156-参-憲法調査会-1号 平成15年02月12日

平成十五年二月十二日(水曜日)
   午後一時二分開会
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   委員氏名
    会 長         野沢 太三君
    幹 事         市川 一朗君
    幹 事         武見 敬三君
    幹 事         谷川 秀善君
    幹 事         若林 正俊君
    幹 事         堀  利和君
    幹 事         峰崎 直樹君
    幹 事         山下 栄一君
    幹 事         小泉 親司君
    幹 事         平野 貞夫君
                愛知 治郎君
                荒井 正吾君
                扇  千景君
                景山俊太郎君
                亀井 郁夫君
                近藤  剛君
                桜井  新君
                世耕 弘成君
                常田 享詳君
                中島 啓雄君
                中曽根弘文君
                服部三男雄君
                福島啓史郎君
                舛添 要一君
                松田 岩夫君
                松山 政司君
                伊藤 基隆君
                江田 五月君
                川橋 幸子君
                木俣 佳丈君
                高橋 千秋君
            ツルネン マルテイ君
                角田 義一君
                松井 孝治君
                若林 秀樹君
                魚住裕一郎君
                高野 博師君
                続  訓弘君
                山口那津男君
                宮本 岳志君
                吉岡 吉典君
                吉川 春子君
                田名部匡省君
                松岡滿壽男君
                大脇 雅子君
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   委員の異動
 一月二十日
    辞任         補欠選任
     続  訓弘君     椎名 一保君
 二月十日
    辞任         補欠選任
     松井 孝治君     広中和歌子君
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  出席者は左のとおり。
    会 長         野沢 太三君
    幹 事
                市川 一朗君
                武見 敬三君
                谷川 秀善君
                若林 正俊君
                峰崎 直樹君
                山下 栄一君
                小泉 親司君
                平野 貞夫君
    委 員
                愛知 治郎君
                荒井 正吾君
                亀井 郁夫君
                近藤  剛君
                椎名 一保君
                世耕 弘成君
                常田 享詳君
                舛添 要一君
                松田 岩夫君
                松山 政司君
                伊藤 基隆君
                江田 五月君
                川橋 幸子君
                高橋 千秋君
            ツルネン マルテイ君
                角田 義一君
                広中和歌子君
                若林 秀樹君
                魚住裕一郎君
                山口那津男君
                宮本 岳志君
                吉岡 吉典君
                吉川 春子君
                松岡滿壽男君
                大脇 雅子君
   事務局側
       憲法調査会事務
       局長       桐山 正敏君
   参考人
       社団法人日本経
       済団体連合会専
       務理事      矢野 弘典君
       日本労働組合総
       連合会事務局長  草野 忠義君
       日本労働組合総
       連合会企画局長  熊谷 謙一君
       社団法人アムネ
       スティ・インタ
       ーナショナル日
       本理事長     和田 光弘君
       社団法人アムネ
       スティ・インタ
       ーナショナル日
       本事務局長    寺中  誠君
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  本日の会議に付した案件
○日本国憲法に関する調査
 (基本的人権)

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○平野貞夫君 失礼しました。難しいつもりでやったわけじゃないんですが、あらゆるものについて最優先するということじゃございませんよ。市場経済原理より上に置くべきだということだと。それから、日本経済連がこの問題についてまともにやっぱり議論していないとすれば私はおかしいと思うんですよ。今一番大事なことだと思います。
 それから二番目に草野参考人にお尋ねします。

○会長(野沢太三君) 草野参考人。──そのままいいですか。

○平野貞夫君 ええ、結構です、時間がありませんから。いずれまた番外でやりますから。
 もう一つ、私たちの憲法原理の一つは、勤労者の社会的あるいは政治的、経済的な権利を拡大する。拡大するというのは、国家権力に対立するとか経営者に対立するという意味でなくて、そういう対立する意味でない拡大は市場経済の発展とデモクラシーの健全化に欠かせない原点であると思うんです。こういうことも憲法の、私たちが志向する憲法の原理の一つに入れたいと思うんですが、そのことについて御意見を。

○参考人(草野忠義君) 今、平野先生から御指摘のあった新しい憲法を作る基本方針ということにつきましては勉強をさしていただいたつもりではおりますが、なかなか、中身までどうかと言われると立場上なかなか難しい部分があると思いますが、最初に国及び国民の在り方についてというところからたしかこれは始まっていたと思いますし、そういう中で、市場経済が発展をする、ある意味では行き過ぎになる、それから一方でこの民主主義というものが少し形骸化をしていく、そういう中にあって、この働く人たちの権利を拡大することによってそのバランスを取るという意味でございましたら、私どもはその方向で進むべきだ、こういうふうに思っております。

○平野貞夫君 ありがとうございます。
 私たちの考え方は、やはり広い意味で働く人が資本主義を支え、そしてデモクラシーを支える時代になったと、あるいはしなきゃ駄目だと。特定の権力を持っている人間が、官僚なり特定の族議員がそういうもののイニシアチブを取るんじゃなくて、そういう意味でのことでございまして、健全な市場経済というものなくして我々の幸せもないわけでございまして、そういう思いからでございました。
 それからもう一点、草野参考人にお尋ねしますが、私、専門的な知識がなくて大変よく分からないんですが、ワークシェアリングという言葉がヨーロッパから出てきて、日本の社会でもかなり定着といいますか、導入されようとしていると。これは、現在のこの厳しい経済状況下で、社会的共存という点からいえば非常に大事なことだと思うんですが、いつまでもこんな時代じゃないと思います。
 憲法の議論をする場合に、やっぱり多少普遍的なスタンスで見た場合、本質的にはこのワークシェアリングというのは基本的人権と矛盾するものではないかと。やっぱり、いい社会では、お互いに仕事を分け合ってというシステムというのは、これは臨時かつ緊急なものであると。いわゆる基本権としてのワークシェアリングというのは僕はちょっと理解できないという部分があるんですが、その辺の位置付けについてお話を伺いたい。

○参考人(草野忠義君) 先ほど矢野参考人も御発言されましたが、緊急対応型のワークシェアリングと多様就労型ワークシェアリングと、私どもは基本的に二つに分けて考えておりまして、緊急対応型のワークシェアリングは正に今のような状況の中で雇用を何とか維持をしていこうという臨時措置ということだろうというふうに私は思っております。そういう意味でいえば、かなり普遍的な形ではないと、こういうふうに理解をいたしております。
 多様就労型というふうに今名付けられておりますワークシェアリングにつきましては、将来の働く姿として、例えばジェンダーフリーの世の中にしていく、あるいは先ほども御指摘のありました高齢化社会の中にあって、高齢者の方々にも社会に参加をしていただくという観点から見た場合のワークシェアリングという意味で、私は大変一つの絵姿としていい絵姿ではないだろうかというふうに思います。
 ですから、もっと端的に言いますと、何といいますか、非常に単純化して言いますと、一人の男の人が、世帯主が働いて奥さんと二人の子供を養うという世代から、夫婦がともに仕事をすると。その代わり、世帯主が今まで一だった収入が場合によっては〇・七になるかもしれないけれども、配偶者が働きに出ることによって〇・七で、足すと世帯収入は一・四になると。なおかつ、世帯主が一働いていた労働時間よりもそれが相応の短い労働時間になりますから、相互に家事あるいは育児あるいは地域社会との関係等についても相互にシェアができると。そういう意味では、これからの働き方として一つのビジョンとして成り立ち得るんではないかと、こういうふうに思っております。

○平野貞夫君 矢野参考人にもう一点、社会保障制度の在り方についてお尋ねしたいんですが。
 先ほどお話の中で、年金と介護と医療ですか、これを、セーフティーネットの必要性を力説されて、経団連の立場としての画期的なお話だと思うんですが、実はこの点について私たちは、基礎年金とそれから介護、それから高齢者医療は、これはセーフティーネットというものではなくて、憲法二十五条にむしろ書き入れて、国が責任を持って整備をすると、いわゆる保険制度をやめると。ここで言わば人間が生きていく最小限度の結果平等を国が保障して、その上で敗者復活なりあるいは競争、自由に競争できるシステム、市場経済システムを作るべきじゃないかという、こういう考えを持っておりますが、それに対してちょっと御意見いただければ有り難いんですが。

○参考人(矢野弘典君) 社会保障の要するに費用をどうやって負担するかという点につきまして、私どもは公費負担をどう位置付けるかということを大変重要な課題として考えております。例えば、基礎年金について申し上げましても、国庫負担を三分の一から二分の一に上げる場合、その財源負担をどうするか。私どもは、消費税で一%程度になるのでそれでやったらどうだろうかという提言をしているわけで、先生方の御議論を得たいというふうに思っているわけでございます。
 この年金の在り方についてもいろんな議論がございまして、この点について私ども徹底的に議論しているんですが、最終的にどういう姿がいいのかというところまではまだ来ていないんですね。長年続けてきました、保険料があって、そして税があってという構造を、もっと税負担、それは直接税もあるし間接税もあるしという形で負担の在り方を考えていって、最終的にどこに持っていくかという、これが議論の道筋だろうと思うんですね。
 でありますから、これから本当に、特に年金の場合は今年一年掛けて来年改正しようということでありますし、医療改革につきましては春までに方針をまとめて、そして少し時間を掛けて具体化を図ろうということでありますし、介護については単価の改正については審議会で結論を出しましたが、制度そのものですね、できて三年たったばかりなんですけれども、五年ごとの改正が間もなくありますから、その辺どうするかということでありまして、先生の御指摘の点についてはよく私ども問題意識は持っております。一挙にそこまで行けるかどうかということは、これはなかなか負担の問題で大問題だと思いますので、しっかり議論さしていただきたいと思っております。