155-参-内閣委員会-2号 平成14年11月05日

平成十四年十一月五日(火曜日)
   午前十時開会
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  出席者は左のとおり。
    委員長         小川 敏夫君
    理 事
                阿部 正俊君
                亀井 郁夫君
                森下 博之君
                長谷川 清君
                吉川 春子君
    委 員
                阿南 一成君
                竹山  裕君
                野沢 太三君
                山崎 正昭君
                岡崎トミ子君
                川橋 幸子君
                松井 孝治君
                白浜 一良君
                山口那津男君
                筆坂 秀世君
                島袋 宗康君
                黒岩 宇洋君
                田嶋 陽子君
   国務大臣
       国務大臣
       (内閣官房長官)
       (男女共同参画
       担当大臣)    福田 康夫君
       国務大臣
       (国家公安委員
       会委員長)    谷垣 禎一君
       国務大臣
       (経済財政政策
       担当大臣)    竹中 平蔵君
       国務大臣
       (規制改革担当
       大臣)      石原 伸晃君
       国務大臣
       (科学技術政策
       担当大臣)    細田 博之君
       国務大臣     鴻池 祥肇君
   副大臣
       内閣府副大臣   根本  匠君
       内閣府副大臣   米田 建三君
       外務副大臣    矢野 哲朗君
   大臣政務官
       内閣府大臣政務
       官        大村 秀章君
       内閣府大臣政務
       官        木村 隆秀君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        鴫谷  潤君
   政府参考人
       内閣官房内閣参
       事官       村上 康聡君
       行政改革推進事
       務局行政委託型
       公益法人等改革
       推進室長     小山  裕君
       内閣府大臣官房
       審議官      加藤 裕己君
       内閣府政策統括
       官        大熊 健司君
       内閣府政策統括
       官        山本繁太郎君
       内閣府男女共同
       参画局長     坂東眞理子君
       内閣府沖縄振興
       局長       武田 宗高君
       外務大臣官房審
       議官       渥美 千尋君
       環境省総合環境
       政策局環境保健
       部長       南川 秀樹君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○内閣の重要政策及び警察等に関する調査
 (我が国の科学技術政策に関する件)
 (いわゆる従軍慰安婦問題に関する件)
 (総合デフレ対策に関する件)
 (北朝鮮による拉致被害者等に関する件)
 (男女共同参画社会の形成に関する件)
 (靖国神社問題に関する件)
 (総合防災対策に関する件)

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○田嶋陽子君 無所属の田嶋陽子です。
 私は、ずっと女性問題というのをやってきまして、それでやっぱり女性政策ということを真っ先にやっていただきたいなと考えているんですけれども、何かというと、やっぱり女、女と言うなというそういう言葉がすぐ出てくるんですね。でも、私が何で女性政策のことをやっているかといいますと、やっぱり日本という国が二十一世紀、真っ当な国として生き延びていくためには女性政策をきちんとやらないと駄目だという信念を持っているんですね。
 今の日本という国は、私は、フラミンゴみたいに片足立ちの国だというふうに思っているんです。その片足は何かというと、男性であって、その男性が女性を背負って、家族を背負って、そういう国だというふうに思っているんです。元気のいい男性は、家族を背負って、子供を背負って、自分で立っていることを生きがいだと思っていると思うんですけれども、こうやって不景気になってきて少し国がかしいでくるような印象のときには、男性たちはもう非常につらくて大変で、よく言われているように、それに耐え切れなくて自殺する人もいらっしゃるわけです。
 ですけれども、もし男性が背中から女性を下ろして、女性を独り歩きさせたら、この国は人間の資源はすごく豊かです。女性という資源は、私に言わせると、大学の教員やっていましたから分かりますけれども、社会に出るまではむしろ男性よりも優れた資源なんですね、そういう言葉を使うと申し訳ないかもしれないんですけれども。それなのに、社会に出るとやはり家族を背負う男性が優先的だといって、就職の世話も男性が中心になされます。そして、せっかく大学まで来た女性たちの能力が生かされないままに終わってしまっているんですね。
 それに対して、今度、この間、所信表明で福田官房長官もおっしゃったように、女性の能力を生かすようなそういう施策をするということをおっしゃってくださったんですが、どうも私にはまだそれが絵にかいたもちのような気がして信じられないんですね。福田官房長官はそのときの所信表明で、現在直面する最重要の課題は日本経済の再生だとおっしゃっています。総合的な対応策を取りまとめたいともおっしゃっているんですが、私は、このままでは日本経済は幾ら再生させようといったって、へんぱでうまくいかないような気がするんです。
 ということは、不景気対策というのは、やっぱり国民が生き生きと生きていないと不景気対策にはならないような気がするんですね。みんなお金使いません。しかも、年配の人たちが貯金の大半を持っているようなこの国で何でお金を使わないかといえば、皆さんも御存じのように、みんな将来が不安なわけですね。将来が不安なところで景気対策なんてできないというふうに私は思っているんです。
 その将来の不安をなくすためには、何で不安かといえば、自分たちの老後をだれが見てくれるんだと。スウェーデンのように五〇%税金払っても、政府を信頼していれば、みんな税金払って、そして安心して老後を暮らせるとなれば、お金をみんなためなくてもいいんですね。でも、日本は、そう言っては福田官房長官を前にして悪いんですけれども、みんな政府を信頼していません。ですから、無所属も増えます、無党派も増えます。まあちょっと話は違います、違うかもしれないんですけれども。
 ですから私は、景気対策のための何が一番大事かといえば、少子化対策だと思うんです。すなわち、女の人たちがみんな二人三人と子供を産むような、産めるような社会にすることが真っ先の景気対策の条件だと思うんですね。遠いようでありながら一番近い道がこの少子化対策だと思うんです。
 少子化対策というのは、女の人たちの静かなストライキです。みんな仕事を持っても家庭を持てないとか、仕事を持って家庭を持ったら死ぬような苦しみをするとか、ましてや子供を産んだら、みんなひいひい言っているんですね。それでも均等法ができたおかげで、そしてみんな働くようになったけれども、男の人の三〇〇%働いている女性もいます。男の人も大変ですけれども、日本はみんなが大変になってきました。
 そこで、きちんとした政策が必要だと私は思います。その一番大事な、遠くて近い政策が、近くて遠い政策のように見えるその政策は少子化対策です。少子化対策の抜本は、今申し上げたように女性の静かなストライキをやめさせることです。この静かなストライキというのは何かといえば、女性は子供を産んだら真っ当な人間生活ができない、家庭生活ができない、苦労がある、親や近所の人を見てみんなそう思うわけですね。それよりも今を楽しんだ方がいい、そういう考え方の人たちがたくさんいます。
 ですから、女の人たちが、均等法ができた上に、今度、働きながらも家庭を持てて、そして子供も産めるようなそういう社会にしていく。これはみんなが言っていることですが、施策としてはなかなか実行されません。これが実行されない限り、私は日本の不景気対策なんか幾ら竹中大臣が頑張ろうと無理だと思います。
 そしてこれを、少子化対策は私はちょこちょこつまみ食いの政策では駄目だと思うんです。総合的に一つ一つ円を描くようにリンクにしてやっていかなければ駄目な政策なんですね、これは後で説明しますけれども。そのリンクが描けていない、円が描けていない、ぼつぼつぼつぼつみんなぶった切りの縦割りの政策。これこそ、超党派でも何でもいいですから横つながりの政策ができなきゃいけない。
 そして、その横つながりの政策をやるためには、私は、何回も話に出ていると思うんですが、まず男女平等省、省が無理なら庁でもいい、環境庁ができたんですから。女性省が嫌だったら、男が入れてもらえないと思って名前だけでも嫌だと思うのなら、男女平等省というものを作ってほしい、早急に作ってほしい、そして総合的な施策をそこで全体を見ながらやってほしい。
 現在は、厚生労働省にどこどこの省にと、みんな政策は分散しています。それが統合されていないから、せっかくいい政策を作っても実行されないんですね。みんなどこか谷間に落ちてしまう、そして予算も取れない、そういう状況では私は少子化対策は駄目だ。すなわち、女性政策は実行できない、その結果みんなが元気にならない、老後が不安だ、そして景気対策は良くならない、私はそんなふうに考えています。
 そしてまず、例えば私は、女、女と言うなと言う人たちはどういうことを言うかというと、政治評論家はこう言います。まず景気が良くなってから女の問題だよ、いつもそう言われてきました。女の問題は後回し後回し。それなのに、バイアグラが出たときは一年以内で許可されて女のピルは三十八年たって許可された、すべてこうですね。
 そして、女性問題はずっとあるのに、環境問題が出てきたら、まず環境庁ができた。これは、環境問題というのはみんな人類にかかわることだからという言い訳ですが、私がさっき言ったように、女性問題というのは女性だけじゃなくて全部、男性も子供も老人も全部かかわる実は目に見えない重大な問題なんですね。それでも後回しにされてしまう。
 そして、介護の問題も実はこれは女性問題なんですね。ですけれども、介護に関しては皆さんもう年配の方が多いし男性が多いからとっとっとっと進んでいっちゃった。たとえ、たとえ不備なことがいろいろあろうとも軌道に乗っている。だけれども、育児の問題は女と子供と決められているからなかなか先に進まない。本当は育児の問題が将来の日本を担う大事な問題なのに、そこを女の問題だからといって男の人たちは真剣に考えない。そして、ほとんどの政治家が残念ながら男性です。それでも今はいろんな施策を官房長官を始めとして出してくださっているんですけれども、実行ができていない。私は本気で日本という国を二十一世紀に向かって憂えているんですね、これでも。
 私は、そこで、とにかく少子化対策としてそれが一番の抜本問題だとしたら、ここに女性省を作ってほしい。そして、もう一つ提案があります。女性省が嫌なら男女平等省です。
 もう一つの提案は、今日たしか臨時国会に構造改革特区法案が出されるはずです。何で坂東さん、この構造改革特区のところに男女平等政策特区を作らないんですか。何でここにその優れた政策をこの特区で実験してみる地域に手を挙げさせないんですか。歯がゆくて見ていられないですよ。こここそ未来に向かっての日本という国を実験してみるいいチャンスじゃないですか、特区を。どうしてそういうアイデアを出してくださらないんですか。
 ちっとも出してくださらないから私が言います。まずその特区でどういうことをするかというと、皆さんはそんな女のことをやったら経済は駄目になると言うけれども、違います。国民の半分の女の人にきちんと働いてもらうんです、税金を納めてもらうんです。
 今の専業主婦の人たちは、自分の健康保険の掛金も年金も払っていません。ましてや税金も払っていないんですね。これを計算してもらいましたら、もし一千三百万人の専業主婦かもしれない女性たちが働いたら二・七兆円の収入がある。パートとそれから半々に働いても一・七兆円の収入がある。その特区でそんな収入はないですけれども、みんなに働いてもらって、そして国民、二十歳を過ぎたら、あるいは十八を過ぎたらみんなが税金を払う。
 男の人たちは女の人を専業主婦一人抱えて便利をしているんじゃないですよね。そんなのよくないよ、もう。女の人にきちんと働いてもらって、その代わりワークシェアリングで男の人はもう十四時間なんか働かなくてもいい、一日に。きちんと八時間働く、あるいはワークシェアリングですから六時間働く、そして女の人も六時間働く。そして、スウェーデンのようにとは言わない、スウェーデンは皆午後三時に帰ってきます、男も女も。日本は午後四時でもいいです、早めに帰ってくる。そしてワークシェアリングをやる。そして、パートでもきちんと生きていけるようにパートの最低賃金を上げる。そして、同一労働同一賃金を実践する。それから、ポジティブアクションを実践する。
 女性起業家にはきちんとお金を出す。そして、今ここにいろんなあれがありますが、女性起業家にお金を出しても、時間がたつと女性起業家たちは一年ぐらいでぽしゃっちゃうんですね。男の人たちなら商工会議所とか何かがあって支え合うけれども、女の人たちはそういうところに入れてもらえない。すなわち、せっかく起業を支援してもケアがないと企業は続かないんですね。あらゆるところがそういう途中で駄目になっちゃう施策ばかり。
 それから、せっかく公務員の女性が試験を受けて昇級できるようにしようとしても、何と女性たちが試験を受けて昇級しようとしない。なぜかというと、やっぱり保育施設がきちんとしていない、育児に対する施策がきちんとしていない。だから、女の人たちはそんなに苦労をするんならといって試験を受けないから、女性の社会的地位も上がらない。もう一事が万事、施策はあってもばらばらということですね、さっき言ったことの繰り返しになりますけれども。
 それから、今男の人たちが一生懸命育児をしようとしても、きちんとそういう教育を受けていない。女の子はおままごとをするというのは、子供のときから専業主婦になる練習をすることです。男の子がぶうぶう、自動車で遊ぶのは、大人になってから自分で給料を取るための仕事をするためです。すなわち幼児教育のときから性別役割分業をやっているんですね。それでは駄目なんです。子供のときから特性に合った遊び方をさせる。女の子だからピンク、男の子だからブルーという色差別もやめる、そういうジェンダーフリー教育、言ってみれば性別役割分業に反対した幼児教育から始めなければいけないです。
 そして、みんな男の人も女の人も働きます。ですから、各地域に、私は今考えていることは、共同ダイニング作りです。みんなが帰ってきたら、仕事から帰ってきたら自分で御飯を作りたい人は作ればいい。でも、忙しい人はその地域の共同のダイニングに行けば、そこで近所のおじいちゃん、おばあちゃんたちが御飯を食べている。早く学校から帰ってきて、お父さん、お母さんがいない子供でもその地域のダイニングに行ったらどこかのおじいちゃん、おばあちゃんがいて一緒に御飯を食べてくれる。そこにお父さんとお母さんが帰ってきて、みんなでそこで、地域で一緒に御飯が食べられる。嫌な人はうちで作ればいいけれども、忙しい人はそうやって地域みんなで仲良くなれるような、そういう地域のそういうダイニング作りもしたい。そして、そういうおじいちゃん、おばあちゃんたちは、嫌でも自分たちの部屋に帰ればまた子供たちが、よその子、自分の血のつながりなんか関係ないです、遊びに来てくれます。そうやって大きな介護と育児の輪ができるような、そういう地域の共同体作りをしたいと思います。
 私は、こうやって特区を作っていただきたい。そして、皆さんがぼつぼつ作っているその政策をその特区で実験してみてほしい。少なくとも、子供が生まれてから仕事を持つまでに三十年、いろいろあっても三十年というふうな時間を見ていたら、その間でどんな効果が上がるのか。その特区で、実験と言うと言葉は悪いかもしれないですけれども、やってみてほしい。
 そして、そこは経済効果、例えば私が知っている鷹巣町、秋田県の鷹巣町は理想的な介護のシステムを作っただけでいろんな人が全国から来るわけですね。物すごく経済効果があります。それから、長野県の北御牧村もそうですね。ここも一生懸命デンマークやスウェーデンから習って、そして町づくりをしました、介護の。そしたら、いろんなところで、人たちが訪ねてきて、いろんな意味での経済効果もあります。この間訪ねたデンマークのコペンハーゲン市では日本語用のパンフレットまで作っています。ということは、介護に関しては日本人はみんな関心を持ってデンマークのコペンハーゲン市を訪ねていっているということですね。大変な経済効果があるわけです。
 たった一つ取っても、一つその特区で特徴のあることをやって、男女平等、年功序列なし、子供大事にする、老人大事にする、みんなが働く、そういう町を取って試行錯誤で頑張っていったら、そこはみんなが集まってくるおもしろい町になると思います。そうやって私は特区を作っていただきたい。
 この案に関して、福田官房長官、どうお考えでしょうか。女性省と二つについてお答えください。

○国務大臣(福田康夫君) 大変すばらしい提案だと思います。
 特区もいろんな取組方ありますので、ですから、そういう中で過度にならぬぐらいの適当な取組方をするところがないかどうか。これは特区担当の大臣によく言っておきます。

○田嶋陽子君 できれば、お返事はいつまでにいただけるか。せっかく特区が始まったので、私としては市町村に早く声を掛けて、それを実験してみたいところがあるかどうか手を挙げてもらいたいと思うんですね。私は、いろんな政策をやっている市町村があるんです、あると思いますし、聞いておりますので、そういうところに声を掛けてやってみるかどうか、是非返事を欲しいんです。

○政府参考人(坂東眞理子君) 今のところ、私どものところへは男女共同参画あるいは男女平等の施策をする特区について御希望をされている公共団体があるという情報は得ておりませんけれども、できるだけ早くそういった公共団体がないか調べて、お答えするようにいたします。

○田嶋陽子君 いつもできるだけ早くというのは一年たったりとかありますので、できれば一週間以内とかあるいは一か月以内とか言っていただけるとお尋ねできると思うんですが、あるいはここでまた質問させていただくことができると思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(坂東眞理子君) 地方公共団体の方でどのような準備が進んでいるかということが分かりませんので、いつまでというふうに期限を切るのは難しゅうございますが、一か月以内を目指して頑張ってみたいと思います。

○田嶋陽子君 ありがとうございます。
 ですけれども、やはりこちらからそういう意図があるという広報とかそういうのがないと、そんな話がなかったからどこも考えていないというところがありますけれども、でもそういう話があるんならやってみようかというところも出てくると思うので、まずそういうことを全国に通達出してもらう、他の特区と同じようにここにある十九、二十の特区と同じようにやっぱり募ってほしいと思うんですが、いかがでしょうか。

○委員長(小川敏夫君) どちらですか。

○田嶋陽子君 それじゃ、福田官房長官。

○国務大臣(福田康夫君) 男女共同参画担当といたしましては、是非これは試してみたいと思っておりますので、担当局で直ちに照会をしてみたいと思います。

○田嶋陽子君 本当ですね。では、お二人で相談なさって、是非じゃ二週間ぐらいでお返事お待ちしてよろしいでしょうか。よろしいですか。

○政府参考人(坂東眞理子君) 努力します。

○田嶋陽子君 ありがとうございます。
 それでは、先ほど最初に申し上げた女性省のことについては、前にも省庁再編のときにこの話は出たと思うんですが駄目になりましたよね。どうして駄目になったのか、今回もう一度私は提案しますけれども、その経過をお話しください。坂東局長、お願いします。

○政府参考人(坂東眞理子君) 男女共同参画行政を推進していく上で、今、先生御指摘のとおり、各省縦割りではなしに総合的に進めていくことが必要であるということは一般的な認識になっていると思いますが、ナショナルマシーナリー、政府としてどのようにこの行政を進めていくかということについて、国連等、いろいろ専門的な委員会等での提案によれば、特別に女性問題あるいは男女共同参画関係の行政だけを担当する省あるいは部局を政府の端っこの方といいますか、周辺的な部分に設置するよりも、できるだけ政府の中心に近い部局で男女共同参画の視点を持ち、あらゆる施策に男女共同参画の視点を反映していくように努めることがより効果的であろうと。その周辺的なところでだけ行政を担当することになりますと、それはそこの仕事だからということで、他の省庁、他の部局が自分は関係がないということになりがちであると。むしろ、真ん中に近いところで総合調整、ジェンダーの視点をあらゆる部局に持っていただくようにというふうに働きを掛けていった方がより有効であるということでこういった新しい中央省庁再編の中での位置付けになったというふうに私は伺っております。

○田嶋陽子君 そういういきさつでできたということで、そのことは分かりましたけれども、それに対して、こうやって時間がたってみますと、坂東局長はどのような思いで今いらっしゃいますか。満足していらっしゃいますか。

○政府参考人(坂東眞理子君) 大変厳しいお問い掛けだと思います。
 率直に申し上げまして、私どもはまだまだ力不足、大変、総理大臣、官房長官の御支援をいただきまして男女共同参画を推進するために努力をしておりますが、十分な成果を上げたかと言われますと、例えば仕事と子育ての両立支援策、閣議決定をいたしました。女子公務員の採用・登用の促進について、あるいは審議会の女性委員の登用について等々、努力してそれなりの効果は上がっていると思いますけれども、十分であるかと言われればまだまだなすべきことの方が多いという状況だと思います。

○田嶋陽子君 今、総理大臣、官房長官の支援ですか、助力ですか、助けをいただいてということをおっしゃっていましたけれども、本当にそうですか。

○政府参考人(坂東眞理子君) はい、そのとおりです。大変、総理大臣、官房長官からは、所信表明演説、施政方針演説、あるいは男女共同参画会議の議長として大変強い御指導をいただいております。

○田嶋陽子君 福田官房長官、本当にそうですか。官房長官は強い御指導をしていらっしゃいますか。私にはそう見えないんですけれども。官房長官は忙し過ぎます。少しアリバイ作りに精を出していらっしゃるように思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(福田康夫君) これは、政府も今本当に、今、坂東局長も謙遜して言っていましたけれども、本当に力を入れてやっております。これがどういうように国民の間に普及していくか、波及していくかということになるんでありますけれども、これは国民の意識の問題ということがありまして、これはこれまでの日本人の慣習とか社会の在り方と、いろいろなものが絡み合っているわけで、これを変えていくということなんですね。この意識を変える、また制度とかそういうものも含めてすべて変えていかなきゃいけないということですから、これはせっかちにやってもいかぬことだと思います。しかし、政府が力を入れてやるということの効果というものはこれは必ず出てくると思っております。

○田嶋陽子君 意識改革ということは、政府がやってくださるのもとても有り難いんですけれども、でも、私たちみんな、民間人も意識改革ということではみんな頑張っているんですね。政府にやっていただきたいことは、やっぱり中途半端でないきちんとした男女平等政策を作って、そしてその政策を実行する人を援護してほしいということなんですよね。
 例えば、千葉県で、この間、自民党の千葉県支部から注文が付いて駄目になりましたよね、男女共同参画条例の文章が削られました。どういう文章が削られたかというと、こういう文章です。県は、一般競争入札及び指名競争入札に参加するに当たっては、男女共同参画の促進に関する取組の状況を考慮することができる。すなわち、きちんとその会社で男女共同参画に関する取組ができていないところは、やっぱり一般競争入札に関しても不利だということですよね。
 これ、例えばスウェーデンだったらそういうところは一般入札させません。ですけれども、日本では考慮できるというその言葉、あいまいな言葉ででも、それでもこういうことがきちんと中間まとめの中で、女性チャレンジ支援策の中にあるので、きちんとこうやって千葉では入れたわけですね。そしたら、自民党の千葉県支部からいちゃもんが付いて、結局は、堂本さんはこれを削ることになったんです。自民党です。これをやっぱり官房長官は支援しているとおっしゃるんですか。そこのところ、見解をお聞きします。

○国務大臣(福田康夫君) 地方公共団体が制定します男女共同参画に関する条例は、既に三十八都道府県において制定されております。男女共同参画社会基本法の趣旨を踏まえて、各地方公共団体において、その地域の特性に応じて、また住民の意向などを踏まえて条例案が作成されているというように認識をいたしております。
 そういう意味で、ただいまの千葉県のこともございます。千葉県においてもいろいろな議論がなされた上で条例が制定されたと思います。しかし、男女共同参画の促進は一層進むことを当然我々としても期待をいたしております。
 今この例示がございましたけれども、これをもって千葉県が男女共同参画形成に前向きでないというように断定することはできない。いろいろな方法があろうかと思います。そういうことを私もよく調べていないので言及できませんけれども、全体を見て判断すべきことだと思います。

○田嶋陽子君 千葉県が前向きでないということではないと思います。自民党が前向きでないわけですね。自民党が邪魔なさったわけでして、そういうことに千葉県は一生懸命そういう条文まで入れて頑張っているわけですけれども、それを何か千葉県支部の自民党の人たちがつぶしたということですよね。
 これに対して福田官房長官は、同じ自民党の方として、しかも内閣にいらっしゃる方として何とかできなかったかなと。私は、支援していると先ほど坂東局長がおっしゃっているんですから、そういうことで何かできないのかなというのを非常に思うんですけれども、福田官房長官、お願いいたします。

○国務大臣(福田康夫君) 千葉県の中でこれは議論されたわけですね。ですから、自民党の仮に、私も事実関係はよく知りませんけれども、自民党だけということじゃなくて、千葉自民党支部もこれも県民ですから、ですから、そういう意見も有力な意見として取り入れたものということなのかどうか。いずれにしても、地方公共団体それぞれの特性、それから意見等に応じてこの問題を進めていくということであろうかと思います。

○田嶋陽子君 それでは、そのことに関してはもう少しこちらでも考えます。
 それで、山口県の宇部市のことなんですけれども、今、日本全国で男女共同参画推進条例というものを作っているわけですけれども、この宇部市では、男らしさ、女らしさ、専業主婦を尊重する、そういう条例を作ったわけですね。これは明らかに時代錯誤といいますか、条例を作るに当たっては、これはむしろ先祖返りといいますか、これを日本の文化と言いますが、文化というのは言わせていただきますと、これはやはり力の強い人たちが作ってきたものであって、日本ではこれはやっぱり男文化ですね、男性を中心にした文化であるわけです。そこに舞い戻ってしまったときに、果たして内閣府にある男女共同参画推進の場所ではこれを基本法に照らしてどうか言う権利はあるんですか。あるいは言っていらっしゃるんですか。言えるんですか、言えないんですか。

○政府参考人(坂東眞理子君) 山口県の宇部市の男女共同参画関係の条例につきましては、文章の中に、男らしさ、女らしさ、一方的に否定することなくですとか、申し訳ありません、今手元にございませんので正確な文章ではないかもしれませんけれども、専業主婦の役割を否定することなくというような表現が入っております。
 我々は、基本法の趣旨はもちろん一方的に否定することをしておりませんので、その条文自体においては矛盾することはない。そしてまた、地方公共団体が制定する男女共同参画に関する条例は、基本法の趣旨を踏まえた上で各都道府県公共団体におきましてそれぞれ特性に応じた条例を作っていただくということですので、一応辛うじてその範囲内かなというふうに考えております。

○田嶋陽子君 時間が来てしまいました。
 私は、国会議員になった一年前ですけれども、どうして女性省というのができないかというのを聞いたら、女性省ができたら非常に弱い省になるから予算も取れないし何も政策はできないというふうに聞いて、そしてそれよりも内閣府の中にあった方がいいという話を聞きましたが、先ほどのお話も伺っていたり状況を見ていますと、やはり女性の問題に関することは、内閣府にあっても、幾ら官房長官のお力添えがあってもうまく進まない。どうもやっぱり片手間のことになってしまうような気がします。
 そこで、私はやっぱり男女平等省。ということはなぜかというと、予算が取れないと、今地方でせっかく皆さんがいい政策を作ってくださっても、人件費もないということでいろいろ広がらないんですね。そこで私は、繰り返しになりますが、もう一度、男女平等省、そしてそれを実現する経済特区、男女平等政策特区を作ってくださるようお願いして、質疑を終わります。