155-参-内閣委員会-7号 平成14年11月26日

平成十四年十一月二十六日(火曜日)
   午前十時一分開会
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   委員の異動
 十一月二十一日
    辞任         補欠選任
     西銘順志郎君     鴻池 祥肇君
 十一月二十二日
    辞任         補欠選任
     鴻池 祥肇君     西銘順志郎君
 十一月二十六日
    辞任         補欠選任
     上野 公成君     小泉 顕雄君
     筆坂 秀世君     岩佐 恵美君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         小川 敏夫君
    理 事
                阿部 正俊君
                亀井 郁夫君
                森下 博之君
                長谷川 清君
                吉川 春子君
    委 員
                阿南 一成君
                上野 公成君
                小泉 顕雄君
                竹山  裕君
                西銘順志郎君
                野沢 太三君
                山崎 正昭君
                岡崎トミ子君
                川橋 幸子君
                松井 孝治君
                白浜 一良君
                山口那津男君
                岩佐 恵美君
                島袋 宗康君
                黒岩 宇洋君
                田嶋 陽子君
   国務大臣
       国務大臣
       (経済財政政策
       担当大臣)    竹中 平蔵君
       国務大臣     鴻池 祥肇君
   大臣政務官
       内閣府大臣政務
       官        木村 隆秀君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        鴫谷  潤君
   政府参考人
       内閣官房内閣参
       事官       井上  進君
       内閣府大臣官房
       長        江利川 毅君
       内閣府産業再生
       機構(仮称)設
       立準備室次長   小手川大助君
       内閣府国民生活
       局長       永谷 安賢君
       警察庁警備局長  奥村萬壽雄君
       外務省アジア大
       洋州局長     田中  均君
       財務大臣官房審
       議官       加藤 治彦君
       文部科学大臣官
       房審議官     金森 越哉君
       厚生労働大臣官
       房審議官     井口 直樹君
       厚生労働大臣官
       房審議官     新島 良夫君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○独立行政法人国民生活センター法案(内閣提出
 、衆議院送付)
○構造改革特別区域法案(内閣提出、衆議院送付
 )

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○川橋幸子君 ありがとうございました。
 以上で国民生活センター法案につきましての質問を終わらせていただきまして、残りの時間を経済財政問題について、竹中大臣がこの委員会にお見えくださる機会というのは非常に少なくなるかと思いますので、お伺いさせていただきたいと思います。
 前回といいましても、大臣、御記憶ですかどうですか、十一月五日というときに私この内閣委員会で質問させていただきました。ちょうど金融担当相を兼務された直後のあの時期の御登場でいらしたわけでございます。そのとき私が要望を含めた質問をさせていただいたのは、経済財政担当大臣としてのデフレ対策についての質問でございました。セーフティーネットについて、特に雇用について伺わせていただいたわけでございます。
 もう一回繰り返させていただきますと、今こそワークシェアリングというような基本的な対策が必要ではないかとか、公共事業型社会保障から雇用、教育、環境など、そうした総合的な社会保障ビジョンを描くことが、それこそがセーフティーネットになるのではないかと。大臣の周りには大勢のブレーンが集まられることでしょうから、そうした金融担当相としてのお仕事も大変だろうとは思いますけれども、経済担当大臣としてのお仕事の方もしっかりお願いしたいと。この意味の質問をさせていただいて、大体御同感というようなお答えをちょうだいしたことを覚えております。
 今日はいささか細かいお話に移らせていただきます。質問を取りに来られた方は、大臣にそんな細かいことを聞いてくれるなということでございましたけれども、ですけれども、問題意識はそう細かい話じゃございません。セーフティーネットの在り方に関連して聞かせていただきたいと思います。
 かねて私は男女共同参画会議の方の仕事についても官房長官に繰り返し質問をしておりますが、セーフティーネットの整備の際に関して私が今回期待させていただきましたのは、その整備の中で性中立的な、ジェンダーフリーという英語はないというお話がこの間ありましたけれども、まあフリーが悪いならジェンダーニュートラルでも結構でございますけれども、そういう国の税制、社会保障、そして雇用システム、こういうものが政策セットになって反映されていくことを願って、官房長官がおいでのときにはこのような質問をしているわけでございます。
 こういう観点から、質問を以下三点ぐらいさせていただきます。
 まず一つは、政府税調の答申が出たわけでございます。配偶者特別控除の廃止が出されたようでございますが、これは性中立的な税制改正の方向にあるのかどうか、単純な聞き方ですけれども、伺わせていただきます。

○政府参考人(加藤治彦君) お答えいたします。
 政府税調の平成十五年度の税制改革の答申におきまして、配偶者特別控除につきましては、「配偶者控除に上乗せして、言わば「二つ目」の特別控除を設けている現行制度は、納税者本人や他の扶養親族に対する配慮と比べ、配偶者に過度な配慮を行う結果となっている。したがって、当調査会としては、配偶者特別控除は廃止すべきであると考える。」と指摘されております。
 配偶者特別控除が創設された経緯として、当時、当時の標準世帯として、主に専業主婦がいらっしゃる夫婦、子二人の世帯を中心に税負担を軽減すると、これを念頭に置いておったわけでございますが、その後の経済社会情勢の変化から、男女の社会における活動の選択に対して中立的でないという指摘も多くなってきたところでございます。
 こういう状況を踏まえまして、政府税調におきましても、経済社会の中で行われる個々人の自由な選択に介入しないような中立的な税制を構築するとの観点から、人的控除の見直しについて考え方が示されておりまして、その意味で、配偶者特別控除の見直しというのは、配偶者の職業選択に主体的、中立的な税制とすると。
 これは、配偶者ということですので、必ずしも女性という、制度的には女性に限っておるわけじゃありませんが、実態として特に女性の方が専業主婦という場合が多いものですから、そういうことで、この中立的な税制にするということは、結果として男女共同参画社会の形成にも資するものというふうに考えております。

○川橋幸子君 そこで、大臣、心配なので伺いたいのですが、百二万円までの部分については特別配偶者控除は廃止すると。でも、それを超える部分の年収があるような人は一挙に逆転現象を起こさないように、収入が減少しないように、なだらかに斜めの線を引っ張って、この部分は残っているわけですよね。
 何となく、今までは二重に配偶者控除をもらって、もう随分おまけしてあげたんだから、今度は先行減税の財源として増税に、まあこの部分は返してくださいよというぐらいの印象しかないのでございますが、これはやっぱり性中立的な税制の方に向いている改正なんでしょうか。大臣に伺っているんです。もう次の質問に移りますので。

○国務大臣(竹中平蔵君) 基本的な役割分担として、我々、経済財政諮問会議で基本的な方向を議論して、制度設計は政府税調でということでの議論が今進行しているところであります。
 基本的な考え方としては、もう言うまでもありませんけれども、正にジェンダーニュートラルというか、個人のライフスタイルに対してやはり影響を与えないような税制でなければいけないということで様々な議論が積み重ねられてきている。現実には、しかし、政府税調での議論は、一方でやはり税収を確保して国庫の基礎を築かなければいけないというより現実に近いところでの制約の中での議論でありますので、様々な制約は出てくるのだと思います。
 この点は諮問会議と政府税調の間ではいろんな意見の相違もございまして、御承知のように、ある委員が、政府税調の議論は志が低いのではないかという批判をして話題になったこともございますが、これは、原則を大事にしながらも現実の中で実現可能な税制にしていこうという今までの議論の進捗であろうかと思います。
 我々としては、もちろんより幅広くニュートラルになるように、個人のライフスタイルに影響を与えないような税制を構築していくということでありますが、重要なのは、これから数年掛けて本格的な税制改革をしていくわけで、来年度はその初年度であるという点も踏まえて評価をしていく必要があるというふうに思っております。

○川橋幸子君 何か、先の将来展望まで考えられた上でまあ取りあえずここまでというのなら分かるのですけれども、激変緩和措置も入れてここまでというのは分かるんですけれども、何かここまで現在の特別配偶者控除の一定限度の廃止というものをジェンダーの方に引っ掛けて言われますと、随分都合の良いところだけつまみ食いされたというそういう印象が強いものですから、是非、将来展望まで含めてしっかりとしたものを考えていただければ、女性も払うものは払うというそういう態度になるかと思います。
 二点目は、今度は社会保険の適用緩和の問題。
 これは厚生労働省の方に関係するんだろうと思いますが、これだけパートが増えると、正規社員が減ってパート労働者等が増えると、これも財源がもたないためにというような印象が非常に強く受けてしまうのですが、適用条件を緩和して、週二十時間ぐらい、それから年収六十五万くらい、ここぐらいまで下げれば性中立的な制度になってパートの方々にも社会保険が適用できるというような、こういう話が伝わってくるのですが、現実を見ますと、むしろ社会保険の適用は事業主の方がコストアップになるために避ける嫌いがある。従来は女性の方が就業調整すると言われたんですけれども、このごろは、女性よりもむしろ企業の雇用管理の方で、細切れ、掛け持ちというのをパートの方々の一つ非常にシンボリックな物の言い方になってきています。
 労働市場がそこまで細切れ、掛け持ちに分断されていくというような状況で、これもまた性中立的な制度改正の方向と言えるのかというのが非常に疑問なのでございますが、まず、厚生労働省になりますか。

○政府参考人(井口直樹君) 御指摘の短時間労働者等の厚生年金等の社会保険の拡大問題でございますけれども、この問題につきましては、現在、平成十六年に年金改革を控えておりますので、社会保障審議会等におきましても一つの大きな問題として積極的な御議論をいただいておるところでございます。その中で、厚生年金等の社会保険の適用基準につきまして、先生から御指摘ございましたとおり、週二十時間以上あるいは年収六十五万以上としてはどうかというような御提案も行われております。
 ただ、いずれにいたしましても、就業形態が多様化している中で、短時間労働者等に対しましても、被用者にふさわしい年金保障の充実を図るということは大切だというふうに考えておりまして、なるべく今後は適用拡大を図る方向で検討していく必要があるんじゃないかというふうに考えておるところでございます。
 ただ、その際に、短時間労働者に係ります給付と負担の在り方、あるいは労使の保険料負担、あるいは年金財政への影響等の課題がございます。これらの課題とともに、今、先生の御指摘のございましたような就業調整といいましょうか、そういうような問題につきましても、そういうような可能性がないかどうか、これから十分検討していかなきゃいかぬというふうに考えておりまして、今後は年金制度改正を考える中で、国民的な議論を進める中で検討してまいりたい、かように考えておるところでございます。

○川橋幸子君 時間が短いので、今日はもう一問用意したのですが、これ中途半端に終わることを避けまして、またの機会を待ちたいと思いますので、むしろ物の考え方として基本的なことを竹中大臣の方に伺いたいと思います。ある種、情報提供の意味もございます。
 現在、非常に、先ほど申し上げましたように、かつては内部労働市場と外部労働市場があって、内部労働市場は基幹労働者、外部労働市場は非常に単純な労働を担う縁辺労働と言われていたのが、釈迦に説法でございますが、内部労働市場の中に多様な就業形態としてパート等が基幹的に入ってきているという、こういう大きな変化があるわけですね。
 それで、大臣、一番よくお分かりなのは、大学の中をごらんいただきたいと思うのです。次回に譲りたいと申し上げましたのは、首都圏大学非常勤講師組合という方々がいらっしゃいます。国公立だけじゃなくて私学を含めて今非常に大学の中もリストラといいましょうか、合理化といいましょうか、そういうところで正規の教授の方々の割合が減って、講座の半分ぐらいは非常勤講師が持っているのではないかという、こういうお話もあるわけですね。それを受け持っている方々の実態を言うと、お一人の方が一つの大学だけではなくて六大学ぐらいにまたがって週に何こまかを担当される。合算すれば就労時間は優に上がっている。講座の時間だけではなくて、下調べの時間とか大学間を移動する通勤時間を入れればもっとになると思いますけれども、それだけの正規の労働者性を持ちながら、これは細切れだからといって社会保険の適用がない、こういう状況があるわけでございます。
 そこで、私は、これを雇用形態の多様化という以上に多就業型の就労の時代に入っていると、こういう言い方をする方が多うございます。かつてレーガン政権の時代に、アメリカの規制緩和に対して、アメリカは雇用機会が増えたと大統領が威張って言ったら、その目の前にいらっしゃる女性の方が、それはそうでしょうよ、私は三つ掛け持ちやっていますと言ったという、これは非常にシンボリックな話として伝えられているわけでございます。
 そういうことから考えますと、セーフティーネットの在り方というのは、やっぱり平等な機会均等があるべきだ。セーフティーネットを享受する方も、もちろん保険料も負担するでしょうけれども、そうしたセーフティーネットの在り方についても対象者の中での機会均等というものが図られなければいけないと思いますが、こういう問題について次回聞きますけれども、単純なもう本当に当たり前のことを聞いているつもりでございますが、大臣のお考えを聞いて、終わりたいと思います。

○国務大臣(竹中平蔵君) 例として御指摘くださいました大学の非常勤講師のもの、立場というのは、これは実は正式の大学の教授、助教授になるには物すごい競争社会がありまして、その中でなかなか社会的にしっかりとした位置付けが与えられていない、大変大きな問題を抱えている分野だと思います。
 この分野が、今、委員御指摘のように、ある意味で象徴だと思うんですが、要するにもう我々が想定しているようなこれまでの何かステレオタイプの就業パターンでは割り切れないように労働市場が多様化している。労働市場が多様化しているということを当たり前の前提とした今の年金、社会・雇用保険のシステムにしていかなければいけないということ、もうこれに尽きているのだと思います。
 実は、そういう観点から、先般も経済財政諮問会議に坂口大臣においでをいただきまして、坂口大臣としては、この年金の問題についても雇用の問題についても、包括的な見方、ビジョンのようなものを総理に提示して、来年一年間ぐらい掛けてじっくりとこの抜本的な改革を議論したいというふうにおっしゃっておられる。これは大変重要なことだと思います。一年というのは年金改正、先ほど言った年金改正に合わせてという意味もあるのでありますけれども、そうした観点で、やっぱり多様性を認めたことによって、それに合わせた年金制度、雇用保険の制度等々を作ることによって、例えばオランダ等々は労働の問題を片付けたという一つの実績もある。そこは学ぶべきところは学んで、やはり真剣に御指摘のような問題に、多様性を前提とした仕組みの構築に取り組みたいというふうに思います。

○川橋幸子君 それでは是非その方向で、坂口大臣とお二人で二人三脚でセーフティーネットの在り方に大臣にも取り組んでいただきたいということを申し上げて、私、質問を終わります。
 ありがとうございました。