154-参-共生社会に関する調査会-4号 平成14年04月10日

平成十四年四月十日(水曜日)
   午後一時開会
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   委員の異動
 四月九日
    辞任         補欠選任
     岡崎トミ子君     谷林 正昭君
 四月十日
    辞任         補欠選任
     吉川 春子君     大沢 辰美君
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  出席者は左のとおり。
    会 長         小野 清子君
    理 事
                有馬 朗人君
                清水嘉与子君
                田浦  直君
                羽田雄一郎君
                風間  昶君
                高橋紀世子君
    委 員
                有村 治子君
                大仁田 厚君
                大野つや子君
                小泉 顕雄君
                後藤 博子君
                段本 幸男君
                中原  爽君
                山下 英利君
                郡司  彰君
                小宮山洋子君
                鈴木  寛君
                谷林 正昭君
                平田 健二君
                弘友 和夫君
                山本 香苗君
                大沢 辰美君
                林  紀子君
                田嶋 陽子君
   副大臣
       内閣府副大臣   松下 忠洋君
       法務副大臣    横内 正明君
       文部科学副大臣  岸田 文雄君
       厚生労働副大臣  狩野  安君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   安倍 嘉人君
   事務局側
       第三特別調査室
       長        岩波 成行君
   政府参考人
       内閣府大臣官房
       審議官      石川  正君
       内閣府男女共同
       参画局長     坂東眞理子君
       警察庁生活安全
       局長       黒澤 正和君
       文部科学省生涯
       学習政策局長   近藤 信司君
       文部科学省初等
       中等教育局長   矢野 重典君
       文部科学省高等
       教育局長     工藤 智規君
       厚生労働省健康
       局国立病院部長  河村 博江君
       厚生労働省雇用
       均等・児童家庭
       局長       岩田喜美枝君
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  本日の会議に付した案件
○共生社会に関する調査
 (共生社会の構築に向けてのうち児童虐待防止
 に関する件)

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○高橋紀世子君 やはりどう考えても、今の学校の現状はある程度文部省が決めて、そのとおり。やっぱり子どもから、学校から地域から何を勉強しようよというふうになってくると活性化すると思いますし、この親権のことにでも、余りにも親が手取り足取り責任を取っているということは子ども自身が生き生きとしていかないような理由になっていると私は思えてなりません。
 ですから、やはりこの親権と子どもの権利というのは、もう少し子ども自身が権利を持つように変えていった方がいいんじゃないかと思っておりますけれども、そんなことで今日の質問は終わらせていただきます。

○田嶋陽子君 社民党の田嶋陽子です。よろしくお願いします。
 これまで様々な各論について質疑をしてきました。お話を聞くたびに、あるいは話すたびに、ドメスティック・バイオレンスや児童虐待の根本原因というのは一体どこにあるんだろうかという疑問を抱きます。現在、各省庁では担当者を中心に様々な対応策を考えておいでですが、その対応策が対症療法に終わらないためには、ドメスティック・バイオレンスや児童虐待を生まないための抜本対策を考えていく必要があると思います。今日は、その視点から質問させていただきます。
 厚生労働省が各都道府県の児童相談所に寄せられた児童相談の内容に関する統計を取っていますけれども、その統計によれば、二〇〇〇年度の虐待者の内訳は、実母が六一・一%、実父が二三・七%です。実の親による虐待は八四・八%に上るわけですが、その中でも実母によるものは実父の二・六倍、約三倍近くですね。しかも、実のお母さんによる虐待は前年度よりも四千人以上増えていて、一万八百三十三人になっているということです。なぜ実母が多いかと言えば、主に子どもの世話をするのが圧倒的に母親だということになると思うんですが。
 そこで、お伺いします。この虐待者の半数以上を占める実母は、どのようなことに不安や不満を感じてストレスのはけ口として子どもに当たってしまうとお考えでしょうか。岩田局長、お願いします。

○政府参考人(岩田喜美枝君) 児童虐待は、何と言うんでしょうか、家族が抱えておりますいろんな問題、例えば経済的な事情がどうかですとか家族関係がどうかですとか、あるいは家族の心理的、精神衛生的な問題がどうかとか様々に複合的な要因があって起こっているということだというふうに思いますので、母親が、何とい言ましょうか、母親個人がどういう問題を抱えているかというようなことだけでは律し切れないというふうに思っております。
 しかしながら、一般的に想像されますのは、都市化が進み、そして核家族化が進み、非常に育児が孤立した状況の中で行われていることが多いということ、そしてそれが、ほとんどが女性が一人で担っているということ、そういったような育児についての不安とか負担感ですとか、そういうことが非常に心理的な重荷になっているということは十分予想されます。

○田嶋陽子君 先ほど岩田局長が地域の子育てということを平成十四年度から力を入れてくださるということで、その面からは安心してまたよろしくお願いしたいと思うんですけれども、この複合的という理由が、大変いいんですけれども、一つには何か具体性に欠けるというか、問題ですから一つ一つ形を付けていかなければいけないと思います。
 そういう視点から見てみますと、ここに社会福祉法人の子どもの虐待防止センターが調査したものがあります。それは、首都圏一般人口における児童虐待の調査報告書なんですけれども、千五百人を対象にして一九九九年に調査をしました。
 そこでは、虐待あり、または虐待傾向の人に夫との関係が悪い人という数字があります。児童虐待をしている人は虐待をしていない人に比べて五倍も夫から暴力を振るわれている人がいるということです。ここはやはり一つ注目すべき点だと思うんですね。夫に暴力を振るわれた妻が子どもにそのストレスの矛先を向けるということは、この調査でもある程度明らかなんではないかと思うんですけれども。
 そこで、岩田局長にお伺いします。厚生労働省は、今後、児童虐待相談の虐待者、すなわち半数以上を占める母親がDV被害者であるかどうかという統計を取る方針はおありになりますか。

○政府参考人(岩田喜美枝君) 児童虐待とDVの問題が重複したり関連したりする、そういうケースがあるということは承知をいたしております。ですから、児童虐待への対応、DVへの対応をする場合にはそういうことをよく念頭に置いた機関間の連携というものも非常に重要になってくるというふうに思います。
 先生今お尋ねの統計的な把握の問題については、先ほど申し上げましたように、個々のケースもそれぞれすべてのケースが大変複合的な要因で問題を起こしておりますので、それを児童相談所の方で時間を掛けて家庭内の人間関係なんかを把握していくプロセスの中でDVの問題があったというようなことが判明するというようなケースがあるわけでございます。これが現状ですので、児童相談所の業務として児童虐待とDVの重複、関連ケースを全数統計的に機械的に把握するということはなかなか困難ではないかというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、この児童虐待とDVの関係については今後事例が集積されていく中で、どういうことでそういう関係になってきているのか、そういうケースを救済するためにどういう対応があるかということについての研究を進めるということは重要であるというふうに思っております。

○田嶋陽子君 よろしくお願いします。家庭内での力関係の構図を見るためには、やはりそういう数があると見やすくなると思いますので、よろしくお願いいたします。
 次に、坂東眞理子局長にお伺いいたします。
 今の質問とは逆なんですけれども、今年の四月から配偶者暴力相談支援センターがスタートしました。そこに夫から暴力を受けたDV被害者、女性が子どもを連れて相談に来た場合、そのDV被害者、女性が子どもに対して虐待しているかどうかを把握する方針はおありでしょうか。

○政府参考人(坂東眞理子君) 各都道府県の配偶者暴力相談支援センターは去る四月一日からその運用を開始したところでございまして、一か月ごとの統計を、どういう相談があるかということを統計を取ることにしておりますけれども、まだ今の段階では把握しておりませんが、この支援センターは、いろいろな問題を抱えるひどい目に遭った被害者の方たちの相談、カウンセリングあるいは一時保護、各種情報提供などの仕事を行うという施設ですので、御指摘の相談に来た被害者の人が今度は加害者になるんじゃないか、児童虐待の加害者になっていないかについて聞くというのは、そういう状況から考えますとなかなか難しいのではないかなと。御本人の方から、自分は児童虐待をしているというふうな申出がない限り、相談員の方たちが、今本当に精神的に傷付いている被害者から児童虐待の事実を聞き出すというのは難しいと思ってはおりますが、そのままにしておくわけにはいきませんので、内閣府におきましては、何とか負担にならないような調査の方法を別途工夫いたしまして、次の世代にそうした配偶者からの暴力が悪い影響を与えないか、いろいろな付随的な部分についてもいろんな角度から調査研究を行いたいなと思っております。

○田嶋陽子君 要するに、今もおっしゃってくださいましたけれども、暴力を受けているかもしれない母親が自分が受けた暴力を子どもに返していく可能性があるということですよね。
 これは、現在でも世界じゅうで、今テロが起きてからみんなが口にしていることですけれども、暴力の連鎖ということは、世界じゅうで起きていることが実はこの小さな家庭の中でも起きているということです。これが問題なんですね。世界と家庭は切り離せない、同じような状況が起きているということ。そして、先ほど申し上げたその調査の中でも、虐待をしている人の傾向としては、夫がいろんなことに非協力的だからとか、その結果よくけんかをする人が多い。これは、さっきの岩田局長のお話によると非常に複合的な難しい状況ということを考えれば、非常に簡単そうに見えますが、意外と男女関係の力関係を表しているような気がします。
 私が思うには、いろんな考え方があると思いますが、この児童虐待をなくすためには、家族の中の、特にその主宰者である夫と妻の関係性を良くしなければだめだと思います。私がいろいろ研究したところによれば、いろんな複雑な構造を突き詰めていくと必ずそこには男と女の力関係、いびつな力関係が存在しているということです。
 前回の共生社会の調査会で汐見稔幸参考人が夫の育児責任の意識がないということを指摘されていました。夫の育児責任がなくて、夫との関係が良くないことがどのような結果につながるのかを端的に示す調査があります。これは若い夫婦の間のことなんですけれども、先ほどの首都圏一般人口における児童虐待の調査報告書では、千五百人の対象者の中で、子育て協力者がいる人は千三百七人なんですが、子育て協力者がいない人は百九十三人。その千三百七人のうち八〇%が虐待なしです。子育て協力者がいない百九十三人のうち七一%が虐待なしです。これを整理しますと、協力者がいる方といない方と比べますと、約二倍ですね、七%と一四%で。協力者がいない方は一四%児童虐待があるということです。
 これは、先ほど岩田局長がおっしゃられたように、夫の協力がない場合は、やっぱり地域の協力とかいろんな協力とか、今そういう対応策を考えてくださっていて結構なんですが、一番身近な人で、一番関係改善ができそうなその夫の協力がないということは、同じ家族を作る相手として非常に情けないことだと思います。単純比較はできないにしても、子育て協力者がいる人といない人と比べて、虐待ありの割合が二倍だということ、これは大きな問題だと思います。
 それで、これはある意味では政治的、政策的な国の問題でもあると思います。厚生労働省は三月二十七日に女性労働白書を公表なさいましたけれども、その中で、子育て期の三十代男性が長時間働いている偏りを見直す必要があるとした上で、短時間労働制の導入など、男女間の、世代間での多様な就業形態の整備が必要だとしています。そのとおりだと思います。また、白書では、三十代男性が家族団らんを大切に思っていながら、ほかの世代の男性よりも長時間働かざるを得ない状況に置かれている、こういうことも指摘なさっています。このような働き方ですと特に専業主婦の女性に負担が掛かるわけですね。
 それで、面白い調査があるんですが、普通は、私たちは常識では、働きながら子育てをしている女性の方が子育ての負担感は多いんだろう、こういうふうに思うんですけれども、このこども未来財団の調査によれば、共働き片働き双方に調査をしたところ、共働きの女性の子育ての負担感は二九・一%です。片働き、いわゆる専業主婦の子育ての負担感が四五・三%になっています。
 岩田局長にお伺いします。専業主婦と共働き女性の負担感の違いはどこから生じるとお考えになるでしょうか。

○政府参考人(岩田喜美枝君) 数字は先生おっしゃったとおりなんですけれども、共働き女性の場合には子育てを自分一人でやるということは決してございませんで、保育所を例えば使う。その場合には、保育士さんといろいろ育児についての相談もするわけです。あるいは、おじいちゃん、おばあちゃんにお願いしているということであれば、それはおじいちゃん、おばあちゃんと相談しながらやっているわけで、必ずチームを組んで子育てをしておりますので、そういう意味で育児の負担感、特に精神的な負担感が少ないということだと思いますが、一方、専業主婦の場合には、しばしばそういうことがない。そして、夫が長時間労働でなかなか育児にかかわってくれないというような状況の中では、大変孤立化をして、精神的な負担感、時間的な負担感とか肉体的な負担感ではない精神的な負担感というのが大きいのではないかというふうに考えております。

○田嶋陽子君 やっぱり専業主婦の場合は子どもから一日離れないでいることがいいお母さんだという発想もありますし、それから専業主婦のお母さんは保育所に子どもを預けにくいという状況もありますし、今厚生労働省から出ていますこの国の政治、政策にもかかわること、いろんなことが複雑に絡まってくるわけですけれども、二〇〇〇年に総理府がまとめた男女共同参画社会に関する世論調査によれば、男性が家事、子育てや教育などに参加するために必要なこととして、やっぱり四一・三%の人が夫婦の間で家事などを分担するように十分に話し合うこととあります。それから、三四・九%が男女の役割分担についての社会通念、慣習、しきたりを改めることだとしているんですが、ここで問題なのは、十分に話し合うこととあるんですが、実はこれは今の男女関係で、特に家庭で専業主婦とそれから働く夫という構図の中では、女の人は夫と十二分に話し合うことができるだけの対等性を獲得している家族は数少ないということなんですね。
 今度、朝日新聞によると、高校の教科書でジェンダー教育が書いてあるのを、六点が合格しました。たった六点です、あれだけたくさんある教科書、三百幾つある教科書の中で。それでもこういうことを取り上げてきたということは大変いいんですけれども、一九八九年に家庭科共修ということがありました。私たちはこれができたときに、これで世の中が変わると思いましたが、幾ら男が料理が上手になっても、私の学生を見ていてもそうですが、小中高の学生を見ていても、料理は上手になっても男女間の意識改革はできていないんですね。だから、私の学生が、同じ大学の一年生なのに男の学生は女の学生におまえと言うんですね。小中高生でも結構そういうことを言っています。女の子もふざけておまえと言っていますけれども、年を経るに従って、大人になるとやっぱり君と呼んだり、何か違ってきますね。何でなんだろう、何で男だけが女の子をおまえと呼ぶ権利があるんだろう、そういう教育もなされていないんですね。
 高校の教科書でジェンダーフリー教育が取り入れられたにしてももう遅いんですね、実は。保育園の段階で取り入れられないといけなくて、その保育園の先生たちも、そして私たち国会議員もそうかもしれませんが、このまたジェンダーフリー意識というのは、立ち居振る舞いにおいて、生き方においてのジェンダーフリーというものはまだ獲得できていないんですよね。
 私は、このジェンダーフリー教育というものを徹底してやらないといけないと思います。もっと厚生省も文部省も、この男女関係の構造改革こそが小泉さんの構造改革に欠けているものであって、これを抜本的にやらない限り日本は変わらないというふうに思っています。
 男は外に女は内にという、女の人が男の人に養われている限り、男女の上下関係、経済格差がなくならない。そこでは、いろんな心理的な複雑な問題が生まれるところがそこにあると思います。私は、この経済格差、上下関係をなくすためにも、是非文部省と厚生労働省、あらゆるところが力を出してくださって、保育園段階から私はこの、性教育とエイズの教育を含めて、ジェンダー教育を是非やっていただきたいと、最後はお願いになってしまいました。
 終わります。

○会長(小野清子君) 他に御発言もなければ、本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後三時十八分散会