか、そういう部分がないというのは何か理解に苦しむということがあるんですね。
 各都道府県、都市で市町村のサンプル数、例えば北海道だと三十幾つというふうにありますが、北海道は面積も多いんだけれども、大阪で四つだ、四つしか取り上げられていないということになりますと、これで果たして自営商工業者の実態を正確につかんだことになるのかどうか。
 とりわけ、都市部というのは特有の問題を抱えているわけですから、しかも、圧倒的に業者数も多いということからしますと、私は、これはいかがかなという問題点を感じたわけでございます。
 今、内容等もお話しいただきましたけれども、内容を見てみますと、必ずしも改善されていると一言で言えるような感じはない。項目によって個別に見なくちゃいけないんですけれども、例えば労働時間、これは、二十二年前と比べて、平均が「七〜八時間未満」と答えた人が一九・五%と一番多くなっているということからして、「自営女性の労働時間は短くなっている」という結論なんですね。しかし、これは、一面では、長引く不況で仕事が少なくなっているわけだから、そういうことも考えられるわけでありますけれども、実態は本当にそうなのかということなんです。
 私、きょう、御紹介したいんですけれども、皆さん御存じと思いますが、業者婦人の全国団体として全国商工団体連合会婦人部協議会がございます。ここは、大体三年に一度、こういう業者婦人の実態調査を行っているわけでありまして、会員数の大体二割ぐらいは回答を寄せている。
 これは二〇〇〇年の実態調査でございますけれども、二万五千人の回答者です。ここは都市部が多いんですね。それによりますと、労働時間、「八時間〜十二時間未満」働いている業者婦人が一番多くて、三五・五%ですよ。「五〜八時間未満」は一七・五%ですから、倍に当たるということになっていますね。だから、「労働時間は短くなっている」とは到底言えないでしょう。
 だから、何を、どういう実態を調査するかによって結論は変わってくるわけでございますので、私は、この調査をもって業者婦人の実態はつかめた、わかったということで終わってほしくないというふうにまず申し上げたいと思うんですね。
 それで、ぜひ中小企業庁に申し上げたいんですけれども、今後も、こういう点では、もっとサンプル数も考え、あるいは地域や内容、項目等も考えて、やはり大都市区部ももっと組み込んだ調査が必要じゃないのかということをお考えになっているのかどうか。そしてまた、今後の課題も含めて皆さんの御決意のほどを聞かせてください。

○川口政府参考人 本調査では、自営中小企業に携わる女性のニーズといたしまして、経営に役立つ情報の提供であるとか、ITに関する能力の向上であるとか、講習会、研修会の開催等への関心が非常に高いということが確認されたところでございます。
 こうしたニーズにつきましては、地域を問わない共通のものであるというふうに私ども考えておりまして、商工会とか商工会議所において、こうしたニーズに対応した事業に積極的に取り組んでいくことによりまして、大都市部の自営中小企業に携わる女性のニーズにもこたえていけるものというふうに考えているところでございます。
 いずれにいたしましても、今後とも、中小企業を取り巻く環境の変化といったことを十分踏まえながら、しっかりと対応してまいりたいというふうに考えております。

○石井(郁)分科員 もちろん、今わかっている範囲で、あるいは共通する施策について積極的に取り組むというのは当然のことでありまして、それは大いにしていただきたいわけでございますけれども、私は、実態も正確につかんでいただく、また、調査というのは継続して意味があるわけですから、それはぜひやるべきだというふうに思います。
 この点で言いますと、今の御答弁だとどうもはっきりしていませんので、私は参画局にも伺っておきたいんです。
 計画にあるように、「実態の把握に努める」、その一歩が今できたわけですから、これで終わりにしないで、今私が申し上げましたように、この分野では本当に環境が激変している、変化が激しいということもありますから、引き続いて実態の正確な把握に努めるということで、局としてリーダーシップも発揮していただきたいというふうに思いますが、いかがでございますか。

○坂東政府参考人 十分な実態の把握、そして、関係者の方々の御意見を十分聞いた上で推進していきたいと思っております。

○石井(郁)分科員 重ねてですけれども、業者婦人の実態調査の一層の充実を引き続き求めていきたいと思います。
 次の問題でございますが、中小業者の営業を支えている、経営を女性が支えているということは先ほど官房長官からも御答弁いただきましたけれども、その経営を支えているという面について、長年の切実な要求として出てきているのが自家労賃という問題なんです。
 この問題というのは、業者婦人や家族従業者が経営を担っているということはもうはっきりしている、幾ら長時間働いてもその働き分が認められないというか、賃金に結びついていないという問題なんですね。他人が働けば経費になるけれども、家族ではただ、まさにただ働きだという問題があるわけです。
 ちょっと実態を申し上げますと、従業員が帰った後で夜中まで働いている、だけれども、時間給にすればパートにも及ばないようなことがある、八時間労働で生活できる工賃をぜひ保障してほしいというようなことですね。それから、大企業、親企業が工賃を決めるときに下請業者の家族一人一人の労働分を考えてほしいというようなことは、自営商工業者の本当に切実な要求としてあるわけでございます。
 この業者婦人の方の働き分が認められないという問題は、社会保障の上でも、また、社会生活のいろいろな分野でも、大変影響を持っておりまして、私は一つ例を申し上げるんですが、子供を保育園に入れたい、所得証明が大体必要だけれども、その証明がもらえないということで、かわりに、民生委員に、この人は家業を手伝っていますよ、そういう証明書をもらって行かなければいけないというようなことがいろいろあるんですね。
 ですから、このように自家労賃の問題というのは、業者婦人のまさに人格、人権、労働を認めるかどうかという本当に基本的な問題を抱えていると言わなければなりません。
 まず、これも男女共同参画局長にぜひ伺いたいと思います。
 私、冒頭に申し上げましたように、基本法ができて、基本計画ができていますが、この基本計画の中では非常にあっさりした項目しかありませんので、また、この問題について触れている部分もありませんので、こういう実態や要求についての御認識をどのように持っていらっしゃるか、伺っておきたいと思います。

○坂東政府参考人 ただいま御指摘のように、個人所得課税におきまして、事業主から生計を一にする親族に支払われる対価については、原則として、所得金額の計算上、必要経費にならないものとされておりまして、そういう数字としてなかなか上がってこない。
 ただし、青色申告者については、その正確な記帳、記録に基づく家計と事業の分離が行われるものと認められるので、それは必要経費として算入されている。
 そしてまた、こういった事情にない白色申告者の場合については、現に家業に従事している家族従業員を専業主婦のような従事していない家族と同一に扱うのは問題ということで、配偶者控除、扶養控除にかえまして、特別の控除、配偶者の場合は八十六万円、配偶者以外は五十万円の白色専従者控除の適用が認められているという現状ですけれども、引き続き、こういった措置が男女の社会における活動の選択に対してどういう影響を与えているのか、本当にライフスタイルの選択に中立的であるかどうかという観点から、その適切な状況把握に今後とも努めていかなければならないと思っております。

○石井(郁)分科員 この問題でも、地方自治体の方では一定の前向きな部分というのが既にもう出てきているんですね。自治体の方は、とにかく、働いている人たちが目の前にいらっしゃるわけですから、もっと切実だと思うんですね。
 業者婦人などの実態調査をした地方自治体から、こういうことが上がってきています。
 高知市の例を申し上げたいんですが、「女性事業主、家族従業者の報酬や労働時間、休日・休暇の取り決めの有無」ということで質問をちゃんとされていまして、こういうふうに言っています。家族従業者は長時間働いても賃金、給料に結びついていないということで、「家族労働者の労働性については法的な整備が必要」である。
 だから、地方自治体からは、やはりこういう問題を解決するには法的な整備が必要だという声が上がっているんですよ。これは国として本当に受けとめなければいけない。そういう点では国の方がおくれちゃっているわけですよ。こういう点で、私は問題を提起したいわけです。
 日本が何でこの働き分が必要経費として認められないのかということで言うと、本当に例外的なんですね。
 これは御存じと思いますけれども、サミット諸国では、自家労賃問題でどうなっているかということで言いますと、事業のために必要な経費、事業の目的のための給与、対価として合理的な金額であることとして、アメリカの場合は、必要な経費ないし損益として控除する。イギリスの場合は、世帯主の事業所得の必要経費として控除する。西ドイツの場合も、必要経費として控除される。カナダの場合は、事業者の所得から控除できる。
 だから、家族従業者、つまり、女性の働き分については、きちんと必要経費として控除されるということになっているんです。だから、日本だけなんですよ。日本だけが何か例外的です。
 何でこういうことになっているのか。きょうは、シャウプ税制以来のそういう税制論議のことに入ることはちょっと時間的にできませんけれども、こういう事態をこのままにしておいていいのかという問題意識は、当然、男女共同参画という立場からも持ってしかるべきだというふうに私は思うんですね。いかがでございますか。

○坂東政府参考人 配偶者とその親族の賃金が経費として算入されているかどうか、個別の国については幾つか把握しているようですけれども、国際的にどういうふうな状況なのか、そもそも白色申告制度あるいはそれに類似したものがあるかどうかも含めて、制度全体について調査する必要があるのではないかというふうに担当の部局の方でも考えているようでございます。

○石井(郁)分科員 一つは、法的な整備の必要ということを私は申し上げましたけれども、日本の所得税法の五十六条、ここが実はネックになっているんですね。配偶者とその親族が事業に従事したとき、対価の支払いは必要経費に算入しないとはっきり書いているわけですから、だから、これをもってして、できませんとなっているんですよ。ここのところは、やはり税制の問題として今後検討が必要だと私は思います。
 私がきょう申し上げたかったのは、こういう税制のままにしておくことが、女性の地位向上あるいは女性の権利という点から見て本当にいいのかどうか、二十一世紀の日本の社会を考えたときにこのままでいいのかという問題意識を少なくとも男女共同参画局は持っていただきたいなという意味で申し上げているわけでございます。
 この部分は研究も多いとはまだまだ言えないんですけれども、私がちょっと見た中では、なぜ日本だけがこうなっているかということについて言いますと、我が国では明治維新まで身分制度だ、戦後に至るまで家父長制的な家制度が存続してきたという点がやはり絡んでいる、これが税制に反映しているんだ、こういう規定が残されている、形成されてきているんじゃないかという研究もございますので、今後、この点もきちんと見ていただきたいと思います。
 何度も申しますけれども、女性の自立、地位向上ということが二十一世紀の私たちの大きな課題となっている中で、こういう古い家制度の名残みたいな部分を引きずっていていいのかという点で、そういう問題意識を持っていただきたい、あるいはきちっと研究もしていただきたいということを参画局にお願いしたかったわけでございます。
 重ねて御答弁いただければ、前向きな御答弁をいただければありがたいかと思います。

○坂東政府参考人 税等の制度が女性のライフスタイルの選択に中立的であるかどうか、そういった観点から、いろいろな制度について十分検討してまいりたいと思います。

○石井(郁)分科員 申し上げましたように、世界から見て異常なことになっているという点で、私は、その辺の改善が本当に急がれるんじゃないかというふうに思います。
 大事なのは、自家労賃を認めるような法整備ということを私は申し上げましたけれども、独立した納税者として認めていくということなんですね。それから、一人一人の人件費の問題として扱っていくという問題だというふうに思いますので、男女共同参画局が、これは局だけでできないと思いますから、関係省庁とも大いに連携をとりながら、この点でもぜひ参画局がリーダーシップをとって大いに問題にのせていただきたいということを重ねて強調しておきたいと思います。
 時間なんですけれども、もう一点。
 きょう、質問する時間がなかったんですが、今、国民健康保険の問題で、国保は三割なのに何でサラリーマンの分を三割にしてはいけないのかという議論になっていますけれども、しかし、国保も、三割という中で、実にまだまだ足りない部分というのはいっぱいあるんですね。その一つが、これも問題になっておりますけれども、傷病手当とか出産手当、業者の婦人からすると最も必要なそういう手当がないという問題なんです。
 御紹介だけしますけれども、これも、自治体の中では研究もされ出してきています。きょうはずっと大阪の例ですが、大阪の吹田市というところですけれども、こういうことを言っているんですね。被保険者の入院件数、入院日数、出産件数などの実績をもとに大阪府の最低賃金を適用すれば約八億円、一人当たりの保険料への影響として考えられると試算して、それから、どのぐらいでこういう傷病手当、出産手当がちゃんとできるのかということで、こういう試算まで始まっている。
 私は、自治体がそこまでやり出しているわけですから、国自身がこういう試算、算定も含めてその実現の道を開く努力を大いにしてもらいたい、していくべきだということを申し上げておきたいと思います。
 時間が参りました。きょうは、業者婦人の実態を含めて、今後、施策としてぜひ取り組んでいただきたいことを申し上げました。日本経済を支えている、本当に重要な役割を持っている業者婦人でありまして、それを実現させるという点での緊急性が非常にあると思います。そういうことで、重ねて、計画の充実、そしてまた具体的な施策の発展ということをお願いいたしまして、質問を終わります。
 どうもありがとうございました。

○亀井(善)主査代理 これにて石井郁子君の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――

○亀井(善)主査代理 次に、皇室費について審査を進めます。
 政府から説明を聴取いたします。羽毛田宮内庁次長。

○羽毛田政府参考人 平成十五年度における皇室費の歳出予算について、その概要を御説明申し上げます。
 皇室費の平成十五年度における歳出予算要求額は六十九億八千三百六十一万三千円でありまして、これを前年度当初予算額七十億一千二百八十五万八千円と比較いたしますと、二千九百二十四万五千円の減少となっております。
 皇室費の歳出予算に計上いたしましたものは、内廷に必要な経費、宮廷に必要な経費及び皇族に必要な経費であります。
 以下、予定経費要求書の順に従って事項別に申し述べますと、内廷に必要な経費三億二千四百万円、宮廷に必要な経費六十三億六千百九十三万三千円、皇族に必要な経費二億九千七百六十八万円であります。
 次に、その概要を御説明いたします。
 内廷に必要な経費は、皇室経済法第四条第一項の規定に基づき、同法施行法第七条に規定する定額を計上することになっておりますが、前年度と同額となっております。
 宮廷に必要な経費は、内廷費以外の宮廷に必要な経費を計上したものでありまして、その内容といたしましては、皇室の公的御活動に必要な経費七億二十二万二千円、皇室用財産維持管理等に必要な経費五十六億六千百七十一万一千円でありまして、前年度に比較して一千六百十三万円の減少となっております。
 皇族に必要な経費は、皇室経済法第六条第一項の規定に基づき、同法施行法第八条に規定する定額によって計算した額を計上することになっておりますが、前年度に比較して一千三百十一万五千円の減少となっております。これは、憲仁親王の薨去等に伴うものであります。
 以上をもちまして平成十五年度皇室費の歳出予算計上額の説明を終わります。
 よろしく御審議くださいますようお願いいたします。

○亀井(善)主査代理 以上で説明は終わりました。
 別に質疑の申し出もありませんので、皇室費については終了いたしました。
 それでは、御退席くださって結構です。
    ―――――――――――――

○亀井(善)主査代理 次に、国会所管について審査を進めます。
 まず、衆議院関係予算の説明を聴取いたします。谷衆議院事務総長。

○谷事務総長 平成十五年度の衆議院関係歳出予算について御説明申し上げます。
 平成十五年度の国会所管衆議院関係の歳出予算要求額は六百八十三億七千六百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、六億三千二百万円余の減額となっております。
 次に、その概要を御説明申し上げます。
 第一は、国会の運営に必要な経費でありまして、六百五十五億二千二百万円余を計上いたしております。
 この経費は、議員関係の諸経費、職員の人件費並びに事務局及び法制局の事務を処理するために必要な経費であります。
 増加した主なものは、新議員会館建設に係る民間資金等活用事業調査経費及び民間資金等を活用した赤坂議員宿舎整備等事業費等でございます。
 一方、減少した主なものは、議員歳費、議員秘書手当及び職員の人件費でございます。
 なお、永年在職表彰議員特別交通費は、支給制度廃止により、計上いたしておりません。
 第二は、本院の施設整備に必要な経費でありまして、二十七億九千八百万円余を計上いたしております。
 この主なものは、本館変電施設、機械設備の中央監視装置、セキュリティー施設及び本館等庁舎の整備等に要する経費でございます。
 第三は、国会予備金に必要な経費でありまして、前年度より四千八百万円増の五千五百万円を計上いたしております。
 以上、簡単ではありますが、衆議院関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。
 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

○亀井(善)主査代理 次に、参議院関係予算の説明を聴取いたします。川村参議院事務総長。

○川村参議院事務総長 平成十五年度参議院関係歳出予算について御説明申し上げます。
 平成十五年度国会所管参議院関係の歳出予算額は四百二十億五千万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、五億九千七百万円余の減額となっております。
 次に、その概要を御説明申し上げます。
 第一は、国会の運営に必要な経費でありまして、三百九十六億四千五百万円余を計上いたしております。
 この経費は、議員関係の諸経費、職員の人件費並びに事務局及び法制局の所掌事務を処理するために必要な経費であります。前年度に比較し五億三千五百万円余の減額となっておりますが、これは、主として、人事院勧告に伴う人件費所要額の減等によるものであります。
 第二は、参議院施設整備に必要な経費でありまして、二十三億九千九百万円余を計上いたしております。これは、傍聴参観テレビ中継施設本体工事、本館変電施設改修、麹町議員宿舎電気施設改修及び本館その他庁舎等の施設整備に必要な経費でございます。
 第三は、国会予備金に必要な経費でありまして、前年度同額の五百万円を計上いたしております。
 以上、平成十五年度参議院関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。
 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

○亀井(善)主査代理 次に、国立国会図書館関係予算の説明を聴取いたします。黒澤国立国会図書館長。

○黒澤国立国会図書館長 平成十五年度国立国会図書館関係歳出予算について御説明申し上げます。
 平成十五年度国立国会図書館関係の歳出予算要求額は二百三十八億七千五百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、二十三億九千二百万円余の減額となっております。
 次に、その概要を御説明申し上げます。
 第一は、管理運営に必要な経費であります。その総額は二百六億四千三百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、五億六千六百万円余の減額となっております。
 これは、主として、前年度に東京本館から関西館ヘの資料移転が終了したこと等に伴い生じた減額によるものであります。
 第二は、科学技術関係資料の収集整備に必要な経費でありまして、九億七百万円余を計上いたしております。これを前年度予算額と比較いたしますと、一億円余の増額となっております。
 これは、科学技術分野の主な外国雑誌の電子ジャーナルを拡充するための経費の増額であります。
 第三は、施設整備に必要な経費でありまして、二十三億二千四百万円余を計上いたしております。これを前年度予算額と比較いたしますと、十九億二千五百万円余の減額となっております。
 これは、主として、関西館の新営工事が前年度に終了したことに伴い生じた減額によるものであります。
 以上、平成十五年度国立国会図書館関係の歳出予算について御説明申し上げました。
 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

○亀井(善)主査代理 次に、裁判官弾劾裁判所関係予算の説明を聴取いたします。天野裁判官弾劾裁判所事務局長。
    〔亀井(善)主査代理退席、主査着席〕

○天野裁判官弾劾裁判所参事 平成十五年度裁判官弾劾裁判所関係歳出予算について御説明申し上げます。
 平成十五年度国会所管裁判官弾劾裁判所関係の歳出予算要求額は一億一千九百七十六万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、二百七十六万円余の減少となっております。
 この要求額は、裁判官弾劾裁判所における裁判長の職務雑費、委員旅費及び事務局職員の給与に関する経費、その他の事務処理費並びに裁判官弾劾法に基づく裁判官の弾劾裁判に直接必要な旅費及び庁費であります。
 以上、簡単でありますが、裁判官弾劾裁判所関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。
 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

○持永主査 次に、裁判官訴追委員会関係予算の説明を聴取いたします。高田裁判官訴追委員会事務局長。

○高田裁判官訴追委員会参事 平成十五年度裁判官訴追委員会関係歳出予算について御説明申し上げます。
 平成十五年度国会所管裁判官訴追委員会関係の歳出予算要求額は一億三千四百六十五万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、四百八十一万円余の減額となっております。
 この要求額は、裁判官訴追委員会における委員長の職務雑費及び事務局職員の給与に関する経費並びに訴追事案の審査に要する旅費、その他の事務費であります。
 以上、簡単でありますが、裁判官訴追委員会関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。
 よろしく御審議のほどをお願いいたします。

○持永主査 以上で説明は終わりました。
 別に質疑の申し出もありませんので、国会所管については終了いたしました。
 それでは、御退席くださって結構です。
    ―――――――――――――

○持永主査 次に、裁判所所管について審査を進めます。
 最高裁判所当局から説明を聴取いたします。竹崎事務総長。

○竹崎最高裁判所長官代理者 平成十五年度裁判所所管歳出予算について御説明申し上げます。
 平成十五年度裁判所所管歳出予算の総額は三千百七十八億三千百万円でありまして、これを前年度当初予算額三千百七十一億四百万円と比較いたしますと、差し引き七億二千七百万円の増加となっております。
 次に、平成十五年度歳出予算のうち、主な事項について御説明申し上げます。
 まず、人的機構の充実、すなわち、裁判官、書記官及び家裁調査官の増員であります。
 司法制度改革を推進するに当たり、裁判所の人的充実が強く求められていることを踏まえ、増加し、かつ、複雑困難化している民事関係事件等の適正かつ迅速な処理を図るため、裁判官四十五人、書記官四十七人、家裁調査官五人、合計九十七人の増員並びに振りかえによる書記官百七十五人及び家裁調査官二十五人の増加をすることとしております。
 他方、平成十五年度には四十三人の定員を削減することとしておりますので、差し引き五十四人の純増となります。
 次は、司法の体制の充実強化に必要な経費であります。
 まず、裁判関係経費の充実を図るため、二百三十五億八千五百万円を計上しております。
 その内容について申し上げますと、第一に、民事関係事件の事務処理態勢の充実を図るための経費として八十五億七千二百万円を計上しております。この中には、民事調停委員手当、民事裁判事務処理システム経費等が含まれております。
 第二に、刑事訴訟事件の事務処理態勢の充実を図るための経費として八十四億三千五百万円を計上しております。この中には、国選弁護人報酬、刑事裁判事務処理システム経費等が含まれております。
 第三に、家庭事件の事務処理態勢の充実を図るための経費として六十四億六千二百万円を計上しております。この中には、家事調停委員手当、少年事件処理システム経費等が含まれております。
 第四に、法律改正に伴う経費として一億一千六百万円を計上しております。この中には、人事訴訟の家庭裁判所移管経費、いわゆる非常勤裁判官である調停官制度創設経費等が含まれております。
 また、裁判所施設の整備を図るため、裁判所庁舎の新営、増築等に必要な経費として百二億九千七百万円を計上しております。
 以上が、平成十五年度裁判所所管歳出予算の概要であります。
 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

○持永主査 以上で説明は終わりました。
 別に質疑の申し出もありませんので、裁判所所管については終了いたしました。
 それでは、御退席くださって結構です。
    ―――――――――――――

○持永主査 次に、会計検査院所管について審査を進めます。
 会計検査院当局から説明を聴取いたします。杉浦会計検査院長。

○杉浦会計検査院長 平成十五年度会計検査院所管の歳出予算について御説明いたします。
 会計検査院の平成十五年度予定経費要求額は百九十六億二千五百三十四万余円でありまして、これは、日本国憲法第九十条及び会計検査院法の規定に基づく、本院の検査業務及び一般事務処理を行うために必要な経費であります。
 この要求額の内容について申し上げますと、人件費として百三十七億四千九百万余円、中央合同庁舎第七号館の整備に伴う本院の移転等の経費として二十六億六千九百万余円、その他の経費として三十二億六百万余円を計上いたしました。
 これらには、会計検査機能を充実強化するため、行財政改革の動向に適切かつ機動的に対応した検査を遂行するための検査要員の増強等、有効性検査、情報通信技術を活用した検査及び海外検査等の充実を図るための検査活動充実強化経費、検査活動に資する研究及び検査能力向上のための研修の充実を図るための研究・研修経費が含まれております。
 以上、簡単でありますが、会計検査院の平成十五年度予定経費要求額の概要の御説明を終わります。
 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

○持永主査 以上で説明は終わりました。
 別に質疑の申し出もありませんので、会計検査院所管については終了いたしました。
 それでは、御退席くださって結構です。
    ―――――――――――――

○持永主査 次に、内閣及び内閣府所管について審査を進めます。
 内閣府本府について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津川祥吾君。

○津川分科員 民主党の津川祥吾でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 きょうは、想定されます東海地震とそれに関連した地震対策を中心に、鴻池防災担当大臣初め政府に質問させていただきます。
 まず、東海地震の話に入る前に、つい先日、二十四日でありますが、新疆ウイグル自治区で地震が発生いたしました。大変大きな災害が発生しているという報道がなされておりますが、今、政府として、防災担当大臣として、この現状をどのように把握されていらっしゃるか、お伺いいたします。

○鴻池国務大臣 日本時間でございますけれども、二月二十四日午前十一時ごろ、中国北西部でマグニチュード六・八の強い地震が発生いたしました。国連機関等関係機関から収集いたしました情報によりますと、これまでに、死者二百五十人以上、負傷者四千人以上が発生して、家屋や学校など二万七千戸以上が倒壊しておる、こういう情報であります。
 海外で大規模な地震等の災害が発生した場合、我が国の今後の防災対策に資するため、相手国政府の協力を得て、被害の状況や原因、対応の体制等について調査を実施してきたところであります。例えば、二〇〇一年一月にインド西部で発生しました地震では、インド政府の協力を得て、調査団を現地に派遣して調査を実施しております。
 今回の地震につきましても、神戸にありますアジア防災センターや国連機関と協力いたしまして、被害状況や原因等に関する情報を収集し、分析し、我が国の防災対策の参考としたいと思っております。
 これは外務省の方の御答弁になるかもしれませんけれども、昨夜、中国政府から支援の要請がありまして、現在、外務省の方で、どのような支援の要請か、分析いたしまして、それに対応していく、こういうふうな構えがございます。
 以上であります。

○津川分科員 ありがとうございます。
 外務省さんにも来ていただいていますので、それでは、昨夜ですか、来た要請について御説明いただければと思います。

○齋木政府参考人 お答え申し上げます。
 きのう、二十六日でございますけれども、中国政府の方から、北京の大使館に対しまして、この大きな地震で受けた被害に対応するために、日本側からも何らかの物資あるいは資金の供与、こういったものをぜひよろしくお願いしたいという要請が参りました。
 これを受けまして、私ども、通常、こういう大きな地震が海外で起きましたときには、緊急の物資として、例えばテントとか毛布あるいは発電機、こういったものを供与することで対応しておりますけれども、今回の中国側からの支援要請を受けまして、ただいま財務省当局とも相談をしながら、どういう形でこういう物資の供与をするかということを、まさに今、進めておるところでございます。
 以上でございます。

○津川分科員 済みません。もう一回、外務省にお伺いしたいのですが、その結論をいつごろ出されるのか。緊急事態でありますから、まだ決まっていないことですから何日とは言えないかもしれませんが、大体どのくらい、数日中までというような結論が出るか、それをお答えいただければと思います。

○齋木政府参考人 まさに、きのうの夜の要請でございますから、それを受けまして、ゆうべ、それからまたけさも、財務省当局とも相談しておりますので、本当に早急にこの支援の供与を行いたいと思っております。

○津川分科員 ありがとうございます。
 外務省の方は、どうもありがとうございました。
 大臣、先ほどお話がありましたが、私は東海地域に住む人間でもありますが、あのような、想定されるような大災害、大地震というものは、そうそう起こるものではありません。八年前の阪神・淡路大震災というのは忘れてはならない記憶ではありますが、それも、地域の特殊性、いろいろなものがあると思いますし、全く同じ地震が起こるわけではありませんから、多くの事例を、やはり現場に行って、見て、経験してくるということは非常に重要なことだと思います。
 先ほども触れていただきましたが、二〇〇一年のインドでの地震のときは、政府も対応していただいた。ただ、例えば、昨年、イランでも地震がございまして、そのときも数百名の死者が出たかと思います。そういった地震にかかわる災害、それ以外も、もちろん水害とかいろいろありますが、特に地震にかかわる災害に関してだけとっても、必ずしも日本の政府が何らかの対応をしているとは限らない。
 先方の国から何か要請があったときに、それに対応するというのがもちろん第一、重要なところなのかもしれませんが、ただ、我が国の地震対策ということを考えるときには、特に、今回起こった地域は非常に寒い地域で、今も非常に寒い状態だそうでありますから、本当にすぐに対応しなきゃならない。そのような人道的な意味も含めて、ぜひとも積極的に対応していただきたい。
 そこで、実際に今起こっていることが建物の倒壊、その中に閉じ込められた方が非常に多いのではないかということが言われておりますから、そういった方々を助け出すノウハウというのは、特に私どもは阪神・淡路大震災のときに経験したわけでもありますし、そういったものをぜひ早い段階で活用していただきたい。あるいは、日本の建物とはちょっと違う建物であれば、また別のノウハウが必要になるかもしれませんが、そういったものを国際協力の中で共有していく。先進国であろうが、発展途上国であろうが、どこの国であったとしても、そういったノウハウを持っている国がとにかくイの一番に飛んでいくということが非常に重要なのではないかというふうに思います。
 今回の地震を受けまして、いろいろな報道がなされました。神戸の震災を受けられた方々も何か募金活動を始められたという話もありますけれども、私、けさまで一生懸命探しましたが、政府として何かコメントを出したでしょうか。これは官房長官になるのか、どなたになるかわかりませんが、一言、何か触れていただいてもいいのかなというふうに思います。官房長官がもし触れられなかったとしても、防災担当大臣として、そのためだけに記者会見を開いていただいても結構だと思いますから、こういうような状況があったから日本として要請があればすぐに対応したいというようなコメントをぜひ言っていただきたいと思いますが、お答えいただけますか。

○鴻池国務大臣 すべからく、委員御指摘のとおりであろうかと存じます。すぐさま、官房長官と連絡をとりながら対中国に対するコメントというものを考えなきゃいかぬ。ただいま、そう思いました。それで、先ほど外務省の方から、要請があった、それをいかがするかということを緊急に対応しているということでございますので、あわせて、できましたら官房長官から何かの御発言をいただくようにしたいと思います。
 それと、反論は全くする気はありませんが、実は、私は阪神・淡路大震災の被災者でございまして、家が倒壊した、それを助けるノウハウというお話でございました。決して反論じゃありません。これは、ノウハウはないのです。家族が引っ張り出すか、向こう三軒両隣のおじさんが元気でぐっと引っ張り出さないと、自衛隊がやってきたのは二日後でありまして、いわゆる実力部隊が動き出すのは随分時間がかかるなと実感いたしました。
 しかし、その八年前の反省というものを生かしながら、今委員おっしゃいました情報の共有ということをテーマに、そういう部会も設けたり、あるいは、三十分以内に一キロ四方の情報がすべて入って、倒壊家屋何件、死者何人とシミュレーションができるような体制も、大震災の大きな反省としてやっておるということも御報告申し上げておきたいと思います。
 以上であります。

○津川分科員 ありがとうございます。
 まさに人命がかかわっている話でありますし、これから日本から飛んでいっても時間がかかりますから、まず情報をお伝えして、こういうときにはまずこういうものを準備した方がいいとか、現場ではこういう対応をした方がいいという情報だけでも、ちょっと離れた地域は地震のよくある地域で、災害が大きかった地域は地震を余り想定していなかった地域という話も伺っていますから、何かあったときにまず何をしたらいいかという情報を伝えるだけでも非常に有効になるのかなと思いますので、まさに大臣御自身が経験されたことでもありますから、積極的にこれを生かしていただきたいと思います。
 それでは、想定されます東海地震対策について質問させていただきます。
 一昨年の十二月になりますが、中央防災会議の中の東海地震に関する専門調査会が最終的な報告書を提出いたしておりますが、その報告を受けて主要な公共施設の耐震性をもう一度チェックしたかどうかということを、私どもが昨年の秋に、予備的調査ということでさせていただきました。その段階ではまだ対応していないというようなお話もございましたが、現在どうなっているかということをお答えいただければと思います。
 まず、東名高速道路でありますが、東名高速道路等の主要幹線道路の耐震性はそういった最新の知見を受けて十分安全と言えるかどうか、それはどのように、いつ検証をなされたかということを御説明いただければと思います。

○榊政府参考人 お答え申し上げます。
 東名高速道路でございますが、昭和三十七年から四十四年に建設されておりまして、当時の技術基準では、関東大震災程度の規模が発生いたしましても落橋が生じないということを目標として耐震設計を行ったところでございます。
 また、兵庫県南部地震の発生を契機にいたしまして、関東地震に代表される規模のプレート境界型地震及び兵庫県南部地震に代表される規模の内陸直下型地震が発生した場合においても早期の復旧が可能な程度の損傷にとどまることを目標といたしまして、当時の知見におきまして可能な限りの耐震性を確保すべく、耐震設計に関する技術基準を改定いたしまして、この基準に基づく耐震補強を東名高速道路についても実施いたしておりまして、本年度中に完了する予定でございます。
 昨年の九月に、東海地震の想定震源域における推定地震動の加速度波形というものが示されましたので、この新たな知見が加わったことを踏まえまして、現在、東名高速道路の構造物につきまして、東海地震における最新の知見での耐震性の照査を行っている最中でございます。

○津川分科員 ちょっと確認なんですが、東海地震に関する専門調査会の報告というのは一昨年の十二月なんです。今のお答えは、昨年の九月にその地震動の波形がはっきりしたという話ですが、それまでははっきりしていなかったのですか。ちょっとお答えいただけますか。

○榊政府参考人 昨年の九月に、内閣府の方から、東海地震の想定震源域における推定地震動の加速度波形というものが新たに示されましたので、それを受けまして、地盤における地震がどうなのかということと、それから、それに乗っております構造物がどういう影響を与えられるかということを照査する必要が生じましたので、現在、それをやっておるところでございます。

○津川分科員 同様に、JRさんでありますが、東海道新幹線の耐震性についてどのように対応がなされたか、お答えいただけますでしょうか。

○白取政府参考人 東海道新幹線でございますけれども、これは昭和三十九年に開業しております。昭和五十三年の大規模地震対策特別措置法が施行されて以来、さまざまな、落橋防止工でありますとかトンネルの補強等をやってまいりました。さらに、平成七年の阪神・淡路大震災を踏まえまして、同クラスの地震動にも耐えられるということで、高架橋の補強等もやっております。
 また、今回、先ほどありましたように、内閣府から、推定地震動による加速度波形が示されましたので、現在、東海道新幹線のさまざまな構造物に対応した照査を行っているところでありまして、これの結果を踏まえまして必要な検討を行っていくこととしております。

○津川分科員 もう一つなんですが、その震源域の中に原子力発電所がございます。浜岡原子力発電所の耐震性については、同様の最新の知見に関する検証というものはどのようになされたか、お答えいただけますでしょうか。

○薦田政府参考人 お答えいたします。
 浜岡につきましては、浜岡三号機から五号機は、原子力安全委員会の指針に基づきまして、まず、マグニチュード八・〇の想定東海地震や、これを上回りますマグニチュード八・四の安政東海地震、さらには、マグニチュード八・五の限界的な地震を考慮いたしました基準地震動に対して、耐震設計が行われてきているところでございます。また、一、二号機でございますけれども、これも、浜岡三号機から五号機の基準地震動に対しまして、耐震安全上問題がないことを確認しているわけであります。
 今般、今先生から御指摘ございましたように、中央防災会議の東海地震に関します専門調査会におきまして、想定東海地震の震源域の見直しが行われたわけでございますけれども、まず、地震の規模そのものはマグニチュード八・〇のままでございまして、変更されていないということであります。
 今回、この確認に当たりましては、当院からの指示を行いまして、中部電力におきまして、中央防災会議から提供されました今回の強震動データに基づきまして、この浜岡原子力発電所での地震動、応答スペクトルというものを計算しております。
 昨年の十月四日付で提出されているわけでありますけれども、これによりましたところ、原子力発電所の安全上重要な施設の固有の周波数帯におきまして、この浜岡三号機から五号機の基準地震動というものを見ますと、十分安全サイドにあるということでございまして、浜岡原子力発電所の耐震性に問題がないことを改めて確認したとされているところであります。
 当然、これは中部電力で行ったものでありますから、当院におきまして、このレポートを受けまして調査いたしましたけれども、当院といたしまして、この中部電力の評価というものは妥当なものというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。

○津川分科員 大臣、今、東名高速、東海道新幹線、浜岡原子力発電所、それぞれ同じ質問をさせていただきました。
 当然、これまでも耐震性というのを一生懸命やっていただいたし、阪神・淡路大震災の後の、さらに補強対策というのもやっていただいたはずです。ただ、それとはちょっと別の視点から地震波形というものを計算して、各地点でどのくらいになるかということが計算できるというのがこの専門調査会の答申ですね。
 それを受けて、中部電力さんは対応したと。結論は昨年の十月に出ているんです。それがどうかということに関してはまた経済産業省さんでされるにしても、中部電力はした。東海道新幹線と東名高速は今やっているんです、去年の九月に何か出てきたから。
 これが出たのは、昨年じゃなくて、おととしの十二月なんです。この段階で、各地点の地震波形はまだ必ずしも示されていないかもしれません。もう少し細かく見て、それぞれの構造物のところの地震波形なりなんなりをもう一回計算し直さなきゃいけない可能性はありますが、それにしても、こういうものが出てから、一方では、もう昨年の十月に出ているのに、もう一方では、今やっているというんです。
 確かに、浜岡原発の安全性確保というのは非常に重要です。非常に重要ですが、東名高速と東海道新幹線はそれに比べてそうでもないとは、決して言えないと思います。非常に重要なものでありますが、それがなされていない。
 今の国土交通省さんのお答えによると、内閣府からの指示が遅かったというような話なんですよ。遅かったとはもちろん批判はされていませんが、なぜこれは遅くなったのか。それはもっと早くやってもよかったのじゃないでしょうか。

○山本政府参考人 今先生御指摘いただきましたように、一昨年の暮れには、各地域の地震の震度がどういうふうになるか、震度の分布について、全体像を整理して専門調査会の結論をいただきました。なぜ急いで全体の震度分布を出していただいたかといいますと、それが大規模地震対策特別措置法に基づく強化地域を指定するベースになりますものですから、急いで出していただいて、それに基づいて、昨年の四月に、強化地域の見直しというのをやりました。
 ただ、実際の加速度の波形に関するデータ、コンピューターのデータを、防災計画をつくってやります各行政機関に対してお示しするには、いろいろな意味のデータのチェックというのが必要だったようでございます、専門家の話を聞きますと。ですから、暮れに震度分布を発表した後に、そういう、間違いがないような縦横のチェックをした上で、国会の方にもデータをお示ししましたけれども、それと同じタイミングで各省にお示ししたというのが事実関係でございます。

○津川分科員 東海地震が余り切迫性が高まっていないならそういう対応もあったかもしれませんが、これが高まっている、だれが考えてもそう判断しなきゃいけない状況なんですね。
 そうである中で、なおかつ、非常に重要性の高い公共施設です。これは平成八年六月の、当時の総理府が行った「これからの国土づくりに関する世論調査」ですが、「災害に強い公共施設の整備に対する考え」ということで、五〇・八%の方が、費用が多くかかってもすべての公共施設の耐震性を強化していくべきだというふうに答えています。三六・二%の方が、費用が多くかからないように重要な公共施設に限って耐震性を強化していくべきだ。八〇%以上、八七%の方が、重要な公共施設に関しては、とにかく耐震性を強化してくれということをだれもが言っているんですね。
 その時々の最新の知見でやらざるを得ないですから、それでやったらすべて全く問題ないようになるかどうかは何とも言えないと思います。ただ、最大限の努力はやはりしていただきたい。
 それから、浜岡原発を管理されます中部電力さんができたのに、東名高速、東海道新幹線ができないはずがありません。もちろん、一カ所でやるのと長い線でやるのでは計算の量は全然違うかもしれませんが、それにしても、九月から始めましたというのではやはり遅いと思います。
 それから、この中身ですが、そもそも今回の報告書なんですが、この中身は、これで計算した地震波形で計算すれば必ず安全だということを担保するような報告ではないと思うのですね。これは、最終的な、「検討結果のポイント」というところに書いておりますが、強震動予測においては、新しい想定震源域をもとに、経験的手法と強震波形計算による二通りの手法で計算しているんですね。つまり、これまでは経験的な手法によってはやってきたけれども、広域の強震波形計算というものはこれまで例がなかった。これは、そういった意味で新しい手法で試みられたということだと思います。
 それで、内閣府にちょっとお伺いしますが、今回の一昨年の報告の中で幾つか確認させていただきたいと思います。
 破壊開始点というのを二カ所設定して計算しております。なぜ二カ所になったのかということが一つ。
 それから、アスペリティというのを六カ所設定しています。なぜ大体そのぐらいに設定したかというのは書いてあります。陸地対海が大体七対三だとか、それぞれのセグメントを三つに分けて二カ所ずつやっているから合計六カ所になるという話はわかります。
 ただ、今回設定したところ以外にアスペリティがないということを必ずしも書いているわけではないと思います。つまり、仮定としてこういうものを置いている、そういう置き方をして計算したらこうなりましたという話であって、極端な話、例えば何かの建物の下にアスペリティがあるかもしれない、その場合に、計算すればこれだけ大きくなるという計算もできるわけでありまして、今回の計算だけで、だから自分のある建物に関して計算したら安全だったと言えることではないんだと思いますが、それはいかがですか。

○山本政府参考人 地震という非常に大変な自然現象を相手にする場合の心構えについて、非常に大切な問題意識を御指摘いただいたと思います。
 私どもが、今回、中央防災会議に専門調査会を設けて、東海地震に関して改めてきちんと調査をしようということに取り組み始めました基本的な問題意識ですけれども、大規模地震対策特別措置法ができましてから、唯一の対象地震として東海地震を想定して法律を動かし始めて二十数年たっているわけです。その二十数年間に、特に近年、地震の発生のメカニズムについて大変な知見の進展が見られているわけです。
 こういう自然現象であってみれば、できるだけ最新の知見を駆使して地震防災対策を組み立てていきたい。もとより大自然現象ですので、何もかも私たちがそれを全部掌握できるということではありません、どんなに知見が進展しても。しかし、私たちが手にできる最新のものを駆使して組み立てたい、そういうことで、最先端の方々にお集まりいただいて専門調査会を組織いたしました。
 その場合に想定いたしましたいろいろな前提、震源域がどういうふうに滑り始めるかということについての幾つかの想定は、そういう最先端の先生方が、最もあり得る、起こり得ると考えられるところで設定したというものです。先生がおっしゃるように、幾つも想定はあると思うんです。あるんですが、最先端の方々が、そういう知見を集約して、そういうものだということで、想定東海地震はこういう姿をしているというのを明らかにしようとしたというものです。
 二つ、お尋ねがありました。
 破壊開始点については、海のプレートは下に沈み込んでいますから、今まで、深く沈み込んだ西側から破壊されているということが経験上明らかにされておりますので、西側につきまして、まず想定震源域の一番西の端について一つ、それから、深いところであって、なおかつ、最もひずみがたまりやすいという意味で立体的に湾曲が一番大きいというところの二カ所を想定して、それぞれについてシミュレーションしたということなんですね。
 それから、アスペリティについては、おっしゃるようにいろいろあるんですが、過去、実際に地震が起きたいろいろなデータがございます。それを詳細に分析しまして、我々がいろいろ仕事をする際にこういう想定が最もあり得るだろうということで、専門家の方々が設定していただいたというものでございます。

○津川分科員 もう時間ですから終わりますが、大臣、この報告をされた専門調査会の皆さん自身が指摘されていることなんですが、アスペリティというのは固着域が変化すれば変わる可能性があるという意味ですね。将来的には、しっかりそういったことも想定して対策をとらなきゃならない。対策については、今、東海地震対策専門調査会というのをやっていますね。この結論がこれから出るのでしょうけれども、ぜひ、もうこれで安全だということをとらずに、十分調査して、厳密に対応していただいて、公表していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

○鴻池国務大臣 こういう地震や火山といったものに対して、人の力でとどめるわけにはまいらぬものでございます。しかし、それに備えるということは人知でできるわけでございますので、なお一層、そのことについて研究を重ね、またスピードアップをしてまいりたい、このように思っております。

○津川分科員 どうもありがとうございました。

○持永主査 これにて津川祥吾君の質疑は終了いたしました。
 次に、松浪健四郎君。

○松浪(健四郎)分科員 おはようございます。保守新党の松浪健四郎でございます。
 きょうは、原子力の問題及びそれらの災害等について御質問をさせていただきたい、このように思います。
 この前の新聞に大きく出ておりましたけれども、和歌山の御坊市に使用済み核燃料を保存する施設をつくるという記事がございました。昨年、東南海・南海地震の法律ができて、あの地域は南海トラフが走っておるから危ない、こういうふうに、我々は地震のおそれがあるところというような素朴な疑問を持っておりましたけれども、我が国の技術からして、また、地下を使うということから、そういうことは大した事故につながらない、こういう判断があるんだというふうに私自身理解したわけであります。
 思い起こしますと、数年前、日本海でロシア船籍ナホトカ号が重油流出事故を起こしました。この重油が、季節風に乗って、原発銀座と呼ばれるような地域にまで押し寄せてきたわけであります。大事に至らなかったわけですけれども、原子力発電所というのは、水をたくさん使わなければいけない。海に近い原子力発電所は、どうしても海から水を引いて、そして冷やすという形にするわけです。そうすると、水を引く取水口を閉められてしまうということになりますと、大した事故にはならない、だけれども、原子力発電所は出力をとめなければいけないというような事故もあるわけですが、これらの事故は、もしかしたならば、私たちはそれほど恐れるものではありません。
 しかし、もう三年前になりますか、東海村で起こったあの事故は、私たちを震撼させるものでありました。やはり放射能は怖い、そして中性子が怖い。いろいろな原子力発電所及びそれらにまつわる研究炉での事故というのは怖いわけですけれども、当然、管理しておる当局は、これら原子力発電所また研究炉等原子力にかかわる事故というもの、これは何万分の一であるのかどうか知りませんけれども、当然のことながら予想しておる、私はそう思っております。
 そこで、まずお尋ねをしたいのは、どういうような事故を予想しておるのか、また可能性なきにしもあらずなのか、この辺をお尋ねしたいと思います。

○薦田政府参考人 お答えいたします。
 まず、原子力発電所そのものは何重もの安全設備というものを設置しておりまして、仮に事故が起きても、放射性物質によりまして周辺の方々に影響を与えないように設計をしているということでございまして、このような設計の妥当性を評価するために、安全審査に当たりましては、あらかじめ各種の事故を想定して安全を確認している形になります。
 その場合、まず軽水炉の場合想定している事故でございますけれども、一番大変なのは、やはり原子炉の冷却水が失われて燃料の冷却ができなくなるというような事故でありまして、これをいかに防ぐかということであります。例えば、今から随分前になりますけれども、一九七九年にアメリカで発生いたしましたスリーマイルアイランド発電所の二号機の事故がこの代表的なものであります。
 また、加圧水型軽水炉に設置されております蒸気発生器というのがございますけれども、ここの伝熱管というのは何千本もございます。この伝熱管というのはある点で言えば非常に薄いものでありますから、こういう伝熱管が破断いたしまして一次冷却水が放出されていく、こういうことも事故として想定して、最終的にこの事故が周辺住民の方々の被曝にまで大きな影響を及ぼすかどうかということをチェックしているわけであります。現実に、例えば一九九一年に発生いたしました関西電力の美浜発電所二号機の蒸気発生器伝熱管破断事故というのがこれに相当するものであります。
 また、原子力発電所ではございませんけれども、先ほどお話がありましたように、茨城県東海村の核燃料加工施設のジェー・シー・オーにおきましては臨界事故が起きているわけでありますけれども、この場合は、作業員があらかじめ決められた手順と異なる方法で作業したわけでありまして、この場合は、むしろ安全審査というよりは、運転後の保安規定というものを国が認可し、あるいは定期的にチェックすることによりまして、こういうものを防ぐという仕組みをとっております。
 以上でございます。

○松浪(健四郎)分科員 ジェー・シー・オーの事故が起こって、そして、これはなれから来た人災であった、こういうふうに言われるかもしれませんけれども、政府は素早く、各地域、関連施設にオフサイトセンターを設置する、そしてまた消防署等に、放射能を防ぐ防具また計器類、これらを新たに購入させるというふうな素早い措置をとられたことは、十分に承知しております。
 私は、この前、ベラルーシとウクライナに参りました。そこでは、やはり大変なんですね。あのチェルノブイリの事故の後、ベラルーシに至っては、国家予算の三割が事故処理、後始末のためにいまだに使われておる、こういう悲惨な状況であります。そして、我が国政府に対しても、その支援を何とかしてほしいというような声もありました。
 もちろん、我が国政府は、どの国よりもそれらの事故処理のために協力をしている国でありますけれども、とにかく信じられない事故が起こる。これがジェー・シー・オーの事故でありましたけれども、そういったものをも含めて、徹底的に事故を防止していかなきゃならない。それらについてどのような対策を講じておられるのか、いま一度お尋ねしたいと思います。

○薦田政府参考人 お答えいたします。
 まず、こういう大きな事故をいかに防ぐかということでございますけれども、これはやはり日ごろ、原子力発電所でございますので、いろいろトラブルも出てきます。こういうものを、常に徹底的にその原因を究明して、大きな事故にならないうちに芽を摘むということが極めて大事であると認識しているところでございます。
 したがいまして、現在、原子力発電所で事故やトラブルというものが発生した場合には、国は、事業者からその状況につきまして報告を受けまして、対応に関する検討を実施する。その後、原因究明あるいは再発防止策について事業者から報告を受けまして、その妥当性について検討を行う。また、これが非常に重要な場合については、この情報あるいは対策を全発電所に水平展開していく。こういうようなことで、まず、今起きているトラブルに対しては、これを教訓として大きな事故にならないようにしている、こういうのが一つございます。
 それから、やはり大事なことは、運転中、適正に運転がなされるということでありまして、先ほど申し上げましたように、保安規定というもので発電所の運転というのは規定されております。これが適切に、本当に法律に基づいて、あるいは保安規定に基づいて発電所の方で運転がなされているかどうかということを確認するために、現在、国は、現地に保安検査官というのを置いておりまして、年四回、その適正さをチェックしているということで、このような大きなトラブルを発生させないようにすることを基本としておるところであります。
 ただ、先ほどございましたように、これとは別の観点から、万が一、事故によって放射性物質が大量放出した場合はということになりますと、これはこういう観点ではなくて、むしろ防災という観点からになりますけれども、これにつきましては、原子力災害対策特別措置法に基づきまして、先ほど先生の方から御指摘ございましたように、現在、オフサイトセンター等を整備いたしまして、年に一回、防災訓練なども行い、こういうものがあっても、それが先ほどの、ロシアであったような、ああいう被害を及ぼすことのないように措置をしている、こういう状況でございます。

○広瀬政府参考人 試験研究炉につきまして御説明をさせていただきます。
 試験研究炉は、研究開発、材料照射、教育訓練を目的としておりまして、研究機関や大学等が設置をしてございます。このため、炉型とか運転形態等は多種多様でございますが、熱出力が小さいということで、事故時におきます周辺公衆に及ぼす影響は極めて小さいと考えてございます。
 これらの特徴を踏まえまして、建設を許可する前の安全審査の段階でございますが、原子力安全委員会が定めました水冷却型試験研究用原子炉施設の安全評価に関する審査指針というものがございまして、それに基づきまして、原子炉の運転中におきまして、ポンプ等の機器の故障等により発生すると予想される事象、それからさらに、この事象を超えて異常な状態でありまして、発生した場合には、原子炉施設から放射性物質の放出の可能性がある事象ということまで想定して、安全設計の妥当性を確認いたしております。この安全設計の妥当性の評価におきましては、多重性等を有する計測の制御系、また非常用の装置等が適切に機能しているかということを見まして、事故が収束することを確認いたしております。
 今、経済産業省の方からお答えがありましたように、試験研究炉におきましても、建設段階の使用前検査、運転に入ってからの年一回の定期検査、また年四回の保安検査等を通じまして、事故を未然に防止するということで、安全確保に万全を期しておるところでございます。
 これまでに試験研究炉で生じましたトラブルでございますが、異常が確認された段階で自動あるいは手動により原子炉を停止するということをやってございまして、周辺環境に影響を及ぼすようなトラブルは発生してございません。

○松浪(健四郎)分科員 原子力発電所及び研究炉、これらを管理する皆さんにおかれましては、定期検査をきちんとしていただく。そして、保安検査官を置かれておるわけでありますけれども、こういう人たちとのコミュニケーションも密にしていただかなければなりません。そして、審議官からお話がありましたように防災訓練、これには力を入れていただきたい。危機管理というものを常に意識しておかなければ、いざといったときうまくいかない、私はこういうふうにも思います。
 私の選挙区には、熊取町というところでありますけれども、京都大学原子炉実験所がございまして、私の小さいときに建設されまして、私はその近くでこの炉をずっと見てきたものでありますけれども、とにかく安全なんだ、そこで、たくさんの大学が周辺にやってまいりました。そして、今や、あれだけ大きな反対運動が起こって、京都大学が原子炉をつくったわけですけれども、今はそのおかげでこの地域が栄えるというような状況になってきておることは、私は喜ばしいことだと思っております。
 そして、熊取町長はこの防災にはとりわけ熱心でありまして、大規模な防災訓練をやっております。私は、この訓練に町長が陣頭指揮をとっている姿を見て、いつも敬意を表しておるわけでありますけれども、これは熊取町だけではなくて、原子炉施設等があるところでは徹底して大規模な訓練をやっていただくよう、予算を計上して、ぜひお願いをしておきたい、こういうふうに思います。
 それで、ドイツは、三十年後には原子力発電をなくする、こういうふうに言っております。原子力発電がなくても、電力を供給していく手だてがある。そういう国であるわけでしょうけれども、我が国はそうはいかない。今は、原子力発電でエネルギーはおおむね三〇%を用立てておる、そして六割は油に頼っておるわけでありますけれども、世界情勢、いろいろな面から見たときに、どうしても原子力に依存しなければならないのではないのか。
 防災のことについてはお尋ねいたしました。原子力を推進していかなければならないメリット、これを政府はどういうふうに考えているのか、お尋ねしたいと思います。

○永松政府参考人 委員から、原子力を推進するメリットについてお尋ねがありました。
 日本のエネルギー事情を見ますと、国内にエネルギー資源が大変乏しいという状況でございまして、エネルギー自給率は主要国中最低でございます。
 先ほどお話のございましたドイツでも、自給率は二六%でございますが、日本の場合には、原子力を除きますと、わずか四%というのが現状でございます。また、地理的な条件から申し上げましても、欧州のように域内で自由に電力を融通できるような、そういう条件には日本の場合ないわけでございまして、したがいまして、こういう制約条件の中で、エネルギーの長期安定供給の確保を目指していくということが大事な課題であると考えております。
 そういう中で、原子力というのは、他のエネルギーに比べまして、エネルギーの密度が大変高いという特徴がございます。例えば、百万キロワットの発電所を一年間動かしました場合に、その燃料は、ウランの場合には、化石燃料に比べまして数万分の一の重量で済むといったような特性がございますし、また備蓄も容易であるということもございます。さらに、ウランにつきましては、石油資源に比べまして政情の安定しました国に分散するといったようなことで、高い供給安定性を有しておるということがまず言えると思います。
 それから次に、近年、地球温暖化の問題が非常に大きな課題になっておるわけでございますけれども、原子力につきましては、発電時に二酸化炭素を排出しない、そういう特徴を有しておりまして、環境負荷の面からも優位性を持っておるということが言えるわけでございます。
 さらに、原子力の大きな特徴といたしましては、燃料をリサイクルいたしまして、さらにその燃料の有効利用を図ることができるということでございまして、例えば、核燃料の再処理から出てまいりますプルトニウムというのは、いわば自前の国産エネルギーだという位置づけも可能になるわけでございまして、そういう意味で、我が国のエネルギーセキュリティーの向上にも寄与するということが言えるわけでございます。
 このような観点から、我が国におきましては、原子力発電を基幹電源と位置づけまして、既に三五%の割合を占めているわけでございますが、使用済み燃料を再処理いたしまして、そこからプルトニウムを回収して有効利用するという核燃料サイクルの確立を原子力政策の基本といたしまして、原子力の研究開発利用を推進してまいりたいと考えておる次第でございます。

○松浪(健四郎)分科員 原子力発電、このエネルギーは大変なメリットがある。そして、お話を聞いておれば、安全だ、それに万全を期すというお話で、非常に喜ばしい。また、我々も、この国の置かれている立場から考えたときに、原子力行政というものを本気に考えて推進していかなければならない、こういうふうに思うものであります。
 昨年、京都議定書を締結いたしました。地球温暖化を考えれば、何としても我々は、京都議定書の内容を実行する上においても、十カ所から十三カ所の新たな原子力発電所を必要とされておる。
 ところが、なかなか国民が原子力を信頼してくれない。もちろん、ジェー・シー・オーの事故は水を差した、こういうふうに言えるかもしれませんけれども、まだまだ信頼をしてもらえない。そして、自治体の首長は、すぐに住民投票ということで住民に意見を聞いて、それで賛成者が少ないからやめたと。これをやっていますと、あと十カ所から十三カ所つくらなければ、この国からCO2を削減することができない、はっきりしているわけですね。
 これを本当に新たに建設することができるのかどうか、これは大変悩ましい問題だ、こういうふうに認識しておりますけれども、建設できる可能性、これに自信を持っておるのか、どういうふうに考えておるのか、お尋ねしたいと思います。――ちょっと速記とめておいて。

○持永主査 速記をとめて。
    〔速記中止〕

○持永主査 それじゃ、速記を起こして。
 迎電力・ガス事業部長。

○迎政府参考人 お答え申し上げます。
 一昨年の七月、総合資源エネルギー調査会におきまして、新たな長期エネルギー需給見通しというのを取りまとめたわけでございます。
 この取りまとめに当たっては、地球温暖化についての削減目標を達成する、このためには、十基から十三基の原子力発電所の建設を二〇一〇年までに実現をすることが必要だというふうに、これを目標として掲げておったわけでございます。その後、昨年の一月に東北電力の女川三号原子力発電所が運転開始をいたしましたので、現在、九基から十二基の新増設を二〇一〇年度までに新増設をしたいというのが目標になっておるわけでございます。
 昨年の三月に各電力会社から届け出られました供給計画によりますれば、十二基の原子力発電所の新増設というふうなものが予定されていたわけでございます。しかしながら、昨年八月の東京電力の原子力発電所にかかわる自主点検記録に関する不正の問題等によりまして、原子力発電の安全性に対する国民の信頼が揺らいでいるというふうなことで、原子力発電あるいはこれの新規立地を取り巻く状況は、以前にも増して厳しくなっているというふうに私ども認識しております。
 そういう中で、今後、何基の原子力発電所が新増設されるかは予断を許さない状況ではございますけれども、原子力発電につきましては、まずはその安全というのが第一でございます。それと同時に、やや失われた信頼の回復というものに全力を傾注いたしまして、少しでも目標の達成に近づくよう、御地元を初めとした国民の皆様の御理解が得られるよう、最大限の努力を続けていくということが必要であろうというふうに認識しております。

○持永主査 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕

○持永主査 では、速記を起こして。

○松浪(健四郎)分科員 御配慮ありがとうございます。
 これは、ジェー・シー・オーの事故だけじゃなくて、今るるお述べになられたとおり、原子力自身、つまり、科学的技術は大丈夫なんです。だけれども、人為的なミス、その周辺の人たちが、また管理をする人たちがミスをするがゆえに、結局、信頼性を喪失してしまって、なかなかうまくいかない。大変残念に思います。その意味においては、堂々と情報は公開をして、そして、より信頼を高めるためにさらなる努力をお願いしたい、こういうふうに思います。
 それと、怖いものだ、事故があり得るかもわからない、災害があり得るかもわからない。そこで、いろいろな法律ができて、この地域の人たちが、原子力発電等の施設を持つことによって、地域の振興、活性化を図る。それを保持するための法律が次から次へとできて、そして、我が国のエネルギーについて、また安全について考えようというふうになっておるわけであります。
 そこで、平成十二年の十二月に、原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法という法律が、これは十年間の時限立法でございますが、十二年十二月に成立をいたしました。まず、この法律を政府はいかに活用しようと考えているのか、手短にお答えいただきたいと思います。

○迎政府参考人 ただいま御指摘の特別措置法は、一昨年の四月から施行されております。これまでに十二の地域が指定されまして、三つの地域については振興計画が決定されたところでございます。
 今後、他の地域についても順次振興計画が決定されるものと認識しておりますが、この計画に基づきまして、住民生活の安全確保に資する道路、港湾、漁港、消防用施設、義務教育施設の整備等に国の補助率のかさ上げを適用するということとなっております。
 こうしたことによりまして、関係省庁の施策を総合的に実施することによって、立地地域の活性化というのを図ってまいりたいというふうに考えております。
 従来からやっております交付金の制度なども活用いたしながら、政府一体として原子力立地地域の振興に今後とも努めてまいりたいというふうに考えております。

○松浪(健四郎)分科員 それで、原子力立地会議が開かれる、この会議は内閣総理大臣が議長なんですね。そして、八人の大臣が議員なんですが、なぜか科学担当大臣が入っていませんけれども、ここで審議されて原子力発電施設等立地地域の指定がなされるわけなんですね。順次、この立地会議で地域指定を受けてきておるわけなんです。昨年は、三月と十一月に会議が開かれました。そして、地域指定も次から次へと慎重審議の結果行われておるわけであります。
 そして、振興計画の決定もなされておるわけなんですけれども、ことしは年度末に第四回原子力立地会議を開催するということで、一回しかやらないのか、これは十年間の時限立法であるから、そんなことをしておるといろいろな府県の振興計画の決定、これができずに終わってしまうのではないのかという心配を私はしております。それともう一つは、この振興計画の決定の順位をどういうふうな形でなされるのか、これも私からすれば疑問点であり、心配点であります。
 そこで、まず優先すべきことは、私は、どう考えても、防災及び国土の保全にかかわる施設の整備であるとか、あるいは防災のために基幹的な道路の整備を優先するのが筋じゃないのか、こういうふうに思っておるわけですね。これは振興に関する特別措置法でありますから、いろいろな内容が振興計画として認められて、いろいろな案が出されておるわけでありますけれども、優先すべき順位、これは、今申し上げましたように、防災、そこから道路をつくるとか港湾を整備するとか、そういったものを優先的にやるべきだ、そういうふうにこの法律は生かすべきだと考えるわけですけれども、その振興計画の決定の順位というのは、どういうふうな形で、またはどういう思想に基づいて決定されているのか、お尋ねしたいと思います。

○迎政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、原子力立地会議の開催でございますけれども、これは従来から半期ごとというふうなことで開催をしてまいったわけでございますけれども、今後ともそういうふうなことでやっていきたいと思っております。
 それから、立地地域の指定ですとか振興計画の決定でございますけれども、これにつきましては、各立地の都道府県の申し出に基づいて立地地域の指定を行う、それから、その振興計画の案についても各都道府県で原案を作成いただくというふうなことになっておりますので、その地域の範囲についての都道府県内の調整ですとか、あるいはその計画の案の作成ができたものから指定、決定を行ってきているということでございます。
 したがいまして、今後とも、都道府県の案が作成された地域から、順次、速やかに決定を行っていきたいと思っております。
 それから、振興計画の中身でございますけれども、これは、先生御指摘のとおり、法律におきましても、補助率のかさ上げの対象となっておりますのは、防災に資すると。道路につきましても、住民の避難に資する道路ですとか港湾、漁港、こういったものが補助率のかさ上げの対象となっておるわけでございまして、まずは防災に資するというのが基本理念だというふうに私どもも理解しております。

○松浪(健四郎)分科員 ぜひそうしていただきたいんですね。
 ただ、例えば私の大阪府は、赤字財政でどうにもならない。だから、これをかさ上げしていただいたって、府も負担しなければならない。これは防災道路だ、どうしてもつけなきゃいけない道路だ、急がなきゃいけない、にもかかわらず、自分のところで財政的に余裕がないからこの防災道路は後回しにとかというようなことがあったのでは、この法律は生きてこない。これは国が丸抱えするわけではなくて、あくまでも補助率のかさ上げの法律ですから。
 そうなりますと、この立地会議、これがある程度指導するというようなものでなければ、都道府県の財政事情によってこの法律が運用されるという形になってしまうわけなんです。ですから、この地域にあっては、これは急がなきゃならない、これは後回しにしたっていいんじゃないのか、こういうことは、当然のことながら調査をして、きちんと順位づけをし、そして防災、安全、これを大事にする、こういう思想を掲げてこの法律の運用を図っていくべきだ、私はこのように思っております。
 それは、私が心配しております私のところの熊取町の道路、これは防災上どうしても必要な道路だ、ところが、なかなかやろうとしない。ましてや、この立地会議に地域の指定を一年おくらせるというようなことがあったんですね。私は、この法律に照らして立地地域に指定されると府に言っているにもかかわらず、おくれてしまったといういきさつがあります。これはどんな危機意識を持っておるのか、大変憤慨しておったものでありますけれども、いずれにいたしましても、防災、これを優先してこの法律の運用をされるよう、また指導されるよう強く希望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

○持永主査 これにて松浪健四郎君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして内閣府本府についての質疑は終了いたしました。
 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議

○持永主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 警察庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上和雄君。

○井上(和)分科員 井上和雄です。よろしくお願いします。
 きょうは分科会ということで、余り委員も御出席されていないのでちょっと寂しい感じもいたしますけれども、本日は、交通事故の問題を取り上げさせていただきたいと思います。
 委員はいらっしゃいませんけれども、きょうは、交通事故の犠牲者の御家族の方たち、御遺族の方もいらっしゃっていますので、私は、いらっしゃっている方々に励まされて、頑張って質問をやっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 谷垣大臣、先日、生命(いのち)のメッセージ展、おいでいただきましてありがとうございました。総理もいらっしゃっていただいて、とにかく交通事故を減らすんだ、私はそれを公約と受け取っていいのかなというふうに思っているんですね。これは、随分思い切った公約だなというふうに思いますし、相当の努力をしないとなかなか達成できない目標であると思います。
 大臣、今回の生命(いのち)のメッセージ展をごらんになって、総理の公約を達成するために警察担当大臣として今後どういうふうにやっていくおつもりか、お伺いしたいと思います。

○谷垣国務大臣 この間、井上委員初め大勢の方々が御努力されまして、国会の中で生命(いのち)のメッセージ展をやっていただいたのは、私は、本当に意味のあることだったと思うんですね。今おっしゃったように、拝見をさせていただきまして、私もどういう言葉で表現したらいいのか、なかなか気持ちがまとまらないんですが、ああやって亡くなった方を、等身大、それから、履いておられた履物なんかを目で見えるようにして、やはり亡くなった方の無念さを少しでも伝えようと、御遺族の方の亡くなった方に対する愛情が込められていたように思います。警察も、交通事故を少なくしていくというのは今まで大きな目標に掲げてまいりましたけれども、あれを拝見しまして、一層その取り組みを強化しなければならないと思ったところでございます。
 それで、小泉総理は、ことしの所信表明の中に、今まで毎年一万人ぐらいの交通事故の犠牲者があるのを半減しようという宣言をされまして、小泉総理の公約と言っていいんだろうと私も思います。私も、小泉内閣の一員として、これを実現するように努力しなきゃいかぬと思いを新たにしているところです。
 細かな施策は必要があれば交通局長から説明をさせますが、大きく言いますと、私は、二つなんだと思います。
 警察だけではなく、道路の構造やいろいろな問題が関係しておりますから、関係の役所やいろいろな団体、機関が協力して総合的に対策をつくっていくという連携協力、そういうことがやはり基本的になきゃいけないだろうと思います。
 それからもう一つは、これは、役所だけがやっても限界のあることでございまして、ドライバーの方や歩行者の方を含めて、やはり命を交通事故から守らなきゃいけないという、言葉が適切かどうかわかりませんが、国民運動みたいな形でないと、役所だけが力んでもなかなか進まない面がある。こういう役所や団体の連携と、もう一つは国民運動みたいな形というものが、私は、今後の施策の進め方として基本になるんじゃないかと思います。
 具体的な項目になりますと、今やっております第七次の交通安全の計画をつくっておりますけれども、その中にいろいろ網羅されていることとそう大きく違いがあるわけではございませんけれども、一つだけポイントを挙げますと、一生懸命関係各方面で努力もしていただいて交通事故が減ってきている、これは喜ばしいことなんですが、減っている中で減っていないのは、やはり高齢者なんですね。高齢者対策をどう進めていくかというあたりが今後の工夫の焦点になってくるのか、そんなことを含めて一生懸命やらせていただきたいと思っております。

○井上(和)分科員 今、大臣がおっしゃった国民運動が必要だということなんですが、まさしく私も本当にそれが必要だと思います。そういった意味で、交通遺族の方がここ数年立ち上がって、危険運転致死傷罪という法律の成立に本当に御努力された。やはり今の交通、まあ、戦争なんでしょうかね。本当に全体で百万人ぐらいの方が死傷されているわけですから、これはちょっと異常だ。遺族のそういう訴えが、やはり国民の中にもそれに関してだんだん共感する人がふえてきているということだと思うんですね。
 私は、どうやったら一番交通事故を減らせるか、厳罰化がかなり今効果を見せていますけれども、一つは、やはり車のスピードが速過ぎるということで交通事故の要因になっているというのは、もうだれも否定することはできないと思うんですね。
 実は、私が六年前にアメリカから帰ってきたときに、首都高速を自分で運転したんですけれども、もう怖くて運転できなかったですね。はっきり言って、自分はもう四十キロか五十キロぐらいでしか運転できなかったです。ところが、周りはもうどんどん八十キロぐらいでびゅんびゅん隣を走っていくわけですよ。日本のこういう現実を、そのとき、これは本当に異常だななんて思っていたんですけれども、数年たったら、私もほかの自動車と同じようにびゅんびゅん飛ばすようになっちゃったんですね。
 ただ、交通事故を減らすのに直接的に効果のあるのは、車のスピードを遅くする、つまりは制限速度をきちっと守らせるということだと思うのです。今の状況というのは、制限速度はありますけれども、守っている車というのは余りないですよね、はっきり言って。
 交通局長にお伺いします。
 私は、今、こういう国民的な、交通事故に対して何かしなきゃいけないという思いがありますから、もう少し交通違反の取り締まりを強化する、またほかにもいろいろな方法はあると思うんですけれども、やはり車のスピードを遅くするということを警察はしっかりとやるべきだと思うんですよ。今の状況は、はっきり言って何にもしていない。つまり、制限速度というのはあっても名ばかり。もう制限速度というのはやめた方がいいですよ、ああいう名称。標準速度とかそういう名前にすればいいじゃないですか、このままだったら。
 制限速度とするんだったら、やはり超えちゃいけないということをしっかりやるべきじゃないですか。どうでしょう、交通局長。

○属政府参考人 お答えいたします。
 スピードが出ていると、当然のことながら、交通事故を起こしたときに非常に大きなダメージを生ずるわけであります。そういう意味で、最高速度違反というのは、交通事故発生の大きな原因になっております。そしてまた、死亡事故とか重傷事故、そういう大きな事故に結びつくというふうに認識しております。
 それで、平成十四年中ですけれども、全国で二百六十万件余りの最高速度違反を検挙しております。これは、点数告知を除く違反取り締まり全体の三分の一以上を占めているということで、警察としては大変力を入れております。
 そういう状況でございます。

○井上(和)分科員 局長、二百六十万件取り締まったところで、制限速度をほとんど守っていないんだから、これは意味がないじゃない。つまり、あなたがやるべきことは、車が制限速度以内で走るようにするということでしょう。走っていないじゃないですか。ということは、幾ら取り締まっても、今全く効果がないことをやっているわけですよ。だから、もっと効果のあることを探したらいいんじゃないですか。

○属政府参考人 現在、全国で自動車の台数というのは、八千万台ぐらいあるわけです。道路も非常にたくさんあるわけでありまして、そういう中で、やはりドライバー自身が安全ルールをきちんと守るという認識がなければ、警察の限られた力だけで全部取り締まりをやるといったって、これは不可能だというふうに思っております。
 ただ、私どもとしては、そういう中で、特に事故の発生の可能性の高いところを重点に、また、事故の多い時間帯を重点にやっておりますけれども、これは何といっても、国民の皆さんの自覚をお願いしなければいけないなと思いますし、そのための交通安全教育にも力を入れているところであります。

○井上(和)分科員 ここに今、委員がいらっしゃって、取り締まりを強化して、首都高をばあっと八十キロぐらいで走っていってすぐ捕まると、恐らく委員の人たちも文句を言う方も出るかもしれないんだけれども、ただ、今まさに国民的な、交通事故に対して何とかしなきゃいけないといううねりがだんだん出てきているわけです。
 だから、すぐにとは言わないんだけれども、例えば、今走っている車のスピードをとにかく一〇%、一五%ぐらい落とすような取り締まり強化ということは僕はできると思うし、そういうことだったら国民も納得すると思うんですよ。例えば、今、首都高速、大体みんな、制限速度六十キロでしょう、六十キロだけれども、ほとんどが八十から九十、場合によっては百で走っていますよね。(発言する者あり)すいているときは走っているじゃないですか。だから、それをとにかく七十ぐらいに落とさせるような方策を考えるとか、僕は、それをやれば必ず事故は減ると思います。
 今の制限速度というのは本当に無意味だと思いますよ、はっきり言って。だから、ぜひ大臣、何か考えてくださいよ。僕は、今の車のスピードを一五%か二〇%ぐらい、まあ、一五%ぐらいがいいですかね、落とすような政策を考えていく。そうすれば、それなりに死亡事故は減るんじゃないかというふうに思っていますけれども、そこら辺はぜひ御検討してください。
 今後も、この問題は引き続き国会で取り上げさせていただきます。私も自分で運転しますので、運転しながら、状況を見ながらやっていきます。
 それでは次に、二件の交通事故の問題に触れさせていただきたいと思います。
 一件目は、二〇〇一年の十月四日、千葉県で起こりました交通事故なんです。被害者は根本健宏さん、三十八歳。この方が夜、道路で車を一台誘導して、誘導するために道路上に出て誘導していたところをはねられて重症を負って、今植物人間状態になっていらっしゃる。本当に悲惨な事件です。今、岡山の病院に行っていらっしゃって、お姉さんがわざわざ岡山にアパートを借りて住んで弟さんの面倒を見ておられる、そういう状況なんですね。
 この事件が酔っぱらい運転により起こされた事件かどうか私は聞きたいんですけれども、そうでしょうか。

○属政府参考人 この事故を起こした男性ですけれども、当時やはりお酒は飲んでおりまして、それについては飲酒検知を実施しておりまして、呼気一リットルにつき〇・三ミリグラムのアルコールを検知しておりまして、酒気帯び運転と認定をして立件しております。

○井上(和)分科員 〇・三ミリグラムは酒気帯びなんですね。(属政府参考人「はい、そうです」と呼ぶ)おかしいですね。本人が言っているのは、しょうちゅうの水割りを四、五杯飲んでいると言うんだよね。これは本人が書いていますよ。
 しょうちゅうの水割りを四、五杯飲んでいたらどの辺になる、警察庁。

○属政府参考人 道路交通法上は、昨年の六月からは改正道交法が施行されておりまして、酒気帯びというのは〇・一五ミリグラム以上まで厳しくなったんです。この当時は、酒気帯びの基準は〇・二五ミリグラム以上ということで、先ほど申し上げましたけれども、〇・三ミリグラムで酒気帯びになります。
 あともう一つ、酒酔い運転、いわゆる酔っぱらい運転ですね。それになるのは〇・二五ミリグラム以上であって、いわゆる、もうめろめろになっていて、とても直立もできない、真っすぐも歩けない、そういったような非常に危険な状態にある者は、酒酔い運転ということで、より重い処罰があるわけですけれども、今回のこのケースでは、酒気帯びというふうに千葉県警においては認定をしております。

○井上(和)分科員 局長、僕が聞いたのは、しょうちゅう四、五杯飲むと、やはり〇・三ぐらいなんですか。

○属政府参考人 これについては、かなり個人差があるんですよ。体重がどれぐらいあるかとか、飲んでからどれぐらい時間が経過しているか、あるいはお酒を飲むときにある程度物を食べているかとか。ですから、これはちょっと一概には申し上げられないと思いますけれども、これは千葉県警の方で責任を持って飲酒検知をしておるわけで、この数値には間違いがございません。

○井上(和)分科員 この捜査の状況は今どうなっているんでしょうか、法務省、局長さん。

○樋渡政府参考人 お尋ねの事案につきましては、平成十四年九月、千葉地方検察庁におきまして、千葉県警成田警察署より送致を受け、現在、同検察庁において捜査中であると承知しております。
 捜査内容の詳細は、具体的事件における捜査機関の活動内容にかかわる事柄でございますので、お答えを差し控えさせていただきますが、検察当局におきましては、いかなる事件でありましても、捜査権を適正に行使して所要の証拠収集に努め、法と証拠に基づき適正に処分を決するものと承知しております。

○井上(和)分科員 局長、おっしゃるように、国家公安委員長に対してちょっと失礼かもしれないですけれども、すべての交通事故をすべての警察官がちゃんとやっていれば国会なんか要らないですよ、ここで行政のこういう話をする必要はないですよ。そういうことがされていないから、こういう場で皆さん方にどうなっているかということを聞いているわけじゃないですか。
 この件に関しては、きょうもいらっしゃっていますよ、根本さんのお父さんが。担当検事が、警察の調書を見ておかしいじゃないか、捜査記録を見ておかしいと言っているんです。お父さんにそう言ったというんですよ。それで、もう一回現場検証をやり直せということで、現場検証をやり直したわけです。
 そうしたら、目撃者の人が、被害者が倒れていたのはここですよというふうに言うんだけれども、何か警察官がその位置をどうも反対の方に持っていこうとする。だから、目撃者がいやここにいたんですよと言うと、はいと言って警察官がかく場所は違っていると言うんですよ。その現場検証に出ている目撃者は、はっきりそう言っているわけです。そういうことがあるから、法務省の検事の方もしっかりした検事の方で、おかしいだろうということで恐らく今調査されているんだと思います。
 加害者の父親が、プライバシーのことがあるんですが、これはどうしても言わなきゃいけないと思うんですよね、その父親が被害者の家族に、自分は警察署長や事故担当の警察官を知っているんだというようなことを言っているんです。どうしてかというと、その加害者の父親が自治体の幹部であるからという事実があるんです。
 そういうことを考えると、警察の捜査というのが全然きちんとやられていない。この事件が起こったのは二〇〇一年の十月でしょう、もう一年半、まだ起訴もされていない。先ほど、交通局長は酔っぱらいだとおっしゃったけれども、重症事故を起こしている、でもまだ起訴もされていないということは、要するに、いかに警察の捜査がいいかげんかということだと思うのです。警察は、そういう状況の中で、検察にすべて任せておいて、警察の捜査が、成田署の捜査がおかしかったというふうに言われるんじゃ、これは警察の面目丸つぶれだと僕は思います。
 だから、やはり警察は、おかしかったら、ちゃんと監査機構があるわけですから、監督機構があるわけだから、この件に関してはそちらで独自に調査されたらどうですか。谷垣大臣、いかがでしょうか。僕はぜひやっていただきたいんです。どうしてかというと、それは警察の威信の問題でもあると思うんですよ。後でもし、おかしかった、現場検証の調書が捏造されていたとかいうことになったら、これは大変なことですよ。県警本部長の首は必ず飛びますよ。

○属政府参考人 この事故につきましては、事故の通報を受けました所轄警察署におきまして、捜査員をその事故現場に派遣していろいろ事情聴取をし、また実況見分をし、また後日関係者からの事情聴取を行うなどしまして、平成十四年の九月十一日に、業務上過失致傷及び酒気帯び運転の容疑で千葉地方検察庁に送致をしております。その後も、千葉地方検察庁と協議の上、必要な補充捜査を行うなど、千葉県警察において所要の捜査を実施しているという報告を受けております。
 そしてまた、先ほど、警察と変な関係があるから事故捜査がきちんと行われていないんじゃないかというようなお話がありましたけれども、被害者の御家族の方が、被疑者と警察の間には密接な関係があったのではないかという御疑念をお持ちだということは承知をしております。(井上(和)分科員「そうじゃない。加害者の父親がそう言っているんじゃないですか、署長や担当の警察官を知っていると」と呼ぶ)
 この点については、千葉県公安委員会の方に家族の方が、法律にのっとって苦情申し出をしておられまして、その結果、これは千葉県警並びに千葉県公安委員会の方で調査をして、その結果、警察が加害者側に立った捜査を行ったという事実や、警察と運転者及びその父親との関係はいずれも認められない、適正な捜査をやっておる、そういう報告を受けております。

○井上(和)分科員 それは認めるわけないでしょう、県警は。だからこそ警察庁があるんでしょう。あなたたちが、県公安委員会、県の本部が言ったことを認めていたら、警察庁は要らない、監察官なんか要らないじゃないですか。そうでしょう。だからこそ警察庁内に監察官がいて、監査することができるわけじゃないですか。きちんとやってくださいよ。捜査に対する熱意がない。被害者より加害者の味方をしている。
 次に取り上げるケース、徳島の野口さんのケースも実は同じなんですよ。被害者より加害者の味方。加害者の親族が県や市の幹部。ちっちゃな県で、警察署長や県の幹部が親しいのはどこでも常識でしょう。そういう中で厳正な捜査がされない可能性があるからということで、警察庁があるわけでしょう、自治体警察であったとしても。皆さんの役割を果たしていないじゃないですか。だって、僕がそう言っているんだから。

○属政府参考人 交通事故はいろいろ発生しますけれども、それについては、第一線の交通警察官が、本当に日夜寝食を忘れるような形で一生懸命捜査をして、苦労しながらやっているわけであります。(井上(和)分科員「全員がそうやっていればこんな問題は起こらない。そうじゃないから」と呼ぶ)
 ちょっとお聞きいただきたいと思いますが、これについては、酒気帯び、それから業務上の過失致傷ということで、事件を立件して送っているわけです。警察としては、必要な捜査を行ってやっているわけです。まだ補充捜査をしているというところはあるにしても、それについては、何もしていないわけじゃなくて、きちんとした捜査をして送っている。それについては十分御理解をいただきたいと思います。

○井上(和)分科員 時間がなくなっちゃうので、この件はこれで打ち切りますけれども、国会でも取り上げている問題なんですから、ぜひきちっとやってください。
 二件目のケースなんですが、徳島県の野口温史さんという十六歳の方、この方は交通事故によってお亡くなりになりました。きょうもお母さんとお姉さんが傍聴にいらっしゃっています。
 今の千葉県の根本さんと同じなんですね。どうも捜査に対する熱意がない。それは、熱意がないというのは被害者の方から感じるんでしょうね。被害者よりどうも加害者の味方をしている、警察や検察が。この野口さんの件の場合も、検察がどうも加害者寄りじゃないかと。
 最後に言いましたけれども、それはいろいろ親戚関係があるという話もしました。これも同じなんですね。野口さんの場合、事故の書類を私、ずっと読んで思ったのは、この事故は交差点で起こった事故で、恐らく、私が思うには、信号の変わり目だったと思うんですよ。車がかなりのスピードで、よくある話ですね、信号が変わりそうだからというので、赤になっても恐らく抜けようとしてはねてしまった。スピードが七十キロか八十キロと言う目撃者がいるんですね。被害者は二十五メートルはね飛ばされている。やはりこれはかなりのスピードじゃないかと思うのです。
 ところが、何か警察の方も四十キロか五十キロぐらいじゃないかというふうに言っていて、徳島地検の担当検事だった吉田恵美検事というのはこの件の最初の担当検事ですけれども、いや、四十キロぐらいだったみたいですよと言っているんですね。それだったら、科学的な捜査によって、当然車両もあるわけだし、現場もあるわけですから、きちっと捜査をすれば、車がスピードは何キロだったということははっきりわかるはずですよ。警察にも科学捜査研究所があるわけだからね。それを僕はぜひやってもらいたいと思うのです。
 今回の件は、不起訴になりました。しかし、そういう疑問点はあるわけですよ。どうですか、法務省。

○樋渡政府参考人 事故という不幸な結果になりまして、お亡くなりになられた方に非常にお気の毒だという気持ちは私たちも持っているわけでございますが、個々の具体的な事案におきましては、検察官が責任を持って、法と証拠に基づいて決めているんだろうというふうに思っております。

○井上(和)分科員 御遺族が知りたいのは真実なんですよ。だから、僕は、やはり検察は真実を明らかにする義務があると思います。それが、車のスピードが四十キロか五十キロか、目撃者がそう言ったのかどうかとか、非常に何かあいまいだと僕は思います。やはり真実を明らかにするために、きちっとそれなりの捜査をする。
 この加害者は、結局、免許のマイナス点もつかないということで、不起訴ですよね。ちょっと考えられないと思うんですね。だから、これからこの件を当然再審請求ということで御遺族の方が請求すると思いますけれども、ぜひ、私も法務省にお願いしたいんですけれども、やはりもう一回きちっと真実を明らかにする努力をしてもらいたいと思います。
 国民が、まして被害者が、家族が、何か被害者よりみんな警察も検察も加害者の味方をしているんじゃないかというような印象を持たれるということは、私は本当に大ごとだと思いますよ。だから、ぜひ、この件に関してしっかりと調査していただきたいと思います。
 それで、野口さんが上申書を最高検察庁に出しているんですけれども、この上申書の回答というのはどうなっていますか、局長。

○樋渡政府参考人 御遺族の方から、平成十五年一月に、実況見分調書を全部開示するよう地検の方に上申書を提出されているということでございますが、個別具体的な事案における不起訴記録の開示の問題でございまして、当該事件の記録を保管する検察官の判断にかかわる事柄でありますが、あくまでも一般論として申し上げますと、不起訴記録につきましては、関係者のプライバシーを保護するとともに、将来の事件を含め、捜査、公判に対する不当な影響を防止するため、刑事訴訟法四十七条により原則として公開が禁じられておりますが、同条ただし書きによりまして、「公益上の必要その他の事由があつて、相当と認められる場合は、この限りでない。」とされているところでございます。
 この規定の運用といたしまして、犯罪被害者の保護の必要性にかんがみまして、交通事故による事件を含め、不起訴記録につきましては、被害者等が民事訴訟等において、被害回復のため、損害賠償請求その他の権利を行使するために必要と認められる場合におきまして、客観的証拠で、かつ、代替性がなく、その証拠なくしては立証が困難であるという事情が認められるときには、記録の開示を認める運用を行っているものと承知しています。(井上(和)分科員「今回の場合はどうなったんですか、結論を言ってください、結論を出してください」と呼ぶ)まだ結論は出ていないと思っております。

○井上(和)分科員 では、その結論を先に出してください。よろしくお願いします。
 それでは、私の質問を終わります。

○持永主査 これにて井上和雄君の質疑は終了いたしました。
 次に、遠藤和良君。

○遠藤(和)分科員 最初に谷垣大臣に聞きたいんですけれども、先日、二月十八日と記憶しておりますけれども、国会の中で生命(いのち)のメッセージ展という展覧会がございました。この御感想からお聞きしたいと思います。

○谷垣国務大臣 先ほど、井上委員のときにもお答えをしたんですが、国会の中で生命(いのち)のメッセージ展、関係の方々がいろいろ御努力をいただいてやっていただいた意味は非常に大きかったと思います。
 私自身も拝見しまして、何というんでしょうか、ああいう等身大のパネルをつくられ、亡くなった方が履いておられた履物を置かれて、それぞれの御遺族の方のメッセージもございました。亡くなった方の無念さと、それを何とかして訴えようという御遺族の愛情といいますか、そういうものを大変感じまして、我々も、もっともっと交通事故対策というものを進めていく努力をしなきゃならぬ、こういう思いを新たにした次第でございます。

○遠藤(和)分科員 私も見学させていただいたんですけれども、この展示の中には、凶悪な犯罪によるもの、あるいは悪質な交通事故によるもの、あるいはいじめなどによる自殺等、いずれも理不尽に命を奪われた人たちの白い人型がありまして、その方の履いていらっしゃった履物がありました。私は、それを見て胸がつぶれる思いがしました。そして、その方々の無念さというものを考え、私どもが、その方々の生きてきた姿、そして生きざまというものをきちっと後づけしていくといいますか、生きてきたことをきちっと実証していかなければいけないんじゃないかな、そんな思いに駆られて見学をしたわけでございます。
 そこで、その中に、お一人ですけれども、十六歳の高校生の展示がございました。これは野口温史君と申します。二〇〇〇年の十一月の二十五日に、徳島市元町一丁目の交差点で、自転車に乗って塾から帰ろうとした当時高校一年生の野口君が、夜勤通勤中の会社員の普通自動車にはね飛ばされまして、二十五メートルもはね飛ばされたそうですけれども、そして死亡されるという事故であったわけでございます。
 この件について、警察は本当に誠実に対応したのかということを私も疑問に思っているんです。
 事実関係からお伺いしたいんですけれども、警察は、遺族に対して、重大な死亡事故なのでこれからまだまだ取り調べを慎重にしますとおっしゃっていながら、翌日の朝の新聞に、車両の信号は青だった、そういうことを報道されるように広報しているんですね。これは、青だったのかどうかということもまさに調査をこれから始めようというときに、翌日の新聞に警察がそういうことを公表しているというのは、一体どういう根拠に基づいてそういう報道をしたんですか。

○属政府参考人 この点につきましては、今、先生御指摘のとおり、事故が発生した翌日だったと思いますけれども、いわゆる事故の加害者の方の進行の信号が青色であったというふうに徳島東署が翌日広報しているという事実はございます。
 これにつきましては、早計であった、申しわけないということでおわびをし、また、県議会の総務委員会で平成十三年十一月五日に取り上げられまして、そういった捜査について余りに結論を早く出しているのじゃないかといったような趣旨のおしかりがありまして、交通部長が広報の内容については早計であったということで答弁をしているところである、そういうふうに報告を受けております。

○遠藤(和)分科員 そういうのは早計というんじゃなくて、ずさんなんですよ。いいかげんなんですよ。生きている人は加害者しかいないんです。被害者は亡くなっちゃっているんですよ。被害者から証言を聞くわけにいかないんです。では、だれから聞いたんだ、そして、目撃者が果たしてその時点で何人いたんだ、客観的な事実はあるのか。それを考えると、まさにずさんな報道である、私はそう思わざるを得ません。済みませんでしたということですけれども、では、遺族の方におわびをしたんですか。そして、早とちりで公表した警察官に対して、ちゃんとした処罰のようなものはされているんですか。

○属政府参考人 遺族の方から公安委員会に対して、平成十三年六月十九日付で文書で苦情の申し立てがなされておりまして、その内容は、初動捜査がずさんじゃないか、短時間で思い込みによる広報がなされた、そういった点についての申し立てがございました。
 それに対しまして、公安委員会は平成十三年七月二十四日付の文書で回答しておりまして、捜査自体の直接の誤りとか怠惰等の指摘はしておりませんけれども、そういう広報を直ちにやったといったようなことについては早計であったということでのおわびはしていると伺っております。
    〔主査退席、亀井(善)主査代理着席〕

○遠藤(和)分科員 だから、処分はしたのかと聞いているんです。

○属政府参考人 これについては、処分は特に私どもは報告を受けておりません。

○遠藤(和)分科員 おざなりなんですよ。誠意が全くないんだよ。
 それから、警察は目撃者をその後三人捜して、いろいろ話を聞いている。そこでも車両の信号が青だったという断定はできていないんでしょう。どうなんですか。

○属政府参考人 この被害につきましては、目撃者の証言取りが大変大事でありますので、警察署におきましても、目撃者の確保に一生懸命努めたところであります。
 その中で、特に、今回の被害者、亡くなられた被害者ですけれども、そのそばで信号待ちをしていた、自転車に乗っていた方がおられます。その人の目撃証言から、この被害者の方は赤色信号なのに自転車で横断をしていたということをはっきり証言しておられます。

○遠藤(和)分科員 私は、自転車の方の話を聞いているのじゃなくて、ぶつけた加害者の方の、自動車の信号が青だったという特定はできていないのでしょうと聞いているんです。

○属政府参考人 いわゆる進行側の、自動車の信号が青だったかどうかということについては、いわゆる第三者の証言で、はっきりは青だったとかあるいは赤だったということが確定できるような証拠は得ておりません。そういう目撃者もおりません。

○遠藤(和)分科員 今に至るまで青であったという確定ができていないにもかかわらず、事件の翌日の新聞に、青だった、こういうふうな公表をしたのは早計だった、誤りだったということじゃないですか。わかっていないんでしょう、いまだに、青だか赤だか。警察は特定できていないんでしょう。それなのに青だったということを広報したんでしょう。だったら、これは早計じゃないんじゃないですか、誤りじゃないですか。

○属政府参考人 事故の直後に信号が青だったというふうに広報したという点については、問題だったということで謝罪もしているわけでありますけれども、一方、信号というのは、被害者側と被疑者側のいわゆる相互の関係で信号があるわけです。被害者が赤で自転車で渡っていたというのははっきりしております。一方、被疑者の方は、そういうことからすると、青色だったろうというふうにかなりの確度で推定はできるわけでありますけれども、ただ、場合によっては信号の変わり目ということもありますので、そういう点も含めれば、青色だったということは断定できない、そういうことを申し上げたわけであります。

○遠藤(和)分科員 両方が赤だということだってあるんだ。それを青だったと広報したことは、早計じゃなくて誤りですよ。どちらかわからないというのが真実だ、今のところは。これから事実を調べるんだ、そういうことじゃないんですか。

○属政府参考人 少なくとも交通事故が発生する前に、進行途中においては青色の状態という可能性はかなり高いわけでありまして、それを打ち消すものが見当たらない。少なくとも、被害者側が横断するときに赤であるのに進行しているというのは、これははっきりしているということを申し上げます。

○遠藤(和)分科員 断定できないものを断定する形で広報するのは誤りじゃないの、そうでしょう。
 それから、ずさんさを証明するものとして、警察の言っていることは、特に新聞が出て、そうじゃなかったよ、あれは赤だということを私は見たと言う新しい証言者がいっぱい出てきている。それで、警察に苦情を言っている。そしてまた、遺族の方が新しく五組十人の目撃者を捜し出してきている。その中にははっきり、車両は赤信号を入った、こういうことを言っている人がいます。だから、そういうことを、全体の状況をどうして調べないんですか。

○属政府参考人 遺族の方がその後一生懸命目撃者がいないかということで捜されて、そういう方を見つけられて、警察の方に通報されて、それについても警察の方では一生懸命捜査をしております。だけれども、いろいろな話はあるのですけれども、間違いなく青色だったということを断定される証言の方はおられませんので、これはあくまで断片的な話であるというふうに認識をしております。そういうふうな報告を受けております。

○遠藤(和)分科員 ちょっと検察にも聞きたいと思います。
 今回、なぜ検察は不起訴にしたのか。不起訴の理由、それを説明してください。

○樋渡政府参考人 お尋ねの件につきましては、捜査を尽くしたものの、検察庁におきましては、犯罪の性質を認定すべき証拠が十分でなかったということから、平成十四年十月四日、嫌疑不十分により不起訴処分としたと承知しております。

○遠藤(和)分科員 警察から検察に送検したのは、いわゆる業務上過失致死罪ですね。この罪を構成する要件は信号無視だけではないですよね。今、信号が赤だったか青だったかわからない状況ですから、それは特定できないかもわかりません。しかし、二十五メートルもはね飛ばされている。かつ、この交差点というのは、徳島の駅前にありますけれども、大変大きな交差点、見通しのいい交差点です。しかも、この高校生は右側から横断歩道を自転車で来られていた。そこにぶつかったわけですから、見通しも大変いい。少なくとも、前方不注意だった、こういうことは言えるんじゃないですか。あるいは、二十五メートルも飛ばされているわけですから、スピードを出し過ぎていたんじゃないのか。こういう意味で起訴できる要件は整っていると私は思うのですが、それすら容疑不十分なんですか。

○樋渡政府参考人 個別具体的事件におきます捜査機関の捜査及び証拠の内容、さらには証拠の評価にかかわる事柄でございますので、なかなか当方からお答えいたしかねるところがあるわけでございますが、あくまでも一般論として申し上げれば、御指摘のとおり、事故当時の信号の表示いかんというものだけが被疑者の過失の有無の程度を決めるものではありませんでして、その過失の有無の程度に大きく影響する要素ではありましょうが、それだけで判断されるものでないことはおっしゃるとおりでございます。
 そこで、検察当局におきましては、交通事故事案についてさらに多角的な観点からも捜査を行い、その結果、不起訴処分という処分を決しているものと承知しております。

○遠藤(和)分科員 だから、私の言った素朴な、常識的な質問に答えてくださいよ。そうした疑問に対して、そうした観点から考えても、この事案は嫌疑が不十分であった、こう言えるんですか。そういう積極的な理由を言ってくれないとわかりませんよ。

○樋渡政府参考人 繰り返すようで申しわけございませんが、先生のおっしゃっているような要素も当然に捜査をして、その上で嫌疑がなお不十分であるというふうに判断をしたものと思われます。

○遠藤(和)分科員 これは遺族に対しての説明責任も果たしていないのです。そうした素朴な疑問に何も答えていない。要するに、嫌疑不十分でしたという言葉だけ伝えている。嫌疑不十分の中身は何なのか。こういう観点から考えても、こういう観点から考えても、こういう観点から考えても、こうこうしかじかで不十分ですということを言わなければ、何もわかりませんよ。
 どうなんですか、遺族に対して説明責任を果たしていると思っているんですか。

○樋渡政府参考人 検察現場におきまして、それぞれが誠意を持って対応すべきことでございまして、そのように対応しているのではないかというふうに当局では思っております。

○遠藤(和)分科員 検察は、自分の立場の重さを感じてほしい。こうした刑事罰を科す訴訟は、警察か検察しかできません。民間人ではできない。しかも、被害者は亡くなっている。ということからいえば、自然、検察とか警察は、亡くなった方の立場でこの案件を考えるべきでしょう。そうでなければ、亡くなった人は、法治国家の国の中において自分の立場を主張するものは何もないんです。それが検察、警察に付与された権限じゃないんですか。その権限を行使しているんですか。

○樋渡政府参考人 いろいろ御指摘、御批判はあろうかというふうに感じております。しかしながら、この事件につきましては、徳島地検からの報告によりますと、検察官から御遺族に対しましては、本件不起訴処分に至るまでの間、適宜適切に対応しますとともに、本件不起訴処分に際しましては嫌疑不十分による不起訴である旨説明し、さらに、その後、御遺族からの求めに応じて、不起訴記録中、実況見分調書等の一部の証拠を開示しているというふうに承っております。

○遠藤(和)分科員 刑事局長、報告を聞いてそうですかと言うだけが刑事局長の仕事じゃないんですよ。自分が疑問に思えばもう一遍調べ直す、当然のことじゃないですか。疑問に思わないの。
 それから、私、警察にも言いたいんだけれども、警察は、検察に対して、これは業務上過失致死罪として送検をしている。にもかかわらず、警察ができる権限である行政処分すらしていません。これはどういうことなんですか。

○属政府参考人 お尋ねの本件に係る行政処分ですけれども、徳島県警察におきましては、これまで判明した事実等から判断をして、行政処分については、過失の程度とかあるいは不起訴になったこと、そういったようなことも判断しながら、行政処分を行っていないというふうに承知をしております。

○遠藤(和)分科員 それはただ報告を聞いているだけなんですよ。普通、論理矛盾でしょう。だって、検察に対して、本件事案は業務上過失致死罪でございますと言っているんです。言っていながら、自分で行政処分できる権限がありながら何の行使もしていない。矛盾していませんか、この警察の行動。どういうことなんですか。

○属政府参考人 いろいろな交通事故が発生するわけですけれども、そういった事故については、可能な限りの捜査を遂げて検察庁に送致をするわけですけれども、それには一〇〇%こちら側の問題だとか言える場合もありますし、その比率がいろいろな形の場合、これは千差万別でございます。
 そういう中で、やはり捜査を遂げて、客観的な立場で検察庁がそれを公訴するかどうかを判断される、そういうことになるわけでありますけれども、その結果については、私どもも、こういった行政処分等を行う際の判断にも、各県においてはしているといったことは聞いております。

○遠藤(和)分科員 おかしい。警察は警察の判断があってしかるべきです。検察は検察の判断がある。行政処分は検察にお伺いしなければできない処分なんですか。警察に任された権能でしょう。何でそれができないんですか。

○属政府参考人 行政処分は、当然、警察独自でやるべきものでありますし、現在もやっているわけでありますけれども、やはり過失の度合いとか、行政処分というのは、運転免許を受けた者が交通違反や交通事故を起こしたり、その他一定の事由が生じたことによって、その人が自動車等を運転することが道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるときは早期に道路交通の場から排除し、道路交通の安全を確保していく必要がある、そういった観点で、将来的に早期に道路の交通の場から排除する必要があるかどうかということをいろいろな面から判断してやっている。
 その場合に、こうした事故については、いわゆる事故を起こした者の責任をどの程度問うことができるか、その人にどの程度の責めを負わすことができるかといったものを相当重要に考えているはずでございます。

○遠藤(和)分科員 おかしい。全く理解できない答弁だ。
 私は、もう官僚の皆さんとは話をしてもしようがないから、政治家である大臣にお聞きしますけれども、本当にこの国で警察とか検察に対して国民が信頼をしている根拠というのは、やはり自分たちにかわってきちっとしたことをしてくれるんじゃないか、この信頼です。それを裏切ったら、存在自体に意味がないよね。私は、そういう意味で、この問題は大変重い課題を私たちに投げていると思います。
 そうした意味から、この事案に対して、今お聞きになったと思いますから、国家公安委員長の立場で、あるいは一政治家の立場でどのようにお考えであるかということをお伺いしたいと思います。

○谷垣国務大臣 井上委員も遠藤委員も、交通事故の捜査に関して具体的な事案を挙げて、警察あるいは、私は検察の立場に立って御答弁すべき立場ではありませんけれども、捜査に不適切な点があるのではないかという御指摘でございました。
 私は、個別の捜査でどう事実認定をしたかというようなことについては、閣僚としてはそこまで今立ち入ってお答えすべきではないと思っております。
 しかし、遠藤委員がおっしゃいましたように、この国、この国というか、大体どこの国でもそうですが、こういう事故あるいは犯罪が起きましたときに、それを捜査を遂げて起訴、最終的には有罪、こういう活動ができるのは被害者ではないわけですね。被害者はそういうことをするのを、つまり、昔で言えばあだ討ちですけれども、そういうことをするのを禁じられておりまして、そのかわり、私どもがあだ討ちをするつもりでやると言うとちょっと言葉が語弊になりますから、そのかわり、そういう世の中の秩序や犯罪に対してきちっと対応していく役は検察なり警察が負っているということだろうと思います。
 もちろん、個別の事件の事実認定というのはなかなか難しいこともございまして、先ほども御議論がありましたけれども、さあ、事故が起こったとき、信号が青だったのか赤だったのかというようなこともなかなか認定が難しいことは、実際問題としてあるだろうと私は思います。
 それから、軽々にその事実認定を、心証を漏らしてしまったというのもよかったのか悪かったのか。日々の捜査で捜査を遂げていくと、心証、事実認定をどう見るかというのも変動していくものだろうというふうに私も思うのです。
 ただ、先ほど遠藤委員がおっしゃいましたように、被害者にかわって犯罪を摘発してきちっと法のもとに裁くというのは検察、警察に与えられた使命でありますから、いやしくもそれが不適切に行われていると国民の目から見られないように、私も委員のおっしゃることはそういうことだろうと思います。
 これからも警察を督励してまいりたい、こう思っております。

○遠藤(和)分科員 最後に、増田法務副大臣にもお伺いしたいんですけれども、検察が、交通事故の死亡した案件について、要するに、不起訴が三割を超えている、このように伺っています。一般の事案では九割が不起訴ですけれども、死亡事故に特定しますと三割弱だということでございまして、不起訴になりますと、事実関係はもうやみに消えちゃうわけですね、ある意味では。
 ですから、本当に、どういうことで自分の大切な息子は亡くなったのか、弟は亡くなったのか、それを解明しようにもしようがありません。こういうところに置かれているわけでございまして、私は、裁判の中で明らかにする、こういう意味も含めて、交通事故で亡くなった方の案件についてはもっと起訴率を高めていく努力をしなければ、門前払いをするようなことでは、法務行政に対する信頼がなくなるんじゃないか、このように思いますけれども、その御答弁をお聞きして、終わりたいと思います。

○増田副大臣 先ほど来の御発言、お聞きをいたしておりました。
 そこで、まず、御指摘の点につきましては、初めに、大変若年の御子息を失うこととなられた御両親初め御遺族の方々のお気持ちは察するに余りあります。私は子がありませんでしたから、約二十年、神様、仏様、お医者様と、必死になって子供を恵んでくれと頼みました。ついに恵まれませんでした。今、この年になって初めて、子宝という言葉の重みをかみしめているわけであります。したがって、遠藤委員がこの問題を取り上げながらいろいろと詰め寄られている姿は、心からなるほどとうなずくものであります。何しろ、心からまずお悔やみを申し上げます。
 検察当局におきましては、どのような事件であっても、事案に即した適正な処分を実現すべく、必要な証拠については鋭意収集に努め、法と証拠に基づいて処分を決定しており、お尋ねの事件についても、このような姿勢で捜査を尽くし、処分に至ったものと理解をいたしております。
 そこで、先生の御発言なんですが、どう思うかという御発言に対しては、やはり法務は少なくも厳正で公平で、国民の皆さんの信頼を得るように一層努めていかなければならぬ、このように考えました。
 以上です。

○遠藤(和)分科員 終わります。

○亀井(善)主査代理 これにて遠藤和良君の質疑は終了いたしました。
 次に、栗原博久君。

○栗原分科員 御質問を許していただきまして、ありがとうございました。
 私、今から七年前に、刑務所のことについて質問いたしておりまして、明治四十一年に施行されました監獄法が現在の実態に合っていないじゃないかと。特に、国際社会からも、日本の行刑について、改善すべきものがあるというような指摘もあるところで、皆さんも、監獄法の改正とか、その関連の法律の刑事施設法など、そういうものをつくろうと。しかしながら、声がかかって、まだそれは実行されていないようであります。
 私の友達に刑務官が大勢おられまして、本当に必死になって矯正のために職務に邁進されている方々を見ておるわけでありまして、今回、このような中で、名古屋の刑務所においてあのような大変悲惨な事件を見ますると、本当にまじめに一生懸命に、あるいはまた自分の身の危険を顧みず頑張っている刑務官に対して、大変申しわけないと思っておるわけであります。
 私も多くの友達がおりまして、また、刑務所に入った方もたくさん私は知っておりますので、平成八年三月一日の予算委員会の質問でも、刑務所の中における過剰な矯正問題についても私は質疑したことがありまして、このような事件が起こることも実は懸念しておったわけでありますが、先般、この予算委員会で、集中審議で法務大臣等に対して質疑が繰り返されまして、私、その内容を聞きながら、大変残念に考えておったわけであります。
 我が国の最近の刑事案件、大変高まっている。特に、外国人が日本にどっと押し寄せてまいっておって、検挙率も四〇%を割っている。軽微な事犯については二〇%そこそこだ。空き巣か何かなんですか。ですから、この前も佐藤警察庁長官が訓示を出されて、犯罪予防ですか、まず小さな犯罪から芽を摘まなければ大きなものが起きると。私は、佐藤長官の言うことはもっともだと思うんですね。
 そういう中で、最近、多くの犯罪人が、収容者が出てまいって、刑務所がパンク状況にある。恐らく、そこに入っている方々も、精神的に参っている方もいるかと思うんですね。もう今は六千人ぐらいですか、収容人員に対して過剰なのは。
 そこで、ぜひ、再びこのような事件がないようにひとつさらに御努力をしていただきたい。そしてまた、犯罪を犯した方々が再び犯罪を犯して刑務所の門をくぐらないようにするためには、当然、刑務所の中において、更生のいろいろな教育あるいは矯正処遇、いろいろなもので、もうこの刑務所に来たくない、いや、入っているそこの看守の方々は本当にいい人だけれども再び来たくない、そういう気持ちで出ていただくように、そういう環境をぜひおつくり願いたいと思っております。
 私は、きょうは、名古屋の刑務所の問題についてこれ以上問いませんが、この関連で、退職した刑務官についてひとつお聞きしたいと思っています。
 一昨日ですか、週刊誌が出まして、この中で、元看守、二十年前ぐらいにやめた方らしいんですが、田中角栄先生を初めとする、府中刑務所、東京拘置所に収監された方々のことを、克明とまではいかなくても、目を背けるような内容をこの記事に書いているわけですね。
 きょうは、私、このことについてまずお聞きしたいのでありますが、この記事の中身を見ますと、田中角栄総理、橋本登美三郎先生あるいは当時の関連する方々、大久保さんとか伊藤さん、丸紅の方々ですね、そういう方がどんな態度で刑務所におったとか、美空ひばりさんの弟さん、加藤哲也さんについては、体にどんなことがあったとか、もう言語道断のことを週刊誌に公表しております。
 先ほど言いましたが、私も多くの刑務官の友達がおるので、彼らとはいろいろ飲食をともにしますけれども、絶対にしゃべりません。やめた方でも、自分が刑務所にいたときどんなことを見たとか、絶対しゃべらない。
 私は、名古屋刑務所の問題の中で、また元看守の方のこういうことが出てきましたので、このことについてひとつ質問したいということで、きょう、この時間をいただいたわけであります。
 そこで、国家公務員法第百条とはどういうふうに書いてあるんでしょうか。

○久山政府参考人 お答え申し上げます。
 国家公務員法第百条第一項は、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。」というふうに規定されておるところでございます。

○栗原分科員 罰則規定はどうなっていますか、それに抵触した場合の罰則は。

○久山政府参考人 罰則につきましては、「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。」こういう規定でございます。

○栗原分科員 では、そういう規定がございますけれども、この刑務所の内部につきましては、今、私は雑誌を持っておりますが、恐らく皆さんもお読みになっていただいたと思うんですが、これを週刊誌に話をした人が実在すると仮定して、この方がこの記事の内容、このようなことを公表した場合、他に漏らした場合、矯正局長、あなたの方の御所管かと思いますが、これは守秘義務違反に該当しますか。

○中井政府参考人 委員御指摘のとおり、問題の記事には、特定の被収容者の生活状況に関する具体的な記述がございます。問題の記事の内容、あるいは、そもそもそこに出てくる元職員という者がだれであるか、こういうことにつきましては、現段階では事実関係が判明しておりませんので、私どもの方で現在調査中でございます。
 まず、事実関係の確定が前提になるわけでございますけれども、その事実関係の確定を踏まえた上で、ただいまお尋ねの国家公務員法第百条に規定するところの守秘義務違反になるかどうか、こういったことも含めまして慎重に検討していくことになろうかと思います。

○栗原分科員 私が申し上げたいのは、この記事の方が実在していた、その方がこうやってしゃべっているわけですから、そうした場合は、これは守秘義務違反になりますね。抵触しますか。

○中井政府参考人 先ほど御答弁にありましたように、守秘義務違反を構成するためには、「職務上知ることのできた秘密」ということになっておりますので、私も所掌外でございますけれども、まず、本当の秘密に該当するのかどうかといった事実関係その他も含めまして、もう一度きちんと調査する必要があろうかと思います。

○栗原分科員 矯正局長の答弁で、私は満足できないですね。要するに、今、公務員法の百条に該当する項目であると。そして、あなたたちは、この人間が実在するかどうか調べると。これは、名古屋の刑務所の刑務官のことがあるから私は聞いているんですよ。たとえやめても、厳然たる措置をとっていただくことが大事だと私は思う。
 きょうは刑事局長が来ていらっしゃると思いますが、もし、これが守秘義務として該当する、そして告発するという場合、これは告発を受ける立場にありますか。刑事局長。

○樋渡政府参考人 その告発を受けるかどうかは、まさしく捜査機関の活動にかかわる事柄でございますが、あくまでも一般論として申し上げますと、告発と言えるためには、特定した犯罪事実を親告して、その犯人の処罰を求める意思表示をすることが必要でございまして、検察当局におきましては、そのような告発の要件を備えているかを検討し、その要件を備えている場合にはこれを受理することとなり、これを受理した場合には、必要な捜査を遂げた上、法と証拠に基づいて適正に対処することとなるものと承知しております。

○栗原分科員 矯正局長にお聞きします。
 あなたは、これから特定する人間を調べるということなんですが、では、実在した場合、あなたは、当然、国家公務員法第百条に基づく守秘義務違反、そしてまた、これは、昔、刑務所に勤めていた方ですから、告発人は、どなたが告発するんですか。この人間を確定して、そして、明らかに守秘義務違反であったことを承知した場合、あなたは告発人たる立場にあるんですか。

○中井政府参考人 先ほど申し上げましたように、事実の確定ということが先行すべきものかなと思っております。
 非常に古いというか、約二十数年前になろうかと思いますけれども、多くの書類は既に廃棄されているようでございますけれども、問題の東京拘置所におきましては、当時の個々の被収容者の処遇に関する記録が記載された被収容者身分帳簿でありますとか、施設の配置図でありますとか、被収容者の出入所状況を記載した名簿等をいろいろ調べておりますし、当時から勤務している職員の事情聴取なども行うなどしているところでございます。
 こういった過程で事実が確定されたという上でのお答えになろうかと思いますけれども、東京拘置所に勤務していた元職員が国家公務員法上の守秘義務に違反したということになれば、にわかに断じがたいのでありますけれども、恐らく東京拘置所長において対処するというのが一応考え得るところでございます。
    〔亀井(善)主査代理退席、主査着席〕

○栗原分科員 今、このように刑務官の問題が社会問題になっておりますし、また、まじめにやっておる刑務官の名誉のために、あるいはまた田中角栄先生初め、このような記事の中において、本来、獄中のものを書いてはならないものを、これは名誉の問題でありますから、ぜひひとつ厳正に御処置をしてください。私は、また当選しておりましたら、来年もまたこれを続いて聞きますから。
 さて、次は拉致の問題についてお聞きしたいんです。
 昨年九月十七日に、小泉総理が、八人死亡、五人生存、一人該当なし、そういうものを金正日から引き出した。あのとき、日本国じゅうは大変悲しい思いに浸りました。
 総理が出発する前の日に、実は、これらの家族の方々を私は他の国会議員の方と一緒に官邸に御案内しまして、最後にひとつ総理にお会いしたいという気持ちを伝えたわけですが、大変緊急な局面で、お会いできなかったわけです。
 このことで、金正日はまさしく国家犯罪の首謀者であります。そしてまた、かつて、スターリンが金日成を北朝鮮の支配者として指名した。それによって、我々日本が北朝鮮に社会的なインフラ、あるいは特に東海岸の工業地帯、いろいろそういうものも、当然、金日成が手に入れた。あるいはまた、朝鮮戦争、冷戦などで、それによって、中ソ、東欧から彼は莫大な支援金を受け取ってきた。要するに、取るためにあるような国であると私は思っている。
 特に、人についても、韓国からは二百人以上の方が拉致されておる。それは、一千名拿捕されたうち四百人ほど帰ってないとか、百人ほどが拉致されたとか、いろいろ言われている。あるいはまた、朝鮮戦争のときの捕虜の方とか、ベトナム戦争において、韓国の兵隊が捕虜になって北に連れていかれたとか。
 あるいはまた、我が国では、一九五九年、私の友達も新潟港から、地上の楽園と称して、北朝鮮に行った大事な友達もおられます。そういう方々を日本から連れていった。そして、今度は日本に金をせびってくる。そういう中で、この金帝国は、金も物もすべて取ることがさも当たり前だと思っている。そこにこの拉致という問題が起きていると私は思っております。
 その中で、時間がございませんから、かいつまんで申し上げますが、今、国内に五人の御家族の方がおられます。そして、愛する大事な肉親を北朝鮮に残してきている。あるいはまた、八人が亡くなったと。横田さんを初め八人が亡くなったと。亡くなっていないと私は信じております。そういうことについて、まだ帰還されていない家族の方々、あるいはまた北朝鮮が亡くなっていると言う八人の方々、こういう方について、今どのように我が国の政府は対応されているか、聞きたいと思います。

○齋木政府参考人 お答え申し上げます。
 先生おっしゃいましたように、甚だ遺憾な拉致事件でございましたけれども、今、帰国された五人の方々の北朝鮮に残されているお子様たち、この方々を一日も早く日本に戻すようにということを、政府としては機会を見て繰り返し北朝鮮当局に対して強く要求してきておりますが、残念ながら、いまだ先方の応じるところとなっておらない状況でございます。
 また、安否が不明である方々につきましては、十件十五名ということで日本政府として認定した方々以外の方々についてでございますけれども、私どもは、警察当局から提供いただいております種々の情報を踏まえまして、昨年十月末の国交正常化交渉の席上、北朝鮮側に対して、そういう方々がいるならば早急に情報提供するようにということを要求したところでございます。
 また、安否情報につきまして、私どもとして、先方から提供のあった情報の内容について、疑問点の数々を列記いたしました質問書を先方に対しても渡してございますけれども、いずれにいたしましても、先方からはまだ何の回答も得られていないという、甚だ遺憾な状況が続いておるわけでございます。
 私どもとしましては、引き続き、粘り強く、先方に対して強く、一日も早いお子さんたちの帰国、それからまた安否情報の解明、こういったことを要求し続けていく、そういう方針でございます。

○栗原分科員 九月十七日の日朝平和宣言は、北から核とかミサイル、こういう問題を除去する、そういうことが最も大きなことであり、また、拉致の方々のことを解明することだと思っておるんですが、御返答あったのをお聞きする限り、何ら進展がないようですね。
 一月二十日には、ロシアのロシュコフ外務次官が、ピョンヤンで金正日と六時間にわたっていろいろ話し合いをしてきた。あるいはまた、韓国の盧武鉉新大統領が、この前ありましたソウルの南北朝鮮の関係閣僚会議でも、みずから、前向きにひとつ取り組むと。あるいはまた、ブッシュ大統領は、先般、パウエル国務長官に対して、大胆に北に提案してこいと、そういうことを言っている。我が国は今、大変このような膠着状況である。
 ところが、そんな中で、先般、ミサイルを北朝鮮は発射して、我々日本を威嚇する。あるいはまた、一昨日ですか、きょうの新聞に載っておりますけれども、今度、黒鉛型の原子力炉を再開する。
 まさしく、我が国あるいはまた国際社会に対して挑戦しているわけでありますが、しかし、そこに、我が国の主体性といいましょうか、我が国が主導的役割を持っていないような点を私は大変残念と思っておるんですが、ぜひひとつ政府挙げて、この核の問題、ミサイルの問題、そして人命にかかわる拉致の問題に、あらゆる手段を講じて対応していただきたいと思っています。
 そこで、まだ日本には二百人近い拉致された者がいるんじゃなかろうかと言われております。この前、特定失踪者問題調査会というところで、二回にわたって、八十四名の方々が、拉致の疑いの中の疑い、疑いのまた疑いだかわかりませんが、いろいろな要素があると思いますが、突然いなくなったとか、全く失踪する理由もないとか、情報が本人から全然来ていないとか、そういうことで、こういうことの調査の中で該当者が出たと思うんですが、これについて警察庁はどのような対応をしているか。
 時間がございませんから、あわせてお聞きしたいんですが、私、実は新潟県の県職員をかつてやっておりまして、昭和四十五年に新潟県庁に入ったんですが、そのとき、同期で大沢孝司君というのが一緒に入りました。私、新潟県の本庁に入って、彼は出先へ行ったんですが、一年半後に私もその出先に行って、彼と二年間一緒に仕事をしておりました。昭和四十七年の夏に、彼は転勤になって、そして、海の向こうの佐渡島に行ったわけです。その後、一年ちょっと、四十九年の二月ごろですか、拉致されて、拉致というか、いなくなった。千人近い警察官が動員されて、幾ら調べてもわからなかったんですね。神隠しに遭ったと思っていた。
 しかし、それが、この前、北朝鮮から曽我ひとみさんが戻ってきた。彼女がちょうど、この大沢君がいなくなったところから本当に近いところでいなくなったんですね。そこで、ああ、やっぱり彼も拉致されたんじゃないかと。これはもう地元の市町村もみんなが、拉致されたというふうに思っております。
 そこで、時間がないので、まとめてお聞きしたいんですが、この特定失踪者問題調査会がリストアップしました八十四人を今どのように警察当局では把握しながら調査しているか、また、今私が申し上げました大沢君についてはどのような捜査状況の中にあるかということを、ひとつお述べいただきたいと思います。

○奥村政府参考人 議員お尋ねの特定失踪者問題調査会、これは、二百名を超える失踪者につきまして、北朝鮮による拉致の可能性を完全には排除することはできないということで、リストを作成しておられます。八十四名というのは、氏名を公開しておられる方々であります。私ども警察も、調査会の方からこのリストの提供を受けておるところであります。
 私どもは、この北朝鮮による日本人拉致容疑事案、これは極めて重大な事案であるというふうに認識しておりまして、これまで鋭意捜査をしてまいりまして、現時点で、十件十五名というふうに判断しておりますけれども、これ以外にも、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があると見ておりまして、いただきましたリストにつきましても、私ども、重要な参考情報として活用しながら、引き続き所要の捜査あるいは調査を進めていきたいと思っております。
 それから、議員お尋ねの男性につきましては、この方は、昭和四十九年の二月に、新潟県の佐渡島において行方不明となられたわけであります。当時、事件、事故、家出等、あらゆる可能性を念頭に置きまして、地域住民の方々の御協力も得ながら、付近の捜索活動あるいは関係者からの事情聴取を行ったものの、その後、現在に至るまで、所在の確認には至っていないわけでございます。警察といたしましては、あらゆる事態を想定いたしまして、引き続き所要の捜査を行っているところでございます。

○栗原分科員 捜査内容とか状況はそれ以上お話しできないかもわかりませんが、今まで、拉致の認定につきましては、内閣官房でされているようですが、それは、警察庁の方で拉致の問題についていろいろ把握されて、そして警察庁では、公安調査庁とか海上保安庁とか外務省とか、いろいろなところと相談する中でまとめているようですが、例えば、認定をされる場合、どういう項目、どういう条件というのはおかしゅうございますが、どういうファクターを積み重ねて認定というのはなされるんでしょうか。それをお話しできたら、ひとつ御回答をお願いします。

○小熊政府参考人 お答えいたします。
 拉致被害者の認定につきましては、北朝鮮当局によって実行された拉致行為の有無を基準として行うこととしております。この場合の拉致行為ということでございますが、国内外において、本人の意思に反して行われた、主として国外移送目的拐取、その他の刑法上の略取及び誘拐に相当する行為をいうことでございます。

○栗原分科員 私は、今の説明だけでは、何となく抽象的であるので、それでは認定を今求めている方々に御納得いただける答弁じゃないと思います。お立場がありますからそういう回答しかできないと思いますが、警察庁におかれましても、今の八十四名でございますか、家族の方々も、拉致されたんだという気持ちで同意されたと思いますので、ぜひこれらの捜査を早目にやっていただいて、家族の方々が安心できるようにひとつお願いしたいと思っております。
 そして、私は新潟であるということは先ほど申し上げましたけれども、万景峰号の、これはもうけしからぬと私は思っておりまして、現行法では寄港阻止はなかなか難しいようでありますが、これは議員立法をつくってでも、明らかに工作員に対する指令を行っているということはあからさまになっておりますし、今後、その寄港を禁ずることができないとしても、十分、警察当局におかれましても、やはり警備ですね、おかしな工作員が近づかないように。
 あるいはまた、きょうは国税庁は来ておりませんが、税関の面におきましても、今までが手ぬるいんですね。私も新潟におりまして、この万景峰号に車が自由に出入りするということを見ておりまして、こんなことでいいんだろうかと。我々国会議員も悪かったと思うんですよ、そういうものを放置してまいりましたから。これはやはり厳しく、特に北朝鮮であるからというんじゃなくて、他の国と同じように、そういった犯罪国家を我々は許容するわけにはまいりませんから、我が国を挙げてこの問題に対応するためには、まず万景峰号に対しての厳正な取り扱いを求めて、私の質疑を終わります。
 ありがとうございました。

○持永主査 これにて栗原博久君の質疑は終了いたしました。
 次に、今田保典君。

○今田分科員 民主党の今田保典でございます。
 私からは、運転免許制度あるいは交通安全に関しての質問をいたしたいと思います。
 データによりますと、平成十三年十二月末で運転免許保有者数は七千五百五十五万人ということでお聞きしております。これを人口の割合から見ますと、七〇%を超えている状況でございます。今から十年前の平成四年当時と比較してみますと、免許の保有者数は千二百三十六万人ふえているそうでありまして、また、保有率については約七%アップしている、こういう状況でございます。当然、道路整備が整った、それによって車が普及し、国民の日常生活にとって運転免許は必要不可欠なものになっておるということではないのかなというふうに思います。しかし、その一方で、当然、悲惨な交通事故が発生しておるわけでありまして、大きな社会問題となっております。
 私も、超党派でつくっております交通事故問題を考える国会議員の会というものがあるのですが、そのメンバーの一員として交通事故問題にかかわって、今日まで勉強させていただきました。その際に、被害者からいろいろ意見等々をお聞きしますと、この御遺族の方々の声を聞くにつけ、いろいろ考えさせられる面がありまして、非常に大きな社会問題だな、こういうふうに思っております。実は、私自身も昭和四十年に両親を一度に交通事故で亡くした身でございまして、そういった意味で、遺族の方々のお気持ちというものは十分理解をする一人でございます。
 道路交通事故、特に人身事故の推移を見てみますと、昭和二十年代から四十年代のころまで死傷者の数が増加しておりまして、昭和二十六年から四十五年にかけての死傷者の数は三万五千七百三名でした。それが、四十五年以降になりますと急激にふえまして、九十九万、約百万人の死傷者が出ております。そのうちの死亡者が四十五年のピークのときに年間で一万六千名を超えるというようなことで、死亡者も大変ふえておる状況でございます。その後、昭和四十五年からは、増減は若干あるものの、最近におきましては、関係者の大変な努力によりまして、一万人を割る水準を維持しているわけであります。
 こういった状況を考えて、これから、交通事故を減らすために、道路整備あるいは信号機、道路標識、いわゆる交通安全施設が十分に充実されることは当然だと思うのですが、同時に、私は、運転者に対する安全運転教育が極めて重要だ、こういうふうに思っておりまして、その件についてこれから具体的に質問させていただきたい、このように思うわけでございます。
 先ほど申し上げましたように、平成十四年度の交通事故による死者の数は昭和四十一年以降最低の八千三百二十六名となっておりまして、これは大変いい傾向だなというふうに思っております。
 しかし、その中身を分析してみますと、昨年六月の道路交通法の改正による、いわゆる飲酒運転の抑止効果が大きく寄与したのではないかというふうに思うわけであります。このことは、裏を返せば、これまでいかに飲酒運転が多かったかというふうにもなるわけでございまして、つまり、モラルの問題がこれまで交通事故を起こしてきたと言っても過言ではないと思っております。そういった交通事故の実態を深刻に分析して対策が必要だろう、このように思うわけでございます。
 この間、いろいろ関係者のお話を聞いたものを参考にしてこれから申し上げるのですが、高齢者講習制度あるいは初心運転者教育、そういった整備が進んできておることも大きくその事故減につながっているのではないかとも言われておるわけでありますし、また、モラルの問題がいろいろかかわってきたのだろうというふうに思います。
 そういったことで、いろいろ考えてみますと、やはり運転者に対する再教育の充実というものが非常に大きく交通安全にかかわってくるのだろうというふうに思うわけでありまして、こういったことをさらに今後進めるべく対策をしなきゃならぬではないかというふうに思っているわけであります。そういった意味で、運転免許更新時の教育をもう一度見直すことが必要なのではないかというふうに思っておるわけでありますが、このことについて御意見をお伺いしたいと思います。

○属政府参考人 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、運転者教育というのは大変重要な課題だというふうに思っております。中でも、更新時講習につきましては、最新の交通情勢や交通事故実態、法令等の改正について多くの更新者に対しまして知らせ、理解してもらうための大変重要な機会だというふうに認識しております。
 そのため、更新時講習につきましては、きめ細かい教育を行うという観点から、昨年六月から、優良運転者講習、一般運転者講習、違反運転者講習及び初回運転者講習、この四つに区分してきめ細かく行っているところであります。
 講習では、講習の区分に応じて、道路交通の現状とか事故の特徴、運転者の心構えと義務、安全運転の知識、運転適性・技能の診断、そういったものを行い、その内容の充実に努めているところでございます。今後とも、さらに充実強化を図っていきたいと思います。

○今田分科員 今ほど言われたことをさらに充実する、こういうことでございますが、今、非常に高齢化が進んでおります。そこで、七十五歳、八十歳あるいは八十五歳、九十歳、そういった年齢の方で免許証を持っている方が多いわけでありますが、何かどうも、そういう方を見ますと、つえがわりに車を運転しているというような方も見受けられるわけですね。
 そういう高齢者の運転のあり方等々について、これからどうあるべきかを真剣に考える時期に来ているのではないかというふうに思うのですが、この件について、御意見があればお聞かせいただきたい。

○属政府参考人 高齢者の方のいろいろな安全教育というのは非常に重要な問題でありまして、最近は、全体の交通事故の死者数は減っているんですけれども、高齢者の方につきましては、その減り方が非常に少ない、ほぼ横ばい、そういった厳しい状況であります。
 特に、高齢者の方につきましては、先般の道路交通法の改正によりまして、従来は七十五歳以上の方を対象に高齢者講習を実施しておりましたけれども、それを、七十歳以上の方ということで対象をさらに広げまして、実技等も含めながら講習に努めておるところであります。

○今田分科員 ありがとうございました。
 次に、原付免許教習制度の導入というものについてちょっとお聞きしたいのです。
 現行の制度においては、ごく簡単な原付講習を受ければ原付免許が取得できる、こういう制度になっておるわけでありますが、ただ、体系的な教育を十分に受けることのないままに路上で走行経験を積むということになるわけであります。その結果、走行経験に基づくある種の自信感というものが出てくるわけでありまして、そういう方が普通免許等を取得するに当たって初めて体系的な教育を受ける際に、これは自動車教習所の指導員から聞いた話なんですが、どうも妨げになっている、こういうことなんですね。こうした現場の声にかんがみますと、原付の事故発生状況との関連だけではなくて、その他の車種も含めた事故全体の原因にもなっているのではないかと疑わざるを得ないわけであります。
 そこで、いずれの運転免許も持たない者が原付免許を取得する際は、普通免許以上に要求されている体系的な教育の一部を先取りして受講しなければならないという制度に改めるべきではないのかというふうに私なりに考えているのですが、この件について、いかがでしょうか。

○属政府参考人 原付自転車乗車中の死者数についてちょっと申し上げますと、昨年は、七百二十四人の方が亡くなっています。十年前の平成四年で見てみますと、九百八十七人ということですので、かなり減少してきているという状況ではございます。
 原付につきましては、平成四年十一月から、原付の試験に合格した人に対しまして、交通事故を防止するためにある程度の教習はやる必要があるだろうということから、実際に原動機付自転車に乗車させて、基本操作、基本走行、応用走行の実技を内容とする三時間程度の講習を指定自動車教習所等に委託して実施しているところであります。今後、さらにその講習の内容の充実を図っていきたいというふうに思います。

○今田分科員 私の質問とはちょっとあれなんですが、原付免許を受けるときに体系的な教育を受けていないために、一般的に言えば道路を経験するわけですが、そのことが、普通乗用車、いわゆる普通の免許を取るときに運転の妨げになる、こういうことなんですよ、自動車教習所の先生方のお話を聞きますと。そのことを何らかの形で解決する方法はないのか、こういうことなんですが、何かいろいろ研究されたことがあるのかどうか。

○属政府参考人 本当にきちんとした形にするという観点からであれば、現在は学科試験だの適性試験でやっておりますけれども、これに技能試験を導入して、その過程できちんとした教育をやるということが一番理想かもしれません。
 ただ、原付自転車の場合は、原動機の排気量も小さく、その取り扱いも比較的容易だ、高齢者の方もたくさん利用しておられるというような現状から、直ちにそういう方向に持っていくのもなかなか難しい問題があるということで、今先生の御指摘のありましたように、指定自動車教習所が、今度は普通自動車を受けるときにいろいろ教習をやるわけですけれども、そういうものとの位置づけもよく考えながら、やはり整合性のとれるような形で、現在の教習をよく見直しながら充実していくのが一番いいかなというふうに思います。

○今田分科員 いや、今ほどの御理解、私なりにするのですが、今、いわゆる原付と自動二輪の違いというのは、ccなんですね。排気量の区分でなっているわけですね。したがって、原付自転車というのは、一般的に言えば二輪ということが頭の中にあるのですが、現実には軽自動車と同じような形態の車に乗っている方もいるわけですよ、五十cc以下なものですからね。そういったところでの経験も踏まえて、こういう指導員の方々の意見というものがあるのじゃないかなというふうに思いますので、今後、いろいろ研究していただきたいと御要望申し上げます。
 それから、交通安全教育の充実ということでお伺いしたいのです。
 現在、小学校、中学校、高等学校、それぞれの段階に見合った交通安全教育が行われておるわけでございます。当然、小学校の段階では、保護者も含めて、歩行者あるいは自転車に乗る者の立場からの交通安全教育、それから中学校については、自転車を利用する立場からの教育、そして高校生の場合は、原付や自動二輪を運転する立場からの交通安全教育を中心に行われているというふうに私は理解しておるわけであります。
 そのような中で、若い人による無免許運転や車の違法改造、あるいは市民生活を脅かす共同危険行為等々が依然として後を絶たないわけでございます。これらの行為を未然に防ぐためには、交通安全教育の内容をさらに充実する、あるいは、警察だけではなくて家庭や学校、地域全体でそういったものに取り組む、このようなことにしないと、今ほどのような問題が今後もなかなかなくならないのではないかというようなことを考えておるのですが、このことの対策についてお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。

○属政府参考人 ただいま御指摘の、暴走族を初めとする若い者による危険な運転行為に対しましては、国民の方々からもいろいろな取り締まり要望が寄せられております。また、平成十四年六月に施行されました改正道路交通法によりまして、無免許運転とか共同危険行為とか、そういった悪質な違反に対する罰則が大幅に強化されております。
 それを受けまして、悪質、危険な運転行為に対しましては徹底した取り締まりを行う、また、行政処分の的確な執行を行ってそういったものを早期に排除していく、そういったようなことに今取り組んでおります。
 さらに、そうはいいましても、そういった取り締まりだけではなかなか十分ではございませんので、暴走族等への加入防止、離脱促進、不正改造車対策等の総合的な対策がとれるように、関係機関・団体、家庭、学校、地域社会と十分連携をとりながら総合的に取り組んでいきたいというふうに思います。

○今田分科員 ぜひひとついろいろ工夫してやっていただきたい、このように思います。
 次に、仮免許と路上教習の問題についてでございます。
 御案内のとおり、国民皆免許の時代を迎えたわけでありますが、とりわけ、普通免許の取得は就職する際の最低限の資格要件というほどの時代に入っております。
 ところが、高校を卒業して十八歳になっていない方もおるわけですよ。なっていないというか、三月ぎりぎりで生まれた方なんかは、到底、免許を取れないのですね、就職なんかもありまして。そういった方々に対しての対策も必要なのではないかということでこれからお聞きしたいのですが、そういった方々に対する配慮があってしかるべきではないのかな、こういうふうに思います。
 ということは、免許を取らないままに就職せざるを得ない、しかし、十八歳になりました、免許を取ろうと思ったときに、新しく就職して職場に行って、上司の皆さんの理解を得て、私、免許取りますからちょっと休ませてくださいとか時間を下さいとか、そういうことはなかなかできないのですね。
 そういったものを何とか解決する方法がないものかどうかということでいろいろ相談されておりまして、その際、路上教習を十八歳にならなくとも何らかの形でできるような方法というものが十分な経験を積ませるために必要なのではないかというような感じもしますし、さらに、先ほど言ったような事情によりまして、急いでやみくもに免許を取りたいということで、自動車教習所もそういった方へ変な配慮をして、十分に経験を積まないままに免許を与えてしまうというようなこともあるのではないかということで、路上教習を受けるそういった方々への法整備が必要なのではないかなというふうに私は感じておるのですが、この件についてどうでしょうか。

○属政府参考人 ただいま御指摘のありましたような要望があるということは、私ども、十分承知しております。しかし、一方で、普通仮免許の取得年齢を引き下げるということにつきましては、やはり交通事故や非行の問題もありますし、生活指導、教育上の問題、そういった観点からかなりの方が反対しておられるという現状にもあるわけでありまして、この問題については、現段階で直ちに引き下げに踏み切ることは困難であろうというふうに考えておりますが、そういった要望があることについては十分承知しております。

○今田分科員 今ほど言われたように、反面、安全面からいいますれば問題があるということも私も十分わかるのです。そういった意味からして、法整備はなかなか大変なんですけれども、ただ、一般的に、そういう方が新社会人になって職場に行ったときに、交通安全にかかわる問題ですので、そういう免許を取る青年あるいはそういった方々に対して職場で十分な配慮が必要なんだろうというふうに思いますので、そういった観点からもいろいろ研究していただきたい、このように思います。
 次に、教習所の公共性と過当競争の問題であります。
 今、少子高齢化が進んでおりますので、当然、運転免許を取る方が非常に少なくなってきております。したがって、教習所も大変な状況に今なっているわけでありますが、それと相まって、過剰宣伝、過剰サービスあるいは教習料金のダンピングというものの様相が高まってきております。
 そういったことで、本当に適正な教習を維持向上できるのかということが心配されるわけでありまして、当然、そうなりますと、経営が非常に苦しくなっておりますので、経営環境、教習所の指導者の労働条件あるいは安全衛生問題等々が、非常に水準が下がってきているのではないかというふうに思われるわけであります。
 さらには、教習所の指導員が、責任がないというのはちょっと変ですが、アルバイト的な気持ちで指導員をやっているというふうにもお聞きしておるわけでありまして、果たしてこれでいいのかなというふうに思います。
 むしろ、そういったことじゃなくて、交通安全に、社会的な問題ですから、そういった方々の身分をきちっと確立した上で自信を持って指導することが必要なのではないかというふうに思いますし、運転免許の検定の方なんかは一時的にみなし公務員とされているわけでありますので、そういったことを考えれば、こういったことが今後どんどん進んでいくとすれば社会的な問題になるというふうに私なりに思っているのですが、このことについてどうでしょうか。

○属政府参考人 自動車教習所が行うサービスの提供あるいは料金の設定等の経営自体につきましては、これは基本的には教習所の自由な競争に任せるべきものでありまして、公安委員会がいろいろと指導を行う立場にはないというふうに思います。
 しかしながら、経営上の問題があって、その結果として適正な教習水準が確保できない、そういったような事態が生じた場合には、公安委員会として厳正に指導を行う必要があると考えております。
 また、教習指導員等の雇用形態につきましては、これも原則として労使間で解決すべきものと考えておりますけれども、御指摘のように、いわゆるアルバイトの指導員がそういったことの指導員として活動することについては、これは、自動車教習所の持つ公共的性格、職員の管理掌握等の問題もあり、好ましいものではないので、教習等に従事させることのないように指導しております。
 なお、臨時的な指導員について、どうしても夏休み等の繁忙期における教習生の利便を向上させるという観点から、教習指導員資格者証の交付を受けている、そういう十分に能力を持っているという人であること、また、本業の傍ら教習に従事するものではない、繁忙期に継続して教習に従事するといったような者に対しては、厳格な要件のもとに認めております。
 今後とも、自動車教習所において教習が適切に行われ、自動車教習所業が健全に発展していくように指導を行っていきたいと思います。

○今田分科員 時間がないのですが、あと二点、続けてお聞きしたいのです。
 今ほどの問題とあわせまして、一人の指導員が一日十一時間、十二時間連続して指導している場面があるらしいのですね。果たしてそれで充実した教習ができるのかという問題が今いろいろ言われておるわけでありまして、そういった意味で、交通安全にかかわる問題ですので、何らかの対策が必要なのではないか。そういったことがあるのだということで、後ほど御意見をお伺いしたいのです。
 もう一点、これは全く違う話ですけれども、高速道路での二輪車の二人乗りという問題が今いろいろ言われております。
 これは非常に危険だということで今まで禁じられておったのですが、私から言わせれば、むしろ一般の道路より高速道路の方が安全だというふうな感じもします。そろそろ二輪車の二人乗りも解除していいのではないかという意見があるわけでありますけれども、このこともあわせてお答えいただければありがたいと思います。

○属政府参考人 教習指導員の勤務時間あるいは福利厚生の問題につきましては、原則として労使間で話し合って解決すべき問題だろうというふうに思いますけれども、恒常的な長時間労働によって教習水準が低下する、あるいは検定中に事故が生じる、そういったようなことはあってはならないというふうに認識しております。
 今後とも、各都道府県警察を通じて、適正な教習水準を確保するという観点から必要と認められる場合には、きちんと指導助言を行うように指導していきたいと思います。
 それから、高速道路における自動二輪車の二人乗りの問題でございますけれども、御指摘のように、高速道路における自動二輪車の二人乗りの禁止を見直すべきじゃないか、そういった意見がいろいろ出されているところでございます。
 しかし、一方で、平成十一年に総理府が実施した世論調査においては、回答者の八二・三%が、高速道路での二人乗りを「引き続き禁止すべきである」と回答しておりまして、国民の間に、高速道路での二人乗りが安全ではないといった認識はまだまだあるように思われます。
 警察庁としては、これらの状況を踏まえまして、平成十四年三月に閣議決定されました規制改革推進三カ年計画の中で、高速自動車国道等における自動二輪車の二人乗りを認めることの可否について調査検討して、十五年度の可能な限り早期に最終結論を得るというふうにされております。そのため、現在、調査検討を進めておりまして、その結果を踏まえ、国民の意見を幅広く聞いた上で、適切な結論を得たいというふうに考えております。

○今田分科員 どうもありがとうございました。
 終わります。

○持永主査 これにて今田保典君の質疑は終了いたしました。
 次に、上田勇君。

○上田(勇)分科員 公明党の上田勇でございます。
 きょうは、谷垣国家公安委員長初め警察庁の皆さんに、何点かにわたりまして質問をさせていただきますが、どうぞよろしくお願いをいたします。
 まず初めに、最近、いつも地元の有権者の皆さんたちといろいろとお話をすると、必ずと言っていいほど出てくる話が、最近はすごく犯罪がふえた、とても不安だ、心配だということが出てまいります。確かに、いろいろ聞くと、本当に身近なところで空き巣だとかひったくりの事件が発生しているわけでありますし、統計を見てみても、やはり平成八年ごろから非常に刑法犯の発生件数が急増していて、一般刑法犯で見ても、この十年で五割増しになっているというようなのが出てまいります。
 日本は世界で最も安全な国だというのが、私も大変誇りにしている一つでありますけれども、今もまさに世界で一番安全な国であるということには変わりがないんだというふうに思いますけれども、そうした安全神話にもどうも少し陰りが見えているのかなというようなことがすごく心配されます。
 そこで、初めに大臣に、最近のそうした犯罪の増加傾向、また、治安の状況についての御認識、御見解を伺いたいというふうに思います。

○谷垣国務大臣 委員から治安の御質問がありまして、思い返しますと、委員が法務総括政務次官をされていたころ、少年犯罪がやはり多くなってきたというので、議員立法でございましたけれども、少年法の改正、あの答弁席に一緒に座らせていただいて、やったことを思い出したりしております。
 少年犯罪だけにとどまらず、犯罪は非常にふえておりまして、昨年も刑法犯の認知件数が二百八十五万四千件と、戦後最多の記録を更新しております。大体、昭和期には百四十万件プラスマイナス二十万件というようなことでずっと来ましたので、今、昭和期の二倍の犯罪があるということになるわけですね。
 それから、その中身も、重要犯罪が大変ふえてきている。それから、家の中に入ってくるとかオフィスの中に入ってくる侵入窃盗とか侵入強盗、これがやはり、家に帰れば安心だという気持ちをなくす、体感治安を非常に悪くしている原因だろうと思いますが、こういうのもふえている。それから、特に不法滞在外国人による集団犯罪というようなものもふえてきているわけですね。
 ですから、世界一安全な国日本とかつて言われたのが、今、いわば瀬戸際のところに来ている。まだ世界に比べれば安全なところがあるわけですけれども、そういうところに来ているんだろうと私も思っております。
 それから、それを受けて、平成十四年に財団法人社会安全研究財団が犯罪に対する不安感に関する世論調査というのをやっているのですが、その中で、自分が犯罪被害に遭いそうな不安を感じるという方の割合が四一・四%。平成九年にやりましたときは二六・八%でしたから、不安感を持っている方が大きくふえているということであろうと思います。
 そういう中で、世界一安全な国日本というのをもう一回しっかりしたものにするために、警察ももちろん頑張らなければいけないと思いますが、いろいろな関係官庁や国民の皆さんにもやはり問題意識を持っていただいて、世界一安全な国日本というものにもう一回きちっとつくり上げなければいけない、こう思っております。

○上田(勇)分科員 ありがとうございます。
 今、大臣から力強い御決意をいただいたところでありまして、我々はずっと、安全というのは余りありがたく感じなかったのが、最近はまさに、犯罪が本当に身近なところで起きているということで不安を覚えているわけでありまして、ぜひともまた、大臣の指導のもとで全力を挙げていただければというふうに思うわけでございます。
 それに関連して、もう一つ気がかりなのが、先日発表されたところで、検挙率もことし著しく低下をしているということでございます。統計を見てみますと、一般刑法犯の検挙率というのは、昭和六十年代の前半までは大体六割から七割というのが続いていたのですけれども、その後ずっと低下傾向が続きまして、平成十三年度には二割を切ったというふうにありました。
 やはり、犯罪が起きてもそれが捕まらない、犯罪を犯した人がずっとそのまま、自分の身近なところにいるかもしれないという不安感は非常に大きいわけであります。まさに日本の警察というのは、これもまた世界で一番優秀、有能と言われていたのですけれども、こういうようなデータが出てきますと、そのことも若干不安に覚えるわけでございます。
 そこで、では、何でこういうふうに検挙率が低下してきたのか。そうした原因はどういうところにあるとお考えなのか。また、信頼を回復していくために、検挙率を向上させていくためにはどういうような対策が必要なのか。御見解を伺いたいと思います。

○栗本政府参考人 警察といたしましては、限られた体制の中で、これまでも検挙率向上のために精いっぱい努力いたしているところでありますが、残念ながら、先生ただいま御指摘のとおり、刑法犯検挙率の低下傾向が続いているところでございます。昨年は、一昨年と比べまして若干はふえましたが、なお、二〇・八%と大変低い状況にございます。
 これらの要因につきましては、いろいろとありますが、特にその一つといたしましては、窃盗犯を中心といたしまして犯罪が非常に急激に増加しておりまして、この犯罪の増加に検挙がふえていかない。昨年も、一昨年比で検挙件数もふえております。しかしながら、その犯罪の発生に検挙が追いついていけないということが一つあります。
 それから、二つ目といたしまして、いろいろな新たに発生いたしました犯罪の増加に伴いまして、当然、現場におきましては、それぞれの犯罪現場へ臨場するとか、また、被害者からの事情聴取を行うとか、そのような犯罪発生時の対応に追われる。したがいまして、検挙いたしました被疑者の十分な取り調べ時間を確保して、いわゆる余罪の解明が大変厳しくなっているということも一つにございます。
 それからまた、先ほど大臣からもお話がございましたが、いわゆる来日外国人犯罪というものも非常に増加をいたしておりまして、この種の事件の処理には、いろいろ言葉の壁などもございまして、大変困難な捜査を余儀なくされる、こういう問題がございます。こういうことなどが挙げられるかと見ております。
 このようなものを踏まえまして、現在、警察といたしましては、街頭犯罪対策や来日外国人組織犯罪対策に必要な要員を含めまして、平成十四年度から計画的に増員を図ることによりまして、第一線の捜査力の向上にも努めているところであります。
 また、検挙実績向上のための具体的な方策といたしましては、例えば、警察官の配置等を常に見直しをいたしまして、犯罪の発生実態に即した態勢をとるとともに、犯罪発生に応じたパトカー勤務員や刑事警察官の勤務体制を弾力化するなど、組織とか人員の効率的な運用に努めているところであります。
 また、街頭におきます警察活動の強化や、犯罪発生時の迅速的確な初動捜査の実施、さらには入国管理局とか税関とかこういうような国内関係機関や外国の捜査機関との情報交換、連携の強化、さらには、現在導入いたしておりますDNA鑑定など、最先端の鑑定技術の導入などによりますいわゆる科学捜査力の強化、こういうようなものに努めまして、今後とも、検挙実績の向上に引き続き努めてまいりたいと考えております。

○上田(勇)分科員 最近、いろいろ地元で聞くと、マンションとかで、かぎがこじあけられて侵入された、本当にすぐ身近なところでそういうような事件の話をよく聞きます。いわゆるピッキングというものなんですが、特殊な工具を使って侵入をして、結構簡単にあいてしまうみたいですね。そういった被害を私も非常によく伺うんですけれども、聞くところによると、全国では年間二万件くらい発生をしていて、これもさっきの犯罪動向と同じように、平成八年ごろから非常に増加しているというようなことも伺っております。それで、ピッキング犯罪の現状をどういうふうに考えているのか、また、対策についてお伺いします。
 また、今度の国会でピッキング対策の新しい法案が提出予定でございますけれども、これは、そうした特殊な工具、およそ、そうしたかぎをこじあけることにしか用いないようなものを所持しているということで検挙できるという法律でありますので、これ自体、本当に必要なものだと思います。ただ、どうも犯罪の傾向とか見ていると、本当にそういう法律ができてどれだけの効果が上がるのかなと少し疑問に思う点もあるんですが、この新しい法案によってどの程度の効果を期待されているのか、御見解を伺いたいというふうに思います。

○瀬川政府参考人 お答えをいたします。
 先ほど来の御議論にございますように、犯罪が大変増加をし、中でも、建物に侵入して行われる犯罪が急増しているわけでございます。
 そしてまた、マンション等に対しましては、御質問にありましたピッキング用具、これはいわば開錠専用工具とでも申しましょうか、そういったものを使用したものが非常に多発しております。御質問にありましたとおり、昨年は約二万件ということで、一昨年よりも約四百五十件ほど、若干の減少はしておりますけれども、まだまだ非常に多い数字でございまして、こういった犯罪は大変厳しい情勢にあるものというふうに認識をしておるところでございます。
 こうした急増する犯罪に対処するためには、先ほど来御議論がございましたように、検挙活動を進めていくということはもちろんでございますけれども、一方で、こういった犯罪をできるだけ抑止していくということが非常に重要だろうと思います。
 御質問にありました今国会への提出を検討しております特殊開錠用具の所持等の禁止に関する法律案、現在検討しているところでございますが、これにつきましては、一つは、建物側の堅牢性といいますか、これを進める必要があるだろうということで、今回、建物側の対策として、一定の建物錠につきましては防犯性能について表示をするという制度を新設し、それによりまして防犯性能の高い建物錠の開発普及を促進するということがございます。
 それからもう一つは、まさに御指摘いただきました、ピッキング用具等の侵入犯罪に用いられる器具についての、業務その他正当な理由による場合を除き、その所持を禁止するというものでございます。
 その効果ということでございますが、実は、このピッキング用具等の器具につきましては、現在は軽犯罪法におきまして、業務その他正当な理由がなく隠して携帯をするということが禁止されております。しかし、軽犯罪法におきます罰則は、拘留、科料という非常に軽いものでございまして、刑事訴訟法上も、逮捕等の要件について大変厳しく定められているところでございます。
 したがいまして、例えば、深夜、住宅街を徘回している者がこういったピッキング用具等を隠して携帯している、かぎ屋さんでも何でもないということで、そういうものを持っている理由もない、どう見ても泥棒ではないかという疑いが非常に強いようなものについて、これを事前の段階でしっかり検挙することによって、その後に行われる侵入犯罪を防止できるようにしようということでございまして、この法律により罰則を強化してまいりたいと考えているところでございます。
 先ほど申し上げました、防犯性能の高い錠の開発普及が促進されるということなどと相まちまして、建物に侵入して行われる犯罪の防止に資する効果があるものというふうに考えているところでございます。

○上田(勇)分科員 今の御答弁で、ちょっと確認のために聞かせていただきます。
 今、夜間徘回をしている人とかでそういう用具を持っている、今軽犯罪法なんで、見とがめてもその場で何もすることができないということだったんですが、これは、法律が変われば、そこである程度拘留をすることができるということなんでしょうけれども、現実にそういうような、例えば、夜間パトロール中に不審者を見て、実際にそういうピッキング用具を持っているんだけれども、今の法律が不備というか不足で見逃してしまっている、その後、それはどういうふうに犯罪につながっているのかどうかわかりませんけれども、そういうような事例がたくさんあるので、ここを直せば随分その辺が防止できるというような効果、そういうふうなお考え、実証があるんでしょうか。

○瀬川政府参考人 御質問にありますようなものについては、正確な統計等は持ち合わせておりませんけれども、一線の警察官からいろいろ話を聞きますと、そういう事例が確かに幾つもございます。
 そういうことで、そういうものを見つけたんですけれども何らの措置もとれなかったということで、釈放したといいますか、取り締まれなかった者が、後日、侵入犯罪を犯して検挙された、捕まったというような事例も現実に発生しているところでございまして、一線からは、こういった規定といいますか、そういうものの要望が非常に強いものがあるというものでございます。

○上田(勇)分科員 ありがとうございました。ぜひ、法案を早く成立させていただいて、安全の向上に努力していただきたいと思います。
 次に、暴走族の問題についてお伺いをいたします。
 暴走族の構成員とかいわゆる走行回数というのは近年減少傾向にあるというのは、先日伺ったところなんですけれども、これは、ある意味では、取り締まりの強化の成果が上がっているということなのかもしれませんが、ただ、実感するところで、やはり夏になると、本当に毎週のように暴走族が走行いたしております。本当に沿道の住民は大変な被害を受けているわけでありまして、深夜あるいは早朝まで走っているというようなことで、安穏な生活が大変脅かされていて、すごく重大な、深刻な事態になっているわけでございます。
 その上で、いろいろと聞くところによりますと、こうした暴走族の構成員のメンバーの人たちが、その後暴力団の構成員になっていく傾向が非常に強いということも聞いております。
 暴走族のメンバーというのは、少年、若い人が多いわけでありますけれども、それがやがて暴力団の構成員になって、まさに犯罪をどんどん拡大してしまう。なるべく早いうちに手を打つということが重要なのではないかと思うわけでありますけれども、そういう意味で、暴走族に対する取り締まりの一層の強化に努めていただきたいというふうに思いますけれども、現状と方針についてお考えを伺いたいと思います。

○属政府参考人 お答えいたします。
 暴走族の現状でありますけれども、平成十四年末現在の構成員数は約二万五千人でありまして、数的には年々減少傾向にありますけれども、一方で、グループがだんだん小規模化しておりまして、グループの数はむしろ増加傾向にあるという状況でございます。また、御指摘のように、深夜の爆音暴走等を繰り返して大変迷惑をかけている、そしてまたひったくり等の犯罪を敢行するなど、非常に悪質な集団でございます。そういったことから、国民生活の平穏と交通秩序を著しく害しているという状況から、警察に対して取り締まり要望も大変強いものがございます。
 それで、一昨年、道交法を改正いたしまして、その中で共同危険行為等の悪質、危険な行為に対する罰則強化を図っております。そういう法令を活用しながら、現在、交通部門を初め、少年、地域等各部門が一体となって総合的な対策を講じているところでございます。平成十年中は約八万六千人を検挙しております。そのうち、約八千人を逮捕しているということで、相当の取り締まりはやっている現状でございます。
 また、暴走族の根絶を図るには、暴走族への加入防止あるいは離脱促進、さらには不正改造車両対策等、総合的な施策が必要でございます。そのため、今後とも、関係機関・団体、家庭、学校、地域、そういったものと緊密な連携を図りながら、徹底して取り組んでまいりたいというふうに思います。

○上田(勇)分科員 最近、暴走族に対して、警察が取り締まりについて非常に努力をしていただいているということは、わかりやすいんですけれども、今お話もあったように、大変多くのメンバーを検挙しているということでございますが、ただ、メンバーを検挙しても、よほど犯罪性の強いものでない限り、なかなか、拘束をしておくというわけにもいかないのが現状であるというふうに思います。
 そうすると、やはり改造している車とか、そういったものを結局そのまま乗って帰ってしまったら、また二、三日すると同じような走行をすることが繰り返されているのではないかという気がいたします。やはりこれは、車を使えないようにする、また取り上げてしまうというふうなことを一つ考えていかなければいけないことなんだろうと思います。そういうふうにしないと、結局、なかなか暴走族の走行回数が減っていくというようなことにはならないのではないかと思います。
 これは警察庁、あるいは国土交通省の所管の部分もあるのかと思いますけれども、それぞれ、どういうような対応をされているのか、お伺いしたいと思います。

○属政府参考人 御指摘のとおり、暴走族等による不正改造車両の運転は、騒音により周囲に多大な迷惑を及ぼすだけでなく、一般交通にも非常に大きな悪影響を及ぼしております。そのため、暴走族の構成員を取り締まるのは当然でございますけれども、暴走行為に使用される不正改造車両に着眼した車両の取り締まり、これらも大変重要であるというふうに認識をしております。
 このため、警察といたしましては、国土交通省等の関係機関と十分連携をしながら、不正改造車両の合同取り締まりを繰り返し行っております。そしてまた、暴走行為の再発防止の観点から、できるだけそういった暴走行為に使用された車両は押収する、そしてまた、押収した車両は没収あるいは没取をする、そういったことを徹底するようにということで、現在、各県警を指導しておりますけれども、今後さらに強く指導してまいりたいというふうに思います。

○中山政府参考人 お答えいたします。
 国土交通省といたしましては、道路交通の安全確保及び環境保全を図るために、警察庁と連携いたしまして、街頭検査を実施し、不正改造車の撲滅に現在努めております。街頭検査におきましては、不正改造車を発見した場合には、保安基準に適合させるために必要な整備を行うべきことを命ずる整備命令を発令しております。
 さらに、昨年七月でございますが、道路運送車両法を改正いたしまして、本年四月一日から不正改造行為そのものを禁止する規定を新設しております。また、整備命令に基づきます整備命令標章を貼付することや、整備後の現車提示を求めるということをしております。また、これらの整備命令に従わないなど悪質な場合には、ナンバープレートの領置と車検証の返納を求めまして、車両の使用停止を行うということにしております。
 なお、自動車の使用停止の期間が満了しても、依然として保安基準に適合する状態に至らない場合には、保安基準に適合するまでの間はナンバープレートを領置いたしまして、車検証を返付せず、当該車両を運行の用に供してはならないというふうにしております。
 以上でございます。

○上田(勇)分科員 こうしたさまざまな対策を総合的に、また強力に推進していただいて、暴走族は、本当に社会に対して大変な迷惑を及ぼしておるわけでありますし、平穏な市民生活が大変脅かされているということでございますので、ぜひ、さらに一層の力を入れていただきたいというふうにお願い申し上げます。
 もう一つ、やはり安全に対して非常に市民が不安を覚えるというのが、警察官が足りないなというのを実感いたします。交番にいない、一一〇番通報しても、人のやりくりがつかなくて、なかなか対応がおくれてしまうというような声をよく伺います。平成十四年からは、三カ年計画で地方警察官を一万人増員しようという計画で、今それが進んでいるわけでございまして、平成十五年度の予算にも四千人増員予定ということでございますので、これは大変いいことだというふうに思っております。
 ただ、依然として、それでもやはり足りないんじゃないかなというのが私の実感でありまして、何か、統計を見てみましても、警察官一人当たりの人口というのを国際的に比較してみると、日本では、この一万人計画が達成されても、警察官一人当たり人口が五百人ぐらいいる。これは、欧米先進国では大体三百から四百ぐらいだということを考えると、やはりまだ足りないなという感じがいたします。
 もちろんこれは、犯罪の発生動向だとか警察官の定義も何か違うというようなことも伺いましたので、単純に比較することがいいかどうかは別にいたしまして、この一万人計画ということになると、十六年度になると残りが千五百の増員ということなので、これで終わってしまうとやはり足りないな、不安だなという感じがいたします。
 我々としても、ぜひそうした増員の計画をさらに拡大、延長してもらって、もっと市民の安心できるような警察体制の整備に努めていっていただきたいと思いますので、ぜひ十六年度以降も、やはり計画的な定員の増員に努めていっていただきたいというふうに思いますけれども、お考えを伺いたいと思います。

○谷垣国務大臣 冒頭、委員と今の治安情勢について議論をさせていただいて、要するに、水と安全はただだというかつての神話は完全に過去のものになったということだろうと思うんですね。
 新聞を読んでいましたら、今の治安情勢に触れまして、これだけ犯罪がふえているのに検挙数は頭打ちじゃないか、ということは、もう警察力が筒いっぱいのところに来ているんだ、こういう御議論があって、そうだとすれば、警察力を充実強化しなきゃいけないわけですが、これは総合的なものですから、いろいろな多面的な問題ですけれども、やはりその中心に人の問題があることは、私は間違いないだろうと思います。
 それで、今お触れいただいた三年間の一万人の増員計画、これは前から言いますと、十三年度に二千五百八十人、それから十四年度に四千五百人やって、ことし四千人の増員をお願いしているわけです。これだけ行革なんかの厳しい折に、三年間で一万人を認めようというのは、私は、これはもう大変なことですから、認めていただいたら、その人材は、有効なところに有効に配置して、有効に使っていって、やはり成果を上げなきゃいかぬ、それが我々の責務だろうと思います。
 他方、しかし、今おっしゃったように、じゃ、これで十分なのかというと、それは、その時々の犯罪情勢に合わせて、その都度判断していかなければいけないものだろうと思いますが、そのあたりも含めてしっかり我々は検討して、この治安情勢をもう一回きちっとしていくために何をしたらいいかと真剣に検討していきたいと思っております。

○上田(勇)分科員 もう時間なので終わりますが、ぜひ、この警察官の増員については、我々としても協力させていただきたいというふうに思っておりますし、引き続き計画的な増員に努力をしていただきたいということを要望いたしまして、終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

○持永主査 これにて上田勇君の質疑は終了いたしました。
 次に、藤木洋子さん。

○藤木分科員 日本共産党の藤木洋子でございます。よろしくお願いいたします。
 多重債務者らに違法な超高金利で融資をするやみ金融業者による暴力的取り立てなど、被害が激増しておりまして、社会問題化していることを放置することはできないというふうに思います。
 バブル崩壊以来の長期不況下で、リストラ、倒産、転廃業など雇用失業情勢も、戦後かつて経験したことのない事態になっております。家計費の不足を補うためや、商売、事業の失敗などが原因で、サラ金、クレジットの多重債務者となるケースが増大しております。
 銀行の貸し渋り、貸しはがしに苦しめられている人たちが、安易に金を貸すサラ金を頼りにしたからといって責めることはできないだろうというふうに思うわけですね。しかし、利息制限法で規定されている一五%から二〇%、この金利でも、一般消費者の生活水準で、家計の足しにしたいと思ってお金を借りる人には、返しがたいといいますか、返済が困難になる実態というのは間々あることでございます。まして、二九・二%という出資法による利息の上限などは、とても及びのつかない金利でございますけれども、しかし、現在では、大手サラ金業者でも年二五%から二九・二%といういわゆるグレーゾーン、こういう金利で貸し出しをしているわけです。
 ですから、利息制限法を知らない多くの利用者の皆さんたちは、結局返すことができなくて、次のサラ金に手を出す、こうして多重債務者になっていくという実態があるわけですね。そのブラックリストに載りますと、もうサラ金業界からも金が借りられないということになるわけです。
 出資法の上限金利を利息制限法の制限金利まで引き下げるということであるとか、利息制限法に罰則を設けるということであるとか、そういうやみ金融などの規制法などという法の整備は必要だと私も思っております。しかし、そのような法整備が行われるまでにも、現在の被害を最小限に減らすためにあらゆる努力がなされているのか、きょうは、この点から御質問をしたいと思っております。
 そこで、利用者の支払い能力を無視した高金利の金が安易に借りられる状況の一つに、消費者金融のコマーシャルの問題があるという問題です。
 特にテレビ、終日大量に流されている消費者金融のCMに絞って指摘したいと思うわけですが、放送と青少年に関する委員会というのがNHKと民放連によって二〇〇〇年四月一日に設置されておりますが、この委員会に寄せられた視聴者のサラ金CMについての意見がございます。
 一つには、若者に借金することへの抵抗感を麻痺させてしまいかねない、まるで自分の口座から現金を引き出すような感覚を持たせてしまう。また、小学二年生の子供がサラ金のCMソングを口ずさんでいるのを聞くたびに妙な気分になる、放送時間帯、回数など制限できないのかといったものから、まるでデートや洋服代のために借金することを奨励しているようだ。また、サラ金のCMが多過ぎる、たばこのCMのように制約があってもよいのでは、等々がございます。
 そこで、電波を所管している地上放送課としては、こうした意見等を踏まえて、当委員会が二〇〇二年十二月二十日、「消費者金融CMに関する見解」をまとめて公表しているのは御承知だと思うわけですけれども、その見解で、「消費者金融CMの現状は、放送基準に抵触するおそれがあると判断する。」として、三点にわたって民放各社に要望しておりますけれども、その三点の中身はどのようなものでございますか。

○高原政府参考人 今お尋ねの、放送と青少年に関する委員会が昨年十二月に公表いたしました消費者金融CMに対する見解でございます。
 一点目は、民放連が定めている児童及び青少年の視聴に十分配慮する時間帯である十七時から二十一時までの時間帯は、消費者金融CMの放送を自粛する。それから二点目でございますが、金利及び遅延損害金などについて、もっとわかりやすい表現を用いて明示するなど、借金をすることに伴う責任とリスクについても触れる。三点目でございますが、昨今の自己破産及び多重債務者の増加を踏まえ、安易な借り入れを助長するような内容ではなく、社会的責任を自覚したCMを放送する。
 この三点と承知をいたしております。

○藤木分科員 ですから、見解でもそのようになっているわけですけれども、じゃ、この見解が発表されてからどのような変化を来しているかは御存じでしょうか。いかがですか。

○高原政府参考人 今申し上げました放送と青少年に関する委員会の見解に対しまして、民間放送事業者の業界団体でございます社団法人民間放送連盟が、委員会が見解を取りまとめた意味を重く受けとめ、可能な限りその趣旨を踏まえて対応策を検討したいというコメントを出しております。業界としても、対応が検討されているものと承知いたしております。
 具体的には、この民放連の中で放送基準を検討するセクションがございまして、放送基準審議会というのがございますが、そこで、消費者金融CMに関するガイドラインの策定などを検討中であるというふうに承知をいたしております。

○藤木分科員 青少年への影響はかなり深刻でございまして、一部上場の武富士というのがございますけれども、これの尼崎支店では、二〇〇二年の一月二十日に、十八歳の少年に、親権者の同意なしで、店頭での対面で契約を交わして貸し付けたという事犯がございます。
 ですから、電波を所管する役所としては、電波を通して青少年に与える影響の大きさを自覚して、放送界がみずから定めた基準を踏み外すことがないように、適正に放送業務が行われているのかどうかということに最大の関心を払って見守り、実態を把握していただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 今申しましたように、返済のために次々借金をして、結局ブラックリストに載るわけですけれども、このブラックリストがまた売買をされておりまして、この情報を手に入れたやみ金が、「ブラックOK」「あなたのサイフ癒します」「困った方に助け船」などとダイレクトメールで働きかけてくるわけです。中には、生活改善支援センターなどを名乗って、「クレジットやサラ金の返済でお悩みの方。あなたに応じた合法的手続により、債務の問題を解決します」といったものから、NPO法人、全国人権擁護協会「わかばの会」など、債務の整理を装った新手のやみ金もあらわれております。
 そもそも、やみ金そのものが、登録業者であろうとなかろうと、出資法違反の超高金利を貸し付けているわけですから、その行為そのものがやってはならないことです。そこで、徹底した取り締まりで違法な悪徳業者を締め出すことが必要だと考えております。
 そこで、警察庁は、生活安全局生活環境課が経済対策室長名で、平成十三年、二〇〇一年の七月六日に、各都道府県警にあてまして、「金融事犯に対する取締りの推進について」という事務連絡を行っているわけです。
 そこで、大臣に伺いたいわけですけれども、そこには、第一に、積極的な取り締まりを指示しておりますね。それを踏まえた上で、次に、相談等への適切な対応ということを求めていらっしゃるわけです。ですから、この事務連絡が発行されてから警察の対応が現場で変化をしたのかどうかということが気になるところです。
 そこで、大臣は、事務連絡は現場まで徹底していて機能しているのかどうか、その御認識を伺いたいと思いますが、いかがですか。

○谷垣国務大臣 今、藤木委員の御質問を聞きながら、私、弁護士を始めた最初の仕事が、当時はサラ金と言っておりましたけれども、サラ金に内容証明郵便を送って、このような取り立てをしたときは断固たる決意で臨むという内容証明を書いたのが私の最初の仕事だったなと思い出していたわけであります。
 今御指摘の事務連絡は、やみ金融に対する積極的な取り締まりや相談への適切な対応等を全国警察に指示したもの、委員のおっしゃるとおりなんです。それで、その後も、警察庁から全国警察に対してこの趣旨の徹底を図っておりまして、去年一年間のやみ金融事犯の検挙事件数は、統計を開始した平成二年以降一番多い数になりまして、二百三十八件でございます。これはやはり、この事務連絡を受けた都道府県警察の姿勢の一端を裏づけるものと思っております。
 しかし、やみ金融をめぐる情勢は、依然として楽観を許さないものがありますし、手法もまたいろいろ新しくなってくる、こういうことでございますから、さらに強力な取り組みを継続するように警察当局を督励してまいりたいと思っております。

○藤木分科員 そこで、今検挙数をおっしゃいましたけれども、それを上回る事件数が発生しているわけですね。
 そこで、私は、幾つかの現場の対応がどうなっているかという事例でお話をしていきたいと思うのです。
 近畿圏のある地方の事例なんですが、一般市民からの相談、苦情への警察の対応と、公共機関、行政からの告発に対する対応に差があるという問題を私は伺ったのです。
 これはごく最近の事例なんですが、やみ金被害者の当事者やその近所の人たちが、取り立てで嫌がらせが相次いでいて困ると何度も苦情を持ち込んだのですが、そこの警察署は対応してくれなかったそうです。ところが、二月十九日、東京の業者から小学校に電話があり、これは全然別件ですよ、子供を誘拐するとおどしたために、校長は教育委員会に連絡をして、教育委員会から警察に通報したら、即座に対応したという事例がございます。
 そこで、市民の間では、一般市民からの相談は軽視されているんじゃないかと、警察署の対応に信頼を失うというような事態が起こっております。このようなことはやってはならないことではないかと思うのですが、いかがですか。

○瀬川政府参考人 今の御質問にありましたような事案につきまして、私ども、具体的な事案として承知しているわけではございませんので、その事案がどうであったかというようなことについては、ちょっと具体的に御答弁申し上げるわけにはまいらないことを御理解いただきたいと思います。
 ただ、一般的に申し上げますと、いろいろな事案がございますが、それへの対応といいますのは、やはり事実関係がどうであるのかというようなこと、現場の状況なり緊急性なりがどうなのか、あるいはどういうような結果を招くおそれがあるのかという、いろいろな事案に応じた状況を勘案した上で、対応の仕方、あるいは警察が対応すべき事案なのかどうなのか、事件となるのかならないのか、そういったことが判断されるべきであろうというふうに思います。
 相談に来られた方が一般市民であるとか公共機関であるとか、その一事をもって対応の差が生じるというようなことは適切な対応ではないということは言えるだろうと思います。

○藤木分科員 そのとおりだと思います。相談の中身や緊迫性、緊急性、これが一様でないということは私も当然わかっております。少なくとも、私が思っておりますのは、課長通達も出ているわけですよね。この課長通達では、相談者の心情に配意しつつ詳細に事情聴取するということを求めているわけですから、これがなされてこなかった事実を改めるべきではないかということを申し上げているわけです。
 それから、都市部の警察署のケースですけれども、今月、やみ金業者の取り立てに身の危険を感じた相談者が生活安全課に申し立てを行った事例がございます。
 これは、「いちょうの会」というところで相談を行って、警察は必ず相談に乗ってくれるというふうに説得されているわけですね。平成十三年の七月六日には事務連絡も出ているから、もし聞いてくれなかったらこれを見せて頼むとよいといって、事務連絡のコピーを持って相談に行くように言われました。ところが、借りたものは返すのが当然、返してから来なさいと相手にもされず、あろうことか、殴られてけがをしたら来なさいと言って、事務連絡のコピーを渡してお願いしたのに、目も通さず門前払いをされています。
 この場合、私は、相談者に落ち度はないと思うのですけれども、事務連絡は徹底していないのではありませんか、いかがですか。

○瀬川政府参考人 ただいまの御指摘の事例につきましても、私どもとして具体的に承知をしておりませんので、その場合はどうであったかということを申し上げることはできません。
 しかし、いろいろな相談に対して、お話にありましたように、誠実にお話を伺って対応の要否を決定するというのは、別にやみ金の問題だけではなくて、警察に来るいろいろな相談があるわけでございますが、すべてについて言えることだろうと思います。
 そういった警察に持ち込まれた相談に対しましては、犯罪の成否あるいは犯罪の発生のおそれの有無というようなことを十分検討いたしまして、捜査あるいは警告等の措置をとるべきである。あるいは、警察で対応できないような問題につきましては、それぞれの関係機関や団体等に引き継ぐというような措置もとるということが真摯、誠実な対応ではなかろうかと思います。

○藤木分科員 また、こういう事例もあるわけですが、これは地方都市の署の話なんですが、昨年、夜十一時過ぎにやみ金業者が取り立てにやってきて、身の危険を感じた被害者は、警察へ駆け込みました。そのとき、やみ金業者もついてきて、一緒に警察の中へ入っているんですね。その窓口で、私はやみ金じゃない、建設会社の社員で、会社がこの人に貸した金を取り立てに来ているだけだと主張いたしました。
 その話を聞いて信じたのか、窓口の警官は、訴えに来ていた被害者を逆に説得しているわけですね。やみ金じゃないと言っているじゃないか、借りたものは返すのが当然、その押し問答の繰り返しで、結局、被害者は、別れた元妻を、この人しか身寄りがなかったそうですが、電話でたたき起こして、二万円を持参させました。これは適切な対応とは言えないと思いますね。
 時間の関係もあって、もう一つ一緒に申し上げますけれども、それは地方都市の話ですが、大都市でも同じようなことが起こっております。
 これも、夜十一時半ごろ、やみ金業者二人がやってまいりまして、被害者の自宅に取り立ててわめき立てるので、近所の人も出てきて、困り果てた被害者が一一〇番して警察を呼んだんですね。通報を受けて駆けつけた警察官は三人です。現場に参りましたけれども、警官が来てからも状態は一向に変わらず、ただ見詰めているだけ。たまりかねた父親が、払わなければ事態がおさまらないと考えて、借用した一万五千円と車代一万円をやみ金業者に払いました。警察官は、完済証明の領収書を確認して帰ったということです。
 この二つの場合、どうですか。

○瀬川政府参考人 お尋ねの二件は、いずれも深夜における取り立てというものについての問題だろうと思いますけれども、これもまた一般論で恐縮でございますが、そういった、深夜におけるこういった現場におきまして行われている取り立てといいますか、その行為が、法律に違反しているのかどうか、違法な高金利の貸し付けであるのか、あるいは無登録貸金業といったものなのか、そうであるならば法律に違反するだろうということですが、その認定というのがなかなか現場では難しい、こういう事情があることは御理解いただきたいと思います。
 こういった問題につきましては、やはり両当事者から十分に事情を聞いて、あるいは関係資料等も確認した上でないと正確な判断ができないものであるということを御理解いただきたいと思います。
 ただ、取り立ての現場において、暴行でありますとか恐喝でありますとか、あるいは住居侵入でありますとか、そういった犯罪行為が別途行われているということが認定できるような場合におきましては、これに対しまして、法と証拠に基づいて警察として捜査等を行うということは当然のことでございます。
 いずれにいたしましても、御指摘がございました二つの事例につきまして、具体的な事実関係を承知しておりませんので、それが適当であったかどうだったかということについては、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

○藤木分科員 私はそういうことを申し上げているんじゃなくて、片一方は借りたものは返すのが当然と言ったり、もう一つの方は完済証明を見届けて帰ってしまうということ、そういう行為を警察はやっているわけですけれども、私は、相談者が身の危険を感じたり、近所にまで迷惑をかけている、そういう行為を受けているわけですから、被害者の立場に立って物を聞くということがまず第一にありきだと思うんですよね。逆転するような行為は、どこから見ても擁護できるものではないというふうに思います。
 確かに、夜中の十一時に行ったからといって犯罪に当たるかと言われますけれども、しかし、金融監督庁が出しているガイドラインでは、少なくとも規制しているわけですね。これが、罰則がないとはいっても、規制されている、やってはならないとされている行為をやった方には、そんなことをせずに、みんなが迷惑しているんだから帰りなさいと、たしなめて帰すということをやるのが警察官の役目ではなかろうか、そのように思います。
 ですから、十三年七月六日の事務連絡を発して以降の現場の対応について、幾つかの事例を私申し上げたんですけれども、いずれも、現場の対応は極めて不十分と言わなければなりません。
 この事務連絡の五の項で、市民運動を行う団体等から苦情や要望等がなされた場合、また、県議会等で質問がなされた場合の特異状況については、生活経済対策室に即報することを求めておられますが、警察庁に対してこういった報告が上がっていると思うのですが、その内容の特徴といいますか、お知らせいただきたいと思います。

○瀬川政府参考人 都道府県から警察庁に対する報告に見られる特徴ということでございますけれども、例えば、お話にありました民間団体の動向等につきましては、やみ金業者に対する一斉告発というのが民間の団体によって行われているわけでございます。例えば、昨年の九月二十日に埼玉県ほか十四県警に出された以降、現在まで、二十五都府県警察に対しまして、まさに民間団体等から延べ六千八百業者の告発がなされておりまして、各都道府県警察におきましては、これらの内容を真剣に精査をして、事件になるものにつきましては捜査を行うということで、既に実施をしているところでございます。
 また、そのほか、広告規制といいますか、広告の適正化の要請等もいろいろ地元団体等からもございます。こういったものにつきましては、県庁等の行政当局と一緒になりまして、管内の広告関係団体等に対しまして、貸金業の広告規制の適正化について要請を実施しているというような事例の報告もございます。
 なお、警察庁におきましては、参考でございますが、昨年十月十日に、金融庁とともに、同様の要請を新聞協会等にも実施をしたというところでございます。
 もう一点申し上げますと、やみ金につきまして、いろいろな手口がございます。トイチ金融でございますとかシステム金融でございますとか、その中で、〇九〇金融という、携帯電話を連絡手段として貸し付け、取り立てを行うものがございますけれども、こういった事件検挙が急増しているという状況の報告を受けておりまして、特に西日本にそういった事案が多いという報告も受けているところでございます。

○藤木分科員 確かに、今おっしゃったように、そういう事例の報告件数というのはかなりふえていることは当然だと思うんですね。
 私は、事務連絡をするまでは、事件にはならないからお引き取りくださいという対応をしておられたのが常でございましたけれども、少なくとも事務連絡以降は、事件にはなりませんけれども聞きましょうという対応に変わったところがあらわれてきているという報告は受けているんですよ。それは確かに一歩前進なんですね。
 それで、ある県警管轄内の二つの署の対応が違うんですね。一つの署は、被害者の身を置いているところの管轄の署です。そこにやみ金業者から大変な暴力的な取り立てが行われて、夫の会社にまで、それはタクシー会社なんですが、そこにも、タクシーに爆弾を仕掛けてやるとか会社を吹っ飛ばしてやるとか、さまざまなことを言って電話をかけ続けてくるというような事例がありまして、その被害者は、自分の住んでいるところの警察署に駆け込むわけです。しかし、そこは、貸した金も返さない人間の言うことは聞けないと言って、帰しているわけですよ。
 それで、そのやみ金業者の所在地にある警察署の方へ行ったわけですね。そうすると、そこは早速、そういう取り立てのやり方をやったのかということを厳しく電話で追及して、そのようなことは禁じられているのでやってはならないということを言って、その後、対応が改まったという例があるわけですね。
 ですから、私はやはり、どこの署へ行ってもそういうきちんとした対応ができるようにしてもらわなければ、この事案を一つ一つ解決していくということにはならないと思うのです。
 私どもが発行しておりますしんぶん赤旗でも、二月の二十日に「ヤミ金融苦情が倍増」という記事で、東京都の金融課に寄せられた苦情などを紹介させていただいておりますけれども、東京都の金融貸付係の職員は二十四人にまで増員しているそうです、それから電話も一本増設したそうです。しかし、電話の対応だけで目いっぱいで、電話をかけてくる人たちは鳴りっ放しで通じないじゃないかといって、本当に年じゅうしかられているということを述べておられるんですね。ですから、警察への金融事犯に対する相談件数というのもふえているということは、もう私は推して知るべしだと思うのです。
 そこで、大臣にぜひ伺いたいのですが、こういったことを徹底しようと思いますと、いろいろな対応に差があるというのは、やはり、その現場で対応する担当官の認識の違いがあらわれていると思うんですね。
 ですから、すべての人たちがそういうことに対応できるように教育を徹底する、あるいは、担当官をきちんと決めて、ローテーションを組んで、それ以外の人はやらなくても済むような体制をとるというようなことをぜひやらなきゃならないだろうというふうに思いますので、教育をきっちりやっていただくことと、マニュアルを作成しておられるのか、おられてもそれが徹底していないのかという点、そして、人員配置が果たしてそれで足りているのかどうなのか、その点をお聞きしたいと思いますが、いかがですか。

○谷垣国務大臣 今、藤木委員からいろいろ、相談に対して不適切といいますか、そういったような事例の御紹介がございました。
 私も伺っておりまして、やはりこの分野、なかなか一筋縄で、いわゆるコロシとかタタキとかいったのとまたちょっと違いまして、金の貸し借りの中にはごく普通の金の貸し借りもあったり、なかなか見分けが難しいとか、かなりぴしっとその分野の目がないと、なかなか的確に相談にも応じられないし、的確な対応ができないというところが現実にあるんだろうと私は思います。したがいまして、今委員が御指摘されましたように、やはり金融、特にやみ金融ですね、こういう情勢、それから、それをめぐるいろいろな法あるいは今の判例の状況というのもある程度通じた者がこれに当たらないと、的確な対応ができないということがあるだろうと私は思います。
 これにつきましては、各都道府県なんかでもいろいろな教育をやりまして、あるいは集中的な対策本部みたいのをつくってやっているところもあるわけですが、さらにそういうことは強化してやっていかないと、なかなか実効性をこれ以上上げるということはいかないのかもしれないと思いますので、国家公安委員会としても、そういう取り組みを強化するように督励してまいりたいと思います。

○藤木分科員 ぜひそのように進めていただきたいというふうに思いますね。
 私、もちろん、今お話ししたのは多くの事例のほんの一部でございますから、まだまだこういった事例というのはたくさんあるわけですけれども、確かにやみ金の規制法などをつくらなきゃならない。これはそういう動きが起こっておりまして、日本弁護士会だとか議連の中でもそういった動きが起こっておりますけれども、それをまつまでもなく、やはりできるだけのことは、あらゆる手段を講じる必要があるというふうに思うのです。
 そこで、時間もございませんけれども、実は、暴力追放センターというのが各都道府県にできておりますね。これは、警察のOBの方と現職の弁護士さんたちが協力しながらやっている、言ってみれば任意団体のような団体なんですけれども、ここが評判のいいところがあるんですよ。ここへ持ち込んだ相談は一〇〇%の確率で解決するというところがあるんですね。もちろん、その強弱はいろいろありますけれども。
 こういったところでも、そこまでの働きをやっておられるわけですから、本業である警察としては、ぜひ、この問題で青少年の被害をこれ以上深刻な事態におとしめないために力を尽くしていただきたいということを強く申し上げて、質問を終わらせていただきます。

○持永主査 これにて藤木洋子さんの質疑は終了いたしました。
 次に、桝屋敬悟君。

○桝屋分科員 それでは、これから三十分間、自動車運転代行業、この適正化法の話題について議論をさせていただきたいと思います。
 場合によっては大臣にも御同席をいただこうかと思いましたけれども、十三年にできた法律でありまして、まだ施行途中段階でありますから、事務方の皆さんと議論をさせていただいて、どうせこれは五年後に見直しということもあるわけでありますから、その糧にしていただきたい、そんな思いで、きょうは、警察庁それから国土交通省、両省の担当においでいただきました。議論をさせていただきたいと思います。
 最初に、自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律、昨年の六月に施行になったわけでありますけれども、二種の義務づけについては後ほど議論いたしますが、まずは業者の認定等が始まっているわけであります。昨年六月から始まりまして、今日までのこの法律の施行状況、あるいは効果測定はなかなか難しいかもしれませんが、どのように実際に感じておられるのか、最初に警察庁の方から伺いたいと思います。

○属政府参考人 運転代行業法ですけれども、平成十四年六月から施行されました。昨年末までに全国で四千三百七十一件の認定申請がなされておりまして、四千百五十九業者に対して認定証が既に交付されております。
 法律施行前の平成十二年五月末現在で把握しておりました数は、その当時で二千七百十五業者を把握しておりましたけれども、ただいま申し上げましたように、法律に基づく認定申請の件数はこれを大幅に上回っております。これは、法律が制定され、認定制度が導入されることについて一生懸命周知徹底を図ったわけでありますけれども、それに基づいて申請が適切に行われているということ、そしてまた、法律の施行を契機として新たにこの業界に参入された方が相当数あっただろう、そういうふうに考えておりまして、一応、認定の関係では所期の目的を達しつつあるというふうに思っております。

○桝屋分科員 ありがとうございました。
 今の局長のお話では、この施行によって、それ以前の把握の状況に比べて認定件数も大幅にふえたということでありますから、ある意味では、今、局長がおっしゃったように所期の目的は達成したのかもしれませんが、これからさらに二種の義務づけ等もあります。効果測定をしっかりやっていただいて……。
 局長、私、もともと適正化法というのは余り好きじゃありませんで、第一段階で適正化法ということなのかなと思っておりましたけれども、私個人的には、やはり交通安全に資する、特にアルコールの入ったお客さん方の飲酒運転を防止するという意味では、この業界の役割というのは極めて大事だ、一利用者としてもそう思っておりましたから、本当は適正化というよりも業界の方として地位を確保できればいいな、こういう気持ちもあったわけでありますが、その一つの段階として適正化法が施行になったということであります。
 法律を議論するときに、今でも覚えておりますけれども、特にタクシー業界との比較で、一億走行キロに対する死亡事故の件数とか随分言われて、ひどいものだという説明を受けた記憶があります。これから二種の義務づけ等が行われた後でも結構でありますけれども、そんな数字も整理しながら、私は、次の段階に向けて進められるように特段の検証もお願いをしておきたいと思います。
 さて、そこで、先ほどから出ております二種の義務づけでありますが、あわせて、道交法の政令改正によりまして、二種の免許について指定教習所制度も導入されたわけでありますが、この導入の状況、現在の指定状況等がどうなっているのか、この辺もデータをちょっとお示しいただきたいと思います。

○属政府参考人 先般の道路交通法改正によりまして、二種免許につきましても、指定自動車教習所で技能検定等が受けられるように、そういう改正をしたわけであります。
 普通第二種免許について申し上げますと、本年二月二十六日現在では、九十四の自動車教習所が既に都道府県公安委員会から指定を受けております。また、このほか、現在二百四十二の自動車教習所がこの二種免許の関連での指定を受けるために準備を進めているというふうに報告を受けております。

○桝屋分科員 九十四が指定を受けて、二百四十二について準備を進めているということですから、体制は徐々に整備されつつあるというふうに思っておるんですが、九十四は、現に今指定されている、現場では既に、恐らく来年の六月までに施行政令が出るんだろうと思いますが、それに向けて業界も準備をされておられる。こういう状況でありますけれども、都道府県の中ではまだ指定の教習所はないという事例もあるようであります。
 それから、実際に現場でそれぞれの事業者の皆さんがどれぐらい二種の免許を取れるかということが義務づけの施行に当たって大事なことだ、私はこう思っているんです。いろいろ現場の話を聞きますと、そうはいっても、なかなか二種の免許は大変だ、期間や費用も結構かかるという話も聞いております。それから、せっかく苦労して二種免許を取ったらそのままタクシーの方に行ってしまわれた、大事な労働力が向こうの業界に行ってしまった、こんな話も聞いておりまして、なかなか現場の悩みも大きいな、こう思っているんです。
 どうでしょうか。指定教習制度の導入もあって、現在の代行業でどの程度二種の資格、免許をお取りになっているのか、そういうデータがありましたら、これも調査結果を教えていただきたいと思います。

○属政府参考人 お答えいたします。
 平成十四年十二月十五日現在でありますけれども、自動車運転代行業者の従業員は約四万八千人いるというふうに把握をしております。そのうち、専従の従業員は約一万四千人でありまして、そのうち第二種免許を取得している者は約三千五百人、約二五%の方が取得をしておられます。また、アルバイト従業員の方は約三万四千人おられるわけでありますけれども、そのうち第二種免許を取得している者は約三千二百人、約一〇%となっております。四万八千人中、トータルの数で申し上げますと、約一五%の方、約六千七百人の方が二種免許を取得しておられるといった状況でございます。

○桝屋分科員 ありがとうございます。
 これも、私、現場を回ってみますとさまざまに悩ましい声を聞きますが、全体として見ると、このように進んでおるということだろうと思います。これから二種免許の義務づけ、来年の六月までのいずれかの時点になるだろうと思っておりますが、大事なことは、やはり実態として現場の業者の皆さん方がついてこれなければ意味がないわけであります。この法律の目的に即して、二種の義務づけということは、いつの時点で、どういう状況で施行に踏み切ろうとされるのか、定量的な話はなかなか難しいかもしれませんが、その辺のお考えもお聞かせいただきたいと思います。

○属政府参考人 代行運転普通自動車の運転者に第二種免許を義務づけた改正道路交通法の趣旨、これは、有償でお客といいますか、旅客を乗せて運転をするということで、言ってみれば十分な技能を必要とするという観点から二種免許を義務づけているわけであります。そういった趣旨からすれば、できるだけ早くこれを施行するということが適当ではあるとは思うわけでありますけれども、その一方で、第二種免許を取得する機会が限られていた状況等を勘案いたしますと、公布の日から三年を超えない範囲内で、すなわち、平成十六年の六月までに施行するということになったわけでございます。
 そういうことから、具体的に、第二種免許の義務づけに関する規定の具体的な施行日につきましては、指定自動車教習所における第二種免許に係る教習がどの程度実施できるようになっているか、そしてまた、代行業の運転者の方がどの程度第二種免許を取得しているか、そういった状況等を十分踏まえて、その施行期日について検討していきたいというふうに考えております。

○桝屋分科員 来年の六月が一つの区切りでありますから、できるだけ早くということではなくて、やはりしっかり現場の体制が整うということを、そういう意味で三年の期間があったというふうに私は思っておりますから、ぜひ現場の状況を十分勘案の上、施行に踏み切っていただきたいなということもお願いしておきたいと思います。
 そこで、実際に現場へ行きますと、去年の六月から認定事業者が、先ほどの話では四千百以上の状況で、これは全国の数字でありますが、現場は大変であります。
 私の印象では、さっき言いましたように、適正化法という法律の意味するところ、私は個人的にはいかがかなと思っているわけでありますが、第一段階としてやむを得ない、こんな思いからいたしますと、せっかくこの適正化法ができて、あるいは認定制度ができて、しかし現場を見ると、特に昨年の暮れあたり、暮れは忘年会シーズンでありますから、業界が一番にぎやかなときでありまして、私は大変関心を持って現場を見ておりますと、やはりいろいろな声があります。認定を受けるのに、台数はうちは一台あるいは二台ですよというような状況の中で、実際にお客さんが年末、忘年会のシーズンはぐっとふえる。そうすると、届けをしている、認定を受けている以上の台数がニーズがあれば走らざるを得ない。
 そこで、一番心配なのは、利用者保護といいますか、保険に入っていない無保険の車が走ってしまうというような状況もあるんじゃないかと。あるいは、認定を受けていないような業者が参画しやすい業界ということもあって、大変な混乱もあるようであります。この業界の一つの特徴かもしれませんが、ただ、ここはせっかく適正化法ができて、きちっとそれが守られないと、正直者がばかを見るような、こんな現場になってしまっては意味がないわけであります。
 私は、やはり認定事業者に対して、制度がスタートしたこの時点においては、適正化法の趣旨を業界の皆さんにしっかり理解をしていただいて、今回の法の趣旨というものを守っていただくという指導のあり方が大事ではないかなと。結局、守っても守らなくても取り締まりはありませんよ、厳しい指摘もないというのでは、大変なモラルハザードを招くわけで、法の趣旨も損ねてしまう、こういう気がするんですが、立入検査あるいは取り締まりといったことが適宜適切に行われる必要もあるのではないか、こう思っておりますが、その辺の状況はいかがでしょうか。

○属政府参考人 警察庁といたしましては、この自動車運転代行業というのは、飲酒運転の防止に大変貢献する、重要な役割を果たしている大切な業界だというふうに思っております。
 そういうことから、できた法律をきちんと適正に運用して自動車運転代行業の業務の適正な運営が確保されるように、都道府県警察を指導しているところでございます。
 また、都道府県警察においては、運輸支局等と連携しながら、自動車運転代行業者から必要な報告を求めるとともに、既に二十三の都道府県警察では全事業者に対する立入検査を実施しているところでございます。
 さらに、自動車運転代行業者等の法令違反が認められた場合には、必要な指導監督、取り締まりを行っておりまして、これまでにも無認定営業、損害賠償措置義務違反、これは保険に入っていないで営業をするといったものですけれども、そのほか、白タク行為をやる道路運送法違反などで十二件の事件を検挙しておりますほか、法律に基づく指示など六十一件の行政処分等を行っているところであります。
 他方、議員御指摘のようないろいろな問題もある、私ども、そういった声も伺っておりますので、警察庁としては、国土交通省と十分連携を図りながら、今後とも、地域の実情に応じて、指導監督、取り締まりが適切に行われるように都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

○桝屋分科員 マスコミの報道等でも一部、取り締まりや検挙されたという事例も私は聞いてはおるんですが、私もこの業界は随分全国的に回っておりまして、県警や所轄の警察署によって随分対応に違いがあるんじゃないか。区々としているところがありまして、所によっては相当懇切丁寧に、認定事業者を集めてきちっと指導されているところもあれば、実際に、結構広域で事業をやっているところなんかは、所轄によって随分取り扱いが違うというようなことも聞いておりまして、もう一つ問題はあるのであります。
 平成七年にAB間の問題で指導通知もお出しになっているようでありますが、新たなこういう局面の中で、全国一律の基準で指導していただけるような指導通知等もぜひ発出していくべきではないか、こう私は思っておりますが、その点いかがでしょうか。

○属政府参考人 警察庁としては、自動車運転代行業の業務の適正な運営を確保するために、これまでも都道府県警察に対して、法令の適正な運用について指示をしてまいりました。最近の法施行後の状況を踏まえまして、最近ですけれども、改めて自動車運転代行業の実態把握等の徹底、また指導監督、取り締まりの基本方針等について通達を発出したところであります。
 今後とも、地域の実情に応じて、指導監督、取り締まり等が適切に行われるように努めてまいりたいと考えております。

○桝屋分科員 また、指導されているその通知の内容も、私もしっかり見ていきたいと思っております。
 先ほど、現場で取り扱いに違いがあるというのは、私は、現場で取り締まられる警察官も大変だろうと思うんですね。特に伴走車は表示をするようになっておりますけれども、認定番号さえ書けばいいようになっておりまして、実際、その車がちゃんと保険に入っているのかどうか、あるいは本当に認定を受けたときの車なのかというのはなかなかわからない。取り締まりのためのいろいろな工夫も、これから現場を見ながら要るんではないかな、そういう検討もぜひお願いをしておきたい、こういうふうに思っております。
 それから、もっと本音を言いますと、私は、最近お出しになった指導通知の中でも、どういう取り締まりをするのか、どういう指導をするのかということは恐らく整理をされていると思うんです。その中で、例えば違法な駐車であるとか、認定も受けていない業者が勝手に事業をやっているとか、あるいは認定を受けている以上の台数の車が、保険も入っていないような車が走り回っているということは、しっかり取り締まってもらいたいわけであります。
 問題は、以前から私が気にしております白タク類似行為といいますか、AB間といいますか、この業界にどうしても切っても切れない問題があるわけでありまして、運転代行業というのは、やはり利用者の利便、道路交通の安全に資するという観点から、利用者が本当に利用しやすいサービスでない限り、そこは余り無理をしても定着しないだろう、こう私は思っております。
 そういう意味では、きょう、国土交通省さんにおいでいただいておりますが、AB間の問題については、この適正化法ができても、行政上の取り扱いの考えは多分変わっていないんだろう、こう思っておりますが、ちょっとそこは確認をさせてください。

○中山政府参考人 お答えいたします。
 自動車運転代行業に係るいわゆるAB間輸送問題につきましては、平成十四年の五月、自動車交通局旅客課長通達を出しておりまして、そこで二つの要件を定めております。
 一つは、利用者の運送が、自動車運転代行業者またはその従業員などの自動車によって行われる場合ということが一つございます。もう一つの要件としましては、反復継続の目的を持って有償で行っている自動車運転代行業者は、道路運送法第四条第一項の許可、すなわち、タクシー事業の許可を受けていなければ、道路運送法違反のいわゆる白タク行為に該当するというふうに考えております。
 この場合に、当該AB間の運送行為の有償性についてでございますけれども、当該運送行為の対価が、代行運転役務の提供に対する対価とは別に定められている必要はございませんが、有償であるか否かの判断に当たりましては、社会通念に照らして、具体的事案に即して、十分実態を調査の上判断することが必要であるというふうに考えております。
 先生御指摘のとおり、適正化法によりましてこの趣旨は変わっておりません。

○桝屋分科員 そういうお答えだろうと思って私も理解しておりましたけれども、そうしますと、先ほど属局長がおっしゃった新しくお出しになった通知の中で、いわゆる重点的に取り締まる事項の中に、そういう白タク行為というものが入っているのかどうか。あえて聞きません。私は、プライオリティーとしては余り高くないんじゃないかと思っておりまして、このAB間の問題というのは、例えば検挙して実際に裁判になったときに可罰性が本当にあるのかどうかということは、今の御説明の一番最後にあったように、なかなか難しいところがある。ここは、この業界が続く限りずっと続いていく問題だろう、こう私は思っておりますが、次の法の見直しに向けては何とか、AB間は無償でやればそこは可罰性はないんではないか、無償でやるんだったらいいではないかという議論も現場ではあるわけです。
 ところが、では本当に無償かどうかというのは、先ほどの御説明のように、付随するサービスかどうかというような、なかなか事実認定上では難しい問題もあるだろうと思うんですね。ただ、私が申し上げたいことは、この業は、道路交通の安全のために飲酒運転を何とか減らしていこう、そういう社会的な要請に対してこたえる非常に重要なサービスだと私は思っておりますが、そのときに、このAB間というのは、利用者の立場からいくと、私は取り締まらなくていいとは言いませんけれども、そこはぎりぎりやるのは難しいんではないか。ここはやはり、事業が、この適正化法ができてこれから二種の義務化になる、そういう動向を見ながらもう少し研究をしてもらいたいな、こういうふうに私は思うんです。
 きょうは通告しておりませんが、例えばタクシー代行という言葉があります。タクシー業界の方が、まさに今回の適正化法で言うところの二条のそれぞれの条件どおりのサービスを実施する場合は、改めて公安委員会の認定を受ける必要があるのかどうか、その辺はどうなんでしょうか。どっち側にお聞きしていいか、通告しておりませんでしたから。

○属政府参考人 お答えいたします。
 タクシーがいわゆる自分の車にタクシーとして乗せて、そしてまた別の車、お客さんの車をタクシーの人が運転して帰るというのがタクシー代行というふうに通常言われておりますけれども、これについては、特段の自動車運転代行業としての認定は必要はございません。
 ただ、いわゆる現在の自動車運転代行業のように、お客さんの車をタクシーの人が運転をして別の車を随伴車として運転する、そういった形態であれば、これは当然認定が必要になります。

○桝屋分科員 突然変なことを聞いて済みません。
 まさにその辺でありまして、それも、今、局長から御答弁がありましたように、実際にタクシー代行として新たに認定を受けておやりになる業者というのはないと思うんですね。そうすると、今、局長さんがおっしゃったような業態で、実際にタクシーの車両を使っておやりになっているというケースだろうと思っておりますが、ただ、それで実態としてどうなのかというと、どうもそうでない実態もあるんですね。
 そういう意味では、私は、ここはきちっとされないと、せっかくの適正化法が空洞化してしまうという議論も逆にあるわけであります。タクシー業界がまずあって、そこへすき間産業として入ってきた代行業を、何とか適正化ということで整理してやろうという意味合いがどうも強いのかなと。私は、ここはせっかく適正化法ができたら、やはりイーブンな関係でいかなきゃいかぬなというふうに思っておりまして、そういう意味では、空洞化してはならぬという思いでありますので、適正化法ができた以上は、やはり当分の間は、法の趣旨に基づいて適正に運営されることが必要である。
 ただ、このAB間の問題については、タクシー代行の問題と同じように、あるいは有償運送というような問題と相まって、いま少し利用する国民の立場から、私は理論的に整理していただく必要があるのではないかと。もう少しすっきりわかりやすい形で法の整理ができるのではないか、それが五年先の見直しではないのかな、私はこう思っております。
 あえて申し上げますと、二種免許を義務づけされましたけれども、現場の皆さんに言わせると、本当に二種なのか、やはり代行の資格というのは、二種以上に大変なところがあると。毎日違う車に乗るわけでありますから、そこは毎日同じ車に乗られるタクシーのドライバーとはまた違う特性もあるわけでありますから、そんなこともよくよく勘案をしていただいて、属局長になられて交通事故は大幅に減っておるというように私は思っておりまして、大きな成果を上げておられるのは結構なことでありまして、ぜひこの業界の活動も見ていただきたい。
 局長、この業界は、なかなか結束しないで私も困っているんです。ありとあらゆるグループと私はお会いしているのでありますが、どこかの一つのグループだけでは問題がありますから、私が場合によっては全グループを集めますから、局長と懇談できるようなことをぜひお願いしておきたいな、国土交通省の部長さんにもお願いをしておきたいと。そのときは、嫌がらずにぜひそういう場にお出かけいただきたいということをお願いして、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

○持永主査 これにて桝屋敬悟君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして警察庁についての質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――

○持永主査 次に、内閣について質疑の申し出がありますので、これを許します。永田寿康君。

○永田分科員 大臣、どうもありがとうございます。
 この間の予算委員会の一般質疑に引き続きまして、道路公団民営化推進委員会関係のお話をお伺いしたいと思います。
 まず、内閣は、意見書を最大限尊重するという表現でその位置づけを説明しているわけですが、最大限尊重するというのは、どの程度尊重することを意味するのか、できるだけ詳しく御説明いただきたいと思います。

○石原国務大臣 この点につきましては、先般の予算委員会で永田委員とも御議論をさせていただきましたが、私どもの閣議決定では、最大限ではなくて、「基本的に尊重する」とさせていただいたところでございます。前回の話も重複いたしますが、詳細にということでございますので、若干お時間をいただきましてお話をさせていただきたいと思います。
 もう永田委員も御承知のことだと思いますけれども、道路四公団改革につきましては、昨年の十二月に民営化推進委員会の意見が取りまとめられました。
 これは、今井委員長が委員長を辞任されるというような不正常な状態ではございましたけれども、七人の委員の方全員が、まず第一義的に考えなければならないのは、四公団合わせて四十兆円という債務というものがあって、この債務を確実に返済していくということが重要である。さらには、建設コストというものを削減していかなければならない。また、公益法人あるいは子会社という形でつくっておりますファミリー企業のあり方、こういうものを見直して、透明性を高めていかなければならないというようなことで、これは、七人の委員全員の方々が、そのとおりだということで、成果を出したところでございます。
 そんな中で、政府の閣議決定で、基本的にこの委員会の意見というものを尊重する、さらに、必要に応じ与党とも協議しながら、改革の具体化に向けて取り組んでいくことが必要であるという旨を閣議決定させていただいたわけでございます。
 そこで、質問の詳細に入るわけでございますけれども、この最終段階、私も委員会に出席しておりましたが、すなわち、道路資産を新会社が民営化と同時に保有するのか、あるいは保有しないのか。また、期限を区切って、これは十年後を目途にということでございますが、資産を保有するのか。
 この点につきましては、実は、七人の委員の方々の委員会での意見の御開陳を聞いている限り、必ずしも全員が全員、十年後に資産を買い取るというようなお考えではなかったようでございます。さらには、委員会で試算した結果、いろいろな金利状況あるいは交通状況の伸び等々から見ましても、十年後の有利子負債、これが十年後のキャッシュフローの大体何倍ぐらいあるのかということをいろいろなケースで試算をいたしました結果、大体八兆円から十兆円ぐらいの債務を切り離さないと、委員の御懸念であるところの、新会社が資産を保有するどころか、その債務が切り離せないことによって経営が著しく阻害される、こんなような話も委員会の審議の中でございました。
 あるいは、新会社の株式の上場、この時期というものは、総理が明確に、新会社は株式の上場を目指すという言い方をされておりまして、即座に一年、二年、三年や十年で上場ができるということは、債務の巨額さ等々を考えて、やはり無理であると。JRの中でも、昨年でございますか、十六年かかりまして、東日本が完全民営化をしたわけでございます。
 あるいは、ここが最大の焦点だったと私は感じるんでございますけれども、新規建設の資金の支出スキーム。すなわち、現在は全国プール制で、採算のとれている四つぐらい、東名とか中央とかいったようなところの料金収入を、料金収入が乏しい区間の補てん、さらには新規路線の建設に充てているわけですけれども、このプール制をどうすべきか。
 さらに、余剰資金を、もう既に、極端なことを言いますと、東名などは、三十年の償還、当初の計画では過ぎておりますし、建設資金はもう十分払い終わって、さらにおつりが来る状態になっておりますけれども、こういうものをさらに今後続けるのか、続けないのか。これはまた、分割論、どのように分割するかということによっても話が変わってまいります。
 さらには、当初は、いわゆる資産を保有する保有機構と、分割された高速道路事業を行う会社との、いわゆる通称上下分離と言われている方式をとると意見書は申しておりますが、そのとき重要な問題となってきますのは、リース料、すなわち、貸付料の設定方法をどういうふうに置くのか。
 そして、説明が長くなるのでこのぐらいにさせていただきますけれども、もう一つぐらいお話をさせていただきますと、料金の値下げでございますね。どこの路線をどうするのか、全国一律にするのか、あるいはどの程度するのか等といったような分野で、委員の皆さん方の意見に、対立とは申しませんけれども、考えの相違がありました。
 こういうものは、実際にこれから具体化の検討作業、これも、前回の予算委員会で扇大臣が御答弁しておりましたけれども、今御説明したような審議の経過の中での意見の相違、こういうものを十分精査した上で、政府として責任を持って対処していくということで、この「基本的に尊重する」という文言をとらせていただいたものでございます。

○永田分科員 まあ、多分その先のことまでお答えいただいたんだと思うんですが、これは、大きく分けて、道路資産の保有形態とか、あるいは八兆から十兆の債務切り離し、上場時期、新規建設の財源等、それから値下げの実効性とか実現性、そういった論点について、恐らく、委員会での議論では必ずしも満場一致ではなかったという部分について列挙されたものだと思います。
 この問題はここで一たんとめますけれども、ただ、私の考え方では、やはりあの委員会が合議制であって、合議した結果ああいう意見書が出てきたのであれば、意見書が出るまでの間にある程度の意見の対立があった場合であっても、やはりその結果というものを尊重するというのが正しい姿勢ではないのかという問題意識がありますので、今後、引き続き大臣にも質問することがあると思いますが、そういう問題意識であるということをぜひわかった上で、今後の答弁を準備していただきたいと思っています。
 ところで、例の松田委員がつくったと言われる試算の前提条件なんですけれども、これは提出されたんですか。

○坂野政府参考人 先般の委員会でお尋ねがあって、まだお示しをいただいていないということを申し上げたわけでございますが、委員会自体がおおむね月一度のペースになっておりまして、一月の末に委員会を開きまして、次回は明日予定をされておるわけでございますので、その後の状況の変化はまだないということでございます。

○永田分科員 ちなみに、前回、私が質問をしてからきょうまでの間に、松田委員に対して前提条件を提出してくださいという督促はしたんですか。

○坂野政府参考人 先般の予算委員会の模様はお知らせしておりますけれども、事務局から改めて督促といったようなことはいたしておりません。

○石原国務大臣 この点につきましては前回の予算委員会の中で議論にもなりましたし、その模様を委員の方々も、拝見させていただいたというような話を委員の方から私のところに御連絡、あるいはお会いに寄られた方もいらっしゃいまして、この試算というものは過去にももう何度もやっていて、どのケースを採用したかということだと私は理解しているんですけれども、どういう最終的なものであったかということを次回の委員会にぜひ出していただきたいと私の方から複数の委員の方に申しまして、委員の方々も、その方向で二十八日に議論をしてお示しできるように努力をしたいという御回答をちょうだいしております。

○永田分科員 ところで、そもそも、松田委員に対して前提条件の提出を求めるというのは、どうして求めているんですか、それがないとどういう点が困るんですか。教えてください。

○坂野政府参考人 これも前回、永田委員から議事録などの内容を御紹介いただいてお話があったわけでございます。ちょっと繰り返しになるかもしれませんけれども、昨年の十二月の二十日の委員会の中で、いろいろなやりとりがあったわけですが、その中の一つとして、事務局から、最終意見のスキームで数字の根拠などいろいろ既におつくりであるのならば、そういうものをお示しいただけるとありがたいということをお願いして、そしてそのときは、松田委員から、そういうのがあればお示しもしましょう、そういうお話をいただいているということなんでございます。
 それで、これも前に申し上げましたが、委員会として意見をつくるに当たっては、それまでいろいろな試算をやってこられて、そういうものを踏まえて、各委員の専門的な知見もお加えになって、総合的に御判断をされてあの意見になっておるわけでございますから、その意見それ自体のプロセスとしては、そういうプロセスであったということで私どもは理解しておるわけです。
 その後、昨年の十二月二十日の委員会で、そういうプロセスで意見はできたけれども、改めてこの意見書の設計の上でもう一度試算をやってみてはどうかというお話が委員の中からあったわけでございます。それを受けて、事務局で、意見書に合わせた条件を設定して、各委員と、今お手紙やメールやそういうもので連絡をとりながら、条件設定をずっとやってきておるわけです。
 そういうものを踏まえて、委員会でどういう条件設定にするかということ、それから、条件設定を踏まえて、試算結果が正しいかどうかというような議論もこれからしてみよう、そういう段階に今来ておるということでございます。

○永田分科員 私が御質問申し上げたのは、松田委員が恐らく持っていると、多分大臣も私も事務局長もそう思っているんでしょう、松田委員が持っていると思われる前提条件が出てこないと、具体的に何が困るのかということを御質問しているんです。
 それを一つと、もう一つは、今、事務局長からお話がありましたが、十二月の二十日の委員会以降、条件を定めてもう一回試算をしてみようという話がありました。それは、私が考えているところの松田案の立場に立ったときの道路公団の今後の行く末、つまり、この間は財務状況の見通しなんかも御質問しましたけれども、こうした意見書のとおりに改革をした場合に、新会社や保有債務返済機構がどうなるのかというような見通しとどう違うのか。
 わかりますか。意見書の立場に立ったときの行く末の見通しと、十二月の二十日以降やろうとしている試算はどのような違いがあるのか、説明してください。二点です。

○石原国務大臣 まず、第一点と第二点の質問はつながっておりますので、一つの答えになってしまうわけですけれども、さっき申しましたように、試算というものは、もうこれまでにかなりの試算がございます。それはもう一昨々年の年末に整理合理化計画を作成するときに、まず、いわゆる七十二通りの試算というものを行いました。これは、金利の条件が、ちょっと今正確には覚えておりません、たしか三・五、四、五だったと思います。そして、当時は、交通量が一・五ぐらい伸びるケース、伸びないケース、さらには金利と交通量の需給見通し、これに合わせまして、三十年で今ある債務を返済した場合、四十年で返済した場合、五十年で返済した場合と、大ざっぱに言いまして、これらの試算をまずいたしました。
 その結果何がわかったかと申しますと、今ある債務を三十年で返済するとしますと、道路公団がそのまま存続したとしても、新規の路線の建設に今行われているようなプール制というものが一切お金が出なくて、金利が高く振れたり交通量がマイナスになったりすると、会社が発散してしまう、すなわち、経営が成り立たない、そういうことで、五十年を目途にその短縮を図ると整理合理化計画で示させていただいたわけでございます。
 これを、需要見通しあるいは金利動向等々を、委員の方々の専門的な知識で、昨年のたしか八月だったと思いますけれども、まず一回目の整理合理化計画でつくりました試算を、委員の皆様方の知識を加味した形でブレークスルーしたものをつくりました。
 その結果が、先ほどお話をさせていただきましたように、仮に優良企業、すなわち、十年後に優良企業として資産を持つ会社を設立するとするならば、有利子負債と年間キャッシュフローの倍数、すなわち、営業益に対して有利子負債がどのぐらいの割合あるのか、これも、どれぐらいの企業がいいのかということは、専門家の方々でも意見が分かれるところですけれども、単純、常識的な線としまして、十倍を超えるような形であるならばその企業は優良企業とはだれも見ないのではないかというのが、常識的な考え方ではないかというような話もあります。
 そういうものを考え合わすと、実際にどのケース、すなわち、四%の金利を取られているのか、五%の金利を取られているのか、これは仮定でありますから、どの数値を使うのか。あと、交通量の伸びにつきましても、これまでの国交省の、例えば免許保有率のマックスの状態、すなわち、何%の国民の方々がこれから免許を持つのかということは、国交省の試算では、過去十年間ぐらいのデータから推計しますと、九五%という数字が出てくるんですが、これを三十年間ぐらいの推計で計算し直してみますと、マックスが八八%にしかならない。これが交通需要見通しにどのぐらい影響するかというと、やはり三%程度影響してくる等々のことが委員会の審議の中で明らかになりました。
 どの数値を使ってやったのかということさえお示しいただければ、これからの金利動向、刻々と変わりますし、さらには、交通量の状況というものも一年ごとにやはり大きく変わるケースも、ネットワークでございますが、つながることによりましてそこがふえるというケースが現実にありますので、そういうものを事務局として、あるいは政府としてしっかりと押さえていく必要があるということで、委員会の中で再三にわたりまして事務局から委員の方々に、松田委員でございますか、ぜひお示しいただきたいということをお願い申し上げているということでございます。

○永田分科員 二点おかしいことがあるんですよ。試算はいいんです。試算はするんでしょう。当たり前のことです、この程度の仕事をするんだったら。試算をする上で、前提条件を置いてシミュレーションして、結果、こういう改革の形であれば、この会社が立ち行くのかどうか、国民がハッピーになるかどうか、つまり、負債ができるだけ返せるようになるかどうか、そういうことを調べるために試算をしてシミュレーションするのは当たり前のことです。だけれども、それをやった結果、一応委員会としては意見書の形がベストであるという判断をしたはずなんですよ。それをやるための委員会ですから、そうやってなかったらおかしいですね。
 そこから先ですね。問題は、試算というのは、前提条件というのはあくまで仮定の話ですから、これは外れることが多いというか、むしろ当たる方がおかしいんですね。外れても、ある程度幅を持って、最低これぐらい、最高これぐらいと。全部意見書に不利な展開になってしまったら、つまり、金利動向とかさまざまな条件が、全部不利な動向に行っちゃったらひょっとしたらやばいかもしれないけれども、普通だったら大丈夫だろう、これぐらいの幅を持った判断をするというのは、僕はそんなに悪いことじゃないと思っています。恐らくそういう判断をしたんでしょう。そういう立場をとらざるを得ないですね、委員会は。
 ところが、そういう判断をしたものについて、だから、委員会の専門家の御意見ですから、それを尊重してそのとおりにすれば本当はいいはずなんですよ。だけれども、それに異を唱えているんですね。どうもそれはうまくいかないんじゃないのというような心配が、恐らく内閣府の中にも、事務局の中にも、そして国土交通省の中にもある。
 国土交通大臣は、先日、道路料金収入を新規建設コストに入れなかったら、新規建設財源に入れなかったら絶対に建設はできないと言い切ったんです。絶対にという言葉を使って言い切ったんですよ。それに異を唱える人たちがいる。猪瀬さんは、雑誌なんかでも、絶対あの形で大丈夫だ、ちゃんと借金も返済できるということを明言なさっています。だけれども、そうじゃないと、あの委員会の意見書のとおりでは立ち行かないということを主張している人たちがいる。これはおかしいんじゃないかという話なんですよ。
 だから、金利動向とかそういうものは、前提条件と外れた形で推移するのはむしろ当たり前のことなんです。それはそれで構いません。それでも大丈夫なように委員会は組んだはずなんです。なぜ、今さら新たに試算をして計算をしていかなければいけないのか。これは、僕はおかしいことだと思うんですけれども、なぜ、改めて十二月の二十日以降計算をする必要が出てきているのか、教えてください。

○坂野政府参考人 十二月二十日の委員会では、事務局から申し上げたことは先ほど申し上げたことなんですけれども、それ以外に、ほかの委員の方々の中から、やはり意見書のスキームについて、数字でいろいろな見方もあるだろうから、もう一度きちんとした試算をして誤解のないようにしたらいいんじゃないんですか、そんなような御提案があったということなのでございます。
 したがって、永田委員がおっしゃったように、この意見書を決めたときは、それまでのいろいろなプロセスの中の材料をもとに、大丈夫だという判断で意見書をつくったということだと思いますけれども、その上で、いろいろ誤解なり理解が行き届かない部分があるのなら、そういうものももう一度改めてつくって意見書に対する理解を深める、そういうことが必要じゃないか、そういう立場で改めて試算をというふうにお考えになったんじゃないかと思っているわけです。

○永田分科員 今、事務局長、委員の中にいろいろな立場の意見があるという、要するに、いろいろな試算をやった中で、多分、委員のそれぞれ、七人いらっしゃるわけですから、どういう立場をとっているかということに違いがあるということをお認めになりましたけれども、それは統一した後で意見書を書かなきゃいけないんじゃないですか。
 要するに、いろいろな試算があって、川本さんはこの試算の立場に立っている、猪瀬さんはこの試算の立場に立っている、そういうような状況で意見書を取りまとめて意味があるんですか。教えてください。

○坂野政府参考人 先ほどの私の答弁で若干誤解があると思うのですが、私が申し上げたのは、意見書に対するいろいろな見方があるということを申し上げたわけで、この意見書を決めた委員の方々の中で大きな意見の分裂があるとか見方の分裂があるとか、そういうことを申し上げたわけじゃないんです。

○永田分科員 そういうことをまとめてから、自分は例えばここの立場に立っていますよ、それは意見書の最終的な文面と比べると、自分の意見としては違いはある、違いがあるけれども、それは受け入れているよ、自分の意見は受け入れられなかったということをわかっているよ、わかっていて、この意見書をみんなで認めましょうよ、合意してというのは僕はそういうことだと思うんですよ。
 最後は多数決になりましたけれども、だけれども、少なくともあの多数決で賛成した五人の方々は、実際に決はとっていないわけですが、あの五人の方々は少なくとも、あの意見書に書いてある文章についてはもう全員合意をしている。人によって、あの文章、ここのところは気に入らなくて、最後まで自分の立場を曲げていないよという人は一人もいないはずだと思うんですけれども、さらに加えて、それはそれで今の僕の意見としてとどめておきます。
 問題はここから先です。国土交通大臣が、この間、絶対にあの意見書のとおりにはできませんということを断言したわけですよ。料金収入を新規財源に入れなければ絶対だめだというお話をなさった。そういうような立場をとることが許されるんですか、国土交通省として。もちろん、国土交通大臣、ここにいらっしゃらないので、通告もしてないので確認のしようはないかもしれませんけれども、国土交通省がああいう立場をとるということは、内閣府及び事務局長としては容認されるんですか。

○石原国務大臣 これはもう永田委員御承知のことでございますが、各種審議会に大所高所から意見のお取りまとめをいただきまして、それを実際に責任を持って実りある実行を行うのは政府の責任でありますし、それが法律案という形で出てきた場合は、それが適切であるか適切でないかというものを判断するのは、日本は二院制でございますので、国民の代表たる代議士あるいは参議院の方々であります、国会の仕事であると考えております。その意味では、扇大臣が責任ある立場として、扇大臣の今ある情報の中でお考えを述べられたということは、私は問題ないと思います。
 前段の質問について、私が感じておりますことを若干事務局長につけ加えて補足をさせていただきますと、最終的なあの答申という文章、本来でありますと、委員の方々が事務局に命じまして事務局で作成をいたしますので、事務局でこのような試算、過去にもう試算はたくさんありますから、この人のこういう意見をとってこういうものであるということをはっきりと申すことができると思うんですけれども、残念ながら、私も含めましてなんですが、あの最終答申の原案なるものは、突然拝見させていただいたというのが正直なところでございます。そのありようは、やはり審議過程の中で今井委員長が委員長を辞任される等々、不正常な状態であったと思っております。
 しかし、委員の方々はずっと積み重ねていらっしゃっておりますので、そういうことが事実としてございますので、そういう事実にもこの答申はしっかりこたえられるものであるということをお示ししなければならないと委員の方々はきっとお考えになられているからこそ、この数字は出さなきゃならないと、複数の方々が私のところにわざわざおいでいただいたり、御連絡をいただいたりしているものだと思っております。

○永田分科員 もう時間も終わりになるので、最後に、質問ではなくて、私の問題意識を説明しておきます。
 答申の、あの意見書の正当性の問題なんですよ。まず、公開、透明な手続であの意見書を取りまとめていくのが、もう本当に憲法のように事務局の中にあったはずなんですよ、その考え方が。ところが、今、大臣もお認めになったとおり、突然あの文案が出てきた。どこで、だれが、どういうふうにつくったのか、さっぱりわからない。だれがどういう意見を主張したのかもわからない。そんなものが突然出てきた。
 そして、松田さんという委員が、大臣も事務局長も認めているとおり、試算の前提条件に対して説明する責任を負うているのは、合議制のものですから委員全体という考え方もあるでしょうが、少なくとも松田さんに最初に手を動かしてもらわなければどうにもならない。
 その松田さんは、事務局のコンピューターを使ったわけじゃないわけですね。明らかになっているとおり、JR東日本のコンピューターを使って計算したわけですよ。こんなものが果たして許されるのかという話がありますよね。何のために公開性をうたっているのかという問題がある。
 そして事務局長、今もおかしなことが起こっているんですよ。先ほどおっしゃったように、十二月二十日以降の試算、要するに、最終的な条件を設定してどうなるかという試算をするに当たってのその条件設定を、手紙やメールでやっている。手紙やメールというのはどこで公開されるんですか。それは全部公開しなきゃいけませんよ。だれがどういう主張をして、だれの条件が取り入れられたのか、そういうことをやはり明らかにしないと、公開性というのは本当に絵にかいたもちになっちゃうわけですよ。そういう正当性が疑われている上に、さらに国土交通大臣がこの意見書の最も根っこの部分を政治の責任として否定しようとしている。
 大臣、僕は昨年、道路関係四公団民営化推進委員会設置法の審議の中で、国土交通大臣とこの民営化推進委員会の意見が食い違ったときにはどうするんですかというお話をしました。そうしたら大臣は、最初の答弁では、これはそうならないようにしていくんですというお話をした。確かにそういう答弁をしたくなるのはわかるんですが、この法律は、道路公団民営化推進委員会設置法は、意見が違ったとき、つまり、意見書のとおりに物事が進まなかったときには、必要に応じて勧告をすることができるようになっていますね。つまり、国土交通大臣その他行政機関の行動や意見と、委員会の最終意見書の内容が違っているという状況もちゃんと想定をした上で法律をつくっているわけですよ。ですから、ここのところでその意見書に対してちゃんと勧告を出すのかどうか、それが最終的な正当性を決めると言っても過言ではないんですよ。そうじゃないと、単なる世論調査とかパブリックコメントと同じ扱いになっちゃうんですね。
 ですから、そこのところをしっかり念頭に置いていただいて、そして、改めて事務局長には、手紙やメールでやりとりをしているんだったら、それも全部公開してくださいということをお願いして、私の質問をきょうは終わりにしたいと思います。

○坂野政府参考人 条件設定について事務局と委員との間でやりとりをしておるということを申し上げました。いずれにしても、これは公開の委員会の場で条件設定を明らかにし、その理由が示されるわけでございますので、そのプロセスについては、これまでもいろいろな形でやってまいりました部分は、すべて最終的に委員会の場でその根拠が明らかにされるということで御理解をいただきたいというふうに考えておるわけでございます。

○永田分科員 終わります。

○持永主査 これにて永田寿康君の質疑は終了いたしました。
 次に、防衛庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木下厚君。

○木下分科員 どうも座長、長時間御苦労さまでございます。
 きょうは、日本を取り巻く安全保障、イラク問題あるいは北朝鮮問題等を含めまして、大変厳しい状況になっています。ここで、改めてこの機会に、いわゆる日本にある在日米軍基地、これをもう一度見直し、あるいは意義等について、やはり十分議論していかなきゃいけない、そう思います。
 そこで、実は、私の地元、埼玉県所沢市でございますが、そこに米軍所沢通信基地というものがございます。その問題について質問させていただきますが、その前段として、今、我が国に在日米軍基地、全面あるいは一部返還を含めて、日米両国で合意しているものについて、どのぐらいの面積、地域、あるいは返還予定はいつごろなのか、それをちょっと教えていただきたいと思うんですが。

○石破国務大臣 現在、日米間で全部返還及び一部返還について合意されている施設・区域は、施設の数は十六施設、面積は五千三百九十五ヘクタールとなっております。
 全部返還合意されている施設は、沖縄県に所在します普天間飛行場等五施設、約八百七ヘクタールということでございます。
 全部ではなくて一部の返還合意をされておりますものは、本土におきましては赤崎貯油所等二施設、約一・五ヘクタール、沖縄におきましては北部訓練場等九施設、約四千五百八十六ヘクタールということに相なっておるわけでございます。

○木下分科員 そのうち、沖縄県にある在日米軍基地、これはSACOで合意したものがあると思うんですが、たしか十一施設だったと思うんですが、この返還状況は現在どうなっていますでしょうか。

○大古政府参考人 SACO最終報告は平成八年の十二月でございますが、これに盛り込まれた土地の返還につきましては、先生御指摘のとおり、十一施設・区域でございます。
 この施設の返還状況につきましては、安波訓練場の返還が平成十年の十二月にまず実現しております。それ以外の十事案につきましては、普天間飛行場などの八事案につきまして地元の了解が得られ、その一部については移設工事の着手に進んでいるという状況にございます。ただ、ギンバル訓練場及び牧港補給地区の二つの地区の返還につきましては、引き続き地元調整等に努めているという状況にございます。

○木下分科員 先ほども言いましたように、日本を取り巻く安全保障は大変厳しい状況でございますので、この在日米軍基地につきましては、さらに、どういう意義があるのか、あるいは本当に必要なものなのかどうか、それも十分議論しながら、やはり不必要なものはできるだけ早く返還させるという方向で御検討をお願いしたいと思うのです。
 では、本題の米軍所沢通信基地についてお伺いしたいと思います。
 この埼玉県所沢市は、首都東京の約三十キロ圏に位置し、近年、人口増加が激しく、現在、人口が三十三万五千人を超えるということで、埼玉県の南西地域の中心都市になっているわけでございます。人口の増加に伴って、住宅や環境問題、交通渋滞の問題、さらには生涯学習、スポーツへの高まり、あるいは少子高齢化など、多様化する市民ニーズに対応すべく、市内全域にわたって早急な都市環境の整備充実が求められているわけでございます。
 このような所沢市にとって、市域の中央部に位置し、あそこには、市役所、警察署、郵便局、市民センター、防衛医科大学附属病院などの行政施設が集中する地域に米軍所沢通信基地がある。それも約九十七万平方メートルの広大な面積を擁しているわけですね。周辺地域が住宅地として開発されているにもかかわらず、町を二分しているわけでございます。したがって、慢性的な交通渋滞だけでなく、町づくりを進める上で大変大きな障害になっております。
 また、一昨年の米国中枢部を襲った同時多発テロ事件以後、住民の皆さんにも、テロの標的になるんではないかという不安、こういったものが非常に高まっています。
 このため、市民の日常生活の安全、安心のために、また快適な住み心地よい町づくりのための都市基盤整備を促進するため、米軍通信施設の返還は三十三万五千人市民の悲願であります。
 そこで、この米軍施設について質問させていただきます。
 この米軍施設の主要業務と役割、これはいろいろ防衛機密の問題等もございますが、何せ、あそこの広大な敷地の中に、外見から見ますと、アンテナが二基しか立っていない。あとは草っ原になっているわけですね。一部には、あの地下に広大な施設があるのではないか、そこをテロにねらわれるんじゃないかという不安があるわけですが、そこの主な任務、役割等をできるだけわかりやすく、いわば市民の不安を解消するような形での御説明をお願いしたいと思います。

○大古政府参考人 所沢通信施設につきましては、委員御指摘のとおり、面積については約九十七ヘクタールでございます。アンテナにつきましては、数えますと二十数基あるというふうに承知しております。このアンテナのほか、通信局舎等の建物がございまして、米空軍が管理している通信施設として使用されているというふうに承知しております。

○木下分科員 任務は何をやっているわけでございますか、役割。ここをできるだけ具体的にひとつ。

○大古政府参考人 米軍の運用状況の詳細については我々知り得る立場にはございませんが、この施設につきましては、米空軍の送信所として他の米空軍の部隊と連絡するというための送信所ということで聞いております。

○木下分科員 これは、横田基地と連携しているということになりますか。もうちょっと具体的にお話しいただきたいと思います。

○大古政府参考人 今御説明しましたように、米空軍の送信所ということで承知しておりますけれども、具体的にどのような部隊との通信になるかということにつきましては承知しておりません。

○木下分科員 いや、承知していないといっても、どれだけの役割があるのか、そこをもうちょっと具体的に言ってくれないと、市民は、あんな原っぱはもう必要ないんじゃないかと。それは、通信基地、アンテナが今二十幾つと言ったけれども、外見から見ると大きいのが二本しか立っていないんですね。ですから、もうちょっと、承知していませんじゃなくて、具体的にこういうところと連携しているから大変重要なんだよとか、いや、大して重要じゃないよとか、そこら辺のところをきちんと説明してくれないと。いずれにしても、市の中心部にありますから、そこをきちんと市民の皆さんが納得するだけの説明をしていただきたいと思います。

○大古政府参考人 先ほど御説明したように、アンテナについては二十数基ございます。それから、局舎等の施設がございます。運用状況については詳細は知っておりませんけれども、在日米空軍の通信施設として重要な機能を果たしているということで承知しております。

○木下分科員 いや、それは通信基地というのはみんなわかっているから聞いているんですよ。そんなおざなりな説明じゃなくて、もうちょっと具体的に、例えば横田基地と連携しているとか、あるいは米軍の飛行機をコントロールするとか、何かもうちょっと具体的に言ってくれないと。通信施設なんて、あなたに説明してもらわなくたってみんなわかっているんですよ。もう一度、きちんと答弁してください。

○持永主査 もっと丁寧に答弁してください。

○大古政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、どのように通信施設として使われるかの詳細については我々も把握してございません。ただし、横田に所在する司令部の管轄下にあります三七四空輸航空団が管理部隊として所在しておりますし、そういう意味で、各所の空軍の部隊と通信、連絡する重要な通信施設だということで理解しております。

○木下分科員 そんな、あれしなくたって、こういうパンフレットが出ているんですよ。少なくとも、ここにはもっと詳しく書いてあるんですよ。例えば、米軍横田基地の米第五空軍三七四空輸航空団に所属する送信基地であるというふうに具体的に書いてあるんですから。それからアンテナにしても、もう少し詳しく書いてあるんです。これ、見ますか。やはり少なくともこれ以上は説明してくれないと、市民は納得できないですよ。もう一度、親切に答弁をお願いします。

○大古政府参考人 繰り返しになりますが、そのパンフレット自体は我々も詳しく承知しておりませんけれども、先ほど申したことの繰り返しになりますが、米軍の通信施設である、その運用の状況については承知していないということで御理解いただきたいと思います。

○木下分科員 それじゃもう、ますます後退しているじゃないですか。先ほども言いました、この前の、一昨年のテロのときは、本当に市民は心配したんですよ。横田と連携して米軍機が動いていると。ましてや、その地下に立派な施設があるといううわさだってあるんです。
 地下に施設、ありますか。確認していないからわからない、そんな答弁じゃだめですよ。少なくとも、ある程度、こういう施設がありますというぐらいは米軍から聞くなりしないと、所沢市民は納得できないですよ。ただ、あります、しかし、いざとなったらテロの標的になるかもしれない、どんな役割なのか、それがわからないでは住民の皆さんも納得しませんし、私も納得しません。もう一度ちょっと答弁をお願いします。

○大古政府参考人 建物につきましては、通信局舎等六棟が所在するということで我々は把握しているところでございます。ただ、先生御指摘の地下施設、そこのことについては、詳しいことは承知していないということで御理解いただきたいと思います。

○木下分科員 そうすると、あそこには、私も何回も外から見ているんですが、あそこで働いている米軍は見たことはありません。それから日本人の労務者、私も承知していないんですが、この辺は把握していますか。

○冨永政府参考人 所沢通信施設におきます米軍人の人数につきましては、私どもは把握しておりませんけれども、同施設で勤務する駐留軍等労働者、この人数につきましては、本年の一月末現在で二名という状況でございます。

○木下分科員 日本人労務者が二名ということですか。米軍については把握できないということですが、把握できないということはどういうことなんですか。要するに、地元の皆さんにこれは説明できないんですよ。何人いるかわからない、人がいるのかいないのかわからないんじゃ困るんです。人数なんか確認して、別にそんなものは防衛機密でもなければ、沖縄なんか全部出していますし、何で所沢だけ出せないんですか。いないならいない、はっきり確認していませんか。

○冨永政府参考人 米軍の方から、所沢通信施設におきます米軍人の数について公表しておりませんで、私どもの方も把握していないという状況でございます。

○木下分科員 大臣、どうなんですかね。少なくとも、市民に協力を求める、しかも、市の中心部にあれだけ広大な施設を提供しているわけですね。人数もわからない、その業務もわからない、しかし市民の皆さん、提供してくださいよ、こんなものでいいんですか。

○石破国務大臣 これは所沢に限らずだと思いますが、正確な人数というものについて、合衆国の側からは公表いたしておりません。これは私の推測でございますけれども、人数等々につきましては、これはやはり公表ができないという性質のものであるというふうに理解をいたしておるところでございます。

○木下分科員 こういった施設というのはやはり地域住民の協力がないと、施設だけあったって、いざというときには本当の防衛にはならないわけです。その辺も含めて、正確に何人とかそこまでいかなくても、少なくとも常駐は何人ぐらいいますよ、あるいは、いないならいない、何とかそのぐらいは把握してもらいたいなと思うんですが、この所沢の通信基地について、日本政府は、これまでアメリカ側に対して、正式に返還要求をされたことはございますか。

○大古政府参考人 所沢通信施設につきましては、所沢市、あと埼玉県の方から施設の全面返還の要請がございます。ただ、仮に早期の全面返還が困難な場合には、当面の重要課題として……

○木下分科員 ちょっと待ってください。そんなことを聞いているんじゃなくて、要するに、日米間で、この所沢通信基地が交渉のテーブルにのったことがあるかどうか、そこを聞いているんです。

○持永主査 正確に答えてください。

○大古政府参考人 交渉のテーブルという意味では正式に協議したということはございませんが、所沢市の方の要請として、東西道路の建設等ございます。それにつきましては、米側にお話しして、地元の要望を伝えているという状況にございます。

○木下分科員 この問題に対しては、埼玉県の土屋知事が非常に熱心でございまして、アメリカへも何回も行って交渉していますが、それは承知しておりますか。

○大古政府参考人 埼玉県知事の方も熱心にこの問題を進められているということは、よく承知してございます。

○木下分科員 とすれば、それをバックアップする形で、日本政府がこの所沢通信基地について、全面にしろ一部にしろ、市民の要望としてアメリカ側に正式に伝えたことがありますか。返還してくれという形で要求したことがございますか。

○大古政府参考人 東西連絡道路の整備のために一部返還してほしいという地元の要請につきましては、米側に伝えてございます。ただ、米側の方からは、通信施設の運用に支障を来すおそれがあるとの懸念が示されておりまして、いろいろ困難な問題があるということで感触を得てございます。
 ただ、防衛施設庁といたしましては、何とか工夫することはできないかという観点から、県及び市と今鋭意調整しているところでございます。

○木下分科員 その東西連絡道路について、米側に要請した日にちはわかりますか。いつですか。

○大古政府参考人 最近において、累次の機会に、事務的に接する場において地元の要望を米側に伝えております。

○木下分科員 どうもはっきりしない。いろいろ全国にありますよね、その在日米軍基地について本当に正式に一括して言ったのか。例えば所沢だけを取り上げて、東西道路の連絡、そこだけを返還してほしいという要望があると具体的に要請したわけでございますか。その辺、もうちょっと詳しく。

○大古政府参考人 今の御質問の点については、東西道路の整備のための一部返還について、具体的に地元の要望を米側に伝えているということでございます。
 今、所沢市の方でも、いろいろ連絡道路のための計画をつくられておりますけれども、その資料等につきましても米側に伝えているところでございます。

○木下分科員 地元としては、これまで、市、市議会、基地対策協議会の三者が連携しながら、基地の全面返還に向けて長い運動を続けてきたわけでございます。これは全面返還だけでなく、その過程として、今お話が出たように、当面は部分返還として、東西連絡道路用地の返還、二番目として、文教道路線拡幅用地の返還、三つ目に、日米共同使用スポーツ広場用地の開放、この三つをとりあえずできるだけ早く返還をしてもらいたいということで要望しているわけです。そうすると、このうちの東西連絡道路についてのみ要請をしたということでございますか。その他の二点については要請はしていますか。

○大古政府参考人 御指摘の三つの事案についての一部返還要請について、米側に伝えてございます。
 ただ、東西道路については特に優先するということでございますので、そういう観点から米側に伝えてございます。

○木下分科員 それに対するアメリカ側の答弁としては、非常に難しいということでございますか。
 そうすると、ほかの二点、もちろん三つ一遍にやれればいいんですが、もしそれが無理だとすれば、例えば違う二点について、できるだけ返還できるものから進めるということは考えておられますか。

○大古政府参考人 ただいま申しましたように、三つの事案について米側に伝えてございますが、特に優先するということで、東西道路の建設が必要であるということで所沢市から聞いております。
 防衛施設庁といたしましては、先ほど申しましたように、米側からは運用上困難であるという回答がございますけれども、何とか知恵が出ないかということで、今鋭意、所沢市、埼玉県と調整している、こういう状況でございます。

○木下分科員 そうすると、今年度予算で防衛施設庁が、東西連絡道路を想定した基地の現況図面の作成などのための調査経費として予算要求しておりますね。その額と調査目的及び今後の見通しについて、できるだけ具体的にお話しいただきたいと思います。

○大古政府参考人 まず、金額につきましては、約五百万円でございます。
 この調査目的につきましては、先ほど言いましたように、東西道路の建設について防衛施設庁としても所沢市等と調整いたしますので、基地の中の状況をまず知る必要があるだろう、こういう観点から、現有建物等の現況なり配置状況等を調べるために調査したいと考えているものでございます。

○木下分科員 この予算がついたということについては一歩前進ということで、私どもあるいは地域住民の皆さんは非常に喜んでいます。これによって、交通渋滞がかなり解消されるんだと。あそこは非常に回りますので、しかも、住宅地が密集している、しかも、先ほど言ったように、行政の中心があそこにあるわけですから、土地開発にとって大変大きな障害になっている。
 ですから、この予算が五百万円つくということであれば、これを継続して何とか一刻も早くその道路だけでも通してもらう、これをできるだけ強く米側に要請してもらいたいと思うんですが、大臣、ひとつその点、よろしくお願いしたいと思います。

○石破国務大臣 先ほど来お答えしておるとおりでございますが、確かに五百万という予算がついた。これは、米軍の方にもいろいろと難しい事情はあるということは承知をいたしております。しかし、一方において、所沢市にそういうような非常に強い御要請があるということでございます。その両方のニーズを何とか満たすようなことはできないものだろうか。
 基地の重要性というものにつきましては、個々詳細に私どもも、かくかくしかじかこういうわけでということまで全部了知しておるわけではございません。そこには一定の限界がございます。しかし、その基地のニーズというものと所沢市の皆様方の御要望というものをどういう形で両立をさせるような工夫ができるかということにつきまして、鋭意検討してまいりたいというふうに思っておりますので、御指導賜りますようお願いを申し上げます。

○木下分科員 この問題につきましては、住民の中にも、あれだけ中心部にありますので、どこかにこれを移設できないだろうか。埼玉県にはゴルフ場がいっぱいあります。もうゴルフも大分下火になっていますので、例えばゴルフ場とあそこと交換できないのかという要望もあるんですが、ぜひこの辺も含めて、とにかく、あそこの市の中心地だけは何としても返してもらいたい。代替施設はまた考えるとしても、それだけの要望があるということだけお伝えしておきますので、ひとつ、これも含めて御検討をお願いしたいと思います。
 それから、時間があれですので、最後の質問です。
 今、入間市に入間航空自衛隊基地がございます。あそこから発着する航空機が、実は所沢市上空を時々通るんですね。騒音、相当すさまじいものがあります。学校の教育現場、家庭においても、テレビの電波が乱れる、あるいは電話がよく聞き取れないとか、そういった問題が発生しております。
 この入間航空基地の飛行機が所沢市上空を通る、これは通常の運用ルートになっているのかどうか、この騒音について、何らかの調査あるいは改善を考えておられるかどうか、今後の見通し等についてお伺いして、質問を終わりたいと思います。

○西川政府参考人 お答え申し上げます。
 先生、今、入間飛行場の、まず一つは、入る飛行機が所沢市の上空を通るかということでございますが、これは結論から申しますと、所沢市内の上空を一部通るという形で、いろいろなコースがございますが、それぞれ一部通るという形で今設定されておるところは間違いないところでございます。これにつきましては、市民の方々からも、騒音とかそういう問題でいろいろ電話とか連絡とかいただいておりまして、去年も約二百件ぐらい参っておりますが、こういうものも過去いろいろございました。
 そういうことで、先生御案内かと思いますが、こちらの方から地元の市町村の方に、騒音問題も含めた形での、いわば使用上の自主規制と申しますか、そういうことを示したもの等もやっております。余りくどくど申しませんが、使う時間帯だとかあるいは曜日、そういうものを我々なりにいろいろ改善して頑張っているところでございますが、何せ、今現在、先生、あそこの入間基地と申しますのは、一日平均で約六十回の離着陸がございます。我々にとっても大変重要な基地でもございますので、市民の方にも御理解いただきながら、我々としても、こういうことについては、また今後ともいろいろ声を聞きながらやっていきたいと思いますので、どうぞ御理解のほどをお願いいたしたいと思います。

○木下分科員 運用の時間の問題とか、その辺も調整しながら、できるだけ住民の皆さんに被害が及ばないように、ぜひとも改善をしていただきたいと思います。
 それと、繰り返しになりますが、所沢の米軍基地につきましては、何らかの前進ある交渉をぜひともお願いしまして、質問を終わりにします。ありがとうございました。

○持永主査 これにて木下厚君の質疑は終了いたしました。
 次に、東門美津子君。

○東門分科員 冒頭、申しわけありません、これは通告はしてありませんが、一点、お伺いいたしたいと思います。
 勝連町のホワイトビーチに、米海軍佐世保基地所属の強襲揚陸艦エセックスが、本日正午過ぎに寄港したとの報道があります。昨日は、ドック型輸送揚陸艦ジュノーとドック型揚陸艦フォートマクヘンリーも寄港していて、いずれの艦船も三月一日に出港予定と見られているわけです。米軍は、フィリピン軍と合同で、三月にフィリピン南部のホロ島を中心に、イスラム過激派アブサヤフの掃討作戦を実施すると発表しています。作戦に参加する米兵は、在沖米軍が主力となるようです。
 また、アメリカ側は、米軍が直接戦闘に加わることもあるとしています。実際に戦闘に参加するとなると、それは日米間の事前協議の対象となると思いますが、今、この時点で、どのように外務省は把握しているのか、お聞かせいただきたい。また、事前協議はなされたのでしょうか。

○海老原政府参考人 今の東門委員のお尋ねに、一番最後のところからお答えを申し上げますと、事前協議は行われておりません。
 それから、フィリピンの件でございますけれども、私、ちょっと今資料が手元にございませんけれども、私の記憶では、これはフィリピン政府の要請によりまして、主にあそこのテロ対策というか、そういうものについて、従来から米軍が、例えば何らかのアドバイスを与えるとか、そういうようなことで、共同のオペレーションといいましても、助言とかそういうことだったと思いますけれども、そういうものをバリカタンというような名前で行ってきたというふうに承知をいたしております。
 今回のものは、今、掃討作戦を行うというお話でしたけれども、そのようなことについては、基本的には軍事的なオペレーションの問題でございますので、私どもは、その詳細につきましては承知いたしておりません。

○東門分科員 掃討作戦ということは承知していないという答弁だったのでしょうか。あくまでもこれは訓練だという理解なのか。ちょっと、私、そこのところを取り違えました。済みません、もう一度お願いします。実戦ではないということなのかということです。

○海老原政府参考人 私が申し上げましたのは、実戦か否かということも含めて、我々は承知していないということでございます。

○東門分科員 今の件、わかりました。
 引き続き、ホワイトビーチの件なんですが、今、ホワイトビーチは、桟橋の拡幅が計画されております。現在ある桟橋が拡幅されるということなんですが、それを日本政府が総事業費約三十五億円を支出して、二〇〇四年度末までに完成させるということです。これは思いやり予算ということになると思うんですが、この桟橋は米軍の原潜が寄港する際に使われております。
 先ほど私が申し上げました、今回はエセックス等ももちろんそこに入港しておりますが、原潜も寄港している。そういうときに使われるものですが、地元では、施設が拡充されることによって、原潜寄港がふえ、事実上の母港になってしまうのではないかと懸念しており、思いやり予算がこのような米軍の機能強化に使われることに非常に疑問を感じています。桟橋の拡幅によって原潜の寄港が増加することはないのでしょうか、お答えいただきたいと思います。

○嶋口政府参考人 お答えいたします。
 先生御案内のとおり、桟橋の拡幅を今計画している、十四年度に着手して十六年に完成する予定でございますが、この目的は、現在の桟橋が非常に狭いということで、荷物の積みおろしなどに非常に不便を感じている、それから、一部桟橋が老朽化しておりまして危険でもあるということから拡幅するというものでございまして、特に原潜云々とか、そういうふうな目的で拡幅をやっているものではございません。

○東門分科員 あくまでも荷物の積みおろし、そして大型の艦船が入ってくるからそのために必要だというふうに理解して、米軍ともそういうふうになっているということですね。はい、わかりました。
 その桟橋の拡幅工事の場合ですが、これはくい打ち方式でなされるということですが、横須賀の十二号バースもくい打ち方式ですが、その拡張工事の際には、横須賀の場合、工事する場所の海底の汚泥が噴き上げられて、汚染がかなりひどい状態であるということが報道されております。
 ホワイトビーチの場合、同じように拡幅工事をくい打ちでなさるわけですが、そのとき、汚染の状態がどうなっているのか、その周辺の魚介類への影響あるいは環境への影響、そういう調査はどのようになさるのか、それもお聞かせいただきたいと思います。

○嶋口政府参考人 お答えいたします。
 あらかじめ調査をやっておりまして、その上で本格工事に着手しておるところでございますけれども、特に汚染とかそういうものについては何ら報告を受けておりません。
 横須賀についても先生御指摘がございましたけれども、横須賀の場合は、汚染物質が出ていましたので、全部取り囲んで、一切そういうものが漏れないよう、所要の措置をとってあると思います。
 いずれにいたしましても、汚染等の問題が生じましたら、万全の措置を講じてやっていきたいと思います。

○東門分科員 ぜひ、環境への影響ということを考えていただきたいと思います。
 次に、日本人警備員の銃携帯について伺います。
 今、沖縄は、また九・一一の後を思わせるような状況が起こりつつあります。イラク問題あるいは北朝鮮問題など、そういう国際情勢の緊迫化に伴う米軍基地の警備態勢が強化される中で、非常に大きな問題が生じていると言えると思います。その一点、基地の日本人警備員の銃携帯の拡大の問題です。
 海兵隊の基地では、これまで日本人警備員が銃を携帯させられていたのは辺野古弾薬庫と泡瀬通信施設だけでしたが、海兵隊は昨年十月から、段階的に銃携帯を全基地に拡大する方針を打ち出しています。確かに、一九五七年に締結した日米の労務契約では、日本人警備員が小型武器を携帯、訓練することもあるとされていますが、銃社会のアメリカと違い、日本では一般国民が銃に触れるようなことはほとんどなく、瞬時に発砲するかどうかを軍人でもない警備員に求めるのは酷であります。
 銃を持っていることで、逆に相手から先に撃たれる危険も大きいのではないでしょうか。また、相手を撃ってしまった場合も、警備員個人が、人を撃ったという心の傷を負わされることにもなります。何よりも私が気になるのは、民間人である警備員が、米軍人を守るために最前線に立たされるという危険、それを背負わされるというのが問題だと思います。
 基地がテロに襲われた場合、銃で守ることはできるとは思えません。持たせる意味が本当にわからないんですね。それどころか、むしろ持っているということで、過去には銃を奪う目的で傷害事件も起きていて、警備員に危険を招く、そういう要因になると思われるのが強いのです。
 日本人警備員の銃携帯を拡大するという米軍の方針を政府はどのように受けとめているのでしょうか。方針を撤回するよう米軍に要請するつもりはないのでしょうか。これは北米局長に伺いたいと思います。そして、石破長官にも伺いたいと思います。お二人からお願いします。

○海老原政府参考人 今お尋ねの件でございますけれども、これは特に法的なことをお尋ねになっているわけではないと思いますけれども、地位協定上はこれが認められているということでございまして、基本的には、米側がいわゆる管理権の範囲で判断をしているということだろうと思います。
 他方、日本人の警備員に銃を持たせるということにつきましては、昭和二十七年の合同委員会の合意もありまして、必要最小限にするというようなこと、それから、取り締まり、管理については、しっかり米側の方でそれを実行するというようなことも合意されておりまして、間違っても事故あるいは事件につながらないようにということで運用されてきているというふうに承知をいたしております。
 他方、警備活動におきまして、周辺住民の方々に対しまして無用な不安感を与えてはならないということも非常に重要な点だと思っておりまして、この点については、米側においても配慮をすべきだというふうに我々も考えております。

○石破国務大臣 今、北米局長が答弁をしたとおりかと思いますが、要は、どちらの方がテロに対して抑止力を持つのかなということなんだろうと思います。法的な問題は、今答弁がありましたように、地位協定三条というのは御案内のとおりです。
 そうしますと、委員が御指摘になったのは、私も過去の事例は知っておりますが、銃を持っているがゆえにそれを奪われるような事故があったではないか、確かにそのとおりです。しかしながら、銃を持って、もちろんその使用権限は正当防衛、緊急避難に限られるわけでありますけれども、銃を持っているがゆえに襲われなかったというのは、表に出てこないわけですね。銃を持っているから、警備員の方が銃を所持しているから襲われなかったという場面も、私は、数字になって出てこないけれども、それはあるのだろうと思っています。
 要は、住民の方に不安を与えないようにということは極めて重要なことで、考えなければいけないことですが、どうすれば安全であるのかというのは、アメリカの一つのポリシーの問題なのだろうと思っている。そちらの方が安全である、テロに襲われないという判断なんだろうと思っています。
 私は、沖縄におきましてこういう御議論があることを承知しています。すなわち、銃なんかじゃだめなんだ、こん棒で十分なんだ、警棒で十分なんだ、こういうような御議論があることも承知をいたしております。
 しかし、私は、同時に、銃を持っているからこそ安全なんだということもあるんだろうと思うんですね。警棒で十分なんだということが、これはまだ私は不勉強なのかもしれませんが、どういうふうな形でそれが、証明と言ってはいけませんが、警棒よりも銃の方がむしろ抑止力としてはきくのではないか。
 ただ、これは米軍のポリシーの問題でございますから、私どもがとやかく申し上げることではない。法令上は、今北米局長が答弁したとおりだというふうに思っているわけでございます。

○東門分科員 いや、私が長官に本当にお願いしたいことは、今の長官の答弁はよく承りましたけれども、民間人が軍人を守るのに銃を持っているということに、すごい奇異な思いがあるんですよ。沖縄に行ってごらんになるとわかると思うんですが、本当にそういう状況を目の前にしたときに、えっ、ここは何なんだろう、これは本当に米軍基地なのかと思うような状況も結構あるんですね。
 そういうときに、民間人は銃を持たないでこれまでずっと来た。こういう九・一一の後、あるいは今回の場合にそれが強化されてくるということになると、やはりそれは住民には物すごい不安感を与えますし、むしろ、先ほども言いましたように、民間人が軍人を銃を持って守る、これはやはりどう考えてもおかしい。
 むしろ、長官の立場で、米軍の方にそういうのは申し入れていただいて、廃止していただけないかということを私は申し上げたかったんですが、長官の答弁は聞きましたので、また同じことの繰り返しになるかもしれませんから、これはここで終わります。
 続けます。基地従業員の給与は、思いやり予算により日本側が負担しているわけですよね。それなのに、人事管理権は米国側にある。これまでも、理不尽な扱いを受けることもしばしばありました。政府は、日本人従業員の安全確保についてもっと注意を払うべきだと思います。昨年四月からは、県の機関委任事務だった基地従業員の労務管理事務が国の直接事務となり、独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構に移管されました。ということは、国の責任は一層重くなっているわけですよ。
 この銃携帯の問題だけでなく、基地従業員の安全確保と労働者としての十分な待遇の保障について、政府の取り組み姿勢を伺いたいと思います。

○嶋口政府参考人 今の御質問の前に、一言補足的に説明させてください。
 確かに先生おっしゃるとおり、軍人ではないという意味では民間人ということでございますけれども、警備員でございまして、きちんと訓練をしております。特に、銃を撃つということになると、やはり非常に難しゅうございますから、きちんと訓練してくださいと。それから、暴発事故もありますし、先生おっしゃるとおりです。その都度、私どもはかなり強く申し上げています、安全対策を徹底してほしいと。
 それから、特に九・一一以降、なかなか厳しい状況にあるということで、私どもも、まず、米軍自体もありますけれども、日本人従業員の安全対策について万全を講じてほしいということも何回も申し上げておりまして、先生おっしゃるとおり、万全を期してやっていきたいと思っております。
 保障の問題等につきましても、個々別々の話がございますけれども、その都度、やはり私ども日本人でございますので、基地従業員の立場に立って申し上げているという状況でございます。

○東門分科員 次に、神奈川県内の在日米軍施設の返還について伺います。
 日米両政府は、二月二十一日、日米合同委員会施設調整部会を開いて、神奈川県内の四つの在日米軍施設の返還についての協議を開始しています。返還協議の対象は、上瀬谷通信施設の一部、深谷通信所、根岸米海軍住宅及び富岡倉庫地区であり、合計で約二百五十ヘクタールになるようです。遊休地が返還されるのは大変結構なことですが、報道によりますと、無条件の返還ではなく、米側から何らかの見返りが求められる可能性も指摘されています。九九年にも、米軍側から、横浜市内の複数施設を返還するかわりに上瀬谷通信施設内に軍人用住宅をつくることを求められたとのことのようです。
 しかし、在日米軍施設は安全保障のために必要な施設ですから利用が認められているわけであって、必要がなくなれば当然その施設は返還されるべきものであり、返還するからといってその代替地、見返りを求められるような性格のものではないと思います。米軍が既得権を持っていると考えているようであれば、それは大きな間違いです。
 政府は、これらの施設の返還について、どのような方針で臨むおつもりですか。米軍に何らかの見返りを与えることも考えているのでしょうか。それと同時に、そういう要求があったかどうかも含めてお聞かせいただきたいと思います。

○嶋口政府参考人 それは、二十一日に第一回の会合を開きました。その際は、日本側からの事情、返還要望等ございましたが、その事情を説明しました。第二回についてはまだ決まっておりませんけれども、米側の方から一応の話が来るだろうというふうに思っています。
 いろいろ報道等もございますように、見返りというのは若干品がないんですけれども、当然アメリカとしてもいろいろな要望が出ているわけでございますから、その中でいろいろな話が出る可能性は否定できません。それにつきましても、私どもきちんと話をして対応してまいりたい、このように考えています。

○東門分科員 第一回では出なかった。ですけれども、二回目からはどうなんでしょうか。これから出てきたとき、どういう方針で臨みますかということです。済みません、ちょっとそこが私は聞けなかったかもしれません。もう一度、お願いします。どのような方針でそれには対応していかれますかということです。

○嶋口政府参考人 まだ米側から具体的に提案がございませんけれども、私どもは、やはり遊休地化しているという指摘もありますので、その点、米側としては今後この施設、どういうふうな利用を持っているのとか持っていないとか、その辺を明らかにしながら、その中で米側から適切な話があれば、それは私ども真剣に検討していく、こういう方針でございます。

○東門分科員 いろいろ飛ぶようですが、那覇軍港の施設についてもお伺いしたいと思います。
 ことしの一月二十三日、那覇港湾施設移設に関する協議会において、新軍港の位置と形状が正式に了承されました。
 新軍港は、面積は三十五ヘクタールとなり、今の施設の三分の二程度に縮小されますが、水深は逆に深くなり、より大きな排水量の船も入港可能となります。港内での展開できる船の長さも、現在百五十メートル程度までの船に限られていたのが、新軍港では三百メートル級の船の展開も可能になると報道されています。この結果、大型の貨物船や揚陸艦の入港も可能であり、地元では、軍港の機能強化につながるのではないかとの懸念も聞こえてきます。また、原子力潜水艦や空母が入港してくるのではないかと心配する声も多く出ています。これは本当に笑えないことなんですよ、沖縄県民にとっては。
 このような懸念を払拭するためには、使用協定の締結が最も有効だと思われます。この問題について石破防衛庁長官は、一月三十日の参議院予算委員会で、移設に当たっては、現有の那覇港湾施設の機能を確保するということが前提になって合意がなされているわけであり、新しい協定を結ぶ必要性を今のところ認識していない旨の答弁をしています。
 この答弁によれば、政府としても現状維持が前提となっているということを認めているわけであり、それなら、住民の懸念を払拭して、安心して生活できるようにするため、使用協定を締結して、この現状維持という前提を文書で確認してもよいのではないでしょうか。
 もう一度、済みません、御見解を伺いたいと思います。石破長官にお願いします。

○嶋口政府参考人 御指名でございますので、お許し願いたいと思います。
 先生御案内のとおり、那覇港湾は、現在使われているのは米軍が必要とする人員、物資の積みおろしということでございます。そして、これを強化するなりなんなりして、例えば空母が入るとか原潜が入るとか、そのような目的で使われておりません。これは、維持されているということでございます。
 そういうことで、日米間で話がついておりまして、言えば右から左に移すものでございますから、現在、那覇港湾については使用協定はございません。したがって、私ども、使用協定を改めて結ぶ必要はないと思っております。
 ちなみに、移設先の浦添市長さんもその使用協定というものは必要はないではないか、こういう立場でございますので、御参考までに申し上げます。

○東門分科員 右から左に移すものであるから、現在使用協定も結ばれていないから、右から左へ移すときにはそれも要らないと思うという今の御答弁だったと思うんですが、現在右にあるものが左へ移るとき大きくなっていく、水深も深くなっていく。それは、機能がかなり強化されていく、大型の船も入ってくる、場合によっては原潜もというのが地元の不安なんですね。
 そういう中であれば、文書を交わすこと、それは大きな問題ですよ、国と国とのことですから。しかし、本当にそれだけですよということであれば、しっかりそれを県民に、地元の人に知らせるという義務があると私は思うんですよ。そういう意味で伺っているわけです。
 もう一度、お願いします。

○嶋口政府参考人 県民とか関係住民の方々にそういうことについてお伝えしていくことは大事だと思っています。そういうことで、先生御案内のとおり、移設協議会がございまして、その移設協議会の場で私ども、今申し上げた考え方もはっきり申し上げていますので、そういう場を通じながら不安がないように、不安解消について努めてまいりたいと思います。

○東門分科員 ということは、万が一、右から左へ移しただけではなかったという場合は、政府が全責任をとりますということなんですね。

○嶋口政府参考人 若干補足して説明させていただきますと、確かに面積は大幅に減っているんですね。それで、水深が二メートルぐらい上がりそうだということでございますけれども、これは荷物の積みおろし、運搬は主に民間に委託している、輸送会社ですね。そうすると、近代の傾向として、だんだん大型化してきているということでございまして、運ぶ船が大きくなっているということで水深が深くなる必要があるのかということでございまして、それは何も原潜だとか空母だとか、そういうことを目的として深くしているものじゃございませんので、その点は改めて御説明したいと思います。
 それから、万一といいますか、やはり日米間は信頼関係でやっておりまして、もし重要な変更があれば、それはそのときにきちんと日米間で協議させていただくということになろうかと思いますので、その点の御懸念はないと思います。

○東門分科員 最後の方がとても気になるようなことだったんですね。万一といえば日米間ですからという言い方。
 だから、いつも言うんですよ。政府の姿勢を見ていますと、いつも米軍の方ばかり見ている。現実に基地の、本当に隣り合わせに生活をしていかなければならない、そういう住民のことは常に後回しになっているように感じられるんです。今の施設庁長官の答弁もそうだと私は思うんですよ。この那覇軍港の使用協定の問題、それへの対応を見ましても、できる限り米軍の行動を制約したくないという意図が私には感じられてなりません。それでは、住民の立場はどうなるんでしょうか。
 日本の政府である以上、日本国民のことをまず第一に考えるべきです。使用協定の締結で住民が安心できるのであれば、政府としては当然、締結を求めていくべきです。
 現状維持が前提になっており、使用協定を締結してもしなくても現状が変わらないというならなおのこと、使用協定締結に支障もないと思われるんですよ。長官、済みません、その件については長官からお伺いいたしたいと思います。

○石破国務大臣 先ほど、参議院の予算委員会におきます私の答弁を引用していただきました。私は、この件につきまして、何ら、今の施設自体が古いものであって、相当運営に支障を来している。運営に支障を来しているということは、日本における米軍の機能に支障を来しているわけですから、その点の改善は図っていかねばならない。今回はそういうものだと思っております。現在においても、果たすべき機能、しかし果たしておらないもの、それを新しく代替してやっていこうというものであって、本質が何ら変わるものではございません。
 ただ、委員が御懸念のように、これは住民の方々が不安を持たれるということであるとするならば、それを払拭するような手だては政府としてやっていかねばならないと思います。しかしそれが、そういうような協定を結ぶということだけがすべてだとは思っておりません。今の中身が変わらないのであれば、私ども政府として、住民の方々に御理解いただくように、どのようなことがあるのか、今後とも努力をしてまいりたいと思っておるところでございます。

○東門分科員 今の答弁の中で、協定は結ばない、必要はないということだと思うんですが、それであっても、ほかの方法で、ちゃんと住民の不安、そういう懸念を払拭するような形をとっていきたいというふうに理解してよろしいんですよね。
 余り時間がありませんので、少しだけですが、名護市のレンジ10の件について、ちょっと伺いたいと思います。
 これは、私も、せんだっての沖北でのやりとりを聞いておりますので、大体はわかります。細かいことは聞きませんが、ただ一つだけ。
 いろいろ出ていますから、もう重複はしないようにしますけれども、実際にこれは原因がわかっていない、究明されていないのに訓練の再開に踏み切ったということ、これはどのようにとらえたらいいのかわからないんですよ。これまでずっと、大臣も、川口外務大臣も、あるいは防衛施設庁の皆さんも、やはり原因を究明するまで訓練は中止させます、そういうふうに申し込みますと言ってきた。それが、ここまで来ても、わかりませんと。県警もやりました、アメリカ軍もやりました、しかし、原因はわかりませんと。
 ですから、軍の訓練の練度を高めるためにはやらなきゃいけません、そういうふうに簡単に再開に踏み切ってしまう、そういう政府の姿勢には大きな疑問符をつけたいと思うのです。なぜ、原因が究明されないうちに、アメリカに対して、アメリカ軍に対して、待ってくれと言えないんですか。済みません、これは長官、どうでしょうか。2プラス2等で協議される場もあるわけですから、ぜひお願いします。なぜなんでしょうか、原因究明なしに。

○嶋口政府参考人 やはり、いかなる訓練といえども住民に危害を与えてはいけないということで、安全対策でございます。原因究明ということを申し入れました。私ども、強く申し入れました、原因究明をしてほしいと。しかし、その究極の目的はあくまでも安全対策です。したがいまして、原因究明もやりました、海兵隊もまた県警も非常に協力して。私ども、さまざまな形でこの原因究明についても協力してまいりました。
 他方において、米軍の方から、これまた違った安全対策、抜本的な安全対策。簡単に言いますと、機銃をロックしてしまって一切動かないようにするということであれば、それはそれに対して十分な安全対策でございますので、安全対策が講じられているということにかんがみて、今回訓練を再開するのはやむを得ない、このように判断した次第であります。

○東門分科員 済みません。もうそろそろ時間がないようです。切れちゃいましたけれども、今の答弁でちょっと気になることがあったんですけれども、銃は動かないと。訓練はできるんですか、動かなくても。というか、弾は出ていかない、それでも訓練できるということですか。ちょっとそこのところがよく理解できない。
 私は、安全対策で事故は一〇〇%起こらないだろうと。これはロニー・ヤーウェル外交政策部長が発言しているんですが、安全対策は、原因究明して初めて、それに対して安全対策をとられるのであって、そういうことがわからないで、安全対策は一〇〇%大丈夫です、だから事故は起こらないと。
 では、事故が起こったとき、どういうふうに責任をとられますか。

○嶋口政府参考人 少し説明不足でございました。
 銃をロックすると言ったのは、銃座で周りを固定する。したがって、仰角、方向が一定でございます。その中で、スポットをつくってそれだけで撃つということをやっていますから、ほかにいわば跳弾のような形というものはまずあり得ないという意味で、今後、訓練した場合でも、跳弾とかそういうものは出ませんので、そういう意味では安全は十分である、このように認識した次第であります。

○東門分科員 いや、私は、万が一事故が起こったときには責任はどうとりますか、それを聞いたんです。

○嶋口政府参考人 まず、絶対事故が起きないことを強く期待しております。

○東門分科員 終わります。

○持永主査 これにて東門美津子さんの質疑は終了いたしました。
 次回は、明二十八日午前九時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時六分散会