151-参-共生社会に関する調査会-6号 平成13年05月14日

平成十三年五月十四日(月曜日)
   午後二時開会
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   委員の異動
 四月二日
    辞任         補欠選任   
     木俣 佳丈君     高橋 千秋君
 四月三日
    辞任         補欠選任   
     木村  仁君     阿部 正俊君
     中川 義雄君     岩崎 純三君
     木庭健太郎君     大森 礼子君
     弘友 和夫君     渡辺 孝男君
 四月五日
    辞任         補欠選任   
     清水 澄子君     福島 瑞穂君
 四月六日
    辞任         補欠選任   
     福島 瑞穂君     清水 澄子君
 五月一日
    辞任         補欠選任   
     南野知惠子君     鴻池 祥肇君
 五月二日
    辞任         補欠選任   
     鴻池 祥肇君     南野知惠子君
 五月十一日
    辞任         補欠選任   
     大森 礼子君     沢 たまき君
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  出席者は左のとおり。
    会 長         石井 道子君
    理 事
                有馬 朗人君
                小宮山洋子君
                林  紀子君
                清水 澄子君
    委 員
                大島 慶久君
                鶴保 庸介君
                仲道 俊哉君
                森下 博之君
                岡崎トミ子君
                郡司  彰君
                谷林 正昭君
                千葉 景子君
                沢 たまき君
                渡辺 孝男君
                小池  晃君
                八田ひろ子君
                高橋紀世子君
   事務局側
       第三特別調査室
       長        岩波 成行君
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  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○共生社会に関する調査
 (男女等共生社会の構築に向けてのうち女性の
 自立のための環境整備に関する件)

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○会長(石井道子君) ただいまから共生社会に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る四月二日、木俣佳丈君が委員を辞任され、その補欠として高橋千秋君が選任されました。
 また、去る四月三日、弘友和夫君、木庭健太郎君、木村仁君及び中川義雄君が委員を辞任され、その補欠として渡辺孝男君、大森礼子君、阿部正俊君及び岩崎純三君が選任されました。
 また、去る五月十一日、大森礼子君が委員を辞任され、その補欠として沢たまき君が選任されました。
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○会長(石井道子君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○会長(石井道子君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に有馬朗人君及び清水澄子君を指名いたします。
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○会長(石井道子君) 共生社会に関する調査のうち、「男女等共生社会の構築に向けて」を議題といたします。
 女性の自立のための環境整備に関する件のうち、女性の経済・社会的自立支援について、本日は二時間程度、おおむね午後四時をめどに委員各位の御議論を伺いたいと存じます。
 この件につきましては、これまで参考人からの意見聴取及び質疑、政府からの説明聴取及び質疑を行ってまいりましたが、本日は、お手元に配付したテーマに沿って委員間で御議論いただきたいと存じます。
 なお、皆様のお手元に、これまで行いました参考人の意見陳述の概要、政府の説明の概要及びこれらに対する主な質疑項目をまとめたものを参考資料として配付しております。
 議事の進め方でございますが、まず、各会派から大会派順にそれぞれ五分程度御意見をお述べいただきまして、その後、委員相互間で自由に意見交換を行っていただきたいと存じます。
 なお、御意見は着席のままで結構でございます。
 それでは、御意見のある方は順次御発言願います。

○小宮山洋子君 お着きになったばかりのようですので、予定どおり私の方から先にやらせていただきます。
 五分程度で問題点というと本当に早口になってポイントだけになるかと思いますけれども、私なりに述べさせていただきたいと思います。
 この項目の順序でいきますと、まず、社会保障、税制につきましては、私どもは個人単位に改めていくべきだと。これは男女共同参画のビジョンとかプランなどでもずっとそういう形で提起をされておりますので、ぜひその方向で具体化を進めていきたいというふうに思います。
 年金につきましては、第三号被保険者の問題について、今、厚生労働省の方でも検討会を設けてやっていると思いますけれども、基礎年金の税負担ということとも絡めて議論をされるかと思いますが、この第三号被保険者の問題も、自立して生きて、自分の保険を持ってということも大切だと思いますので、ぜひこれも個人単位に改めていく方向で検討が早急に進められていけばいいというふうに思います。
 それから、税の問題につきましては、配偶者控除、配偶者特別控除の問題、これがやはり自立して働くことを阻害する、あるいは家族単位で控除が行われていると、世帯単位で行われているさまざまな問題がございますので、私どもは、複雑な税の控除はこの二つの控除も含めて簡素化をして、必要な人には社会保障の給付という形で見直していくのがあり方としてはよいのではないかというふうに思います。
 それについては、働けない方というのは、今子供を抱えている、あるいは高齢者がいるという家族の問題がありますので、高齢者の方は社会的支援として介護保険制度がスタートしておりますから、子供についてはこうした税をなくして、段階的にも含めてなくして、児童手当あるいは保育所の充実などに振り向けていく、社会保障の給付に振りかえていくというのがいいのではないかと思います。
 それから、雇用の面につきましては、もうずっと懸案の機会の均等ということがまだまだ図られていません。特に、女子大生の就職差別などは現在のリストラなどの流れの中で一層激しくなっているという現状がございます。それから、ILOの同一労働同一賃金の条約もずっと以前に批准をしていますのに賃金格差も非常に広がったままで、まだまだこのあたりは見直さなければいけない課題が多いと思います。
 基本的に言いますと、男性を含めた働き方の見直し、ペイドワークとアンペイドワークをどのように位置づけていくかということで、これは男の人の働き方、生き方も含めてもっとバランスよく男女が仕事も家族と向き合うこともできるようにと、もう二十一世紀はそういう方向で見直していく必要があると思います。
 そのためには、この国会にも仕事と子育ての両立支援のための法案が政府の方からも提案されますけれども、私どもは、やはりせっかく見直すのですから、小手先での改正ではなくて、例えば育児休業をお父さんもとれるようなパパクオータを導入する、あるいは子供の看護の休暇にしましてもこれは権利としてとれる、そのような見直しが必要ではないかなというふうに思っております。
 それから、当事者からのということで保育の問題についてもヒアリングを受けましたけれども、小泉政権も待機児ゼロを目指すとおっしゃっていますが、それは言うはやすしでございまして、どのように進めるかというのはかなり根本的に腰を据えて取り組まなければいけない問題だと思います。
 多様な保育の充実が多様な働き方に合わせて必要なわけですが、まだそのゼロ歳児保育、あるいは一時保育、延長保育、低年齢児の保育、それから働いていない人も含めた子育て支援事業など、どのようにしたら効率的に、しかも子供を中心に置いて子供にいい多様な保育が実現できるのか、しっかりと取り組まなければと思っています。
 それから、無認可の保育所と認可との格差の問題もございますが、子供の命が失われるというような事件などもありましたので、これは無認可を届け出制にするという私どもは法案を用意しておりますし、そうしたことも必要なのではないか。
 この保育の問題は、今子供が減っていることもありまして、就学前の子供をどういうふうに社会的支援としてバックアップしていくかということからしますと、保育所と幼稚園との関係についても、これはあくまで子供にとって就学前のよい状態は何かという、子供を中心に置きながら、保育園と幼稚園の利害関係でやることではなくて、学齢前の子への社会的支援という視点で保育所と幼稚園の連携の問題も考えていければいいのかなと。
 とにかく、女性も男性も生き生きと生きられるように、この経済・社会的自立支援の環境は課題が多いですが、一歩ずつでもなるべくスピーディーに解決できればと思います。
 ちょうど五分でございますので、よろしくお願いします。

○鶴保庸介君 申しわけございません、ちょっと時間をオーバーいたしまして。
 男女共同参画社会、当調査会に所属をさせていただいて、数少ない男性議員の一人として最初から割と継続的に長目にやらせていただいております。
 いろいろ感想も交えながらお話をさせていただきたいと思うんですけれども、税制度、それから社会保障制度のあり方ということをまず第一のテーマとして言うんですが、いろいろとやはり多様な働き方というものがこれから必要になってくるというのは、全体として見たときに労働市場、少子高齢化という社会がこれから始まってきて、やはり女性の労働力というものをもうちょっと活用しないと外国人労働者なんという部分でいろいろ論議になったりもしておりますけれども、まず、日本には女性という本当に、これは労働力というふうに見て言い切ってしまうと失礼な部分はあるのかもしれませんが、雇用されていない労働力として貴重な人材がまだ余っているんだというふうに私は感じております。そんな意味から、ずっと私、年来、税制及び社会保障としてきちっとした制度を確立し、女性が社会進出をしなければいけないということを申し上げてまいりました。
 私自身は、興味がありますのは、税制面での援助、それから、そういった労働者として自立をした女性の社会保障制度の面での援助というのはもちろん必要不可欠なことなのでありますけれども、そういったことをインセンティブにするというよりも、一番やっぱりいろいろな議論を聞いておって問題になっているのは、女性の家庭との両立といった面、どっちかというと女性のソフト面の方ではないか、障害として大きいのは、というような気がいたしております。
 そこには、例えば夫婦別姓の問題でありますとか、子供の教育、それから家庭生活との両立面、時間的、社会的価値観みたいなものなんだろうなと。そっちの方が税制やあるいは社会保障制度のあり方以上に実は障害になっているというふうな私は気がいたしております。
 そこで、これは意見として申し上げたいと思いますけれども、先ほどの小宮山委員からのお話にもありましたとおり、子供の養育について、無認可保育等々の問題がありますけれども、全体として子供を教育する、トータルとして引き続き教育をしていけるような、安心して子供を預けて教育ができるような仕組みづくりみたいなものが必要なのではないか。
 具体的には、保育期間だけではなくして学童時に、文部省などは放課後児童教育制度といったようなことも制度として今整備中であるというふうなことを以前聞いたことがありますけれども、トータルとしてやっていく必要があるのではないかという気がいたします。それから保育も、保育所に預ける期間以前の問題で、例えばよく指摘されておりますのは、日本には、ベビーシッターと言うんでしょうか、私もちょっと言葉はわからないんですけれども、良質なそういう預ける家政婦といいますか、そういったものの制度がはっきり確立をされておらないというような話を聞いたことがあります。そういったことをぜひやっていかなければならないのではないかというふうに思っておるところであります。
 何分、まだまだ男性の目から見ると、男性の議員でありますから、私から見ると、女性の本当の悩み的な部分はわかりにくい部分が多いのでありますけれども、私なりに感じることは、そういう女性の制度としての悩みというよりも、税制だとか働くためのお金の面というか、そういうものの悩みというよりも、家庭の両立だとか、さっきまでの繰り返しになりますけれども、そういうソフト面で援助ができるような、安心して働ける、やっていこうという気になれるようなそういう制度面を充実させる必要があるのではないかということを、繰り返しになりますけれども、主張として、御意見として申し上げて終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

○渡辺孝男君 公明党の渡辺孝男です。
 参議院共生社会に関する調査会の調査テーマ「男女等共生社会の構築に向けて」のサブテーマ女性の自立のための環境整備に関する件について、本日は、女性の経済・社会的自立支援に関して公明党の委員を代表して意見を述べさせていただきます。
 平成十一年六月に公布、施行されました男女共同参画社会基本法は、その前文で、「男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現は、緊要の課題」とし、この実現を二十一世紀の我が国社会を決定する最重要課題と位置づけております。しかし、現状を見ると、その実現はまだ途上と言わざるを得ません。早急にこの基本法の趣旨に沿って社会の諸制度を改善していく必要があります。
 まず初めに、社会的自立支援を中心に三項目に関して意見を述べさせていただきます。
 二十一世紀は女性の世紀とも言われています。日本の総人口に占める女性の割合も平成十三年四月の人口推計では五一%を占め、数において約二百七十万人ほど男性を上回っております。女性の平成十一年における平均寿命は八十三・九九歳であり、男性七十七・一〇歳と比較して約七歳の差があり、今後も総人口に占める女性の割合がふえてくると推測されます。そういう意味でも、女性と男性がともに社会的に十分活躍できる制度、仕組みをつくっていく必要があります。
 そのためにまず第一に改善しなければならないことは、おくれが指摘されている指導的地位につく女性の割合を少なくとも三〇%までふやすという国連経済社会理事会での目標を早期に達成することであります。特に、公務員、審議会メンバー、議員等々の女性の参画目標三〇%は早急に達成し、将来五〇%を目指すべきと考えます。
 第二に、いまだ社会通念や習慣、しきたりの中に男女の固定的役割分担意識が残っておりますので、このジェンダーによって女性の個性や能力の発揮が阻害されないよう、ジェンダーフリー社会を目指し、啓発広報活動を活発化させ、学校教育の中でも男女共同参画社会について学習の充実を図っていくことが大事だと考えます。さらに、この男女共同参画社会の推進には一国だけの活動では不十分でありますので、世界との協調、特に北東アジアとの連携が重要であり、これらの女性のネットワークの活動を政府として強力に支援すべきと考えます。
 第三に、個人の選択に対する中立性の観点から、民法を改正し、選択的夫婦別姓制度を導入すべきと考えます。現在、自民、公明、保守の与党三党の女性国会議員で構成する女性議員政策提言協議会の選択的夫婦別姓に関するプロジェクトチームが精力的に市民団体との協議を進めておりますので、これらの意見を参考にして早期に実現を図るべきと考えております。
 次に、女性の経済的自立支援を中心に四項目に関して意見を述べます。
 女性の経済的自立のための社会制度整備はいまだ不十分で、早期にその改善を図るべきと考えます。
 まず第一にしなければならないことは、雇用における男女差別の実質的撤廃であります。男女雇用機会均等法の改正により、雇用における採用、配置、昇進において男女差別が法的に禁止されましたが、制度上の平等は保障されていても事実上の平等とは格差があるのが現状です。扶養手当や住居手当等も世帯主でない女性には認められていないなどの間接差別も根強く残っております。同一価値労働同一賃金制度の確立を初め、労働における男女差別が実質的に撤廃されるよう取り組みを強化すべきと考えます。また、女性の起業家を支援する仕組みも充実させていくべきと考えます。
 第二に、年金制度ですが、個人単位の制度設計を検討する中で離婚の際の夫婦間の公平性や女性の年金権の確立を図るべきと考えます。
 第三に、離婚がふえている現実を直視し、離婚に伴う女性の不利益を改善することも重要であると考えます。そういう意味で、離婚に伴う財産分与は二分の一を基本とし、離婚後の子供の養育費の支払いを確保する制度の確立を目指すなど、家族法の見直しを行うべきと考えます。また、一人親家庭の仕事と家庭の両立を支援する制度を強化する必要があると考えます。
 第四にしなければならないことは、仕事と子育てが両立できる社会を早急に実現することです。そのためには、介護休業、育児休業期間の延長を図り、休業時の所得保障を本年実現した四〇%からさらに拡充していくべきと考えます。また、休業後の仕事の再開、あるいは結婚、出産、育児、介護などで一時退職した女性が再就職を希望する場合に、新たに技術取得や教育訓練等を十分にできるように制度の整備を図るべきと考えます。
 また、そのほかにも、仕事と子育ての両立支援のために、待機児童ゼロあるいは児童手当のさらなる拡充、奨学金制度の拡充、就学前児童の医療費の無料化など、それらを総合的に図っていくことによって子育て支援を充実していくべきと考えます。特に、子供の看護や家族の介護のために必要であれば月一日の特別な休暇をとれる制度の実現も図る必要があると思います。
 このような総合的な対策を行って、女性の経済あるいは社会的自立支援のために国としても対策を強化すべきと考えます。
 以上でございます。

○林紀子君 日本共産党の林紀子です。
 女性の経済・社会的自立ということは、何よりも働く場で男女の平等がいかに達成されているかにかかっていると思います。時間の関係もありますので、私はきょうは女性の多様な働き方と雇用環境の整備という点を中心に発言したいと思います。
 労働省の統計によりましても、賃金では女性は男性の五一・七%、諸外国と比べてもその差は非常に大きく、しかも格差はかえって広がる傾向にあります。格差がある理由は、賃金の低い職種にしかつけない、昇進・昇格のチャンスが与えられない、コース別人事などの間接差別、またとりわけ低賃金で劣悪な条件のパートに女性が集中しているなど、さまざまな態様の男女差別が賃金の差別としてあらわれていると思います。これを是正するためには、緊急に次のようなことに取り組むべきだと考えます。
 まず、仕事の内容、熟練度、労働時間、勤務形態が男性と同一の場合は、賃金におけるあらゆる格差を抜本的に是正させる。次に、同期同年齢なら同一の昇格をさせる。三番目に、昇進・昇格試験は客観的で透明な制度で行い、本人への開示を原則とする。また、同一や類似労働のパート賃金は時間比例で平等とすべきだと思いますが、当面、判例でも認められている八割まで引き上げる。男女雇用機会均等法では差別禁止がうたわれておりますが、違反に対する罰則規定を設けて実効あるものにする必要があります。また、差別を迅速に是正できる権限を持った救済機関の設置が必要だと考えます。
 さて、国家公務員に占める女性の割合は一六%にすぎず、昇進も男女の差が非常に大きいものがあります。しかし、審議会の男女の割合は着実に多くなっているわけですから、政府が本気になって取り組めば実効が上がるという何よりの証拠だと思います。国家公務員の採用、昇格は、他の模範となるように審議会並みの目標数値を設定したポジティブアクションで早急に是正を図り、国際水準に引き上げるべきだと考えます。
 女性の雇用政策をめぐっては、女性の多様な働き方ということがたびたび言われておりますが、これは積極的なことのように言われておりますが、この間進められてきたのは、女性保護規定撤廃により女性までもが長時間労働に追い込まれ、男性並みに働けなければ低賃金のパートになるしかないという事態です。結局は、日経連の参考人がこの場でも発言をなさいましたが、経営効率の向上、雇用コストの低減を図りつつ、派遣、パートなどの働き方をふやす、このようにおっしゃいました。多様な働き方によって低賃金化に拍車がかけられているのが現状だと思います。
 また、成果主義賃金というのは、みずからが目標を決めてその達成度に応じて評価される制度であり、裁量労働制というのは、労働時間に関係なく自分の決めた目標を達成する制度ですが、これが導入されると労働者間の激しい競争や過密労働のもとで人件費は抑制され、男女とも家庭責任を果たすことは今以上に困難になるのではないでしょうか。
 男女がともに仕事でも家庭でもその責任を果たせるようにするためには、保育関係の参考人が口をそろえておっしゃっていたように、男女ともに労働時間を短くすることだと思います。サービス残業はなくし、残業も年間百二十時間以下にする。深夜業、休日労働も法的規制を強めて人間らしく働けるルールの確立が必要だと考えます。
 保育所の待機児童の解消は当然のことですが、そのためにも公立保育所の新設、補助金の増額など保育の質を下げないように国や自治体が責任を果たすべきです。
 最後に、本調査会で男女共同参画基本計画の説明を受けましたが、二〇〇〇年プランにあった「賃金格差解消に向けた取組」という項目はなくなってしまいました。また、審議会答申にはあったのに計画ではなくなったものは、「一日当たりの実労働時間の短縮」という項目、男性中心の働き方の見直しという項目、男女の経済力の格差是正、そして裁判における使用者側の反証責任の検討、女子差別撤廃条約の選択議定書の批准といった男女共同参画にとって実効性の高いものばかりでした。
 そこで、この調査会で男女共同参画基本計画に追加することを提言、勧告したい。以上の落ちたものだけでも再び追加することを提言、勧告したらどうかと思いますので、皆様方の御検討もお願いしたいということを申し上げて、発言を終わります。

○清水澄子君 女性の自立のための環境整備、この問題は、結局、現在全地球的に取り組まれている性別役割をなくしていく、そういう思想とか価値観に基づいた社会制度をつくり変えるのだという考え方だと思います。ですから、本当に基本的なところで女性が経済的に自立して生きていけるような、そういう社会システムにつくり変えるという、そういうねらいがあるはずだと思います。そういう意味で、特に経済的自立の第一の問題というのは、やはりもう少しこの女性差別をなくしていく基本部分に切り込んでいく必要があると思います。
 その第一は、やはり雇用における男女平等をどう確立するのか。現在、女性の雇用労働者、現実に日本の状況は、二千百四十万人働いていますけれども、その半数が不安定雇用、低賃金労働者、いわゆる非正規労働者として、毎年女性の方の非正規労働者がふえているわけです。ですから、当然そこには国際的な面でも男女の賃金格差というのは拡大することはあっても縮小されない。十五年間も、今現在もこのパートを外しても六二、三%という状況で、これは国際的な大きな課題になっています。
 ですから、こういう問題の男女の賃金格差をそのままにしてあるということは、これは女性が本当に自律的に働いても自立して生きていけないという状況が一面にあり、その賃金格差は女性の年金額に反映いたしますから、今度は女性の年金受給額は男性の半分以下と、これもまた女性の全生涯でこういう経済的な生活の自立を脅かすという問題がありますから、やはりもう少し基本部分に切り込むような政策が必要だと思います。それはもう当然、この女性差別撤廃条約が国際的に求めている同一価値の労働についての同一報酬、このことをきちんと法的にやりなさいということと、家庭責任と職業上の責務、社会的活動への参加を両立させることをきちんと法律なり政策でやりなさいという、このことがやはり十分に行われていないことであると思うんです。
 特に日本の場合は、非常に雇用形態による差別が多いわけですけれども、その中でやはり変えなきゃいけないのは、男性が主たる生計者というこのモデルが、男性稼ぎ手モデルというところがまだずっと変化がない。そういう賃金の体系が税制にも反映し社会保障にも反映しているという中で、なかなか個人という一人の女性が自立して社会人として生きるという条件が阻害されていると思います。
 そういう中で、私はやはり賃金差別禁止規定が必要だと思います。これはもう諸外国には、男女同一賃金法とかいろんな法律がつくられて、それをきちんと監督し、そしてそれを正す機構があるわけですけれども、日本にはそれはまだありません。そしてさらに、労働内容を前提としない完全な年功給とか、また世帯主にのみ支給するという家族手当制度とか、そういう男女間の賃金についての差別的な扱いというものをやはり禁止していく必要があると思います。
 そしてもう一つは、パートタイムは安かろう、そして不安定でいいということではありません。パートタイム均等待遇法というものをつくって、短い労働時間で働く人の待遇の社会保障とか、そういう問題についての雇用上の差別を禁止する、そういう法整備が必要だと思いますし、さらに、性差別を禁止したことが実効性が上がるような、そういうやはり強制的な調査権限とそれを判定する機能を持った機関を設置すべきだと思います。
 同時に、女性が子供を持つとか、それからそういう家事労働が女性に負担があるとかということでさまざまな間接差別があるわけですが、間接差別についての明確な取り組みが必要だと思います。
 次に、それらの反映の中で、税制の上でも、配偶者特別控除または扶養控除、そういう形の中で百三十万円の壁というのは、これはずっとこれまで女性が主張してきたわけですけれども、この問題は、これができたときの、女性は内助の功として評価をするという目的が、もう既に社会に適合していないだけじゃなくて、これを直そうという今日の状況ですから、配偶者控除と配偶者特別控除、この二つとも私たちは変えるべきだと思います。そして、この問題によって働く人たちが自分の就労を制限している、抑制しているという状況を取り除いていく必要があると思います。
 同時に年金の面で、第三号被保険者というのはかつては自分たちで任意加入で保険料を納めていたわけですから、それをもう一度、自分自身保険料を納めて、そして自分の年金権を手にするという、そういう制度にすべきだと思います。
 あと、社会保障はほとんど夫・稼ぎ手、妻・扶養される人という価値観で社会保障制度ができていますから、すべてをやはり見直していくことが必要だと思います。
 最後に、仕事と育児・介護の両立支援、これは両立のできる働き方を先に変える必要があると思います。当然保育所が必要ですけれども、それには労働時間をどのように短縮していくのか、そして働きやすい労働時間、選択できる労働時間というものをどうつくっていくのかということが大きな課題ではないだろうかと、このように考えます。
 以上です。

○高橋紀世子君 高橋紀世子でございます。
 今、清水先生がおっしゃったことでもあるんですけれども、やはり女性が働くについては子供のことは大変頭痛の種だと思いまして、いつでも入れられる保育所。これは、ベビーシッターをしていただけるところ、すぐれた長時間保育をしていただけるところがどこにでもあるということは、どうしても我々が働く場合に必要だと思います。
 それから、私は素人的に直観で考えたことを申し上げますが、政府に関する審議会の構成に、委員会には必ず女性委員を入れて、女性の委員のいない審議会はなくするというのが当たり前じゃないかとつくづく思っておりました。それから、男女がともどもやっていく場合に、福祉・教育関連の審議会は、構成員の半分はやっぱり女性にするということを始めたらどうかと思っておりました。
 それからもう一つ感じていることは、皇室典範を見直して女性が天皇に即位することが可能だということは、どうしても憲法で男性と女性が同等だということをうたう場合に、基本的にはこのことが必要じゃないかとつくづく思っておりました。
 それから、これはいつも国会で論議されておりますか、選択的な夫婦別姓の早期実現、これはどうしても必要だと思います。
 この四つのこと、私がいつもそういうふうに直観的に感じていたことをきょうはお話しさせていただきました。

○会長(石井道子君) どうもありがとうございました。
 次に、お手元のテーマに沿いまして委員相互間の意見交換を行います。
 御発言のある方は挙手をしていただきまして、会長の指名を待って御発言されますようお願いいたします。
 なお、多くの方が御発言できますように、一回の発言はおおむね三分程度とさせていただきたいと存じます。
 まず最初に、男女共同参画の観点に立った税制度及び社会保障制度の在り方について御意見のある方は挙手をお願いいたします。

○八田ひろ子君 日本共産党の八田ひろ子でございます。
 先ほど林理事が話された中身が主な私どもの考え方なんですけれども、それにあわせまして、女性の経済的・社会的自立、男女共同参画の観点に立った社会保障制度の在り方を考える上でも、今出ております選択的夫婦別姓の実現というのは重要だと思います。きょうは与党の委員からも御指摘があって大変心強く思うんですが、私ども野党もこの国会に法案を提出しておりますので、ぜひ実現をしていただきたいというふうに思うんです。
 そして、ドメスティック・バイオレンスの法律をつくるときにも大変問題になったんですが、女性が自立するのに大変困難ないろいろな制度が今の日本にある、これを何としても取り払うというんですか、例えば百三万円の壁の問題も、配偶者控除や配偶者特別控除、社会保障の扶養、被扶養者の問題、それから企業が支給する配偶者手当など、いろんなことが絡み合って賃金を抑えている働きをしておりますし、現在の非課税限度額を引き下げる方向が進められているんですが、一人の女性としての自立を考えますと、百三万円の収入から税を取るということは生計費非課税という原則にも反するもので、自立を阻害する方向だというふうに思いますし、離婚による年金などの女性の無権利状態というのも現実にあるわけで、こういったものもとりわけ高齢女性の中では深刻な問題になっています。
 何よりも、男女の賃金格差の問題、低賃金の問題も非常に多くて、厚生労働省も、女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会というのを設置して本年度末までに意見の取りまとめを図ると言われておりますけれども、男女賃金格差是正の問題や、自立して老後暮らせる年金額の保障の問題をきちんと据えた検討がされるように私どものこの調査会でも提言をしていきたいと思いますし、男女共同参画基本法では、先ほどもありましたように、賃金格差是正の問題が落ちているんですね。だから、こういったことは非常に深刻だと思います。
 今、二〇二五年にもまだ女性の就業状況がM字カーブを描くだろうと、こういう報告を政府はしているわけなんですけれども、女性の潜在的就業率、働きたい人というのは男性と同じ台形を描いているというのがこの調査会の参考人の話の中にもあったわけなんですけれども、政府の調査でも就業希望の無業の女性というのは八百万人になっておりますので、本来は早急にこういうM字型をなくすために雇用の場での差別を徹底的になくすことが必要だというふうに思いますし、抜け穴のある均等法を見直すことや労働時間の男女ともの短縮、百二十時間に残業は抑えるとか、保育、学童保育の充実、そういうことは支え手をふやして年金財政にもプラスになると私たちは考えておりますし、それこそが男女共同参画の精神だと思います。
 また、日本の社会保険料というのは、欧米に比べますと企業の負担が非常に低いんですね。ですから、企業責任を能力に応じて果たさせるべきであって、中小零細企業には支援策を講じながら払える保障をきちんとしておくということと、高額所得者に対する保険料の頭打ち制度を見直すという、そういった応能負担という立場からの改革をしながら最低保障年金というのをしっかりと打ち立てる、これが自立して女性が暮らしていけるということでも今必要ではないかなと、こんなふうに思っております。

○千葉景子君 最初の男女共同参画の観点に立った税制及び社会保障制度、私も基本的には女性と男性がそれぞれ人間らしい、そしてその人らしい生き方をするということを考えてみるときに、やっぱり性を超えて、制度やあるいは社会のシステムが性ということに中立的に働くような、そういう組み立てをしていくべきではないかというふうに思っています。
 そういう意味では、御指摘があった年金やあるいは税という面でも、一人一人が働くこともし、そして納税者でもあり、そしてそれを基本にして社会の一員として生きていく、こういうことが必要ではないかなというふうに思うところです。こういう問題を考えるときには、やはりぜひ男性の皆さんも立場をちょっと変えてみて、その実情というのに思いをはせていただくといいのではないかなというふうに考えるところです。
 先ほどから、それと関連をして、やっぱり性に中立的に働く社会のシステム、慣行ということで選択的夫婦別氏制度を含む民法の問題が出ておりました。
 せっかくお祝いを申し上げようかと思ったところ、ちょっと鶴保さんが中座をなさったようでございまして、さてどういうふうになさるのかななどと大変変な関心を持たせていただいているところでございますけれども。
 大分この議論も社会の中で、そしてまた国会の議論の中でも煮詰まってきつつあるように思います。与党の方でも、女性の皆さんを中心にぜひ男性の皆さんも積極的に加わって議論をしていただくとよろしいかと思いますけれども、選択的夫婦別姓についての議論が大変積極的に進められているというお話も伺いました。そして、野党の側、別にこれは与野党対立すべき問題ではございませんし、いい議論ができますようにと法案も提案をさせていただきました。
 そういう意味では、今回女性の代表として森山法務大臣も誕生し、非常に議論が展開をしやすくなっているということもあろうかというふうに思います。女性が一人の人間として社会で生きていくという中で、性という問題は大変重要な問題であろうかというふうに思います。ぜひ、こんな議論も積極的にこれから進められていくということを心から期待したいというふうに思っています。
 なお、税と社会保障の問題については今議論がいろんな角度から進められています。例えば年金などは、基本的に保険の制度でいくのか、あるいは税でいくのかということとも関連をする部分であろうというふうに思いますので、ぜひ多様な角度から早急なといいましょうか、積極的な議論が進められることを私も望みたいというふうに思っています。
 とりあえず、ちょっと感じたところだけ発言をさせていただきました。

○小宮山洋子君 問題提起をしたからあれなんですけれども、これも、いらっしゃらなくなりましたが、先ほど鶴保議員が税制、社会保障について、税制などの援助というふうにおっしゃったように思うんですけれども、その補助をしたり援助をしたりするということではなくて、今の税制や社会保障の制度が、能力を発揮して精いっぱい働きたいと思っている女性の足を引っ張っている、マイナスになっているところを直して中立な制度にしようということですので、決してプラスをつけようということではないということは、ちょっと先ほどの御発言の中から違うと思いましたので、お伝えいただければというふうに思います。
 それぞれが、一人一人が働いて税や保険料を納めることによって本人が自立して生きられるということに加えて、これからやはり少子高齢社会の中で社会保障の財源なども必要になってくるわけですから、それを広く薄く負担するという意味合いからしても、これはきちんと見直さなければいけないのではないかと思っています。
 もう一点、選択的夫婦別姓などの民法改正が出てきて、御存じない方は税制、社会保障の話なのに何でと思われるかもしれませんが、今この男女共同参画の議論のベースになっている男女共同参画ビジョンを初め、一番最初に立てている項目が、性に中立でない社会制度の見直しということがまず男女がそれぞれ生き生きと生きるために必要だと挙げている。それの中に税制、社会保障と選択的夫婦別姓の導入などの民法改正ということを入れてありますので、今回この調査会では議論をしておりませんけれども、やはりそれぞれが自立して生きるためにこの選択的夫婦別姓などの民法改正も必要なことですので、ぜひおまとめいただくときにはそれも入れていただいて、多様なライフスタイルなどを含めた多様な選択を可能にするために性に中立な社会制度をつくっていこうと。
 多様な選択肢があるのが二十一世紀の豊かな社会だと思いますので、ぜひ民法改正のことにつきましても性に中立な社会制度ということで加えていただければと、一言申し添えさせていただきます。

○沢たまき君 公明党の沢でございます。きょうは、大森先生のかわりに初めて共生社会調査会に来させていただきました。
 最初に、ドメスティック・バイオレンス、この調査会で超党派でやってくださったこと、もう本当にすばらしい調査会なんだなというふうに思って、きょうは初めて出席をさせていただきました。
 今、性に中立なという小宮山先生のお話がございまして、本当にそのとおりだと思います。
 と申しますのは、私の頭の中では、男女共同参画というのを何で改めて言うのかなと。四十五年ぐらい芸能というところに、特殊な世界に住んでおりまして、この世界は男だから女だからという賃金の差別も何もございません。その人の力量によって、そしてまたその人の芸によって賃金も決まり、収入も得るということでございますので、やはりそれが普遍的に一般社会にもなっていけばいいなというふうに思っております。
 種として女性は劣るもの、種として男性の方がまさるものと、こういう潜在的な優劣の概念はもう最初からなくしていただいて、それから同じ人間としてスタートすれば改めて性にと言われることもなく、一番もっと言いたいのは、優劣をもしつけるのであるとすれば、出産、育児、中には産まないという選択をなさっていらっしゃる女性もいらっしゃいますけれども、種を保つ作業は、そして妊娠をして出産までというのは主に女性しかできない作業でございますので、そこの視点をもう細かに幾ら申し上げても足りないぐらいだろうと思います。
 二十一世紀の男女共同参画というのはひとえに男性の皆さんに意識を変えていただくことがまずは先決だろうかなという思いがいたしましたので、関連しているかどうかわかりませんけれども、一言言わせていただきたいと思って手を挙げました。
 どうもありがとうございました。

○会長(石井道子君) 自民党の男性はいかがでしょうか。税制の問題とか社会保障、年金制度とか、そういう点については何か。
 鶴保議員のお留守にちょっとお話が出ましたので、もう一回。

○千葉景子君 せっかくお祝いを申し上げようかと。それと、ちょうど選択的夫婦別姓の問題が出ておりましたので、ひょっとして何か御意見がおありかなとあらぬ余計な関心を寄せていただいたということでございます。

○小宮山洋子君 それと、もう一つ申し上げたいのは税制と社会保障のところで、先ほどおっしゃった中に、仕組みの問題として税制とか社会保障で援助をするとか補助をするみたいなお話をちょっとされたかと思ったものですから、そうではなくて、今の制度は力を生かしてちゃんと働こうとするとその足を引っ張る、マイナスになってしまっているのを中立にしましょうということなので、税制とかでプラスアルファをしましょうということではないのですという話をいたしました。

○鶴保庸介君 先に小宮山委員にお答えをしたい。
 足を引っ張るというふうな制度なんだろうかということについて、私もこれは個人として意見があります。
 例えば、パートタイム労働というのは女性が多いわけですけれども、パートタイムの労働は完全に女性のためにある制度じゃないと思うんです、制度としてあるのは。これは男性であっても当然あるわけでありまして、だから、この制度があるから女性が差別されている、虐げられているというふうな制度なんだろうかということについてはちょっと私は個人的なまだ議論が、意見があります。そこで、またそれは私の発言の後、御意見をいただけたらというふうに思うんですけれども。
 さきの質問で、選択的夫婦別姓についてですが、党の代表としてというよりも、これは個人的な意見をさせていただきたいと思いますけれども、私は制度としてはっきり賛成と申し上げております。選択的制度を設けることについては賛成であります。自立した個人がそういう制度を選ぶかどうかという部分については、自由に選択肢があっていいと、しかるべきであろうというふうに思います。
 ただ、社会的にコンセンサスを得ているかどうか、その制度をつくることによって一般論として別姓制度が普遍化するかということについてはまだまだ実は懐疑的でありまして、その辺、議論の必要なところ、それを前提とした次の制度をつくろうということになると、まだまだ議論のあるところだろうというふうに思っております。

○清水澄子君 今発言していらっしゃる中で、パート労働に女性が多いということが問題というんではなくて、日本の場合、パート労働というのは、私、これから特に高齢社会には定年後の方、男性だって短い時間働くという意味で、その人の家庭的な問題もあるでしょうし、肉体的な条件の人もあるでしょうし、だから短い労働時間を選ぶというのはその人の選択肢の一つになる労働条件であっていいと思うんですね。
 しかし、そのことが日本では、パート労働即低賃金、即不安定、いつでも首を切っていいという、そういう労働条件として日本の中に固定化しているところに問題があるわけで、そして、その分野には女性が多く採用されていくというところで、女性のなかなか身分安定とか賃金が高くならないという問題がずっとそこに集約されているところが問題で、それで私が先ほど申し上げたのは、パートタイム労働とフルタイム労働は時間を選択しているだけが違いがあるわけですから、その後は差別があってはいけない。例えば雇用保険であれ社会保険にも入るという、そういう働いている人としての持っている権利というのはきちんと保障していく。やはり日本では私はそれを急ぐべきだと思うんです。
 それをしないと、これから本当に高齢者の人たちが短い時間働くといっても途端にもう安くなってしまう。一時間幾らという単位であれば、その人が三時間しか一日働かないと言っても、それでいいわけです。自分で自分の人生の、または経済のプランを立てることができるんです。日本の場合はすごい安いです。フルタイムと同じような労働時間を働きながら、名称がパートタイムと言ったらもう物すごい安い賃金で働かせるという、非常に日本だけはこういう独特の仕組みになっている。ここをどう改革するか。その犠牲が主に女性に集中している。
 それと、税制度が今度は絡んでいるということ。百三万円の壁とか、税制で百三十万円以上働くと夫の特別扶養控除がなくなるとか、そういう税制で保護しているわけですね、一つ。だけれども、それは女性が保護を受けているんじゃないんです。夫の賃金が減るかどうかということになるんですね。そういうもともとの税制度がおかしいと思うんです。女性は家庭で夫を助けるという発想でできたサラリーマンに向けての控除なんです、これは。
 ですから、そういう税制の仕組みとパート労働というのと本当は性格が違うものがドッキングしている。日本の女性の経済的な自立というものを非常に阻害している大きな要因がそこにあると思いますので、そこはぜひ研究していただきたい。実態は、もう前からこれは女性たちが問題にしているところです。

○鶴保庸介君 研究のテーマとしてちょっと教えていただきたいんですけれども、パートタイム労働の冒頭のくだりで、いろんなお話がありました、女性が多いと。そこの後、段々のお話の中で、こういうことの論理の中で女性の賃金がなかなか上がらないというふうに今発言をされたと思います。その辺もうちょっと詳しく教えていただけませんか。
 つまり、私が申し上げたのは、制度としてのどの部分が差別的なのかというあたりはわからないですね。むしろ女性の社会進出を進めなければいけない。進んでくれば、基本的には中立的な制度であるべきであるし、そうなっているところもあるんではないかという面もあると思うんですけれども、ちょっとその辺教えていただけませんか。

○小宮山洋子君 おっしゃったように、パートは男性もいるのだから、このパートの賃金格差とか控除の問題とかが必ずしも女性の問題じゃないんじゃないかということを多分おっしゃりたかったんだと思うんです。それはそのとおりだと思うんです。
 それについては、先ほど清水さんが言われたように、これは雇用の方の面に入ってしまうわけですけれども、どんな長さの働き方であっても一時間当たり同じ価値の労働なら同じ賃金にという、これは雇用の方の話がありますね。こちらの社会保障の面の方でいきますと、ただ、現実問題として、今パートで働いている人の八割が女性なわけですよ。
 そうすると、女性の経済・社会的自立支援というと、女性が八割を占めているパートの働き方が、じゃきちんと自立した働き方になっているかというと、パートで働いている人の三分の一以上が、百三万円の壁あるいは社会保障の百三十万円の壁に突き当たるところで就業調整をしている。本当はそれ以上働けるのに働かないでいるということと、それから、それを超えたくないので、本当はもっと価値の高い仕事をしているのに、もっとお給料をもらっちゃうと超えちゃうからこれぐらいの賃金でいいですよといって働いてしまうので、これは安い労働力として便利に使われてしまう。それで、年末になって就業調整で休んだりすると、ああやっぱり責任感のない、こんな忙しいさなかに休んでということになってしまうので、これは働いている側も精いっぱい自分の能力が発揮できないし、社会的に見ても、長い目で広く見れば、本当はもっと働いてもらえるのに働いていないと。
 しかもその人たちが、率はともかく、きちんと働きに対する税金や保険料を払うことによって、広く薄くと先ほど申し上げた税とか社会保障の負担もすることで、本当に必要な人への社会保障の財源になるということも考えられるわけですね。
 そのあたりがいびつになっているので、これは働き方にとって中立にと言った方が、性にとってと言うよりもわかりやすいのかもしれませんけれども、このゆがんだあたりを直すことによって、結果として八割を占めている女性の経済的・社会的自立支援にもなるのではないかということだと思うんですが。

○鶴保庸介君 全くおっしゃるとおり、私は同感なんですが、実態としての部分はよくわかるんです。それを是正しなければいけないということでその制度を変える、これはもう政治的決断だろうと思います。
 もしそういう議論であるならば、私もその論に乗ってお話をしたいと思うんですけれども、今私が冒頭の意見の中で申し上げたのは、それ以前にもっとしなければいけないことがあるんじゃないかという気がしているんですね。それはさっきも言いましたとおり、ソフト的な雇用環境といった面で、やっぱり女性には特有の育児だとか、そういったものですね。ごめんなさい、女性だけの問題じゃないですよ、もちろん。ないんですけれども、現実には妊娠をされておなかが大きくなると働きになかなか出れないというような肉体的な部分がありますから、そういう面においてやっぱり雇用に一歩踏み出せない何かがあるんじゃないか、そこの部分でもう少し手だてを打つことの方が先なんじゃないかという気がいたしたものですから、冒頭ああいう意見を申し上げた次第です。
 だから、制度として中立的な部分についてはまだ中立なんだと、これはへ理屈かもしれません。実態に即していないと、こういうふうに言われるとへ理屈かもしれませんが、そんな気が今はしておるというようなことです。

○大島慶久君 今の小宮山委員の方から言われたことは、今の社会現象をよくとらえた発言だったと思うんですが、どうも女性が男性より見くびられているというのか、低く見られているということからこの調査会でもいろいろ議論があります。
 私がよく知っている中小企業を経営している方たちも、むしろ、パートタイマーで来られる方は自分から希望して、本当なら正規社員にならないか、もっと働いて頑張ってくれませんかというのを、逆に今の百三万円の壁もあります、夫の収入と税制面で加算した場合は、それ以上働くと要するに余計な税金を払わなきゃいけない、それなら自分の好きなだけ働いて、あとは自分の時間にしておきたい、こういう要求を持っている方たちが非常に多いと私は思うんですよ。
 ですから、全部これを一律に、それじゃいけないんだということを法律絡みでやってしまって本当にいいのかなと。やはりそういう分野というのは必要があって残っているんだから、そういう分野はそういう分野で残しておいてもいいのかなというところがよくわからないんです。私自身もわからない。
 私も実際、あなただったら、それだけの技術だとか仕事ができるんだから正規で採用されたらいかがですかということを、何人か今まで相談を受けて説得したことがあります。でも、やはりはね返ってくることは、パートで少し自分の思う時間帯で働くならいいけれども、それ以上は嫌です、そういうことがあります。例えば医療関係の看護婦さんたちなんかも、非常にこれ過酷な仕事であることは確かですけれども、要するに正規の勤務であれば当直もしっかりやらなきゃいけない。そういうことになると、それが嫌だからパートタイマーで、昼間の勤務だけだったら働きたい、こういう方って結構いるんですよね。
 だから、そこら辺のことをきちっとやらなきゃいけない。どうしたらいいのかということが私わからないからずっと皆さんの御意見をお聞きしているんですが、これからも議論はどんどんして、本当に日本の国のためになる、女性のためになることならどんどんやっていかれたらいいと思います。別に反対しているわけではございません。わからないから。
 そして、先ほど沢委員から、芸能界のあり方ですね、男女差別がない。これ、だれが決めたわけでもないんですよね。男でも女でも、その方の芸がすぐれていればどれだけでもペイが取れる。だれかがそうしなきゃいけないよと言ったわけでもないのに、今の二十一世紀になってもこれは営々と続いている現象です。数的なことで、高収入の方がシェアがどれだけということはまた別問題であるかもしれませんが、だれがそういうことを決めたわけでもないけれども、そういう分野は分野でちゃんとある。
 だから、すべてが一律に税制でも何でも取り決めていってしまっていいのかなという、こういう懸念があるものですから、これからもよく皆さん方の御意見を聞いて、そういったことの賛成、反対ということは自分の意思もしっかり決めていかなきゃいけないな、こういう気がいたしておりますので、ちょっと発言をさせていただきました。

○八田ひろ子君 今のお話は、二つ目の多様な働き方と雇用環境の整備や、その下の両立支援にもかかわっているのかなというふうに思いますので、パートのことでちょっと私も一言申し上げたいと思うのですけれども。
 確かに、短時間だけ、収入が少なくても働きたいとおっしゃる方がいらっしゃることは事実だと思うんです。そういう方の雇用環境を守るということも無論まだ不十分だと思うんですけれども、実際に私ども聞いておりますのは、正規雇用で生計を担いたいんだけれども、担いたいというか実際担わなくちゃいけないんだけれども、正規雇用ができなくてパートしか応募ができないという方もあるんですよね。そういうときどうかというと、ダブルジョブとかトリプルジョブとか、二つ三つのパートを重ねて、仕事をかけ持ちしていらっしゃるというのも現実にあります。今の社会保障のところで言いますと、そういう方は実際には一日八時間以上働かれるんですけれども、社会保険には入れないわけなんです。
 ですから、そういった意味でも、女性に多いパートというのは、これはつい最近の普通の新聞の特集でも、女性が正規雇用から一度離れるともうパートぐらいしか就職ができないということが大きな問題になっているんですけれども、この社会保障なんかで言えば、通算労働時間で加入できるとか、そういったことも私は必要ではないかというふうに思っています。
 パートタイムの問題で申しますと、先ほどは短時間のお話があったんですけれども、一般の労働者と同じぐらい働いていらっしゃる方でもパートという呼称だけで賃金が低くなっている、差別をされているという疑似パートというのは現実にはまだたくさんありますし、今後もふえていくんではないかという心配があります。ですから、先ほど法とか税制でいろいろするのはどうかというお話もあったんですが、こういう問題ではやっぱり労働基準法にもきちんと明記すべきですし、これは、丸子警報器で裁判に訴えられて差別の不当性が明らかになったんですが、一々裁判で訴えて勝利しなければこれが認められないというのではなくて、やはり法制化できちんと保障すべきだと思います。
 先ほどお話が出ました短時間パートだから低賃金だという問題も、やはり一般の労働者との賃金格差を今世界的な流れとしてなくしていこうというのがあるのですから、それはやはり賃金によって社会保障の例えば厚生年金とかなんかも後でかかわってくるものですから、そういった意味でも労働条件を平等待遇にするとか、そういうことは法制化が必要ではないかなと私は思っております。

○清水澄子君 今ちょっとおっしゃっていた、パートの人が正規にならないかと言っても自分はパートでいいと、それはそれでいいと思います、自分が選ぶわけですから。しかし、その場合、その例がすべてではなくて、今も私たち女性が皆問題にしているのは、短時間の労働を自分は選ぶという選択をするのはいいんですけれども、日本の場合はパート即低賃金という、それから無権利という、社会保障の権利もない、それから時間単位じゃないですから、パートという名前だけで、フルタイムと同じ時間働きながらパートだから低賃金というのが圧倒的に多い。それと、女性の労働の現状は、正規社員だった人が非正規、派遣、契約、それも物すごく短期間の更新なんです。ですから、身分が不安定だけれども何も言えない、次も雇ってもらいたい、そういう中でずっと低賃金で続いている。
 そういう意味では、日本の雇用の条件というのは、女性の働く条件というのは本当に物すごく悪い。国際的にもこういうところはない。ですから、パート均等待遇法というのはパートとフルタイムの均等な権利という、時間だけが短いんだから、その時間分だけはちゃんと正規の働く人と同じような権利、その時間の間は。ですから、パートの人だと産前産後の休暇もないとか、育児休業もないとか、そういう人が多いんです。
 ましてや雇用保険がない。年金も、毎日六時間フルタイムで行きながら、パートという名前であるために国民年金に入っている、厚生年金に入れない。そして、健康保険も国民健康保険ですね。そうすると、本当なら事業主は働かせながら負担をしなきゃならない厚生年金でも、そういう財政を全然負担しないで済むんですね。働く女性の労働に対して非常に不利益な扱いをしている、これが一つの大きな原因。
 それは、しかしパートで働く人が多いというのは、税制の面はちょっとひとつおいて、子供が生まれたとき、子供を育てなきゃいけないという負担がどうしても女性の方に来ました。それは女性の役割みたいにされてきましたから、女性は育児、家事をしっかりやって、余った時間を働くものだという今までの考え方があったと思うんです。
 ですから、今それをそうじゃないと。子育てとかそれは社会政策として支援する、それから家庭の中でもお互いに分かち合う。そういうふうにして両方が働きながら経済的な面とか自分の能力を社会に生かすとか、そういうことを平等社会でやりましょうというのが今の課題であるわけです。女性がどうしてもパートを選ぶというのは、やっぱりまだまだ育児、介護の責任が女性の方に主として来る、それをどう社会でサポートしていくか。これが保育所とかそういう問題になると思うんです。それから、育児休業だってもうちょっととり方をいろいろできるようにするとか。
 それから、私が冒頭に申し上げたように、もっと労働時間の短縮ということに視点を置くべきではないかというのは、これはオランダなんかそうでしょう。オランダの雇用状況のあり方、子育てと介護が両立できる労働条件、働き方というので、週三十五時間労働とか四十時間労働とか自由に選びなさい、そして自分でちゃんと申告して、子供が病気だから今月は私は短い時間を選びますと言って労働時間を選択できる。そうすると夫の方は、じゃ来月は私が短い労働時間を選びましょう、そういう形で両方が働きながら家族もちゃんと一緒に暮らしていける、そういうやっぱり働き方が変わっていっているというところですね。
 日本の場合はずっとその辺がなかなか改善できないという、だから大事な基本部分がそのままになったままで、男女共同参画というのも本当を言ってなかなか実効性が上がらないんじゃないかというのが私たちの問題提起です。

○郡司彰君 家の問題というのは、女性の話の場合によく出てくるんですけれども、今、仕事の中で家というのが下について職業がよくわかるなというのは、例えば農家とか商家とか、落語家なんというのもありますけれども、大体その二つぐらいが大きいんだろうと思うんです。
 そうしますと、農家の方や商家の方というのは、今の議論とちょっとなじまないかもしれないけれども、実質的には労働もしているわけです。しかしながら、世間の税の問題とかその他のところになると必ずしもそれが出てこないというような仕組みの中で働いている人というのがたくさんいらっしゃるんですね。そういう人たちが税制の問題、社会保障というだけではなくて、今そういうような家というものと非常に密接な中で労働していて、しかも対価というものが十分に働かない。それから一番問題なのは、やっぱりいろんな意味で、同じ職業の人たちが集まるときの政策決定からかなり遠いところにしかいられない、そういうことがあるんだろうと思うんです。
 ですから、そういう意味でいくと、今の議論も必要なんだろうと思いますけれども、現実に労働しているけれどもそれが労働というような範疇でいろんな統計にも出てこないような、そういうところにどういう目を向けるかというのも一つちょっと課題として抱えていかなくちゃいけないのかなと。
 例えば、千葉先生なんか、裁判をやった場合に多分あると思うんですけれども、財産は夫婦でつくり上げたものですよと。ですから多分、二分の一は離婚をする場合には女性の方にもというような話が出てきますけれども、じゃ、主婦というような形で言われてきたようなその環境の中で二分の一だというのと、今言ったように商家とか農家という中で実質的には一番働いているかもしれない人も、それはやっぱりおおよそ二分の一というようなことの概念にもなってくるんだろうし、そういうところからいくと、家庭にいていろんなことをしている女性のカウントをするような形のものがあったり、それから、今言ったような商家とか農家と言われる女性の方をどういうカウントをしてそういう対価というのを見ていくか。こういう見方があるんじゃないかというのがあればちょっとお聞きをしたいなという感じがしております。

○渡辺孝男君 やはり男女の性別でいろいろ差別が起きてくるというのは非常に問題だと思うんです。我々も、性に中立な税制度等をきちんとすべきだという考え方は皆さんと大体ほぼ同じだと思うんです。
 特殊な例から考えますと、今、医学的な意味では特殊な例を申し上げるんですけれども、性同一性障害みたいなものがあって、これは医学的にも倫理的にも本当にそれで悩んでいる人には性を別にするというようなことも現実としては起きてきている。あるいは、いろんな遺産とかが関係するのか、あるいは職業を継ぐために関係するのか、男女の産み分けというようなことも医学的には可能といいますか、そういうことでいろんな問題が起きてくる可能性もあるわけです。そういう意味で、これから多様なライフスタイルと言いますけれども、あるいは将来は自分で性を選ぶというようなこともなきにしもあらずだと。
 本当にその人の人権を大事にし、その人のライフスタイルを大事にしということであれば、やっぱりいろんな制度がそういう性にかかわりなくなっていかなければならないという、そういう状況があるんじゃないかと。
 特殊な例から言っておりますけれども、そういう意味で、もし性によっていろんな差別が、また税制等で問題があるのであれば、やはりこれは早急に解決しなければならない問題ではないかと思います。
 男女の賃金の格差というのが、前にもちょっとお話ししましたけれども、年金にも影響したり、いろんな損害賠償なんかにも、男性である、女性であるということで、女性の賃金ということで総枠が決まり、男性の賃金ということで総枠が決まった場合、私は男性じゃない、女性じゃないといった場合に、じゃ、それが認められて賠償金が上がるのかという変な設問も立つわけでありまして、そういうものがないようなやっぱり税制等、年金制度等を組み立てなければいけない、そのように特殊な例から考えております。
 それは、やっぱり人権を守るという意味で、その人がライフスタイルをどういうものを選ぶかというのが非常に大事な時代になってきているから、そういうことまでも考えながら性に中立な制度というものをつくっていかなきゃならないんじゃないかな、そのように思います。
 特殊な例を申し上げました。

○千葉景子君 ちょっと郡司委員から御指摘があった点で、一つは、今ここで議論されていることの基本的な中心は雇用労働といいましょうか、いわゆる賃金労働ですね。それを中心に多分議論が進められているというふうに思うんですが、ただ、やっぱり御指摘があった、例えば一つは多分ペイドワークに対してアンペイドワークをどう評価するかという問題があるだろうというふうに思います。
 それからさらに、いわゆる自営とか、むしろ女性そのものも事業主というような立場にある場合に、そういう場合でもやっぱり女性であるがゆえになかなかそれが評価をされない。例えば、農家のような場合でも、ほとんど半々かそれ以上に働き、そして自営業者としての責任を果たしているにもかかわらず、ようやく解消されてきた年金等の問題には一定のあれが出てきましたけれども、例えば財産みたいなことになりますと必ず男性の名義であり、なかなか女性がそれを継承したり、あるいは共有をするというような形にはなりにくいという問題があろうかというふうに思います。
 そういう意味では、一方ではやっぱり雇用される、雇用、被雇用といいますか、そういう主従でもないけれども、雇用されているという立場での問題と、それからそうではないけれども、事業主等であってもそこが評価されない問題と両面あるのではないかな。そういう意味で、大変重要な問題指摘なのではないかというふうに感じます。

○岡崎トミ子君 郡司さんの御発言でちょっと刺激をされて申し上げたいなと思うんですが、一九八六年に男女雇用機会均等法ができましたときには、専業主婦とそれから仕事を持っている女性と分断された形で、この法律が本当に働く人たちに万全な体制で成立しなかったわけなんですね。専業主婦は、ああ、あれは働いている女性の問題でしょうというような、割と客観的な形で応援がもらえなかった状況だったなというふうに思い出すんです。
 ところが、この男女雇用機会均等法の法律が成立いたしましてから、私のところでは日本で初めて、宮城県では岩出山町というところで条例をつくった。それから、県の方もいろんな意味で浅野知事も指導をされている。そして、県内でいろんな情報が入ってくるのを見ましたら、今農家の方のお話がありましたけれども、もう本当に専業主婦だけではない、農家の仕事もする、ありとあらゆることをやりながら、夫の方は農家のお手伝いは時々で、別な仕事を持ちながらという形で仕事をしているわけなんですけれども、この中で初めて夫と妻とが向き合って、少し給料がもらえないだろうか、一年に何日か休暇がもらえないだろうか、そういう指導を県がしているわけなんです。
 そこで、白石市とか、あるいは志津川町ですかね、そういうところできちんと給料が月々五、六万もらえるようになった、休暇もきちんと夫との話し合いの中で年何日かというふうに、それぞれはもう家庭の問題なんですけれども、そういう形でやれるようになった。もちろん、基本的には税制、社会保障制度という形でやっていかなければいけないけれども、まず基本的なところで、家庭の中で農家の方たちがそういう動きをしている。
 それから角田という、やはりここも農家が中心になって動いている町ですけれども、そこは若い男性たちも女性の問題を妻と話し合っているからなんでしょうか、周りの六十代前後の女性たちが、働いている女性たちのいろんな意味で支援をしていったらいいんじゃないかというので、保育ママがありますよね、三時間でも赤ちゃんの面倒を見ていてくれないかというのでそれにかかわるようになったら、大変生きがいを持つようになってとても楽しくなったと。
 私は、保育環境と働く環境の場の整備というときに、地域社会が再生されているということがとても大変大事だというふうに考えていて、御近所のことで助け合うというのは昔私たちが小さいときはいつもあった。そういうそのもののコミュニティーを再生するというのは今難しいかもしれないけれども、そういう動きがやっぱり青年たちの話し合いの中から、家庭の中の話し合いの中から生まれてきているということ、男女共同参画社会基本法が成立したのは、いろんな意味で大きな影響があるなというふうに感じております。

○八田ひろ子君 私も、今言われております農業者の方とかあるいは中小零細企業家の家族従事者として働いていらっしゃる女性というのが、社会保障の面でも税制の面でも、そしてましてや自分が手にすることができる働いた報酬というんですか、そういう方たちの場合賃金じゃないものですから、そういう面にしてもやはり制度の外に置かれている。出産をしたときでも、当然一緒に働いている従業員は産前産後の休暇をとったり、それから健康保険から出産手当が出るんだけれども、事業者の妻として働いている人の場合はそういうものも受け取ることができないとか、そういう、これは法とかあるいは社会保障制度の不備が実際にあるということをいろいろと伺っていますし、これは改善しなくてはいけない問題だというふうに思います。
 それと、今議題になっております女性の多様な働き方と雇用環境の整備の問題でいいますと、女性の多様な働き方という規定がこの調査会の論議の中でもいろいろありましたが、本当に働く女性の自由意思による多様な選択が今できるのかといえば、必ずしもそうではなくて、賃金が低いところを女性が選択せざるを得ないような形が先ほど来のお話の中でもありまして、就業形態が違うことを理由に賃金を初めとするいろいろな条件に差別をつくったり、それから低賃金や不安定雇用というのしか選択できないという半ば強制をされている今のやり方というのを改善するためには、私はやはり労働基準法に雇用形態による差別禁止というのが明記されるべきだというふうに思います。
 いま一つは、先ほどからのお話で、パートを初めとして女性と男性との賃金格差、女性が賃金の低いところを多く選択せざるを得ないということは、女性の経済的・社会的自立を阻害しているだけでなく、男性にとってもやはり大きな問題だと思います。私もいろいろ調査をさせていただいて、女性労働者に多いパートタイム労働者の時間給の実態というのが、地域の最賃ぎりぎりのところが多くて、あるいは新聞広告や雑誌の広告なんかを見ますと最賃より低いのがあるわけですよね。
 それで、憲法二十五条を受けてこの最低賃金というのがつくられているわけなんですけれども、現在の最賃が同じ憲法二十五条から出ている生活保護のレベルよりも実際低いわけです。例えば、東京で十八歳の単身者で比較しますと、最賃では生計費、これは社会保険料や税金を引いた金額なんですけれども十万三千円になるんです。ところが、生活保護費は十四万円なんです。七八年までは実は最賃の方が生保よりも上だったんですけれども、八〇年代からは最賃の方が生活保護基準よりも低くなっている。東京でもそうですから、最賃を購買力平価で外国と比べてみますと、日本はサミット諸国で最低になっているんです。
 だから、こういった問題でも、全国一律の最賃制度をつくって国がナショナルミニマムをきちんと示して憲法二十五条を遵守できる、そんな最賃制度をつくること、これは全体の底上げになりますので、男女ともが人間らしく生きるということ、そして女性の自立を支えるという面でも非常に大事じゃないかと思うんです。
 もう一つは、いわゆるグラスシーリングの問題です。これは女子学生がなかなか就職できないというところで必ず取り上げられる問題なんですけれども、ことし、二〇〇一年一月一日のアメリカのニューヨーク・タイムズがこの日本の問題を取り上げて、鉄筋ガラスの天井というふうに題して報道しているんですね。
 最初、私、鉄筋ガラスの天井とは何だろうと思ったんですが、グラスシーリングというのは目に見えない頭打ちということでガラスの天井と言われているんですが、日本の場合はそれが鉄筋で補強されているように非常に強いものだというふうに言っていて、日本のエリート大学を出た女性、女子学生が技術系の会社の就職面接めぐりをしていくんだけれども、実際には何を聞かれるかというと、日本にコンビニは幾つあるかとか、いわゆる彼女たちの日常生活に関するつまらない質問、あるいはあなたは総合職じゃなくて事務職を受け入れる気はあるかとか、そういうことを尋ねると。これは記事の中身なんですけれどもね。
 それで、その中で女性、女子学生を事務職の軌道あるいはその行きどまり職に転入させるという、要するに上に上がっていけないところですね、そういう儀式、これは面接のことだそうですけれども、こういうことが実際にあるんだということを言っていると語らせているんですけれども、やはりこういった外国から見ても異常なグラスシーリングというんですか、男女差別ということも実は今非常に大きな問題があるんじゃないかと。
 ところが、男女共同参画基本計画の中には、二〇〇〇年プランにあった「賃金格差解消に向けた取組」という項目や「グラス・シーリング解消のための取組」というのがなくなっているわけなんです。ですから、女性が自立できないほど差別を受けている状況を是正するための最大の課題として、こういった賃金格差是正の問題や「グラス・シーリング解消のための取組」というのをきちんと政府に対しても取り組むように、この調査会でもぜひ提言の中あるいは報告の中に私は盛り込んでいただきたいなと思っております。

○清水澄子君 さっきの郡司委員の御発言にちょっとかかわりますけれども、農業とか商業に働く女性たちの労働の評価というのがまだ日本では、非常に日本経済に貢献しているんですけれども、ほとんど見えない。それを私たちは、雇用の場でだと問題はあるけれども、雇用労働で一つの労働に対する賃金とか、もう一方、見えない労働を無償労働と言っているんです、アンペイドワーク。
 諸外国でアンペイドワークと言われるものは、農業と商業だけの部分じゃなくて、育児とか介護も非常にこれは女性の方がたくさん担っているという中で、そのアンペイドワークの労働をどのように社会的に見える形で統計とかそういうところにあらわしていくか。そしてその中で、社会政策でそれを補えるものと、それからやっぱりそれはもう個人でやらなきゃならないもの、そういう見えなかった労働をはっきり統計であらわそうというのが、もうこれは国連でもその統計で各国みんな共通で調査しているんです。
 日本は、それがなかなか進まなくて、ようやくこの五、六年前から私がちょっと提起して、今度、国勢調査のときに少しそれをやるようになると思うんですけれども、まだそういうところに関心がいっていないという状況があります。
 しかし、国際的にはもう非常に厳密に、結局時間を調査するんですね、無償労働の仕方は。一日二十四時間と限られた時間の中で女性がどういう労働をしているか。二十四時間がきれいに平面的二十四時間じゃなくて三十時間以上の労働をしているという、例えば農業をやりながら子育てもしている、介護もしている。働きながら育児・介護もしているという、そういう物すごくたくさんの時間を働いている。それに対して、女性にそれをどういうふうに還元するかというので、ドイツなどは、これは一斉にだれにでもできるということで、子供を一人産んだら二年間の年金をプラスするという、そういう政策をやっていますね。そういうアンペイドワークというのはとても今研究されているんです。
 だから、私はこの調査会でやはりこれは日本でももっと調査研究するということをぜひ確認というんですか、問題提起をしておいていただきたいと思うんです。
 それと、今度、日本の中での問題点の一つは、さっきから出ている税制ですね。税制の中で、さっきの百三万円とかそっちの問題はあるんですが、配偶者控除とか配偶者特別控除は、サラリーマンの妻がいかに夫に内助の功で育児・介護とか家事で貢献しているかということへの評価になっているんですね。そうすると、これはサラリーマンの妻だけではなくて、農家の妻も商家の妻もみんなやっているはずなんですね、内助の功ともし言うのであればですよ、そういう表現は非常にこれは古いですけれども。にもかかわらず、この税制はその人たちには適用されないんです。だから、私は、この税制そのものもやっぱりもう一度、女性の間でも不利益がある、いろんな不利益な面が出てきていますから、これはジェンダー視点で今の税制度を見直す、改革するということをひとつやはりここではっきりしておいた方がいいんじゃないかと思います。
 それと、もう一つは年金なんです。年金も、国民年金、厚生年金は個人単位で保険料を払いますよね。ところが、サラリーマンの妻は百三十万円までしか所得がない人は保険料が免除されるわけです。そうすると、農家の人も商業をやっている人も一生懸命働いているのに、この人たちは年金の保険料を払っているんです。ところが、サラリーマンの妻は百三十万円までならば払わなくていいという、とてもここにも差別というんですか格差というんですか、不利益がありますから、今問題になっている税制、それから社会保障の中の特に年金ですね、今。
 その点では、女性間でもそれぞれの仕事によって対応が違うとか、夫の仕事によって女性の扱いが違ってくるとか、それから法律婚をしているかしていないかで違ってくるとか、もうたくさん今の言っている税制と年金に非常に問題がありますから、この点は、この調査会としてもっときちんとここを研究して、ジェンダー視点でこの問題点を明らかにする、そして改革をするというふうにまとめていただきたいと思います。

○小池晃君 仕事と育児・介護との両立という点で、育児・介護休業制度の問題もこの調査会で二月二十一日に議論になりましたので一言触れておきたいと思うんですけれども、参考人質疑でも、六割の事業所で育児休業については制度ができて取得率も上がってきているんだという指摘もあったわけです。ただ、大半の女性がそこに至る前に結婚、妊娠を機会に退職することが多いので、実際に生まれてくる子供から見ると、育児休業を利用しているのは九%程度だという指摘もありました。やはりこの制度改善というのは必要なんだろうと。もちろんこれだけで解決する問題じゃなくて、長時間過密労働であるとか男女賃金格差を是正するということが前提になると思うんですが、制度改正が必要だと。
 今国会に政府から改正案が提出されていて、我々は一歩前進だと思っているんですけれども、ただ、男でも女でもとれるような制度として充実させていくという点ではまだまだ不十分だと。ただ、ちょっと国会の日程の関係でこれが果たして審議されるのかどうかということについては大変心配をしておるんです。反対している法案は強行採決したりするんですけれども、こういうのはなかなかやらないというのは問題じゃないかなと思うんですが、これはぜひ審議すべきだと思っておるんです。
 中身について言うと、支給率が四割にこの一月からなったけれども、この問題点も指摘をされました。男性の取得が一%以下という実態も、男女賃金格差が前提としてある、問題があるんですけれども、この支給率の低さが大きな原因になっていると思うので、これはやはり六割程度に引き上げる必要があるんじゃないだろうかと。
 それから、中小企業でなかなかとれないという実態があります。やはり代替要員を確保することなんか中小企業は厳しいと。そういったものに対する助成率を高める、そういう手だても必要なんじゃないだろうか。
 それから、なかなか制度としてとりにくいんだと。延長ができる、あるいは分割取得ができるようにすべきだ。
 それから、今、育児休業をとると時間短縮は請求できないわけですけれども、育児休業をとった後でも子供が小さいうちは時短の請求ができるような形で、やはり組み合わせてとれるような使い勝手のいいものにしていく必要があるんじゃないか。
 それから、不利益取り扱い、今度の政府案でも制限をしているわけですけれども、これを徹底的に禁止するのと、いろいろお話を聞くとなかなか職場でとりづらい、合意がつくれないという声も聞きます。やはり職場での合意形成に向けた事業主の責務なんかもはっきりさせていく必要があるんじゃないかなと。
 そのほか、看護休暇が努力義務にされるという中身ですけれども、これは事業主の責務にすべきだと思うし、看護休暇だけではなくて授業参観とかいろんな学校行事なんかも含めた家族休暇というような制度に発展させていく、あるいはパート労働者にもとりやすくする、そういうさまざまな改善が必要なんではないかというふうに思っております。
 全体として、先ほど言ったように長時間過密労働、男女賃金格差を是正していくこととあわせて、この育児・介護休業制度そのものをもっともっと利用しやすい制度にしていくということも課題としてあるんではないかということを発言しました。

○会長(石井道子君) 先ほど、委員間の自由討議のテーマとして三つに分けてありまして、最初に税制と社会保障の問題ということで御意見をいただき始めたんですが、その後、御発言の中身がいろいろとまたがっておりまして、特にほかの二項目につきましてはテーマを提示しないで自由に御意見をお話しいただきました。その点はちょっと運営の面で少しやりづらかったかもしれませんけれども、御容赦いただきたいと思います。
 もう意見も出尽くしたようでございますが……

○有馬朗人君 ちょっといいですか。
 じっと伺っていたんですけれども、私は二十年前に徹夜団交をいたしました。そのときに出てきたテーマが男性の育児休暇である。私はそのとき理事長でしたが、通しました。二十年前に男性の育児休暇という議論が出たときに、何てばかな話じゃないかという意見が非常に強かった。ですけれども、私も理事長として大分反対はしましたけれども、負けて、あえて負けたんですよね、はっきり言って。それ以後、物理学会は男性の育児休暇があるはずです。
 なぜこんなことを言い出したかというと、私の娘のところに孫が生まれたのですが、その夫は育児休暇がほとんどとれないと言うんです。
 だから、皆さんのおっしゃっていることというのは大変理想論で結構ですけれども、現実の問題としてはだめですね。やはり物理学会での経験から見ますと、小さな組織であるけれども、組織全体がそれをやろうという気にならなければこれはだめですよ。幾ら法律いじってみたってだめ。強制的な罰則のある法律でもおつくりになればいいけれども。育児休暇やらなかったらそのたんびに罰金を出せとか、そのくらい強制しなきゃできませんね。おやりになりますか。
 それからもう一つ、私がうちの家庭だけじゃなくて見ていて、確かに理想論はみんなおっしゃるんです。私は、しかし、根本的に学校における教育の問題があると思うんですよ。理想論としては男女平等であるとか人種差別はしちゃいけないとかいろいろおっしゃるんです。実際問題、子供たちの身についていないですよ。それをどうなさるか。
 初中教育ということを見ていても、教科書に書いてあるんですよ。いろいろ書いてある。いろいろ言っているんですよ、教育では。だけれども、実際問題、三十代、四十代、男の子をつかまえて、本当に男女は平等であると思っているのか、実行しますかとお聞きになってごらんなさい、なかなかそういうことになっていないんです。
 だから、いろいろ理想論を我々言っているけれども、どうやって実行するのかということを私は非常に気にしているわけです。私、随分実行してきました。だから、事法律を変えればいいということじゃないんです。
 その辺についてどうやったらいいのか、お考えがあったらお教えいただきたい。

○小池晃君 育児休業の問題について言うと、理想だからできていないということではなくて、やはり今の制度が非常に使いづらい問題があると思うんです。
 参考人質疑でも明らかになりましたけれども、北欧諸国では日本の二けた以上の、数百倍の規模の育児休業給付がされているということも紹介されまして、給与の四割しか出ないということでは、男の人に休業をとってそれで生活しろと言ったって、これは現実問題としては不可能なわけですよね。
 ですから、やはり男女賃金格差そのものも直していく必要があるし、六割給付に上げていくといった、本当に実効性のあるものにしなければ、男がとれと言ったってとれないという現実がある。そういったことも含めて、義務化も含めてやっていく必要が私はあると思います。

○有馬朗人君 私自身の経験で申しますと、日本だけじゃなくて全世界的に見ていて、研究者、大学の教員というのは比較的この問題が、もちろんないわけじゃないですよ、実際私は何人か女性の博士をつくりましたけれども、本当にずっと研究を続けているというのは少ないです。中国人でも、中国は随分女性の科学者が活躍をしている国ですが、結局どこかで外れてしまったというのがいます。ですけれども、全般的に見てかなり女性が活躍しています。その理由というのは簡単でして、育児休暇を一年とっても、一年たてばまたもとの研究生活、教育生活に戻れるんですよ。学校もそうですね、小中学校の先生たちも。
 やはりこれを確立してあげなきゃ、せっかく職業を持っていたって、子供を産んで一年休んだ、二年休んだらばその後続けられないという、こういう実態がある以上、私は非常に難しいと思う。これを何とかしてあげなきゃいけない。その点は、小中学校の先生であるとか大学の教員あるいは研究所の研究者はやっています。かなり実行している。だから、社会全体がそういう雰囲気になっていかなければならないと思います。
 もちろん法律を充実させていくということも必要ですが、結局私は教育だと思うんですね。幾ら法律が充実してみても、教育がきちっとしていなければそれが理解されない。
 だから、この点をどうしていったらいいか。これは日本だけの問題じゃございません。アメリカでも同じでした。だけれども、随分努力をしてそういう点を一つ一つ解決してきたと思います。私は、非常にこの問題に関心を持つし、どうしたらいいのかというのを常に考えておりますけれども、やはり一番重要なことは、男性にせよ女性にせよ、結局は平等性ということを本質的に理解していくことだと思います。それから、産業界。産業界がやっぱり理解していかなくちゃいけない、これは中小企業も含めてでありますが。
 こういう点についてどうしたらいいか、ぜひともより実効性のある御案をおつくりいただき、実行していただければ私も幸いと思います。

○小宮山洋子君 この調査会でおつくりいただいてと言われますけれども、この調査会は超党派でみんなでつくるのが参議院のいいところなので、それをどうするかをずっと言っているということ。それで、今おっしゃいました……

○有馬朗人君 私も参加しているんですけれども、どうもそのあたりがね。もうちょっとパンチのあるのができないかと思って……

○小宮山洋子君 ごめんなさい、私が発言中ですが。
 例えば、今の育児休業についても、おっしゃるように戻れるように、不利益取り扱いをしないということを今政府も出しておいでになります。私たちは、もっとそれを権利としてとれるようにとか、きちんととれるようにもっと実効性を強くするということを具体的に個々の場面でやっているんですよ。
 おっしゃるとおり、確かに教育の問題というのはすごく根本的なテーマだと思って、それを、ですからどうぞ、どうするつもりですか、どうされるんですかではなくて、特に与党の皆さんは政権党でいらしてやろうと思えば幾らでもなされるわけですから、ぜひみんなで知恵を集めてこうしましょう、少しでも理想に近づけるためにこういうふうに知恵を出し合いましょうとぜひ言っていただきたいというふうに思います。

○仲道俊哉君 どうしてもしゃべらなければならないようになったようでございますので。
 今の有馬委員の発言ですね、我が党のこの調査会の筆頭理事でもございますし、皆さん方お聞きになってかなりショッキングな感じじゃなかったかと思うんですが、しかし私は、実現しようと思う有馬先生の気持ちの一つのあらわれでもあろうと思うんです。
 私自身は、我々の年代から比べまして今の若い男性たちは非常に理解が進んでおると思うんですね。私自身もこの会に入りましてかなり勉強させていただきましたし、それから自分自身陶冶できたらと思っているんですが。
 問題は、やはり今の若い、特に小中学校の、先ほど家というのが出ました、芸術家とか、またいろいろな。学校の先生は男女平等なんですね。給料が同じなんですよ、女性の先生も男性の先生も。そして、最近は女性の管理職、校長先生や教頭先生が随分出てきました。これは昔は考えられなかった一つの現象ですけれども、そういうのはやはり徐々に、戦後五十五年たってだんだんと日本人の意識の中で、先生方のいろいろな啓蒙のおかげだと思うんですが、随分変わってきたと思いますね。
 ですから私は、これから一つのそういう法律的な制度等を本当に徐々の改革ではございますけれどもすると同時に、一番大事なのは今有馬先生がおっしゃったような意識改革、これがやはり大事だと思うんですね。
 ですから、いろいろな意味で、小中学校または家庭教育の中において、女の子の遊びだ男の子の遊びだどうだこうだと言うのでなくて、家庭教育の中でやはり今の若いお父さん、お母さんたちが男女の区別なく教育をするように、それがまただんだんと小中学校でもそういうふうになり、やはり今言ったように最後は教育だと思いますけれども、そういう意味で私は、今有馬先生がおっしゃったように、理想的な一つのこの日本の男女平等の社会の中においては、本当に小さな芽ですけれども、その芽がだんだん今大きくなりつつあり、これは必ず実現を日本のこの社会の中では、二十一世紀の中ではしなきゃならないし、政治家として、また今出ました与党の議員としてもそういうことに対しては積極的に意識改革をしながら参加しなければならない、そういうふうに思っております。
 ですから、今有馬先生のおっしゃったことは、非常にそういう意味では実現しなければならないその一つの端的なあらわれとしてお話を申し上げたというふうにぜひとっていただきたいと思います。

○会長(石井道子君) 先ほど第一番の税制と社会保障の問題ということで御意見もいただいたんですけれども、一方では、女性の立場といいますか、個人としてやはりきちんとやるべきであるという御意見がありました。そうなりますと、やはりパートタイムの特別税制をどうするかということになりますし、それと同時に配偶者控除をどうするかということにもなるわけなんですが、その点について、特に反対であるというふうな御意見はなかったんですけれども、いかがでございましょうか、前向きに進めるべきであるということでよろしゅうございますか。
 それからまた、婦人年金権の問題もあります。その点も前向きに取り組むべきであるというような御意見とのことでよろしゅうございますか。
 それでは、ほかに御意見もないようでございますし、予定の時間が参りましたので、意見交換はこの程度とさせていただきたいと存じます。
 委員各位におかれましては、大変貴重な御意見を御熱心にお述べいただきましてまことにありがとうございました。
 本日の御意見も含めまして、これまでの調査の論点を整理いたしまして、各理事とも御相談の上、報告書の取りまとめに向けて今後対応してまいりたいと存じます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十九分散会