147-参-共生社会に関する調査会…-1号 平成12年04月26日

平成十二年四月二十六日(水曜日)
   午後一時一分開会
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  出席者は左のとおり。
    会 長         石井 道子君
    理 事
                南野知惠子君
                佐藤 雄平君
                大森 礼子君
                林  紀子君
                三重野栄子君
                堂本 暁子君
    委 員
                岩永 浩美君
                大島 慶久君
                末広まきこ君
                竹山  裕君
                鶴保 庸介君
                仲道 俊哉君
                橋本 聖子君
                森下 博之君
                小宮山洋子君
                千葉 景子君
                福山 哲郎君
                松崎 俊久君
                渡辺 孝男君
                小池  晃君
                八田ひろ子君
   事務局側
       第三特別調査室
       長        大場 敏彦君
   公述人
       財団法人21世紀
       職業財団理事長  太田 芳枝君
       新日本婦人の会
       副会長      笠井貴美代君
       財団法人市川房
       枝記念会常務理
       事        山口みつ子君
       東京生活者ネッ
       トワーク女性部
       会メンバー    中田 慶子君
       女性政策研究家
       法政大学法学部
       講師       三井マリ子君
       女性議員をふや
       すネットワーク
       「しなの」会長  樽川 通子君
       杵築市各種女性
       団体連絡会議議
       長        綿末しのぶ君
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  本日の会議に付した案件
○共生社会に関する調査
 (男女等共生社会の構築に向けてのうち女性の
 政策決定過程への参画についての現状と課題に
 関する件)

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○会長(石井道子君) ただいまから共生社会に関する調査会公聴会を開会いたします。
 本調査会は、現在、共生社会に関する調査のうち男女等共生社会の構築に向けて調査を進めておりますが、本日は、女性の政策決定過程への参画についての現状と課題に関する件について、七名の公述人の方々から御意見を伺います。
 まず、公述人、財団法人21世紀職業財団理事長太田芳枝君、新日本婦人の会副会長笠井貴美代君及び財団法人市川房枝記念会常務理事山口みつ子君にお願いいたします。
 この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ本調査会公聴会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本調査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 次に、会議の進め方について申し上げます。
 まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 なお、御発言は、意見、質疑及び答弁とも着席のままで結構でございます。
 それでは、太田公述人にお願いいたします。太田公述人。

○公述人(太田芳枝君) 御紹介いただきました太田でございます。
 私は、今、財団法人21世紀職業財団というところに勤めているわけでございますが、この財団は実は男女雇用機会均等法ができましたときにつくられました財団法人でございまして、企業の人事管理が均等法の目指すようなものになるよう具体的な情報を企業に提供するということを目指しております。
 その後、育児・介護休業法ができたりパートタイム労働法ができまして、その指定法人といたしましていろいろな各種の給付金の施行事務も労働省女性局からの予算をいただいて担当させていただいている仕事をしております。ですから、私ども21世紀職業財団の三本柱、仕事の三本柱という言い方をしておりますが、女性の能力活用の問題、それから仕事と家庭の両立支援の問題、そしてパートタイム労働者の雇用管理の改善の三つを主としてやらせていただいているわけでございます。
 それで、本日、政策決定への女性の参加というテーマのもとでお話をさせていただく機会を得まして、非常にありがたく、御礼申し上げたいと思います。私の場合は、主として男女雇用機会均等法をめぐります企業の女性活用の視点からお話をさせていただこうかなというふうに思っております。
 昭和六十一年に男女雇用機会均等法が施行されまして、企業における人事管理が男とか女とかという性を基準とする雇用管理ではなくて、個々人の意欲、能力を基準とする雇用管理の実施が求められたわけでありまして、これは我が国の企業の人事管理に対しまして抜本的な変革を一応求めたものではないかというふうに思うわけでございます。
 その後、女性労働者の数は非常に増加しておりまして、その量的な増大のみならず、いろいろなところの新しい職域に女性たちがついている。また、勤続年数も長期化しておりますし、必ずしも多くはございませんが役職者も増加はしてきているわけでございます。また、進学率が非常に高くなってきたことによって高学歴化も見られているわけであります。
 日本の企業の現在の雇用システムを考えますと、やはり昇進によって責任や権限が増していくというシステムを適用している、そういう人事管理をしている企業さんは非常に多いわけでありますので、やはり一つの企業に勤続をするというその勤続の持つ意味は非常に大きいというふうに思うわけでございます。
 企業における政策決定への参加といいますのは、もちろん女性たちが仕事の実力があるということが前提でありますけれども、やはり責任とか権限のある立場に立つということが必要でありまして、そういう点で、女性活用の問題点の中で、調査なんかをいたしますと、女性の勤続年数が平均的に短いから女性は活用しにくいんだというような答えをされる企業さんが四割以上あるということがあります。
 そういう意味で、やはり継続は力なんだという観点から、できるだけ女性たちがやめない、できるだけやめないで一生懸命働くという意思もすごく重要なんじゃないかなというふうに思うわけであります。女性の勤続年数の短さが、女性たちはいつやめられるかわからないというような思いを企業に持たせてしまって、どちらかというと男は基幹的な仕事、女は補助的な仕事でいいんだというような展開になってきたのではないか、そういうのが一つの理由であったというふうに思うわけであります。
 そして、企業の雇用管理におきまして、均等法ができてから、建前的には男女を均等に取り扱うべきだという、建前というか理念ではやはり男女は均等に取り扱わなきゃいけないんだということは人事部門を初めかなり進んだというふうに思っております。就業規則などでの差別的取り扱いはほとんどなくなったわけでございますけれども、やはり働く一人一人の意識とか行動において本当に均等かといいますと、必ずしもそうなっていない部分があるというふうに言っていいのではないかと思うわけでございます。
 例えば、結婚退職の制度というのは、もちろん最近、制度では全くと言っていいほど見られませんけれども、やはりやめざるを得なくなるような職場風土があるとか、実際結婚して続けている女性はうちの会社にはいないとか、上司から何となくやめろというふうなことを言われたとかいうような声をよく聞くわけでございまして、実際に企画庁が行いました平成八年度の国民生活選好度調査を見ましても、そういう風土があるという答えが三五%に達しているというふうな数字もあるわけでございます。
 それから、仕事の与え方というのがこれまた働く人たちの力が伸びていくということでは非常に大きな意味を持つと思うわけでありますけれども、いろいろな総合職女性たちと会っていろいろお話なんかを聞きますと、責任のある仕事は女性にさせてもらえないんだとか、期待されているものに男と女で差があるんだとか、それから男の仕事と女の仕事が会社の中でやはり画然と分かれているとか、雑用は女性の仕事というふうにされちゃうとか、会議、プロジェクトには女性が出席させてもらえないからとかといったいろいろな声が聞かれるのは事実でございます。
 また、人事評価につきましても、同じ仕事をしていても男性を優遇するとか、男性社員に高い評価がつくとか、効果が女性だから低いと言われたとか、それから査定ランクが男女で違うとか等々の声がありまして、人事評価におきましても公正な評価が本当に行われているのかどうかというのは疑問でございます。
 女性に対しまして、責任感に乏しいとか、女性は家庭責任があるとか、体力が弱いといった、いわゆる性別役割分担意識というのは、やはりまだまだ個別の段階では大変根強い部分がございまして、そういう部分で、均等法が求める性によらない人事管理を進める上で、実態面でこういう意識が大きな壁になっているというふうに思っております。
 昨年、改正男女雇用機会均等法が施行になりましたが、改正法は、配置、昇進という部分とか、さらにはOJTを含む教育訓練全般につきましても差別的取り扱いを禁止してありますので、今後、企業の人事部門は、制度上の均等のみならず日々の仕事の与え方とか評価について公正さが確保できるよう、女性たちからの納得性が得られるよう、そういう方策とかきめの細かい配慮をとることが求められているのではないかというふうに考えるわけでございますが、ともかく、この改正均等法の規定を名実ともに本当に企業に定着させていくことによって、女性が職場で能力を発揮して将来的に企業経営を担っていくことにつながるというふうに考えております。
 そして、私どもの21世紀職業財団では、新しい均等法に盛り込まれましたセクシュアルハラスメントの防止対策の具体的取り組みを図るということで、地方事務所におきまして講習を実施しております。それから、企業さんからの研修の依頼に対しましても講師を派遣しているというふうなことをやっておりますが、そういう実態を見てみますと、大企業における取り組みはある程度進んできているなと考えますが、中小企業はいまだという感がございまして、そういう意味で、企業の規模間格差による意識の差というのも大きいのではないかなというふうに思っております。
 また、講習を通じて思うことは、男女の意識の格差が非常に大きいわけでありまして、時間がないので余り申し上げにくいんですが、例えばセクシュアルハラスメント、セクシュアルハラスメントと言うと職場がぎすぎすするとか、女性がしっかりしていれば問題は起こらないんだとかというふうな、ちょっと、えっというような御意見があったりいたします。また、女性たちからは、嫌でも人間関係を考えて我慢しているんだとか、仕方がないからあきらめているというような指摘もありまして、やはりこの意識の差というのはなかなか埋めることが難しいのかなと思ってはいますけれども、やはりそういうのは、企業で実際その意識について実態調査をしていただき、職場でいろいろと議論を進めてくださいというようなことをお願いしているわけでございます。
 それから、もう一つ均等法に盛り込まれました男女労働者の間にある事実上の格差を解消するためのいわゆるポジティブアクションの取り組みを企業が進めていただくためのことを少ししろということで、財団といたしまして、それぞれの地域の経営者を対象といたしますトップセミナーとか業種別使用者会議も実施しているところでございますが、やはり女性の活用というのは、企業の経営者とか取締役とかというトップ層の考え方が大変重要でございまして、こういう方々に本気になっていただくということが、その企業における女性活用ということで非常に大きな意味があるということを痛感しているわけでございます。
 と同時に、女性たちが働き続けやすい制度、体制の整備というのも重要でございまして、短時間勤務制度の普及だとか保育システムの充実などにも配慮すべきでありますし、同時に思いますのは、こういう制度はできただけではだめでありまして、利用しやすさというのを確保していくこともとても重要なんじゃないかなというふうに思っているわけでございます。
 そういうようなことを日々仕事をしている中で、企業における政策決定への女性の参加をふやすためには、まず一つは均等法の禁止規定化されました規定を本当に企業へ定着していくということ、それから実力ある女性たち、若いうちの仕事の与え方を男女同じようにして、伸びる力のある女性たちをつくっていくというようなこと、それから働く人々、特に男性の意識の啓発でございまして、やはり企業において女性労働者は対等なパートナーなんだ、イコールパートナーなんだという意識を企業の中でより啓発していくことが必要なのではないかというふうに思います。
 それから、女性の働き方に中立的な制度の確立でございまして、これは税金とか社会保険とか企業における賃金制度とか、やはり女性の働き方にできるだけ中立的な制度を確立していくことも望まれるなというふうに思うわけでございます。
 それからもう一つ、教育における男女平等の徹底というんでしょうか、私どもの財団でも、女子学生シンポジウムというようなことをやっておりまして、大学生に職業意識の啓発をしているわけでありますけれども、もう少し、個性の尊重が言われている時代でありますので、それぞれ若いうちから自分は何が適性なんだろうかというようなことを考えさせるような教育というようなものも必要なのではないかなというふうに思うわけでございます。
 私どもがやっているのは非常に地道な、余り派手ではない地味な仕事でございますけれども、こういう地道な努力を私どももこれからまだやっていこうというふうに思っておりますが、そういうことから、今後は男女、男とか女ではなくて、意欲、能力のある人の力を十分に発揮させていく雇用管理が企業にとって必然であるということをそれぞれの方に理解していっていただけるような企業づくり、社会づくりにぜひ先生方の大きなお力を使っていただければ非常にありがたいなというふうに思うわけでございます。
 以上、私の意見でございます。

○会長(石井道子君) どうもありがとうございました。
 次に、笠井公述人にお願いいたします。笠井公述人。

○公述人(笠井貴美代君) 新日本婦人の会の笠井です。本日はこういう機会を与えていただきましてありがとうございます。きょうは、女性のNGOの立場から三点意見を述べさせていただきます。
 第一に、政策決定におけるNGO、女性運動のかかわりという点についてです。
 今日、政策決定への女性の参画を広げていくためには、議会や審議会などあらゆる場に女性をふやすということとともに、何といっても女性自身が力をつけること、つまりエンパワーメントすることが大きなかぎを握っております。どれだけたくさんの女性が政策決定の各過程、政策の立案から計画、討議、決定、実行のあらゆる過程に女性が参加する、そしてどれだけ多くの女性の意見がそこに反映されたか、そのことが政策の内容と実効性を大きく左右すると思っております。多くの女性がかかわってこそ、政策が真に生きた実りあるものとなり、その点でNGOや女性運動の果たさなければいけない役割はいよいよ大きくなっていると感じております。
 そのことを明確に最近の例で示されたのがセクシュアルハラスメント、性的嫌がらせの問題でした。
 セクハラの規定が初めて盛り込まれた改正均等法の施行の去年四月、まさにその月にあの大阪府の知事によるセクハラ事件が起きました。
 私どもは、法改正に当たりまして、真の実効ある均等法となるよう、諸外国にも倣ってセクハラ禁止を明記することを求めて運動してまいりましたが、結果といたしましては、事業主のセクハラ防止の配慮義務にとどまったわけです。大阪の事件は、不幸にもその不備を裏書きするものになったと思います。何しろ、性的言動を配慮すべき事業主、つまりトップ自身が、配慮どころか率先して事を起こしたと。女性政策企画推進本部長のポストでもありました。記者会見で彼が話した言葉は、単なるセクハラ問題だ、そういう発言がございました。中には、騒ぎ過ぎであるだとか、その場で抗議すればよかったとか、そういう意見もございました。しかし、大阪府が出した文書によりましても、セクハラとは地位を利用して対等な立場で物が言えない状況で起きる個人としての尊厳を傷つける重大な問題であるというふうに明記されております。
 この件で、最大の政策決定の場であります議会がどういう対応をしたかということも問われるわけですが、辞任勧告の決議もできなかったわけですね。調べてみましたら、府議会百十二人の定数中女性議員はわずか七名でありました。ですから、女性がもっと多ければという面、ここからも言えるかと思いますが、同時に、女性議員であっても残念ながら所属政党の立場から辞任勧告に賛成できない、そういう方もいらっしゃいました。また一方で、所属会派は辞任に反対したけれども、御本人は議会外でNGOとともに運動したということで、所属会派の態度を変えるまでには至らなかったけれども決議の際に辞任勧告に賛成した、そういう女性議員もいらっしゃいました。
 セクハラというこれだけ明白な女性問題でも、女性ならだれでも女性の味方というふうに言えないことを私たちは改めて思い知らされた思いであります。また、対応が所属政党や会派の態度に大きく左右されるということ、そして世論と運動の強力なバックアップなしには議会も動かないということをこの件からも学ぶことができました。
 こういう中で、知事を辞任に追い込み、検察の起訴へと展開させたのは、やはり一人の女子学生の勇気ある告発、そしてそれを支えた弁護団、またそれと連携した世論の大きな怒りと幅広い女性運動、つまり女性の結束した力が辞任と起訴に追い込んだと言っても過言ではないと思います。これまでにない広範な女性たちが共同のスクラムを組んで、怒る女たちの会というのをつくりまして、連日行動を展開し、知事おひざ元の男女協働社会づくり審議会の有志も声明を発表して休会を宣言いたしました。千八百通を超える告発状のはがき運動を行いまして、それが検察庁に送られ、マスコミも連日報道し、世論と女性の怒りに包囲された形でついに権力者の犯罪として断罪されたわけです。外国のマスコミは、日本女性の根本的変革の兆しというふうに報じました。こういうNGOの大きな役割が政策を大きく動かしているということが言えるかと思います。
 それから第二に、女性が関心を持ち運動している分野についてですが、女性の問題はもちろんですが、それにとどまらず、例えば不況のもとでの雇用や暮らし、子育てや介護、安全な食べ物、そして環境問題、ごみ問題、平和問題など多岐にわたっております。これらの女性の願いと運動が政策の各分野にわたってもっと生かされる必要があると思います。
 きょう資料に私どもが発行しております「新婦人しんぶん」、毎週発行しておりまして、三十万の読者に毎週届けられているんですけれども、そこにもちょうど報道しておりましたのでお持ちしましたが、介護保険が四月から始まりまして、このちょうど四月二十日付ですが、その中で、負担の重さとサービスの後退が現実のものとなったと、悲鳴のような叫びが上がっております。この問題での改善を求めて各地で女性たちが共同して一斉に運動しておりますし、地域での食事会などの助け合いを広げております。
 また、この号の中面に、四面、五面とございますが、四月から義務化されたチャイルドシートの問題でもこれに補助をということで、子供連れで議会ウオッチングに行ったりしてこの運動を広げております。
 また、おもちゃのダイオキシン、環境ホルモン問題を、もう一つの新聞の方ですが、これは去年の冬になりますが、こういうウルトラマンのお母さんですね、これはお母さんがこういうふうな格好をしてやっているんですけれども、自分でシナリオをつくって、私はウルトラマン人形だと、子供たちに夢を与えるために生まれてきたけれども、すべて塩ビでできている、ごみとして燃やせばダイオキシンが発生ということで、自分で演じながらこの問題の学習を広げていると。ここからスーパーマーケットへの申し入れやおもちゃメーカーへの申し入れと運動が発展しております。
 この四月、乳幼児医療の無料化制度、この制度があと一町残っておりましたが、その残る大阪の岬町という町で実施になりまして、ついに全自治体で乳幼児医療の助成制度というのが実施されることとなりました。これも三十二年間もの粘り強い運動と女性の力があってこそということの思いが今広がっております。
 今、とりわけ環境問題で女性とNGOの運動の力が大きく発揮され、日本の開発政策の見直しと転換への大きな流れをつくり出しております。
 御承知のとおり、吉野川の可動堰建設の是非を問う住民投票で、九割が国の大型開発事業に初めてノーと意思表示いたしました。あの投票で女性の投票率は男性を三%上回りました。
 また、自然との共生をテーマに二〇〇五年に愛知の瀬戸市で開かれる予定になっております万博の計画、これにつきましてもオオタカの赤ちゃんを守れ、豊かな自然を子供らに残そうと若い女性を先頭に今、県民投票実施を求める署名が十一万人を超えて計画の変更へと政策を動かしております。あの森の中に二千戸、六千人が住むニュータウンを建設するというものでしたが、そのニュータウン計画と自動車道路建設の計画を断念させるという第一ランクの大きな成果を既に上げております。
 こうした運動の中で、女性たちの中で今政治への関心、税金の使われ方への関心が急速に高まっております。私どもの八万人の女性たちに行いましたアンケートによりますと、税金にむだ遣いがあると答えた女性が九二%に上ります。ここに鋭い批判の目を今女性たちが向けているということです。こうした暮らしの現場からの女性たちの切実な願いと行動力、そしてNGOの運動の経験と蓄積、その中で培った力を政策決定のあらゆる段階で、またあらゆる分野で生かしていくならば、それはひとり女性にとってだけではなく男性の幸せ、また子供たちやお年寄りの幸せにもつながり、ひいては二十一世紀の社会の豊かな発展にプラスとなるものと確信しております。また、住民参加型の政治、そして民主主義を強め議会や審議会に女性をふやす確かな力にもなっていくに違いないと思っております。
 それから第三に、女性の政策決定参画を強めるためにも、今グローバルな視野に立つということが大変大切ではないかという点です。
 今、女性たちが非常に国際的になっております。私自身驚きましたのは、昨年、私どもの会でドイツにダイオキシンとごみの問題で調査に行きました。そのときに環境都市として有名な人口二十万の都市に日本から毎年二万人が視察に訪れていると、そのほとんどが女性であるということを聞きました。その町には日本人担当者が置かれたそうです。
 NGOの中でも努力を強めております。特に、一九七五年の国際婦人年以来、日本の主な四十九の全国的な女性団体でつくっております国際婦人年連絡会、次にお話しくださいます山口さんが事務局長を務めておいでですが、ここでも国連の女性関連を初めとする人権、環境など各種の会議の内容、各国の先進的な経験に積極的に学んでおります。ことしは、これも資料でお配りしましたカードですが、カナダの女性たちの呼びかけで二〇〇〇年世界女性行進というのが全世界的に取り組まれております。百四十九カ国で行われ、日本でも広範な女性たちが共同して各地で取り組んでおります。世界の情報をじかに得て運動に生かしているわけです。
 御存じのとおり愛知の万博計画でのBIE、博覧会国際事務局と日本の通産省とのやりとりの内容、会議録は非常に衝撃を与えました。日本の計画は二十世紀型の開発至上主義であるという指摘、これは私たちに大型開発一本やりの日本の政策がいかに時代錯誤的なものかということも私たちに教えてくれました。こうした各分野の、各世界の動向、情報を積極的に知らせる、そして時には耳の痛い話も隠さず情報公開するということが政策決定を誤らせないためにも一層求められていると思います。
 国連はここ十年来NGOとの連携を強めておりますが、元国連大使の小和田さんがこの二月の参議院国際問題調査会でお話しされた内容を私拝見いたしまして、大変意を強くいたしました。そこで小和田さんがおっしゃっておられるのは、国連の政策決定機能に対する市民社会の関与が、間接的な形ではあるけれども、国連が役割を果たしていく上で非常に大きくなっている、市民社会の啓発的な活動がともすれば受け身になり無関心になりがちな国民全体の世論をより積極的な形でつくり上げていくことは非常に重要なことと強調されました。
 これに対しまして、住民投票を民主主義の誤作動と言ったり、財界代表がNGOはだれの利益を代表しているのかわからないと国際舞台で発言なさるなど、余りにも世界に通用しないお粗末な発言ではないでしょうか。
 女性分野での日本に関する国際的な指摘を見てみますと、国連の女性差別撤廃委員会が日本政府報告に対する最終意見を出しております。これも私どもNGOが翻訳して一生懸命広めているわけですけれども、その最終意見の中では、女性を含めた経済開発を進めることに国家が無関心であり、条約の完全実施の障害を批判的に分析していないと厳しく批判しており、今後の報告については、日本の女性の実態をもっとよくわかるようにNGOとの対話を行うこと、民間企業の間接差別をなくす措置をとることなどを助言、勧告しております。
 こうした国際的な指摘があるわけですが、今どういうことが女性たちに起きているかといえば、不況とリストラのあらし、そして政府や財界の規制緩和策によって女性たちが職場では正社員の場を追われております。身分も条件も不利な不安定雇用へと追いやられ、新たな性別役割分業が広まっている事態です。先進国に例を見ない大きな男女賃金格差がさらに拡大するものと見られます。まさに均等法が改正され、男女共同参画社会基本法が制定されたさなかにこういう事態が進行しているわけです。こうした事態の歯どめにもならない法律とは一体何のためなのかという疑問も持たざるを得ません。
 また、これだけ国会における女性議員の少なさが問題になり、小選挙区制の問題が指摘されているときに、女性の政治参加をさらに狭める衆議院比例削減が今国会で行われ、新たな障害がつくり出されていることにも大きな危惧を抱かざるを得ません。
 最後に、私どもの要望といたしまして、この六月の国連女性会議に向けてさまざま政府、総理府によるNGOの意見を聞く会が持たれておりますが、まだまだ私どもにはNGOの声が届いているという実感が残念ながらございません。各種報告や基本計画づくりにもっと女性の実態、抱えている問題が反映されることを願っております。そのためにも各種審議会におけるNGOの代表をふやすこと、そして女性団体について一部の特定の団体が幾つもかけ持つという状況が固定しないよう、公正な選任もお願いしたいと思います。
 こうした点での国会のお力添えをお願いし、私の公述を終わります。
 どうもありがとうございました。

○会長(石井道子君) どうもありがとうございました。
 次に、山口公述人にお願いいたします。山口公述人。

○公述人(山口みつ子君) 山口でございます。
 私は、市川房枝記念会というところで女性の政治教育、女性問題調査・出版、それから国際交流というこの三つの事業を柱として日夜取り組んでおります。特に、女性参政権の行使の状況につきましては、調査をし、かつ雑誌を通してそれを公表しているところでございます。このような場所をお与えくださいまして、大変ありがたく思っております。
 私の発言の趣旨でございますけれども、経済先進国の中で日本女性の国会それから地方議会への進出がなぜこんなにおくれているのか、ランキングの下の方にあるのか、これがいつも議論になります。
 これは、一つには経済効率主義、それから社会構造的なジェンダーに起因するんではないかということを私は考えております。
 議員の総数に占める女性議員の比率は、例えばアメリカなどに比べまして、国会議員よりも地方議員が低いというのも日本の特色でございまして、これは言ってみれば日本女性の政治参画基盤の弱さをあらわしているというふうに考えられます。
 昨年は男女共同参画社会基本法が制定されまして、また地方分権一括法の改正もありまして、地方自治における男女共同参画の重要性が増大しております。そういうことから、私のこれからお話し申し上げたいことは、女性の地方議会進出の現状は一体どうなっているのか、そこにどういう課題があるのか、これを焦点にお話をさせていただきたいというふうに思っております。
 きょうは、皆様に若干お配りいたしました第十四回統一地方選挙のグラフをごらんいただきたいと思います。
 簡単にその特色を申し上げたいと思いますが、昨年四月の第十四回統一地方選挙というのは女性議員が大変躍進したということが各新聞、報道で取り上げられました。これを前回、第十三回の統一地方選挙、一九九五年と比較しますと、例えば特別区議は四年前よりも五・八ポイント上がりました。それから政令市議でいえば三・九ポイント、それから一般市議で二・七ポイント、道府県議会議員で二・三ポイント、町村議会議員で一・七ポイントというぐあいに増加していることは確かでございます。
 今のことを申し上げますと、どこが一番増加率が高いかというと、何と申しましても特別区議、次に政令市議、一般市議、県議、町村議と、こういう順になっております。
 その統一地方選挙では確かに増加をしたのでございますけれども、これは御承知のように、統一地方選挙というのは全自治体の全議会の大体三七%から八%の選挙執行率だというふうに言われております。
 そこで、去年の六月一日、統一地方選挙後、私ども市川記念会で全地方議会女性議員の調査をいたしました。その結果、全地方議会議員総数というのは六万三千三百三十九人、うち女性は三千七百四十六人、これはパーセンテージで申しますと五・九%でございます。その前の四年前には四・一%ですから、平均して一・八ポイント増加したということでございます。
 そのようにふえてはいるんですけれども、それでは、全議会、都道府県、市区町村段階までの議会を見てみますと、四四・二%の議会は女性議員がだれもいない、ゼロという実態が上がりました。つまり、四四%は女性議員がいない、全部男性議員で占めているというのがこの戦後五十年を超えた議会の実態でございます。
 このようなグラフを見てみますと、確かに第一回から比べましてだんだん女性がふえてきまして、特に市区議会で右肩上がりでふえていると。それから町村議会はなべ底状況が出てきました。
 いずれにいたしましても、大体八〇年代から女性議員がふえているんですけれども、都市化のところには女性議員がふえる。最も問題の町村議会ですが、これも一時はひどい状況でございましたけれども、八〇年代になりましてなべ底型になってきたということで、町村議会にも、町村も過疎化と言われる中で変動が起きていると言っていいと思います。
 次に、なぜ女性議員がそれだけ出ていかないのか、その疎外要因を調べてみたいと思います。
 もう一つの表をごらんいただきたいと思います。「性別役割分担意識に基づく男女の守備範囲等の分類表」というのを出しました。これは、亡くなられましたけれども、千葉経済大学教授の加藤富子先生の分類で、なかなか興味あるところでございます。
 これをごらんいただきますと、大体これは給与所得者、都市型社会で見られる分類ですけれども、女性の守備範囲が生活、男性は経済、女性は家庭人、男性は職業人、女性は消費者、男性は生産者。次に、女性は全日制住民、男性は定時制住民。これは若干、もう皆様御承知だと思いますが、少し注釈を加えなきゃならないんですが、女性は朝から晩までその地域社会に住んでいる全日制住民だと。男性はその地域から遠くへ電車で出かけていって、夜遅く帰ってくる、したがって定時制住民である、こういう規定でございます。生活環境整備志向が女性で、男性は職場環境整備志向だと。あとのコミュニティー活動、ボランティア活動、育児・教育、それから高齢者の保護・介護、この部分は全部女性であると。男性は完全に空白であると。そして、女性のタイプとしては健康・安全・快適性追求。それに対して、男性は効率性追求。女性の場合の組織のあり方は連帯・共生ですが、男性は対立・競争だと、こういう構図が出ているのは非常に興味あるところでございます。
 こういうようなところはどこから出てきたかというふうに考えますと、私はこういうふうに思います。戦後の荒廃した社会で、経済も社会も全くどん底になった。二十五年の朝鮮動乱あたりから景気が回復されて、六〇年代の所得倍増、高度経済成長になりますと、年率一〇%からの経済成長率があったわけですが、その六〇年代の高度成長下というのは、むしろ憲法それから諸法制は平等でございましたけれども、その平等の名のもとに社会の仕組みとしては男は仕事、女は家庭という性別役割分担というのが深化してしまったのではないかというふうに思います。つまり、その時代に、男性は専ら企業人間、外向け、女性は専ら内向け、そういうようなことが女性の社会進出をおくらせたのではないかというふうに考えられます。
 昨年の八月から九月にかけまして、私どもで、女性議員の方々、それから都道府県の女性議員の方、あるいはまた市区町村議会の議員の人たちで、特に地方議会の場合には進出度の高い東京、大阪、それからおくれている一道六県といいますかそこを対象にアンケート調査をいたしまして、そのアンケート調査を私は眺める中で、私自身が考えた政治参画への疎外要因というものを次に挙げてみたいというふうに考えております。
 一つは組織的要因でございますけれども、いろいろなお話が出たように、あらゆる組織や団体の運営がやっぱり男性中心の社会に出ている。したがって、重要ポストだとか教育訓練の場だとか、いわゆる女性の参画を期待するような場がないということが一つであると思います。
 それからもう一つは経済的な障害ですけれども、それはやはり何といいましても金のかかる選挙というか政治活動というか、そこが一つ問題があるということ。
 それから、制度的な問題でございますけれども、これは例えば議会の開催が昼間である。もっと時間に合わせた開会ができないだろうか。あるいはまた、現在の選挙法の問題もあるかもしれません。
 四番目としては、社会的、文化的な障害。結局、家庭の中でも政治参画をすると抵抗がある。とりわけ夫が反対するといったようなことが多いと。
 それから、政治的参画に加わりますと、親族、そういう人たちがまた反対をしてくる。近隣社会の気兼ねだとかといったようなことがありまして、極めてそれは女だからとかあるいは要するにジェンダーと申しますか、そういうことが非常に影響しているというふうに考えられます。
 例えば、女性が立候補を決断するに当たっての障害というのは何なのか。これは、当選した女性議員に聞いてみますと、当選した女性議員でもまず障害が幾つかあったわけで、第一に挙げられるのは政治的経験の不足だということ、それから能力に非常に不安を持ったということが決断に当たっての一つの障害。それから二番目には家族の事情。家の中でだれが子供の世話をするか、介護をするかといったような問題がある。それからもう一つは、先ほど親戚とか申しましたけれども、意外に親戚の反対、それから周囲の男性の反発が強いということ。それから三番目には選挙資金の不足。こういったようなことが挙げられております。しかしながら、女性の場合には、多くは余り膨大な金をかけるというよりも性別役割分担、その意識が相当な影響を及ぼしているということを現職の女性議員の方たちは指摘しておりました。
 そういう女性議員の人たちが議席を得てどういう活動をしているかといいますと、その活動の特色とか政治的効果を申し上げますと、生活体験を生かした活動ができる。つまり、先ほど太田さんがおっしゃっておられたように、まだまだ企業社会での幹部職とかそういうところの進出はおくれているわけでございまして、先ほどの男と女の生活分類表の中でもコミュニティーだとか子供の世話だとか、あの部分で活動している女性が多いわけでございまして、したがってそういう生活体験の中からの活動が生きているということ。
 それから、出ることによって今まで住民が考えていた政治イメージが変わってくる。非常に身近になってくるという政治への親近感というものが挙げられております。これは何と九四%くらいの人がそのように指摘しております。次に福祉政策、教育政策、平和政策、清潔な政治といったようなことが挙げられておりまして、極めて政治に今不信が高いと言われておりますけれども、マイナスイメージを払拭する動きが出ております。そして、何よりも自分の仲間が出たということで住民の政治参画の推進、関心の高さにつなげられているというふうに現職の方たちは答えております。
 ここで、女性議員をどういうふうにふやしていったらいいだろうか、あるいはまたふえるとどうなのかということを申し上げたいというふうに思います。
 女性議員は、一つは今言った閉塞的な政治改革のかぎになるだろうと。それから、女性の投票率は男性よりも高いんですけれども、女性候補がふえれば男女ともにもっと投票率が上がるであろうというふうに考えますし、それから住民の政治的関心が高まるということ。それから、福祉政策が進展するということでございます。そして、そのような実績によってジェンダーの社会構造を変える力になるというふうに考えられます。
 特に、私は政党に期待したいと思いますけれども、地方議会の女性議員の所属というのは無所属が一番で、次に各政党順になっているわけでございますが、今ここで政党がもっとエンパワーメントすれば地方議会における女性の政治参画度は大変高まるのではないかというふうに思います。したがって、政党が女性にもっと進出の機会を拡大していただきたい。クオータ制というのも一つの有効な手だてかというふうに思います。
 それから、政党助成法により各党に交付金が出ておりますが、やはりこのような交付金の中から例えば一割を充てて政策学習とか訓練とか、女性議員予備軍の育成をしていただきたいということと。それから、もっと政党に女性の幹部の登用をしていただきたい。とりわけ地方議会には党議拘束を緩めて参画度を広げていただきたいというふうに思っております。
 政党以外としては、例えば補助金を受けているいろんな団体がございますけれども、そこにはもっと女性管理職の登用を義務づける。農林水産省では食料基本法などができましてから女性の参画ガイドラインを挙げているようでございますけれども、あのような手法は大変いいのではないかというふうに思います。
 それで、先ほど五・九%が女性議員の現在の地方議会に占める実数だというふうに申し上げましたけれども、これがざっと四年ごとに二%ずつ女性議員がふえるということになりますと、高齢化率二五%になる二〇一五年にはこの速度でいくと一体どのくらいふえるかといいますと、やっと一四%なんですね。二〇%にも満たない。
 これから高齢社会、少子化の時代をどう支えていくかというときに、やはり何といいましても女性の政治参画、そこの拡大によっていろいろな意味で各社会に与える影響は大きいと思います。そういう意味で、社会の活性化、それには女性の政治進出、国会は当然でございますけれども、基盤となる地方議会への政治進出というのは不可欠ではないかと思いますので、皆様方にこの点を御理解いただきたいと思います。
 ありがとうございました。

○会長(石井道子君) どうもありがとうございました。
 以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。
 それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○岩永浩美君 自由民主党・保守党の岩永浩美です。
 きょうは、三公述人の皆さん方、お忙しい中本当にありがとうございました。貴重な御意見を拝聴いたしましたが、私どもの持ち時間が質疑時間として十二分でございます。皆さん方にそれぞれの御意見をお聞きしたい気持ちはいっぱいでありますが、時間がありませんので、きょう私は太田公述人に二、三質問をしたいと思います。
 太田公述人は、21世紀職業財団の理事長として御活躍をいただいています。改正男女雇用機会均等法によって企業における女性の活用の範囲が拡大していること、これはもう今おっしゃったとおりであります。私自身も、公的部門において女性を拡大することは諸外国の例を見ても必要であり、我が国においても男女共生社会の実現のために当然必要なことだと思っています。
 ただ、利益を追求する民間企業においては、女性を活用することによる利益が多ければ女性の雇用の拡大がだんだんふえてくるのは私は当然だと思います。しかし、利益原則が働かない民間組織があることも私は忘れてはならないと思います。そういう組織はどういうところかというと、まず福祉施設とかそういうふうなところにそういう問題があると思いますので、二、三、私はその件について具体的に理事長のお話をお聞きしたい。
 ただいま申し上げましたように、社会福祉施設等々については利益原則が働かない施設だと言っても私は言い過ぎではないと思います。今までこの施設は措置費の枠内でやりくりをいたしてきましたが、今度制度の改正で各種補助金の体系が変更されてまいります。また、私企業の参入規制も緩和されてきて、特に中小の施設は厳しい経営状況を余儀なくされると私は思います。
 そんな中で、産休・育休一つにしても、それは大変な問題であると私は思います。コストに厳格でない公的施設では余剰人員を常にプールしておくことが可能ですが、そういった代替の要員を確保するということは、民間の施設ではそれだけの余裕はございません。産休・育休時に非正規雇用者、すなわちパート職員を雇用しても、その技能や経験を前の正規の職員と同じにすることは容易ではないと思います。しかも、残業とか勤務時間などで各種の規制がかかることがあります。どんなに優秀であっても、正規雇用者が復帰した時点で逆にそのパートの人は解雇しなければなりません。
 これは私自身が施設の運営をしている経験から申し上げますが、女性を雇う場合に産休・育休時の雇用者の負担は非常に大きいものが一方で出てまいります。人件費の圧縮も必要でありますが、どうしても正規労働力は若い人だけ、あるいは正規労働力をパートに切りかえていくという例がだんだん多くなってくるのではないかという心配を逆にいたします。
 女性の多くが就労している福祉の分野で、女性就労を支援して、子育てと就労を両立させるような各種の施策を今進めていかなければいけないという太田公述人の話でありましたが、逆にパート化、非正規化を促進させていくのではないかという心配を私はします。21世紀職業財団の理事長という立場で女性の就労を支援していく仕事を今されておられますが、このような逆の効果があることをどのように考えておられるのか、そのことをまず一点お聞きしたい。
 その次に、私の手元に、東京都の労働研究所が昨年の十二月に出した「高齢者福祉施設における専門職の労働と健康」という調査報告があります。介護職員のプロフィールを見ると、男性が二割で女性が八割、男女とも三十歳未満の人が多いということであります。しかし、その若い世代の人でも、初めて介護職として勤務をして腰痛等々を発病したという経験が数多くアンケートの中で示されています。
 女性の方が出産後も働き続けるということになると、職員がだんだん高齢化してきます。そうした場合に、労働災害の多発とか業務の停滞とか高コスト化が避けられないのではないかという心配が指摘されます。仕事と育児と介護を両立する社員を応援するという施策を実行していくために、働く場のバックグラウンドを整備していかない限り実効性のあるものとはならないと私は思いますけれども、この点についてどうお考えになるのか。それが二点目。
 今、私は、みずからの経験を踏まえて考えの一端を申し上げましたが、もとより私自身も男女の共生を否定するものではありません。男女共生と女性の就労の支援は今後なお一層進めていかなければいけない、そういう思いを強くいたしていますが、公共施設以外ではコストを常に意識していかなければいけない民間の宿命があります。
 このような矛盾を解決するために、国あるいは自治体がジェンダーフリーを推進するために、産休・育休に関する代替要員の養成、それをプールしておくもの、教育訓練などを行う機関をつくるなどして雇用を側面から援助していかなければいけないと私は思っています。そういう実効性のある施策を行わなければ、共生社会の中における女性の本当の就労の場の確保というのは非常に難しいと思いますが、そういう援助政策を実施するための問題点はどういうものがあるとお考えになるのか。
 この三点に絞って、十二分という限られた時間の中でありますが、御答弁をお願いしたいと思います。

○公述人(太田芳枝君) とても難しい問題を与えていただきまして、私に答える能力があるかどうか非常に心配でございますが、わかる範囲でお答えをさせていただきたいというふうに思います。
 一つ、非常に福祉施設では産休もとりにくいというようなお話がございました。福祉施設に限らず、民間一般の企業さんでも女性が実際に妊娠したりするとなかなかとりにくいとかというような意見がございまして、それで先ほども制度だけではなくてそれがとりやすいような状況をつくることが重要ではないかというふうに申し上げたわけでございますが、そういうことから私どもは労働省の意向を受けていろいろな仕事と家庭の両立支援の対策をさせていただいているわけでございますけれども、その中の幾つかを紹介させていただきたいというふうに思うわけでございます。
 例えば、福祉施設さんも企業さんというふうに考えますと、その企業の中でそういう育児とか介護でいろいろお金がかかるというようなことで、女性たちが例えば育児のサービス料を負担した場合に、それを補助する事業主に対して助成金を支給するとかいうような幾つかの助成金をつくったりして、それを企業の御要請に応じて差し上げるというようなことをしているわけでございます。
 それから、今年度からは、代替要員のお話が出ましたけれども、代替要員を雇ったときに企業に対して援助をするという制度が導入されまして、それの助成金を労働省の御要請でうちの方がお支払いするというようなこともしろというようなことになったわけでございまして、いろいろな形で少子化をにらみながら、女性が仕事と育児、職業生活と家庭生活とが両立できるようなことをいろいろとやらせていただいているわけでございます。
 お国の予算が必ずしも潤沢でないような中での状況でございますが、私は少子化ということを考えますと、やはり働き続けられやすい制度をつくっていくということは非常に重要なことだというふうに思うわけでございまして、そういう意味では、腰痛の問題も御指摘がありましたけれども、これは女性に限らないと思いますけれども、働く人たちが生き生きと働けるような職場環境の整備ということは本当に政策課題として喫緊のものがあるという点では先生と全く意見を異にするものではございませんので、ぜひ先生方のお力で、より一層のそういう制度ができ、整備ができるような状況をつくっていっていただきたいというふうにかえってお願いをしたいなというふうに思うわけでございます。
 お答えになっているかどうかよくわかりませんが、そういうふうに考えております。

○岩永浩美君 国もしくは自治体でそういう一つの支援組織、教育をしていく機関というものがそれぞれのブロックごとにないと本当の就労支援というのができていかないと思いますが、その件についてはどう思いますか。

○公述人(太田芳枝君) 教育なり機関なりはたくさんあった方がいいと思います。そういう意味では、国のみならず地方自治体もいろいろな意味でまさに働く人たちへの支援というのをより充実していただくことが重要であるというふうに思います。

○岩永浩美君 どうもありがとうございました。

○千葉景子君 きょうは、まず第一弾の方で三名の公述人の皆さん、御苦労さまでございます。それぞれ活動されてこられた現場からのさまざまな御意見をいただきまして本当にありがとうございます。
 時間が限られておりますので、全員の皆様に御質問させていただく余裕があるかどうかわかりませんけれども、順次お尋ねをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。
 まず、太田公述人、ありがとうございます。
 先ほど公述をいただきました中で、今後必要なことが男性の意識の啓発ということもございました。それから、性に中立的な制度を確立していくということも必要な問題だというお話もございまして、私もそのとおりではないかなと、大変共感するものでございます。
 そこで、ちょっとこの性に中立的な制度ということで、税制などについて、なかなかこれは難しい部分はありますけれども、どんな方向性が望ましいとお感じになっておられるか、お差し支えがあればあれですけれども、お差し支えのない程度で。
 よく指摘されるのは、やはり女性も納税者として、あるいは男性と性的な役割分業ということではなくて、自立した一人の人間としてということでは配偶者控除や配偶者特別控除の問題などがしばしば指摘をされるところでございますけれども、ちょっと御意見などございましたらお聞かせをいただきたいと思っております。まずその点からよろしくお願いいたします。

○公述人(太田芳枝君) 税に中立的な性と申し上げました。これは、私どもの財団でもパートさんに対するガイダンスというようなことをやっておりまして、これからパートで働きたいという方々に対して税制というのはこうなっていますよというようなことを御説明している講座というんでしょうか、小さな講座がございますが、そういうところを考えますと例の百三万円問題というのは非常に大きな問題でございまして、これは基本的にはそれぞれの方の御判断ですから、どちらがいいとか悪いとかというのは私どもの立場としてはなかなか言えないところで、事実をそのガイダンスでは申し上げているわけでございます。
 私個人的な意見として申し上げさせていただくならば、やはり百三万円問題というのは、そこまで来るともう働かなくなってしまう、それは困るという企業さんもおられますけれども、やはり女性たちが、じゃそこまでの労働力でいいんだなということに企業の人事管理をしてしまう部分はあるというふうに思うわけでございます。そういう点では私自身は、ずっと学校卒業後働き続けてきまして、税金も高いなと思いながら払ってきております者でございますけれども、一人前の社会人としていくのであるならばやはり納税者としても一人前にあるべきだというふうに思うわけでございます。
 そういう意味で、納税システム全体ができるだけ個人単位でやっていっていただくような方向での制度の確立というのが望ましいのではないかなというふうに考えているところでございます。

○千葉景子君 ありがとうございます。
 本当に百三万円の壁というのは、それによってパートで働く皆さんなどの賃金を抑制しているという側面もあろうと思いますし、せっかく自立してという女性の意識をも抑制してしまうというようなところもあろうかというふうに思います。ぜひ、こういうところはまた今後大きく議論をしていきたいものだというふうに思っているところです。
 次に、ちょっと飛びますけれども、山口公述人、ありがとうございます。
 議会への女性の参加も着実に伸びてはいるものの、絶対数としてはまだまだ少のうございます。先ほどそれに対してどういうことが原因になっているかという指摘がございました。現職になってからも経験、能力などについての不安と。いや、女性は大変謙虚だなというふうに思います。男性は経験や能力については不安には思われないのかななどと思ったりして、逆に謙虚さみたいなのがこういうところにあらわれているのかなというふうに思いますけれども、やはり周囲の声、こういうものに随分左右されている。やっぱりこういうところに典型的な性的役割分業意識みたいなものが社会に存在をしているということをあらわしているのではないかというふうに思っています。
 加藤先生のこの分類表というのは非常に興味深いものでございまして、女性の活動というのがある意味では非常に人間的でございまして、男性の方がむしろ大変損をしているんではないかな。コミュニティーやボランティア、あるいは家庭での子供との触れ合いとかも含めて本当に人間らしさをどんどん削り取っている、こういうこともこの表から見受けられるような気がいたします。そういう意味では、両側から真ん中へと双方が近づくことがこれからの大きな課題であろうというふうに思います。
 議会への参加という根底には、やはり社会のあらゆる面で男性、女性が共同で生きていないと、議会だけなかなか女性をふやそうといっても難しい面があろうと思います。そういう意味で、議会のみならず、例えば行政であるとか司法の分野であるとか、あるいはもう既に企業の問題などもございましたけれども、こういう社会の他の議会へ押し上げる根底ですね、そういう部分で女性の参画というのがまだまだ不十分という面もあろうかと思いますが、そのあたりについての御意見、あるいは御指摘いただく部分がございましたら、よろしくお願いをしたいと思います。

○公述人(山口みつ子君) あらゆる分野への全面参加がないと、例えば議会に進出することも出にくいというふうに考えております。
 それで、最近の女性の進学率を見てみますと、短期大学よりも四年生大学がふえてきた。しかも、従来人文科学とかそういう分野に女性が多く占めていましたけれども、このところ法学部、経済学部、政治学部、それから理工系がふえている。この傾向を見ますと、若い女性たちはこれから自分の一生をどう生かすか、単なる家庭だけではなくて職業生活にでも出ていこう、そういう意思があるように思います。
 しかし、なかなかそのチャンスがまだまだ採用の場でも十分にいかないし、それから先の昇格、昇進にもまだなかなかその実効性が確保されていないということがあると思いますが、そのようなことは次第に拡大されてくると思います。そういうふうに考えますと、法学部の人たちが司法試験を受ける、あるいはまたいろいろな資格試験を受ける。最近はその分野に女性がどんどん伸びてきているということは、少し男女共同参画社会に向けて明るい兆しかなというふうに考えます。
 しかし、私は、何の措置もなくしてこのまま自然発生的に世の中の流れにふんわりと漂っているのではやはり何年かかっても進まない、あるところでとまってしまうというふうに考えておりますので、ここで何か積極的な措置をとらなければならないなというふうに考えております。
 それで、審議会の話もさっき出ましたけれども、審議会で、特に地方議会など行きますと、各女性センターとか女性政策課ではどういう女性の人材が要るかということでリストアップしています。そういうリストを持っているんですが、やっぱり大きくは女性を登用したくてもなかなかそういう能力を持っている人がいないということが指摘されるんです。特に理工系だとかいう分野と、それからまたもう一つは充て職があるというようなことで、なかなか女性が伸びていくチャンスがないわけでございます。
 私は、そういう意味では女性団体というのは、例えば女医会があるとか、あるいはまた税理士会があるとか、いろいろな女性だけですぐれた人たちの集団がありますので、やはりそういう専門集団から一つの特別枠をとって採用していくという道も、ある一定目標値を達成するためには、そういう女性団体の社会的な地位の引き上げと同時に、そこから登用していくというのも一つの方法ではないかというふうに思います。
 いずれにいたしましても、もっと女性が資格を持つというか、そういう意味では司法界、それから公認会計士を取るとか、そういうことにもっともっと挑戦する、そういう能力は女性は学力においても男性と全く劣らない、ある意味では上だと言われておりますので、そこが開かれる道ではないかというふうに考えられます。

○千葉景子君 ありがとうございました。
 時間ですので、終わります。

○渡辺孝男君 公明党・改革クラブの渡辺孝男でございます。
 私の方は、まず最初に、貴重な御意見をいただきました三人の公述人の中で山口みつ子公述人にお伺いしたいんですけれども、先ほども地方の女性議員が少しずつではありますけれどもふえてきているということが示されました。その中でも特にやはり都会の方で女性議員の方がふえているということで、私の方は都会でないところに、都会でないというのは言い方がおかしいんですけれども、山形県の方に住んでおるわけです。前の資料を見てみますと、平成十年十二月現在の自治省の統計では女性議員の比率が非常に低いような県でございます。そういう地方において、都会ではなくて地方において女性議員をさらにふやしていくためのポイントといいますか、どういう点に力を入れていったらいいのか、その点についてもう一度お伺いしたいと思います。

○公述人(山口みつ子君) 県会議員でさきの統一地方選挙のときに女性議員がゼロ県というのは十県ありまして、その十県は見事に女性たちが頑張って議席をとったんですけれども、残念ながら山形と福井、それからもう一つは広島が県会議員を失ってしまったんです。
 先般、私は山形に行きました。お目にかかっている女性たちは、本当にすぐにでも市議会議員、町村議会議員になって十分に活躍できる人たちなんですが、なかなかその人たちが議席を獲得することができない。みんなディスカッションしているところに出ましたのは、結局、町村では町の顔役というかそういう方たちの指定席になっている、無投票当選が多い、そこに割り込んでいくと非常にその町や村に住みにくくなるというようなことで、その地域のやっぱり名望家というかそういう人たちがその議席を占めていて、なかなか女性がそういう地位にいないので入り込む余地がないということを言っておりました。
 ということで、どうしたらいいかということなんですが、私は特に地域婦人会の役員の方たちに申し上げているんですが、地域婦人会の人たちは町村では非常に重宝に活用されているというか、そういう場面があります。そういうような実力ある地域婦人会の人たちを、ある男の人が引退したらそこにやっぱり女性を入れる、そういう説得をしてほしいということを申し上げております。それが一つ。
 それから、実は最も身近な町村議会であっても、ようやくなべ底上がりになってきたのは八〇年代というふうに申し上げましたけれども、町村では過疎化が出ております。したがって、働き手がいない。そして、今や議会に出ていた人たちも年をとってきた、そして若い人たちがいない、そこに女性が必要になってきた。早くもそこに目をつけている政党、例えば共産党だとか公明党、そういう党は町村議会に議席をふやすような努力をされているというようなことがございますので、そういう努力をすればふえます。しかし、まだまだ本当に点くらいの状況でして、いろいろ調べてみますと、町村議会に女性議員がいるというのは一人。二人なんというのは本当に少ない。たった一人というところが多いわけでございまして、やはりその辺は一人では力を発揮することは、皆さんに理解していただけないので、もっとふやすというか、それにやっぱり政党が力を入れる。
 いずれにしても、お金のかかるところではないんですが、とにかく女はそういう場所に出るものじゃないという意識がありますので、なかなか議会進出プロパーだけでは出ませんから、介護だとか環境だとか、あるいはまた学習キャンペーンだとか、そういうことを通して改革をしていくしかないなというふうに思います。
 しかし、時代は確実に地方議会に女性議員は必要とされているということではありますので、そのチャンスになだれ込むしかないというふうに考えております。

○渡辺孝男君 これも山口公述人の方にお伺いしたいんですけれども、ことしになりまして、大阪で女性知事、太田房江知事が誕生して、また、つい最近ですと熊本で潮谷義子知事が誕生したと。私なんか見ますと、そういう政策決定過程に女性の参画というのが着実に進んできているなというふうに思っているわけです。
 この現在の、特に直近の流れについては、本当にそういうふうなのが現実に日本でも進んできているというふうに御実感されているのかどうか、その女性二人の知事が誕生したということに対しましてどのような所見を持っておられるか、お聞きしたいと思います。

○公述人(山口みつ子君) 実際、ことしになりまして大阪と熊本に知事が出たということは大変に喜んでおります。
 大阪の場合には非常に特殊なことだったかと思いますけれども、熊本はどちらかというと女性の社会的、政治的進出がおくれているところなので注目をしておりましたら、見事勝たれたと。両方は、女性が中心になるというよりも、全く男女共同参画型の選挙運動ではなかったかというふうに思います。
 したがって、大きな選挙のところでは、本当に男性と女性が一緒になってやらなければそういうポストはとれないということで、私は、いい候補者を積極的に見出せば大阪だとか熊本のように女性の可能性があると。そういう人材は着実に育っているんではないかと思いますので、知事というポストは男性の方にとっても女性の人たちにとっても魅力的なところですが、やはりそういう勇気ある、道を開くということがこれから社会の活性化につながるんではないかということで、私は大変評価をしているし喜んでいる次第です。

○渡辺孝男君 次に、太田芳枝公述人にお伺いしたいんですけれども、やはり女性の働く場といいますか、そういうものを男女平等で確保していくということは非常に大事だと思うんです。
 最近、地方においても、そういう男女共同参画を進めるために地方で条例で制定するところが結構、ことしの三月あるいは四月、出雲市とかそれから山梨県の都留市、そのほかにも続いて出てきているわけです。
 出雲市の条例の中にはこういうのもございまして、市の方は、「人事管理及び組織運営において、個人の能力を合理的かつ適切に評価し、率先して男女共同参画の実現に努めるものとする。」というような形で、国の政策と同時に、地方地方においてもそういう条例をつくりまして、男女共同参画あるいは働く場の中でもそういう能力を適正に評価していきましょうという流れが起こっております。
 こういう動きにつきましてどのようなお考えを持っていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。

○公述人(太田芳枝君) 私、やはり昭和五十年ですか、女子差別撤廃条約からのこの二十五年の動きというのは、やはりとうとうたるものがあって現在に来ているというふうに思うわけでございます。
 男女共同参画社会基本法もできまして、それを受けてやはり都道府県、市町村の地方自治体が動き出しているのではないかというふうに考えております。
 東京のような大きな都会はともかくも、地方自治体においてはやはり市町村が旗を振ってそれなりのモデルを示すということは、私は地域における企業にも非常に大きな影響があるのではないかというふうに思いますので、こういう条例等をつくっていただいて、なおかつ、つくっただけではなくて、それを実際にその地域に根差していっていただくということはとても重要で、うれしい方向に世の中動いているのではないかというふうに喜んでいるところでございます。

○渡辺孝男君 先ほど笠井公述人の方から、大阪のセクハラの関係でも府知事選に絡んでそういうお話もございました。女性のNGOの活躍というのは非常に大事だということでありましたけれども、今回の府知事選におきまして女性のNGOの方々がどのような投票パターンで太田女性知事誕生に貢献されたのかどうか、その辺は分析はされておるんでしょうか。

○公述人(笠井貴美代君) 前段の前知事の辞職に至る過程では、女性のNGOが結束してセクハラは許さないという一致点で大変大きな運動が起きました。
 ただ、その後の女性知事誕生に至る経過につきましては、NGOが何か共同して女性知事をという動きはございませんでした。
 やはり、実際の運動の中から女性の願いを本当に託せる候補者はどなたなんだろうかということで皆さんが自主的な選択をされたと思いますし、その中で女性だから女性ということに必ずしもいかなかった面もあるかと思います。それはその後の朝日新聞等の調査の中でも女性は女性にと必ずしも流れなかったという結果も出ておりますので、そういうことだったかなというふうに思っております。

○渡辺孝男君 ありがとうございます。

○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。
 きょうは、三人の公述人の方においでいただきまして、ありがとうございます。
 まず、太田公述人にお伺いしたいと思うんですが、先ほどのお話の中で、男女ということではなく、能力のある人をどう伸ばしていくかという雇用管理が大切だというお話がございました。
 私は、長時間労働ということについてお伺いしたいと思うんです。
 といいますのは、最近の日経新聞で、「なぜ増えぬ?女性キャリア」と題する記事があったんですが、これは人事院が幹部候補の女性をふやすというために開いた女子学生向けの就職セミナーだったんですけれども、ここで女子学生からの質問というのは、残業がどのくらい長いのか、それから子育てとの両立ができるのかどうか、こういう質問に集中したということなんですね。
 ですから、ここに集まった女子学生というのは、先ほど公述人がおっしゃったように、もちろん能力もあるし、公務員のキャリアとしてこれからばりばりやるぞと、そういう思いを持ってきた人なんじゃないかと思うんですけれども、まず長時間の残業が当然となっているような公務員のそういう職場で本当に働き続けられるのかと、そこが一番心配だったと思うわけなんですね。
 ですから、女性の政策決定過程への参画を進めるためには、どうしても長時間労働というものに、これは女性ばかりではなく男女ですけれども、法的な歯どめをかけると、そういうことが必要じゃないかと思うんですが、いかがお考えになりますでしょうか。

○公述人(太田芳枝君) 労働時間に関しましては、私がお答えすべき立場にあるかどうかはあれでございますけれども、実際の労働時間というのはかなり短くなってきているというふうに思うわけでございます。
 それで、男性も女性も、特に育児とか介護とかいうような個人的な事情がある場合はやはりそれを配慮した人事管理というのが私は望ましいというふうに思うわけでございます。
 そういう意味で、私どもの財団におきましても、ファミリー・フレンドリー企業というような、それぞれの個人のできるだけ状況に配慮した人事管理をしてくださいというようなことをお願いして、それに対しての助成金を出すというような仕事もお手伝いをさせていただいているわけでございまして、できるだけ働く人たちがそういう個人的な事情をクリアできて働き続けることができるようにするというような職場の環境をつくっていくというようなことに対しては、今後とも努力もしていかなければいけないと思うわけでございます。
 それから、先生御指摘の労働時間につきましても、できるだけ短い方が、それはもう当然短い方が生活との両立という点ではよろしい部分であろうかというふうに思うわけでございます。
 ただ、私の個人的な経験、要は、私は役人をしていたものですから、その人事院のセミナーのそういう残業とか子育てができる状況とかというようなことを今お聞きいたしまして、私自身の若いころを振り返りますと、やはりこれは働く女性たちにとって非常に物憂い、なかなか難しい二律背反の問題なんでありますけれども、やはり育ち上がる、働く者として本当に伸びるときは、なかなか霞が関の労働時間というのは短いとは言えないと。これは本当に残念なんですが、そういう実態がございます。
 ただ、やはりそのときやっていないとというのと、それから私自身はそのころ非常に仕事がおもしろかったというんでしょうかやりがいがあったというんでしょうか、そういうことで、子供さえいなければ、夫との関係においてはそれは二人の大人の契約関係なんだからいいのよねというような形でやってまいりましたが、でもやはり私たちのころは育児休業もなかったわけでございます。最近は育児休業法もできまして一年間休むこともできるというようなことで、かなりよくなってきているとは思いますが、まだまだ大変な状況が、大変というかこれは本当に解決が難しいような状況があるのも事実かなと、余計なことでございますが、思っております。

○林紀子君 確かにやめてしまってはだめだというお話も先ほどありましたので、やはり続けるには、子供を持っている女性もちゃんと働き続ける、法的な措置というのも何とかというふうに私の方も思うわけですが、ありがとうございました。
 続いて、笠井公述人にお聞きしたいと思います。
 先ほどのお話で、セクハラ問題から環境問題、またグローバルな視点を持って活動するというNGOの女性のエンパワーメントというのが大変よくわかったわけですけれども、その中で新たな性別役割分業というお話がありましたが、働く女性の問題ですね。
 長引く不況やリストラによって女性の失業率も過去最悪のレベルになっている、もう仕事を探してもなかなかないからと家庭にやむなく入ってしまうとか、それから総雇用者数、女性の場合は減っているのにパートの数はふえているとか、それから、女子保護規定撤廃に伴って低賃金の不安定雇用の女性労働者がふえるとかいろいろ見聞きしているわけですけれども、実際にどういうような状況が進んでいるのか、そして、それに対してどのようにそれを押し返そうとしているのかということまで含めまして、ちょっと時間が短くて申しわけありませんが、お話しいただけたらと思います。

○公述人(笠井貴美代君) 私、先ほど新たな性別役割分業が今の不況のもとで深刻になっているのではないかと申し上げたんですが、実は私ども、例えばパートタイマーで申し上げますと、この二十年くらい系統的にパートタイマーの実態調査というのをやっております。明らかに不況のもとで変化が起きてきております。
 その内容を見ますと、例えばパートタイマーの労働時間というのはずっと増加傾向にあったんですね。それがこの不況の中で労働時間が減る傾向になっております。その中では、本人の意思でそうなったのではなくて、具体的な言葉の実例もあるんですけれども、例えば、不況なので二月から働くのは半日にしてくれということを二日前に言われて、そして収入が半分になってしまったというようなことを書いた方もおいでになります。
 そして、調査の中では、今女子保護の撤廃のことがありましたが、パートの労働者の中で深夜と早朝に働く方、こういう方がやはりふえ始めている。私どもの運動の中でも、子供を寝かせてから夜中に働きに行くというケースを何度も耳にしております。
 そういう実態が今広がっておりまして、パートに出る理由というのも家計の足しにというのが七割を占めるんですね。しかしながら、家計の足しにパートに出るけれども、時間を減らしてくれと言われ、そしてその時給を見れば、労働省の平均時給八百七十一円を下回る人が四割以上にも上っております。中には時給三百円という最低賃金をも大きく下回るという驚くべき例もありまして、パートの状況というのがこの不況のもとで大変になっているということが浮かび上がっております。
 そして、派遣労働についてもこの十年間調べておりますが、当初は、専門的知識や技術を生かして好きなときに働けるという、キャリアウーマンが夢を持って望むようなもてはやされたような状況がございましたが、一番最新の実態調査では、やはり派遣労働、二、三十代が六割を占めております。そして、就職難の中で派遣を望んでついたのではなくて、正社員として就職できなかったからという理由の方が十年前の倍になっているんですね。ですから、雇用状況がこういう形で反映しているということが言えるかと思います。
 やはり、パートタイマー、派遣労働者というのが今非常にふえている中で、経費節減の企業の意図のままに働かされているというような状況で、非常に低賃金のところに女性が今集中しているという状況が拡大していると思うんです。
 一方で、じゃ男性はどうかというふうに見れば、先日、調査が発表されましたが、三万人に上る男性の自殺者が出ている。その理由に、過労死や不況、リストラというものがやっぱり働き盛りの男性を襲っているということが言われております。こういうやっぱり異常な事態を変えるということが今本当に必要なのではないかと思うんです。
 その際、先ほどお話の中にもありました企業のコスト意識、利潤追求の中で、女性の参画をどう進めるのか、なかなか大変なことだとおっしゃいました。そのとおりだと思うんです。企業は競争の論理でやっておりますし、利潤を追求していると思うんですね。個々の企業で努力しようと思っても、やっぱりこれは非常に無理なものがあると思うんです。ですからこそ、やはり政治や社会がルール、規制をつくるということがどうしてもこの場合必要になっていると思います。
 フランスでは、三十五時間の労働法が施行されて二カ月の間に十八万人の雇用がふえたという報道も聞いております。日本でもやはり解雇の規制法、そして解雇を規制して雇用を守るということや労働者を保護する、それからパートも労働者であるという点で正当な権利を保障する、そういう政治的な措置がどうしても必要で、先日の国会答弁の中で、首相がサービス残業は一律に悪とは言えないとおっしゃって、慌てて訂正されたというふうに伺いましたけれども、明白な労基法違反でございまして、やはりこういうものを厳しく政治や社会が取り締まっていくということが今非常に必要になっているんじゃないかと思っております。

○林紀子君 時間がなくなってしまいましたが、山口公述人に一言お答えいただけたらと、なかなか難しいかと思うんですが、先ほど、議会に女性が進出する障害として組織的要因、経済的、制度的、社会的、文化的要因というふうに挙げられましたが、今、どこを打開していったら一番、手っ取り早くという言い方はおかしいんですが、どこから始めたらいいのか、その障害、どうやって、どこを取り除いていったらいいのかということを端的にお伺いできたらと思います。

○公述人(山口みつ子君) 障害というよりも、積極的に取り組んでいただきたいのは政党でございます。女性を登用する、人材はあるというふうにお答え申し上げたいと思います。

○林紀子君 ありがとうございました。
 終わります。

○三重野栄子君 社民党の三重野栄子でございます。きょうは三人の公述人のお方、御多忙のところいろいろとありがとうございます。
 初めに非常に貴重な御経験等々のお話を伺いまして、大変感動したところでございますが、私がいただいている時間は何せ十二分でございまして、でも、もっともっと皆様方の御活動の中身もお伺いしたいことで精いっぱいでございます。
 したがいまして、現在の御活動のこともございましょうけれども、私どもは共生社会に関する政策を進めていこうということで協議をしているわけでございますので、それぞれのお立場で、こういう法律ができたらいいなとか、こういう政策を実現すべきではないかというような、端的で結構でございますので、それぞれ三分ずつお話をいただくと幸せございますが、まず太田公述人から、三分ずつお願いいたします。

○公述人(太田芳枝君) 私は、法律という先生の御指摘でございますが、法律をつくっただけではなかなか世の中変わっていかないところがあるというふうに思うわけでございまして、つくった法律をいかにうまく定着させていくかということも物すごく大変な努力が要ることなんじゃないかなというふうに思うわけでございます。
 そういう意味では、ここ十年の間に随分いろいろな法律が法律的にはできてきたのではないか。ですから、これからは今までつくられた法律をいかにうまく使いこなしていくというか、定着させていくことによって、先生方がお考えの男女共同の共生社会をつくっていくということに意を払っていくこともすごく重要なのではないかというふうに思うわけでございます。
 それと、先ほど一つ言いましたように、制度という観点では、私は、やはり税制とか社会保険とかそういうようなものと女性たちの働き方、また夫婦の働き方ということについて、抜本的な議論を巻き起こしていっていただくことも重要なのではないかというふうに考えているところでございます。
 意識の問題というのは非常に難しくて、一片の法律だけではなかなか変わらなくて、もう執拗なくらいの努力を続けていくことが求められているのではないかともつくづく思うわけでございまして、そんなことで今後ともやっていっていただくことをぜひお願いしたいというふうに思っております。

○公述人(笠井貴美代君) 私は三点申し上げたいと思います。
 一番最初の発言でも申し上げましたが、やはり共生社会実現のために、もっと女性の実態、女性の声、女性の運動を政策決定の過程に、あらゆる段階にもっともっと参画していく、そして行政や議会の側もそういう機会をもっと拡大していただきたいということを思います。そのことが先ほど申し上げた点でもあるんです。
 先ほど、女性が女性に流れなかったという大阪の例を申し上げましたが、やはり女性たちは具体的な要求を通じて政治に参画する場合が非常に多いと思うんです。最初から政治に参加したいという方は、いらっしゃいますが、まだ少ないと思うんです。
 私たちの運動の中でも、議会などというのは見たことがないという方が随分、例えば先ほどで言いますとチャイルドシートの問題で、これを何とかしてもらいたいということで初めて議会というものに行ってみたと。それで、子供が中に入れなかった、非常に不自由だったというふうなことを、そういう具体的な要求を通じて初めて政治にかかわる機会が多いわけです。
 ですから、大阪の場合も女性が女性にというふうにいかなかったのは、そういう暮らしの問題や、お年寄りを抱えた問題、子供を抱えた問題、そういうことを見ながら、府政というものはどうあるべきか、知事というものはどうあるべきか、税金というのはどういうふうに使われたらいいのだろうかということをやっぱり考え始めているというふうに思うんです。
 ですから、そういうNGOの役割をNGOの側としてはもっと強めていきたいし、政策上はぜひともNGOを各過程に参画させることを強化していただきたいと思うのが一点です。
 二つ目に、やはり私は何といっても働く職場での問題が、男女共生社会という場合一番大きな問題だと思うんです。
 先ほど申し上げました、やはり逆行する事態が現実には起きておりますので、男女共同参画という理念にふさわしく、実効あるルールや規制、人間らしく働くため、子育てをしながら、介護をしながら働き続けられる、そういう労働時間のあり方や規制というものが必要ではないかと思っております。
 三つ目に、女性政策の場合もやはり実効ある内容ですね。例えば均等法の改正によりまして調停制度が改善されましたけれども、やはりいまだに権限が余りにも弱い。そして、訴えても長く待たされたり、内容上も非常に不備であったりということで、うまく機能していないわけです。
 ですから、やっぱり権限を持ったそういう監視組織が必要ですし、実効あるものに女性政策なり女性に関する法律もなるようにお願いしたいと思っております。

○公述人(山口みつ子君) なかなか政策というと難しいと思うんですが、感じていることを申し上げますと、一つはやはり政治に対する学習というか、それをもっと一般的にしなきゃいけないなというふうに考えております。
 自治省の場合には選挙管理をする場所がございまして、選挙管理と選挙の啓発というのがありますが、どうもあそこは投票率を上げる運動であって、肝心の政治の本来を知らせる役割は不十分ではないかというふうに思いますので、もっとそういう公的機関を使って政治に関心を持つようなキャンペーンをする必要があるんじゃないかと思います。
 確かに、東大の学長がこの間卒業式のときですか、自分たちが大学で学んだものはせいぜい一年か三年くらいきり有効期間がない、その後が問題なんだというふうに言われておりましたから、そういう意味では、教育基本法では学校教育、社会教育、政治教育というのが第八条に書いてありながら、政治教育の部分が抜けている。ですから、私はその部分をもっと充実していく、そういう政策が一つあるべきではないかというふうに考えております。
 第二点ですが、公職選挙法の問題なんですが、女性の場合には多くは新人なんです。その新人が選挙運動を戦うということになりますと、皆様御経験のように、非常に地方議会は選挙期間が短い。現職議員は通常の議会活動報告が出せるんですが、なかなかキャンペーンの機会がないというようなことがございます。もっと自分たちが何を考えているかということを伝えたい、しかし伝える場が大変短いと言っております。
 したがって、今は戸別訪問というのは何か物を持っていくあしきイメージになっておりますが、時代はもう物が、手ぬぐいだのハンカチだのそんなものを持っていったって、買収されるという対象じゃないと思いますので、私はもっとトークができるというか、その意味で戸別訪問の禁止を解除するといったような方策も大事ではないかというように思います。もっと政治では対話というかダイアローグが必要ではないかというふうに考えております。
 それから、クオータ制の問題ですが、これから御発言の方におられると思いますが、私も北欧に行っていろいろそういう状況を見ておりました。いつまでもクオータ制がいいというわけじゃありませんが、このようにジェンダーでつくられた社会を考えますと、やはり女子差別撤廃条約の四条にもありますように、ある一定のところまで行くには女性を持ち上げるというか、そういう積極的特別措置は逆差別とならないという規定がありますので、それを日本の場合も条約を承認しておりますから、そういう裏づけからいいましても、もうちょっと底を上げる目標値と、それから期限を決めた割り当てで出したい。そして、それはただ女だから女ということではなくて、そういう資格を持った人材を発掘して、そういう機会を出したらいいのではないかというふうに考えております。
 以上です。

○三重野栄子君 どうもありがとうございました。
 それぞれお三人の方からまたすばらしい御提案をいただいて、大変力強く思います。
 やっぱり公的機関を通じて政治関心を深めるというのは、私は戦後すぐはもう大人でしたから、あのころは労働省が経営者と労働組合と協議していたんですね。それで、どういうふうに経営者は労働者を、仕事をすべきかという、そういうことまで労働組合法の勉強を経営者の方にも教える、それから労働組合の方にも教える、それを労働省がやっていたと思うんです。
 何か今はそういうのは全くなくて、非常に労働組合とか労働者というと敵視されるというような見方の方が強いというふうに思いますけれども、本当にこの社会が成り立っていくには働く側と経営側が必要でありますから、そういう意味では、先ほどの選挙にかかわるというわけではありませんけれども、やはりもっと公的な活動を政府機関としても教えられるようなことがいいなと思いました。
 それで、太田公述人にも経営者の中でいろいろ御活躍をいただいておるということを伺ったわけでございますが、そういう意味でも、女性を積極的に活用させていくという意味も含めて、そういう経営者がふえたらいいなと思ったりしているところでございます。
 これからいろいろ私どもも議論をすることになっておりますけれども、次の機会は、国政レベルでの疎外要因とその解決策だとか地方レベルでの疎外要因とその解決策ということもみんなで議論することになっているんです。そういうところのお話も伺いたかったんですが、大変残念ながら時間がございませんので、個別的にお話を伺いに行くかもわかりませんので、そのときはまたいろいろ教えていただきたいというふうに思います。
 きょうはありがとうございました。

○堂本暁子君 無所属の議員の集まりでございます参議院クラブの堂本暁子です。
 まず、太田さんに伺いたいと思っているんですけれども、個人としてはというまくら言葉をおつけにはなりましたけれども、個人単位の税制に賛成だということをおっしゃって、かつて同じところに座って答えた労働省の局長の太田さんなら絶対におっしゃらないことを今はおっしゃれるということで、大変に心強く感じたというかうれしく思った次第です。
 私も世帯単位では限界があるというふうに思っています。女性が納税者にならない限り、義務を果たさない限り、やはり権利の主張にも限界があるというふうに考えておりますので、太田さんにそこのところを大変に期待するところですが、実際には、私も年金の審議の間社会保障のそういった制度の中もやはり個人単位であるべきであるということをずっと主張し続けてまいりました。なかなかこれが難しいんですね。
 国会の側で私たちがそういうことを主張することはもちろんなんですけれども、同時にどうしたらこれを世論としてもっと広げていけるのか。大変にもろ刃のやいばのようなところがございまして、また個人的見解で結構ですので、もう労働省のお役人ではいらっしゃらない太田さんに御答弁いただきたいと思います。御答弁じゃなくて、今度は御感想を。

○公述人(太田芳枝君) 意識の変化というのは別にこの税制に限らず非常に大変でございまして、個人として、例えば百三万なら百三万をもらった方が個人の家庭としてメリットがあるということになってしまうとやはりそっちを選んでしまうということなんだと思うんです。そういう意味で、働き方に中立的な制度ということがすごく重要なんじゃないかなと。
 それでもやはり、そんなに働かなくてもという方は、それはそれなりの働き方があるわけであります。私は、豊かな社会というのはいろんな選択肢が個人の責任で選べるものだと思うわけでありますので、税制につきましても、広げていく方策というのは非常に難しくて、先生に答える能力は私にないというふうに思うわけでありますが、やはりいろんなところでいろんな方々が、これはこういう意味があるのよというようなことを問題提起していくような、そういう地道な努力しかないのかなということでございます。
 済みません、感想になってしまっておりますけれども。

○堂本暁子君 今おっしゃったことですけれども、みんな感想として持っていながら、それを世論として大きくできないでいるのが現在じゃないかと思います。
 例えば、経営者の方などに太田さんのお立場でそういったことをお話しになるようなことはございますか。

○公述人(太田芳枝君) 税制の問題では余り議論をしたことがございませんが、昔まだ現役でやっておりましたときに、賃金制度につきましては、配偶者手当、昔は妻手当というようなことで、配偶者手当の額が非常に高うございまして、そういうことからすると、家族としてはやはり奥方が、妻が働いていないというふうな申告の方が世帯全体としての所得が多い。こういうようなことは今後、もう当時から女性の雇用者の割合が四割くらいになっておりましたから、産業社会がこれだけ女性の労働力を必要としているときにはやはり賃金制度としてはおかしいのではないかというような指摘などはいろいろなところでさせていただいておりましたけれども、いかんせん非力でございまして、なかなか変わっていかないかなというような感じを持っているところでございます。

○堂本暁子君 ありがとうございました。
 山口さんに伺いたいと思います。
 先ほどから政党への期待ということを二度三度おっしゃいまして、たまたま私今無所属なんですが、政党に籍を置いたり、そしてたまたまその政党がほとんどなくなってしまって無所属ということになって、今無所属でおりますけれども、そして、先ほどおっしゃったように、無所属でしかも新人での立候補というのは非常に不利なんです。これは地方議会でも不利ですし、それから国政レベルの選挙でも大変不利な現状にあります。
 しかし、現実の問題としてこれだけ無所属の地方議員が当選してきている、この現実を無視できないというふうに私は思っています。
 山口さんは、無所属の方にもいろいろ政治のスクールなんかを開いて場をつくっていらしたと思うんですけれども、政党に期待するだけではなくて、逆に、山口さんであればこそ、無所属の人たちをどうやって国政にまでつなげていけるかというようなことはお考えになるのかならないのか。また、お考えになるとすれば、どういうことをすればそういう方たちが実際に議席を得られるというふうにお考えでしょうか。

○公述人(山口みつ子君) 無所属なんですけれども、先ほどお話ししたように、今の五・九%という地方議員の実態から考えたら、政党を名乗る女性議員がもっと出なきゃいけない。それには、やっぱり政党であるところが努力をすればもっと上がりますよということが一つと、仮に政党名で出た場合には地方議会はもっと党議拘束を緩めるということを申し上げました。
 それで、本来、地方議会というのは、むしろ政党というよりも是々非々の立場でその地域に合った政策をしていくのが望ましいというふうに考えております。
 私自身は、今、仕事として市川房枝政治参画センターというのをもう七年やっておりますが、政党は御自分の党に所属する人たちを教育する責任がある。そうでない人たちは、情報も足りませんし、政策研究をする場所もない。だから、同じように所属がない人で志向する人たちでもっと勉強して日本の政治のレベルを高めようというようなことでやっているわけですが、地方議会はもっと党派性を薄めて政策を実現していくということが大事じゃないかと思います。
 国政レベルなんですが、私は、衆議院というのは本来政党であるべきであって、政党政治だと思います。参議院は、私と長く一緒に仕事をしておりました市川房枝も無所属でございまして、参議院のあり方ということから考えるとやはり無所属であるべきだということを通してきました。それはなかなか大変ですが、一人でもできるということが幾らでもあるわけでございまして、あとは政策的にいい提言ができるんではないかというふうに考えておりまして、やっぱり議会の種類によって政党のあり方が変わってくるだろうと。
 ただ、私がきょう地方議員を中心に申し上げましたのは、もっと政党が地方政治に機能してほしいということ。私も、アメリカの大統領選挙などで女性団体だとか地域社会にどういうふうに政党が動いているかということを見てきますと、小さなサロンにも党の書記局が出かけていって、そして党の政策を、共和党はどうだ、それから民主党はどうだというようなディスカッションをしているんですね。ですから、私はもっと政党が本当に地域に根差した集団というか活動であってほしい、そういうことを非常に願っているわけです。
 そういう意味では、家庭だとか地域社会に入り込むには女性はいいんですよ。男性が家庭の中に行くと物議を醸し出すおそれもありますが、女性は平気でドアをあけて入っていける、そういうようなところを大いに活用して政治への関心というか参画度を高めたいというふうに考えております。

○堂本暁子君 きょうは、本当に貴重な御意見をお三人の公述人の方々からいただいて、私たちがまたこれから、先ほど三重野さんがおっしゃったように自由討議をして、ここの調査会としての女性の政治参画についてのまとめをするのにとてもいろいろ刺激されることも多うございました。本当にありがとうございました。
 終わります。

○会長(石井道子君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。
 公述人の方々には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査の参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
 速記をとめてください。
   〔速記中止〕

○会長(石井道子君) 速記を起こしてください。
    ─────────────

○会長(石井道子君) それでは次に、公述人、東京生活者ネットワーク女性部会メンバー中田慶子君、女性政策研究家、法政大学法学部講師三井マリ子君、女性議員をふやすネットワーク「しなの」会長樽川通子君及び杵築市各種女性団体連絡会議議長綿末しのぶ君にお願いいたします。
 この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ本調査会公聴会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本調査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 次に、会議の進め方について申し上げます。
 まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 なお、御発言は、意見、質疑及び答弁とも着席のままで結構でございます。
 それでは、中田公述人にお願いいたします。中田公述人。

○公述人(中田慶子君) 東京生活者ネットワーク女性部会の中田慶子と申します。よろしくお願いいたします。
 テーマは女性の政策決定過程への参画についての現状と課題に関する件ということで、私は女性の政治参加を進めるNGOの立場からの発言をさせていただきます。
 まず最初に、日ごろ私が最も関心を持っております政策決定過程への女性の参画というテーマについて、このような発言の場を設けてくださいましたことに感謝をいたしたいと思います。
 私は、昨年四月まで東京都府中市の市議会議員として二期八年間活動してまいりまして、現在は、昨年私と交代した新人のバックアップ活動をしております。私たちのグループは、議員の任期を二期ないし三期と限定しておりまして、新人へローテーションしていくことをルールにしております。そのことによって、より多くの女性が議員経験者となって、その経験を地域で有効に生かしていけると考えての活動でございます。
 本日私が申し上げたいことは、簡単にレジュメにまとめて差し上げておりますけれども、以下の三点でございます。
 まず一点目ですが、いろいろな調査を行うときに、その企画、実施の段階からの女性の参画が重要だということについてお話し申し上げたいと思います。
 政策を決定する場というのは、行政であり、議会であり、いろいろな審議会でございますが、現状ではそのすべてに余りに女性の存在が少な過ぎます。これは、税制、社会保障、労働のあり方、子育て支援の不十分さなど、さまざまな制限から女性が社会進出しにくいということを反映しております。
 つまり、行政、議会、審議会などの構成員の出身母体に女性の数そのものが少ないことが大きな問題です。こういう決定の場に女性をふやすということは言うまでもなく重要なことですが、私はさらに、決定段階だけの参画のみでなくて、調査段階からの参画の意義が大変大きいということを強調したいと思います。
 私は、東京生活者ネットワークの女性部会というグループのメンバーとして、これまで幾つかの独自の調査に参画してまいりました。
 九八年には、専業主婦優遇の年金制度について、第三号保険者へのアンケート調査を行いまして、今の年金制度が専業主婦を優遇し、その結果、収入が百三万以下の社会保障もないパート労働の女性をふやしてしまっていることがあります。私たちの調査結果では、多くの専業主婦やパートの主婦が、きちんと年金の掛金を払って、個人としての年金を受け取りたいと願っていることが明らかでした。この結果をもとに、私たちは第三号保険者の立場から、個人単位の年金制度の実現を求めて国会議員の方々や厚生省に要望活動を行っております。
 また、同年の九八年には、子育て中の女性二百人へ丁寧な聞き取り調査を行ってまいりました。夫の長時間労働が妻を孤独な育児に追い込み、都会の核家族の母親が不安の中で相談相手もなくて子育てをしている現実がはっきりわかる調査結果でございました。
 さらに、九八年、九九年は、女性に対する暴力、ドメスティック・バイオレンスの問題に取り組んでまいりました。女性部会に所属する私も含めての自治体議員が、あちこちの自治体で一般質問にこのDVの問題を取り上げました。また、地域の自治体でのDVに関する相談状況、そして地域の対策の現状を調査いたしました。地方自治体では、意外にDVを行政課題としているところが非常に少なく、相談の分類項目にすら暴力という項目がない自治体が非常に多くあることが調査からわかりました。こういう結果から、自治体でのDV防止条例がぜひ必要であると私たちは思いまして、その内容について議論するワークショップを昨年、おととしと開催しております。
 二〇〇〇年のことしは、女性と労働をテーマに、男女がともにペイドワークもアンペイドワークも分かち合って暮らせるような、新しいワークルールの確立を模索するための調査を実施している最中でございます。
 このように、私たちはまず私たち自身で必要な調査を企画し、調査の実施も私たちの手で行い、その結果をもとに政策提案をしてきております。いわば私たちが政策づくりのボランティアとして活動しているわけですけれども、これをやってみて、当事者参加の調査が実態を知り問題を解決するのに大変有効であるという確信を得ております。
 調査段階からの女性の参画で何が有効かといいますと、調査の手法、調査対象を選ぶところから女性の独自の視点を生かして、これによって新しいデータの発掘が可能だと思います。介護保険制度の妥当性を調べる調査も、介護をしている人、介護を受けている人という当事者の参画がなければ有意義なデータが得られないと思いますし、同様にDV対策にしましても、被害を受けた当事者からの意見の聴取、政策立案への参画が必要だというふうに思っております。
 ここでまたつけ加えたいのが、女性が情報弱者であるということです。今回の公聴会も、私は幸運にして参加させていただきましたけれども、公募はされていたものの、一般の、地域で活動している女性にまだまだこういう情報は伝わってまいりません。情報化時代とは言われておりますが、必要なところに必要な情報が届いていないのが現状ではないでしょうか。経済的な基盤が弱い女性は、どうしても高価なマルチメディアに手が届きにくいのが現状だと思います。図書館とか公民館といった公的な場所で情報へのアクセスを確保すること、そしてまたマルチメディアを活用できるようなトレーニングが女性への支援として必要であるというふうに思います。
 二点目にお話ししたいのは、現在の選挙の方法そのものが女性の政治参加を拒んでいるのではないかということです。
 九八年の秋に、女性の地方議員をふやしたいという趣旨で「普通の女性が選挙に勝つ方法」という本の出版を手伝うことがございました。私は、その中で選挙のルールを説明した「わかりやすい公職選挙法」という章を担当いたしました。そのときに、改めて今の選挙法が、昭和二十五年ころからでしょうか、基本的にほとんど変わっていないこと、そしてそのことが普通の市民にとって選挙を非常に縁遠いものにしていることを再認識いたしました。選挙に立候補すること自体大変ハードルが高いことですが、選挙の方法も普通の感覚では理解できないことばかりです。
 地方選挙では告示期間が一週間と大変短く、実際には告示前に選挙戦は終わっているというふうに言われており、告示後は単なるお祭り状態です。そして、うるさい選挙カーの拡声機の使用は認められておりながら、名前とか詳しい政策を明記したチラシは告示期間中は一切配れないというルールです。非常に摩訶不思議だと思います。有権者が見ることができる政策は、わずかなスペースの選挙公報のみです。また、告示前に候補予定者が配るチラシとかリーフレットには立候補するという言葉を一切使うことができませんので、あいまいな表現で名前を載せることしかできません。
 諸外国の選挙のあり方を見ますと、まずスピーカーでの流しなどは当然禁止されておりまして、その政党の政策の差で勝負する選挙になっていると思います。
 時代が大きく変わってきているにもかかわらず、なぜかこれらの古い選挙の仕組みが有権者をうんざりさせ、政治離れを起こさせているように思います。買収のおそれがあるからということで戸別訪問が禁止されていますが、これも理不尽なことではないでしょうか。戸別訪問の解禁も検討されるべきです。
 戦後すぐとは違いまして、印刷技術も格段に進み、マルチメディアも発達しております。有権者に候補者の政策を平等に詳しく伝える制度を新しくつくるべきだと思いますし、そのための公的な補助を充実させることが必要だと思います。また、政治活動にはお金が必要ですが、国政政党と違って、市区町村の地域の政治団体への寄附には税金の寄附控除が認められておりません。市民の浄財で政治活動を支えるために寄附控除が必要だと思います。
 さらに、議員のあり方、地方議員のあり方自体も再考すべきときではないかと思います。私は北欧のノルウェーで二年足らず生活したことがありますが、ノルウェーに限らずヨーロッパの国々の多くは、地方議員はほとんどボランティアです。議会に出席した時間だけの報酬を受け取って、ふだんは教師や看護婦、サラリーマン、福祉施設職員など、さまざまな職種の人が議員活動ができるようになっております。フルタイムの勤務が必要な国会議員の方は別としまして、地方議員のあり方をもっとボランティア的なものに変えていくことも必要なのではないでしょうか。
 三点目としまして、小中学校からの政治教育の大切さについて申し上げたいと思います。
 私は、政治は即生活そのものであるというふうに思っておりますが、特に若い人にとって政治は残念ながら深い関心の対象ではございません。今の女子高校生、女子学生に将来の夢を聞いて、政治家と答える人は皆無に近いのではないでしょうか。それほど政治家と若い女性という組み合わせは縁遠いものになっております。
 これは、小中学校での政治教育がほとんどなされていないということと大きな関係があると思います。欧米では十八歳選挙権が圧倒的に多いと聞いています。また、被選挙権も北欧などでは十八歳ということで、日本のように選挙権二十歳、被選挙権二十五歳というのと大きく異なっております。
 そして、最も違っているのが学校教育の中での政治とのかかわり方ではないでしょうか。ヨーロッパ諸国、特に北欧の九割近い投票率の高さは、小中学校での実践的な政治教育によるところが大きいと言われております。北欧の社会科の教科書などを見ましても、子供が受け取る児童手当の金額から失業対策などに至るまで、現実の政治のさまざまな課題がわかりやすく自分の問題として書かれております。自治体の選挙とか国政選挙があるたびに、小中学校で実際に候補者を呼んで政策を聞いて模擬投票が行われております。
 私は、九八年に半年間、私が所属する団体で大学生対象の政治スクールを開催いたしました。二十人余りの、女性中心ですが、学生が応募してきまして、福祉や環境、ごみ問題などさまざまな行政の現場を見学したり議論をしまして、最後には、学生と一緒に議会の一般質問をつくり、私たちが議会で質問し、そして学生が傍聴席で答弁を聞くということを試みました。参加した大学生の方たちは、政治がこれほど身近なものだと思わなかった、とってもおもしろかったと口々に言っておりまして、これまで政治を身近に感じる場がなかったのだと異口同音に言っておりました。
 私は、このときの経験から、また若い人は決して政治に無関心なのではなくて、今までそういう参加の場が与えられなかっただけなのだというふうに思いました。もっと若いときから、子供のときから政治が身近であったなら、女性ももっともっと政治家になろうという人が出てくるのではないでしょうか。ぜひ小中学校のときから政治に身近に接する、そういう具体的な場をつくっていくべきだというふうに思います。
 以上、三点にわたって意見を申し述べさせていただきました。どうぞよろしくお願いをいたします。

○会長(石井道子君) どうもありがとうございました。
 次に、三井公述人にお願いいたします。三井公述人。

○公述人(三井マリ子君) 私は、八〇年代、都立高校で進路指導を担当していました。就職希望の多い高校でしたので、毎年、進路の部屋には企業から求人票がどっさり送られてきました。求人票の束は、まず男子と女子で分けられます。男子のこのぐらいの山に対して女子はこのぐらいの低い山です。そして、その中でも比較的女性を好むサービス業でさえ、女子の求人数は男子の求人数の半分にも満たなかったのが現実です。その高校では、平均して女生徒の方が男子生徒より成績が上回っていて、しかも就職希望者が女子の方が多かったにもかかわらず、そういう実態でした。
 十八歳で高校生は感づきます。成績や意思ではなく、性の違いで入り口が別々なんだということを。私は、こうした不正をなくしたいと思いました。折しも男女雇用機会均等法案が議論されており、よりよい法律をと運動に飛び込みました。一九八四年の夏、法案が国会に上程され、国会まで傍聴に参りました。その当時そこで見たもの、それは雇用の性差別など人ごとだと思っているような男性議員ばかりの光景でした。ここに女の人がふえないと女性の抱える深刻な問題は何一つ解決できないと私は痛感しました。
 そして十六年たちまして、きょう、その国会で、このように男女平等という現代の抱える最重要課題の一つを話す機会をいただきまして、心からお礼申し上げます。
 私は、きょう、女性議員輩出のため二つの分野から発言いたします。前半は日本の女性運動です。後半は、先ほど中田さんもおっしゃいましたけれども、ノルウェーの選挙制度に絞って申し上げます。
 では初めに、女性議員をふやそうと運動している三つの組織を紹介いたします。その設立の背景とか活動から、民主主義とは到底呼べない、私は民主の民を男と書いて男主主義と呼んでいるのですけれども、そういう日本の現状、そして今後何をすべきかという課題が浮かび上がってくれば大変うれしいです。
 私は、機会があって都議会議員に立候補いたしまして、都議を二期務めた経験があります。セクシュアルハラスメントなどの労働における性差別、そして高校の性差別の定員解消の問題、それから、その当時は女子のみ家庭科は必修、女子だけでしたので、その女子のみの家庭科の男女共修の問題などを議会で一生懸命取り上げました。そのたびに私はやじの嵐で迎えられました。こんな状態は私だけではありませんでした。女性の少ない議会ではちっとも珍しいことではなくて、嫌な目に遭っている女性議員は日本じゅうにいました。みんな、何とか変えたい、これは超党派で何とかしたいものだと感じていました。
 第一に私が紹介いたしますのは、こういう背景の中で創立された全国フェミニスト議員連盟という団体です。
 この組織は九二年、実はこれがリーフレットなんですけれども、皆様の方に、友人とともに私が一緒に創設いたしました。目的は、全国で孤立しながらも元気に頑張っている女性議員同士の支え合いとか政策情報の交換、そして、あらゆる政策決定の場に女性を少なくとも三〇%までふやすことです。名称は議員連盟ですが、実は市民も多い普通のNGOです。これまで、集会や調査、抗議運動のほか、選挙のたびに政党の党首とか男女共同参画室などに女性候補をふやすような方策をつくってほしいと要望をしてきています。今も続けております。九五年の統一地方選挙では、直前までいろいろな運動をしまして、女性議員が当時、その前三・五%だったのですけれども、四・八%までふやす一助となったと自負しています。
 しかし、人口の半分は女性なのに九五%がもう一方の性の代表で占められている現実、そして地方議会の約六割、六割が女性議員ゼロという目を覆いたくなるような現実の解消はまだまだできませんでした。
 第二に、女性連帯基金というものに移ります。
 これは紫色のリーフレットに簡単に説明があります。九〇年代後半から日本の各地に女性候補を発掘、教育、支援する組織、いわゆるバックアップスクールとか政治スクールとか呼ばれるような団体が生まれ始めました。政党の支部でもなく、いわゆる個人後援会でもない新しいタイプの議員養成組織と言えます。
 こうした地方の団体は、使命感に燃える力強い活動にもかかわらず、女性たちの浄財に頼っており、台所は火の車。そこで、この活動母体を多少でも応援することが地方議会に女性議員をふやすことだというふうに判断しまして、九八年、元参議院議員でした中西珠子、それから地方議員でした中嶋里美とともに創設しました。
 女性連帯基金は、地方議会に女性をふやそうと啓発、教育活動をしている団体に奨励金を差し上げることでその活動を側面的な援助をする、そんな形をとっています。この活動の過程で、日本の多くの地方での選挙の実態が届きました。女性が候補になること自体いかに困難を極めることであるかということをその過程の中で改めて思い知らされました。
 三つ目の運動は、99女性と政治キャンペーンです。
 これは、私が今まで申し上げました二つの組織とは違いまして、プロジェクトです。九八年の夏、マニラで開かれました世界的レベルで女性議員を何とかふやそうという国際会議に参加しました日本の代表団たちの手でスタートしました。そこの国際会議に集まったアジア太平洋の諸国の中でも、女性議員が極端に少ない日本の現実に打ちのめされた私たちは、九九年三月に全国一斉にキャンペーンをすることをその場で決めました。
 そして帰国後、四十七都道府県に責任者を選任し、その中の一人が樽川さんで、次にいろいろお話ししてくださると思いますが、当該県で独自に運動をしていただくことにしました。議会に女をというスローガンがマスコミを通じて日本列島に流れ、選挙前の女性ゼロ県議会が一掃されるなど一定の成果を上げました。とはいえ、まだ日本の地方議会に占める女性議員はやっと五%でした。
 次に、以上のような日本の抱える課題を解決したかに見えるノルウェーの制度に移ります。
 つい先ごろ、ノルウェーは内閣総辞職により中道三党の連立から労働党単独内閣にかわりました。しかし、変わらないのは四割を超す女性閣僚の比率です。なぜか。ノルウェーは、物事を決める場に女性が少ないのは民主主義に反するという考えが定着していて、ほとんどの政党が、決定機関の構成と候補者名簿において、一方の性が四〇%を下回らないようにしているクオータ制をとっているからです。その結果、内閣、国会に加え、地方議会も八〇年代から既に三人に一人が女性です。
 今、日本の内閣は紅一点。衆議院は女性議員二十五人で五%です。なぜこれほどまで日本では女性が政治の場からはじき出されているのか。最大の原因は、私は選挙制度にあると思います。
 ノルウェーに限らず、女性議員の多い国々では、国会も地方議会も比例代表制です。この制度では、政党の得票に比例して議席数が配分されるので、ミニ政党でも議席を獲得しやすいのです。最高得票の人のみしか議会に出ていけない小選挙区制とは正反対です。死票のない分民意が確実に反映されます。北欧諸国が同制度を率先して採用したのは、物事の決定にはその結果を引き受けることになるすべての利益集団から代表が選ばれて審議にかかわるべきだというバイキング時代からの伝統があったからだと言われています。
 ノルウェーの国政選挙は、選挙区が十九で、定数は四から十五です。政党は、定数に見合った候補者の並ぶリストを作成します。そのリストは党のシンボルです。特定層からしか候補者を選ばない偏った党と見られないように、党の候補者選定委員会が慎重に調整します。候補者探しは地域的バランス、経歴、年齢も配慮します。決定まで何段階もの党機関を経て、その都度マスコミを通じて公にされます。しかも、選挙資金はすべて政党が用意し、候補者はびた一文使うことはありません。そうした候補者擁立決定プロセスでは、男女のアンバランスを解消しない政党は有権者を引きつけなくなります。そして、次第に人口の半分を占める女の代表はおおよそ半分ぐらいいてもいいんじゃないかという考えを多くの政党が持つまでになっていきました。
 今やヨーロッパのみならず、アジアの選挙にも絶大なる影響を与えているノルウェーのクオータ制ですけれども、比例代表制選挙という土壌があったからこそその制度が生きたと私は考えています。これが小選挙区となると、政党からの候補は普通は一名、女性議員をふやすには現職の男性議員に挑戦して公認候補となることが必要です。しかし、億単位の巨費が投入され、地盤、看板、かばんでがっちり固まった現職に新顔が取ってかわれるのは、現職が引退して、かぎですけれども、その遺産を引き継ぐ幸運を手にすることができたときぐらいしかありません。だから、一般の女性にとっては、小選挙区での挑戦などというものは絶望的難事業です。
 でも、衆議院は中選挙区だったというお声が出ると思いますけれども、そのとおりです。定数は三から五の中選挙区でした。しかし、この制度でも複数候補を擁立できたのは自民党だけです。他の政党は候補者一名がやっとだったことは皆様御存じのとおり。そのため、小選挙区ほどではなくても、女性にはやはり不利でした。
 実際、女性の衆議院議員は何十年もの間一、二%台でした。九六年の選挙で四%に届いたんです。その当時の女性の当選者の七割が比例区で、小選挙区で当選した新人女性はただ一人です。つまり、わずか四%とはいえ、衆議院に女性がふえたのは比例代表制導入のたまものだったんです。ところが、この二月、日本の国会は比例区定数を二十議席も削減してしまいました。
 目を外に向けると、小選挙区制に固執してきたイギリスが翻意したことによって比例代表制選挙に統一できたEU議会、イギリスやドイツでは、最大政党がクオータ制を実行して空前の女性国会議員を誕生させました。最近では、男女同数クオータに当たるパリテ法で比例区候補の五〇%を女性にすべしと決めたフランスがあります。比例区候補に三〇%クオータ制を導入したのはお隣の韓国です。
 このように、国際社会は男女平等に向かって確実に動いています。日本もこの国際的現実を直視し、女性や少数派に不利な選挙制度の改革を真剣に考え直してほしいのです。また、女性議員輩出の啓発活動を進めていただきたい。
 最後に、政党に属していらっしゃる方がほとんどだと思いますので、政党は、クオータ制などの女性議員輩出策実行のために政党助成金の幾ばくかを使っていただきたい。私たち女性も本物の民主主義に向かって頑張りますので、よろしくお願いいたします。

○会長(石井道子君) どうもありがとうございました。
 次に、樽川公述人にお願いいたします。樽川公述人。

○公述人(樽川通子君) 本日は、こういう席を与えていただきましたことに、まず心から御礼申し上げる次第でございます。
 私は、きょうここの席で私どもの考えていることを申し上げるその喜びもございますけれども、この機会を与えていただいて、国会の中に共生社会調査会というのが存在して、こんなに大勢の各先生方が真剣に取り上げていただいているんだというこの事実を初めて知りました。少なくとも、私の住む長野県の中でほとんど九九%くらいはこの事実を知らないんじゃないか、こういうふうに思っておるわけでございます。
 そういう意味で、私が今回参加させていただきましたことを、一つその意味でも意義があると。それから、こういうことをもっとある意味ではPRしていただきませんと、私どもにとって、殊に参議院は何をしているのか若干わからない部分もあるということを冒頭に遠慮なく申し上げさせていただきます。
 政策決定の場に女性を多数送り出すためにどんな取り組みをしているのか、地方からの発信ということで、現場の生々しい部分も含めて報告をさせていただきます。
 長野県の百二十市町村のすべての議会に女性議員を誕生させたいということで、平成八年九月十六日、女性議員をふやすネットワークが誕生いたしました。この会は、長野県で女性問題を学んできたグループが呼びかけ人となって会員を募りました。足かけ四年目を迎えた現在、会員数は五百数十名おります。県内を四つのブロックに分けて、学習活動を中心に女性議員をふやすための啓発運動を行っております。
 また、「しなの学校」を開設して、立候補を志す人、推し出す側の人、あるいは政治に関心のある人を対象に講座を開き、選挙のノウハウや政策などについて幅広い講師陣を迎えて意欲的に取り組んでおりますが、特筆すべきことは、ここで学んだ生徒の地区には必ず女性議員が誕生しております。志を同じくする者同士が寄り合ったとき、そこから発する相乗パワーには注目すべきものがありました。
 発足時三十名で立ち上がった「しなの」がなぜこんなに急速に会員がふえているのだろうかと不思議に思うことがあります。数は力なりということで、会員増のためにそれぞれの役員が力を注いだということもありますが、今、長野県下に女性議員が必要なのだと受けとめている人が多い証明だとも考えております。
 政治の腐敗、政官財の癒着、不祥事など、目を覆いたくなるような連日の新聞報道と、政治不信ここにきわまりたりの感さえある社会にあって、女性が政策をつかさどる日が来れば、醜悪な社会を一掃してくれるのではないかという期待感ではないかと考えているところでございますが、いかがでしょうか。
 昨年の統一選挙で九十七名だった女性議員が百四十五名と大幅にふえました。現在、百四十六名になっております。「しなの」の果たした役割大であったと自負いたしております。男女の比率からいえばまだまだお恥ずかしい次第でありますが、長野県におきましても女性が立候補するということは並大抵のことではないというのが実情であります。
 立候補への道のりで一番難儀をするのは夫の説得とされています。次に家族、親族、地域、それにお金の問題がありますが、長野県の場合、地域推薦という慣習が今も歴然と残り、女性の立候補を妨げる大きな要因となっております。農村地帯はその傾向がさらに濃厚で、村八分とか村のおきてという言葉が平然と使われております。
 地域推薦の弊害は多くの男性も認めており、改善すべきだという声は多いのですが、なぜか選挙時になりますとこの声が消えて、いつでも同じ地域ぐるみの選挙を繰り返すというのが実態でございます。
 現在、女性が立候補するのに大きく分けて二つのパターンがあります。一つは、女性団体が中心になって推し出す型と、もう一つは地域が中心になりそれを女性の有志が側面から支える形となりますが、そのいずれも一長一短の感があります。
 前者の場合は全域的な知名度を必要としますが、選挙の方法も選挙後の議会活動も本人の意思どおりに展開できますが、後者の場合は地域優先型が要求されるので一定の枠内におさまることになり、側面についた女性有志から不協和音が出るというのが女性議員を取り巻く実態であります。
 さらに言えば、女性団体が代表を送り出す場合、候補者が複数になったときに派生する諸問題の中に、女性特有とされるいじいじとしたものがあり、そのことが地域の連帯と結束を大きく妨げております。
 女性の連帯と協調があれば簡単に社会の機構を変えることができるのに、なぜそれができないのか。考えてみると、まことに不思議なことであります。女の一票を女のために使えば男女半数ずつの議会は簡単にできるはずなのに、なぜそれができないのか。解明すべき課題の一つだと考えております。
 女性全般から見れば政治に関心の薄い人が多く、殊に若い人は全く無関心であります。このことにどう対応するのか。「しなの」ではいろいろな試みを行っております。
 例えば、学習会を女性議員のいない地区で行い、首長や議員をお招きして会に対する理解を深めていただいたり、その地区の女性団体や一般の方々にも呼びかけ、女性議員の必要性を訴えております。また、会報を発行して広く配布する努力もいたしております。皆様方のお手元にあるのもその一部でございます。
 先ほど三井公述人の方からお話もございましたけれども、昨年の三月三日には、99女性と政治キャンペーンを華々しく展開いたしました。これは、先ほど御説明もあったわけでございますけれども、九八年の夏、マニラで開かれた女性議員躍進策を探る国際会議に参加した人たちが、女性政治家の少ない日本の現実を再認識して、どうしたら改善できるのか話し合った結果、全国一斉に行動を起こすというまことにユニークなものであり、「しなの」は直ちに賛同いたしました。
 女性議員を五〇%に、女性を議会にという横断幕を掲げ、選挙用の車には数百個の風船をつけて、長野県庁前で県会に半数の女性議員をと訴え、県庁内の理事者の半数も女性にと赤い気炎を上げて、駅までのメーン通りを二十一世紀の政治は女性が担ってまいりますというふうに声の限り叫び続けました。
 この模様は、各新聞が大きく取り上げるとともにテレビにも映し出されて、県内に大きな反響を巻き起こしましたが、この種のデモンストレーションをやることによって人々に関心を持っていただく手法も大切なことだと思っております。
 当初、県庁前を使用することに難色を示した県側も、私どもの熱意に押された形で正面玄関前をマイクつきで貸してくださいました。障害や壁を一つ一つ取り除いていく勇気と努力こそ肝要だと身をもって知りました。
 「しなの」では、本年十月二十九日と三十日に長野市において全国女性議員サミットを開催いたします。これは一昨年、青森県の女性議員有志が提唱して弘前市において開催されましたが、女性議員という同じ喜びや苦しみを持つ者同士が一堂に会して語り合う場所を設営してくださったすぐれた指導力と高邁な理念に深く敬服すると同時に、それを引き継いでいくことの責任も感じた次第でございます。
 全国各地から大勢の参加者があったのだから、広い日本のどこかで二回目は開催してくれるものと、山深い信州の片隅でひっそりと朗報を待っていたのですが、一年間どこからもその声は聞こえてまいりませんでした。それでは「しなの」でやるかということで開催を決意いたしました。青森県の志を継いで女性議員の数をふやし、その質を高めるために、今、日本の女性たちは何をなすべきなのか、議員の果たすべき役割とは何か。全国的なネットワークの中でともに学び、ともに語り、ともに育っていくことの必要を感じているからであります。
 サミットには、女性議員はもちろんのこと、政治に関心を持つ人や女性議員をふやすために、各地で活躍するグループなど間口を広げて大勢の参加を願っているところでありますが、地元高校生や大学生など若い層を招待という形で参加させてみたいなという考えも持っているところでございます。
 国民の政治離れとか若い層の無関心を嘆く声は多いのですが、その原因の一つに日本の教育制度があるのではないかと常々考えております。この件に関しましては先ほど中田公述人からもお話がございました。学校教育の中で政治に関する教育を施すことはできないのか。また、生涯教育の中で公民館の果たす役割は大きいのですが、なぜかここでも政治学習が敬遠されております。
 本県の女性総合センターが、先般、政策決定の場に女性を参画させるためにとうたったフォーラムを開催して好評を博しましたが、このことを知った他県の方々から、長野県のセンターは大したものだ、我々のところでは要望してもその種の催しは開催できないという声をたくさん聞きました。なぜできないのか。検討すべき課題だと受けとめております。
 「しなの」は女性議員の数をふやすことが目的の会ではありますが、地域の行政機関である区議会議員や区長になることも大いに推奨しているところであります。この種のものに関しては、同じ地域に住む女性やあるいは女性団体などが推薦すれば簡単に事が運ぶ可能性があるのですが、これがなかなか実現できないというところに女性特有の何かがある。その何かを究明することが女性のあしたを開くかぎになると考えています。
 女性議員をふやす最高の妙薬は何かと問われれば、それは各人が勇気を持って立候補を決意してくれることですと私は申し上げたいのです。
 どこの市町村を見回しても、あす議員になっても立派にその任を果たせる人がいっぱいおります。立候補すれば必ず当選できるという状況整備ができている人も数多くいます。たとえ落選しても、それが何だと開き直れるほどの度量を培ってほしいと私は願っております。
 学習を重ねて、論議を尽くして、世界ランキングからいっても先進国では日本が最下位なんだなんて幾ら唱えても、唱えているだけでは発展はありません。選挙が苦しいものであるならば自分が範を示して人を導かなければ説得はありません。
 十七年前、私は理想選挙を旗印として、従来の選挙を否定した項目を掲げて、自分の住む町に女性議員を誕生させたいと候補者探しに奔走いたしました。引き受け手がなくて困り果てたとき、当町としては前代未聞の選挙を提唱したあなた自身がやるべきでほかにやれる人はいないと詰め寄られたとき、言われてみればそのとおりだと妙に納得した日のことを鮮明に覚えております。険しい道は自分が歩んで地ならしをして、後に続く人が歩きやすい道をつくることが旗を振る者の使命だと悟りました。
 有史以来初めてという女性だけの選対に、有力者と言われる町の顔役や権力の座にある者からの圧力など、想像を超える気流の中を女たちは戦い抜いて見事に上位当選を果たしましたが、そのてんまつは各種新聞で取り上げたり地元のテレビのドキュメンタリー番組になるといういきさつもあり、勢いを得て記録史の発行まで行ったところ、これがまた話題となり、県下各地において女性議員を出すためのテキストとして大いに活用され、下諏訪方式という言葉が広く使われて、我が町の女衆たちは大いに面目を施しました。ちなみに、本の題名は「下諏訪町の女衆 選挙―その証言」というものであります。
 やればできるのです。今こそ女性みずからが意識改革をして、勇気と決断を持って立ち上がるべきときです。行動こそ美徳であります。
 最後に、女性を政策決定の場に大勢送り出すために私ども女性は今何をやるべきかと言えば、現場の生々しい空気の中から感ずることは、女性が女性に温かく、女性が女性に優しく、女性が女性を育てる努力が今一番肝要なのではないかというふうに考えております。
 以上でございます。

○会長(石井道子君) どうもありがとうございました。
 次に、綿末公述人にお願いいたします。綿末公述人。

○公述人(綿末しのぶ君) 大分県の杵築市から参りました綿末しのぶと申します。
 実は、私がこの公聴会に参りましたのは、この会のホームページがございまして、そのホームページの中で公募をしておりました。ホームページの中で公募をされているので、さぞやたくさんの応募があるんだろうなということで、一言地方からの情報を発信したいということで応募をいたしましたら、こちらの方で話をしてくださいということになりました。何分、本当に初めてのことですので、失礼な表現もあるかと思いますが、お許しいただければと思っております。
 私の肩書ということで、杵築市各種女性団体連絡会議議長というふうになっております。この杵築市各種女性団体連絡会議というのは、市内の十六の女性団体が集まったものです。ただの情報交換の場というのが当初の目的でございまして、予算もないという会なのですが、どうしたわけか次々と行政の方から依頼がございまして、ほとんど動員団体みたいな形に現在はなっておりまして、大変苦慮をしているところでございます。
 それからもう一つ、大分県の男女共生アドバイザーという制度がありまして、こちらの方に所属をしておりまして、いろいろ県内の市町村に出向いてお話をさせていただいております。私も元市議会議員ということで、またそのお話については後で述べたいと思っております。
 家族構成ということで書いてまいりましたが、夫が一人おります。長男は大学院に通っております。次男はことしの春大学を卒業し、この就職難の中、見事に自分で勝手に就職を決めてまいりまして社会人をしております。三男は大学の三年に在学中です。男三人だったのですが、非常に年が離れまして長女が一人生まれております。この長女は中学一年生ということで元気に学校に通っております。
 この子供たちに長らくかかわってきたのですけれども、その中で、先ほども意見が出ておりましたけれども、就職と進学のことについて大変男女格差があるというのを感じております。
 まず一番最初の関門が、中学校の進路指導です。中学校の進路指導に当たってくださる先生方は、男の子に対しては実にきめ細やかに時間を割いて相談に乗ってくださいます。ところが、女の子になりますと、どうせいずれは結婚してしまうのだから適当にこの辺の学校でいいんじゃないかということで非常に熱意がない状態です。それが現実です。
 それから、子供三人が大学に進学しておりますが、その進学過程におきまして大学の方で既に男女の差別が行われているということを知りました。大学受験をするために偏差値があります。偏差値によって、あなたはこの大学に行けますよとか、あなたならこの大学は大丈夫でしょうということを今はコンピューターに一覧表が出てまいります。それに自分の点を入力しますと、これこれこれの大学が該当しますということで出てまいります。
 ところが、同じ大学の同じ学部でありながら、女性と男性ではその点数が大きく違っている学部がございます。これは、九州の国立大学の中に歴然とあらわれておりまして、この学部につきましては女性では何点以上ないと合格できませんということが先生方の間では常識になっております。差別されるはずのないこういう国立大学の入試という場面で、もう既に学部を受験するときに女子の足切りが行われているということは非常に腹立たしいことでございます。
 幸い私は、三人男でありましたのでそのときは考えなかったのですが、現在長女がおりますので、この子が進学をするに当たりまして、これは大きな関門となるなというふうに思っております。いずれ少子化ということで、ほとんどの高校生が進学しても大学が倒産するような時代が娘が受験をするときには来る予定になっておりますので、若干安心をしております。こういうことを常々子供たちを育てる中では考えてまいりました。
 これから子供たちは多分就職そして結婚ということになると思うんですけれども、その中で子供たちがどういうパートナーを選んでいくのかということが一つあると思っております。
 この少子問題について、現在同級生の子供たちが何を考えているかというと、男の子、女の子にかかわらず、結婚をすると損をするというふうに考えている子供たちが大変多いのです。
 男の子は、何で自分が稼いできたその給与を女の子に、要するに妻に全額渡さなくてはいけないのか、今まで一人であれば全部使えるものが、結婚をしたからといってなぜ女に全部渡さなならぬのだということで、非常に損をするので結婚したくないと言います。女の子は、結婚をすると自分の本当にやりたかった仕事も打ち捨てて、そして子供を産み育児をし、そして夫の両親を介護する、そういう現実が今、目の前に広がっているわけです。その中で、せっかくこれだけの給料を今もらっていて自分が自由に自分の意思で生活ができているのに結婚をしたらそういうことができなくなるのか、非常に自分は損をするということで、男の子、女の子がともに結婚は損をするということで一致をしておりまして、杵築市はわずか人口が二万二千人、有権者数が一万七千人という小さな市なのですが、その中でも三十代、四十代の男性、女性ともに結婚をしないという選択をしている方が大変ふえております。
 特に、女性の場合は、三十を過ぎますと、今まででしたら親御さんが非常に焦って、どこか嫁に行くところはないかということで探し回っていたのですけれども、今は反対でして、まあ家にいてくれるならそれでもいいやということで積極的ではないのです。かえって、男の人を持っている、男の子を持っているそういう家庭の方が焦ってお嫁さんを探しているのが現状です。
 やっぱり女の子を持っている親御さんは、今結婚をすると女性がどういう立場に置かれるかということを非常によく知っておりまして、このままでもずっと、自分たちの介護をしてくれればいいやぐらいにしか思っていないというのが実に現実です。
 杵築市だけではないとは思うんですけれども、最近離婚をして親元に帰ってくるという女の人が大変多くなっております。母子家庭というのが大変ふえているんですけれども、今まででしたら、母子家庭で実家に戻ってきたときに大変肩身の狭い思いをするとか、それから親御さんができるだけくっつけておこうとしたというようなこともあったのですけれども、最近はそういうこともなくなりまして、喜んで親御さんが受け入れているという現実があります。かわいい孫まで連れてよくぞ帰ったということで、もう行かぬでもいいというのが私たちの身の回りにたくさん起こっております。
 この母子家庭につきましてはいろいろ、女性が働くという場が今大変難しくなってきておりますので、収入の面では大変苦慮をしておりまして、杵築市は本当に田舎の市なのですが、なぜか住宅費だけは異常に高いところでございまして、住宅に住むということで非常に母子家庭では苦慮をしております。この対策は早急に求められると思うのですけれども、なかなか市の担当者の方に腰を上げてもらえないのが現実です。
 私が今回この意見を述べるということにつきまして、こちらの方に提出した文書がございます。その中で私は、「女性の政策決定過程への参画についての現状と課題に関する件」というふうに書いてありましたので、政策決定過程への女性の参画というときに一番思い浮かぶことというのは、国や自治体の審議会の委員です。もちろん議員制度というのもありますし、最終的には首長、市長とか知事とかそういう人がふえていくことではないかというふうに考えております。
 まず一番行政として、また国として簡単な方法は、審議会の委員を必ず男女同数またはそれに近い数にするということです。これについては国としても自治体としても、法律も何も改正もせずにすぐやろうと思えばできることだと思います。そこの審議会で実質的に国民全般が考えているような、国民の考えに即した審議ができるようになれば、そこからできてくる法律や条例というのは今よりもずっと現実的に実効を上げていくと思います。
 女性議員の数をふやすというためには、今までも何人の方もおっしゃいましたけれども、選挙制度を大きく変えていくぐらいの大胆な改革がないと、これ以上の大幅な増加を早急にということは見込めないと思います。現在、大阪と熊本で女性の知事が誕生いたしました。市長や知事でも市民の支持があれば十分になれる可能性があると立証され、とても心強い思いがしております。
 審議会につきましては、例えば少子化を問題に審議をするならば、委員には今子育てをしている人、あるいは子供を産める世代の二十代、三十代の女性が入っていくべきだとは思うのですけれども、実際の審議会というのはそういうふうになっておりません。高齢の学者だとか高齢の知識人ということが多く、また社会で活躍している女性を入れたとしても、子供を育てたことのない人であったりと、本当に子育てしながら働いている多くの女性の悩み、子育て支援に、今子育てをしている人たちが本当に何を必要として何を求めているのかが出てくるような会にはなっていないと思います。
 それから、先ほども申しましたが、少子化のもう一つの原因という若者の結婚拒絶に対する対策なども、今の審議会の委員では、どういう対策を打てばいいのか、どういうところに問題があるのかということは出てくるはずもないのではないかと思います。女は結婚すること、子供を産むだけ、育てるだけの性として固定観念を持っている委員の間で何を話し合われても、若者に受け入れられるはずはないと思います。先ほども申しましたが、今の社会では女も男も結婚をすると損をする社会、若者がこういう感じを持っているということを理解はできないと思います。
 先ほども申しましたけれども、私が住む杵築市というのは人口が二万二千です。地方行政の広域化ということで消防は一市二町で行っております。現在、救急車が救急電話をして着くまでにおおよそ近いところで十分、遠いところでは三十分かかります。緊急のそういう病気にはほとんど間に合いません。杵築市には市内に救急指定病院は一つもありません。重篤な場合は全部転送されます。転送されるのにまた三十分から一時間の時間がかかります。心臓であるとか脳血管障害であるとか、そういう病気の方はとても間に合いません。
 救急がそうですから消防につきましても、火事の一報を受けてから現場に到着するまで三十分ぐらいは優にかかります。ほとんど燃え尽きて後始末に行くだけというのが現状です。
 そういう広域行政、これが本当に私たちの命、暮らしを守っていく行政のすべきことなのかなというのを非常に疑問に感じております。これは広域行政をしていい部門、してはいけない部門というのがあるのではないか。命や暮らしを守っていくという一番大事な場面に女性の発想、そういうものがやっぱり欠けているのが現状ではないかなと思っております。大変悲しい現実です。
 それから、私たちの市の審議会もいろいろあるのですけれども、その審議会はほとんどが金太郎あめという感じで、メンバーはどこの審議会に行ってもほとんど変わりません。女性で選ばれるのは商工会の婦人部長さんであるとかJAの女性部長さんであるとか漁協の婦人部、恥ずかしながら女性団体連絡会議の議長の私も選ばれるのですが、メンバーが占めております。男性もほとんどが商工会であるとかそれから医療の現場の方であるとかそういう各界の代表ということで、年齢は六十代、七十代というのが大変多うございます。
 こういう中で、本当に杵築市民が望む審議はできないということで市長に審議会の委員の一般公募を申し出ましたが、まだ一度も公募になったことはございません。この審議会の委員を公募するということはいろいろ問題もあるかと思いますけれども、やはり意見のある人、思いのある人を一人でも二人でも入れて審議をしていくということは実効を上げるためには大変大切なことではないかなと考えております。
 先ほどからも何回も出ておりますが、議員の数をふやすこと、これは国会議員のレベルならすぐにできると思います。選挙区で今までのような選挙のやり方で女性が出て選挙運動をするということは大変難しゅうございますが、比例区の候補者を政党が男女同数にする、名簿順も男女を交互にすると決めれば、すぐにでも女性議員の数はふえていきます。先ほども出ておりましたが、実際に女性議員の多い北欧ではこの方法で数は確実にふえておりますし、これなら子育てをしている女性でも国会に出ていくことができます。選挙区の方でもそうなればいいと思いますけれども、実際は大変難しい選挙制度になっております。
 その中で、これはトレンドマガジンというのですが、これは主にDIMEという雑誌なんですが、この中にいつも集計が載るんですね。いろんな情報の集計です。その中に今回、タイムリーなことに世界各国の議員、閣僚比率から見る女性進出先進国ランキングというのが載っておりました。これは男性が主に見る雑誌です。三十代、四十代ぐらいの男性が見る雑誌なんですけれども、その中にこういう先進国ランキングというのが載っておりまして、これは下院とか衆議院を中心にした数字ですので若干違うかもしれませんけれども、第一位がスウェーデン、二位がデンマーク、フィンランド、ノルウェー、オランダ、ドイツとずっと続きまして、日本は百三十七番目です。
 これの対象になっているのが、議員の数とそれから内閣内の女性の割合というのが入っているんですけれども、日本の場合は閣僚が一人ということで大変位置は低うございます。この中に書いてあるのは、大阪に全国初の女性知事誕生というのが一番スタートになっておりますが、途中、フィンランドでは史上初の女性大統領が生まれているという記述もあります。それから、クオータ制で女性進出を支えているということも記述をされております。ノルウェーでは公的機関において一方の性が全体の最低四〇%を占めることを定めた法律があるほどという記述もあります。

○会長(石井道子君) 申しわけありませんが、時間が過ぎておりますので、おまとめくださいますか。

○公述人(綿末しのぶ君) はい。
 この中で、一番最後にくくってある言葉があります。いまだクオータ制を導入している主要政党が我が国には一つもないという記述がここには載っております。こういうのが一般の情報ということで出ているということもお知りおきいただければと思っております。
 長くなりましたのでこれでやめますが、最後に少しだけ。
 審議会や議員の候補者は必ずクオータ制をしく、比例区は男女同数にする、それから民法を初め女性や子供、障害のある人などに著しく不利益をもたらす法律は速やかに改正する。これは国会ですぐにできることだと思います。国民の合意を待って法律をつくるとか制度を変えていくということであれば、国民は二十一世紀を待たずに人口が五千万人になってしまう、半減してしまうということがこのままでは起こるのではないかなというふうに思っております。
 大変長くなりまして申しわけありません。

○会長(石井道子君) どうもありがとうございました。
 以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。
 それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○仲道俊哉君 四人の公述人の皆さん方、大変御苦労さまでございます。
 先ほど樽川公述人から、参議院の問題について、あり方についてちょっと御意見がございましたし、影が薄いんじゃないかというような御指摘もございましたが、この調査会がありますのは参議院だけでございまして衆議院には実はございませんし、それから参議院の場合は六年間解散がございませんので、はっきり申しまして衆議院に比べまして政策集団であると。選挙は余り六年間考えないでいいわけですから、しっかりこのような調査会をつくったり、お互い同士で研究をしながら、政策集団として参議院は頑張っております。そのことを一応お知らせしておきたいと思います。どうしてもテレビに映るのが衆議院が多うございまして、マスコミには出ておりませんが、実質的に、真剣に政策集団として頑張っておるということだけ御認識をいただきたいというふうに思います。
 それでは、三井公述人にちょっとお聞きをいたしたいと思います。過日、わざわざ御本を私に御贈呈いただきまして、本当にありがとうございました。大変興味深く拝読させていただいたんです。
 まず、基本的には日本国の憲法下において選挙制度として比例代表制とクオータ制の組み合わせが認められるのかという、そのことについて、憲法の解釈からちょっと問題を詰めていきたいというふうに思います。このことは、今、綿末公述人もクオータ制の組み合わせを主張されて、比例区の候補者を政党が男女同数、名簿順も男女交互に決めれば女性議員はふえるんだ、それは国会ですぐできることじゃないのかというような御意見もあったわけでございますが、その点についてちょっとお聞きいたしたいと思います。
 ちょっとその前に、綿末公述人は私と同じ大分県でございまして、お話をお聞きしまして、市会議員に出ておられましたし、実は杵築もお話だけ聞くと大変悪いところのようでございますけれども、実は南こうせつがわざわざ杵築に住んでおりまして、海岸がありミカンがあり非常に風光明媚なところでございまして、やや封建的なところがございますので、そういうところについては一緒に改革をいたしたいと考えております。
 本論に入りますが、私も女性の議員がふえることについては大賛成です。しかし、あくまでも有権者の意思を尊重し、民意の反映という形で実現すべきであって、選挙制度をいじるという作為的な方法によることについては懐疑の念を実は抱いております。
 公選によらない審議会の委員や高級行政官の割合についてなら今お話しいただいたようなことで理解できるわけですが、忠実に民意を反映させるべき議員の選挙制度において、性別を含めて特定の範疇に属する者の割合が低いからという理由だけで作為的にその者たちの割合をふやす制度を導入することは、有権者の意思の尊重の観点からいっても大いに疑義があるというように思うわけです。
 例えば、幾つか名簿式の比例代表制について問題点を挙げてみますと、一応我が国の有権者はその政党の政策や公約に賛同して投票する立場もありますが、多くは立候補者個人の人柄や信頼性に着目して票を入れる傾向が強いと思います。そこに政党の作成した名簿が介在するために、有権者が直接特定の候補を選ぶことができないという、そういう点があると思います。それからまた、我が国において昨今急増している無党派層の受け皿を奪い、いずれの政党にも属さない、先ほど出ましたが無所属の立候補の機会を奪うのではないか。それから三番目に、ノルウェーのように地方議員にまで比例制を認めることは、より住民に身近な代表という要請に反するのではないかということです。
 これは、昭和五十七年の参議院比例区の拘束名簿式の導入に当たって二点ほど問題になっております。一つは、政党に公的、憲法制度的な役割を与えることは違憲ではないか。二点目が、この制度のもとでは国民は政党の候補者名簿に登載されなければ立候補できず、また反面、国民はその名簿に登載されている候補者以外の者に対しては投票できないことになるわけですが、これは国民の基本的人権に当たる被選挙権また選挙権を侵害し、違憲ではないのかという、この二点がその当時論議をされております。
 また、クオータ制について二点ほど問題点を挙げますと、一つは、政党の政治活動の自由を侵害するおそれがあるのではないか。一つは、先日、二月二十三日の当調査会の参考人質疑におきまして植野妙実子参考人が、我が国において一定割合以上の女性を名簿に登載することを法律で強制する強制式のクオータ制を採用することは憲法違反の疑いがある旨の御指摘を実はいたしております。といったような問題がありまして、憲法を改正しない限り困難なことと思うのであります。
 特に、地方議員についていえば、憲法第九十三条で、その議会の議員は、その地方公共団体の住民が直接選挙をすると規定されております。地方議員はより住民に身近な存在でなければならないこと、無所属の者でも立候補できなければならないことなどからいって、政党作成の名簿を前提とする比例代表制やクオータ制については問題があると思うわけでございますけれども、この点について公述人の御意見をお伺いいたしたいというふうに思います。

○公述人(三井マリ子君) ノルウェーのクオータ制は、選挙制度の名簿についてのクオータ制は法的に規定がありません。ノルウェーの場合は男女平等法二十一条によりまして、男女平等法につきましては資料の方で若干要約してありますけれども、「比べてみよう」というところに「日本とノルウェーの「男女平等法」」というのがあるんですが、そのクオータ制というところで、二十一条で、いわゆる公的な委員会や審議会は一方の性が四〇%を下回ってはならないというふうに明記されていまして、法的な拘束というものは、政党に対してのクオータ制はありません。
 政党の方は、じゃなぜ候補者の名簿に四〇%以上、しかも男女交互の名簿、または女男交互でしているかといいますと、政党ごとに綱領を持っておりまして、その綱領の中でそのようなクオータ制を明確に規定していて、それを直ちに実行しているということが挙げられます。しかし、政党を規制してはいませんので、現在国会に議席を送っている政党は七党あるんですけれども、そのうちの五つの政党がはっきりとそういうものを持っているのであって、持っていない政党もあります。ですから、いつも四〇%以上にはなっていないという現実があります。
 ただ、議員お申し越しのクオータ制を、じゃ憲法違反ではないかというようなあたりは、今フランスと韓国でそのような法律が規定されていますので、そちらの方でむしろ調査検討すべきだというふうに思います。フランス、韓国の法律は最近のことでありますし、私自身はそれについての資料を持っておりませんので、そちらの方でよろしくお願いいたします。
 それからもう一点、地方議員に対しての拘束名簿比例制はどうなのかという御疑念がございましたけれども、例えばノルウェーに限らず北欧の多くの国々は、地方議会の名簿はもちろん比例代表制なんですが、その名簿を有権者が投票に際して変更することができる。名簿の順位を変更したり、例えば三井が嫌だったらば三井のかわりに中田さんを書くことができるというふうな、そういう名簿の変更権というものを選挙法で規定しておりまして、そのようなことを考えますと、非常に融通性があるといいますか、有権者の意思をまたさらに政党を超えたところに反映しているのではないかと思います。
 でも、最終的に申し上げますと、やはりクオータ制というのは暫定的に女性をバックアップする特別措置なんですね。その暫定的な特別措置というのは、日本も批准をしております性差別撤廃条約に明記されておりまして、それを守るべき義務が私ども日本にあると思いますので、暫定的特別措置としてのクオータ制というものを、政党に対してではなくて、先ほどのノルウェー、フィンランドのような公的な審議会への明言という形ではできるというふうに思います。

○仲道俊哉君 あと一分しかありませんので、実は第二問目でその名簿変更権について質問しようと思っておったんですが、この点についても一応問題点は私なりにあったんですが、またいつか個人的にでもさせていただきたいと思います。
 実は今の問題につきまして、私は、やはり何か憲法違反にならないような形で日本でも選挙制度が改善できないかということで、この調査会でもぜひ考えたいと思いますが、例えば衆議院議員を代議士と言い、参議院議員は代議士と言わないですね。それはなぜかというところなんです。ですから、私は、衆議院議員というのはその地域からの代表であり、参議院というのは、そういう地域の代表というより、一つは衆議院のチェック機関であると同時にいろいろな意味での、今言いましたような比例なりクオータ制なり参議院の選挙制度についてはそれなりの考え方を持っておりますけれども、ちょっと時間がありませんので、一応そういうことで終わらせていただきます。ありがとうございました。

○小宮山洋子君 四人の皆様、いろいろな御意見ありがとうございました。
 私自身もおととしまでは議員ではなくて、外でNGOでせっせとクオータ制を導入せよということを言っていた側なのですけれども、中に入りますとなかなか外で言うほど簡単ではないという実感を今持っております。ですから、中と外といい形で連携をとって、確かに樽川さんもおっしゃいましたように、行動することの中で一つずつ積み上げていかなきゃというふうに思っております。
 そうした中で、やはり女性議員を一人でもふやすためには、皆さんのお話にもありました選挙制度をどうするか。政権交代可能なためには小選挙区の方がいいという考え方も、特に男性の中にはあったりいたしますけれども、やっぱり多くの意見をきちんと反映するという意味では、現在の衆議院の二十五人の女性の中でも十八人が比例で選ばれているということからもわかるように、やはり女性をきちんと位置づけていくためには私は比例は欠かせないと思っております。そのあたりの選挙制度の問題、それから中田さんがおっしゃいました選挙の方法の問題、それから政党の方でどう積極的に取り組むか。ただ、政党の中は、今現在圧倒的に多い男性の議員が、自分たちが譲らなきゃいけないということに現実問題としてなるわけですから、そこをどういう説得力を持って進めていくかというのが非常に難しいというのが現状です。
 そうした中で、そうした選挙制度、政党の取り組み、選挙の方法、ここをこうすればもっと女性がふえるのにという思いをお一人ずつちょっと手短にポイントをおっしゃっていただければと思います。中田さんからよろしくお願いします。

○公述人(中田慶子君) すごく難しいですね。ここをこうすれば女性議員がふえるということですが、私は先ほど申しましたように、本当に小さなところでの選挙の方法そのものはやっぱり変えなければならない。
 それから、基本的な男女共同参画、先ほども公述の中で申し上げましたけれども、いろんな場にまず女性が入っていくためのハードルを低くしなければならない。ほかの方からも出ておりますが、例えば商工会議所のメンバーに女性がふえること、細かく言えば、PTA会長に女性がふえること、農業者団体のリーダーの中に女性がふえること、そういういろいろな出身母体、政治家が出せるような出身母体の一つ一つの団体の中にたくさん女性がふえていかなければそれはやっぱり無理なんだというふうに思います。そのこと自体ができない現状がとっても今の日本で難しいことなんだというふうに思っております。
 ですから、私たちがやらなければならないことは、私も二人の子供がおりますけれども、そういう子育ての段階、そして多分夫選びの段階から女性が社会参画しやすいような素地づくりを、まず自分の家庭、地域、社会、そして政治の段階にまで広げていかなければならない。学校教育、社会教育、すべての面でそれをボトムアップしていかなければならないというふうに思っております。
 以上です。

○公述人(三井マリ子君) 現実的なことを考えますとやはり選挙制度というのはもっと時間がかかると思いますので、現実的なところでできそうなところを一点だけ申し上げます。
 それは、綿末さんがおっしゃったような、審議会へのクオータ制というか、審議会の中にやはり女性委員をふやしていくということだと思います。女性委員をふやすのは審議会の方は今もやっておりますので割と可能性があると思います。
 審議会の中に普通の市民、女性の人が入ってきますと、今までちっとも、やはり政治というのは女性にとってはとっても遠いわけなんですね。それが審議会の中へ入っていきますと、前もって行政のいろいろな案が出されたりプランが出されたりするものを見て一緒に討議することを覚えたりして、そしてやはり行政とか議会というのが身近になっていくんですね。そうしてきますと、あなた議員にならない、どう今度候補にならないなんて言われたときに、以前よりもはるかにそれが、うん、じゃやってみようかなというふうになってくると思います。

○公述人(樽川通子君) 制度的にというのは非常に難しい問題で、即お答えするというのに迷うんですけれども、強いて制度的ということでいえば、いい悪いはともあれ、先ほど来三井さんたちがおっしゃるように、暫定的にはクオータ制みたいなのをまず導入するということも一つの方法かなというふうに考えないでもございません。
 それからもう一つは、私が申し上げたように、出る努力、出る勇気、それを出す努力、その女性の意識さえ改革できれば、私は男性とか女性とかそういうこと以前にやっぱり役に立つ議員というのはどういうんだろうという感覚を言えば、今いらっしゃる国会議員の先生方が大いに、女性が参議院にこれだけふえて、そしてそれだけの私どもに喜びとそして希望を与えてくださったんだということをしっかりと見せていただいて、それを受けて私どもも出す努力、出る努力をしていきたい、かように考えています。

○公述人(綿末しのぶ君) 先ほども言いましたけれども、もう最初にやれることというのは、政党の比例区の中に女性をいかにたくさん入れていくかというのが実効が上がるまず第一だと思います。
 比例の名簿ということにつきましては、どういうふうに政党の中で順位が決まっていくのかとか、どういう人が候補者として挙がってくるかということには、有権者が意見を差し挟むとか有権者の意向によって順位が変わるということは現在の場合はないわけですね。それを思えば、政党の中で内規として、そういうふうなことを私たちの政党はしていきますということを打ち出していくというのが一番実効のある方法ではないかなと思います。

○小宮山洋子君 あと五分ほどしか私の持ち時間がないんですけれども。
 例えば、生活者ネットワークで交代制で女性の議員が出ていらっしゃるという方法、それから三井さんがおっしゃったような、99女性と政治キャンペーンというのは、私も、女性議員ゼロの県議会をなくそうというので、十の県議会は女性議員ができたのに、モグラたたきみたいなものでまた三つない県が出てきちゃったみたいな繰り返しではありますけれども、やはり今ごく普通の女性が出られる、先ほど樽川さんおっしゃったような、勇気を持って出る人があって、その人が結構今までとは違う手法で当選をするということも特に地方議会の場合はあるわけです。そのあたりにも一つこれから女性がふえていくヒントがあるんじゃないかと思うんです。
 二分ずつぐらいしか時間がないんですが、中田さんと三井さんから、ちょっとそのあたりを体験も含めて一言アドバイスいただければと思います。

○公述人(中田慶子君) 私は生活者ネットワークというグループで活動しておりますが、今、小宮山議員からおっしゃっていただいたように、私たちの場合はローテーションというシステムで議員経験者をふやすということを大変重要視しております。
 議員の経歴は長い方がいいという経験重視の考え方もございますが、私たちはそもそも母体の数をふやしていきたい。そして、数がふえていけば政治意識の高い女性たちが地域にたくさん生まれることになります。そういうことをまず第一に考えたい。
 そしてまた、生活者ネットワークのルールというのは、ローテーションすることで議員でいただく報酬も地域活動で共有していくということをみんなのルールにしております。そのことも地域でのみんなの政治力を高めるために大変役立っているわけです。先ほど申し上げましたいろいろな調査もこういう議員報酬を原資といたしましてできるわけで、やはり女性が地域で、しかも普通の女性が何かをやるというときにまず先立つものがお金なわけですから、そういう意味でも私たちはこういうローテーションのシステムで議員をふやしていき、その議員の報酬を最大限市民のために活用していくという方法が大変有効だと思っております。
 限界もあると思いますが、まず数をふやしていく、政治参加する女性をふやしていきたいと私たちは思っております。

○公述人(三井マリ子君) 小宮山さんがメディアの出身だから申し上げるわけじゃないんですけれども、マスコミの見方といいますか、マスコミが非常にポジティブに紹介して女性議員を出すということ、出たらよくなるんだみたいなことをしてくださることが本当に、全くそれまで何十年間も女性候補者すら出ていなかった、選挙もなかったような、日本にはたくさんそういう地方自治体があるんですけれども、そういうところの中で、例えば99女性と政治キャンペーンなどをマスコミが積極的に報道してくれたおかげで、迷っていた女性たちには決意を促したり、運動してきた女たちは脈のありそうな人たちに出なさいよみたいに、ぽんと肩を押すような結果になったというふうに思います。
 ですから、マスメディアのポジティブな報道というものがいかに大切かということをつけ加えます。

○小宮山洋子君 今、政党の中でも、ここにいるほかの議員もそうだと思いますけれども、女性たちが何とか女性の議員をふやそうということでそれぞれ努力していまして、私たちも女性議員の、ではクオータにしようと言いますとどこに女がいるんだという話になりますから、女性をまず公募して、その人を候補者につくって、お金がないから支援する基金も出してというようなことをやっていますけれども、特に野党の場合はメディアがそこをきちんととらえないということもありましてニュースづくりもなかなか苦労をするところなんです。
 ぜひ中の方でも、この共生調査会はいろんな意味で、今暴力のことも取り組んでいますし、女性の政治参画も取り組んでいるので、これは各党、それから外の方との連携の努力も必要ですが、この調査会としても、各党が横並びでやらないとなかなかふえていかないと思いますので、ぜひこういう皆さんの御提言を受けながらいい方法をこの政治参画についても出していければというふうに思います。
 ありがとうございました。

○大森礼子君 公明党・改革クラブの大森礼子です。きょうは大変ありがとうございます。
 いわゆる女性問題といいますか、いろんな差別的取り扱いとか、いろんな分野で問題はありますけれども、ではこれをどう解決したらいいのか。私が思うのは女性議員がふえることだと思っております。
 極端な例、議会の中で女性が過半数を占めましたら、もうやりたい放題と言ったら言い方は悪いんですけれども、どんな政策も決定できるわけですから、これが一番手っ取り早いのではないか。そうすると少子化対策、これはもう大事だけれども、これも緊急の課題だろうと、こういうふうに考えております。
 今、小宮山委員の方が横並びでとおっしゃったんですけれども、実は去年、児童買春、児童ポルノという法律ができましたけれども、このとき超党派という形でありました。男性議員ももちろん協力してくださいましたけれども、女性議員が本当に中心となって一生懸命やったと。それで、こういう動きというのはとても大事ではないか。私は、人権問題とか女性問題とか、そこら辺はもう党派の別はないことではないかというふうに思っております。
 それで、実はまだ、どこまで言っていいのかわかりませんが、要するにこのまず共生社会から、やはり党派を超えてまず女性が団結してと思っているんですね。やはり外から国民の皆さんが見て、要するに、今国会がおもしろい、今参議院がおもしろい、今女性議員がおもしろいという、これもちろんパフォーマンスで終わってはいけないわけですが、やはりこういうこともしていって、そして今本当にいろんな運動をしてこられて本当にもう私感激したんですけれども、そういうふうに一緒にやっぱり力を合わせ連帯していく中で大きなうねりが出てくるのではないかなというふうに思っております。私たちも頑張ります。
 それで、私はもう女性議員をどういうふうにしたらふやせるかということに絞ってお尋ねします。
 いろんな問題がありますと、議論でも総論はこうあるべきだというのがあるんですが、大事なのは各論が抜けてくる、具体的に何をどうしたらいいかと。それで、私はもうできるところから、具体的にいいと思ったら一つずつ確実にやっていくと、そのうちに流れができてくるのではないかなというふうに思っております。
 それで、女性議員をどうふやしていくかと。運動論の点では、今のネットの方も大学生対象の政治スクール、とてもおもしろい試みだと思いますし、それから「しなの」スクールの話も伺いました。それから、女性連帯基金でも奨励賞を出しておられる。それから、中でエンパワーメント講座と珠子英語ゼミなんというのがありまして、非常にきめの細かい取り組みをしておられる。こういうことも、私たちも自分の政党とかいろんな団体と組んでやれることかなと思います。
 それで、質問なのですけれども、先ほど制度面からすると答えるのが非常に難しいというお答えだったのですが、中田公述人と三井公述人が議員としての経験がおありですね。

○会長(石井道子君) 全員。

○公述人(中田慶子君) たまたま全員です。

○大森礼子君 済みません。じゃ、よかった。ちょっと聞いていなくて済みません。
 実は今のは国政レベルでありますが、大事なことは地方議会でいかに女性議員がふえてくるか。それは私、やっぱり子供を育てながらでも若い方がふえてほしいなと、こういうふうに思うんです。それで、今の中で自分が議員をやっていて非常に障害となったという、生活をしていく上でと、実はこんなところから除去していくことも必要なことかなと思いますので、そこら辺、こういうところをこういうふうに改善したら非常に若い女性も働きやすくなるという、こういう点を簡単で結構ですから、お一人ずつお話しいただければと思います。

○公述人(中田慶子君) まず、地方議会でふえるということが本当に大事なことだと思います。それからまた国会、それから県議会レベルの人材もふえていくんだと思うんです。
 私が二期八年やっていて思いましたのは、非常に議員が忙し過ぎるということですね。特に子育て真っ最中の世代の女性が議員になることは、本当に大変です。朝出て何時に帰れるかわからないという生活を八年間やりまして、非常にこれはやはり特殊な人でないとやれない世界だと思われるのではないか。でも、私は夫の協力、子供たちの協力でそれを乗り切ってきましたし、また近所の人たちの協力で乗り切ってきました。でも、それも私がある意味では恵まれていたからこそだというふうに思っております。
 また、今、私の府中市議会でも若い方が当選してすぐ赤ちゃんを産んだりされていまして、その結果、哺乳室などが整備されてまいりましたりして、少しずつ条件は整備されておりますが、やはり若い女性が出にくいというのはこの忙しさ、そして不規則さというのが非常にネックになっているんだというふうに思うんです。
 それから、お金の問題もございます。私たちは選挙資金は本人は一銭も出さない、カンパとボランティアで選挙を行うということを徹底してやっておりますのでその辺は心配ないんですが、やはり先ほど私が最初の公述で申しましたように、選挙にどうしてもお金がかかる。ですから、公的補助の仕組みをもう少し、ただ選挙カーの補助とかそういうことではなくて、もうちょっとメディアを使ったり印刷物の件で支援をしていただくとかいうことが必要でしょう。
 それから、やっぱりヨーロッパの議会のようにいろいろな職業の人が入れるような地方議会でなければ、結局非常に特殊な自営業の男性の方ですとか、そういう方に限られてしまう。男性の方もいろんな方に入っていただきたいと私は思っておりまして、なかなかサラリーマンを全くやめてしまわなければ立候補すらできない。また、公務員の方には非常に男女ともにいい人材がいますが、そういう方は公務員をやめなければ立候補できないし、立候補してしまうと公務員には戻れない、落ちても戻れませんよね。
 そういう意味で、非常にそういう面での制度の改革、だれでもが議会に進出でき、活動ができ、それが常人とは異なった生活スタイルではなくてもできるという、そういう地方議会の運営のあり方を私たち自身も提案していきたいですが、全体の国の流れとしても変えていくべきだというふうに思っております。

○大森礼子君 では、三井さん、お願いできますでしょうか。

○公述人(三井マリ子君) まさにそのとおりで、私も教育公務員で、都立駒場高校の教員だったんですけれども、選挙に出たときにやめざるを得なかったのです。やっぱり若い女性にとっては、特に仕事をやめてもう一度戻れないといいますか、そういう状態が最も障害要因となっていると思います。それが第一点。
 それから二点目は、私が思いますのに、用語というか言葉というか、この政治文化そのものですね。大変何というか近寄りにくいというか、ふだん着じゃないわけなんですね。都議会にいたとき、私は都議会言葉の通訳者になりたいなんて言ったんですけれども、やっぱり本当にもうちょっとわかりやすいふだん着の言葉に議会のさまざまなことがされていかないと、若い女性はもちろん、男性もそうだと思うんですけれども、議員になろうというふうな意欲はやっぱり薄れるんじゃないかと思います。

○大森礼子君 済みません、すべての方にお尋ねしたのでは、ちょっと時間の関係で。
 もう一点質問をさせていただきたいのですが、選挙制度の問題もあります。
 ただ、定数削減ということで比例区だけ五十削減というのは、私はまず党内で意見を言う場合にこれは反対だと、女性議員が少なくなるからということです。ただ、定数削減の流れが一たん国会の中でできた以上、うちの党としては小選挙区から三十、比例が二十、そして最後に二十だけ残ったわけで、私は小選挙区も減らすべきだというふうに思っております。ただ、ここのところはまずまたすぐにもとに戻すことはできないのかなという気がするんです。
 それで、別の選挙につきまして、戸別訪問なんですけれども、私はこれから女性がどのレベルでも進出していくためには、まずお金がないことを前提としますと、やはり支持している方と一緒に小まめに対話をしていくという形がある、そして納得していただく、これは非常に大事な手段だろうというふうに思います。
 また、私は個人的にはもう戸別訪問、いろんな弊害とか、あるいはもう時代おくれと思っていますので、これからは本当に戸別訪問というのを認めるべきであろう、そしてそのことは女性が進出することについて非常に手助けになるのではないかと思っております。
 この点について四名の方に、もう簡単な返事だけで結構です。どのように思われるか、戸別訪問禁止のままでよいか、あるいは解禁すべきだと、この結論だけ教えていただけませんでしょうか。
 済みません、中田さんから順番にお願いいたします。

○会長(石井道子君) あと二分しかありませんので、ほんのわずかでございますけれども、よろしくお願いいたします。

○公述人(中田慶子君) 公述書にも書いておりますが、私はぜひ解禁すべきだというふうに思っております。

○公述人(三井マリ子君) 私も賛成です。

○公述人(樽川通子君) 私も賛成でございます。

○公述人(綿末しのぶ君) もうぜひそうしていただきたいと思います。

○大森礼子君 いずれこれも国会の方でもう議論すべきときになっているのではないかなというふうに思います。
 一分ほど早いんですけれども、質問が終わりましたので終わります。きょうは本当にいろんなたくさんのアイディアをいただきました。私も一つ一つやれるところからしていきたいと思います。
 私も党の女性局長をやっているんですけれども、まず党の中において闘わなくてはいけないだろう。闘う女性局長というのを目指して党内においての男性の意識を変えるように、あるいは女性のいい候補者を見つけるというのも仕事であると思いますので、一生懸命頑張ってまいります。
 きょうはありがとうございました。

○八田ひろ子君 日本共産党の八田ひろ子でございます。
 きょうは四人の公述人の皆さんに本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 前半の三人の公述人の皆さんも含めて、女性議員の進出にかかわって、政党に対する御要望というんですか、政党がもっと積極的に取り組むべきだとか、あるいは努力をするべきだというような御意見もいただいているんですが、実は私も二十五年前に愛知県の岡崎という町の市会議員をやらせていただいて、その後、県会議員も体験をさせていただきました。女性なものですから、議員をやっておるときに三人目の出産とか夫の両親の看護や介護も体験させていただいて、そういういろんな皆さんにサポートしていただくというありがたさも体験をしてきたわけなんです。
 やっぱり女性が政治の場に直接出るということの大切さを自分自身も本当にそう思っていますし、私どもの政党はクオータ制はとっておりませんが、実際には党の幹部も、党員の構成比は大体女性が四割ぐらいいるものですから、女性を積極的に登用しようという努力はしております。また、議員も、私が市会議員になったときは女性議員は開闢以来初めてだと言われた時代だったんですけれども、今はふえていますし、共産党も三人しか議員いないんですけれども、そのうち二人は女性議員なんですね。
 これは私の住んでいるところの特有じゃなくて、例えば茨城の県会議員は共産党は三人しかいないけれども三人とも女性とか、あと上尾なんかだと共産党の議員が六人いて五人が女性とか、そういうことで、無論、女性だからたくさん出そうというふうにしているんじゃなくて、やっぱり地域の皆さんとかそういうことで女性議員をふやしてきています。
 ですから、衆参合わせて国会議員も政党の中では一番たくさん女性を出してはいるわけなんですけれども、でも、やっぱり女性が参画することは民主主義の上から当然ですから、そういう意味で、先ほどからの御論議の中で、比例代表は女性もたくさん出られる、いろんな意見がたくさん反映できるということで、私どもは比例代表が非常に積極的な部分があるからこれを拡大していくべきだというふうに思っています。それと全く反対に、小選挙区というのは一人なものですから、先ほども御紹介あったように、衆議院の小選挙区での女性の議員というのは野党は一人しか出ていないんですね、小選挙区三百ある中で。七人いらっしゃる中で五人が与党の方で、一人が無所属ということなんですけれども。
 そういう選挙制度の問題も、やっぱり国会の中は政党間での議論というのも多いものですから、政党に対する皆さん方の働きかけというんですか、そういうものをどういうふうにお考えになっているのか。
 やっぱり国民が、先ほどちょっと外国の例をおっしゃったんですけれども、女性をきちんと評価できる、あるいは抜てきできる、そういう政党もどんどんと大きくしていくというのが私は大事だというふうに思っているんです。だから、政党を大いに叱咤激励していただく、そしてまた無党派からも出していただくというのが大事だと思うんですけれども、そういう面では四人の皆さんは地域でいろんな御活動をされているんですが、どうなのかなというのをまず最初に伺いたいなと思います。

○公述人(中田慶子君) 政党に対してどういうふうな働きかけを地域でしているかという御質問と考えてよろしいんでしょうか。
 私たちは無党派と言われるグループです。政党に対してはその時々に、何かテーマがあったときにいろいろ、それこそ地域で働きかけをしておりますが、不思議なもので、やはり政党が違うと本当に出てくる結論が違うんだなというのはすごく感じるところです。でも、あきらめないで、何か問題があるたびに、例えば陳情、請願で出てきたことですとかそれから議会の中で一緒に解決しなければいけないことについては、本当にふだんからいろんなお話し合いをしながら協力していくようにしております。
 ただ、やっぱり政党との関係といいますと、選挙のときにどうしても敵味方になってしまうのが実情で、そうしますと、なかなか日常的に本当におつき合いをしていくというのがすごく難しいんだなというふうに思っているんです。
 その辺がお互いの政党の方同士でもきっと難しいんだろうなと思いながら無党派の立場で見ているんですけれども、本来は、自分たちにとって本当の望ましい社会をつくっていくための活動をみんながしているわけですから、もっともっと政党間の壁をふだんは取り払いながら、選挙のときはそれぞれの主張がぶつかり合ってまたよりよいものを目指せばいいわけですから、日常的にもう少し政党の方たちというのが見えるような形で地域活動をしていただきたいなというふうに思うことが私は多いです。
 私たちとしては、いろんな政党の方たちになるべく働きかけながら、この問題についてはこの党の方とお話をするとか、そういう形で日常活動はしております。

○公述人(三井マリ子君) 政党支持の自由はだれにでもあるもので、法でも保障されています。ですから、私などは、団体はすべて超党派ということを旨としていろいろ設立したり、その活動をしているわけなんです。近所とかいろいろ私も講演などで呼ばれて政党と女性議員の躍進との関係などをよく聞かれるんですけれども、やはり私の場合ははっきりしているわけなんです、この政党は私のイデオロギーとは合わないから嫌いとか、この党は好きとか。でも、政党の支持は自由なんだ、だけれども、現在の日本の社会においては、どの政党であろうとも女性議員を出してほしいという形でやっていっています。

○公述人(樽川通子君) 私はいわゆる市町村議員の立場しか体験がございませんけれども、地域の議会の中では余り政党ということを必要と感じませんでした。
 ということは、実際に議会活動をしている中では、市町村の場合はどちらかといえば住民の声を即伝えるという立場にもありますので、是は是、非は非というような是々非々を貫けるという立場の方が、政党によってこれを拒否するんだ、政党の中からこれを支持するんだということよりも、活動はしやすいというふうに私自身は受けとめてまいりました。

○公述人(綿末しのぶ君) 今言われたんですけれども、地域議会では政党色を出して活動しているという方はほんの少数でありまして、ほとんどの方が選挙のとき、それも国政選挙のときにその色が出るぐらいだと思っております。
 一つ、政党を支えている下部組織と言っていいのかどうかわかりませんけれども、組合とか労働組合とか、そういう組織の中の幹部、党の幹部もそうですが、そういう幹部というのはほとんどが男性ばかりで、下支えをするであろうそういう場面に女性の色が今ほとんど見えないのが現実ではないかなと思っております。そこにもう少し女性の色が出てくれば、またそういう部門も変わっていくのではないかなという気はしております。

○八田ひろ子君 ありがとうございました。
 先ほど同僚議員からもお話があったように、国会の中では超党派で、法律をすべての会派で通したり相談をしたりというのは実際には行っていますので、そういう中で、女性の問題を女性議員が中心的にするというのは日本だけでなくて、イタリアなんかで伺っても、やっぱり女性議員が団結して、党派を超えてつくってやっていくというのなんかとても力強いなという話を聞いてきました。
 あと三分ぐらいしかございませんので、申しわけないんですが、三井公述人と中田公述人に、先ほど労働問題のお話がちょっとありまして、三井公述人のメモの方にあったんですけれども、今、綿末公述人もおっしゃったんですけれども、いろんな地域あるいはいろんな分野で女性が進出をしていくというものの基本になるのは経済的な自立、社会的自立があると思います。
 そういう中で、労働の問題、男性も女性もともに人間らしく働くことができる、そういうことがすごく大事で、実際にヨーロッパなんかでは雇用のルールなんかをしっかりとつくられているんですが、今の日本ではそれが法制化されていません。私どもは、解雇規制法と労働者保護法、それからサービス残業を根絶する特別措置法というのを今の国会に出して、こういうものを男女平等の基本として働かされ方というもののルールをつくっていきたいというふうに思いますけれども、そういう問題について、三井公述人と中田公述人に、最後に、二分ぐらいしかなくて申しわけないんですけれども、お願いいたします。

○公述人(中田慶子君) 今おっしゃっていただいた労働問題、とても基本だと思います。私は、今の日本で、男性の長時間労働、そしてそれを支える妻の存在という、非常にいびつな形の労働現場になっていると思います。それを解消するためには、同一価値労働同一賃金という基本的な考えの導入が絶対必要で、それとパート労働に対する社会保障、年金とか健康保険それから雇用保険、パート労働がどんなに短くても、ある程度のそういう社会保障を実現していくことで結果的には男女の役割分担といいますか、労働の中でのワークシェアリングというものが実現していくのではないか。そのことによって、男性と女性が地域活動もしながら、仕事もしながら、そして家事や子育てをともに担う、そういう社会が実現するのではないか。それがあって初めて女性もいろいろな形で社会参加ができていくのではないかというふうに思っております。

○公述人(三井マリ子君) ほとんど中田さんと同じなんですけれども、女性の場合は特にパート労働が多いわけなんです。それで、そのパート労働のあり方というものが、日本の場合、ヨーロッパのパートで働いている人たちとの余りの労働条件の差に本当にびっくりするわけなんです。やはり女性がほとんどを占めているパート労働の労働条件の改善ということが必須だと思います。それが多くの女性たちを生き生きと働かせ、そしてまたその土台の上に政治参画ということも進められていくのではないかと思います。

○八田ひろ子君 ありがとうございました。

○三重野栄子君 社民党の三重野栄子でございます。
 本日はあちこちからお忙しいのにおいでくださって、私は福岡なもので、九州からもおいでくださいまして、どうもありがとうございました。
 それぞれ御自身で御活動なさったところからのそもそものお話から伺いまして、しかも具体的なことをたくさん伺って、本当に力強く感じたところでございます。もっともっと伺いたいんですが、私の時間は十二分しかございませんので、みんなですけれども。
 今、選挙制度の法案が出ているんですけれども、衆議院は決まりまして、参議院で審議になるんですけれども、いやもう少し早く、こんなに皆さん方が選挙のことで御意見があるわけですから、女性だけで、共生社会だけでも選挙の問題についてもっと議論をして、そしてそれを各党に反映をすればいい法案ができたかなということを思ったりしたわけです。とは言いながら、ここに集まるとそれぞれの党を背負ってきているということもありまして、御意見もあろうかと思いますけれども、しかし、先ほども出たんですけれども、いわゆる超党派の、女性議員は時々集まりましてそれぞれの課題について議論をしているわけですけれども、そういう問題もこれからもっとやらなくてはいけないかなというふうに伺ったところです。
 ところで、あと二分ということで、お一人二分ずついただくと八分ですから、言い足りなかったこと、これはぜひというところを教えていただければと思います。
 審議会委員のメンバーの問題は易しいようでなかなか難しいんです。私が議運の理事をやっているときに、審議会委員のメンバーがずっと来るんですけれども、男性ばかりずらずらと並んでいますから、いやぜひ女性は一人というふうに言いながら、少しずつ女性はふえてきておりますけれども、なかなか過半数まで持っていくというのは難しいことでございます。それと、私の党はクオータ制を一定期間ということでやっておりますけれども、参議院の比例区の場合、男性、女性、男性、女性、三年後には女性、男性、その順序も大変なんです、なかなか決めるというのは、いざとなりますと。
 それでございますけれども、積極的な御意見をいただいて、これからの活動に資したい、生かしたいと思いますので、二分ぐらいずつ、どうぞ中田さんの方からお願いします。

○公述人(中田慶子君) たくさんあるんですけれども、一つは年金制度の改革について、これからも国会で何年かかけて審議されていくとは思うんですけれども、今の年金制度がどうしても専業主婦優遇策で、それは無年金者を救うということで始まったことであれ、現状とは著しく合わなくなっていること、これをぜひ三号被保険者の立場を考えて改正をしていただきたい。私たちは払いたいと思っておりますし、変えたいと思っていますし、その辺をぜひ変えていただきたいと思うことが一つです。
 それから、私は調査ということをきょうあえて強調して申しました。それはなぜかといいますと、いろんな調査が本当に山のように国でも地方自治体もなされますが、私たちが願っているような調査内容が盛り込まれている調査というのは非常に少ないんです。ですから、私たちは必死で自分たちで、ない知恵を絞って、素人が集まって、でも素人のパワーというのは恐ろしいものがありまして、結構おもしろい調査がたくさんできていきます。でも、お金がない、知恵がない私たちでやるよりも、これは自治体なり国なりの力と一緒に市民が合わせてやればもっとおもしろい内容のいい調査ができていくと思うんです。
 そういうところでぜひ何かそういう手法というものを考えていただきたい。希望でございます。

○公述人(三井マリ子君) 私は、テーマは幾つもありますけれども、それではなくて、この共生社会に関する調査会というこのシステムそのものが非常に大切な、今の男女共生社会を築くに当たって、こういうシステムそのものにもっと予算をつけられ、これが常任委員会みたいになっていくようなことを望みたいなというふうに思います。
 幾つかそれに関連するような御発言も委員の方からおっしゃっていましたけれども、発言を伺いながら、EUに、いろいろな反対もありながら女性の権利委員会という常任委員会が設立されて、一たんは消え行く運命にありつつまた現在もあるんですけれども、そのEU議会における女性の権利委員会が果たした役割のことを思い出しました。
 やはりそこはちょっとマイナーな委員会のように思われてはいたんですけれども、戦争と性暴力の問題などを初めて取り上げまして、戦争における強姦の問題なども戦争犯罪だというような形で持っていったり、女性に対する暴力の問題を政治課題にして各ヨーロッパに広め、今現在、日本でも政治課題になっていますけれども、そういう形で非常に大きな政治の流れを新しくつくっていったシステムなんです。
 そういう意味で、私はこの共生社会に関する調査会の皆様が超党派で何かをやっていくことの意義というものもあるのではないかと思いますし、さらにそれを整備していくために、予算上はどうなっているかわかりませんけれども、よりここが充実していくような方向でぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

○公述人(樽川通子君) 一つの要望みたいな形で申し上げれば、こんな立派な調査会がありますので、この中で先ほど私が申し上げたような、例えば女性センターみたいなものが大変いっぱいできているわけですけれども、女性センターあるいは公民館あるいは学校教育というような中で、一体政治というのはどういう取り組みをしているのか、そんな実態みたいなものを調査していただいて、そして私どもに教えていただければありがたいなという、これは一つの要望でございます。
 それから、女性議員をふやすために何をどうしたらいいのかという、そのことからいえば、私は前半を後ろの傍聴席でちょっと聞かせていただいていたんですけれども、山口公述人が、婦人会が非常に大きな力を持って、いろいろな女性議員を地域の中で出してきたということに触れた部分がございます。
 私は、この際、どうしても一つだけ皆様に御報告しておきたいのは、昭和二十一年に婦人会というのができたんです。今、婦人会は皆様御存じのように非常に力を失って、会員の減少とか、かつての力というのはないんですけれども、長野県では昭和二十一年の設立と同時に非常にすぐれた指導者がいて、会長が、郡市会長は全員立候補しろと、こういうような号令をかけたといういきさつがあるんです。これはきちんと歴史に残っておりますけれども、昭和二十六年の第二回目だったでしょうか、そのときには長野県下百数十名の女性が立候補して、そして七十数名が当選したというこの歴史が長野県連合婦人会の歴史の中にあるんです。
 したがって、私は、婦人会は今申し上げたように力はないけれども、女性団体連絡協議会とかそれぞれの団体がいっぱいあるし、あるいは女性たちが非常に今羽ばたいているならば、本当に女性たちが出そうということになればそのぐらいの力を出せるんじゃないか。そういう底に眠っているパワーを一体だれが引き出すことができるか、もう一回引き出してみなければいけないんじゃないかというようなこともこの機会に一応御報告を申し上げたい。
 以上でございます。

○公述人(綿末しのぶ君) 最初にちょっと触れられましたけれども、専業主婦の年金と税金、この問題はぜひ早急に解決をお願いしたいと思います。
 百三万円の壁というのがやはり女性労働者に大きな壁をつくっていると思っております。大分に大きな企業が進出をしてまいりまして、そのときの総務課長さんが、結局、女性の百三万円の安い労働力を求めてここに来ましたということを公然とおっしゃったんです。それを聞いたときは非常に腹が立ちました。企業というのはそういうふうに女性の百三万円というのを考えているということをよくよくお考えいただいて、交通事故で十歳の子供が亡くなったときに、もう十歳にして男の子と女の子の命の値段に差があるんです。これは非常に腹立たしいことです。
 ぜひ、こういうことを解決していっていただきたいと思います。

○三重野栄子君 どうもありがとうございました。またさらに勇気が出た感じでございます。
 いろいろ御希望がございました部分も、それぞれ私も心に深くいただきまして、何らかの形でぜひとも生かしていきたいというふうに思います。それぞれ年金の問題それから調査の仕方とかいうのは本当にそうだなと思いました。
 参議院では、子ども国会をことしで二回目をやるんですけれども、やはり幼いときから政治の課題をどういうふうに、政治と言わなくても社会の仕組みだとかそういうものをどうやって教育していくかということは非常に重要なことだろうと思います。先ほど樽川さんがおっしゃいました女性センターとか公民館とか学校教育だとか、そこでどういう政治の取り組みをやっているかというのは、やはり今調査しなければならない本当に重要な課題だというふうに思います。
 本当にいろいろありがとうございました。

○堂本暁子君 きょうは本当にお忙しいところ、ありがとうございました。
 最後なので感想を言わせていただくと、東京都の都議の経験のある三井さん、そして府中市議でいらした中田さんと、それから大変ある種大分県を含めて封建的と言っていいのか、古さを感じた綿末さん、やっぱり市議会にいらした、そして長野県も、樽川さんの話を伺うと、やはりそういった習慣とかそれから古さみたいなものを感じて、大変お二人お二人の落差、落差と言ってはいけない、その実態の違いみたいなものを感じました。
 どちらかといえば、東京の二人は表で活動していらっしゃる。先ほど中田さんは見える形でとおっしゃったんですが、まさに生協の活動の仕方、それから三井さんも、ずっと運動をなさるのを私拝見してきましたけれども、本当に明るく表でずっと活動していらっしゃる。それに引き比べて、恐らく長野県や大分県では潜在的に女性たちが同じようなパワーを持っていながら、東京の場合のように表へ出てどんどんみんなで活動を展開していくというような様子ではないんじゃないかなと、きょうのお話から伺いました。
 いずれにしても、見える活動なのか、それとも実際には、潜在的なそういった問題意識をみんな抱えながら時には黙っている方が大勢いらっしゃるような、そういう中で脈々と力がわいてくる。実際は、見たところは違うようでも、いずれも同じようなエネルギーをきょうは感じさせていただいたように思います。
 私が今お話を伺いながら思ったのは、大森さんの言葉で言えば、今、国会がおもしろい、参議院がおもしろい、女性議員がおもしろい、その様子が地方で活躍していらっしゃる皆さんに通じないというのがとても残念だなと思いました。
 最後におっしゃった女性センターの実態調査、こういったような中で、例えば女性センターに、私たちは女性の政治参画の前はドメスティック・バイオレンス、女性に対する暴力の問題を半年間ずっとテーマにしてきたんですけれども、どれだけ国会でそれがテーマで、ここに居並ぶ男性の先生たちも大変意識改革をしてくださいまして私たちの味方になってくださったんですが、そういったこともなかなか伝わっていない。多分、大分県選出の先生が大分県の女性の方には伝わっていないんじゃないかと、今お二人の会話を伺いながら思ったりしました。そういうことを考えても、何かもう少し風通しのよさが全国的にあってもいいのかなというふうに思っております。
 一つ二つ質問させていただきたいと思いますが、それは、そういった全国的なうねりがどういうふうに実際につくられていくのか。
 先日、青森県で女性議員サミットが行われて、小宮山さんもいらして、私も行きました。社民党から土井党首、それから自民党から森山先生、それから公明党から浜四津先生、そしてみんなで大変元気に、樽川さんもいらした、三井さんもいらしたかしらね、いらっしゃらない。でも、みんなでとにかく大変景気よくやったんですが、今度二回目が長野で行われると。やっぱり一回目と違って難しい点もあるでしょうし、また飛躍できる点もあると思うので、どのような女性議員サミットをこれから十月になさろうと思っているか、それをぜひ伺いたいと思っています。
 それから綿末さんに、あなたの団体、各種女性団体連絡会議が十六団体ある。そこから議員が出せるような状況なのか。今の樽川さん的な形で言うと、昭和二十六年ですか、命令一下出したと。それでまた、新しいうねりが今ちょうど来ているときですが、そういったことが可能かどうかをお二人から伺いたいと思います。
 よろしくお願いいたします。

○公述人(樽川通子君) 今、女性議員サミットのいきさつがございましたけれども、お手元の資料にも若干書かせていただきましたけれども、青森県の場合、非常に大きな感動と感銘を受けてまいりました。
 しかし、私は、今回二回目を長野県がやるということは、三回目、四回目と続けてこのうねりが大きく日本じゅうを揺り動かしてくれるように願うとするならば、やっぱり長野県は長野県方式でいいんだろうというような形で、必ずしも青森県と同じという形にはならないかもしれないけれども、また国会議員の先生方をお迎えして、お願いして、そして御協力いただきながら、先ほど堂本先生もおっしゃったように、そんな機会にこそ女性の国会議員さんがどんな活動をしているのか、どんな動きをしているのか、御報告をいただきたいと思っています。
 それから、全国の市町村議員あるいはこれからの予備軍も含めて、やっぱり女性がこれからは議会に出ていって、そして社会を変えなければいけないんだ、私は男性議員の皆様方の功績も十分に理解する一人でありますけれども、男性議員さんに負けないように女性議員もしっかりと頑張っていくんだという、こんなうねりにしたいと考えております。
 よろしくお願いいたします。

○公述人(綿末しのぶ君) 実は、私が選挙に当選したのは、この女性団体連絡会議の推薦があったからなのです。この団体が、実は応援の表舞台ということで皆さんが、女性の方が本当に団結してまとまってくれて当選したというのがそもそもの始まりです。
 今回、落選をしたのですが、その理由がありまして、こういうふうにリーダー的にすごく応援をしてくれる女性の方たちが、それぞれの自分の出身地域の男性議員さんの選挙事務所の役員にみんな張りつけられてしまったんです。それで、私の選挙、だから一票、あなたには必ず入れるけれどもお友達にお誘いできないという状況があったのです。それで、ちょっと票が足りませんで、今回涙をのむという形になってしまいました。
 これからこの先どうするかということについてちょっとみんなと相談をしまして、二度とこのようなことがないように頑張っていきたいと思っております。

○堂本暁子君 もう少し時間をいただいているので、中田さんに伺いたいんですけれども、交代制でやっていらっしゃるという、これもとても難しいようで、実際に効果を上げていらっしゃるかどうかということを一つ。
 それから、この間私もずっと年金のことをやっていて、それから中田さんたちが厚生大臣まで陳情なすった、それも質問としてこういうのがありますということで、同じこの部屋だと思いますけれども、国民福祉委員会のところで使わせていただいたんですけれども、そういった交代制の効果、プラスの面とマイナス面とあったら教えていただきたい。
 それから、年金のような問題、これからもまた展開していらっしゃるおつもりがあるかどうか、最後に伺わせてください。

○公述人(中田慶子君) 私たちの特殊なルールであるローテーションについて、いろんな方から聞かれることが多いです。確かに二期や三期で何がわかるというのが一般的な反応でして、それはもちろん経験ということからいえば、議員一期四年間の経験というのは、本当に私が議員になる前に想像していたもう十倍ぐらいの情報量、そして経験というのがあります。それをどうやったらバトンタッチしていけるかということを本当に悩みながらやってきました。
 私の場合は、府中市で三十議席のうちのほとんど、無所属という意味では初めての女性議員ということで、九年前に当選をいたしました。その次にもう一人を必ず出そうということで二人にしました。そして、それは何のためかというと、ローテーションをするためなんですね。ですから、私が二期終わるときにはその二期目の議員がもう一人いる。そして、私のかわりに新しい二人を出して私たちのグループの議席は三議席になりました。そうやってシフトしてローテーションをするというのが一番理想的な形なんですが、選挙がありますので、本当にそのとおりうまくいくとも言い切れないものはございます。
 ただ、私たちはそのように努力をしながらシフトをしてローテーションしていって、経験を引き継ぐと。そして、私も終わった次から地域の事務局長という立場で、大変安い報酬で働きながら、現職となった新人のバックアップを今までの経験を生かしてやるというふうなことをしております。
 また、プラス面でいえば新しい人たちがどんどん育っていく、そして周りの人たちも決して議員になるのが特別な人たちではない、私でもなれるんだということをちょっとでもわかってもらいたいということがプラス面だと思います。
 マイナス面というのは、確かに脳みそをコピーするものがあればいいと時々思ったほどで、今までの有形無形の経験をどう伝えていけばいいのかというのが非常に問題ですし、ある意味ではマイナスかもしれません。だけれども、一歩引いて二歩前に出る、その繰り返しで女性の全体の力が上がっていく方が今の段階では必要だろうと。
 本来ならば女性が出てみんな当選してどんどんふえていけば一番いいわけなんですけれども、女性票というのは非常に地域でも限られております。ですから、その少ない票を少しでも伸ばしていって、みんなが力をつけていくためのローテーションという試みだと私たちは思っているんです。ですから、プラスもマイナスもある程度考えた上でベストではない、ベターな選択だと自分たちでも思いながらやっているのが現状なんです。
 何よりも政治の三K、暗い、汚い、金がかかるという、私が勝手に三Kと言っているのかもしれませんが、その風土をそうじゃないよと、女性が政治に参加していくことでもっと明るく、美しく、わかりやすいものにしていこうよというのが私たちの運動なんです。それはもうここの、こちらにいらっしゃる特に女性の国会議員の方に訴えたいのは、政治はもっと明るい、楽しい、わかりやすい、みんなが参加できるそういうものであるということを、やっぱりこの共生社会の調査会の方々の中からぜひ発信をしていただきたいというふうに私は願っております。

○堂本暁子君 大変迫力のある公聴会になりまして、皆様ありがとうございました。
 終わります。

○会長(石井道子君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。
 公述人の方々には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査の参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
 これをもちまして公聴会を散会いたします。
   午後五時二十八分散会