155-参-決算委員会-1号 平成14年12月09日

平成十四年十二月九日(月曜日)
   午前十時三分開会
    ─────────────
   委員氏名
    委員長         中原  爽君
    理 事         岩井 國臣君
    理 事         佐々木知子君
    理 事         中島 啓雄君
    理 事         川橋 幸子君
    理 事         谷  博之君
    理 事         八田ひろ子君
                荒井 正吾君
                加治屋義人君
                柏村 武昭君
                後藤 博子君
                鈴木 政二君
                月原 茂皓君
                常田 享詳君
                藤井 基之君
                山内 俊夫君
                山本 一太君
                神本美恵子君
                佐藤 雄平君
                榛葉賀津也君
                松井 孝治君
                山根 隆治君
                山本 孝史君
                荒木 清寛君
                遠山 清彦君
                山下 栄一君
                大沢 辰美君
                岩本 荘太君
                広野ただし君
                又市 征治君
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   委員の異動
 十月十八日
    辞任         補欠選任
     神本美恵子君     羽田雄一郎君
 十月二十一日
    辞任         補欠選任
     羽田雄一郎君     神本美恵子君
 十月二十四日
    辞任         補欠選任
     月原 茂皓君     泉  信也君
     八田ひろ子君     宮本 岳志君
 十月二十五日
    辞任         補欠選任
     泉  信也君     月原 茂皓君
     宮本 岳志君     八田ひろ子君
 十一月十二日
    辞任         補欠選任
     山下 栄一君     加藤 修一君
 十一月十三日
    辞任         補欠選任
     加藤 修一君     山下 栄一君
 十一月二十日
    辞任         補欠選任
     加治屋義人君     大仁田 厚君
     鈴木 政二君     田村耕太郎君
 十一月二十一日
    辞任         補欠選任
     大仁田 厚君     加治屋義人君
 十一月二十二日
    辞任         補欠選任
     榛葉賀津也君     岩本  司君
     山下 栄一君     福本 潤一君
 十一月二十五日
    辞任         補欠選任
     岩本  司君     榛葉賀津也君
     福本 潤一君     山下 栄一君
 十二月六日
    辞任         補欠選任
     松井 孝治君     海野  徹君
 十二月九日
    辞任         補欠選任
     榛葉賀津也君     大塚 耕平君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         中原  爽君
    理 事
                岩井 國臣君
                佐々木知子君
                中島 啓雄君
                川橋 幸子君
                佐藤 雄平君
                八田ひろ子君
    委 員
                荒井 正吾君
                加治屋義人君
                柏村 武昭君
                後藤 博子君
                田村耕太郎君
                月原 茂皓君
                常田 享詳君
                藤井 基之君
                山内 俊夫君
                山本 一太君
                海野  徹君
                大塚 耕平君
                神本美恵子君
                榛葉賀津也君
                谷  博之君
                山根 隆治君
                山本 孝史君
                荒木 清寛君
                遠山 清彦君
                山下 栄一君
                大沢 辰美君
                岩本 荘太君
                広野ただし君
                又市 征治君
   国務大臣
       内閣総理大臣   小泉純一郎君
       総務大臣     片山虎之助君
       外務大臣     川口 順子君
       財務大臣     塩川正十郎君
       文部科学大臣   遠山 敦子君
       厚生労働大臣   坂口  力君
       農林水産大臣   大島 理森君
       経済産業大臣   平沼 赳夫君
       国土交通大臣   扇  千景君
       国務大臣
       (内閣官房長官)
       (男女共同参画
       担当大臣)    福田 康夫君
       国務大臣
       (防衛庁長官)  石破  茂君
       国務大臣
       (金融担当大臣)
       (経済財政政策
       担当大臣)    竹中 平蔵君
       国務大臣     石原 伸晃君
   内閣官房副長官
       内閣官房副長官  上野 公成君
   副大臣
       内閣府副大臣   根本  匠君
       外務副大臣    矢野 哲朗君
       財務副大臣    小林 興起君
       文部科学副大臣  河村 建夫君
       厚生労働副大臣  鴨下 一郎君
       国土交通副大臣  中馬 弘毅君
        ─────
       会計検査院長   杉浦  力君
        ─────
   事務局側
       常任委員会専門
       員        島原  勉君
   政府参考人
       内閣府男女共同
       参画局長     坂東眞理子君
       外務大臣官房長  北島 信一君
       外務省アジア大
       洋州局長     田中  均君
       外務省経済協力
       局長       古田  肇君
       厚生労働省職業
       安定局次長    三沢  孝君
       厚生労働省職業
       能力開発局長   坂本由紀子君
       厚生労働省年金
       局長       吉武 民樹君
       国土交通省道路
       局長       佐藤 信秋君
       国土交通省住宅
       局長       松野  仁君
       海上保安庁長官  深谷 憲一君
   説明員
       会計検査院事務
       総局次長     関本 匡邦君
       会計検査院事務
       総局第一局長   石野 秀世君
       会計検査院事務
       総局第二局長   増田 峯明君
       会計検査院事務
       総局第三局長   白石 博之君
       会計検査院事務
       総局第四局長   重松 博之君
       会計検査院事務
       総局第五局長   円谷 智彦君
   参考人
       日本銀行理事   白川 方明君
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  本日の会議に付した案件
○理事の辞任及び補欠選任の件
○国政調査に関する件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○平成十一年度一般会計歳入歳出決算、平成十一
 年度特別会計歳入歳出決算、平成十一年度国税
 収納金整理資金受払計算書、平成十一年度政府
 関係機関決算書(第百五十一回国会内閣提出)
 (継続案件)
○平成十一年度国有財産増減及び現在額総計算書
 (第百五十一回国会内閣提出)(継続案件)
○平成十一年度国有財産無償貸付状況総計算書(
 第百五十一回国会内閣提出)(継続案件)
○平成十二年度一般会計歳入歳出決算、平成十二
 年度特別会計歳入歳出決算、平成十二年度国税
 収納金整理資金受払計算書、平成十二年度政府
 関係機関決算書(第百五十四回国会内閣提出)
 (継続案件)
○平成十二年度国有財産増減及び現在額総計算書
 (第百五十四回国会内閣提出)(継続案件)
○平成十二年度国有財産無償貸付状況総計算書(
 第百五十四回国会内閣提出)(継続案件)

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○川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子でございます。本日は、雇用のセーフティーネットの在り方と男女共同参画という視点からお尋ねさせていただきたいと思います。
 このテーマにつきましては、十一月二十六日の参議院の内閣委員会、国民生活センターの独立行政法人化の法案のときに質問させていただきまして、その際の担当大臣は竹中大臣でいらっしゃいまして、各省の方は事務方からお答えいただいたかと思います。本日は、要求大臣すべておそろいいただける決算の締めくくりということでございますので、各大臣おそろいのところで改めて伺わせていただきたいと思います。
 さて、失業情勢は最悪でございます。男子の失業率は六%に達しようとしておりますし、また失業のリスクを回避するために妻の就業が増加している。正規従業員が絶対数で見て減少して、パートタイマー等の非正規従業員が増えるという常用代替、正規従業員代替といいましょうか、そういう雇用構造の変化が進んでおります。また、新規学卒の就職戦線を見ても、今、高卒の就職内定率は二、三割でございましょうか、ちょっと数字が正確でなくて申し訳ございませんが、異常に低い状況でございます。大卒を含めてフリーターが増加するとか、女性の大卒の場合は派遣登録という形で就職という、こういうような状況さえ伝えられているところでございます。連合の調査によりますと、働く人の二人に一人が今の仕事を失うかもしれないという失業不安を現に感じているということでございます。
 ですから、サラリーマン家庭の夫婦といいますのは、失業の不安はもちろんでございますけれども、職を失った後、更に引退後の年金不安というものを抱えていると。また、子供たちに対しましては、親も学校の教師も、どのような生活、生涯が持てるのかという、そういう進路の指導がなかなかできない、こういう悩ましい状況にあるわけでございます。もう寄らば大樹の陰という言葉は死語ではないでしょうか。自己責任、自立を求められておりますけれども、自己責任、自立を求めたいと思っても、日本の雇用がどうなるのか、日本の社会がどうなるのかという情報が与えられないままに非常に不安に陥っているという、これが今の日本の状況でございます。
 現在、不良債権処理の加速化に伴いまして更に失業の悪化というものが予想され、それに伴いまして、雇用のセーフティーネットをどのように講じていくかが国政の大きな課題となっているわけでございますけれども、そうした雇用のセーフティーネットの在り方に関して、かねて男女共同参画の視点からは、性中立的な制度にする、税も年金もあるいは雇用システムも性中立的であることによって安定的で持続的な日本の社会システムが構築できるんだと、こういう視点の下に主張してきたわけであります。
 そこで、まず第一点目でございます。
 配偶者特別控除の廃止が今話題になっております。先行減税の財源として話題になっております。これに関しては、税制の性中立的な視点も加わっているんだというようなことが言われますが、果たしてそうなのでしょうか。まず、財務大臣にお伺いさせていただきます。

○国務大臣(塩川正十郎君) 私は、現在取ってまいります所得税、法人税、すべての税制につきまして、度重なる改正をそのときそのときによる都合によって恣意的に改正してきた点が多々あると思っております。ですから、思想的に一貫して説明しにくいようなものも随分出てきております。
 その一つの問題として、現在、所得税をめぐりますところの空洞化現象が起こってまいりました。これは、やっぱりこの際に一つの考え方に基づいて訂正していきたいと思っておるのが今度の税制改正の一つの考え方であります。

○川橋幸子君 財務大臣、大変正直にお答えいただいたと思います。先日の内閣委員会では、男女共同参画社会の形成にも資するものだという事務方の御答弁がありましたけれども、私はそうではない、やっぱり少々場当たり、ちょっと言葉は違うかも分かりませんけれども、恣意的な制度改正も今のように苦しい状況の中ではやむを得ないこともあるのだという非常に正直なお答えだったと私、今受け取りました。しかし、そのときそのときの税制改正はその税制状況によって左右されるにしても、国の展望というのはそういうものであってはならないと私は考えるわけでございます。
 さて、そこで経済財政担当大臣にお伺いしたいと思います。
 先日、内閣委員会の御答弁ですね、記録を読み直してみましたらこのように述べておられます。
 政府税調の議論は、税収を確保して国庫の基礎を築かなければいけないというより現実に近いところの制約の中の議論でありますと。この点は諮問会議と政府税調の間ではいろんな意見の相違もございまして、ある委員が政府税調の議論は志が低いのではないかという発言をして話題になったと、このように述べておられます。
 「我々としては」ということは、その諮問会議としてはということだと思いますが、これから数年掛けて本格的な税制改正をしていくと、本年度はまあその初年度であるという点を踏まえて御理解いただきたいというようなそういう御答弁がありました。
 さて、将来について竹中大臣、この配偶者控除の問題はどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(竹中平蔵君) 諮問会議では、この一月から中長期的なあるべき税制の姿ということにつきまして、集中的に議論をしてまいりました。その中で、一国の税制の基礎として広く薄く、そういう税制を作るべきである。さらには、その徴税等々、納得のいく徴税システムであるべきである。それと同じような意味で、重要なものとして国民のライフスタイルをゆがめないような税制でなければいけないということを強調してきたつもりでございます。
 その中に、いわゆるその特別控除、配偶者の控除、いわゆるその控除の見直しというものも、これは広く薄くという観点からも、またライフスタイルをゆがめないという観点からも入ってきている重要な問題であるというふうに思っているわけであります。
 前回も申し上げましたように、それを制度設計するに当たって、これは政府税調の方で、ないしは与党の方でいろんな制度設計の議論を、今最終段階でございますけれども、その中でいろんな制約条件の中で議論をして煮詰めていかなければいけないわけですが、我々としましては、その広く薄くという観点からと、ライフスタイルをゆがめないという観点から、やはり中長期的には是非とも実現しなくてはいけない改革だというふうに思っておりますので、来年度の税制改革を初年度として引き続きどのような改正が進んでいくか、どのような改正をなすべきか、諮問会議でも議論をしていきたいというふうに思っているところでございます。

○川橋幸子君 私も竹中大臣のお考えに賛成の立場でございます。是非その方向でしっかりと御議論いただきたい。都合のいいところだけつまみ食い、恣意的にされるというのでは個人の生活設計も立たない、ライフスタイルに中立的であるどころか将来展望が描けないという、こういう社会になることを危惧するわけでございます。
 そこで、男女共同参画を担当の官房長官にお伺いしたいと思います。
 性中立的な税制ということを考えますと、配偶者特別控除ではなくて、むしろ配偶者控除そのものの問題というのが大きいのではないかと思います。
 民主党の場合は、税によって世帯の支出を配慮するんではなくて、むしろ手当によって充実していくと。税そのものは、働くか働かないかによって、あるいは子供が何人いるかによって左右されるような、そういうシステムであってはいけないということを言っているわけでございますけれども、男女共同参画会議を主管される担当大臣の方から、将来的に見てこの問題をどのようにお考えになられるか、お伺いしたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) ただいま財務大臣、それから竹中経済財政政策担当大臣からも答弁がございましたけれども、税制調査会でも、個々人の自由なライフスタイルの選択に中立的な税制、そういう観点から取り組むべきものであるという、そういう考え方を答申の中に示しております。
 そこで、男女共同参画会議でも、女性のライフスタイルの選択等に影響が大きい諸制度について検討を行ってきたのでございますけれども、御案内のとおりでございます、本年四月の中間報告におきまして、配偶者控除と配偶者特別控除については女性の就業に関して非中立的になっているとして、その見直しを提言していると、そういうようなことがございます。
 そういうことで考えますと、今回の税調の答申はその方向に沿ったものではないのかなと、こんなふうに考えておるところでございます。

○川橋幸子君 政府税調の中には、それほど明確な思想は私は打ち出されていないと思います。
 元々、配偶者特別控除の方は、通称パート減税と言われますけれども、かつて労働力不足の時代に家庭の主婦がパートで、駆り出されるというと言葉が悪いですけれども、労働市場に出てくる。そのときの賃金が余りに低いというところにむしろ配慮するという格好で出てきた税制でございます。それに対して、今政府税調の方が言っているのは、むしろ二重に配偶者控除を取っているのではないかと、二重取りを返せと、こう言わんばかりの叙述が多いと、そのように女性の方が感じてしまうわけでございます。
 もう少ししっかりとした将来展望を立てまして、これは女性だけではなくて男女両方に影響するものでございます。しっかりとした展望をこれから御検討いただきたいと。税制改正というなら、そのような抜本的なものを、システム改正を考えていただきたいと思う次第でございます。
 さて、次の問いは社会保険の適用でございます。多くは、その中心は厚生年金の問題でございますけれども、これも性中立的ではないのではないかという、こういう問題意識があって、様々なことが男女共同参画の視点から言われているわけでございますが、今般、厚生労働省の方からは年金改革のたたき台のポイントが示されておりまして、保険制度の財政基盤を強化して持続的なシステムにしたいと。それに付け加えまして、そのためにも、パートタイム労働者等の厚生年金の加入拡充、加入の拡大ですか、を図るとされているわけでございます。そして、具体的な点としまして、今、今の適用拡大を図るためにその適用条件を緩和すると、週二十時間以上働いており、年収六十五万円以上の収入があれば年金の適用拡大を図りたいという、こういう説が有力だと言われているわけでございます。
 そこで、まずその将来の方向に入る前に、現行制度の下で、現在、労働市場の変容が様々進んでおりますけれども、現行制度の下ではどのような適用関係になるのかを伺いたいと思います。
 どういうことを伺いたいかといいますと、これもさっきの内閣委員会で紹介したのですが、雇用形態が多様化するだけじゃなくて、複数事業主、複数事業場で働く掛け持ち、細切れパートという、こういう表現をいたします。そういう労働者が大変増えている。特にその典型として、国公立の大学や私学の大学で非常勤講師という方が増えております。
 この非常勤講師の組合を作っておられる方々の調査によりますと、私学の半数ぐらいは、講座の半数ぐらいはこういう非常勤講師が受け持たれる講座になっていると。大学も大変経営困難というところで、こういう雇用形態が増えていると。非常勤講師にも様々な方がいらっしゃると思いますけれども、主としてこの細切れ掛け持ちをしながら生計を立てているという方々が約二万人というふうに推計されているそうです。
 こういう方々に対して、現行制度では雇用保険は適用されるのでしょうか。まず、雇用保険の方から伺わせてください。

○国務大臣(坂口力君) 大学等にお勤めになっております先生方の中で、掛け持ちをしておみえになる先生方が非常に多いということは御指摘のとおりだというふうに思っております。この先生方の社会保障をどうするかという問題はかねてからお話ございますし、私学等の大学側の意見と我々の意見とは必ずしも一致していないわけでございまして、大学側の方の御意見としては、雇用保険等には入らないんだからそこから我々は除外をしてほしいという、こういう御指摘があるわけでございますけれども、我々の方といたしましては、いかなる職業であろうともやはり雇用保険には全部入ってくださいということをお願いをしているわけでございます。
 その前提の上ででございますが、掛け持ちをされますときに、生計を維持するに必要な主なる賃金を受けておみえになります雇用関係、そこがどこかということだろうと思うんです。掛け持ちも、同じ時間数各学校に配分をして行っておみえになるということは困るわけでございますが、どこかに少し拠点を置いて、そして他の学校にも行っておみえになるといったときには、その主な大学、例えば所定労働時間が二十時間以上であると、そういうのが一つあって、それでほかのところに行っておみえになるというときは、二十時間お勤めになっているところでこれは要件を満たしておりますので、そこで雇用保険もお掛けをいただく、被保険者になっていただくというのが現状でございます。

○川橋幸子君 主たる雇用主が特定の大学であるということがはっきりすれば入れる、これもちょっと問題でございますが、少なくともそれは制度上可能だということでございますね。
 大学側の言い分は、働いている人たちが入りたがらないと、このような言い分だったとおっしゃいますけれども、現にこの組合の方々は入りたい、加入したいと言っておられるわけです。是非、加入の道筋があるとすれば、それは事務手続は大臣から指示していただきまして、手続ができるようにしていただけますね、要件さえ整えば。うなずいていただくだけで結構です。──うなずいていただきましたので、現行制度はちゃんと適用できるということを事務的に詰めていただきたい、指示していただきたいということを申し上げたいと思います。
 まず、その次は厚生年金でございますが、こちらの方はいかがでございましょうか。

○国務大臣(坂口力君) 厚生年金の方でございますが、どの程度の使用関係にある者が適用対象となるかの判断といたしましては、これは個別の事業所と労働者の関係ごとにこれは行うという前提があることは今更申し上げるまでもありません。そこで、現在の厚生年金の適用基準は、労働時間がその事業所の通常の就業者のおおむね四分の三以上である人をその適用とするということになっているわけでございます。
 この条件を少し引き下げると申しますか、もう少し引き下げてはどうかといったようなことで今議論をしているところでございまして、週二十時間あるいはまた年収六十五万、そのどちらか、そうしたことが条件にならないかというようなことも今、今まだ決まったわけじゃございません、次の年金改正に合わせて議論をしているところでございます。
 そういう現在状況にございまして、先ほど御紹介いただきましたその短時間労働者に対します厚生年金などのこの社会保険の適用の在り方と含めてこれは決定をしたいと、こういうふうに思っております。

○川橋幸子君 非常勤講師の方々によりますと、本当に五つ六つの大学を掛け持ちすることがあると。その通勤時間やら、あるいは授業の下調べのための時間というのも労働時間、通常の労働者ならばカウントされるわけですが、それを除いたにしても、その講座の時間だけを足し上げたにしてもその四分の三、四分の三でなければ駄目なんですよね。
 ですから、何というんでしょうか、雇い主が一定していれば要件が十分達せられるにもかかわらず、一つ一つで四分の三の要件を掛けられるとすると、一・五倍以上の労働時間がなければ、講座時間がなければ適用にならない。四分の三足す四分の三で一・五倍になるわけでございます。これは差別なんじゃないでしょうか。同じ労働者性がありながら、ただ多数事業主があって特定できないと、こういう状況でございます。差別だとお感じになりませんでしょうか。

○国務大臣(坂口力君) 厚生年金、私どもは厚生年金を基準にして言っているわけでございますが、厚生年金の場合にはそれは雇用者との関係で考えているものでございますから、雇用関係が成立をしないということになるとなかなか難しいということになるわけでありまして、ですから雇用関係が成立をして全体の中のある程度の時間はその一つのところにおって勤めていただくということになれば、それはそことの関係と言うことができ得ますけれども、五つも六つも同じ時間数でばらばらっと行っておみえになるというときには、なかなか、そうですね、どうするかというのは難しい判断だというふうに思わざるを得ません。
 そういう皆さん方を、厚生年金ではなくて国民年金なりなんなりにお入りをいただくということにならざるを得ないというふうに思っておりまして、そこはもう少し、しかし私たちも、現在のいわゆる基準というものをもう少し引き下げてもう少し入りやすくして差し上げるということが大事だというふうには思っておりまして、その議論をこれからしたいというふうには思っているところでございます。

○川橋幸子君 雇用関係は成立しているわけですね。使用従属関係にあり、この講座はあなた勝手にその時間つぶしてくださいよというそういう指揮命令ではなくて、これこれしかじかのカリキュラムに従ってこれこれしかじかの教育内容をしっかりと教えてほしいと。雇用関係は成立しているわけでございます。
 坂口大臣、いつも医療改革にしろ無年金障害者の問題にしろ、心の中ではきっと前向きにこの問題も考えていてくださるんだと思います。確かに、週二十時間以上、あるいは年収六十五万円以上、今の適用条件の半分ぐらいまで緩和すれば、ハードルを下げれば救われる方がかなりいると私も思います。
 しかし、ここでちょっと竹中大臣の方に伺ってみたいと思います。今、雇用の規制緩和が、有期雇用の年限を上げるとか派遣労働の上限期間を上げるとか、あるいは販売、事務だけじゃなくて今度は製造現場にも派遣ができるとか、様々な規制緩和がなされるわけですけれども、こういう規制緩和がなされたときにどのような雇用市場の実態になるかというと、それはむしろ短期間の繰り返し更新の雇用が増えるというのが今までの経験則で、私たち働く女性たちの現場からの声ではこういう情報が非常に多く上がってきているわけでございます。多様な形態だけではなくて、多就業時代というふうに申しているのはそういう意味でございます。
 例えば、大学の非常勤講師、それは例外的な例でしょうとおっしゃるかもしれませんけれども、これは典型として申し上げているだけで、これからサービス業の中でこうした雇用が増えることということを考えますと、スーパーやコンビニのフリーターの方々というのは正にこういう短期間の更新、幾つかの働き口を掛け持ちする、こういう者が増えてくるわけですね。
 こういう多就業時代のセーフティーネットの在り方というのはどうなんでしょうか。労働時間を合算する。労働者性がちゃんと証明されるわけです、細切れか合算されるかの差なんです。しかも、事業主がフリーライドするんじゃなくて、本人は払いたいと、こういう人たちもいらっしゃるわけです。そういうところで保険料収入をちゃんと取ってその保険料に見合った給付をするというのが私はセーフティーネットだと思いますが、多就業時代の働き方に対して、雇用のセーフティーネットあるいは年金のセーフティーネットというのは、平等に、条件さえ合えば平等に適用されるべきではないでしょうか。

○国務大臣(竹中平蔵君) 川橋委員の問い掛けは極めて今後の行政、政策に対して本質的な問い掛けであろうかというふうに思います。
 先ほど坂口大臣とのやり取りの中でもございましたですけれども、例えば一つの例として、この業種、大学の講師は準備の時間が要るはずだと、それをどのように考えるのかと。しかし、ここで難しいのは、確かにそうかもしれないけれども、ある科目については一時間しゃべるのに二時間準備しなきゃいけないかもしれない、ある科目については四時間かもしれない。

○川橋幸子君 それを言っているんじゃない。

○国務大臣(竹中平蔵君) 存じ上げております。
 そういう、つまり多業種というのは、今の例にも見られますように、実は実態把握ないしは一律の枠を掛けることがほとんど不可能になってくるということをも意味しているのだと思うんです。
 そういう意味からいいますと、規制緩和とともに、やはり自由な契約をベースにした、これは年金にしても何にしてもそうですけれども、そういった枠組みを思い切って作るということがやはりベースになってこざるを得ないのだと思います。
 ただし、ここで重要なのは、自由にすればするほどやはり働く側と働かせてもらう側での立場の差というのをどのように考えるのかという一種の立場、だからこそ団結権というのがどの国でも憲法で認められているわけですけれども、それとの兼ね合いで枠組みをどのように作るか。一方で、思い切り自由にしていかなければいけないというニーズと、何らかのしかし枠組みを作っておかないと、全く自由に任せられない労働市場の特性があるということの兼ね合いをどのように付けるかということであろうかと思います。
 オランダ等々では、そういった中で新しい試みをいろいろしているわけでありますので、今我が国もそういうことを試行錯誤しながら、少しずつ制度改革していく途上にあるというふうに思っております。

○川橋幸子君 オランダの例をおっしゃられましたので、オランダのワークシェアリングというのは、もう釈迦に説法でございますけれども、労使の間でしっかりとした社会契約を結ぶ、労働時間、各職場の中で職務を再設計して、再編成して、どのような労働時間を選択できるかというその仕組みの合意からしっかりやっているわけですね。そうした場合に、もし労働時間が少なくなった場合の事業主の保険料負担が増える部分については国で補助してもよいと、このような、移行的な措置かも分かりませんけれども、そういう大ざっぱに言うと、そうした国の政策判断があるわけです。
 塩川大臣笑っていらっしゃいますけれども、今回、雇用保険料の引上げについて、塩川大臣は反対なさいました。むしろそれは国庫で持つべきだと、新基金という構想の中で(「そんなに簡単じゃない」と呼ぶ者あり)そのように受け取られる発言をしていらっしゃるわけです。
 さてどうでしょうか。景気動向と個人の負担、そういうバランスを考えて、一家言お持ちの財務大臣として、何か伺ってもいい返事が返ってこないような感じがしますけれども、それこそ将来を見据えていただいて、日本の国の在り方を見据えていただいて、御答弁をいただきたいと思います。

○国務大臣(塩川正十郎君) これは、私は、すべての社会保障関連すべて、一度国民的会議の中でやっぱりきちっとした議論の中で決めてもらいたいと思うんです。それは、結局、こういう社会保障は増えていく傾向にあることは当然だろうと思っておりますが、一方において経営の問題もございますので、そういう点でいろいろと問題が解決しなきゃならないものもあります。それと同時に、ワークシェアリングの一つの方法として、そういう小刻みの労働ということがこれからも左右されていくとするならば、それに対してやっぱりセーフティーネットもやっていかなきゃならぬ。
 そこで、医療、年金あるいは雇用関係全部合わせまして、一体そういう社会的コストというものはどのように制度で負担したらいいのか。保険という形でやっていいのか、あるいは国民のそういういわゆる必須的な行政の責任としてやっていくのかというそこらの根本問題を一回きちっと議論して決めて、方向を決めてもらいたいと。それによって私たちの取扱いが全部決まってくるように思っておりまして、そのことのチャンスは、私は、十六年度に年金が改正されますね。あの改正が、来年からというか、もう早々議論が始まると思うんですが、このときが一番大事な、日本の社会保障の方向付けを決める大事な年ではないかと思っております。どうぞ積極的な意見を出していただきたいと思います。

○川橋幸子君 ほかにも予定している質問がございますので、たくさん通告した割にはエッセンスだけのお聞きの仕方になったかも分かりません。でも、もう一回、取りまとめ的にお伺いしたいと思います。
 まず一つは、保険というせい、保険制度というせいもありますけれども、組織労働者の意見は入るんですが、例えばパートとか派遣とか契約とか有期雇用とかといった非常に、フリーターの方々も含めて、本当に未組織の方々の意見というのがちゃんと審議会の場で検討されているのか。あるいは、諮問会議の中でも学者の方々はそうした組織労働だけではない情報をお持ちだと思いますが、あえて言わせていただければ、そうした声を直にヒアリングしてもらうと、こういう機会を設けていただけないか。やはり私は、一つは社会保障、社会保険における均等待遇原則というものをしっかりと確立する、これがセーフティーネットとしての命だろうと思いますし、また現役中の賃金についても均等待遇ということを確立してほしいと思っております。
 先日、性中立的という言葉の意味をめぐって、ジェンダーフリーという英語はないというような御指摘もございましたので、ジェンダーニュートラルというふうに申し上げましたけれども、あれから考えましたら、多分ジェンダーフリーというのはジェンダー・ディスクリミネーション・フリー、こういう言葉なんだと思うんですね。
 人についても、もし市場原理を貫徹させるとすれば、それは一物一価で、人についてもその価値を平等に計ると。人については様々な制度、慣行が絡むのでそれが難しいということは分かりますけれども、少なくともそれが原則なんだという、原理原則を打ち立ててほしいと、このように思うわけでございます。
 実施は、小泉総理がおっしゃるように、大胆に柔軟にで結構です。ただ、表看板がぐらっぐらっとしない、日本の社会もちゃんとそうした原理原則を持つ、言わばこれはヒューマンライツといいますか、人権という、そういう物差しになるのかも分かりません。こういう原理原則をしっかり立てていただきたいと思いますが、代表して坂口労働大臣から一言お伺いしたいと思います。

○国務大臣(坂口力君) 今お話をいただきましたように、雇用が非常に多様化してまいりましたし、これから一層多様化するものというふうに予測されます。また、その雇用の中身もまた多様でございまして、そうした雇用に対しましてどういう社会保障を確立をしていくかということがこれから問われることは御指摘のとおりでございます。
 今までの社会保障制度は、どちらかといえば終身雇用を中心にした雇用体系の中で社会保障をどうするかということであったわけでございますが、そうした体系の中からはみ出るというとちょっと言葉は悪いですけれども、その中に当てはまらない雇用の仕方の人たちが増えてきている、あるいはまたそういう雇用を望んでいる人もおみえになることが事実でございます。
 したがいまして、これから社会保障の問題を考えてまいりますときに、我々も、終身雇用の団体の皆さん方の御意見だけではなくて、もう少し幅広くいろいろの角度からの検討をしなければなりませんし、そうした皆さん方の御意見も伺っていかなければならないというふうに思っております。
 先ほど財務大臣から御答弁がございましたとおり、いよいよ来年一年掛けまして年金の議論をしていただくわけでございますが、この年金こそ、やはりそうした中で今後どうしていくかということを本当に真剣に議論をしなければならないというふうに今思っているところでございます。

○川橋幸子君 ありがとうございました。
 残る五分でございますけれども、外務省の方にお伺いしたいと思います。
 まず、ODAについてお伺いしたいと思います。
 決算委員会でも無駄なODAというお話がいろいろ出てまいりましたし、また不景気になると、なぜODAを供与しなければいけないのか、こんなに苦しいときには中小企業対策に充てる方がむしろ必要なのではないかと、このような議論があったわけでございます。
 さて、ODAとは何のためにやるのでしょうか、外務大臣にお伺いします。