145-参-総務委員会-8号 平成11年05月13日

平成十一年五月十三日(木曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 四月二十八日
    辞任         補欠選任
     山下 善彦君     真鍋 賢二君
     木庭健太郎君     浜四津敏子君
     八田ひろ子君     吉川 春子君
 五月十日
    辞任         補欠選任
     日笠 勝之君     但馬 久美君
 五月十一日
    辞任         補欠選任
     松田 岩夫君     小宮山洋子君
     但馬 久美君     日笠 勝之君
 五月十二日
    辞任         補欠選任
     真鍋 賢二君     末広まきこ君
     山本 正和君     清水 澄子君
     月原 茂皓君     入澤  肇君
     椎名 素夫君     堂本 暁子君
 五月十三日
    辞任         補欠選任
     足立 良平君     川橋 幸子君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         竹村 泰子君
    理 事
                海老原義彦君
                佐藤 泰三君
                江田 五月君
                入澤  肇君
                堂本 暁子君
    委 員
                石井 道子君
                岡  利定君
                鴻池 祥肇君
                末広まきこ君
                森田 次夫君
                矢野 哲朗君
                今井  澄君
                川橋 幸子君
                小宮山洋子君
                浜四津敏子君
                阿部 幸代君
                吉川 春子君
                清水 澄子君
       発議者      川橋 幸子君
       発議者      小宮山洋子君
   国務大臣
       国務大臣
       (内閣官房長官) 野中 広務君
   政府委員
       内閣官房内閣外
       政審議室長
       兼内閣総理大臣
       官房外政審議室
       長        登 誠一郎君
       人事院事務総局
       職員局長     佐藤  信君
       内閣総理大臣官
       房審議官     佐藤 正紀君
       総務庁行政管理
       局長       瀧上 信光君
       経済企画庁国民
       生活局長     金子 孝文君
       経済企画庁総合
       計画局長     中名生 隆君
       外務省アジア局
       長        阿南 惟茂君
       文部省生涯学習
       局長       富岡 賢治君
       厚生大臣官房総
       務審議官     真野  章君
       厚生省児童家庭
       局長       横田 吉男君
       厚生省保険局長  羽毛田信吾君
       労働省女性局長  藤井 龍子君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        志村 昌俊君
   説明員
       内閣総理大臣官
       房男女共同参画
       室長       名取はにわ君
       文部大臣官房審
       議官       銭谷 眞美君
       文部大臣官房審
       議官       遠藤純一郎君
   参考人
       お茶の水女子大
       学長       佐藤  保君
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  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○参考人の出席要求に関する件
○男女共同参画社会基本法案(内閣提出)

○男女共同参画基本法案(川橋幸子君外二名発議
 )

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○委員長(竹村泰子君) ただいまから総務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十一日、松田岩夫さんが委員を辞任され、その補欠として小宮山洋子さんが選任されました。
 また、昨十二日、椎名素夫さん、山本正和さん、真鍋賢二さん及び月原茂皓さんが委員を辞任され、その補欠として堂本暁子さん、清水澄子さん、末広まきこさん及び入澤肇さんが選任されました。
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○委員長(竹村泰子君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が二名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(竹村泰子君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に入澤肇さん及び堂本暁子さんを指名いたします。
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○委員長(竹村泰子君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 男女共同参画社会基本法案及び男女共同参画基本法案の審査のため、本日の委員会にお茶の水女子大学長佐藤保さんを参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(竹村泰子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(竹村泰子君) 男女共同参画社会基本法案及び男女共同参画基本法案を一括して議題といたします。
 内閣提出案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより男女共同参画基本法案について、発議者小宮山洋子さんから趣旨説明を聴取いたします。小宮山洋子さん。

○小宮山洋子君 ただいま議題となりました民主党・新緑風会提出の男女共同参画基本法案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を説明いたします。
 一九九六年、二十一世紀を展望し提出された男女共同参画ビジョンや政府の行動計画である男女共同参画二〇〇〇年プランで、男女共同参画社会推進のために新たな法制が必要であるとして基本法制定の検討が提言され、その実現が強く求められてきました。
 私たちは、男女共同参画を総合的、効果的に推進するためには、基本的理念と政策の方向を示した基本法の制定が必要であるという結論に達し、ここに男女共同参画基本法案を提出いたしました。
 まず、男女共同参画は、人権尊重の理念を社会に深く根づかせ真の男女平等の達成を目指すものです。そのためには、男女が政治的、経済的、社会的及び文化的利益を均等に享受し、かつ、ともに責任を担うべき社会を実現するために対等な構成員として参画するという意味から、名称を男女共同参画基本法としました。
 以下、法案の概要を説明いたします。
 まず前文を置き、男女共同参画の基本理念を明らかにして方向を示し、この法律を制定するという姿勢をわかりやすく明示しました。
 本案は、男女が社会的、文化的に形成された性差にとらわれず、個人としてその個性と能力を発揮する機会が十分に保障される社会を形成することを目的とするジェンダーの視点を取り入れました。
 次に、「定義」の項では、政府案が積極的改善措置となっている部分を、本案では積極的是正措置とし、より強く男女間の格差の解消を提言しています。
 「人権の確立」の項では、直接的には性別による差別的取り扱いをするものではないが、結果として、男女のいずれか一方に対し差別的効果をもたらすことになる取り扱いを性別による差別的取り扱いに含めることとし、いわゆる間接差別を明記しました。
 また、女性に対する暴力の根絶が人権の確立に不可欠であるとし、女性に対する暴力の撤廃に向けての積極的な取り組みを特に明示しました。
 「条約等の尊重と国際協力の積極的推進」の項では、日本が国際社会の中での役割を積極的に果たさなければならないことから、締結した条約その他の国際約束の尊重を明記し、男女共同参画の視点に立った国際協力が推進されなければならないことを強調しました。
 「法制上の措置等」の項では、国及び地方公共団体は、男女共同参画の促進に関する施策を実施するため、必要な法令や条例の制定や改廃または必要な財政上の措置を講じなければならないとしました。
 「男女共同参画基本計画」の項では、盛り込むべき九項目を明記しました。
 一、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保のための施策。二、男女の家庭生活と職業生活等との両立支援のための施策。三、政策等の立案及び決定への男女共同参画の促進のための施策。四、男女平等を推進する教育及び学習機会の充実のための施策。五、男女共同参画の視点に立った税制、社会保障制度及び婚姻その他の家族制度に関する法制の見直し等、社会における制度または慣行の改善のための施策。六、社会経済活動その他の活動における性別による差別の撤廃のための施策。七、女性に対する暴力の根絶のための施策。八、妊娠または出産に係る選択の自由等性と生殖に関する女性の自己決定の尊重及び、女性に固有の身体的機能の保護等生涯を通じた女性の健康の支援のための施策。九、その他、男女共同参画の促進のための施策。
 以上です。
 「苦情の処理等のための体制の整備」の項では、男女共同参画の促進に影響を及ぼす施策についての苦情の処理及び被害者の救済のための組織や運営体制につき、新たな立法措置を講ずることを明記しました。
 「条約等の誠実な履行と国際協力の推進のための措置」の項では、女性差別撤廃条約、その他の国際約束を誠実に履行するために必要な措置を講ずること、及び男女共同参画の促進に関する国際協力の円滑な推進を図るために必要な措置を講ずることを明記しました。
 「地方公共団体及び民間の団体に対する支援」の項では、国は、地方公共団体の施策や民間団体の活動との連携を図り、支援することを明記しました。
 以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要です。
 何とぞ、御賛同くださいますようお願いいたします。

○委員長(竹村泰子君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより両案に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○石井道子君 自由民主党の石井道子でございます。
 男女共同参画社会基本法につきましては、去る四月十二日に本会議で趣旨説明、質疑が行われました。そして、それ以来一カ月経過をしてしまったのでございまして、まさに待望の法案の審議であると思っております。これは多くの女性の皆様方が大変期待をしている法案でございますので、速やかに参議院先議としての成果を上げなければならないというふうに思っておりまして、今回、私がトップバッターでさせていただきますことを大変うれしく思っております。
 男女平等につきましては古くて新しい問題でございまして、今までもさまざまな取り組みがなされてまいりました。特に、この問題が国際的な視野に立った形で取り上げられましたのが二十四年前の国際婦人年のときではないかというふうに思っております。そして、一九七五年に、昭和五十年ですが、メキシコで世界婦人会議が開催をされました。当時、私はちょうど県会議員に初当選をした時期でございまして、そのことを大変印象深く思い出すことができます。
 そして、その後いろいろと経過がありましたが、一九八五年に、国連婦人の十年に当たる年でありまして、このときにケニアのナイロビにおきまして世界婦人会議が開催をされ、私も参加させていただきました。そのときは参議院議員として議席を得た年の翌年でございまして、大変私にとりましてはその節目節目でいろいろと貴重な経験をさせていただいたことをうれしく思っております。
 そして、この婦人会議に参りますといつも感じることは、大変な女性のパワーを感じさせられるところでございまして、これからもそのような世界的な規模において男女平等の政策が着実に実行されることを期待しております。
 私は、今回いろいろとこの男女平等の問題について過去を振り返ってみますと、ちょうど昭和六十年に女子差別撤廃条約が批准をされました。そして、国内法につきましてもさまざまな取り組みがされまして、ちょうどそのころ国籍法が施行されました。そして、さらに男女雇用機会均等法が成立をいたしまして、私もその審議に携わることができました。さらに、平成四年には育児休業法も成立をしたのでございまして、そういう面では国内法の整備についても着々と準備が進められ、効果を上げてきているのではないかというふうにも思っております。
 政府におきましても、最初、昭和五十年に婦人問題企画推進本部が設置され、その後、平成六年には男女共同参画推進本部ができて、全大臣が参加をする会議となりました。また、男女共同参画室というものもできまして、さまざまな取り組みがされているところでもございます。
 このような大変長い間にわたる取り組みにつきましていろいろと感慨深いものがありますが、今回は男女共同参画社会の形成に向けて国を挙げて取り組んでいこうということになりまして、今度の法案が提出されたわけでございます。そういう点では大変によかったというふうに思っておりまして、大変感銘深いものがございます。
 男女共同参画社会の理念につきましては、男女平等にとどまらず、女性も男性も社会の一員として社会に対する責任を自覚する、そしてよりよい社会をつくり上げていくという前向きな姿勢が盛り込まれているというふうに思っておりますが、二十一世紀を前にして、我が国社会において新しい社会を創造していこうという積極的な姿勢が重要であると考えます。
 まず、この基本法案を審議するに当たりまして、目指すべき男女共同参画社会とはどのようなものかを国民の皆様方にもわかりやすく御説明をいただきたいと思いますが、官房長官、よろしくお願いいたします。

○国務大臣(野中広務君) ただいま石井委員から、石井委員がかかわってこられました男女共同参画社会を目指すそれぞれの道筋をお伺いいたしながら、私もまた、ちょうど国際婦人年の十年の際に京都におきまして副知事としてこの仕事にかかわることになりました。自来、国政に出ましても、石井委員が婦人部長、女性局長等をやられる中において御一緒に仕事をしたことを思い起こしながら、本日ここに基本法案の御審議をいただくことになりましたことを大変感銘深く、またそれを担当する閣僚の一人としてこの席におりますことに大きな感動を覚えておる次第であります。
 さて、ただいま御質問のございました男女共同参画社会とは、この法案の第二条第一号に規定をいたしておりますように、男女が社会の対等な構成員といたしましてみずからの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保されることによりまして、男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、ともに責任を担うべき社会であるということでございます。すなわち、女性と男性が対等なパートナーとしてさまざまな分野に参画をし、喜びも責任も分かち合っていけるような社会であることを目指すものだと私は認識をしておる次第でございます。

○石井道子君 男女共同参画社会という言葉は、最初は大変耳なれない言葉でございましたが、最近はいろんなところでそのようなことが言われておりまして大分なれてきたのではないかと思っております。やはり言葉の普及ということと同時に、言葉の持つ深い意味も十分に知っていただき、それを普及していく必要があるのではないかと思っております。
 男女共同参画社会という言葉は、参加ではなくて参画という言葉を使っておりますが、この参画という言葉にはどのような意味が込められているのでしょうか、御説明をお願いいたします。

○政府委員(佐藤正紀君) 男女共同参画社会におきまして、参加ではなく参画という言葉を用いております。参加という言葉を国語辞典などで引きますと、仲間に加わることというような意味が書いてございます。参画につきましては、意思決定過程へ加わるというようなことで、参画ということはそういう意思決定過程に加わるという非常に重要な意味を持っております。
 男女が社会の対等な構成員として政策あるいは方針の立案及び決定に共同して参画する機会が確保されることは、男女があらゆる分野において利益を享受することができ、ともに責任を担うべき男女共同参画社会の基盤であると、こういう認識を込めたものでございます。

○石井道子君 男女共同参画社会の理念というものにつきましては、言われてみればごく普通のことでありまして、普通に述べていらっしゃるということでございますが、なかなかこのことを実行するのはそう簡単にはいかないというふうに思います。それは、やはり長い間の日本における経過、歴史が示しているとおりでございます。このような中で、本日審議しております男女共同参画社会基本法案は、男女共同参画社会の形成に向けて力強い推進力になることを期待しているところでございます。
 そして、この男女共同参画社会の実現に向けて基本法がなぜ必要であるか、そのことについて御説明をお願いいたします。

○政府委員(佐藤正紀君) 男女共同参画社会を実現していくためには、多くの分野で整合性をとった施策を講じていくことが必要であろうかと思っております。そのためには、基本法を制定いたしまして、国民合意のもとに男女共同参画社会の形成の促進に係ります基本理念を明らかにいたしまして、国、地方公共団体、国民の各主体の責務を明確にいたしまして、基本計画の策定等、そういう施策を定めまして、それからまたさらに推進体制を明確にすることによりまして推進していくことが必要であろうかと考えております。
 この基本法の制定によりまして、男女共同参画社会の形成が一層推進されることを期待しております。

○石井道子君 ちょうど一九九五年には、北京において世界女性会議がございました。アジアで開催をされたということもありまして、日本からは約五千人くらいの方が参加をされたと聞いておりまして、そのときからも大いに関心が高まってきたというふうに思います。私もその会議に出席をさせていただきまして、世界各国から集まった女性たちの大変熱い思いと、そしてパワーというものを感じることができたわけでございます。我が国の参加者が北京に集まって、そしてその女性たちのパワーを日本に持ち帰って、それが今基本法という形で結実したのではないかということも考えられるのでございますが、北京の女性会議がこの基本法案に与えた影響というものがあれば、それについて御説明をお願いいたします。

○説明員(名取はにわ君) 北京で行われました世界女性会議は、議員が今おっしゃいましたとおり、我が国からも多くの人が参加をいたしまして、国内外において大きな盛り上がりを見せました。
 そのような状況の中、その翌年の一九九六年には男女共同参画ビジョンが男女共同参画審議会から答申され、同ビジョンを受けて政府の国内行動計画である男女共同参画二〇〇〇年プランが策定されましたが、このビジョンとプランには、法律に基づく諮問機関の設置と男女共同参画社会の実現を促進するための基本的な法律についての検討が盛り込まれておりました。この翌年の一九九七年には男女共同参画審議会設置法が制定され、法律に根拠を置く男女共同参画審議会が設置されて、同審議会において男女共同参画社会基本法についての調査、審議がなされ、一九九八年の十一月には基本法の制定や内容について提言する答申が提出されるに至りました。この答申を受けて、政府は男女共同参画社会基本法案を策定し、今国会に提出したところでございます。
 また、今申し上げた二つの審議会答申の審議過程におきましては、広く国民の御意見を求めておりまして、その答申には男女共同参画社会の形成に取り組む多くの方々の声が反映されております。
 このことにかんがみますと、ただいま議員からのお話がありましたとおり、一九九五年の世界女性会議からの男女共同参画社会の形成のための流れが本基本法案につながったものであると考えております。

○石井道子君 このように、我が国におきます男女共同参画社会の形成のための取り組みにつきましては、国内においての取り組みも大変重要でありますが、国際的な取り組みと連携をし、相互に影響し合いながら進めていくということも重要であるというふうに思います。この基本法にも、国際的な協調の基本理念が規定をされているところでもあります。
 来年には女性二〇〇〇年会議がニューヨークの国連本部で開催をされます。その会議に向けまして、国内の取り組み体制というものはどうなっているのでしょうか、御説明をお願いいたします。

○説明員(名取はにわ君) 女性二〇〇〇年会議は、北京行動綱領採択五年後の実施状況を評価するとともに、さらなる行動とイニシアチブを検討するため、国連総会特別会期として来年六月にニューヨークの国連本部で開催が予定されております。
 この会議に向けた国内取り組み体制といたしましては、準備の過程において広く民間団体等との連携を図るため、昨年十二月に女性二〇〇〇年会議日本国内委員会を置き、既に第一回会議を開催したところでございます。また、同委員会は、関連する国際会議について広く情報提供を行うなどしており、今後も引き続き民間団体等との連携を図りながら準備を進めてまいる所存でございます。

○石井道子君 この男女共同参画問題とそれから環境問題というのはちょっと共通する部分があるというふうに感じます。
 私もちょうど環境庁長官を務めた関係で、最近は地球温暖化対策とか身近なダイオキシン問題とか、非常に環境に対する関心が高まってきていることは御案内のとおりでございます。環境問題も、やはり平成四年に地球サミットが開かれて、そしてその後、平成五年には環境基本法が成立をし、さらにアセスメント法ができて、また地球温暖化対策推進法も成立を見たということで、だんだんと具体的な取り組みが進められてまいりました。
 この両方の問題に共通することは、どちらも非常に身近な問題であるということ、そして大変重要な問題であるということでございまして、そのことを実際に国民の一人一人が実行して成果を上げていくということが大変重要なことではないかというふうに思っております。行政の取り組みも大切でありますが、やはり国民一人一人がそのことを十分自覚して実践していくということが大切でございますので、男女共同参画社会の形成の促進については地域の住民による各種の活動が重要であります。
 そして、それに対する政府の支援もまた重要であると思われますが、政府としてどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか、御説明ください。

○政府委員(佐藤正紀君) 男女共同参画社会の形成につきましては、先生の御指摘のとおり、政府の施策のみによって可能となるものではございません。国民の一人一人が、職域、学校、地域、家庭、その他のあらゆる分野におきまして、この法案の基本理念にのっとりまして、男女共同参画社会の形成に寄与するように努めていかなければならないものだろうと思っております。
 この基本法案におきましては、民間の団体が男女共同参画社会の形成の促進に関して行う活動を支援することを重要と考えておりまして、第二十条におきまして、国は民間の団体に対して、「情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努めるものとする。」ということを規定いたしておるところでございます。この規定によりまして、各団体に対してもいろいろ支援をしてまいりたいと考えております。

○石井道子君 基本理念の一つに、家庭生活における活動と他の活動の両立ということがございます。活力ある社会づくりにつきましては、豊かな家庭生活を享受できるようにすることが重要でございまして、その中で女性が、家庭か仕事かというふうな、家庭とそれ以外の活動のどちらか一つを選択せざるを得ないというふうな状況を、人によっては少なからずそのような環境に置かれるということを見聞きするわけでございますが、これは大変嘆かわしいことであるというふうに思います。
 今、少子化のことが日本では大変心配をされておりまして、女性にとって重要な出産とか育児の問題、このようなことをやはり無事に行っていくことが重要でありますが、女性も肩の力を抜いて自然に仕事をしたり勉強したり、または地域活動に参加したりというふうなことで、家庭生活と両立するような社会をつくる必要があるというふうに思います。また、男性も家庭における役割をもっともっと果たしていかなければならない、そういう時代になっているというふうに思っております。
 ここで言います他の活動とはどのようなものであるかというお考えをお伺いしたいと思います。また、家庭生活における活動と他の活動の両立のために社会がどのような支援をする必要があるか、そのことについて御説明をお願いいたします。

○政府委員(佐藤正紀君) 基本法の第六条におきましては、男女共同参画社会の形成のために、男女が社会のあらゆる分野で活動する際に充実した家庭生活を送ることが重要であるということから、その旨を基本理念として明記しておりますが、他の活動と家庭生活の両立ということで、他の活動ということが書いてございます。
 ここで考えておりますのは、仕事をすることも当然ございますが、そのほかに、勉学をすることでございますとか地域活動をすることなど、ボランティア活動等も当然含まれるわけでございますが、家庭生活を除く職域、学校、地域、その他あらゆる分野における活動を意味しておるところでございます。
 社会の支援ということについてでございますが、現行の政府の行動計画であります男女共同参画二〇〇〇年プランにおいても、多様なライフコースに対応した子育て支援対策の充実、それから育児、介護を行う労働者の雇用の継続を図るための環境整備など、男女の職業生活と家庭、地域生活の両立支援の問題を取り上げているところでございまして、今後、この法律の趣旨に沿って一層取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。

○石井道子君 今、女性に対する暴力の問題が大変話題となっております。今までは、特に家庭内暴力などについては潜在化しておりまして余り表には出なかったということでありますが、最近では大変マスコミにも大きく取り上げられるようになりまして、重大な社会問題となっております。
 参議院におきまして、昨年八月に初めて設置されました共生社会に関する調査会がございまして、そこでやはり「男女等共生社会の構築に向けて」というテーマで、女性に対する暴力について現状と課題について調査を行ってまいったところでございます。今までも合計五回ほどの会議を行って、また視察もしたところでありますが、その中で、やはり今のところはまだ実態がよくわかっていないということで、実態調査をする必要があるという意見もございます。東京都では一部なさったようでありますが、国としては今まではそのようなことがなされておりません。
 そしてまた、このような男性の暴力から逃れる女性のための保護対策、また精神的なケアの問題、このことについてもまだまだ不十分でありまして、今までの売春防止法の婦人相談所をその公的シェルターとして代用しているとか、便宜上そのような方法をとっておりまして、むしろ民間シェルターとして多くの方々が大変努力をして苦労をしてそのことに当たっておられる実情も知ってまいりました。そのようなことで、やはりそういうふうな方々に対する助成とか支援とか、そういう必要性も感じているところでありますし、またそのようなケアをするための専門的な人材を育成することも必要ではないかというふうに思っております。
 今はこのような女性の暴力に関する取り扱いにつきましては各省庁に分かれておりまして、警察庁とか法務省、また文部省、労働省、厚生省、それぞれに目的に合った活動はしていらっしゃいますが、総合的な窓口として対応できていないという実態がございまして、このことをちょうどこの調査会におきましていろいろと調査してまいったところでございます。
 このような女性に対する暴力は、女性の自由な活動を制限したり、女性が男性と対等な立場でさまざまな分野に参画をするということを阻害しておりまして、伸び伸びと女性がその個性、能力を発揮することができない、妨げられているというような状況でございまして、その点については男女共同参画社会の形成という観点からも重要な問題ではないかというふうに思います。
 女性に対する暴力については、男女共同参画審議会の暴力部会において検討されているということも伺っておりますけれども、このようなことに対して政府の認識を官房長官にお伺いしたいと思います。

○国務大臣(野中広務君) 男女共同参画社会基本法案は、男女の共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的としておるものでございまして、今、委員から申されました女性に対する暴力の問題等、個別具体的な施策は本法案の中には具体的に規定しておらないところであります。
 ただ、女性に対する暴力の問題というのは、委員がただいまお触れになりましたように非常に深刻な問題があるわけでございまして、参議院におきましても熱心にお取り組みをいただいており、かつまた男女共同参画審議会においてもそれぞれ暴力問題を御熱心にただいまお取り組みいただいて、近くその答申をいただくことといたしておるところでございます。
 ただ、この法案に基本理念として、最初に男女の個人としての尊厳が重んぜられること等、男女の人権の尊重を織り込んでおりますことは、この法案の中にそういう委員が御指摘になりました問題等を含めまして基本理念としてこれを取り入れたところでございまして、この基本理念に照らしますならば、女性の基本的人権の享受を妨げたり自由を制約する女性に対する暴力は決して許されるべきものでないと考えるわけでございます。また、現在の政府の行動計画であります男女共同参画二〇〇〇年プランにおきましても、女性に対するあらゆる暴力の根絶を重点目標として取り上げておるところでございまして、この問題の重要性は十分認識をしておるところでございます。
 今後、各省庁連携いたしまして、政府一体として取り組んでまいりたいと考えております。

○石井道子君 女性の人権を守るという点でも、さらに強力な政策を進めていただきたいと思っております。
 国連開発計画が行っております人間開発に関する指標というものがあります。HDIというのは人間開発指数ということで、これが世界では日本は八位である。そして、GDIということでジェンダー開発指数ということについては日本は十三位である。また、GEMという点について、ジェンダーエンパワーメントの測定という点については日本は第三十八位ということで、大変低い地位でございます。
 そのようないろんな指数によって国際社会における日本の地位というもの、状況というものがある程度示されているわけでございますが、これからもこのようないろんな面におきまして日本における男女平等、そして男女共同参画社会がますます成熟をしてよい成果を上げることを期待しているわけでございます。
 きょうはこの男女共同参画社会の形成に向けて、官房長官を初め政府委員の方からも大変心強いお言葉もいただきました。大変うれしく思いますが、このことを今度の基本法をきっかけといたしまして、それを実効ある施策をこれから進めていくことが大変重要であると思いますので、ぜひこれからの特別の御配慮と御活躍を期待しているところでもございます。
 きょうは大変お時間をいただきましてありがとうございました。以上で質問を終わります。

○矢野哲朗君 自由民主党の矢野哲朗でございます。
 今回の議題が私にとって果たして合っているのかなどうなのかなというような気持ちを持って御質問に立たせてもらいましたのでありますけれども、きょうの質疑においても、ぐるっと見回しますと、この質疑参加者、竹村委員長初め女性が八、九名、男性も八、九名ということで、もう日本ではそういう社会が確立されているのじゃないのかなというような思いも一部するわけであります。
 加えまして、一昨年でありましたか、参議院召集五十周年を記念しまして女性国会を大々的に開催したことがまざまざと記憶に残っているのでありますけれども、あのとき本会議場でもって女性の皆さんが一堂に会して、五百人ぐらいで本会議場を埋め尽くした。あの場面を見たときに、女性社会万歳と凱旋を聞いたような感じでありまして、かえって我々男性が世の中の隅っこに追いやられてしまったのではないかなというふうな一部妄想にも浸った場面もあります。
 しかしながら、今我が同僚議員であります石井委員からも、いろいろな数値からいってもまだまだ世界の先進諸国に比べると日本は残念ながらその域に及んでいないという部分も多々あるということで、今回の基本法の制定に及んだというふうに私は理解をさせていただいております。
 二十一世紀を本当に目前に控えまして、男女それぞれの人権が十分尊重されて、豊かで活力のある社会を実現し、男性も女性も、こういう場合には女性も男性もと言うべきなんでしょうけれども、みずからの個性を発揮して生き生きと充実した生活を送ることを目指すためにこの基本法が制定される。私としても、前向きな政府としての努力、それに対応して国会としても十分審議をしながら速やかなる成立を目指したい、そう思う一員でもあります。
 加えまして、日本の二十一世紀を展望したときに、高齢化がますます促進をされる、そうなりますれば社会保障費の国民負担率がますます増大します。そんな中で、健康な高齢者並びに女性の社会参画というものをますます意図しなければいけない、こういう場面があろうかなと。加えまして、今までの経済に対する価値観念が、大量生産、大量消費という時代から本当に地球に優しく環境というものを十分考慮した上でやっていこうというふうな価値観になってきたわけであります。加えまして、国際化そして情報化というような付加価値の高い産業に価値観が変わってきた時代でありますから、そういった意味では女性も含めた多様な人材を生かしていこうという時代に移り変わってきたというふうにも理解をさせていただいております。ですから、この基本法を制定して、基本理念、そしてこれに関する基本的な施策の枠組みを定めて、社会のあらゆる分野においてこの取り組みを総合的に推進するというふうな意図が十分うかがえるわけであります。
 そこで、お伺いしたいのでありますけれども、この基本法が制定されまして日本がどのように変わっていくんだろうか、その辺のひとつ法律の制定の効果をお伺いしたいと存じます。お願いいたします。

○国務大臣(野中広務君) 矢野委員から、男女共同参画社会基本法の御審議に当たりまして力強い御支援をいただきましてありがとうございます。
 男女共同参画社会基本法によりまして、幅広い分野にわたる男女共同参画社会の形成を促進していきますための施策が総合的かつ計画的に推し進められますことが期待をされておるところでございまして、例えば男女共同参画基本計画の策定を通じまして各種の施策の調整が行われ、総合的に推進されることが考えられるわけでございます。また、この基本理念が示されますことによって、国民の間で議論が喚起されることを通じまして、男女共同参画社会についての国民の一層の理解が深まり、国、地方公共団体及び国民の各主体が男女共同参画社会の形成に向けた取り組みを行うに当たっての基盤が整備されていくことになろうかと存ずる次第であります。
 このように、この基本法の制定によりまして男女の人権がそれぞれ尊重をされ、かつ少子高齢化等の社会経済情勢の急激な変化に対応できる豊かで活力ある社会が実現をされるものと考えますし、また、そのためにこの法律の制定の効果を我々お互いに求めていかなくてはならないと存じておるところでございます。

○矢野哲朗君 今の答弁をお伺いしまして、より一層この法案に対する期待の大きさというものを私も同感させていただきました。
 この法案、五つの基本理念とそして基本的な施策について策定しているわけでありますけれども、特に基本法という一つの性格上、余り細則をうたいそして細則に縛られることはいかがなものか。ですから、この大枠、この基本法の考え方、内容については私も賛意を示す一人であります。
 そして、特に今回の法案の目玉だというふうにうたわれております積極的改善措置でありますか、横文字で言うとポジティブアクションということになるんですか、それを規定した趣旨は、不自然さをより積極的に改善しようということでこういうふうな一つの積極的改善措置ということをうたったと思うのでありますけれども、その趣旨を改めて確認させていただきたいと思います。

○政府委員(佐藤正紀君) この基本法案におきまして積極的改善措置、いわゆるポジティブアクションでございますが、これの規定を置いてございます。
 この中身は、活動に参画する機会に係る男女間の格差を改善するために、必要な範囲内において男女のいずれか一方に対しまして機会を積極的に提供することでございますが、こういう積極的改善措置を含みました男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を総合的に策定し実施する責務を国に課し、さらに国のそれに準じた施策を推進する責務を地方公共団体に課しておるわけでございます。
 現在、日本の社会におきましてかなり男女の機会が均等になっておるとはいいましても、まだかなりの格差があるということがございます。こういうことを改善していくためには、暫定的に片一方に対しまして積極的に機会を提供するというようなことも必要であるということを考えまして、こういう規定を置いたところでございます。

○矢野哲朗君 私も積極的改善措置を図るということは大賛成であります。
 一例でありますけれども、農業生産従事者というのは大体六割以上女性が就業している。しかしながら、その問題点の一つは、一つの舞台で論議するのには農業委員の皆さんが農業会議というところで論議するわけでありますけれども、九九%以上が男性であります。実際は女性が真っ黒になって朝から晩まで仕事をしている、そして家事までやっている。御主人は午後あたりから農業会議だということで行って、それで会議はそこそこにして夜はちょっとお酒でも入りながら遅くなって帰ってくるというふうな実態があるわけでありまして、そういう実態は早急に私は積極的改善措置をもってして改善していただきたいなと思う一人であります。
 反面、数値を設定しますと、そこまで持っていかなきゃいけないというふうな、逆差別的な発想になってしまうおそれがあるんではないかなという心配もするんです。そうすると、拘束されてそこまで女性を登用しなきゃいかぬなんというような心配を一部するのであります。その辺の考え方はいかがなものでしょうか、お伺いをいたします。

○政府委員(佐藤正紀君) 先ほど申し上げましたように、現状においてかなりの格差がある場合に、片方に対して積極的に機会を提供していくということも必要なことであろうかと考えております。
 現状で政府がとっております施策の中では、例えば審議会の委員に対しまして女性の割合を三〇%を目標にというようなことを我々もいたしておりますが、これは個別のケースごとに適宜適切に判断して対応していくべきものであろうと思っておりまして、一律にすべて数字を決めるというふうなことではかえってふさわしくないのかなというふうに考えております。

○矢野哲朗君 審議会の一つの目安が三〇%というような答弁があったわけでありますけれども、その三〇%という科学的根拠は何でありましょうか。

○説明員(名取はにわ君) 科学的根拠と言えるかどうかちょっとわからないんですが、実はこの三〇%には根拠がございまして、もともと一九九五年、先ほど石井先生がおっしゃいましたナイロビ世界女性会議でナイロビ将来戦略というものが出されたわけです。ここのところにおきまして、意思決定レベルの地位における女性比率を一九九五年までに三〇%にするという国際的目標が提示されております。
 それで、ただその三〇%というのは実は一九九五年までということでございましたのですけれども、今はもう一九九九年でございます。なかなか到達できないというようなことで、今、実は審議会委員も当面、二〇〇〇年までのできるだけ早い時期に二〇%を達成しようということで今一生懸命努力をしているということでございます。

○矢野哲朗君 私もよくわからないのでありますけれども、男女共同参画社会という言葉からすると、要するにイーブンというふうな話になるわけでありまして、五〇、五〇というのが自然な姿だと思うんですね。ですから、今後の長期計画の中で当面はこのぐらい、しかしながら目指すはこうだねと。しかしながら、それは適材適所でもってというふうな、その辺での何かこうしなきゃいけないんだという悲壮感といいますか、何かそういうものをひしひしと感じて、もう少しおおらかにこの男女共同参画社会をみんなでつくっていこうというふうな雰囲気がちょっと感じられないんですけれども、いかがですか。

○政府委員(佐藤正紀君) 先生のお話のように、必ずイーブンになるように四苦八苦するというようなことではございませんで、男女共同参画社会というものは、あくまでも男女が対等な構成員として活動するということと、それからみずからの意思によってあらゆる分野における活動に参画する機会を確保されるというふうなことでございまして、人に決められて役割を決めるということではなくて、あくまでも自分の意思に基づいて自分の役割を決めていくというところに重要性があろうかと考えております。したがいまして、男女共同参画ということで必ずイーブンでなければならないというようなことから考えるということではないと考えております。

○矢野哲朗君 私が申し上げたかったことは、自然の姿としてということで私はあるべき姿を希求しようというふうな趣旨でもって申し上げたつもりであります。
 ですから、余り悲壮感を持って、今本当に世界からこれだけおくれているんだ、だからこうなんだというふうな発想は、ちょっと私、三〇%という、国際規約の中で三〇%をうたっている、ではなぜ国際規約の中で三〇%とうたったのかと、こう聞きたくなるんですね。だから、その辺はいずれにせよ日本の風土の中で本当に、将来はこうだけれども、前向きでやっていこうなという雰囲気をぜひとも、女性は決してこの世の中でもって被害者じゃないのでありますから、何かちょっとそういう裏向きな印象を強くするものですから、あえてこの質問をさせていただきました。
 それから、今後、国も当然でありますけれども地方公共団体、そして国民一体的にこれを取り上げていく、そうしなければいけないと思うのでありますけれども、この基本法が制定されることによってそれがどう連動していくのか、その辺をお伺いしたいと思います。

○政府委員(佐藤正紀君) この基本法におきましては、国におきまして積極的に男女の共同参画に資する施策を総合的に策定し実施する責務を有すると同時に、地方公共団体におきましても国に準じた施策を講ずるということ。法律の中では十三条におきまして政府は男女共同参画基本計画をつくっていくことになっておりますが、それに応じまして地方公共団体におきましても国の計画を踏まえまして計画を策定していくということになっております。これで国と地方と歩調を合わせまして男女共同参画社会の推進に向けて施策を推進していくことになると考えております。

○矢野哲朗君 加えまして、国民の積極的な理解、参画が当然必要になってくるわけでありますけれども、例えば家庭においての夫婦の役割、これが基本理念の家庭生活における活動と他の活動との両立を含めて、その辺でもって家事の役割を夫婦でもってよく話し合いながら分担し合って両立をさせていきましょうと、こういうふうな基本的趣旨だと思うのでありますけれども、この点について本法に照らしてどうかなと、その辺ちょっと考え方を聞きたいと思うのであります。

○政府委員(佐藤正紀君) 先生御指摘のとおり、この法律は家庭生活、これが社会の基本的単位でございますが、家庭生活というものが重要であるということを踏まえまして、第六条で、家庭生活における活動と他の活動の両立を基本理念としてうたっているところでございます。
 豊かな家庭生活を送りながら男女がともに社会に参加していくためには、家族を構成する男女が相互に協力し合うことが大事でございます。さらには社会からの支援も必要かと思いますが、家族の一員としての役割を円滑に果たしながら他の活動を両立するためには、御指摘のとおり家庭の中での話し合いというものが非常に重要であろうと思いますが、それを踏まえまして協力し合っていくことが大切であろうと思っております。

○矢野哲朗君 そこで、決して私は女性は表に出るなというふうな窮屈な話をしようとは思っておりません。反面、女性の能力を生かすことは表に出ることなんだということを余り助長されてもいけないことかなと思うのであります。
 そんな中で、主婦業という職業、今回この共同参画社会基本法制定と同時に、女性の家庭における役割、専業主婦としての重要性、社会的意義、そういうものを私は並行して再認識するような作業が必要なんじゃないのか。
 片や、さあみんなで社会に出ましょう、社会に出て能力を発揮しましょう、これまた当然の話であります。大歓迎であります。しかし、それが一つの風潮になりまして、家に帰ってみたらだれもいない、何時まで待ってもだれも帰ってこない、女房も帰ってこない、私が自分で洗濯してアイロンをかけて飯をつくるなんていう話が毎日続いたら、これは家庭の崩壊になってしまいます。
 ですから、その辺を考えますと、片や積極的に参画する、家庭と社会の両立ということを図らなければいけないというふうな基本理念、これは私も賛成でありますけれども、加えまして、同時並行的に、専業主婦、主婦の役割を再評価する一つの作業が必要なんじゃないのか。そういうふうな一つの、改めて社会的な地位を明確にするというふうなことが私は並行的に必要になってきたと思うのでありますけれども、その辺のお考え方をお伺い申し上げたいと思います。

○国務大臣(野中広務君) 非常に現実的な御指摘をいただいたわけでございますが、委員がおっしゃいますように、社会を構成する重要な基本的な単位であります家庭というものの中におきます主婦の役割は大変重要な位置づけを持っておると認識するものでございます。
 この男女共同参画社会というものは、男女が社会の対等な構成員としてみずからの意思に従いまして社会のあらゆる分野で活動に参画する機会が確保されるということ、そういう社会を目指すということをこの法律の第二条一号はうたっておるわけでございまして、この社会のあらゆる分野における活動というものの中には当然のこと家庭における活動が含まれておるものでございまして、申し上げるまでもなく、他から押しつけられるものでもなく、みずからの意思に基づきそれぞれの役割を選択することが重要であると思うわけでございます。
 現在、政府の行動計画でございます男女共同参画二〇〇〇年プランにおきましては、家事労働を含みます無償労働の数値的把握の方策につきまして調査研究を行いますとともに、社会的評価のあり方につきましても検討を行うことといたしておるわけでございまして、そういう数値を求めることによって私どもは家事あるいは家庭における主婦のありようというものについての方途を考えなくてはならないと思っておる次第でございます。

○矢野哲朗君 今、官房長官から社会のあらゆる分野における活動、その中には当然のことながら家庭における活動も含まれると、こういうような御指摘がありました。冷静に法案を読めばこういうふうな解釈ができるわけでありますけれども、ややもするとこの法律が成立することによって一つの風潮ができまして、家にいるなんてあなたは古いわよというような話になって、みんなで表に出ようなんというような風潮ができちゃうとやっぱりまずいなと。
 ですから、そういうふうなことだけは阻止するがためにも、要するに、じゃお父さん、給料を幾らもらってきて、私の家庭内における労働報酬は幾らに評価するの、じゃお父さんからの給料を私はこれだけいただきますよ、今の無償報酬に対する一つの数値基準をつくるというのはそういうことだと思うんですけれども、その辺が冷静に夫婦内で対応できるように、しかしそうなると、何となく夫婦間も寒々とするような感じがするんです。今まで、要するに夫婦一体でもっておやじが稼いで小遣いだよ、こういうふうな話が、私の女房としての仕事は幾らに値しますよ、だからお父さん給料をください、こうなっちゃうと何となくあと一つ家庭内が寒々とするような感じがいたします。
 その辺での何か対処方法はありませんか。

○国務大臣(野中広務君) 矢野委員から、私の最近の認識とは異なるような御指摘があったわけでございますが、私は現在、我が国の給与と税のあり方の中で、我が国ほど源泉徴収になじんだ国民は少ない、一方においてそういう認識と評価を持っておるわけでございます。それだけに、現在、給与はほとんど銀行等の金融機関振り込みになっております。したがって、現在はむしろ奥さんから給与をもらっておる男性の方が多いし、また子供のしつけの上にもお母さんからお小遣いをもらっているお父さんをずっと眺めておるという、そういう中で父親の位置づけというものが今日非常に子供の見方から変わってきておるんじゃないかということを危惧しておる一人でもございますので、双方相まって、そういう問題について今後こういったような男女共同参画社会というものを十分国民に認識していただく中から、それぞれ我々のありようというものを求めていかなくてはならないと考えておる次第でございます。

○矢野哲朗君 官房長官御指摘のとおり、私も実生活の中でそういう問題意識を持っていますので、本当に給与振り込みなんというようなことが起きちゃったものですから、子供たちは私にありがとうの一言も言わないんです。ですから、本当に制度が変わってしまうということに対してとんでもない一つの価値観が変わってしまうというふうなことも現実に体験をしておりますので、まさにこの法案も社会の一つの構築を変えていこうという話でありますから、やっぱりそういった面での問題点があるかなというところは十分つぶしながら、この基本法が推進されることをひとつ期待したいと思います。
 私も十九分までの時間なのでありますけれども、大体言い尽くされたかなというような感じがいたします。
 最後になりますけれども、私は男女共同参画社会の一つのあり方として、日本の風土、歴史に根差した一つの男女共同参画社会というものを希求すべきだ、やはりヨーロッパ諸国、アメリカがこうだからということではなくて、日本の風土に根差した社会をいかに構築していくか、これが一つの重要なポイントだと思います。
 なぜならばということで、日本の一つの民話なんでしょうけれども、日本の民族の誕生というのは、今さら言うまでもなく、イザナギノミコト、イザナミノミコトという男女の二つの柱があって、人間と同じ行為をして子孫が生まれてきた。要するに、日本の原点をさかのぼれば、陰陽の原理原則があったというふうな現実があるわけでありますから、この男尊女卑なんというような基本的な考え方は日本にはなかったわけであります。
 ですから、そういうふうな一つの日本のあり方からして、日本の歴史からして、その風土からしてということで、ぜひ日本にふさわしい男女共同参画社会の確立を目指されたい。その辺での御意思を官房長官、ひとつよろしくお願いを申し上げます。

○国務大臣(野中広務君) 男女共同参画社会の実現というものは、今、矢野委員も御指摘がございましたけれども、今日深刻に迫ってくる少子高齢化などの社会経済情勢の急速な変化の中にありまして、従来の長い伝統を失うことなく、また我が国固有のありようを大切にしながら、なおその中において、我が国が持ってきたある意味において男女の人権が侵される部分等を十分改善し、男女の人権が相互に尊重をされ、かつ豊かで活力ある社会を実現する上で来るべき二十一世紀を決定する大きなかぎとなる意義を持つものだと私は思うわけでございます。このため、政府といたしましても、この男女共同参画社会の実現を政府の最重要課題として取り組んでおるところでございます。
 男女共同参画社会基本法の制定ということは、男女がみずからの選択によりまして、性別にかかわらず、おのおのの個性を生かしながら社会のさまざまな分野に対等に参画することを通じまして、未来に向けて豊かで活力ある社会の実現を目指していこうと考えるものでございます。私は、男女共同参画担当をいたします閣僚の一人といたしまして、男女共同参画社会の形成の促進に努めているところでございますが、男女共同参画社会基本法の早期の成立のために一層努力をすることがこの道に通ずるものであると考えておるところでございます。
 何とぞ、議員を初め委員各位の一層の御理解をいただき、参議院において本法案の早期成立を図っていただきますよう改めてお願いを申し上げる次第でございます。

○矢野哲朗君 官房長官の強い御決意をお示しいただきまして、我々も来るべき二十一世紀に必要な事柄かなという思いでもって早期成立に最善の努力を尽くしたいと思います。
 そこでもう一つ、官房長官にその決意のほどでお伺いしたいのでありますけれども、今通常国会の予算委員会の折から、日の丸・君が代を法制化しようというようなことで、強い御決意のほどをお伺いした経緯がございました。その後、何かちょっとトーンダウンしたかななんて新聞報道にも載っていたのでありますけれども、まさかそんなことはあるまいと思うのでありますけれども、あわせて、この時間をおかりしまして、官房長官のあのときの思いをあと一度お示しいただければありがたいなと、ひとつよろしくお願い申し上げます。

○国務大臣(野中広務君) 一九九九年という年を迎え、やがて明年は二〇〇〇年、二十世紀の最後でございます。こういうときに、私どもはこの半世紀を振り返りながらも、いろんな問題について新しい世紀を前にして、政治家がみずから決断をしないで避けて先送りをしてきた問題が数多くあると思うわけでございまして、経済問題あるいは現在非常に深刻なそれぞれ産業を取り巻く構造改革の問題等、さまざまな問題について政治家として先送りした責任の重さというものを考えるわけでございます。
 そういう中におきましても、この国のありようを考えるべき私ども政治家が、今御指摘ございました国旗・国歌というものについても明治時代の太政官告示のまま、そのまま明確にしないで今日に及んで、そして国民の前にそれぞれ競技会とか大会とか、特にオリンピック等世界的な規模のものについてはすべてが共通の認識の中に立って国旗・国歌を認めておるにもかかわりませず、その根拠となるべき法律をなぜか先送りをしてまいりまして、先般のあの広島における石川校長のような悲劇を生むことになってまいりましたし、私もまた自分の経験を通じまして、根拠がないために残念ながら理解のいかないまだ小さな子供たちを混乱に巻き込むような不幸な事態を見てきたことを経験として持っておるわけでございます。それだけに、この際二十世紀末の我々の整理すべき一つの大きな事項として国旗・国歌のありようについて明確にしなければならないという意思を予算委員会等でもお答えしたわけでございます。
 政府といたしましては、これを受けまして、国旗・国歌に関しまして、内閣官房副長官の事務の副長官を中心にいたしまして、事務方を中心にして法制化に当たっての法的諸事項についての最終的な調整と検討を行っておる段階でございまして、国旗・国歌に関する法案につきましては、可能な限り早く国会の御審議をお願いできるように諸準備を進めてまいりたいと考えております。国会におきましても、一層の御理解と御協力をお願い申し上げる次第であります。

○矢野哲朗君 官房長官のあわせての強い御決意のほどをお示しいただきまして、私からも心から感謝を申し上げたいと思います。
 ぜひとも、やり残したことは本当にないような形で新しい世紀を迎える、これが我々政治家としての一つの大きな使命だろうと私も感じております。その一つとして今、問題提起をさせていただいたわけでありますから、ぜひとも官房長官、できる限り早い機会、今国会ということで理解していいわけですね。そういう理解のもと、速やかにこの法案も成立するように我々も最大限の努力をしたい、このことを申し上げて質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

○末広まきこ君 自由民主党の末広まきこでございます。
 きょうは、私の属します常任委員会が開かれているにもかかわらず、この男女共同参画社会基本法に関連して質問させていただく機会を与えていただきましてありがとうございます。感謝申し上げます。
 男女共同参画社会基本法の目的にこういう文言がございます。「男女の人権が尊重され、かつ、社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することの緊要性」、こういうふうにうたわれております。私は、女性と男性が社会のあらゆる分野において共同参画することは、男女の人権の尊重という考え方から要請されるものであり、その実現は本来いかなる社会経済情勢にあっても尊重されるべき課題であると考えますが、他方、社会経済情勢が急速な変化を示している今日においては、男女共同参画社会の実現が一層強く求められているのではないかとも考えております。
 先ほど来、石井委員の方からは、環境と並んで今日国民に身近で大変重要な法案であるというようなお話がございました。また、矢野委員からは、専業主婦がいなくなったら男は困る、専業主婦の役割を再評価してほしい、こういう率直な御意見も出ております。
 まず初めに、官房長官は男女共同参画社会の形成の意義を現在の我が国における急速な社会経済情勢の変化との関係でどのように見出していらっしゃるのでしょうか。これからお伺いしてまいりたいと思います。

○国務大臣(野中広務君) 女性と男性が対等なパートナーといたしましてさまざまな分野に参画をいたし、その個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の形成というものは、今日の少子高齢化あるいは経済活動の成熟化、国際化など、社会経済情勢の急速な変化に対応いたしまして、豊かで活力ある社会を実現していきます上におきましては、二十一世紀の我が国を決定する大きなかぎであるという強い認識と意義を私は有するものであると考えておるところでございます。
 このため、政府といたしましては、男女共同参画社会の形成を、政府の先ほど来るる申し上げておりますように重要課題として取り組んでいるところでございます。

○末広まきこ君 ただいま官房長官から、男女共同参画社会の形成は社会経済情勢の急速な変化に対応して豊かで活力ある社会を実現する上で二十一世紀の我が国を決定する大きなかぎである、こういうお答えを、大変力強いメッセージだと思うんですが、ちょうだいいたしました。
 日本の産業就業構造を見てみますと、女性の年齢別就業状況をあらわすグラフがございます。二十歳代前半と四十歳代後半をピークとして二つの山を描いて、三十歳代前半をボトムとするM字カーブを描いております。我が国においては、ちょうどボトムになっております三十歳代前半の女性であっても就業意欲が高いことから見まして、女性の年齢別就業状況がこのようなM字カーブを描いていることは、ある意味において能力のある女性が十分に活用されていなくて社会全体にとっても大きな損失である、そういう側面もあるのではないかと思います。
 そこで、我が国においては女性の年齢別就業状況がこのようなM字カーブを描いておりますが、他の先進国においてはどのような状況となっているのでしょうか、まずその点をお伺いいたします。

○政府委員(佐藤正紀君) 総理府におきましては、先ごろ、「男女共同参画の現状と施策 男女共同参画二〇〇〇年プランに関する報告書」、いわゆる白書でございますが、これを発表させていただいております。この中で、各部門におきます国際比較を試みたわけでございますが、女性の年齢別の労働力率について見ますと、韓国では我が国と同じようなカーブを描いているところでございます。アメリカ合衆国、カナダ、スウェーデン、ドイツ、ノルウェー等を見ますと、どちらかというとそういう中間段階での落ち込みがない普通の山形を描いていると理解いたしております。

○末広まきこ君 今、ほかの先進国における女性の年齢別就業状況について、きれいな台形を描いているというふうなお答えでございましたが、他の先進国に比べてこのようにM字カーブが存在するなど、我が国において女性の参画が進まないことの大きな理由の一つに女性が家庭責任の多くを担っているということがありまして、ほかの活動、例えば仕事ですとかあるいは地域活動、そういったものとの両立が困難であると思います。
 ただ、実はこのM字カーブも昔からこうだったのかなというと、これはどうも違うようでございます。戦後の高度成長のもとで女性の社会進出が進んだかのように思いがちなんですが、実はかつての農家や自営業中心の時代から産業構造が変化してきましてサラリーマンの時代になりまして、それで専業主婦化が進んだというのがどうやら事実のようでございます。以前は、女性も農業や自営業に家族とともに切れ目なく働いていたんです。特に最近では団塊の世代にM字カーブ、女性は家庭にという、これが浸透してきたように聞いております。
 平成十年の厚生白書には、二十五歳から三十九歳の女性有業者の離職理由、仕事をやめる理由として、結婚のため、育児のためというのが大きなウエートを占めております。平成八年七月三十日に男女共同参画審議会から出されました男女共同参画ビジョンにおきましても、今日の我が国の少子高齢化による労働力人口の減少に対処するには女性の就業率が重要である、重要な要因となっているというふうにしております。
 女性の就業希望の現状を踏まえると、就業と育児、出産の両立が可能になれば女性の就業はふえると考えられます。女性の就業と出産、育児の両立に対するお考えとその対策について、野中官房長官にお伺いいたします。

○国務大臣(野中広務君) 委員が御指摘なさいましたように、我が国におきまして家事、育児、介護等の家庭責任の多くを現在女性が担っておる実態でございまして、このことが御指摘のように女性の家庭生活と職業生活との両立を困難なものにしておるということはお説のとおりであろうと思うわけでございます。
 男女共同参画社会の形成を実現していきますためには、家庭生活におきます活動と他の活動との両立が重要でありますことから、この旨を基本理念といたしましてこの法律にも明記をしたところでございまして、働く女性にとっては家庭生活と職業生活との両立に対する男女共同参画社会基本法の効果、意義は大きいと考えておるところでございます。
 政府といたしましては、従来のいわゆるエンゼルプラン等の問題を十分政策の上に生かすことによりまして、またこの基本法の制定によりまして、男女共同参画社会の形成の基本理念に関する国民の理解を深めていきますとともに、基本計画の策定等を通じまして総合的、計画的に各種の措置を講じていきたいと考えておるところでございます。

○末広まきこ君 今、官房長官はエンゼルプラン等で対策を講じていっているというふうにおっしゃっています。確かに子育て支援、それから育児・介護休業法などの諸対策が行われております。大変意義深いと思いますが、今回の基本法案が現在の女性の置かれた姿を端的にあらわすM字型カーブの改善に対しましてどのような効果と意義をもたらしてくるのか、野中官房長官のお考えをお伺いしますとともに、政府の一層の取り組みに対する御決意もあわせてお伺いしたいと思います。

○国務大臣(野中広務君) 私が先ほどお答えいたしましたように、ただいま末広委員がおっしゃいますように、現在の女性を取り巻く環境というのは家事、育児、介護等、家庭生活に多くの負担が女性にかかっておるわけでございまして、この法律の成立を待ちまして、なお私どもは十分個別施策について、ただいま御指摘のような意見を反映できるように一層努力をしてまいり、またこの法律が男女共同参画社会の形成の基本理念ということをうたっておるわけでございますので、これが国民の皆さんの御理解を深めていくことによって、基本計画の策定を十分深め、総合的かつ計画的に各種の措置を講じてまいらなくてはならないとかたい決意を持っておる次第でございます。

○末広まきこ君 大変丁寧な力強い決意をちょうだいしたわけでございますが、もう少しこの問題を掘り下げていってみたいと思います。
 男女共同参画社会の実現は、少子化社会への歯どめの一翼を担うものであるというふうに期待をしております。子供を産むためにはまずその前提である結婚という状態が望まれます。ところが、二十年前と今日とを比較してみますと、未婚率が大きく変化、上昇しているのではないか。こういうことは一般認識として持たれているわけでございますが、ここで改めて、少子化との関連においてどのくらい未婚率が上がっているのか、具体的な数字を聞いておきたいと思いますので、厚生省にお越しいただいています、お願いします。

○政府委員(真野章君) 全般といたしまして未婚率が上昇いたしておりますが、特に若い世代の女性の未婚率は各年齢層とも上昇いたしております。例えば、二十五歳から二十九歳までの女性の未婚率でございますが、国勢調査によりますと、昭和五十年には二〇・九%でございましたが、昭和六十年には三〇・六%、平成七年には四八・〇%と、この二十年間で約二七ポイントほど上昇をいたしております。

○末広まきこ君 平成七年、四八%というのが最後のデータでございますね。少し古いかなという気もするんですが、五十年で二〇・九%、六十年で三〇・六%、その十年後で四八%ということは、五十年から六十年に一〇%ふえて、次の十年ではもう二〇%近い伸びをしているというふえ方、上昇の仕方なのでございます。ただいまでは恐らく五〇%を超えて、女性の二人に一人は二十代では結婚しないという数字がかたいと思います。
 なぜ女性は結婚を遠ざける傾向が高くなっているのか、これはもう大変大きな疑問でございます。好きな人ができても女性が結婚にためらいを感じるのはなぜなのか。その背景になっているのは、せっかく高い学歴と働きがいのある職を得ても、出産によってすべてを投げ出さなくてはいけない状況がある。つまり、出産後の社会システムの未整備が挙げられるのではないでしょうか。再就職で著しい条件劣化が見られます。仕事の内容も収入も以前と比べようもなく劣化いたします。せっかく男性と伍して頑張ってきたのに、好きな男性の子供を産むという極めて自然な行為を行った結果、女性の人生に挫折が訪れてしまうというのは大変残念です。
 結婚や出産などで途中退職した女性は、退職していない女性に比べて所得はどれぐらいの差が出るのでしょうか。以前、たしか経企庁の発表があったように記憶しておりますが、きょう、その数字をお持ちいただけましたでしょうか。

○政府委員(金子孝文君) 今、委員御指摘の点でございますけれども、平成九年度の国民生活白書、そこで、働く女性が出産、育児のために就業を中断する場合と就業を継続する場合の生涯所得の差について推計をしております。これは労働省の賃金構造基本統計調査のデータを使っていますので、現実に今、年功序列というのが日本のシステムになっていますから、そういうことが当然この推計の中に反映されているわけであります。
 その白書の分析でありますと、一つの例として短大卒の女性、この女性が二十歳のときに就職し、六十歳まで働く、これずっと働くわけですけれども、その場合には生涯所得が二億三千六百万円になるという推計になります。これに対し、二十七歳時に出産、育児のために一たん退職し、三十二歳時に同様の職種にフルタイマーとして再就職した場合には、生涯所得は六千三百万円減少するということですから、先ほどの二億三千六百万円の二七%が減少するということです。これは同じ職につくわけですけれども、三十二歳になったときにそれができなくてパートタイマーとして就職すると、現在だと大体九十万から百万ぐらいが平均賃金なので、百万のパートタイマーとして再就職するということで推計しますと、生涯所得は一億八千五百万円減少するということですから、七八%の減少ということであります。

○末広まきこ君 今さらながら驚く数字でございます。三十二歳で仕事に復帰して二七%生涯所得が減り、パートで復帰した場合には七八%減ってしまうということでございます。ですから、得るのは二二%であるということで、この数字というのは重く受けとめていかなければならない今後の大きな課題であろうかと思います。
 これに関しまして、突然でございますが、官房長官、何かコメントございますか。今の数字に対してのコメントで結構でございますが、知っていたとか知らなかったということでも結構です。

○国務大臣(野中広務君) 質疑の経過を承りながら、共通的な基礎的認識としては私どもも、現在我が国が抱える少子高齢化の進展する中におきまして、女性が職場を持ち、その仕事と出産と育児との両立を図っていく上において、生涯を通じて充実した人間形成を図るためにも、またこれからの我が国の経済社会の活力をどのように維持していくかということに対しましても、大きな課題であるとともに、私は深刻な問題だと受けとめさせていただいた次第でございます。
 仕事と育児との両立支援については、今までそれぞれ育児休業制度の定着や子供を産み育てながら働き続けることのできる環境整備等の施策を行ってきておるわけでございますけれども、今のような深刻な状況を考えるときに、改めて政府全体として子育てに対する社会的な支援を総合的にやっていく施策というものを十分考えてまいらなくてはならないし、保育、住宅、雇用、教育等あらゆる分野を含めて総合的な子育てを中心とする施策の一層の充実が私は必要であると認識を新たにした次第でございます。

○末広まきこ君 ありがとうございます。大変感銘を深くいたしました。
 本当にそういうふうに雇用の面からも、これは単に個人の所得が減るから損ではないかというような話をしているんじゃないんですね。今の人口構成によっていけば労働力全体というものが細まっていく、そういう中でやっぱりどう対応していくのかというこれは大きな政治課題だと思っています。
 次に、女性が結婚をためらう理由の二つ目として、職場優先の企業風土が挙げられると思います。
 経済至上主義の戦後復興期の日本においては、まさに企業戦士の時代が築かれ、バブル崩壊の日まで会社こそが生きがい、すべてという会社人間たちが、やむを得ずだと思いますが、家庭は妻に任せたよ、おれは会社のために一生懸命やるんだ、全身をなげうって会社のために尽くすんだ、こういう思いで突っ走ってこられた。これが男女の固定的性別役割分担の考え方の実践につながってきた結果であると思います。
 家庭は男女でつくるものという大昔からのこれは大前提なんです。女性の問題はイコールその女性と生涯かかわって生きていく男性の問題であるという、これはもうだれかの問題と切り離せるような問題じゃないんです。お互いに死ぬまでシェアしていく問題なんですね。そういう大前提を職場を優先する余りどこかに置き忘れてきたし、企業もまた戦後日本も必死だったんだと言えると思います。
 それで、今日、産業構造の大転換期を迎えて企業は残業を求めなくなったり、あるいは国際化の中で、会社も大事、家庭も大事、個人一人一人が大切といった認識が広まっていきつつあるように思います。企業も国民の一人として男女共同参画社会の形成に努めるべきであると思っておりますが、本法律の性格上そのような理解でよろしいのでございましょうか。
 再び官房長官、お願いします。

○国務大臣(野中広務君) おっしゃるとおりでございまして、この基本法におきましては、「国民は、職域、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、男女共同参画社会の形成に寄与するように努めなければならない。」責務を規定しておるところでございまして、このような本法案におきます国民の責務の規定につきましては、法人にもおのずから適用をされることが明確であると存じておる次第でございます。
 今、委員から御指摘のありました重要な問題というのは、企業も国民の一人としてこの法案の趣旨が十分生かされるように努力をしていただくよう私どもも啓発をしていかなくてはならないと考えておる次第でございます。

○末広まきこ君 今の点がまさにこの法案で一番懸念し心配していた点でございました。明快な回答をいただけたことは大変うれしく思います。
 育児休業法が制定されて、夫である配偶者も育児休暇をとることができるようになりました。男女共同参画社会基本法より先行して実施されているということは大変喜ばしいことだと思っております。
 そこでお伺いしますが、現在の時点で夫が育児休暇をとっているのは育休取得者全体の何%でしょうか。これは民間と公務員とで調査が分かれるそうでして、まず労働省、民間の方の数字を教えてください。

○政府委員(藤井龍子君) 平成四年から民間労働者に適用される育児休業法が施行されておりますが、平成八年度に私どもが行いました女性雇用管理基本調査によりますれば、この育児休業に関する規定を設けている事業所においてという限定つきではございますが、配偶者が出産した男性労働者に占める育児休業取得者の割合は〇・一六%、つまり妻が出産した男性労働者で育児休業をとった方というのは一万人に十六人という割合でございます。
 それでは、育児休業をとった労働者全体に占める男性の割合はどれくらいかということでございますが、男性が〇・八%、つまり女性は九九・二%を占めているという状況でございます。

○末広まきこ君 同じ質問を公務員の方の数字で、これは人事院にお願いします。

○政府委員(佐藤信君) 平成九年度におきます私ども人事院の調査によりますと、平成九年度中に一歳未満の子供を養育することとなった男性職員のうち、育児休業を取得した者の割合は〇・一二%でございます。また、実際に育児休業を取得した男女の職員のうち、女性は九九・五%、男性は〇・五%でございます。

○末広まきこ君 せっかくよい制度ができていても活用している人は少ないという大変寂しい現状でございます。これは何か、慣習にもあるんでしょうけれども、やっぱりそこそこの理由があるのではないのかなということで私は疑問を感じました。
 それで、夫が育休をとらない原因というのは何なのかということで個人的に少し調べてみました。圧倒的な理由は、職場の人たちへの気兼ねでございました。自分が一時的に抜けることによる職場の周りの人たちにかける負担。それでなくてもみんな手いっぱい仕事を持っているところへ私の分もお願いするわということで割り振っていく。同僚に対する気兼ねあるいは上司に対する気兼ねがあったんだと思いますが、これを考えると、まず言い出せない、行う前に言い出せない。加えて、自分自身のできるのかなという不安もあって、この二つが大きなためらい要因になっているようでございます。といっても、御承知のように、数字自体がとても低いですから、その低い中でピックアップして聞いただけですから、これはとても少ない回答だと思ってください。
 そこで、私は、この二点をクリアして三カ月間の育休をおとりになった男性を見出しまして少し取材してみました。貴重な体験談をお話しくださいましたことをこの場をかりてお礼申し上げたいと思います。
 その方は四十歳を過ぎて昨年初めてのお子様に恵まれました。まず妻が九カ月間育児休暇をとって、残る三カ月間、夫がとりました。職場の上司の絶対実現しようという心強い応援があってのことでございます。
 妻が夫の育休について、無理しなくていいんじゃない、あとはベビーシッターやおばあちゃんの応援をかりるから、こう言ったことが皮肉にも夫のためらいをぼんと後押しして決意を固めることになったんだそうでございます。これは本当に皮肉なことだと思います。妻が、こうしてくれなくちゃ嫌だとか、あなたもやるべきよともし言っていたら、この方の場合実現したかどうかは、非常にその実現性は薄かったようにお聞きしました。
 次の実技ができるかなという不安なんですが、これはウイークデーに日中ベビーカーを押して近所を歩いたりするのは人目が気になったそうです、つまり怪しい人ではないのかなと。さまざまな御自身の違和感があったそうです。育児をするうちにそのような違和感というのは吹っ切れてきて、それどころではない、没頭の日常が始まるわけでございまして、ほかの母親たちの姿を見るにつけ大したものだなという実感を得るようになったそうです。
 よく育児に疲れるという女性の声を耳にしますが、そういうときに周りの反応は結構冷たいんですね。育児に疲れた母親に対する反応というのは、やり方が悪いんじゃないかとか、何かそういう冷たい反応をするんですが、育児疲れというのは、まさにこの男性が体験したところによりますと、気が抜けなくて、しかも赤ん坊のペースで一日じゅう振り回されて、それに合わせてばたばたと生活して時間が過ぎて自分のペースがとれないという、仕事の疲労とは全く異なる疲労感であることを体験して、育児が大変だとわかってくれないのがつらいと打ち明ける女性たちの悩みをこの男性は身をもって体験した、わかったと。女性が育児がつらいということの理由がわかったというふうにおっしゃっていました。また、A型ベビーカーという寝かせた状態で移動する大きなベビーカーがございますけれども、これを抱えて駅やスーパーの上の階に上がることは、これはもう四十二歳の働き盛りの男性をもってしても困難であることから、町のバリアフリー化の必要も実感することになりました。
 これらの育児休暇体験を通じて、この男性は育児効果についてこのように語っています。仕事と違う喜びがあると。つまり、子供は泣きもするけれども笑いもする。この笑い声が自分を頼ってくれる存在として豊かな喜びを与えてくれたと、このように話していました。
 私は、この体験談を一時間半ぐらいお聞きしまして、大変幸せな思いでお聞きすることができました。人間らしい膨らみのある話だというふうに感じたからでございます。実際にやってみて妻の苦労や母の苦労を理解して支え合うことの大切さを実感する、男性の育児休暇がもっともっと実践的に広がっていくことを願っていますが、官房長官の御意見はいかがでございましょうか。

○国務大臣(野中広務君) 育児休業法ができまして、育児休業の権利というのは男女の働く者にひとしく与えられると認識しておりながら、先ほど来実際の育児休業の取得者の数字を聞きまして、非常に男性が少ないという認識は持っておりましたものの、これほどひどいという状況を改めて私は強くかつ深刻に考えた次第でございます。男女がともに育児するという家族の一員としての役割を円滑に果たすことができるようにするためにも、男性の育児休業の取得が進んでいく環境づくりというものをこれから努めていかなくてはならないと思うわけでございます。
 委員から、今四十歳で子供を持たれた方の育児に対する経験談を聞かせていただきまして、一つは、職場の環境というものをどのようにこれから男性が育児休暇がとりやすいような環境に持っていくかということの必要性、あるいはこれを阻害しておる育児のノウハウというものがこの数字に深刻にあらわれておるのではなかろうかと思いながら、そのことを思うと三十数年前ですが、私自身は随分夜泣きをするのを自分が起きておしめをかえたりなんかしたことを思うと、今の男性の方がおくれておるのかな、こんな思いをしておるわけでございます。いずれにいたしましても、私どもの経験を通しましても、なかなか育児休暇がそんなに簡単にとれない職場の環境というのはよく理解できます。けれども、最近の若い人たちと触れ合いながら、やはり厳しい職務環境の中にも、子供たちの育児を行うことの喜びというのを味わっておる、そういう経験を私どもさまざま聞くことが多うございます。
 いずれにいたしましても、この男女共同参画社会基本法が皆さんの御努力によって成立した暁は、諸施策について十分配慮を加えながら、今申し上げましたような男女ともに育児休暇がとれる環境づくり、あるいはそういうものがとりやすいようなまた職場環境というものがつくられるような一層の施策の充実には努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。

○末広まきこ君 大変御丁寧な答弁をありがとうございます。
 男性がそれだけ育児休業をとりにくいというのと同じぐらい、女性もやはり育児休業制度はあってもとりにくいのでございます。やめざるを得ないのでございます。それが本日の一番の言いたかったことでございます。男性に押しなべてとりなさい、これを流行にしなさいということでは決してございません。
 少子化の要因となっている女性の未婚率が高くなるのは、その主たる原因として男女の固定的役割分担の観念があって、女性にだけ負担のかかる現状を少しでも改善して結婚や家庭に夢を持てる社会を築くのが少子化への対応になり、職場だけを優先する習慣を改めて職場と家庭のバランスを図る社会環境を整えていくことが日本の将来を明るいものに変えていく原動力ではないのか、そういう意味でこの法案の重要性を認識するわけでございます。
 私も、平成七年の北京で行われました第四回世界女性会議に出席いたしました。これは念願であったわけですが、国会議員にもなっておりましたが、残念ながら自費で参りました。来年六月にはニューヨークで女性二〇〇〇年会議が国連で行われます。日本も早くその国際的地位にふさわしい男女共同参画社会を形成してほしいと願い、権利、主張が飛び交うのじゃなくて、もっとふわっとした、お互いを必要とし合う男女共同参画社会基本法の一日も早い成立を強く望んでおります。
 輝く未来と個性の多様化を尊重して、専業主婦もキャリアウーマンも、女性も男性もそれぞれの生き方を認め合うことによってこの基本法をより魅力あるものにし、時代の流れに沿ってその運用が豊かさを増すようになっていっていただきたい、こういう思いを込めて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

○委員長(竹村泰子君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   午前十一時四十七分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会

○委員長(竹村泰子君) ただいまから総務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、男女共同参画社会基本法案及び男女共同参画基本法案を一括して議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○江田五月君 私は、主として民主党・新緑風会提出の男女共同参画基本法案について質問いたしますが、折に触れ内閣提出の法案についても質問したいと思います。
 官房長官が先ほどからのお答えの中で、男女共同参画に関するこの基本法案というのは、二十一世紀の我が国のあり方を決めていく重要な法案だということをおっしゃいました。私もそう思います。もっと正確に言えば、そうなるような法律をつくらなきゃならぬというふうに思っております。
 我が国のあり方、形を決めていく、この一番の基本は憲法でございますが、第二次世界大戦直後に制定されました我が日本国憲法は、これはよく知られているように、国連憲章と理念をともにする、いわば二十一世紀の地球憲法にも通じる本質を持ったすばらしい憲法だと思っております。しかし、やはり五十年以上前の制定ですので、現在の社会環境とか二十一世紀の日本と世界のあり方を考えれば、それは不十分なところもあると言わざるを得ない。
 そこで、私は、準憲法規範と言うべき幾つかの基本法というものをつくって、そして今の日本国憲法の中身をそうしたことで豊富なものにして、そしてこれから十年ぐらい先、二〇一〇年ごろを目標にこれらの基本法体系を取り込んで新しい憲法典にしたらいいのではないかと考えたりするわけですが、そういう基本法体系の中には既に制定された環境基本法もある、あるいは先日衆参両院の大変な努力で可決いたしました情報公開法も、今後知る権利が明記されるなどすれば立派な準憲法規範になると思います。
 今、この委員会で審議されておる男女共同参画に関する基本法、どういうものを仕上げるかということですが、これも二十一世紀の日本と世界を展望した準憲法規範として極めて重要な法案だと、この国の形を決めていく法案だと思っております。政府提出の男女共同参画社会基本法案に対してもそれなりに一定の評価を惜しみませんが、しかしやはり準憲法規範という点から見ると不十分なところがあるのではないか。それは、これからの審議の過程で見ていきたいと思います。
 そこで最初の質問ですが、男女共同参画基本法、つまり参議院提出の方の発議者である小宮山議員にお尋ねをいたします。
 今回、民主党・新緑風会はなぜ政府案に対して対案というものを出したのか、民主党案と政府案との違いはどこにあるのか、簡潔に御説明いただきたいと思います。

○小宮山洋子君 今、江田議員からお話がありましたように、もちろん両性、男女の平等というのは憲法のもとに保障されていますし、午前中にも石井委員を初めいろいろな方からのお話にありましたように、一九七五年の国際女性年以来、四回の世界女性会議が行われた国際的な流れがあります。その中で、日本ではまだまだ男女の格差がいろいろな面に残っている、そうしたことの中から政府が政府案として今回男女共同参画に関する基本法について法案を出された、そのことについては私も一定の評価をいたします。
 ただ、今準憲法という言い方を江田議員はなさいましたけれども、憲法だけでは足りないもの、それを補って、すべて今ある個別法にも行き渡り、これからつくられる個別法にもしっかりと力を発揮する、そういう実効性のあるものにするためには政府案ではまだ足りないのではないか。
 それで、必要な点として、例えば苦情処理の法制化の問題ですとか地方での条例制定にいろんな格差がある中で結びつくようなこととか、何点か私たちはもっとそこをしっかり働けるものにする、よりよいものにするためのことを明記した法案を提出いたしました。
 これまで、ともしますと対案を出すというと政府案に反対だから対案を出すというそういう見方をされてきましたけれども、やはり私たちは立法府にいてよりよいものをつくっていくために議論をもっと深め、合意を形成していくために政党として私たちの案を持って臨むというのは当然のことではないか。そういうことから、よりよいものを皆様で議論を深めていただき、合意ができればその中から形成をしたい。そういう本意から提出をいたしました。
 もう一つ、国会の中だけではなくて、これまである基本法のうちしっかり働いているものは数少ないと思うんですが、それは法案の中に働けるような仕組みが盛り込まれたということに加えて、やはり国民全体の中にその法律をしっかり使おうという機運が盛り上がっていた、例えば環境基本法などですね。そういう意味からしても、私たちも、出しました法案を一緒によりよいものへ議論を深める中で国会の外でもこの法案についての認識が深まり、うまく使えるような機運が高まることも希望いたしまして私たちは法案を提出いたしました。

○江田五月君 男女の平等であるとか女性の地位の向上であるとか、あるいは社会的、文化的に形成された性差にとらわれない、それぞれが個人として自発的な意思でその能力や個性に応じて社会に参画をしていくとか、そういうものを求めて、この何十年というとちょっと長過ぎるかもしれませんが、少なくとも十数年、いろんな動きが起きてきた。そして、そういう動きの中で我が国でも、一九九六年の男女共同参画ビジョンや、あるいは男女共同参画二〇〇〇年プランや、そういうものもあり、男女共同参画審議会でいろんな議論がされて、そして政府が一つの合意を取りつけて今回の法案を提出された。そういう御努力はそれはもうまさに多とするし、そうして出てきた案についての一定の評価というものもそれはするんだと。
 しかし、そうしたいろんな議論の中で、例えば女性に対する暴力のことであるとか間接差別であるとか、あるいはリプロダクティブヘルス・ライツであるとか、あるいは地方自治体に対するいろんな施策であるとか救済措置であるとか、いっぱいいろんな論点があって、そうしたものは必ずしも政府が取りつけた合意の中にすべて包含し尽くされていない。しかし、これは重要な論点だからこうしたものも議論のテーブルにのせて、そしていいものをつくる努力をしようということだと思います。
 官房長官に伺いたいんですが、議会というのはどうもこれまでは、政府がある提案をする、野党はそれをいかにつぶすか、すべてをつぶすわけじゃもちろんありませんけれども、ともすればそういう対立の場のように見られてきましたが、どうもこの数年、もうそういう時代は終わったんじゃないか。そうでなくて、議会というのはやっぱり本質は議論と合意の形成だと。そういう議論、合意の形成、それに資するものとして、これまでの長い男女共同参画の議論の歴史の中で、政府案に包含されていないテーマについてテーブルにのせようという努力で民主党・新緑風会案が出されている。
 この皆さんの努力について、私もその努力をしている一人ですので余り質問するというのもおかしいんですが、ひとつ官房長官の見識を伺っておきたいと思います。

○国務大臣(野中広務君) 政府といたしましては、男女共同参画審議会の御答申をいただきまして、この答申に基づきまして今御審議を賜っております法案を提案させていただいた次第でございますので、何とぞ委員各位の慎重な御審議を賜って、それぞれ男女共同参画社会として二十一世紀にいい時代を築き上げる基礎をこの法律でお決めいただきますよう期待をしておるところでございます。

○江田五月君 政府がおまとめになって合意形成をなさったものについては今のお答えですが、それだけでなくて、もっとそうした流れの中でそこに必ずしも包含されないものがいろいろ論点としてあって、それを議論の場に出そうということで民主党・新緑風会が会派として法案をまとめて出したことに対する努力についてどうお考えになるかということです。

○国務大臣(野中広務君) 提案しております政府側として非常に申しにくい見解を求められておるわけでございますけれども、一人の立法府にある者といたしまして、従来の議会、政府案とのあり方と変わりまして、先般の情報公開法に見られますように、それぞれ各党が議論をされ集約をされ、そしてよりよいものを結論として導かれ、さらにそれが衆議院の満場一致の議決となり、なお参議院においてこれを補足して衆議院に回付され、衆議院もまた参議院の決定を認めていくというこういう院のあり方としては、新しい合意形成を求める議会制度のあり方として私どもは高く評価をしておる次第であります。

○江田五月君 そういう御理解でぜひともいい男女共同参画システムをつくるためにみんなで合意形成に力を尽くしていきたいと、官房長官もそのことをお認めいただいたと理解をしたいと思います。
 昨年の金融国会の場合でも、内閣がお出しになった法案に対してでさえ、大蔵大臣がそれを出したからそれと別の合意をすると恥になるんだとかなんだとかそんなことは言う必要はないんだ、議論の素材なんだということを言われていたわけで、ぜひとも実りある合意に向けて努力することを官房長官もお認めいただきたいと思っております。
 準憲法規範としての男女共同参画基本法というものの意義について触れましたが、もう一つ民主党・新緑風会案について述べてみたいと思うのは、今回の統一地方選挙の大きな特徴です。都道府県議選でも市町村議選でも女性議員が大躍進をした、これは私は今回やっぱり非常に大きな特徴だと思っております。
 全国いろんな例がこれからだんだん紹介されてくると思いますが、例えば、自分のことを申して恐縮ですが、私の住んでおります岡山市ですと、これまで五十四人の市会議員中五名女性の市議がいました。二人が引退されました。現職三になるわけですが、その現職三が全部当選して、さらに四名新人が当選して、定数が五十二に減る中で女性議員が七名登場してきた。立候補自体は十人。あるいはまた、投票率を見ますとこれがすごいんですね。市議選の投票率、男は四九・八四%、女性の投票率は五四・五九%、ざっと四・七五%からの差がある。女性の方が有権者の人口が多いのに率も高いというのは、やはり女性が今行動し出しているというときだと思うんですね。政治の分野に限らず、経済の分野でもあるいは国際社会でも地域社会でも元気印の女性たちが大活躍をしている。
 私は今回の法案を見るときに、今の日本社会を一定の満足すべき社会だと見て、そしてその社会が到達した利益を男性だけじゃなく女性も享受できるようにしよう、こういういわば現状追認型の法案というのが一つ考えられるだろう。これは女性の問題を解決するという視点の法案と言えますかね。そうじゃなくて、今の日本社会はまだひずみや欠陥が多い社会だ、むしろ元気印の女性の力がますます発揮されて、その女性の力で社会のひずみや欠陥を是正していく、そういう意味で男女共同参画を推進していくことで女性の力と男性の力で社会の構造改革を実現する、いわば推進型の法案、社会のシステムを変えていく法案、こういうものもあるだろう。
 さて、我が国の政治経済、どうも土木、建設偏重の公共事業や重厚長大型の産業構造を改めて、ハードで硬直的な社会から、健康、医療、福祉、環境、教育などを重視するソフトで柔軟性のある社会へと構造改革をしなきゃならない、そういうときに来ているわけですが、これなども男性中心社会から男女共同参画社会への転換ということになるんだと思います。
 どうも私は、政府案は非常に幅の広い意見のばらつきの中で一生懸命合意を探られた、そのことはそれで大切なことですが、その合意の形成に注意を払う余り現状追認型になっているんじゃないか。女性の地位向上ということはあるにしても、もっと何か世の中、構造改革をしようという視点がなければいけないんじゃないか。そういう意味でいえば民主党案は共同参画推進型だと思いますが、小宮山議員、どうお考えになりますか。

○小宮山洋子君 江田議員のおっしゃるとおりだというふうに思います。
 私もやはり、現状追認型と言われましたけれども、女性をある程度のところまで引き上げればそれでよしということではなくて、今この日本の社会のいろいろな状況を見てどなたも思われると思いますが、基本的に構造を変えなければいけない。構造を変える上で、今、江田議員が言われたように女性は元気だ、それも一つありますけれども、もう一つ言わせていただければ、これまでの社会の仕組みは圧倒的多数の男性の皆さんが決めてきた、だから違う価値観を持った女性がもっとそこで自分の能力をいろいろなバイアスのかからない中で発揮することで構造改革がより速くよりよく進められる、そういう意味からしましても私は男女共同参画で社会システムを変えることを推進する形にするべきだというふうに思っております。
 その点からしますと、やはり私どもが法案を出した理由の一つとしては、そういう男女共同参画推進型の社会をつくっていくための基本法としましては、その方向性が一つはもっと明確になる必要があるのではないか。それは、例えばそれに必要な法整備をするとか、法改正をするとか、予算の措置をきちんとつくるとか、個別に行き渡るまできちんとその方向性が示されているかといえば、それがまだ足りないのではないか。
 もう一つ、推進をしていくためにはエンジンが必要なわけですけれども、そのエンジンの大きさを、今、江田議員は現状を余り変えずに追認、追従型というような言い方をされましたけれども、政府案の場合は余り波風を立てずにゆるゆると小さなエンジンで進めていきましょうというふうに私たちには受け取れる。だけれども、今二十一世紀に向かって少子高齢社会、情報化、国際化、いろいろ変わらなければいけない中で、小さなエンジンでゆるゆる進んだのではなかなか変わっていかないのではないか。やっぱり一定の大きさを持ったしっかりしたエンジンをつける必要がある、そういうふうに私は考えております。

○江田五月君 今回の男女共同参画ということについての議論の大きなポイントにジェンダーの視点というのがあると思います。ジェンダーの視点という言葉自体はどれほどなじんでいるのかいないのかちょっとわかりませんが、ちなみに、官房長官、ジェンダーの視点というのはもちろん聞いたことは当然おありだと思いますが、この政府案にはジェンダーの視点というものはあるのかないのか、これはどう御認識になっていますか。

○国務大臣(野中広務君) 御審議をいただきました男女共同参画審議会の答申におきまして、ジェンダーということはすなわち社会的、文化的に形成された性別というように表現をされておると認識しておる次第でございます。

○江田五月君 性別という言葉かもしれませんが、性差という言葉も最近はよく使われているようで、社会的、文化的に形成された性差、あるいは社会的、文化的に形成された男女の役割分担の固定化された意識といったそんなようなものかという気がするんですが、この政府案の方で見ると基本法、第一章、総則、(目的)、第一条、その後にこの法律は男女の人権が尊重されと、ぽんと出てくる。
 さて、男女の人権というのは一体何だろう、非常にわかりにくいんです。女性の人権というと男性と差別されないという、大体そういうことだろうと思いますが、男性の人権で女性と差別されないという、そういう差別されないということが男女の人権という中に入っているのかいないのか、非常にわからない言葉が一番最初に出てきます。
 しかし、この官房長官がお読みになりました提案理由説明で見ますと、ある程度わかってくるんです。個人の尊重、法のもとの平等、男女平等の実現、しかし現実に社会経済情勢の急速な変化に対応していく上でも、女性と男性がその人権を尊重し、喜びも責任も分かち合いつつ、性別にとらわれることなく個性と能力を十分発揮できるようなそういう男女共同参画社会というのはまだできていない、それを目指さなきゃならぬ。そして、その次には今度は、人々の意識の中に形成された性別による固定的役割分担意識、これが男女共同参画を妨げる、そんなことをずっと言われて、その後に男女が性別により差別的取り扱いを受けないこと等の男女の人権、こういうつながりになって男女の人権という言葉が出てくるので、やはりそれだけのいろんな説明がなければ男女の人権というのはわからない。
 その点で言えば、民主党・新緑風会案の方は前文というものをつけて、そこに男女の問題についてきっちりしたことをお書きで、そして今のような憲法の原則、さらにまた、ジェンダーのバイアスのかかった世の中を変えていく、意識の変革も必要、そうした意味で、個人の人権が尊重され、かつ男女が社会的、文化的に形成された性差にとらわれずその個性と能力を発揮する機会が確保されるように行っていかなきゃならぬということがずっとあって男女の人権という言葉が出てきますから、ジェンダーの視点から男女の人権というものをとらえてこれを確立していこうという方向なんだなということがわかるわけです。
 私は、やはり政府案もジェンダーの視点ということを考えるならば、そうした男女の人権とは何かというものがちゃんとわかるような少なくとも前文のようなものが要るんじゃないかと思いますが、まず小宮山議員、そのあたりについてどうお考えになりますか。

○小宮山洋子君 私もそのように思います。
 男女共同参画という言葉自体がなかなか理解されない中で、この法律が先ほどから申し上げているようにきちんと基本法として機能していくためには多くの人が理解をしなければいけない、そのためには今の点も含めて前文をつけてわかりやすくするということが一つ必要な条件ではないかというふうに考えております。
 それからもう一つ、ジェンダーの方のこともお答えしていいでしょうか。
 民主党・新緑風会の案では、男女の人権の尊重、ジェンダーの視点ということにつきまして、前文で、今御説明があったようにわかりやすく前提として、「個人の人権が尊重され、かつ、男女が社会的文化的に形成された性差にとらわれず、その個性と能力を発揮する機会が確保されるよう、社会のあらゆる分野において男女共同参画の促進を図っていく必要がある。」ということで、ジェンダーの視点をしっかりと入れてあります。
 ということは、ジェンダーの視点を入れる必要があるということは、今やはりそれだけのいろいろなジェンダーのバイアスがかかった状態にあるという現状認識をきちんとしておかないと、この基本法をいい形で働かせるわけにはいかないのではないか。そういう考えもございまして、ジェンダーの視点はやはり明確に入れるべきという考えをとっています。

○江田五月君 私の時間はそろそろですが、官房長官に、今のこと、つまり男女の人権と突然唐突に出てきてもなかなかわかりにくい、前文などそういうものをちゃんとつけて、そして男女の人権というものがなるほどこういう文脈で出てきていて、こういうことをやろうとしているのだなというのがもっとわかりやすくなるような工夫が必要ではないかという私の指摘についてどう思われますか。

○国務大臣(野中広務君) 第一条におきまして、男女の人権という表現を使いまして、単に人権という規定にしないで男女の人権と規定をいたしておりますのは、人権につきましては性別に起因する問題という観点を強調したものでありまして、したがって男女の人権の享有主体はすべての人でございまして、外国人の人権や子供の人権のように一部の人を対象とした人権のようにとらえ方がされがちでございますので、ここで男女の人権とした次第であり、また男女の人権は第三条に規定をいたしておりますように、必ずしも性別による差別的取り扱いを受けないことのみを指すものでもございませんし、例えば女性に対する暴力のような男女の個人としての尊厳にかかわる問題も、性差に起因する問題として、ここに言う男女の人権の問題に含まれるものと考えるわけでございます。
 また、性差にとらわれず男女が個人としての能力を発揮する機会が確保されることも同様に含まれると考えて、ここに男女の人権という規定をしたわけでございまして、前文につきましての御見解は委員会で御審議を賜りたいと存じますし、私がお答えをすべき立場にないと思うわけでございますが、第一条で男女の人権という規定をいたしました理由を申し述べた次第でございます。

○江田五月君 今の官房長官のお答えの中にある女性に対する暴力をなくそうと、これなども非常に重要なテーマの一つなんですが、残念ながら政府案にはそのこと自体というのがしっかりと入っていないんです。私どもの方には、「人権の確立」の中に、女性に対する暴力の根絶ということをしっかりと一項目立てて書いてあるとか、そういうような違いがあるわけです。そのほかにも間接差別のこと、あるいは積極的是正措置、リプロダクティブヘルス・ライツ、あるいは自治体での条例制定などのこと、基本計画における具体的な項目のこと、苦情処理、救済のための組織、いわゆるオンブズパーソンのこと、あるいは国際社会との協力、協調のことなど、さまざまな工夫をしておるわけですが、時間がないので、またこうしたことについては私どもの提出者に後刻伺う機会を持ちたいと思います。
 どうもありがとうございました。
    ─────────────

○委員長(竹村泰子君) この際、委員の異動について御報告をいたします。
 本日、足立良平さんが委員を辞任され、その補欠として川橋幸子さんが選任されました。
    ─────────────

○小宮山洋子君 今度は政府案について質問をさせていただきたいと思います。
 まず、この基本法制定の目的、「男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。」となっていますけれども、やはり目的に、男女の平等の実現ということが私たちはその目標としてはあるのではないかと思っていますので、そういったニュアンスのことを、そのとおりの言葉でないにしても、そうしたことを目指すということを入れるべきだと考えますけれども、官房長官はどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(野中広務君) 先ほどもお答えいたしましたように、本法案の第一条には男女の人権が尊重される社会を実現することの緊要性にかんがみまして、男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを本基本法の目的とすることが規定されておる次第でございます。
 また、男女共同参画社会の形成につきまして、この基本理念の一つでございます男女の人権の尊重を定めた第三条におきまして、男女共同参画社会の形成は男女が性別による差別的取り扱いを受けないことを旨として行わなければならないことを規定しておるわけでございます。
 このように、この法案上、男女が性別による差別的取り扱いを受けないということは、法の目的や男女共同参画社会の形成をする上での基本的理念とも密接に関連をしておりまして、私どもは明確に規定をされておると考えておるところでございます。

○小宮山洋子君 少し前にいたしました江田委員との議論の延長に、またここも同じことですので、なってくると思うのですが、男女の人権ということでも、先ほどそちらの席でも申し上げたように、やはりジェンダーの視点ということを入れませんとはっきりしないのではないか。
 そこで、ジェンダーの視点というのは、先ほど官房長官からもお答えいただきましたが、私どもは社会的、文化的に形成された性差という言い方をしております。性別、性差、いろいろ言い方はございますけれども、性別というのは広辞苑を引きますと、「男性と女性との別。雄と雌との別。」と書いてありまして、これは生まれながらの男女の差、いわゆるセックスによる差を言うのに当たる言葉なのではないかと思います。性差というのは、「男女の性格特性や性能の差。」と、性能と言っていいのかわかりませんが、広辞苑ではそのように書いてございます。私どもが言っている社会的、文化的に形成された、だれがつくったのか、私たちが日々繰り返しつくり上げてきている女らしさとか男らしさとか、男の役割、女の役割、こういうことを言うのには、やはり私は性別というよりは社会的、文化的に形成された性差と言った方が明確になるのではないかと思っておりますので、私どもの法案ではそういう言い方を使っています。その社会的、文化的に形成された性差、ジェンダーという視点を入れて現状認識をしないと、せっかく基本法をつくりましてもそれがしっかり働くということは難しいのではないかと私は思います。
 官房長官、繰り返しになりますけれども、もう少しこの点のお考えを聞かせていただきたいと思います。

○国務大臣(野中広務君) 大変こういう問題にお詳しい小宮山委員に私の方からお答えするのは当を得ていないかもわかりませんが、社会的、文化的に形成された性別、いわゆるジェンダーという言葉は、一般的にはお話のように大変理解されにくいという意見が男女共同参画審議会の御審議の過程におきましても随分出された問題でございますし、昨年六月に公表をされました男女共同参画社会基本法の「論点整理」に対する意見の中で出されたことも踏まえまして、この基本法案におきましては、社会的、文化的に形成された性別、これをジェンダーという言葉は用いておりませんけれども、委員が御指摘のジェンダーの視点は、第四条の「性別による固定的な役割分担等」という言葉に表現をされておると考えておるところでございます。

○小宮山洋子君 この問題だけを繰り返していても時間があれなのですが、私はこれは目的の中、あるいは前文も含めて、まずこの基本法自体がどの方向を向いて、個別法に向かっていろいろなことができるような仕組みをつくるのかということを明確にするためにも、やはりジェンダーの視点というのはぜひ必要なのではないかというふうに思っております。
 次に、第二条のところ、定義の部分ですけれども、ポジティブアクションの訳だと思いますが、積極的改善措置という言い方をとられています。これは中間報告の段階では改善措置という言い方ではなかったのではないかと思うのですが、私どもはこれをより強い意味を込めて積極的是正措置としております。これはとり方の問題かもしれませんけれども、改善というのは今あるよりもちょっとでもよくなれば改善、例えばゼロのものが〇・五よくなっても改善と言うのではないか。是正という場合には、これを正しくするということですから、マイナスの状態が非常に強ければ、そこを少なくともニュートラルなところまで持っていくという意味合いが込められて、私は是正措置と言う方が的確ではないかと思いますけれども、この点はどのようにお考えでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) 積極的改善措置についてのお尋ねでございますが、英語ではポジティブアクションと通常言われているようでございます。この言葉の訳語につきましてはいろいろな訳され方があるようでございますが、本法案におきましては、昨年十一月の男女共同参画審議会の答申の中で、「男女共同参画社会の形成を阻害している事情を改善することを目的として必要な範囲内で暫定的に行われる性別による異なる措置を妨げるものではない。」というような御提言をいただいていることを参考にいたしまして、積極的改善措置という言葉を使わせていただいたところでございます。

○小宮山洋子君 これは政府案に対するNGOの意見などからも幾つか挙がっていたと思うんですけれども、私はやはり改善というのでは非常に何かあいまいというんでしょうか、どこまでよくするかということがあいまいになる。あいまいにした方が、先ほどのエンジン論でいきますと、小さなエンジンで波風立てずにちょっとずつ改善しましょうということなのかなというふうには思いますけれども、やはりこれはより強い意味を込めて積極的是正措置とした方がより明確になるというふうに私どもは考えております。
 そして次に、第三条の「男女の人権の尊重」の項目の中で、「男女が個人として能力を発揮する機会が確保されること」となっていますけれども、これは機会が確保されるのみならず、結果の平等もやはり確保されなければならないのではないかと思います。
 ただ、結果の平等といったときに、個人の能力に差があるのは当然だとかいろんな議論があると思いますので、機会が確保され、そして個人として能力に差がなければ結果にも差があってはならないという意味での結果の平等の確保ということも含まれるというか、入れるべきではないかというふうに考えますけれども、この点はいかがでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) 男女共同参画社会につきましては、第二条の第一号におきまして、男女が社会の対等な構成員として、みずからの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保される社会と、こう定義を置いておるところでございます。
 このように、男女共同参画社会は、みずからの意思によって参画する機会を確保するという社会でございますので、第三条におきましては、「能力を発揮する機会が確保されること」とすることがその趣旨にかなうものと考えてこれを規定したところでございます。
 また、男女それぞれが発揮する能力に対する評価につきましては、同条におきます「男女が性別による差別的取扱いを受けないこと」との規定を受けまして、性別にとらわれることなく適切に評価がなされるものと考えております。

○小宮山洋子君 そして、同じ第三条の中ですけれども、次の点ですけれども、「性別による差別的取扱いを受けないこと」ということが政府案にはありますが、ここにやはり間接差別の禁止ということも盛り込むべきなのではないでしょうか。私たちは、間接差別を盛り込むべきだと考えまして、「直接的には性別による差別的取扱いをするものではないが、その結果として、男女のいずれか一方に対し差別的効果をもたらすことになる取扱い」を性別による差別的取り扱いに含むこととするということで、私たちの案ではいわゆる間接差別を明記しております。
 これにつきましては、間接差別の定義が難しいとか、もちろん審議会の中でもいろいろ議論があり、NGOその他の皆さんからの意見の中にも間接差別について多くの意見があったということは承知をしております。確かに定義は難しいという意見はございますけれども、これは論議を深めて、間接差別ということをきちっと明確に定義して、そこまでこの法律が及ぶようにしませんと、やはり真の男女共同参画という形には私はなり得ないのではないかというふうに思っております。
 例えば、平成六年六月に、東京地裁で三陽物産の賃金女性差別事件判決というのがございました。これはその間接差別の一つが世帯主条項にあるということを含めての判決なんですが、世帯主、非世帯主の基準というのは、形式的に見る限りは男女の別によって本人給に差をつけるものではないが、その適用の結果生ずる効果が女性の従業員に一方的に著しく不利益となることを容認してその基準を制定したものだとして、女性差別を認定している。これは間接差別の例なのではないかと思っています。
 また、国連の女性差別撤廃委員会も、九五年の一月に日本政府に対して、私企業において昇格や賃金に関して女性が直面している間接差別に対処するためにとった措置の報告ということを求めております。
 これは、職場での昇進、昇格、賃金差別などの是正を実現するためにはやはり明確な間接差別の定義が必要であり、そのことがここの条文に盛り込まれるべきだという考え方なのですけれども、この点につきましてはどのようにお考えでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) この法案におきましては、差別的取り扱いというのはそれだけの定義でございまして、間接差別、直接差別という別はいたしておりません。これは、いわゆる間接差別の概念自体につきまして、何を間接差別と言うかということにつきましては、先生もお話しになりましたように、非常にいろいろ意見が分かれておりまして、コンセンサスが得られにくいということがございます。
 この点につきましては、審議会の中でもいろいろな御議論がございました。結果といたしましては、先ほど先生もおっしゃいましたように、性的な取り扱いを異にするということではなかったにしても、結果として性による差別であったということにつきましては、実際の裁判実務におきましても差別的取り扱いと認定をされておるという実態を踏まえますと、特に間接差別という定義を置くことなしに、差別的取り扱いと言えばそれで十分ではないかという議論もございまして、法律上は差別的取り扱いという用語で一本化したものでございます。

○小宮山洋子君 今、一本化して取り扱ったと言われましたけれども、定義することが難しい、だから一本化するとなりますと、間接差別ということをきちんとそこで定義してこういうものだということにしていかないと、ますますあいまいになって、やはり間接差別の部分というのは非常に抜け落ちやすくなると思うんです。そこの一本化されたという理由が今の御説明ではちょっとわかりかねますけれども、いかがでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) むしろ、細かな定義を置くよりも、結果として差別的取り扱いと認定されるという方が我々としては範囲としては広いのではないかということも考えておりまして、差別的な取り扱いという言葉一本に絞ったということでございます。

○小宮山洋子君 結果としてその方が広く認定されやすいというのは、それはやっぱり小さなエンジンをつけてゆるゆるとやっていくか、ある程度のものをきちっと盛り込んでおいて一定の速度で世の中を男女共同参画に変えようとしていくかという基本的なスタンスというか考え方の違いなのではないかというふうにも思います。私はやはり、民主党・新緑風会の案が盛り込んでいますように、間接差別についてもきちんと盛り込むべきだというふうに考えております。
 それから、先ほど一部江田委員の質疑の中でも出てまいりましたけれども、三条の人権の確立、尊重ということについて、女性に対する暴力の根絶ということが不可欠だというふうに思いますけれども、この点が政府案には入っていない。これはどうしてなのでしょうか。この暴力に関することにつきましては、官房長官の基本的なお考えを伺いたいと思います。

○国務大臣(野中広務君) この法案は、男女共同参画社会の形成を、先ほども申し上げましたように、総合的かつ計画的に推進することを目的とするものでございます。すなわち、男女共同参画社会につきましては、その形成についてコンセンサスをつくることが必要でありまして、個別事項を織り込むというのは、これからなお基本法の後、本来、各論、個別的事項を織り込んで施策を進めていくという考えの上に立たなくてはならないんではないか。
 委員がおっしゃるように、小さいエンジンか大きいエンジンかという違いの解釈にもなるかもわかりませんけれども、私たちとしては、男女共同参画社会の実現というものは、この基本法をもとといたしましてコンセンサスをつくっていくという、これにより重点を置くべきであると考えておるわけでございます。
 したがいまして、女性に対する暴力の問題等個別具体的な施策はこの法案の中には具体的には規定をいたさないで、この法案につきましては、基本理念といたしまして第一に、男女の個人としての尊厳が重んぜられること等男女の人権の尊重を織り込むこととしておるところでございます。
 この基本理念に照らしますと、女性の基本的人権の享受を妨げたり自由を制約する女性に対する暴力は決して許されるものではないわけでございまして、その点につきましては御理解をいただきたいと思う次第でございます。

○小宮山洋子君 今、総合的、計画的にということで、個別の事項については言及をしないということでありましたけれども、後ほど、その個別の事項についても基本計画のところでまた改めて伺いたいと思いますが、女性に対する暴力の撤廃というのは決して私は個別事項ではないのではないかというふうに思います。それは、国際的な流れからいたしましても、女性に対する暴力撤廃宣言が採択されていたり、女性に対する暴力が人権の問題だということで、ウィーンでの人権会議を含めて、これはもう大きな一つのテーマになっているわけですので、決して、これは個別な事項だからそこに明記しないというそういう範疇に入るものではないのではないかというふうに考えます。
 そして、午前中の審議の中で石井委員からもお話ありましたように、御一緒しています参議院の共生社会に関する調査会でも、国会としては初めて本格的にこのテーマを取り上げているところです。その共生社会の調査会も、これからどういう方向で進めていくか、また議論を進めていくことになっています。
 一方また、この共同参画のための基本法のもとをつくりました総理府の男女共同参画審議会の中でも、大きなテーマとして二つの部会ができている。その基本問題部会でつくり上げたのがこの基本法のもとでありますけれども、もう一つは、女性に対する暴力部会という部会を設けて取り上げているということは、この基本法をつくることと並んで大切な大きなテーマだとして女性に対する暴力の撤廃、禁止ということを考えているんではないでしょうか。
 ですから、これは決して個別の小さなテーマということではなくて、きちんとこの基本法の中に少なくともその筋道を明記すべき大きな事柄だと思うのですけれども、重ねて伺いたいというふうに思います。

○国務大臣(野中広務君) 私も、女性に対する暴力が現在深刻な状況にあることは十分認識をし、委員の御発言を否定するものではございません。ただ、委員からもお話がございましたように、今、男女共同参画審議会におきましてせっかく女性に対する暴力問題等を含めて御審議を賜って、近くまたその御答申をいただくことにいたしておりますので、この法律におきましては、いわゆる男女の人権の尊重という表現で包括的にすべてをあらわすようにいたした次第でございます。

○小宮山洋子君 今、調査会などでもいろんな調査をしたり、いろいろほかのところが調査した結果などを見ましても、人権の問題だと考えていない人すらいるわけですね、例えば夫から妻へあるいは恋人からの暴力というのは。それはもう女性の人権を阻害するものだという認識すら持っていない人も中にはあるわけですので、せっかくこれからつくる基本法が、やはり女性に対する暴力を撤廃する、禁止するためのそういう例えば法整備をするとか、いろいろな取り組みをするための方向性をきちんと示す必要は私はぜひあるのではないかというふうに思います。
 総理府の審議会の中でも、この五月か六月にはとりあえずのその結果が、報告が出るとは聞いておりますけれども、まだまだ法整備をするという段階ではなくて、現状を把握し、これからどうするかという段階なのではないかと思いますので、これからそちらの方の動きが、きちんとやはり暴力を禁止することにつながる法整備、あるいは今の法律の見直し、それから被害者の救済とか、いろいろな多方面なことで実効性のある取り組みをしていくためにも、この基本法の中に女性に対する暴力の撤廃ということは何らかの形できちんと盛り込んでおく必要が私はあるというふうに思っております。
 官房長官でなくても政府委員の方でも結構ですのでちょっとその辺を、しつこいようですけれども、ここは非常に私は大切な問題だと思いますので、もう一度お答えをいただきたいと思います。

○政府委員(佐藤正紀君) 我々が基本法を提案した背景にちょっと言及させていただきますと、男女共同参画社会をつくるという大命題に立ちまして基本理念を明らかにいたしまして、それを各方面で御議論いただきまして、そういう社会を形成していくというコンセンサスをつくるということがまず第一の重大事だと思っております。それを踏まえた上で、各分野におきましていろいろ御議論いただいた上で、各個別の分野につきましていろいろ改善を加えていくということになろうかと考えております。そういうことも考えまして、個別の分野につきましての規定はこの法案には盛り込まなかった、こういうことでございます。

○小宮山洋子君 同じ繰り返しの御答弁なので、これ以上議論をしても余り意味はないと思いますが、私はあくまで一つの個別の問題だとは考えておりませんので、またこの委員会でいろいろ審議をしていく中で、各党の御意見も伺いながら、できればいい形で何か一言ぐらいはどこかにその道筋をつけるものを盛り込むべきではないかということを申し上げて、この点についてはとりあえず質問はここで切り上げさせていただきたいと思います。
 次に、第七条の「国際的協調」の部分なのですけれども、「論点整理」の中では「国際的に確立された理念の尊重」ということがあったと思うのですけれども、今回出てきました政府案の中にはそういったことが見当たらないようでございます。私たちの法案では、国は女性差別撤廃条約やその他の条約、国際約束を誠実に履行するために必要な措置を講ずるということを明記しています。
 なぜそういうことが必要だと申し上げるかといいますと、女性差別撤廃条約というのは女性たちにとっては憲法のようなものですけれども、ここで規定されたさまざまな条項、当然日本はとっくに批准をしているわけですけれども、いまだに十分に実現されていないわけです。もちろん、政策方針決定過程への女性の参画など国際水準からも著しくおくれている。その辺をしっかりと男女共同参画にしていくためにも、やはり女性差別撤廃条約を初め、そうした国際条約に盛り込まれていることをしっかり実行していくという意味合いのことをこの基本法の中に盛り込むべきではないかというふうに思いますけれども、この点はいかがでしょうか。

○国務大臣(野中広務君) 委員が御指摘されておりますとおりに、男女共同参画審議会の基本問題部会におきまして昨年の六月に公表されました中間的な取りまとめであります「男女共同参画社会基本法の論点整理」におきましては、「基本理念」の中で「国際的に確立された理念の尊重」と表現して挙げられておったところでございますが、昨年十一月に最終的に男女共同参画審議会の答申がまとめられましたところでは、この文言は「国際的協調」という言葉に整理をされたところでございます。我が国の男女共同参画社会の形成の促進に際しまして、女子差別撤廃条約等我が国が締結をいたしました条約を誠実に実施をしていくという趣旨につきましては、本法案の基本理念の一つである国際的協調に十分含まれておると解釈をするわけでございます。
 女子差別撤廃条約は、女子に対する差別の撤廃を目的とした女性の人権に関する基本的な国際規範であると認識をするわけでございまして、その遵守に努めていくことは言をまたないところでございます。今後ともこの条約を誠実に遵守するとともに、国際的な動きを踏まえながら、女性の人権に関し適切に対応してまいらなければならないと考えております。

○小宮山洋子君 遵守に努めるというふうにおっしゃいましたけれども、なかなか遵守されていない現状があるということを申し上げているのです。
 例えば、女性差別撤廃条約の第二十四条には、「自国においてこの条約の認める権利の完全な実現を達成するためのすべての必要な措置をとること」というようなことも定められているわけです。そういう意味からしまして、やはり国際的に確立された理念を尊重して、それを守っていく、必要な措置を講じていくということをこの基本法の中に私は盛り込むべきなのではないか。
 今これは女性の問題で言っておりますけれども、例えば労働に関するILOの条約ですとか子供のことについては子どもの権利条約とか、いろいろな国際的な条約も日本は批准はしているわけです。私たちから見ると、国際的なおつき合いというか国際的な流れの中で批准はしましょうと。だけれども、守るという約束をしたら、多くの国は約束したことを実現するための法改正をしたり新たな法律をつくったり予算を組んだり、実現のための、その理念を尊重してそれを守るための必要な措置というのをとっているわけです。ところが、日本では、例えば子どもの権利条約などにしましても、全く法は改正する必要はありません、予算をつける必要はありませんということでずっと過ぎてきてしまった。
 この国会で、女性議員やNGOが力を合わせてつくり上げてまいりました子供に対する性的虐待とか、それからポルノに関する法律というのが上がってきていますけれども、これについても、子どもの権利条約を批准したら、それぞれ被害国である途上国も加害者を出している先進国もすぐに法改正に取り組んで、もっともっと早くやってきている。ところが、日本は国際会議でかなり指摘をされて、二十年、三十年おくれてやっと取り組む、そういうような状態があるわけです。
 話を戻しますと、女性差別撤廃条約につきましてもまだまだ履行されていない部分というのが数多くある。そうした中で、遵守に努めますというだけでは私は足りないのではないか、基本法の中にやはり国際的に確立された理念を尊重する、あるいはそのために必要な措置を講ずるということを入れるべきではないかというふうに考えておりますが、これも重ねてもう一度伺いたいと思います。

○政府委員(佐藤正紀君) 国が調印をいたしまして批准されました条約につきましては、遵守義務があるのは当然のことであろうと考えております。
 男女共同参画審議会におきましては、我が国の男女共同参画社会の形成の促進のための取り組みが国際社会の取り組みと相互に密接な関連を有していることにかんがみ、国際的協調のもとに我が国の男女共同参画社会の形成が促進されるとともに、男女共同参画の視点に立った国際協力が推進されなければならないというようなことで、国際的な協調という形に書き改められたわけでございます。政府といたしましても、そういう国際的な取り決めの理念を尊重するだけでなくて、今後いろいろなところに対して協力を行っていくということも含めまして、国際的協調という言葉に改めたわけでございますが、そういう国際的な理念の尊重というものにつきましては、この言葉の中に含まれていると私どもは解釈いたしております。

○小宮山洋子君 これも議論をしていても議論は尽きないと思いますけれども、私は、やはり国際的な協力とか協調に含まれているとか、遵守をするということだけでは不十分だと思いますので、これもせっかくつくる基本法なのですから、やはり女性たちの憲法とも言える女性差別撤廃条約を初め、そうした国際的な条約あるいは国際約束についてきちんとその理念を尊重し、必要な措置をとっていくということを盛り込むべきだというふうに考えます。
 そして、基本法であるから個別なものについては言及しないというお話が先ほど暴力のところでも、それ以前の審議の中でもございましたが、私は、やはり個別法にしっかりと届くためにはある程度この基本法が目指しているものが具体的に明示されていなければならないのではないか。そういう意味では、第十三条の基本計画のところですけれども、これは「総合的かつ長期的に講ずべき男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の大綱」というような非常に抽象的な大ぐくりな言い方になっているわけですけれども、ここを私たちの党の案としましては、九つその基本計画の中で盛り込むべき項目を明記いたしました。例えば、これまである基本法の中でも、高齢社会基本法では第二章の中である程度その基本施策の条項を具体的に規定しているんですけれども、そういうふうに規定をする方が私は明確に働く法律になるのではないかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) 基本計画についてのお尋ねでございますが、これまで男女共同参画に関する行動計画、改善計画も含めまして五回ほど策定されているかと思いますが、これが時代によりまして柱立てが変遷をしてきております。また、来年六月にはニューヨークの国連で女性二〇〇〇年会議が開催されるという動きもございますので、そういう動きも踏まえて、また計画を作成するに当たりましてはその項目について検討を加えていくべきであろうと考えております。法律で細かく具体的な内容を規定するとそれだけに硬直化してしまうというおそれもあるのではないかと考えたところでございます。
 昨年十一月に審議会から提出されました答申では、基本計画に盛り込む事項につきましては、「世界の情勢、時代の変化に柔軟に対応するため、基本法で詳細に規定せず、主要事項にとどめることが適当である。」とされたところでございます。

○小宮山洋子君 その時代の流れの中で柔軟に、確かに具体的に書くと、それからいろいろ状況の変化、時代の変化の中で変わっていくかもしれませんけれども、基本的な項目を書いておく分にはそれほど変わっていくものではないのではないか。私たちは、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保のための施策から始まりまして九項目、これはビジョンとかプランの中で挙がっている項目に近いものですので、その時代によって変わっていくというものではないと思うんですね。
 ただ、ここにやはりそういう具体的なものを盛り込んでおいた方が個別法にしっかり働くのではないか。というのは、これまで基本法と言われるものが既に十五この日本の中で施行をされています。先日成立いたしましてまだ施行されていないものづくり基本法も入れますと十六基本法があることになるのですが、このうち幾つの基本法が実際に働きをして実効性を上げているでしょうか。実効性をなかなか上げにくい、理念とか枠組みだけで終わってしまっているというのは、私は具体的なところへ、個別法へ届くための仕掛けがその中にしていないからだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) この男女共同参画社会基本法につきましては、二〇〇一年の省庁再編に当たりまして男女共同参画会議が置かれて、各省庁の施策に対します総合調整、監視等の機能を果たすことになっていくことだと思いますが、そういうような推進体制が整うことを考えますれば十分に実効性は上がっていくものと考えております。

○小宮山洋子君 もちろん男女共同参画会議の働きについては私たちも期待をしておりますし、きちんとそこが働くように、またこれからの設置法を含めいろいろな取り組みの中できちんとしたものを獲得していかなければいけないというふうに考えておりますが、そのこととここに基本計画を具体的にした方がいいということとは私は直接は関係しないのではないか。そちらが働くこととここに盛り込んでおくことと両方私は必要なのではないかと思うんですね。
 例えば、ここに挙げています雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保のための施策とか、あるいは男女の家庭生活と職業生活等との両立支援のための施策、午前中に末広委員からもいろいろ職場での育児休業とかM字型のカーブの話などもございましたけれども、それではこのことをここへ盛り込んでおくことがどういう障害になるのでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) 先生の御指摘のように、現時点においてそのような問題がいろいろあろうかということは十分わかるわけでございますが、この基本法につきましては、二十一世紀を見据えまして、将来にわたりずっと適用されていく法律であるということがございます。そういう雇用の情勢、それからいろいろな分野におきます情勢につきましてはこれから時々刻々また変わっていくかと思いますが、将来におきましても適合するということから考えますと、ここにおきましては抽象的な規定を置くことが適当かと私どもとしては考えております。

○小宮山洋子君 ちょっと今の御説明は全然よくわかりません。ここに規定を掲げてあって、そのことがすべて一〇〇%全部のことが達成されるということはまずなかなか、二十一世紀になっても難しいんじゃないでしょうか。達成されればそれは結構なことでありまして、それがここに掲げてあることとどう矛盾をするのでしょうか。
 それから、例えば政策立案及び決定への男女共同参画の促進ですとか教育のこと、あるいは税制、社会保障など、それから経済活動、ここにも一応女性に対する暴力のことを含んでおりますが、それからあとリプロダクティブヘルス・ライツにかかわること、その他のこととこう入れておけば、時代が変わってもこれを入れておいたから不都合だということは全くないのではないか、これを入れておいた方がより明確になるのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(野中広務君) この基本法がどうあるべきかという考え方の問題だと思うんですが、私は、先ほど審議官からも申し上げましたけれども、男女共同参画社会を築いていく上での二十一世紀における骨格的、基本的な法案としてたえられるものにしておきたい。そういう意味において、私のとり方が間違っておるのかもわかりませんけれども、委員の御指摘は、今、否定はいたしません、女性に対する暴力が非常に大きな問題となっておること、あるいは育児等が女性に非常に負担がかかって家庭生活の中から職場への進出ができない状態になっておる等、さまざま女性を取り巻く問題があることは十分認識をいたしておりますけれども、これからこの基本法が目指していく方向というのを女性のそういう弱い面あるいは虐待されておる部分、そういうものだけを強調して法として取り込むことが本当にこの男女共同参画社会を形成する基本法をつくる上でいいのかどうかというところに私は論点整理をする必要があるのではないか。お考えは違うかもわかりませんけれども、そういう意味において私どもは個別的な内容を入れるべきでないという立場をとらせていただいた次第でございます。また、それは審議会の答申をも受けさせていただいた次第でございます。

○小宮山洋子君 今、図らずも官房長官がおっしゃったことは現状追認型であるということが明らかになったのではないかという気がするんですね。マイナスをゼロにというか、女性に弱い面をと言っているのではなくて、私はこれは全部、すべてのことについて男女の共同参画ということを言っているのでありまして、別に女性に弱い面をというのではなくて、こうしたすべての面で男女の共同参画をと言っているわけです。女性に弱い面だけを挙げるということではなくて、男女共同参画がこういうあらゆる面で必要だということを言っておりますので、これもまた議論をしていると果てしなく続きますので、これは一応、これを入れた方がいいということを申し上げておきたいというふうに思います。
 それから、やはりこの基本計画のところについてですけれども、国、都道府県と同様に、市町村におきましても策定義務ということを明記すべきなのではないかというふうに思っております。もちろん、市町村によっていろんな状況があるから策定義務まで課しては無理ではないかという意見もあるのは承知しておりますけれども、やはり策定するということをしませんと、ますますそこの格差の中で市町村の状態がばらばらになってしまうのではないかという考えがあります。
 それともう一点、やはり地方のことですけれども、都道府県とか市町村におきましても国と同様に、あらかじめ男女共同参画の審議会、言い方は違うかもしれませんが、そうした民間の人が入った審議会の意見を聞いてというような規定も設けるべきではないかと思うのですが、地方にきちんと行き渡るという意味からして、この点についてはいかがでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) 基本計画につきましては、国と都道府県については策定の義務を課しました。市町村につきましては努力の義務を課したわけでございますが、市町村は全国に三千以上もあるということ、それからその規模が非常にさまざまであるということから考えまして、一律に計画の策定を義務づけることは適当ではないと考えたところでございます。しかし、市町村におきましても、本法案の趣旨にのっとりまして計画の策定に積極的に取り組んでいただきたいと期待するところでございますので、計画の策定を努力義務といたしたところでございます。
 それから、策定に当たりまして審議会等の意見を聞くべきではないかというお話でございますが、この点につきましては地方公共団体の自主性にゆだねることとしたところでございます。しかしながら、本基本法におきまして基本計画の策定を規定した趣旨を踏まえまして、各地方公共団体における基本計画策定に際しましては、その手続についてはいろいろ工夫がされることと期待をいたしているところでございます。

○小宮山洋子君 今回の基本法が本当に実効性のある働くものになるかどうかということは、それぞれの地域にまできちんとそれが行き渡るかどうかということが一つ大きなポイントだというふうに私は考えております。
 その中では、いろいろ実情に差があることは承知しつつも、特にいろんな地方の現状を聞きますと、今の効率化、リストラなどの中でともすると女性に関する部分というのが縮小され、何か総合的な中にたった一人だけ要員がいるだけで、今までちゃんとそういう室とか仕組みがあったものが小さくなっていってしまうという逆の傾向もある地域もあるように聞いておりますので、そういう意味からして、いろいろな状態があるからこそやはりそこのところに市町村まで含めてきちんと必要なことが、審議会など民間の人が入る、必要な手だてをもって実現していくことが肝要なのではないかと思いますけれども、どうでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) いろいろな基本法におきまして、基本計画の策定につきまして国、都道府県、それから市町村も規定を置いているところございますが、多くのものにつきましては、国につきまして策定の義務づけ、それから都道府県、市町村については努力義務というふうなものもございます。そういうふうな差が出ておりますのは、都道府県、それから市町村につきましてはどこまでが公共団体の権限になっているかということが一つ大きな違いがあろうかと思います。男女共同参画につきまして市町村の果たす施策というのはどこら辺まであるかということもあろうかと思いますが、ここら辺につきましては地方公共団体の自主性にゆだねるのが適当であると考えた次第でございます。

○小宮山洋子君 次に、やはりこれは審議会からの報告の後も特にNGOを初め一般の皆さんからの意見の中にも論議の多かった部分だと思いますけれども、苦情処理などについて伺いたいというふうに思います。
 第十七条の「苦情の処理等」というところでは、政府案では人権が侵害された場合における被害者の救済を図るために必要な措置を講じるとなっていますけれども、これだけでは私は足りないというふうに考えます。審議会の議論の様子などを聞いていましても、例えば今ある人権擁護委員ですとか行政相談委員などを、もちろんこれをいい形で働くように活性化していくということは必要だとは思いますけれども、一応はここのところでやろうということなのか、そのあたりどの程度まで必要な措置という中身を考えていらっしゃるのかを伺いたいと思います。

○政府委員(佐藤正紀君) この法律案は基本法案でございますことから、個別具体的な措置につきましては規定をしておりませんけれども、男女共同参画社会の形成を促進するためには苦情の処理が非常に重要であるということから考えまして、国は政府の施策についての苦情の処理のために必要な措置及び人権が侵害された場合における被害者の救済を図るために必要な措置を講じなければならないと、こう決めたところでございます。
 本条の規定に基づきまして具体的にどのような措置を講じるかにつきましては、行政改革が求められている状況の中での効率性ということも踏まえまして、まず既存の制度の活用を図ることになると考えております。これは、先生が先ほど申されましたようなシステム、あるいは国政調査権等を考えておるわけでございますが、まず第一には既存の制度の活用ということを考えております。

○小宮山洋子君 やはりきちんと働くかどうかというのはそのチェックがどこでできるか、これに反した場合にそれをどのようにそれに対してきちんとした対処ができるかということにかかっているんじゃないでしょうか。もちろん、行革が行われることは承知しておりますけれども、それは既存のシステムだけでやりますということではとても私は心もとない、きちんと働かないというように思います。
 今の行政相談委員とか人権擁護委員の人選を見ましても、もちろんここを活性化するということはいいんですよ、これを活性化してもってできるということはいいんですけれども、今のことが急に百八十度変わるとは思えない中で、例えば男女共同参画という言葉を今の行政相談委員、人権擁護委員の何%ぐらいの方が知っていらっしゃるか、私はかなり心もとないのではないかというふうに思うんですね。
 ですから、その意識を、もちろんいろいろ研修その他を含めて、途中から研修してどの程度になるか、人選のところからやらないと私は無理だと思うんですけれども、高齢な方がちょっと名誉職的にやっているというような感じの中ではとてもうまくいかない。確かに女性も中には入っていますけれども、男女共同参画の認識をちゃんと持った人がやっているかというと、研修して既存の仕組みを使えば何とかなるでしょう、行革の後であとは考えますということではとてもいかないというふうに思うんです。
 その既存のシステムを使うというのは、どのようなことでうまく使えるようにしていらっしゃるんですか。

○政府委員(佐藤正紀君) 行政に対する不服でございますとか、先ほど申しましたように人権の侵害につきましては一応システムができているという前提に立つわけでございますけれども、これが男女共同参画の視点に立ちまして十分機能するようには総理府といたしましても十分配慮してまいりたいと考えております。

○小宮山洋子君 十分配慮ではわからないです。だから、例えば研修をするとか人選の仕方をこう変えるとか、具体的に言っていただかないと、十分配慮では何もしないということだろうというふうに私は思わざるを得ない。
 私どもが言っておりますのは、施策についての苦情処理、それから個人、被害者の救済のための組織とか運営体制について新たな立法措置を講ずるということを明記すべきだ。これはいわゆる議論になっていたオンブズパーソンということです。オンブズマンと言うと男性の呼称になりますので、オンブドとかオンブズパーソンという言い方をしておりますけれども、そうしたことについては例えば男女共同参画ビジョンなどでもずっと議論をしてきたことですし、中間報告の段階では一応入れようかどうしようか議論になっていますよというところには上がってきたわけですね。
 日本の中でどういう仕組みをつくるかというのはこれから早急に私は議論すべきだと思っておりますが、このオンブズパーソン的な機能、こういうような実効性のある機関を例えば法律を新たにしてつくるということについてはどういうふうにお考えなんでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) 国の策定しております男女共同参画二〇〇〇年プランにおきましては、「総合的な推進体制の整備・強化」という項目の中で、「行政相談委員、人権擁護委員等について、女性への積極的な委嘱に配慮するとともに、男女共同参画に関する認識を高めるための研修機会、情報提供等の充実を図る。また、行政相談委員、人権擁護委員等の中から、女性問題等に関して高い識見を有する者を男女平等等をめぐる問題を重点的に取り扱う地域担当者として任命すること及びこれらの者が扱った事例の蓄積が施策の企画、立案、推進等に反映される仕組の導入を検討する。」等々、こういうようなことが現在の計画の中でも考えられておりますので、こういう施策を充実させてまいりたいと当方としては考えております。

○小宮山洋子君 私の聞いたことに答えていただいていないと思います。プランの中で何をやっていらっしゃるかを聞いているのではなくて、プランには一部、一部というかかなり削られてしまいましたけれども、ビジョンをつくった。総理府の男女共同参画審議会で男女共同参画ビジョンというのをNGOの方の意見も聞きながらつくったというのは、今の審議会がいろいろな隠れみのだと言われたり悪口を言われる中で、これからあるべき一つのいい方向として非常に私は評価したい、私もその中に実際その当時はいたわけですけれども。そういう中で打ち出し、議論の過程でも話題に上ってきましたオンブズパーソン的な機能というか、オンブズパーソンの仕組みについてはどのようにお考えですかということをお聞きしているのです。

○政府委員(佐藤正紀君) 私どもといたしましては、先ほど申し上げましたとおり、行政改革が求められている状況の中では、既存のシステムをまず活用することを考えたいと考えております。その上で、いろいろ検討いたしまして、必要があれば必要な措置を講ずるということは規定にも書いてございますので、その時点でまた考えたいと思っております。

○小宮山洋子君 このオンブズパーソンということにつきましては、これは男女の問題だけではなくて、子供の問題、人権の問題、いろいろなところで私はぜひ日本の国でも必要な仕組みなのだというふうに思っております。確かに、このオンブズパーソンあるいはオンブドの仕組みというのは、北欧の国、ノルウェーとかスウェーデンなどよく使われている国でよく言われるのは、人口八百万の国と一億二千万の国と違うのだから日本では機能しないとかいろいろ言われるのですけれども、その考え方を取り入れて、非常に簡便にしかもだれでもが使いやすい中できちんとその苦情が処理され、個人の救済につながるという、私はこれは日本でも日本型に、もちろん日本に合うようにすればいいわけですけれども、取り入れるべき仕組みなのではないかというふうにずっと考えてきております。
 だから、日本の中では国の中に一つだけつくってやってもそれは行き渡らない。八百万と一億二千万は違うわけですから、例えば都道府県単位で置いて、中央に一つ置くとか、そこの人選の問題とか、権限を持って日本の中で機能するのにどこへ置いたらいいかとか、これは日本にふさわしいものをつくるためにはいろいろな検討が必要だということは承知しておりますけれども、日本の国の中で一人一人のやはり人権がきちんと守られるという意味からしましても、この仕組みの検討というのは私は必要なのではないか。
 確かに行革ではありますけれども、行革というのは全部一律に削減すればいいというものではなくて、もう一回洗い直して、むだなものは削っていくけれども、行革の中であったって必要なものはきちんと整備をし、つくっていくということでなければ、どんどん今のままの仕組みがやせ細っていくだけでは私は仕方ないのではないか。行革の中でもあえて私はこういう仕組みを日本に取り入れるという検討をすべきではないかというふうに思うのですが、官房長官、いかがでしょうか。

○国務大臣(野中広務君) 傾聴すべき御意見だと思っております。
 また、行革につきましても、男女共同参画に見られますように、多くの省庁において局の削減やあるいは十二省庁に対する極度な省庁の削減を行い、これに伴います局の削減も行ったわけでございますけれども、そういう中におきまして、男女共同参画社会を構成していくためには男女共同参画局を置き、そしてこれをより実効あらしめるために、それぞれ内閣府に男女共同参画審議会をも設置することとしたわけでございますので、委員おっしゃるように、これからもこういう行政改革の中においても、これをリストラすべきものとそしてこれから十分充実すべきものとをその時期時期に変えていかなくては行政は弾力性を保つことはできないと思っております。

○小宮山洋子君 ありがとうございます。
 今の官房長官の言葉は非常に心強い言葉だと思いますので、ぜひこのオンブズパーソン的な機能を持ったものの検討ということも、その範疇に入れていただいて検討をしていただければというふうに思っております。
 私の持ち時間もあとわずかになりましたけれども、今政府案について幾つか申し上げたことは、裏返せば私ども民主党・新緑風会が出している法案に盛り込んである点だということです。もう一度、おさらい風になりますけれども、こういう点がぜひ政府案の中にも必要ではないかということを申し上げますと、一つは、やはり前文をつけてわかりやすくする必要があるのではないかということ。それから、法律の目的の中に、「社会的文化的に形成された性差にとらわれず、個人としてその個性と能力を発揮する機会が十分に保障される社会を形成」と私どもは書いていますけれども、やはりジェンダーの視点ということをきちんと盛り込む必要があるのではないか。それから、やはり定義の積極的改善措置というのは、是正措置とした方が明確なのではないかということ。それから、間接差別も明記をした方がきちんとそういう部分にまで男女共同参画が行き渡るのではないか。さらに、強調いたしました女性に対する暴力の根絶が人権の確立には不可欠でありますので、女性に対する暴力については何らかの形でどこかに明記をすべきではないかということ。さらに、今ちょっと前に申し上げました基本計画に具体的な項目をもう少し、もう少しというかきちんと盛り込むべきではないかということ。それと、今申し上げました苦情処理や個人の救済のための仕組みをきちんと新たな法整備も含めて確立すべきではないか。それからあとは、国際的な条約とか約束をきちんと履行していくための理念を尊重し、必要な措置を講じていくということを盛り込むべきではないか。まだ漏れている点があるかもしれませんけれども、主な点はこうした点で、私どもの法案をよく読んでいただければ全部書いてございます。
 こうしたことについて、先ほど江田委員とのやりとりの中で野中官房長官が、これからの国会のあり方としては、政府案をただ受け取るというだけではなくて、議員の側からもいい提案をして、例えば情報公開あるいは金融国会のように、その提案も踏まえてやっていくというのは新しい形ではないかという大変心強いお言葉をいただきましたので、ぜひこの男女共同参画基本法案につきましても、男女でこれも共同参画でいい形で、新しい形で充実したものがつくっていけるように、そして国会の議論がさらに外へ広がって、みんなが使える機運の中でいい形で成立するようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

○浜四津敏子君 公明党の浜四津でございます。
 本日は、男女共同参画社会基本法につきまして、大きく分けて三点について伺わせていただきます。
 第一点目は、この男女共同参画社会基本法の根本理念あるいは究極の目的、目指すものなどについて伺わせていただきます。二点目は、各条文の解釈についてでございます。また三点目は、現在直面している問題についての具体的な施策について伺います。
 まず、第一点目でございます。
 一九七五年、国際婦人年におけるメキシコ会議での世界行動計画採択から約四半世紀の長い道のりを経まして、ようやく男女共同参画社会基本法が国会で審議される段階を迎えました。その間、国籍法の改正や男女雇用機会均等法の制定及び改正、また女子差別撤廃条約の批准等を経ました。遅々とした歩みではございましたが、多くの人々の努力によりまして着実な積み重ね、また前進がなされてまいりました。今回の法案はその一つの結実であると思います。これまでこの流れをつくり、また支えてこられた多くの関係者の方々に敬意と感謝を表したいと思います。
 ところで、なぜ男女共同参画社会の形成と推進が必要なのかを改めて確認させていただきたいと思います。
 まず第一点は、男女共同参画が実現されていない社会、殊に男性中心、男性主導の社会は、女性の人間としての尊厳を侵害しているからであります。男女共同参画社会の実現というのは、この女性の人間としての尊厳を保障し、実現するために何よりも必要なものであると私は思います。そしてまた、女性が男性と平等に生きていく権利、平等権をこの男性中心社会、男性主導の社会というのは侵害しているからである、こう思います。したがいまして、女性の平等権を保障し、実現するためにも、この男女共同参画社会の実現がどうしても不可欠であります。
 一九七九年、女子差別撤廃条約において、女性に対する差別は人間の尊厳に対する罪とうたわれております。この男女共同参画社会を実現する究極の目的は、すべての男女、すべての人間が平等に平和的生存権あるいは人間らしい生活、平和、福祉あるいは環境、人権、これが十分に守られる社会を実現する、それこそが目的であるというふうに思います。
 このことは、二十世紀の歴史を振り返ってみればよく理解できることと私は思います。結果的に男性中心、男性主導の社会というのはどういう社会を築いてきたか。二十世紀はよく、戦争と暴力とイデオロギーが猛威を振るった世紀と、こう言われてまいりました。そして、そのために多くの人々の生命や安全や人権、これが奪われ、抑圧された時代をもたらした。この結果につきましてはさまざまな要因が挙げられるわけですけれども、このような非人間的あるいは非人道的な結果をもたらした大きな要因の一つとして男性中心社会、男性主導社会であったという点が挙げられることは否定できないと思います。この歴史の反省の上に立って、二十一世紀を平和、福祉、環境、人権、人間が大事にされていく時代、こうしていくためにも男女共同参画社会の実現が不可欠であると思っております。
 ところで、女性の能力がどのくらい開発され、どれだけ社会に受け入れられているか、発揮できているかを意味するものにGEM、ジェンダーエンパワーメント測定、こういうものがあります。これは、日本は九十四カ国中三十四位でございます。また、一位はオーストリア、二位がスウェーデン、こういう順になっております。
 環境の問題一つとっても、例えばドイツはGEMが九位でございますけれども、憲法に環境保護を規定しております。また、環境保護を憲法で定めている国にはオーストリア、スウェーデン、スイス等があります。これらの国は、すべてジェンダーエンパワーメント測定で上位に属する国でございます。つまり、女性の能力が開発され、そして女性が政策決定の場に参加している国というのは、環境問題についても非常に進んでいるということを如実に示していると思います。これは環境問題だけではありませんで、平和の問題あるいは福祉の問題、人権あるいは地方分権、民主主義、こういう先進国と言われている国というのは、まさしく男女共同参画社会が実現されている国とほぼ見事に一致しているということを示しております。
 日本も、ぜひそうした真の先進国となるためにも、単にスローガンに終わるのではなくて、男女共同参画社会を本気で実現させたいと思っておりますが、野中官房長官のお考え、御決意をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(野中広務君) 浜四津委員からは、本院の本会議におきます代表質問におきまして、男女共同参画社会基本法につきまして、二十一世紀を生命の世紀、人権の世紀とするための法律であるという格調の高い質問と評価をいただいたことを今鮮明に覚えておる次第であります。
 私も、男女共同参画社会の実現は、少子高齢化など社会経済情勢が急速に変化をする中にありまして、男女の人権が互いに尊重され豊かで活力のある社会を実現する上で、二十一世紀を決定する大きなかぎであると考え、意義を有するものであると考えておる次第であります。
 そのため、私といたしましても、男女共同参画担当大臣といたしまして、男女共同参画社会の実現のために男女共同参画社会基本法の早期成立に向けて最大限の努力をいたしますとともに、なお今後施策の充実に努め、また組織の確立に努めまして、議員を初めそれぞれ皆様方の一層の御理解をいただき、国民各層の御理解をいただいて、真に私どもが目指す男女共同参画社会の実現のために一層努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。

○浜四津敏子君 次に、この基本法の理念というのは、当然憲法の理念及び国連憲章あるいは世界人権宣言、また人権に関する国際規約、女子差別撤廃条約、北京宣言行動綱領などに示された人間の尊厳あるいは平等などといった諸理念を当然に踏まえたものでなければならないと思っております。また、この基本法は、二十一世紀の男女共同参画社会確立に向けて、国内における男女共同参画社会の形成に関する基本理念とこれに基づく基本的な施策の枠組みを国民的合意のもとに定めるものでありますから、この目指すべき社会の理念あるいは確立されるべき価値をだれが見ても明らかにすることが大事であると思います。
 そこで、こうした理念を明確に例えば前文に掲げてもいいのではないかというふうに私も思いますが、なぜこの法案には前文を置いていないのか、その理由はどこにあるのか、お伺いいたします。

○政府委員(佐藤正紀君) 前文といいますのは、法令の本則の前に置きまして、法令の制定の趣旨、目的、基本原則を述べるような文章でございます。最近の法律では、第一条に目的規定あるいは趣旨の規定を置くものが多くて、そこではっきりと目的がわかるということから、わざわざ前文を置かないという例が多いかと思っております。
 男女共同参画社会基本法案におきましては、第一条におきまして、本基本法の目的といたしまして男女の人権が尊重される社会を実現することの緊要性を挙げるとともに、第三条におきまして、基本理念として最初に男女の人権の尊重を掲げました。その人権の内容といたしまして、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が性別による差別的取り扱いを受けないことを明記したところでございます。
 このように、御趣旨の点につきましては、本則における目的、基本理念の規定の中で明確に盛り込まれておるということから、重ねて前文を置かないこととしたところでございます。

○浜四津敏子君 それでは次に、法文の解釈に移らせていただきます。
 第二条の第二号の中に積極的改善措置、いわゆるポジティブアクションが定められております。これについては、時に男性の側からこれは逆差別である、こういう声が上がることがあります。そうした誤解を解くためにも、例えば女子差別撤廃条約の第四条一項に掲げてありますように、「締約国が男女の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置をとることは、この条約に定義する差別と解してはならない。」、こういう規定がありますけれども、この規定のように積極的改善措置というのは差別に当たらないと明示した方がいいのではないかとも考えられますけれども、なぜ明示していないのかお答えいただきたいと思います。

○政府委員(佐藤正紀君) 第二条の二号に積極的改善措置の定義を置いてございます。さまざまな分野におきまして、活動に参画する機会の男女間の格差を改善するため、必要な範囲内において男女のいずれか一方に対して活動に参画する機会を積極的に提供するものでございまして、個々の状況に応じて実施していくものでございます。
 この積極的改善措置を含みます男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を総合的に策定し、実施する責務を国に課したという法律の構成になっておるわけでございますが、こういう構造の中でこの積極的改善措置が差別に当たらないという規定を置くこと自体が不自然であるというような指摘を法制局でも受けまして、そういうことからそういう規定は置かなかった経緯がございます。

○浜四津敏子君 それでは次に第三条、男女の人権の尊重に移らせていただきます。
 第三条に「男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、」、こういう表現が出てまいります。ここには、先ほども同僚議員から質問がありましたけれども、間接差別の禁止がここに含まれるのかどうかというのはもう一つ明らかでないと思います。直接的な差別のみならず、間接差別による人権侵害あるいは不平等と指摘される事実が現に存在するわけでございますから、間接差別についても明示してもいいのではないか、こう思われますけれども、ここで明示していない理由が特にありましたらお答え願いたいと思います。

○政府委員(佐藤正紀君) 差別的取り扱いにつきましては、昨年十一月の男女共同参画審議会からの答申の考え方を踏まえまして、「差別的取扱い」という用語にしたところでございまして、直接差別、間接差別という切り口では整理をしなかったところでございます。これは、いわゆる間接差別の概念自体につきまして、何をもって間接差別と言うかという社会的なコンセンサスがまだできていないというようなこと、それから問題としている範囲が人によって異なっておるというようなことがございます。
 法律実務の面におきましても、差別をする意図があるなしに関係なく、結果として差別的な取り扱いであったと認定されたものにつきましては差別的な取り扱いと従来から判定されていることもございまして、この法案の中では、「差別的取扱い」という言葉に統一させていただいたものでございます。

○浜四津敏子君 そうしますと、いわゆる間接差別と言われているものすべてをここから排除するという意味はないわけですね。

○政府委員(佐藤正紀君) 直接的、間接的にかかわらず、差別的な取り扱いにつきましては、ここで触れていると考えております。

○浜四津敏子君 それでは、同じく第三条の中に、「男女が個人として能力を発揮する機会が確保されること」というのが出てまいります。この点につきまして二点お伺いいたします。
 この「機会」というのは、単に機会が与えられていればいいというのではなくて、男女に平等な機会が確保されていなければいけない、こういうことを求めていると思いますけれども、その点を確認したいのが一点でございます。
 またさらに、平等な機会の確保だけでは不十分でありまして、例えば公務員の昇格の機会について、性別による差別があるわけではありませんけれども、実際には女性が幹部に登用されることは極めて少ないわけであります。また、地位が上がれば上がるほど女性の割合が少なくなっているのが現実でございます。
 また、機会の均等を基本理念とした男女雇用機会均等法が制定されまして十年たちますけれども、雇用の場における男女差別、格差は一向になくならないのが現状でございます。この雇用の場における男女差別の問題というのは、いまだに男女差別の中核をなす問題であります。男女雇用機会均等法は、労働者の募集、採用について、女性に対して男性と均等な機会を与えなければならない、こう定めてございますけれども、しかし現実には、募集、採用の段階から女性は排除されている場合が多いわけであります。
 また男女間の賃金格差は、日本は先進国の中で最も格差が大きい国でございます。平均賃金が男性と女性では、これは九五年の数字でございますが、十対六、パートタイマーを含む数値では十対五、こういう数値になっております。この点につきまして、北京の女性会議では異例の集中批判が行われたと報告されております。
 また、仕事の内容あるいは配置、退職、解雇における男女差別を男女雇用機会均等法は禁止しておりますけれども、実際には厳然として差別が存在しております。労働によって生計の糧を得るのが原則となっている社会におきまして、労働の場で差別されるということは人間としての生き方そのものに制約を受けることにつながります。こうした現実を見ますと、差別をなくし女性が個人として能力を発揮するためには、機会の平等を確保するだけでは不十分であるということを示していると思います。
 こういう状況の中で、参画をしたければどうぞ機会だけは確保していますと、こういうのではいつまでたっても男女共同参画社会というのは絵にかいたもちになってしまうのではないかという危惧を持っております。
 この機会の平等に加えて、結果の平等をも視野に入れないと実効性が薄いとも思われますけれども、どうお考えでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) 男女共同参画社会につきましては、第二条第一号におきまして、「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保」される社会と定義しているところでございますが、ここで言う参画する機会が確保されるということは、単に形式的に差別がなく門戸が開かれているという意味での機会を確保するだけでは足りないと考えておりまして、実態といたしまして、男性に比べてより多くの家事責任を負っている女性でありましても、家庭生活における活動以外の活動にも参加していけるよう環境整備をするなどして、実質的にあらゆる分野の活動に参画する機会を確保していくことも含むものでございます。
 このような機会を確保することによりまして、男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会、すなわち男女共同参画社会の形成を図ってまいりたいと考えている次第でございます。

○浜四津敏子君 それでは次に、第七条、「国際的協調」について伺います。
 女子差別撤廃条約などによりまして、国際的に確立した理念があるわけであります。「論点整理」には、国際的に確立された理念の尊重という字句がありましたが、法案では国際的協調のもとに行うと表現が変わっております。これはどういう意味があるのでしょうか。国際的に確立された理念には縛られないということをあえて示したのか、それとも国際的に確立された理念の尊重と同じことを別の言葉で表現したのか、いずれでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) 「国際的協調」というこの理念につきましては、男女共同参画審議会基本問題部会が昨年六月に公表した中間的な取りまとめであります「男女共同参画社会基本法の論点整理」におきましては、「基本理念」の中に国際的に確立された理念の尊重が掲げられておったわけでございます。しかし、昨年十一月に最終的に答申をいただきましたときには国際的協調という言葉に整理をされております。
 これは、先ほどの質問の中でもお答えを申し上げましたけれども、女子差別撤廃条約あるいは第四回世界女性会議の成果を我が国の男女共同参画社会の形成の促進に生かしていくという趣旨につきましては、国際的協調に含意されているということが一つでございますが、それと同時に、各方面に対する国際的な協力等も図っていくというふうな意味も含めまして、国際的協調という言葉に変えたものでございます。

○浜四津敏子君 次に、第十七条、「苦情の処理等」について伺います。
 ここに「必要な措置」というのが出てまいりますが、この必要な措置というのは何を意味するのか、具体的にお伺いいたします。これは、制度、法制等の整備も含む意味なんでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) この法案は基本法案でございますことから、具体的にどのような措置を講ずるかにつきましては具体的な規定は置いていないわけでございますけれども、男女共同参画社会の形成を促進するためには苦情の処理が非常に重要であるということから、苦情の処理のために必要な措置及び人権が侵害された場合における被害者の救済を図るために必要な措置を講じなければならない、こういう規定を置いておるわけでございます。
 昨年十一月四日の男女共同参画審議会答申におきましては、「男女共同参画社会の形成に関する苦情等の処理のための制度については、」「既存の制度の活用を検討するとともに、苦情等の処理の重要性にかんがみ、必要に応じ個別法で対応していくべきである」としているところでございまして、本条に言う「必要な措置」につきましては、まず既存の制度の活用を検討するとともに、必要がある場合には制度、法制の整備を含めまして、今後検討を行うことはあり得るということだと考えております。

○浜四津敏子君 それでは次に、第三点目に移らせていただきます。
 直面しておりますさまざまな取り組むべき施策など、個別の課題について伺わせていただきます。
 先日、五月七日に厚生省は、全国子育てマップというものを発表いたしました。これによりますと、昨年四月現在の保育園待機児童は全国で三万九千五百四十五人に上る、こういうことになっております。特にゼロ歳から二歳までの待機児童数が二万五千人、全体の待機児童数の六割以上を占める、こういう結果が報告されております。
 この保育園不足というのは、即育児負担増につながるわけでございます。育児負担増によりまして家庭生活と社会経済生活との両立が非常に困難になることが多いわけでございまして、これにより夫婦のどちらか一方が仕事をやめざるを得ない、こういうことを強いられる場合に、それは男女がみずからの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保されるという、男女共同参画社会のあり方に反する結果となるわけでございます。
 また、ILO百五十六号条約がその三条で、できる限り職業上の責任と家族的責任との間に抵触が生ずることなく職業に従事する権利を行使することができるようにする、こう規定しております。その国の施策のあり方にも反する結果となります。特に、現状では女性が育児負担を負うことがほとんどでございまして、夫婦のどちらかがやめることを強いられるという場合には、通常女性がやめざるを得ないというのが現実でございます。女性が労働や社会的活動など社会参画していくためには、妊娠、出産に対しての社会的な保護や充実、また家事、育児、介護の社会的支援措置が不可欠であります。
 この育児の社会的支援措置、いわゆる子育て支援策について、直面する問題の一つとして伺わせていただきます。
 去る四月九日に公明党、自民党、自由党の三党は、緊急の少子化対策を実施することで合意いたしました。緊急少子化対策の基本方針をまとめて発表いたしました。この緊急少子化対策は、保育所待機児童ゼロを主眼といたしまして、市町村が地域の実情に応じて展開する幅広い取り組みを支援するのが目的であります。
 これには、例えば駅前保育ステーションの設置、あるいは駅前保育所の設置、幼稚園における預かり保育実施のための環境整備、あるいは病後児の一時預かり場所の整備、あるいは公共施設への育児コーナーあるいは託児室の設置、また自治体版エンゼルプランの作成などに国が緊急的に特例交付金を支給するという内容でございます。
 また、規制緩和は保育所待機児童の解消を目指して認可保育所の設立基準を大幅に緩和するというものでございます。
 また、幼稚園と保育所の連携強化へ、施設の共用化あるいは職員の兼務、教育内容と保育内容の整合性の確保なども盛り込んでおります。
 多くの若いお父さん、お母さんたちがこれらの育児支援策の早期実現を心待ちにしている、そういう声をたくさん聞いております。この実現に向けて、野中官房長官、政府としての取り組みの姿勢、御決意をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(野中広務君) ただいま委員から御指摘のございました去る四月九日の三党合意の緊急少子化対策につきましては、市町村におきます多種多様な取り組みのきっかけづくりを支援することを趣旨とされまして、市町村への少子化対策特例交付金事業あるいは保育所の規制緩和等について取りまとめをいただいたものと承知しておる次第でございます。私どものところにも四月十三日にその合意に基づく要請を申し出いただいたところでございます。
 政府といたしましては、これを真剣に受けとめまして、ただいまその具体化につきまして関係省庁に命じておるところでございまして、実現のために一層スピードを速めて取り組んでまいりたいと考えております。

○浜四津敏子君 ところで、この少子化対策という用語でございますけれども、これは女性にたくさん子供を産ませる対策というのではありませんで、産むことを望みまた選択する女性が子を産み育てつつ働き続けられる社会のシステムづくりの対策、こういう意味であるというふうに私は解釈しております。
 平成七年の北京会議では、女性が子を産むか産まないかを決める性と生殖に関する自己決定権は人権の一つ、こう宣言しております。この基本的な考え方を前提とした対策でなければならないのはもちろんでございます。女性がたくさん子供を産みたいと希望しても産み育てるのが大変で、経済的、心理的あるいは物理的さまざまな障害がある、こういう現状でありますから、この現状、障害となっているものを取り除いていく努力をしなければならない、そのための今回の緊急少子化対策であると私は思っております。
 ところで、この少子化対策、子育て支援策の重要な柱の一つに新しい児童手当制度の創設というものが入っております。
 これは、厚生省の資料によりますと、欧州各国の児童手当制度は、例えばイギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンではおおむね支給対象児童は十六歳未満、支給月額は第一子で一万円から一万五千円、所得制限はなく、財源はすべて国庫負担か公費で賄われております。また、最も制度が充実しておりますドイツの場合には、支給対象児童は十八歳未満、所得制限なしでございます。また、支給月額も第一子、第二子で約一万五千円、第三子で約二万円、第四子以降で約二万五千円でございます。
 つまり、欧州各国の制度では支給対象児童は十六歳未満までが通例でございます。日本は三歳未満でございます。また、支給月額もほぼ日本の二倍というのが通例でございます。また、欧州各国は、その一方で税制面における児童扶養控除というのはドイツを除いて存在いたしません。我が党も、中低所得層には恩恵が少ない十五歳以下の子供に対する扶養控除を廃止し、それを児童手当の財源とするように主張しております。
 ところで、先般、新しい児童手当制度の創設、これについて公明党・改革クラブと自民党で合意をしたわけでございますけれども、その合意は、一つには二〇〇〇年度予算編成に向けて国の総合的な子育て支援事業であるエンゼルプランを見直す、その中で児童手当の支給対象年齢あるいは支給水準などを拡充する、また欧州各国で先進的に実施されている児童手当制度を日本としても参考にして新たな制度を検討する、こういう内容でございます。これを平たく言えば、欧州各国の児童手当制度を参考に新しい児童手当制度を来年四月からスタートさせましょう、こういう内容でございます。
 公明党は、児童手当の抜本的な拡充策といたしまして、支給対象を十六歳未満までに引き上げる、また支給額を第一子、第二子は月額一万円、第三子以降は月額二万円に増額する、また所得制限を撤廃する、これを主張してまいりました。
 官房長官、政府としてこの欧州各国に準ずるような児童手当の抜本拡充の実現にぜひ取り組んでいただきたいと思いますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(野中広務君) 御指摘の児童手当につきましては、両党において確認書が取り交わされたことは十分承知をしておる次第でございます。
 新しい児童手当制度につきましては、一つには児童手当のあり方に関しましては保育所等の子育てサービスの充実を優先するべきではないかといったさまざまな意見がありますこと、また子育て支援を推進していくために新たなプランを策定するなど総合的な対策が求められておりますこと、三番目には給付総額に見合う具体的財源確保が必要であること等に留意する必要があると考えておるところでございます。
 あわせて検討される扶養控除につきましては、十一年度に充実を図ったところでございますが、広く社会の構成員でそれぞれの経済力に応じて公平に負担し合う基幹税たる個人所得課税の課税ベースについて、税率構造や課税方式のあり方等をあわせて抜本的改革に向けて幅広い観点から十分検討を行っていく必要があると考えておるところでございます。
 いずれにいたしましても、両党の協議の確認事項でございますので、今後十分検討し、その実現に向けて努力してまいりたいと存じておるところでございます。
 今御指摘のございました欧州諸国で行われておる児童手当制度を参考に新しい児童手当制度の検討を始めるという確認でございますので、先ほどから申し上げておりますように、具体的財源の確保など検討すべき論点も少なくない等の事情もございます。児童手当の今後のあり方について十分この両党合意を踏まえて検討してまいりたいと存じております。

○浜四津敏子君 育児は社会全体で子育てしていくという視点がどうしても必要であると考えておりますので、ぜひ実現に向けて御努力いただきたいと思います。
 次に、総理府の男女共同参画二〇〇〇年プランとビジョンにおいて、「子どもを持ちたいにもかかわらず不妊で悩む人々が、正しく適切な基礎情報をもとに自己決定できるよう専門相談サービスを充実する。」、こうあります。これを目的として不妊相談センターというのが設置されております。
 子供が産みたいのに生まれないということで悩む、不妊で悩んでおられる若い御夫婦もたくさんおられます。この不妊治療の保険の適用などについてお伺いいたします。
 現在、不妊治療のうち薬物治療また手術によるものにつきましては保険の適用が実現されておりますが、人工授精によるものについては保険の適用外でございます。
 夫婦の十組に一組あるいは十組に二組が不妊だということが言われております。その原因については不明な点も多いわけでございまして、最近ではいわゆる環境ホルモンなどによる原因も指摘されておりますが、いずれにしても悩んでおられる方が大変多いわけでございます。そして、薬物あるいは手術によっても治らない、妊娠することができないという方について人工授精が現に実施されているわけでございますけれども、その費用が一回三十万から五十万と非常に高い。若い夫婦にとっては、この経済的な負担というのが非常に重いという声が多々寄せられております。また、病院ごとの成功率あるいは費用などについても十分な情報公開がなされていないということも不安の大きな原因になっております。そうした中で、治療の事実が先行しているわけでございます。既に回答があっただけでも、いわゆるわかっているだけでも体外受精で出生した子の数は平成七年の実績でも五千六百八十七人に上っております。
 まずは、保険が適用されていない人工授精、大変費用が高いと言われている人工授精でございますけれども、まずは配偶者間の人工授精であればかなり社会的な同意も得られるのではないかと思われます。この配偶者間の人工授精から保険の適用を検討すべき段階に来ていると思っておりますが、厚生省、いかがでしょうか。

○政府委員(羽毛田信吾君) 先生御指摘のとおり、受精そのものを人工的に行います技術、すなわち人工授精でございますとかあるいは体外受精に関しまする保険適用につきましては、現在のところ、その成功率が余り高くないというようなところ、それから安全性といったところでの問題というような医学的な観点の問題に加えまして、やはり治療法に対しまする倫理的な面からのいろんな意見がございます。
 そうした中で、配偶者間での人工授精あるいは体外受精であればそういった倫理的な側面の問題は少ないのではないかという御議論は当然あるわけでありますけれども、やはり配偶者間の人工授精や体外受精につきましても成功率は低いということ、あるいは母体の安全性といった医学的な観点からの問題がございますし、またいわゆる多胎妊娠という現象が生じやすい。そういう可能性が高いということになりますと、これに対しましていわゆる受精卵を減らす手術といいますか、そういった減数手術というようなものが行われるということになりますと、倫理的な問題というものもまだ解決すべき点として残されているというような現状を踏まえまして、やはり公的保険で取り扱うところにつきましてはそこらあたりの課題につきまして総合的に慎重に検討していかなければならないということで、現段階ではいわゆる人工授精でございますとか体外受精につきましては医療保険の適用はいたしておりませんし、今後もそういった点を踏まえて慎重な検討を行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

○浜四津敏子君 現在、ほとんどの先進諸国では既に公的経済支援のもとに体外受精、人工授精を受けることができるようになっております。無条件、無制限というのではなくて、一定の条件のもとで保険の適用は十分に可能であると思います。この点でも日本は先進諸国からはるかにおくれておりますので、少なくとも一定の条件のもとに保険の適用、公的経済支援のもとにそれを認めるというところまでまずは突破口を開いていただきたい。これからもこれを要望し続けてまいりたいと思っております。
 例えば、フランスでは生命倫理法が制定されております。あるいはオーストラリア、これも不妊法がございます。アメリカ合衆国、統一親子関係法、あるいはスウェーデン、人工授精法、体外受精法等、法的整備がこうした先進諸国では同時になされております。
 野中官房長官、こうした不妊治療につきまして、医学技術の面、安全性の面、あるいは生命倫理の問題、あるいは生まれた子供の法的地位の問題、さまざま整備しなくてはいけない問題があるわけですけれども、現にこうした治療がなされて出生している子供も多数に上っております。この子たちの父親を知る権利等の問題もありますし、こうした法的整備を含めまして政府として総合的に取り組む必要がある、もうその段階に来ているというふうに考えておりますが、御見解を伺わせていただきたいと思います。

○国務大臣(野中広務君) 不妊治療につきまして、先ほど厚生省からも答弁がございましたように、患者の経済的な負担あるいは精神的な負担、また体外受精等の生殖補助医療技術等について、その安全面や倫理面あるいは法的な側面等についてさまざまな問題が、委員も今指摘をされたところでございます。
 こうしたことから、国におきましては、不妊専門相談センター事業というのを平成八年から継続して拡充をしてきておるわけでございまして、現在、平成十一年度で全国四十五カ所かと存ずるわけでございますが、この拡充をさらに図っていきますとともに、厚生省の審議会におきまして生殖補助医療に係る安全面、倫理面、法制面等について議論を行っていただいておるところでございます。
 なお、保険適用につきましても、ただいま答弁のあったところでございまして、さまざま多くの問題を抱えておるわけでございますけれども、現に委員から御指摘がございましたように、不妊に悩む夫婦が適切な相談、治療が受けられるよう、今後ともその相談体制の整備を行いますとともに、不妊治療に係ります諸問題について政府全体としての総合的な取り組みを行ってまいりたいと考えております。

○浜四津敏子君 不妊相談センターは来年度までかなり拡充されるということになっていると伺っておりますが、私たちは真の男女共同参画社会実現を目指して、またその実現のためにこうした現場でさまざまな方々がさまざまな問題に悩んでおられる、その課題解決のために具体的に一つ一つ着実な政策を実現していくことによって、この男女共同参画社会実現に向けこれからも最大限努力させていただきたいと思っております。
 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

○吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。
 男女共同参画社会基本法について質問いたします。
 憲法が施行されて五十四年、個人の尊厳、法のもとの平等と性による差別禁止、両性の合意のみに基づく婚姻などを国政上の原則とすることを憲法が求めています。また、国際婦人年から四半世紀、女性差別撤廃条約からも二十年たちました。国連の条約、諸規定は各国政府の女性政策に影響を与えてきました。
 官房長官にまずお伺いいたします。
 こうした中で、男女平等、女性の地位向上を求める国内外の声、運動が大きく盛り上がってきました。男女共同参画社会基本法はこうした流れの中で出されてきたということを私も否定はいたしません。男女平等は日本国憲法の中でどういう位置を占めているのでしょうか。憲法の人権規定は、まず十一条、国民の基本的人権の永久不可侵、そして十三条の個人の尊重、幸福追求権という総則的な規定を置いています。これに続いて各論があるわけですけれども、その冒頭の十四条に法のもとの平等があります。「注解日本国憲法」では、国政全般を直接拘束する法規範であって、単なる政治的指針ではないことは言うまでもないとされています。
 政府もこのような認識のもとに男女平等を国政の基本とする努力をされてきたと思いますけれども、官房長官の認識をお伺いします。

○国務大臣(野中広務君) 男女の平等に関しましては、今、委員からも御指摘がございましたように、それぞれ憲法にその基本をうたわれておるところでございますし、特に十四条には、すべての国民は法のもとに平等であって、性別により差別されない旨が規定をされておるわけでございまして、憲法に定められた重要な基本原理の一つであると認識をしております。

○吉川春子君 この男女共同参画社会基本法案の中にもこの観点が貫かれていると、このように理解してよろしいですか。

○国務大臣(野中広務君) そのように御理解いただきたいと存じております。

○吉川春子君 第一回世界女性会議から二年後の七七年に政府は初めての女性総合政策を策定いたしました。国内行動計画ですけれども、この国内行動計画は今日に至るまで何回か書き改められてまいりました。
 この七七年の「基本的考え方」の中で、まず、職場には男女の不平等が依然として残存し、政策や方針決定への婦人の参画も国、地方公共団体、企業、民間団体、国際分野を通じて低調であると分析をした上で、憲法の定める男女平等の原則、国連憲章、婦人に対する差別撤廃宣言、まだ条約がないときなので撤廃宣言、世界行動計画を初めとする国際文書に基づき政治、教育、労働、健康、家族生活に関して憲法が保障する一切の国民的権利を婦人が実際に男性と等しく享受し、かつ国民生活のあらゆる領域に男女両性がともに参加、貢献することが必要であるという基本的考えに立って、それを可能とする社会環境を形成することを全体的目標とするとしております。
 また、「施策の基本的方向とその展開」として、「法制上の婦人の地位の向上」の中では、憲法の定める男女平等原則の一層の徹底、かつ婦人の地位の実質的向上を図るため、時代の変化に即して常に諸法制を見直し、その再検討を行う。また、雇用、職業における男女平等の、均等ではないんですね、男女平等の確保のための婦人労働関係法令、その他広く問題点について検討を行う。
 このように七七年の行動計画が策定されておりますけれども、この観点も今日も変わっていないということを確認できますか。

○説明員(名取はにわ君) 今、議員がおっしゃいましたのは、これまでの我が国の男女共同参画社会の実現に向けて、国内行動計画のまず最初の一ページでございました。
 一九七五年、国際婦人年がございまして、国際婦人年世界会議がメキシコでございました。そのときに採択されました世界行動計画を受けまして、昭和五十二年に我が国で初めて国内行動計画が策定されました。それをまさに今言っていただいたと思います。
 今おっしゃいましたとおり、これは本計画の施策の基本的方向といたしましては、法制上の婦人の地位の向上、それから男女平等を基本とするあらゆる分野への婦人の参加の促進、それから母性の尊重及び健康の擁護などを掲げてございます。その後、今御指摘がございましたように、昭和六十年には女子差別撤廃条約を日本は留保なく批准いたしましたし、そのための条件整備といたしまして雇用機会均等法をつくる等々、順次進んできたわけでございます。
 したがいまして、やはり憲法に基づき、そしてまた我が国が批准しております条約等に基づきまして着々と進んでまいりまして、その後、現在は第五回目の国内行動計画を平成八年につくったというような形で進んでまいったところでございます。

○吉川春子君 それからおよそ二十年を経て、今日、男女共同参画二〇〇〇年プラン、平成八年十二月、男女共同参画推進本部、これが発表されました。これが最も新しい政府の女性総合政策であり、今回の男女共同参画社会基本法の基礎になっているものと考えられます。
 その第一部、「基本的考え方」では次のように述べています。「我が国が戦後半世紀にわたって取り組んできた個人の尊重と男女平等の実現という課題は、男女共同参画という新たな概念の下に、二十一世紀に向けて我が国が取り組まなければならない最重要課題として、改めて提起された。」と。全体的に見ても、男女共同参画という言葉が多用されております。ここに引用しました七七年の国内行動計画は男女平等という言葉がちりばめられている、まさにその計画の中には。ところが、二〇〇〇年プランは、男女共同参画という概念、新しい概念に取ってかわるんだということを基本的な考え方で打ち出しておりますけれども、なぜ男女平等が男女共同参画という概念に取ってかわられたのか、そのことを説明していただきたいと思います。

○国務大臣(野中広務君) 基本法の名称についてのお話であろうと思うわけでございます。
 御承知のように、昨年の十一月四日の男女共同参画審議会の答申におきまして、一つには、男女共同参画社会は、男女平等を当然の前提とした上で、さらに男女が各人の個性に基づいて能力を十分に発揮すること、二つには、男女が公的分野、私的分野を問わずに、あらゆる分野における意思決定過程への参加、すなわち参画が極めて重要であり、この点を強調する必要があること等から、名称を男女共同参画社会基本法とすることが適当であると提言をされたところでございます。
 政府といたしましては、この答申を受けまして、今国会に提出をいたしまして御審議をお願いしておるこの基本法案の名称も男女共同参画社会基本法案として提案をさせていただいたところでございます。

○吉川春子君 男女平等ということと男女共同参画ということとは少し違うわけですね。私たちは、憲法の今押さえてきた原則でいえば、やはり男女平等ということが国政上の原則として押さえられなくてはならない。願わくば、この法律も男女平等法であってほしいと多くの女性たちは思っているわけです。
 それはさておきまして、男女共同参画も平等を推し進めるための一つの概念ですけれども、それは一つの概念なんですね。やっぱり基本は男女平等ではないかというふうに思うんです。例えば、この間、女性の地位がいろいろ向上された部分もありまして、民法とか国籍法とかそういう改正も行われてきましたことは事実ですけれども、経済的な平等という点でいえば、一番重要なのは労働、雇用の場における男女の平等だと思うんです。
 労働省の発表している働く女性、白書ですけれども、これによりますと、賃金は五十人規模の事業所で男性の五〇・八%、半分なんですね。これはパート労働者を含む数字です。そして、先ほど来お話がありますように、M字型カーブと呼ばれる二十代後半から三十代前半の女性の雇用の場からの撤退。そして、女性のパート労働者は全体の七割近いわけですね。七割近い数字を女性が占めている。派遣労働者も圧倒的に若い女性。こういう劣悪な労働条件の中で働いているわけなんです。この四月からは労働基準法も女子保護規定を全部廃止いたしました。
 こういうふうにさらに条件が悪化したわけですけれども、私は、男女平等がもう前進したからもう男女平等はいい、あとは共同参画だけでいいと言わんばかりのその考え方には賛同できないわけなんです。やはり女性の就業率が高まってきたことは事実ですけれども、だから共同参画は進んだかもしれない、しかし賃金の格差が五割などという先進資本主義国の中でも非常に低い水準にあるわけです。
 そういうことを考えると、重視されなくてはならないのは男女平等なんじゃないか、参画以前にまず平等なんじゃないか。この問題について官房長官、いかがお考えですか。

○国務大臣(野中広務君) 私は、先ほど来累次申し上げておりますように、この法案の基本とするところは今、委員がおっしゃいましたように男女平等を当然の前提とした上で、それぞれ審議会の答申に基づきまして、男女が各人の個性に基づいて能力を十分発揮できること、さらに重ねてでございますが、男女が公的分野、私的分野を問わずに、あらゆる分野における意思の決定過程への参加、いわゆる参画が極めて重要であるという審議会の認識のもとにおきまして、御答申を賜ったわけでございまして、この基本となるところは委員がおっしゃっておるように、男女平等を当然の前提としておるものであると考えております。

○吉川春子君 だから、男女共同参画は必要なんです。これは、もっともっと積極的に推し進めなければならないというのが私どもの立場でもあります。しかし、共同参画だけでは足りないんじゃないか、やはりその基礎には男女平等の実現ということがないと、本当の意味での共同参画も進まないのではないか、このように考えるわけです。
 それで、もっと別の角度から質問をいたしますけれども、社会経済情勢の変化ということが法案の第一条に出てまいります。「社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することの緊要性」、こういうふうに出てきていますけれども、この場合の社会経済情勢の変化というのは一体どういうことなのでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) この法律の目的の規定の中で言っております社会経済情勢の変化というものの中の大きな部分は、少子高齢化等を考えております。

○吉川春子君 もうちょっと丁寧に、五つまであるんでしょう。(1)で終わりましたね。

○説明員(名取はにわ君) 少子高齢化の進展、それからあと、これは平成八年七月三十日に前の男女共同参画審議会から、男女共同参画ビジョンの中で社会経済情勢の変化ということで五つ挙げられたものでございますが、まず第一といたしまして、少子高齢化の進展でございます。それから二つ目でございますが国内経済活動の成熟化と国際化、それから三つ目といたしましては情報通信の高度化、それから四つ目といたしまして家族形態の多様化、それから五つといたしまして地域社会の変化ということが挙げられておりました。

○吉川春子君 経済企画庁に来ていただきましたが、我が国の課題と政策運営の基本方向について伺いたいと思います。
 時代認識と対応すべき構造的諸問題について、時間がないので簡潔にお答えいただきたいと思います。

○政府委員(中名生隆君) 簡潔にということですが、申し上げます。
 平成七年十二月に閣議決定されました現在の経済計画、構造改革のための経済社会計画というところで、ここでは大きな潮流の変化ということで四点を挙げてございます。
 第一点は、グローバリゼーションの進展ということでございます。それから第二には高次な成熟経済社会への転換、それから三番目に少子高齢社会への移行、それから四番目に情報通信の高度化、これを内外における大きな潮流の変化ということで考えております。
 その上で、目指すべき経済社会の方向ということで三点うたっております。第一点は自由で活力ある経済社会の創造、それから第二点といたしましては豊かで安心できる経済社会の創造、それから三点目といたしましては地球社会への参画、この三つを基本的な方向といたしております。
 それで、特に今挙げました三点のうち、二番目に申し上げました豊かで安心できる経済社会を創造するためには老若男女共同参画社会を構築することが必要である、そのためには男女の固定的役割を見直し、女性の能力発揮の支援、あるいは高齢者、障害者の社会参加を積極的に図るとともに、ボランティア活動参加への支援、さらには豊かな学習環境の形成を図る必要があるということを言っております。
 なお、申し添えますと、ことしの一月十八日に小渕内閣総理大臣より経済審議会に対しまして、この現行経済計画にかわるものとして、新たなる時代の姿と政策方針を策定するようにという諮問をいただいておりまして、現在、経済審議会においてその策定に向けた議論を進めていただいているところでございます。
 以上でございます。

○吉川春子君 名取室長がお挙げになった五点の内容と今経企庁が挙げていただいた内容とはかなりオーバーラップしまして、同じ政府が出すんだから同じといえば同じなんですけれども、その中で共通して言えることは、雇用の流動化と規制緩和、これをもっともっと進めていかなくてはならない、そして痛みを伴うかもしれないけれども構造改革をしていかなきゃならない。経企庁の方が先に出したと思いますが、それを共同参画審議会がとりまして、それを答申の中に組み込んだ、そしてその答申の内容を受けて、社会経済情勢の変化に対応する緊要性という言葉が第一条の法律の中に取り込まれた、こういう経過になると思います。
 この問題は、引き続き次回以降も質問していきたいと思うんですけれども、その中で、規制緩和と雇用の流動化が女性に対してどういう影響を与えているか、これはまさに大問題でございまして、例えば労働者派遣事業の自由化とか、あるいは変形労働時間制の弾力化、あるいは裁量労働制の導入、こういう中で、育児も家事も仕事も両立できない、むしろ本当に体をさいなむような形で働かざるを得ないというところに追い込まれていっている。
 しかし、ビジョンはどういうふうに言っているかというと、それが女性の雇用のチャンスをつくるものだと、あるいは高度情報化社会の中では中高年の男性は、こういう書き方はしていないんですけれども、意訳しますと、コンピューターなどは不得意だから、そこに若い女性が入っていけば賃金の格差もなくなるんじゃないか、こういうような表現と見られるものもあるわけなんです。
 私は、最初に憲法の理念を長々とお伺いしたのは、まさにこういう経済社会の変化に対応して、その中で国が経済政策を出していく、その中で女性を活用する、それは痛みを伴うかもしれない、そういうことと男女平等の理念、本当に女性が子供を育て、人間として尊重され、働き続けられるということとは両立できないものが出てくると思うんです。
 だから、第一条で、人権の尊重ということと経済社会の変化に対応するということと同列に置いている、これは間違いじゃないか。やはり人権の尊重ということが上に来るべきであって、経済社会の変化に対応して女性を活用するなどということはあってはならないことではないかと、理念の問題ですけれども、その点はいかがお考えですか、官房長官。

○国務大臣(野中広務君) 非常に理念と現実の問題とさまざま今、委員から御指摘をいただくと、難しい問題でございますけれども、いずれにいたしましても、憲法が示す男女の平等の基本的理念に立ちまして、さまざまな施策を遂行していかなくてはならないと考えておるわけでございます。
 今日まで、議員が具体的に御指摘になりましたように、社会の現象の中には、女性の置かれておる地位の低さ、あるいは多くの迫害等があるわけでございまして、さまざま問題を私どもも抱えながら、今回のこの法案の成立をまた大きな契機といたしまして、今まで埋められなかった溝が埋められるための努力を政策を通じて実行していかなくてはならないと考えておるところでございます。

○吉川春子君 私は、同時に、男女平等、女性地位向上のためには、女性への暴力の禁止ということは非常に重要な問題であると思いますし、国連も特に九〇年代に入ってより一層重視をしてきていると思います。クマラスワミさんとかマクドガルさんとか、この問題で特別報告者を設けて調査をし報告をさせているところです。日本政府も、これに呼応するというか歩調を合わせる形で、男女共同参画審議会の中に暴力禁止部会ですか、というものをつくりまして中間報告を取りまとめた。先ほど官房長官のお話では、近く答申が発表される見通しである、こういうことも明らかになりました。
 それで、私は、女性への暴力の禁止という問題で日本が解決を迫られている従軍慰安婦問題について官房長官にお伺いいたします。
 既にクマラスワミ報告、マクドガル報告でも、従軍慰安婦問題に対して日本政府に賠償等を迫ってきております。また、ILOの条約勧告適用専門家委員会の年次報告も発表されまして、ここでも、慰安婦の大多数が、それが日本政府からの賠償とは見えないことを理由に女性基金からのお金を拒否していること、及び女性基金からのお金を受け取った少数の女性たちに日本国首相が送った手紙が政府の責任を認めていないということで拒否された事実は、大多数の被害者の期待が満たされていないことを示唆している、本委員会は日本政府が速やかに措置を講ずるように要請する、このことは急を要する、このようにしているわけです。
 また、昨年の四月ですけれども、下関判決が下りまして、日本が官房長官談話で責任を認めた以上はふさわしい立法措置を直接に講ずべしということで、私ども国会議員に対しても立法の不作為責任という厳しい判決を下しました。政府も国会ももう従軍慰安婦問題は解決済みだという立場はとれないのではないかと私は思いますが、官房長官の御認識はいかがですか。

○国務大臣(野中広務君) お話しのように、我が国はアジア女性基金の事業を創設いたしましてこの事業を実施してまいったところでございます。しかし、これにつきましては一部御批判や反対があることも十分承知をしておるわけでございますけれども、一方、フィリピン、韓国、台湾におきましては、この基金から個々の元慰安婦の方々に対しまして一人当たり二百万円の償い金の支給や医療・福祉支援事業を実施しておりまして、これまでに百十名以上の元慰安婦の方々に事業を実施したと承知をしておるところでございます。
 また、基金は、インドネシアにおきましては高齢者のための入居施設整備を支援する事業を実施しておりまして、オランダにおきましても、さきの大戦中、心身にわたりましていやしがたい傷を受けた方々の生活状況の改善を支援いたしますための事業を実施しておるものと承知をいたしております。
 一方、今お話ございましたように、韓国政府によりましては、元慰安婦への支援金の支給は、昨年の十月の小渕総理と金大中大統領との会談等によりまして、過去に区切りをつけまして二十一世紀に向けた未来志向の新たなパートナーシップの構築強化が図られる等、韓国におきます基金事業を取り巻く状況が変化をしてきておるわけでございます。こういう変化の状況を踏まえまして、基金として韓国において今後どのような形でこの事業を進めていくことが適切であるのか、さまざまな観点から現在検討を行っておるところでございます。
 ただ、フィリピン、インドネシアにおきましては、基金はそれぞれの政府と覚書を結びまして緊密な協力のもと着実に実施をしておるところでございまして、またオランダにおきましても、基金がオランダの事業実施団体と覚書を結んだ際に、オランダ政府はこれを評価するとの立場を表明いたしておるわけでございます。
 こういったことからも、それぞれ御意見はあろうかと思いますが、各国政府からはおおむね基金事業について評価を得ておるものと認識をしておるところでございます。

○吉川春子君 外政審議室にお伺いいたしますけれども、このアジア女性基金の募金、年度ごとに三年間ぐらいそれぞれお示しいただきたいと思います。それと、決算についても数字をお願いします。

○政府委員(登誠一郎君) お答え申し上げます。
 まず、募金額でございますが、過去三年間ということでございましたが、平成八年度におきましては累計で四億三千二百万円、平成九年度におきましては少しふえまして、累計で四億四千百万円、平成十年度、昨年度でございますが、四億四千三百万円となっております。
 また、決算の方でございますけれども、同じように過去三年間でございます。今申し上げましたのは国民の皆様方の募金の総額でございます。今度の決算は、これは政府の補助金の方でございますが、平成八年度におきましては四億一千七百万円、平成九年度におきましては四億二千三百万円、昨年度、平成十年度でございますが、三億五千六百万円となっております。

○吉川春子君 官房長官から大変詳しい御報告がありました。一番今問題になっているのは韓国との関係だと思うんですね。四月、五月にかけて新聞報道が幾つかありました。それによると、日本政府は韓国に対する事業の打ち切りを表明するかもしれない、アジア女性基金は償い金の支給を断念して別事業への転換を韓国と協議しているというふうに報じられております。アジア女性基金によってこの従軍慰安婦問題を根本的に解決するということは難しい情勢になってきたのではないでしょうか。その辺はいかがお考えですか。

○国務大臣(野中広務君) 先ほども御報告申し上げましたように、この基金事業のあり方については、一部反対やらさまざまな御意見がございますことは十分承知をいたしておりますけれども、先ほど御報告申し上げましたように、おおむね着実に進展をしておると考えておるわけでございまして、今後とも最大限の協力を行うとともに、この事業が基金として所期の目的を達成できるようにやってまいりたいと考えておる次第であります。
 ただ、御指摘のように、韓国におきましては、昨年五月の韓国政府によります元慰安婦の方々への支援金の支給に加えまして、昨年十月の金大中大統領の訪日及びことし三月の小渕総理の訪韓によりまして、また、先ほど御報告申し上げましたが、日韓両国の過去に区切りをつけて二十一世紀に向けた未来志向の新たなパートナーシップの構築強化が図られる等、韓国における基金事業を取り巻く状況が変化をしてきておるわけでございます。
 こうした点を踏まえまして、政府は、韓国において基金がいかなる事業を実施することが適切であるか、基金とともに種々検討を行っておるところでございまして、今打ち切るということでなく、引き続き基金として韓国側とも話し合いを続けてまいりたいと考えております。

○吉川春子君 河野元官房長官の談話や総理の謝罪の手紙で政府の反省の立場は一応示されていると。その後、しかし、梶山元官房長官の公娼制度発言とか中川農水相の発言など、閣僚の発言が次々と行われて関係諸国の厳しい批判を浴びたことは御承知のとおりですけれども、こういうふうになりますと、日本政府の姿勢が疑われてしまうということになると思うんです。アジアの方々にすればどっちが本当の政府の立場なんだろう、こういう疑いの目を向けられても当然ではないかと思うんです。
 今、内外に日本政府のそういうはっきりした態度、真意が伝わるように改めて態度を表明すべきではないかと思いますが、この問題について官房長官としてはいかがお考えでしょうか。

○国務大臣(野中広務君) いろいろな歴史観やさまざまな政治情勢等で今日の戦後処理というものが、今申し上げたような元従軍慰安婦につきましてもアジア女性基金という形で推移をしてまいったわけでございまして、今、官房長官として私に答弁を求められるならば、私としてこの基金を継続し、そして心身ともにいやしがたい傷を負われた方々に対してぜひ報いてまいる道を求めてまいりたいと考えておるわけでございます。
 ただ、一人の政治家としてこの世紀末を考えるときに、今なお我が国はアジア各国を初めとして、過去の戦争の傷跡を重く抱えておることを厳粛に踏まえて、我が国がかくあるべしという区切りを世紀末につけなければ、後世に、歴史観の欠落した世代にこのままこの傷を先送りしていくことの非常に問題点を私は強く認識しておる次第でございます。

○吉川春子君 官房長官の政治家としての御発言は承りました。
 同時に、ちょっと重ねてお伺いしたいのは、アジア女性基金一本やりで今後も政府は進むのか。アジア女性基金といっても個別に支給する部分と事業ということでトータルに支給する部分と両方ありますので、韓国については後者の道も探っているという報道もありますけれども、政府の意思を示すことと同時に、アジア女性基金のみで解決できると、特に韓国との関係ですね、その点はもう一度お答えいただけないでしょうか。

○国務大臣(野中広務君) 韓国との関係におきましては、アジア女性基金のあり方だけで今解決をつけるのかどうかというのは、これから韓国政府と十分話し合いをしていかなければならない重要な問題であると考えておるわけでございます。いかにして金大中大統領と小渕総理との会談が過去を振り返らないで未来志向でやっていこうという、こういう決意が示された中において、なお元従軍慰安婦問題をどのように解決していくかというのは重要な課題でございますので、これで済んだということじゃなしに、あるいはこれで、アジア女性基金だけで対応するということじゃなしに、なお韓国側と深く入って話し合いを詰めていく必要があるというように、そして私どもとしては、この問題に個人的にも、そして国家的にも区切りをつけたいと考えておる次第でございます。

○吉川春子君 わかりました。
 本当に女性に対する暴力ということが過去の問題としてだけにとどまらず、今の日本に突き刺さった矢であるというふうに思いますし、海外に行くたびに、国内にいてもそうですけれども、特にアジア諸国へ行くたびにこの問題は突きつけられる問題です。とりわけ、下関判決で国会の立法の不作為などということも突きつけられますと本当に私たちも責任を感じざるを得ないわけですけれども、この問題は何とか解決していかなくてはならないというふうに思いますし、ぜひ二十世紀という世紀を越さない間に、政府としてもお互いに喜び合える解決策を示していただきたいということを重ねて要求いたします。
 同時に、男女共同参画社会基本法、この法律が女性の参画のチャンスを拡大するというにとどまらずに、実質的に平等ということを担保する法律でなくてはならないというふうに思うわけです。しかも、チャンスを与えられるということであっても、雇用流動化の中でチャンスを与えられるということになると、ぐっと低いレベルでチャンスを与えられるということになるので、それは本当に女性にとっていいことなのかという疑問が出てまいります。
 そういう意味で、この男女共同参画社会基本法、共同参画ということを前面に打ち出した法律ですけれども、私たちも積極的にこれが本当の意味での共同参画につながるような法律にしていきたい、野党の皆さんとも、また国会の審議を通じても引き続きこの問題を追及していくということを表明しまして、きょうの質問は終わりたいと思います。

○清水澄子君 社民党の清水澄子です。
 きょう、こうして男女共同参画社会基本法をめぐって男女平等の推進について審議をしているというこの現実は一定の前進だと受けとめております。
 しかし、こういう本来の男女平等についての基本法というのは、ヨーロッパ諸国では一九七〇年代ぐらいにできているわけで、今もう三回ぐらいさらに改正を進めているというところが多い中で、非常に遅いスタートを日本はしていると思うわけです。そういう中で一方では歓迎しつつも、一方ではよりよいものにしたいという希望を持っております。官房長官も非常に御苦労されながら答弁されておられまして、伺いながら、私たちがこういうことを質疑で取り交わす中でより本質的なものをお互いに深めていきたいと思います。
 私は、四月十二日の参議院の本会議において、小渕総理にこの法案の提出に至った経過とその基本理念、とりわけ女性差別撤廃条約の遵守に対する基本認識を伺いました。
 総理は、女子差別撤廃条約を国際規範であると認識している、そして条約の遵守に努めていきたい、世界人権会議におけるウィーン宣言や国連総会での女性に対する暴力撤廃宣言など、国際的な動きも踏まえつつ女性の人権に関し今後も適切に対処していきたいという答弁をされました。
 すなわち、私はこの基本法というのは、やはり女性差別撤廃条約を初めとして職業生活と家庭生活の両立の権利をうたったILO百五十六号条約や北京行動綱領などの国際合意を踏まえて今後、女性差別の撤廃を目指していくものであると考えます。
 したがって、私はやはりそういうこの法律の趣旨というものを明確に前文であらわすべきだと考えますが、もういろいろ先ほどから何人かの議員の皆さんもそれを主張しておられます。それに対してもうそちらからの答弁は、他の基本法でも最近はそういうものを書かないんだというお答えがありました。私は他の法律と比べる必要はないと思います。女性の人権にかかわる基本的な法律が初めてできるわけですから、やはりこれははっきりだれが読んでもわかるという意味でもってぜひ前文をつけるべきだということを私は主張したいんです。この目的とか、高校生がこれだけ読んで全然わかりません。
 それからまた、今後、地方自治体にどんどん市町村までこのことを実行していただくには、やはり前文をつけるということを私は再度主張したいわけですが、官房長官、いかがですか。

○国務大臣(野中広務君) 今まで各委員の先生方から前文につきまして御指摘をいただいたところでございますけれども、政府といたしましては、今回の基本法案におきまして、第一条において、何回も申し上げておりますように、「男女の人権が尊重され、かつ、社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することの緊要性」という法案提出の背景を明らかにしておるところでございますし、また「男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。」という法案の趣旨、目的を明確に規定いたしておりますし、さらに第三条から七条におきまして「男女の人権の尊重」等の五つの基本理念を定めておるところでございます。
 このように、法案提出の背景や趣旨、基本理念について明確に織り込んでおるつもりでございますので、重ねて前文を置くということについて私どもとしては考えておらないところでございます。

○清水澄子君 国民的な論議を深めたいというならば、わかりやすくやるということが大事ではないかと思います。
 メキシコ宣言でも男女の平等の実現ということ、それから差別撤廃条約でもすべての人間の自由と尊厳及び権利について平等であるということと性による差別をなくすということが明確にされているわけです。ですから、本来、この基本法は男女平等基本法と呼ぶべきものである、それがごく自然であり国際的合意にマッチするものであるということを私は重ねて主張させていただきます。
 次に、第二条の「定義」についてお伺いいたします。
 基本法の男女の人権というのは本当はおかしいんです。女性の人権というのが本来あるべきなのに、なぜ男女の人権になっているのかなというのも疑問ですが、まず女性の人権の確立、女性に対する差別撤廃が明確に打ち出されるべきだと考えます。
 そのことは、男性の人権をないがしろにすればいい、決してそういう問題ではございません。これまで性別役割分業の固定観念に基づいた男性中心社会において、女性の人間としての権利が不当に抑圧されてきた、差別をされてきた、そのことが経済社会の発展や民主主義の実現を阻害しているということへの認識と反省から、男女が同じ人間としての権利を享受することが緊急の課題という認識になって、国際的にそれが共通の政治課題になったはずでございます。したがって、私は、定義において、性差別の撤廃、すなわち男女平等の実現を阻害する要因となっている社会における制度もしくは慣行の撤廃または取り扱いその他の行為の禁止ということが明確に掲げられるべきだと考えます。
 しかし、この法律には不思議なことに男女平等という文言は一つもありません。対等と均等となっているわけです。これは北京会議においても、平等という言葉は権利をあらわす、平等の権利があって初めてひとしく分かち合う均等とか公正というものがあるのだ、だから平等と均等の使い方を厳格に区分すべきだという議論が非常になされておりました。
 そこで、私は、なぜ平等ではなく均等、しかも男女共同参画になるのかというところは決して納得できないわけです。さまざま先ほどから、この法律は男女平等の実現を当然の前提としているのだと、一つ飛び越えておられるわけです。幾ら未来志向といっても、現実の解決を先にやることにおいて未来が開かれていくのであって、男女平等を当然前提としています、その先の話ですというのはやはりおかしい。
 ですから、これは東京都なんかの条例もそれはおかしいんじゃないかということで男女平等参画基本条例という名称をつけておりますけれども、どこでも歴史的経過とかこの趣旨のわかっている人たちがこれを本気に議論すると、何でこういう名称になったのかなというのはみんな疑問に思うわけです。
 他方、政府は、英語では男女共同参画も男女平等もジェンダーイコーリティーと両方とも同じに訳しているわけです。ということは、ここでお尋ねしておきます、男女共同参画社会というのは日本型男女平等社会であるととらえてよろしいでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) この法律で申し上げております男女共同参画社会は、あくまでも男女平等を前提として、男女が対等な構成員としてみずからの意思によってその役割を決めていく社会というものだと理解をいたしております。

○清水澄子君 全然わからないです。
 その二つは違うんでしょうか、基本的に。便宜上なんでしょうか。だって、英語では二つ並んで同じなんですね。男女共同参画も男女平等も同じようにジェンダーイコーリティーと使って国連に報告をしている。こちらでは、男女平等を前提にしたその先の社会のことだとさっきおっしゃったので違うのかなと思ったんですが、国連にもそういうふうに報告されているならば、やっぱり日本型男女平等社会だなと思ったんです。そういうふうに認識してよろしいでしょうか。

○国務大臣(野中広務君) 内閣総理大臣が男女共同参画社会の審議会に諮問をいたしまして、審議会の答申を受けまして、この審議会は男女共同参画社会と定義づけられて答申をいただいたわけでございますので、私どもとしては法案の名称を男女共同参画社会基本法とさせていただいた次第でございます。
 内容につきましては、もう男女平等を根底としておるということにつきましては累次答弁を申し上げておるところでございますので、御了承賜りたいと存じます。

○清水澄子君 次に、この定義を見ますと、やはり国際社会では、人権を考えるときには単に政治的、市民的、文化的な権利の享受だけではないんだ、家庭や職場あるいは街頭において性的な搾取、虐待、そういうもの、女性は特にこの性的な暴力を受けやすいということ、人間として安全に生きる権利というもの、女性に対する暴力の撤廃とかリプロダクティブヘルス・ライツ、いわゆる自分の子供を産むか産まないか、自分の性に対する自己決定権というのは女性の人権であるということが再定義をされたわけです。
 そうすると、この定義は第二条の中にはどこの部分がそれに当たるのでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) この第二条の定義規定におきましては、男女共同参画社会の形成、それから積極的改善措置の規定だけを置いてございますが、ただいま委員のおっしゃいました暴力あるいはリプロダクティブヘルス・ライツの問題につきましては、基本理念の一つといたしまして第三条に、「男女の人権の尊重」の中でございますが、「個人としての尊厳が重んぜられること、」という規定を置いてございます。
 この規定から、女性に対する暴力は決して許されるべきものではないと考えておるわけでございますけれども、さらにリプロダクティブヘルス・ライツの問題もこの条文に関連いたしまして重要な問題であると認識しておるところでございます。

○清水澄子君 それは第三条でしょう。私は、第二条の定義というところのどこに当てはまりますかと伺ったんです。定義にはないんです。いわゆる性の暴力撤廃とかそういう問題は入らない、この定義の中には。ここに書いてある文言はそうなんです。そして、これも男女平等が実現したさらにその先の目標が書いてあるんです。ですから、皆そちらのお答えは一致しているんですが、いわゆる今日の女性の人権の再定義の部分がこの定義の中から外れている、この点について私はやっぱりもう一度検討すべきだと思います。
 次に、ポジティブアクションについてなんですが、私はこれも積極的改善措置ではなく、女性差別撤廃条約を踏まえて積極的平等促進措置とすべきであるというふうに考えます。しかし、それはそういうふうにお答えにならないのはわかっているんですが、官房長官は本会議においても、その前に私がポジティブアクションが逆差別に当たらないということを明文化すべきと質問したことに対して、それは第八条において国の責務として明確に規定されているから大丈夫だというふうにおっしゃったんですが、そういう本法案の構造からその論理というのはどういうふうになるのか、ぜひちょっとお答えください。

○政府委員(佐藤正紀君) 積極的改善措置につきましては、第八条におきまして、国は「男女共同参画社会の形成の促進に関する施策(積極的改善措置を含む。以下同じ。)」と書いてございますが、これを総合的に策定し、及び実施する責務を有しておるわけでございます。国にこういう責務を与えます上で、その行動の中身がそういう差別に当たるものでないことは当然のことであるという前提に立っておりまして、法制局の審査の中におきましても、逆にこれが逆差別ではないという規定を置くこと自体かえって矛盾であろうという指摘を受けて、そういう規定は置かないこととしたところでございます。

○清水澄子君 それでは確認をさせてください。
 官房長官、ポジティブアクションは逆差別に当たらないということをここではっきり確認してよろしいですね。

○国務大臣(野中広務君) これは委員、どうなんでございましょう。ポジティブアクションというのは、私はある意味において経過措置と考えたいと思うんです。私は不勉強でございますけれども、アメリカあたりでこの問題は州において最近は見直されて、そして改善がむしろ逆にされていくというようなことが顕著に行われておるわけでございますので、やはり固定したものでなく、ある意味においては経過措置と考えるべきでなかろうか。そういう意味において、私は先般の答弁でお答えもいたしましたけれども、積極的改善措置が逆差別には当たらないというように考えておる旨を申し上げた次第でございます。

○清水澄子君 そのように確認させていただきます。
 次に、厚生省が「育児をしない男を、父とは呼ばない。」という画期的なポスターをつくりました。そこには日本の父親は一日に十七分しか育児をしないとあって、非常に海外でこれは有名になっております。
 ことし一月に公表された女性労働白書でも、子育て期にある女性の多くが就業を希望していながら現実には就業を控えている状況や、女性が子育ての後に再就職する際の問題点として、実に九四・四%の人が仕事と家庭の両立が難しいということを挙げているわけです。さらに、先月公表された男女共同参画白書でも、仕事を持つ女性が育児、介護、家事などの無償労働を行っている時間が大体三十代から四十代で四時間なんです。その一方で、やっぱり同年齢の仕事を持つ男性は二十一分から二十七分となっているわけです。
 このことは、やはりさっきからいろいろ、本当はもっとこういうところを、次に時間があればもっと深くやりますが、この問題が、実は一番これが女性の役割とされてきたところで、生活時間というんですか、その面がいわゆるこれはアンペイドワークになっているんですが、それらが男女が均等になっていない。それで女性の労働が非常に仕事と家事労働とか介護と育児とかそういう二重負担になる。そしてさらに、そのことが理由で女性の就業に大きな不利益が生じてくる。ですから、この辺をどう解決するかというのが一番大きな問題だと思います。そして、現にそういうことの中で、パート以外の一般労働者の数は減る一方ですから、女性のパートの労働化のみが進んでいく。そして、女性の平均賃金は男性の五〇・二%というふうに一年ごとに下がっていく、これがまた国際社会で問題になっているという現状だと思います。
 北京女性会議行動綱領では、男女の経済格差を解消するということが大きな課題になっているわけです。これについてはまた次の時間にしたいんですが、経済格差というのは働く女性だけではありません。農業とか自営業に働く人とか家庭の女性たちもそれぞれの労働の価値というのをどう考えるかという問題があるんですが、ここでは私は働いている女性のことをきょうはちょっと、雇用における男女の経済格差というのが一番大きな問題でありますから。私は、そこが全然改善をされず悪化の道をたどっているという背景に、性別役割分業を解消しなきゃならないんだ、男女がともに仕事と家庭を両立できる、そして男性も女性もライフスタイルを変えていくということが実はこの法律のやっぱり大きな目標にあるはずだと思うんです。
 このことは、この法律の持つ意味が、これからの経済社会構造のあり方を根本的に見直していくという、私はそういう必要性を求められていると思うわけですけれども、その際に、雇用形態や労働時間のあり方という雇用システムの変革というのは、とてもこれはもう基礎的なというか絶対的な条件になってまいります。その場合に、企業の責任というのは非常に大きいと思うわけですが、個々の事業主の責務というのは国民の責務の中に一般化されている。私は、国民一般と事業主とか企業の責任というのは違うと思うんです。その点でやはり私は、これは同列ではない、事業主の責務というものを明確にすべきだと質問したいんですが、いかがですか。

○国務大臣(野中広務君) 委員が御指摘のように、先進諸国に比べまして残念ながら我が国の現状は、家庭と職場の両立の問題やあるいは男女の賃金格差、その他女性の登用の問題等、さまざまな分野においておくれをとっておることは現実の事実として残念ながら認めなければならないと思うわけでございます。そういう中におきまして、男女共同参画社会の実現の観点から、政府の国内行動計画でございます男女共同参画二〇〇〇年プランに織り込まれた問題を政府一体となりまして取り組んでまいらなくてはならない重要な課題でございますし、また、先進諸国におくれておるものを私どもとしても深刻な責任として取り組まなくてはならないと考えておる次第であります。
 ただ、男女共同参画社会の形成に当たりましては、単に職場だけでなく、あらゆる分野において取り組みを行うことが求められておるわけでございますので、委員が御指摘になりましたように、企業とか事業主だけの責任を特記するのではなく、国民の責任として職域、学校、地域、家庭等あらゆる分野という表現を使っておりますけれども、こういうあらゆる分野におきまして男女共同参画社会の形成に寄与するよう努めなければならないと規定することが妥当であると考えた次第でございます。

○清水澄子君 私は、もうあと何分しかありませんので、ちょっといろいろ取ります。
 私は、やっぱり一般的な学校、地域も家庭も大変です。しかし、やはり事業主というのは全く雇用の関係になるわけですから、そこはもっと私は大きな社会的責任を持つと思いますが、また次にいたします。
 次に、女性差別撤廃条約では、女性の権利の法的な保護を、権限のある自分の国の裁判所その他の公の機関を通じて差別となるいかなる行為からも女性の権利を保護することを確保しなければならないとなっているわけです。日本ではそのような機関がないために本当の意味での女性差別を撤廃するための実効性が上がらないという現状があります。
 これに対してイギリスでは、監視機構として雇用にかかわる専門家など八名から十五名で構成される機会平等委員会が置かれて、九七年には雇用とか賃金、教育、訓練、商品、施設、サービス、採用、求人広告、仕事と家庭など、二万五千件もの案件を取り扱っているわけです。同様にカナダでも、人権侵害被害救済とか差別防止、人権教育を任務とする第三者機関である人権委員会が設置されて、女性差別もそこで被害の救済に当たっております。
 官房長官は本会議で、私は苦情処理、被害救済についてはまず第三者機関を設置すべきだということに対して、先ほどからも答弁をされていますが、既存の人権擁護委員会とかそういう制度の活用を考えると答弁されているわけですが、それでは解決できないと思います。
 まず、国連規約人権委員会は、昨年、日本政府に対して、人権侵害を調査したり不服に対して救済を与えるための制度的仕組みを欠いていることを懸念するというコメントを発表しておりますし、人権擁護委員はそのような仕組みには当たらないと考える、そういうふうにはっきり明記されております。そして、人権侵害の申し立てに対する調査と救済のための独立した仕組みを確立することを強く勧告しているわけであります。
 ですから、この法律が本当に女性の人権を保障して、差別を撤廃する意思を実行していくのであるならば、この法律の基本理念に反する取り扱いを受けた女性が被害を申し立てたり権利救済を受ける道を開くことは絶対に必要だと思うんです。そのためには、やはり第三者機関が不可欠だと思います。
 この法律の第十一条には、「政府は、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を実施するため必要な法制上」と書いてあるわけですから、第十一条も使って苦情処理、被害救済のための第三者機関の設置についてさらなる検討をされることを私はここで約束していただきたいと思います。いかがですか。

○国務大臣(野中広務君) 御指摘の被害者の救済等の問題は非常に重要な問題でございまして、国は人権侵害の救済のために当然必要な措置を講じなくてはならないと規定されておるわけでございますので、御承知のように行政改革が求められておる今日の現状でございまして、私どもとしては当面既存の委員会をそれぞれ活用してやってまいりたいと考えておる次第でございますけれども、御承知のように、省庁再編の後には内閣府に男女共同参画局も置かれ、審議官、二課長及び課長相当職を置くことも内定をいたしております。
 そういう中におきまして、御指摘の救済措置がどのように行われるか、あるいは内閣府に置かれる男女共同参画審議会の議を得ましてまたこの対応について考えてまいりたいと存じております。

○清水澄子君 終わります。

○入澤肇君 長い経緯を経ていよいよ法案の審査に至ることになりましたことにつきまして、まず関係者に対して敬意を表したいと思います。
 それにつきましても、私もこの法案を読んでみまして思い出しますのは日本とアメリカの差でありまして、私は六十一年から二年にかけまして日米農産物交渉に大デレゲーションの一員として行きました。こちらは外務省以下十二名の男性でございますが、アメリカ側は四人のUSTRの女性が対応いたしまして、国益を追求して堂々たる論陣を張られ、その結果、牛肉・オレンジの自由化につながったという経緯がございます。
 それからまた、日米林産物交渉にも当たりましたけれども、時のUSTRの代表はヒルズ女史でございまして、女史の凜とした指導、指揮のもとにウイリアムズ・リン大使等が要するにヒルズさんの要求のままに日本を押し切ったという場面に直面したこともあります。アメリカにおける女性の共同社会への参画状況と比べまして、日本の場合にはまだまだいろんな問題があるということを私も実感しております。
   〔委員長退席、理事江田五月君着席〕
 そこで、この基本法を制定するまでの間に相当な期間が経過いたしましたから、私は政府当局はかなりの勉強をしたのじゃないかと思うのであります。勉強の一覧表は総理府がつくっていただいた資料に出ておりますけれども、ただ、基本的に重要な点が欠けているのじゃないかと思いまして、もし研究成果がございましたら、これは事務当局で結構ですから教えていただきたいのでございます。
 最近、従来は男性の職場と思われているところに女性がかなり進出しております。例えば建設現場の重機の運転手などにも女性が進出しておりますし、それから航空機のパイロットにも進出するようなぐあいである。こういうふうなところに女性が進出するという状況を見ますと、男女の能力の差、これは決して不平等あるいは差別という意味じゃなくて、女性が男性に比べてどういう分野でより適しているか、男性は女性に比べてどういう分野でより適しているか、そういう基礎的な研究を各般にわたってやったことがあるのかどうか。こういう研究がないと、男女平等と言うけれども、なかなかこれは美しい言葉で語られるだけであって具体的な対応措置にはつながっていかないのじゃないかと思うんです。
 この点について、まず佐藤審議官の研究成果をお聞きしたいと思います。

○政府委員(佐藤正紀君) 先生御指摘のとおり、今、各方面で女性が活躍するようになっておりますが、そういう肉体的な能力の差でございますとかそういうことにつきましての研究というのは総理府ではやっておりません。また、そういう研究成果について当方はまだちょっと不勉強で、ただいま承知はいたしておりません。

○入澤肇君 一般的に、これだけの世論の関心のもとに、また長い間の経緯のもとで基本法にまとめて審議を行うということであれば、これに関連する種々の問題につきましては相当な勉強が総理府を中心としてなされてしかるべきじゃないかと思いますので、そういう基礎的なことについて研究成果がないまま法案を書く、法案はだれでも書けますけれども、そこに魂が入っていないのじゃないかなという気もしないわけじゃないわけであります。
 そこで、もう一つ二つ、その研究があるのかどうかということについてお聞きしたいんですけれども、女性の高等教育就学率の数字がここにございますけれども、低いという結果が出ております。この低い理由は一体何なんでしょうか。

○説明員(遠藤純一郎君) 女性の大学、短大等高等教育機関への進学率でございますけれども、平成十年度におきましては四九・四%という数字になっておりまして、男性の進学率四七・一%より上回っておるわけでございます。ただ、大学について見ますと女性は二七・五%でございまして、男性の四四・九%に比べかなり下回っている、こういう状況にあるわけでございます。
 これを経年的に見てみますと、昭和五十年代におきましてはずっと一二%程度で推移しておりましたけれども、昭和六十年代に入りまして年々増加し、特に平成に入りましてからは毎年平均一・五%ずつの伸びを示しておるわけでございます。
 分野別で見ましても、従来の文学部系統よりも、よりといいますか、工学部や法学あるいは経済といった分野に進学する女性がふえてきているということもございます。
 このような女性の四年制大学志向は今後とも続くものと思われまして、このところ、短期大学から四年制大学への改組転換が大幅にふえてきている、こういう状況になっておるわけでございます。
 したがいまして、このようなことを考えますと、これまで女性の四年制大学への進学率が低かったのは、やはり短大の教育が積極的に評価されてきたということが一つあると思いますけれども、ただ、こういう推移を見ますと、大学進学率が上昇に転じたのと時を同じくしまして、昭和六十一年にいわゆる男女雇用機会均等法が施行されたということがあるわけでございます。
 こういうことを考え合わせますと、やはり職業、雇用というような問題も要因の一つとして考えられるのではないか、こう考えておる次第でございます。

○入澤肇君 雇用均等法が、進学率が高くはなってきているけれどもまだ低いという理由にはならないんじゃないかと私は思うんですけれども、ここら辺ももう少し実態的な研究をされたらいいんじゃないかと思うんです。
 もう一点、研究があるのかどうかお聞きいたします。
 私も就職のあっせんなどを頼まれまして、友人の娘さんたちを一流商社に就職させたことがありますけれども、入ってみて、立派な大学を出ていながらやっぱり一般職でも総合職でもかなり男性との間に格差があるということで、不満を漏らす向きがあります。一体、商社においてどのような差があるかとか、一流企業、一流商社あるいは銀行においてどのような格差があるのかということ、こういうことについて調査したことはございますか。

○政府委員(佐藤正紀君) 先生御指摘の、そういう個別の分野におきましてどういう差があるかというような調査につきましては、残念ながら私どもはしておりません。

○入澤肇君 これだけの法案を出すのであれば、男女の平等の実態について先ほどから各委員が皆厳しい追及をやっているわけでありますから、当然ここに至るまでに二十年も三十年もかかっているわけでありますから、実態についてはやはり総理府なり労働省なりが積極的に私は調査をしておくべきじゃないかと思うんです。
 それでは、公務員の実態についてはいかがでしょうか。公務員について、女性の管理職への登用の実態。それから、これはT種とU種とに分けまして、特にU種の方々あるいはV種の方々で男性と比べて不平等を訴える向きがあります。私も経験をいたしました。この実態はいかがでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) 完全に先生の御指摘に沿えるかどうか若干疑問がございますけれども、ことし発表いたしました男女共同参画の現状と施策におきまして、職務の級別女性公務員の割合というようなものは一応把握はいたしております。
 例えば、指定職でありますと女性の比率が〇・六%、総務課長クラスの十一級でありますと一・〇%というような数字がございます。

○入澤肇君 特に、公務員の中のV種の女子職員につきましては、これはなかなか課長補佐のポストとか専門官のポストが割り当てられない。
 私はかなり女性にひいきいたしまして、これは女性のためにつくるポストであるからというので、人事の円滑化も考えて、課長補佐のポスト、専門官のポストを農林省各局においてつくった経験がございます。これはトップの方は男性諸君の理解を得て、女性に対して平等に扱うという気持ちがなきゃなかなかできない。
 今度のこの基本法の制定を契機として、ぜひ総務庁なり総理府なりが音頭をとって、同じ資格で入ってきて同じような能力を持っているのであれば同じような処遇をするように督励をしていただきたいと思うんです。そのための具体的なポストの要求もしていただきたいと思うのであります。
   〔理事江田五月君退席、委員長着席〕
 そこで、具体的な対応措置について若干私見を申し述べ、御意見をお伺いしたいと思います。
 先ほどから、育児休暇の消化率が非常に男性の場合低いというふうな話がございました。また、女性の場合も、育児休暇をとってもなかなか職場への復帰が難しい、生涯所得という観点から先ほど大変な格差があるということが説明されました。私は、育児休暇、産前産後の休暇をとった後もスムーズに職場に復帰するための一つの方法として、例えば今の公務員、役所の組織なんかにおきまして課長、課長補佐、係長というライン制を撤廃して、問題のテーマごとにプロジェクトチームをつくってスタッフとして処遇する、そうするといつでも抜けたり入ったりできるというふうになるんじゃないか。
 具体的に法案をつくったりなんかするときにプロジェクトチーム方式を私はかなりつくってやりましたけれども、この方法だと、急に突然不幸があって長期の休暇をとらなくちゃいけない、あるいは出産するために休まなくちゃいけない、そういう場合でも途中から復帰することができます。このようなことを役所の組織の中で具体的に推進することを検討してはいかがかと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府委員(瀧上信光君) 国の行政組織には、いわゆるラインとしましての局、部、課、係といった組織、そしてまたいわゆるスタッフとしまして審議官、参事官、調査官等々といった特定事項についての総括整理、参画する組織等がございます。
 そして、いわゆるライン組織というのは、固定的な事務分掌に基づく明確な責任のもとに経常的に行政事務の遂行に当たるものでありまして、こういったライン組織は国の行政組織として基幹的な位置を占めるものと考えております。
 一方、スタッフ組織につきましては、政策の企画立案あるいは専門的な事項の調査、審議等に従事をしておるわけでございますが、こういったスタッフ組織につきましては、行政をめぐる変化に機動的に対応する、あるいは総合的な行政を遂行する、専門的事項を処理する、こういったことからいわゆるスタッフ組織の重要性といったものは今日的に増してきているものというふうに認識をしております。
 いずれにいたしましても、国の行政組織編成におきましてはそれぞれの行政事務の内容に応じて適切な行政組織形態をとられる必要があるというふうに認識をいたしております。

○入澤肇君 官僚組織は戦後五十年の間で非常に精緻にわたって仕組みがつくられてきたんですけれども、その結果、逆に硬直性が目立って、新しい時代の要求に合わない、即応できないというふうなことが私は間々あるんじゃないかと思うんです。
 今の御説明は、今までの役所の行政管理局の行政に対する基本的な考え方ですね。これからどんどん新しい問題が出てくると思うんですよ。例えば、政府委員制度が廃止になります、副大臣制度になります、新しいことをどんどん政治家主導でやるようになる、そうしたらライン組織というのは果たして動くかどうか、非常に疑問なところもあります。
 ですから、ラインを緩やかにするとか、あるいはスタッフを中心にしてプロジェクトチーム方式でプロジェクトごとに人を動員して事に当たるとか、そういうことをもっと柔軟にやるべきじゃないか。男女平等を本当に言うのであれば、私は女性の職場復帰のためにはぜひこのことを具体的に組織として検討することが必要じゃないかというふうに思います。これはぜひ聞きっ放しにしないで検討してもらいたいと思います。
 それから二つ目に、具体的な積極的改善措置の一つとしまして、例えば審議会に女性委員の割合を何%というのが今ありますね。ところが、各省で審議会の委員をだれにしようかというときに非常に困るんです。
 一つの方法として、全国各地で各界で活躍する女性の方々をプロフィールも含めて総理府でリストアップして、各省で女性を選ぶときに便利になるようにひとつ情報網をつくり上げたらどうかと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) 国の審議会等への女性の登用につきましては、男女共同参画推進本部におきまして目標値を設定いたしまして各省庁における取り組みを推進しておりますが、総理府におきましては、各省庁の審議会における女性委員の氏名、所属、役職名、兼職状況等を掲載した名簿を作成いたしまして各省庁に配付をいたしております。
 さらに、各方面の女性有識者に関する人材情報をパソコンで検索できるような女性の人材データシステムを構築しようと今計画をいたしておるところでございます。

○入澤肇君 こういうのを実は私は見たことがあるんですけれども、週刊誌とか新聞だとか何かに出る回数の多い人が優先的にピックアップされていまして、地味だけれども確実に極めて立派な研究をやっている各都道府県の大学の女性の教授とか、あるいは各都道府県にいる経営者、こういう方々の名前は必ずしも十分に入っていません。そういうことに各都道府県、県庁当局を総動員して、総理府でリストをつくって、そして各省の女性の審議会の委員とかあるいは研究会の委員の選択の便利に資するようにしたらいいんじゃないかと思うんで、ぜひ検討していただきたいと思います。
 それから三つ目、これはなかなか難しいんで恐らく十分な研究がなされていないんじゃないかと思うんですが、男女平等と言いながら家族制度というのが日本では背景にございます。これは先ほども、家族制度を私は否定するものではありませんで、むしろ矢野先生と同じような考え方を持っているんですけれども、法律制度上は世帯単位になっているために、逆に新しい制度をつくった場合に女性が不利になる、奥様が不利になるという、そういう法律もあるわけですね。
 例えば、農業者年金基金法、この農業者年金基金に女性を入れようとしたときに、農地の所有者は男性で夫なものですから、農地の所有者が女性でない場合には年金基金に入れなかった。これをうまく民法上の法理論を活用して、組合契約みたいなことを間に入れて、女性も年金基金の対象者になるようにしたことがあるんです。農地法だとか農協法だとかなんかのほかに、年金もそうですね、三号被保険者。
 この問題につきましても、世帯単位であっても、世帯ということを大事にしながらも、婦人の地位の向上ということに配慮した制度の見直しがあっていいんじゃないかと思うんですが、審議官、いかがでしょうか。

○政府委員(佐藤正紀君) 先生御指摘のように、いろいろな制度、本来は男女の差別的取り扱いにつながってはいけないようなものでありましても、結果としてそういう男女共同参画社会の形成の阻害要因になるものがあり得るということは想定をされておりまして、この法案におきましても第四条におきまして、社会における制度または慣行が、性別による固定的な役割分担等を反映して、男女の社会における活動の選択に対して中立でない影響を及ぼすことにより、男女共同参画社会の形成を阻害する要因となるおそれがあることにかんがみ、こういうものにつきましてできるだけ中立なものとするよう配慮しなければならないという規定を置いておるわけでございます。
 これによりまして、いろいろ年金あるいは税制等も含めまして、こういう観点からの制度の検討をお願いしたいと考えておるところでございます。

○入澤肇君 次の質問は若干抽象的なもので、また大きな問題ですから、官房長官にぜひお聞きしたいんです。
 経済戦略会議が答申を出しました。その中で、ここ二年間の間に二%の経済成長を達成するためには人的資源、解説によりますと特に女性労働力の活用が必要不可欠である、そういう局面に我が国はもう突入したと言われております。この二%の経済成長の実現のために、女性の職場の開発等について格段の努力をお願いしたいと思うんですが、官房長官、いかがでしょうか。

○国務大臣(野中広務君) 女性の能力開発につきましては、これからも政策を十分詰めて、その実効性が担保されるように努力をしていかなくてはならないものと考えております。

○入澤肇君 もう一つ、先ほど浜四津委員からも自自公の少子化対策のお話がございました。私は、さらに一歩進めて、幼稚園と保育園の一元化、あるいは協調、連帯の強化、こういうことについて、この基本法を背景にして一歩進めていいんじゃないかというふうな感じを持っているんです。
 特に、児童福祉法の「保育に欠ける」という保育園に入れるための要件というのはもう要らないんじゃないか。むしろ、三歳未満の子供たちはみんなどこでも保育園に行けますよ、それから四歳児、五歳児はみんな幼稚園に行けますよと。そして、保育と教育の理念をきちんと踏まえて、就学前の子供の扱い方、保育と教育のあり方について政府が前向きに取り組むべきではないかと思っているんですが、これは児童家庭局長、いかがでしょうか。

○政府委員(横田吉男君) 共働き家庭が増加していることに対応いたしまして、保育ニーズが非常に増大しております。私どもは、こうした状況の中で、平成六年以降、エンゼルプランあるいは緊急保育対策等五カ年事業をつくりまして推進しているところでございます。
 こうした中で、まだ全国的にも待機児が四万人ほどいるということで、特に大都市中心でございますけれども、その解消対策に全力を挙げているところでございます。そのために、保育所関係のさまざまな規制を緩和いたしまして、例えば定員の弾力化ということで、年度当初は定員の一五%程度、あるいは途中では二五%、産休、育休明けにつきましてはスペースがある限り無制限に入所できるというような緩和を行っておりますし、その他さまざまな分園方式、小規模の保育所方式等を通じまして努力しているところでございます。
 ここの中で、今御指摘いただきました保育所の役割といたしまして、「保育に欠けるその乳児又は幼児を保育することを目的とする」というふうに法律上はなっております。これは、児童福祉法に言ういわゆる児童福祉施設といたしまして、もともと保護者が労働に従事したりあるいは疾病にかかったりということでその児童の監護ができない場合に、これを公の責任において保育を行うという福祉制度としてスタートしたことによるものでございまして、福祉制度として整備費あるいは運営費につきましても公的な助成を行っているということであります。
 こうした中ではございますが、定員に余裕がある場合におきましては、保育に欠けるという要件にかかわらず入所できるような扱いにいたしておりますし、最近におきましては、地域における子育て機能が低下してきたということもございまして、地域の中での育児相談あるいは子育てサークルへの支援等にも保育所が乗り出しております。また、一時保育等も含めましてさまざまな保育ニーズにこたえるような努力をしているところでございます。
 幼稚園との関係につきましても、文部省とも協議いたしまして、相互に協力できるところは協力していく、施設の総合化等を含めその連携を進めているところでございます。

○入澤肇君 最後に、せっかく基本法がこれからできるわけでございますから、今度はこの基本法の各条文を受けて具体的な実定法が各省から提案されなくちゃいけないと思うんです。幸いなことに、小渕総理の決断で局長のポストができるようでございますから、今までは労働省と総理府あるいは厚生省それぞれが消極的な権限争いで調査研究も十分にできなかったということのようでございますから、積極的に男女平等の追求のための調査研究を進めて、具体的な実定法ができていくように心から要望して、質問を終わります。

○堂本暁子君 男女共同参画の問題は、幾ら審議をしても審議し切れるということがないほど山のように問題はあるのですが、きょうは長い一日でございまして、私が最後でございます。
 私自身の質問に入ります前に、今お隣の男性の同僚議員が非常に本質的な質問をしてくださったと思っております。男女共同参画といいましても、例えば今回の基本法の六条に、「家族を構成する男女が、相互の協力と社会の支援の下に、子の養育、家族の介護その他」云々とございますが、一番問題は、年金とか税制とかそういったところで世帯単位になっているために、やはり男女平等にといってもなかなか、ほかの法律、ほかの行政の仕組みゆえにそれが実現できないというところを非常に端的に指摘していただいて、ありがとうございました。この問題は、この基本法が通ったらば、大変に大きな課題として私たちが議論しなければならないことではないかというふうに思っております。
 私は、先日、四月十二日の本会議の質問の続きと申しますか、その細部にわたってきょう質問させていただきたいと思いますが、まず官房長官に質問いたします。
 法案の第三条に、「男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、」という文言がございますが、この条文は明確な差別意図がある場合に限ったものでしょうか。

○国務大臣(野中広務君) 過去の判決におきまして、明確な差別意図がはっきりしない場合に種々の状況から女子従業員への差別を容認したとの推認が行われた例もございまして、本法案においては「差別的取扱い」という用語について明確な差別意図がある場合に限ったものとして考えていないわけであります。

○堂本暁子君 大変心強く思います。この条文がもし差別してはならないであれば、差別が意図的、直接的なものに限られてしまいますが、この一見消極的な規定ぶりによって意図しない差別も撤廃の対象になる、入るということになったことを歓迎したいというふうに思います。
 次に、この第三条の同じ文言について、もう先に質問なさった委員から、既にリプロダクティブヘルス・ライツの概念が含まれている、あるいは女性への暴力が入っているということの審議官からの御答弁がございました。
 そこで、私はあえて伺いたいんですが、ジェンダーイコーリティーがこの文言に、文言と申しますか条文に含まれているかどうか、この点を御答弁いただきたいと思います。

○政府委員(佐藤正紀君) 第三条におきましては、「男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、」を規定しておりまして、男女平等の理念はここにあらわれていると考えています。

○堂本暁子君 答えになっていない、全然違う。
 私が伺いましたのは、三条の条文の「男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、」という条文の中にジェンダーイコーリティーの概念が入っているか否かということです。

○政府委員(佐藤正紀君) ただいま男女平等の理念と申し上げましたのは、いわゆるジェンダーイコーリティーを含んでおるというふうに考えております。

○堂本暁子君 切りがない。
 非常に何か御答弁が不明確ですが、もう一回はっきり主語をジェンダーにしておっしゃってください。

○委員長(竹村泰子君) 佐藤審議官、質問の意味をきちんと酌み取って答えてください。

○政府委員(佐藤正紀君) 失礼いたしました。
 男女平等の理念というふうに申し上げましたけれども、これは通常ジェンダーイコーリティーと言われているものだと理解いたしております。

○堂本暁子君 続いて審議官に伺いますが、では、その他ジェンダー概念が条文化されているのはどこの部分ですか。

○政府委員(佐藤正紀君) この基本法におきましては、ジェンダーという言葉は一般に理解されにくいということからその文言をそのまま使ってはおりませんけれども、例えば第四条におきまして性別による固定的な役割分担の問題を規定しております。それからまた、第六条におきましては、男は仕事、女は家庭といったことにとらわれず、家族を構成する男女が家庭生活における活動と他の活動を両立できるようにするということを基本理念として規定しておりまして、ジェンダーの視点はこういうところに体現されておるかと考えております。

○堂本暁子君 例えば、今おっしゃったこと、何かどうもはっきりしませんが、何条のどこですか。条文を挙げておっしゃっていただきたいんです、きちっと。

○政府委員(佐藤正紀君) 第四条におきましては、「男女共同参画社会の形成に当たっては、社会における制度又は慣行が、性別による固定的な役割分担等を反映して、」、こういうところがございます。

○堂本暁子君 それはもちろんお読みになった。同じことは言っていただかなくてもいい。

○政府委員(佐藤正紀君) はい。ここに含まれているということを考えております。
 第六条におきましては、家族の協力のもとに「当該活動以外の活動を行うことができるようにすることを旨として、行われなければならない。」、こういうところがジェンダーの視点を反映してつくられた条文であると理解いたしております。

○堂本暁子君 あと、八条とか十五条というところはどうですか。

○政府委員(佐藤正紀君) 基本理念におきましてジェンダーの視点を含んでおりますので、それに基づきまして基本理念にのっとり国が施策を講ずる、それから地方公共団体もそういう施策を講ずる、ここら辺はすべてそういう視点を含んだ施策を講ずることを意味しております。

○堂本暁子君 審議官の御答弁を伺っていると、この法律の頭から終わりまで全部がそうだというふうに聞こえます。それはそれでも構いませんけれども、もうちょっとやはり的確な答弁をしていただかないと、こちらの言っている質問の意味と全くそぐわないと思いますが、もうこれ以上聞いても時間のむだだと思うので、ここでやめます。
 次に、官房長官に伺いとうございますが、北京で行われた第四回の世界女性会議で合意したジェンダーメーンストリーミング、つまり主流化していくという理念を行政機構の中でどう具体化して政策化していかれるおつもりか、その点について御答弁をお願いいたします。

○国務大臣(野中広務君) 男女共同参画社会基本法におきましては、第八条におきまして、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を総合的に策定、実施することを国の責務として規定をしておるところでございます。また、国の責務を果たす上で、政府は、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、男女共同参画基本計画を閣議決定によって定めなければならない旨規定をいたしております。このように、本法案におきましては、男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進するための枠組みを明確に定めておるところでございます。
 この基本法案に基づきまして、施策を総合的に推進していくための体制につきましては、中央省庁改革におきまして国会にお願いをいたしております二〇〇一年からの現在の審議会に新たな任務を付与し、その機能を格段に強化した合議制の機関として内閣府に男女共同参画会議を置くことにいたしているところでございます。
 また、本年一月二十六日に中央省庁等改革推進本部が決定をいたしました中央省庁改革に係る大綱におきまして、男女共同参画に関する企画立案及び総合調整等を主な所掌事務といたします局を先ほど来申し上げておるように総理の決断によりまして新たに設けることとされたことでございます。現在、局にふさわしい弾力的かつ強力な体制をつくるべく検討をいたしておるところでございます。

○堂本暁子君 ありがとうございました。
 いわゆるナショナルマシーナリーとして国内本部機構がどのように機能するかということがこれからこの基本法が通ったときに最も大事なことになるかと思っております。
 では、今度はジェンダー教育に話を移したいと思います。先日、本会議で、有馬文部大臣が、ジェンダー教育の具体例としてお茶の水大学の学内共同教育研究施設であるジェンダー研究センターについて言及され、女性学・ジェンダーに関する教育研究の充実に一層配慮したいというふうに答弁されました。
 きょうはわざわざ佐藤学長にお越しいただいたんですけれども、文部大臣が指摘された点について、お茶の水大学としてはどのような教育をこれからやろうとしていらっしゃるのか伺いたいというふうに思っております。

○参考人(佐藤保君) お答え申し上げます。
 ただいま御指摘いただきましたように、参議院の本会議で有馬文部大臣が言及されましたお茶の水女子大学のジェンダー研究センターは、平成八年度にその前の女性文化研究センターを発展的に改組して今日に至っているものでございます。
 同センターはこれまで、日本社会のジェンダー規範と制度の関連に関する研究とかアジアの女性政策と女性学の研究、あるいは大学教育とジェンダーに関する研究などを行いまして、それぞれ報告書を作成して国内外の関係機関等に研究成果の報告を行っております。
 また、改組に伴いまして、特に国際的協調を促進するために外国人客員教授を招聘いたしまして、アジアにおける女性と開発等の研究を行うとともに、学内外の研究者を対象とした夜間セミナーを定期的に開催して幅広い研究交流を進めておるところでございます。
 さらに、女性政策推進機構の研究、あるいは男女平等教育、ジェンダーフリー教育の研究におきましては、現在まだ少数ではございますが、政策担当行政職員、あるいは学校・社会教育関係職員への研究、研修の機会も提供しておるところでございます。
 一方、教育面におきましては、以上のような研究成果に基づいて、本学の大学院から附属中学校までのカリキュラムの中にジェンダーフリー教育を位置づけまして、ジェンダー研究センターがその中核となって教育の実践を行っているというところでございます。本学といたしましては、ジェンダー研究センターのこれまでの研究あるいは教育の一層の発展充実を図ってまいりますとともに、国内外の関係機関との連携をより深めてまいりたいと考えております。
 ただ、今後の具体的な将来計画につきましては、同センターがちょうど三年を経過したところでございますので、早急に点検、評価を行いまして、その結果を踏まえて具体策の策定を進めていきたいというふうに考えております。

○堂本暁子君 ありがとうございました。
 お茶の水大学が今一番センターになっているわけですが、もしかしたら間違っているかもしれませんが、教授以下十人以下の人数でやっていらっしゃる、もっと少ないかもしれませんけれども、きょう正確に人数を伺いませんでしたが、非常に少ない。日本では、大変私は、今度の基本法が通るに当たって、その根幹となるジェンダーの教育あるいは政策についての研究が手薄いということは、実際に政策を厚く展開していくことに影響があるんではないかというふうに思っております。
 外国では、学部、修士、博士に至るまで一貫してジェンダー研究ができるところが幾つもあると聞いていますけれども、日本では余りそういうところがない。お茶の水大学には大いに頑張っていただいて、基本法の政策をぜひとも具体化するための研究を大いにやっていただきたいと思います。
 文部省にもきょうお越しいただいていますが、大変急で申しわけございませんでした。有馬文部大臣がおっしゃったこと、研究の充実に一層配慮していきたいというふうに御答弁くださったんですが、文部省としてはこれをきちっと行政的にこれから担保していただけるんでしょうか。

○政府委員(富岡賢治君) 先般の、先生御指摘の参議院の本会議におきまして大臣から御答弁申し上げましたように、ジェンダーに関します教育研究に関しましては、例えば授業科目を開設する大学数が平成九年度で百六十九の大学に上っておるわけでございます。お尋ねのとおり、お茶の水女子大学は、ジェンダー研究センターとして発展的に改組していただくなど、教育研究体制の整備充実に努めてきたわけでございます。
 今後とも、本基本法案の趣旨とか女性学等の重要性ということを考えますと、ますますその研究体制の充実に努めてまいる必要があるわけでございますので、例えばお茶の水女子大学におきましても、自己点検、評価等のいろんな検討結果等を踏まえまして、いろいろ御相談等がありましたら適切な対応をしてまいらなくちゃいかぬと思っておりますけれども、全体としても教育研究の充実に努めるように努力してまいりたいと思っております。

○堂本暁子君 学部から修士、博士まで一貫して実際に研究ができる大学は幾つあるんですか。

○政府委員(富岡賢治君) そういう点で資料をまとめてまいりませんでしたので、ちょっと不正確な答えになるかと思いますので、後ほどよく調べましてから必要ございましたら御説明いたしたいと思います。ちょっと手元にはそろっておりません。大変恐縮でございます。

○堂本暁子君 私の知る限りではゼロだと思います。お茶の水大学が一番充実していて、学部から修士、博士というふうにお茶の水女子大学では一貫して研究できる体制でございますか、学長にこれは伺いたいんですが。

○参考人(佐藤保君) 一応その体制を組んでカリキュラム上やっております。

○堂本暁子君 とすると、恐らくお茶の水女子大学一つではないかというふうに私は認識しております、学生数は非常に少ないんではないかというふうに思いますが。
 これからそこのところは文部省の方にきちっと、講座が一つあるだけでは何にもならない、やはりそのことを専門に研究した人が、まさに先ほどから女性がどれだけ登用されるかという質問もありましたけれども、民間の企業であれ、国家公務員であれ、地方公務員であれ、大学の先生たちであれ、そういう方たちが散っていって初めてきちっとした私はジェンダー的な教育なり政策なりを実現できるのだろうと思っております。文部省にはそういった意味で、単に幾つあればいいということではなくて、この基本法ができるに際しては、もっと抜本的にその辺のところをこれから見直していただきたいというふうに思っています。
 ついでにではないのですが、もっと大事なことは、やはり小学校あるいは幼稚園のときから社会人になるまでの生涯にわたっての教育が重要だと思っていますが、文部省はこれから基本計画の中でジェンダー教育をどのように具体化されるおつもりでしょうか。

○政府委員(富岡賢治君) 大変重要な課題であるという認識のもとに、文部省におきましては、先生御案内のように男女共同参画二〇〇〇年プランに基づきまして今まで進めてきたわけでございます。このたびの法案の趣旨に基づきまして、今後、基本計画等、具体的な内容につきましては男女共同参画審議会等の意見を聞いて案を作成するというぐあいになっているわけでございますが、文部省といたしましては、その基本理念にのっとりまして、特に教育を、学校教育だけではなくて社会教育、さまざま幅広い分野でございますので、その努力を一層進めてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
 特に初等中等教育につきましては、小さいころから、物心ついたころから非常に大事な教育としてやっていかなくちゃいけないということから、社会科とか家庭科、道徳、保健体育等につきまして、今度の学習指導要領の改訂におきましては非常に指導の充実が図られるようになってまいったわけでございますので、このような線を踏まえまして、さらに今後努力してまいりたいというように思っております。

○堂本暁子君 これはもう本当にイエス、ノーだけでお答えいただいて結構ですが、これも本会議で伺ったことですけれども、北欧では男女の平等あるいはジェンダーの視点からすべての教科書をチェックしているということなんですが、日本でもそれはやっていますか。

○説明員(銭谷眞美君) 学校で用います教科書につきましては、学習指導要領に基づきまして検定を行っているわけでございますけれども、その検定におきましては、男女平等の観点に留意をして、検定申請をされた図書の中に女性差別や男女の固定的な役割分担を助長するような記述があれば従来よりこれを指摘し、適切な記述となるように配慮しているところでございます。
 今後とも、このような観点に配慮いたしまして、適切な検定を実施してまいりたい、こういうふうに考えております。

○堂本暁子君 差別的なものを排除していくというのは、非常に消極的だと思います。今回出される基本法はもっと積極的に男女の共同参画で経済社会構造を変えていこうという視点ですから、そういう視点で、差別のある部分をなくす、削除するのではなくて、積極的にジェンダーの視点を教育していくという形で教科書をきちっと考えていただく。お互いに、男の子も女の子も相手の人格なり個性なりを尊重するということがどんなに大事か。
 例えば、スウェーデンの教科書なんか私みんな見ましたけれども、日本は性教育という形ですが、北欧の教科書はジェンダー教育です。相手の心も体も本当に大事にしましょうということを幼稚園とか小学校の一年、二年のときからやっています。
 私の知る限りでは、日本の文部省ではそういう教科書をつくっていないというふうに認識しているので、これから積極的に、今おっしゃったような教科だけではなくて、国語の教科書だろうが何の教科書だろうがそういうことをやっていただきたいというふうに思います。
 限られた時間の中ですので先へ参りますけれども、二十世紀から二十一世紀へのちょうど時代の転換期を迎えております。新しい世紀は、私は、本当に成熟した民主主義あるいは大量消費型ではなくて循環型の社会への転換、そして豊かで安全な生活が保障される社会の実現が求められているというふうに思っています。
 そういう中で、やはり教育の問題というのが大変大事だというふうに思っております。同時に、それは男女が平等な立場で参画する社会でもあるというふうに考えています。
 老いも若きも、それから先住民も障害者も、すべての人が一人一人の個性と人権を尊重する社会、多様性を大事にする社会が今世界の潮流です。国連のいろいろなグローバルイシューと言われる会議でも、ほとんどの会議でそういった個人の尊重、そして多様性を大事にするという流れになっています。
 けさからこの委員会で同僚議員たちがずっと指摘してこられたことは、日本ではジェンダーバランスがいかに悪いか、まだ差別が実質的にどれだけあるかと。それから清水先生は二十年おくれているというふうにおっしゃいましたが、私も本当にそういった意味で法的にも、それから実態的にも世界から日本は二十年おくれていると言っても決して過言ではない、このままでは二十一世紀に日本は国際的に通用しない、あるいは日本は異質な国だというふうに言われても仕方がないというふうに思っております。
 こうした時期に、今回男女共同参画社会基本法が提出されたことの意義は非常に大きいというふうに思っております。この基本法に基づいて、世帯単位の法律ですとか、それから今の教育の問題、大学にしても小学校にしても、教科書の問題にしてもそうだと思いますが、あらゆる法律、あらゆる政策をやはり見直し、そして新しい政策についてはジェンダーの視点をきちっと入れていくということが、日本が二十一世紀に世界に通用する国になるかならないか、果たしてこういった基本法をもとにして経済社会構造の変革を実現できるかできないかということを世界は注目して見ていると思います。それを実現するために、私はこの基本法はとてもとても大事な法律だというふうに認識しております。
 最後に官房長官に、今度特に行政改革の中では非常にいい制度をつくっていただいて、そのことの御答弁はもうさっきいただきましたので、ぜひとも最後の一言を伺って終わりたいと思います。

○国務大臣(野中広務君) 世紀末を迎えて新しい世紀に向かうあるべき我が国の方向づけについて、今貴重な意見を賜ったわけでございますが、現実は非常に厳しく、かつ国際社会に立ちおくれておる部分がまことに多いわけでございまして、それはそのまま政治の責任であろうと考えるわけでございます。
 委員各位の御協力をいただきまして、この困難な時代を切り開いて二十一世紀に希望の持てる我が国の国づくりのために一層励んでまいりたいと思う次第でございます。

○堂本暁子君 どうもありがとうございました。終わります。

○委員長(竹村泰子君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時四分散会